説明

樹脂封止型電子機器及びその製造方法

【課題】モールド樹脂の量を少なくしてモールド樹脂による回路基板等への応力を小さくした樹脂封止型電子機器を提供する。
【解決手段】第1の回路基板6が内部に配置される第1の枠体2と、第2の回路基板7が内部に配置され、第1の回路基板6の上方に位置するように第1の枠体2の内部に設けられた第2の枠体3と、第1及び第2の枠体2,3内で各々の回路基板6,7を封止するモールド樹脂4,5とを備える。第1の枠体2内のモールド樹脂4が第2の枠体3内のモールド樹脂5よりも低くなっていることにより、全体のモールド樹脂の量を少なくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂封止型電子機器及びその製造方法に関する。特に、本発明は、ケース内に複数の回路基板を配置し、配置した複数の回路基板をモールド樹脂によって封止する樹脂封止型電子機器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、小型化を図るため、複数の回路基板を上下に間隔を置いて複数配置する電子機器が開発されている(例えば、特許文献1参照)。又、電子機器では、内部への水分や埃の侵入を防止したり、端子の酸化を防止するため、回路基板をモールド樹脂により封止している。モールド樹脂による封止を行うことにより、コージェネ発電機の制御ユニットのように厳しい環境下で使用する電子機器への適用が可能となる。
【0003】
図6は、以上の構造を備えた従来の樹脂封止型電子機器を示す。第1の回路基板110が下側、第2の回路基板120が上側に位置することにより、2つの回路基板110,120が空間を隔てて上下で重なるように配置されている。回路基板110,120には、電子部品が実装される。符号130は、第2の回路基板120に実装された電子部品である。
【0004】
2つの回路基板110,120は、相互の位置決め状態でケース140の内部に配置される。回路基板110,120の位置決めを行うため、第1の支持ピン150,第2の支持ピン160が用いられる。第1の支持ピン150はケース140の底部から立設しており、第1の支持ピン150に第1の回路基板110が固定される。第2の支持ピン160は第1の回路基板110及び第2の回路基板120に掛け渡されており、第2の支持ピン160に第2の回路基板120が固定される。
【0005】
ケース140に対しては、モールド樹脂170をポッティングして硬化させることにより2つの回路基板110,120を封止する。モールド樹脂170は、上下に位置している全ての回路基板(第1の回路基板110及び第2の回路基板120)が埋設される高さH0となるようにポッティングされる。
【特許文献1】特開2004−63604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6に示す構造では、複数の回路基板を上下に配置することにより、電子機器の小型化が可能となる。しかしながら、モールド樹脂は複数の回路基板を埋設する量となるように用いられるため、モールド樹脂の量が多く、電子機器が重たくなる問題がある。又、モールド樹脂の量が多いことから、モールド樹脂の膨張、収縮による応力が電子部品や回路基板に強く作用し、これらに悪影響を及ぼしている。従って、モールド樹脂の量を少なくできる樹脂封止型電子機器が望まれている。
【0007】
本発明は、複数の回路基板を上下に配置する構造において、モールド樹脂の量を少なくすることが可能な樹脂封止型電子機器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上下の複数の回路基板のそれぞれに対して封止することによりモールド樹脂の量を少なくできることを見出し、以下の本発明を完成するに至った。
【0009】
(1) 第1の回路基板が内部に配置される第1の枠体と、第2の回路基板が内部に配置され、前記第1の回路基板の上方に位置するように前記第1の枠体の内部に設けられた第2の枠体と、前記第1及び第2の枠体内で各々の回路基板を封止するモールド樹脂とを備え、前記第1の枠体内のモールド樹脂が前記第2の枠体内のモールド樹脂よりも低くなっていることを特徴とする樹脂封止型電子機器。
【0010】
(1)の発明によれば、第1の枠体のモールド樹脂により、第1の回路基板上が封止され、第2の枠体モールド樹脂により第2の回路基板が封止される。従って、全ての回路基板を封止できる。
【0011】
(1)の発明では、第2の枠体のモールド樹脂よりも第1の枠体のモールド樹脂が低くなっている。このことにより、第1の枠体及び第2の枠体にわたってモールド樹脂を同じ厚さとする必要がなく、第1の枠体のモールド樹脂が低くなっている分、モールド樹脂の量を削減できる。従って、電子機器の軽量化及び回路基板や回路基板に実装されている電子部品への悪影響をなくすことができる。
【0012】
(2) 第1の回路基板が内部に配置される第1の枠体と、第2の回路基板が内部に配置され、前記第1の回路基板の上方に位置するように前記第1の枠体の内部に設けられた第2の枠体と、前記第1及び第2の枠体内で各々の回路基板を封止するモールド樹脂とを備え、前記第2の枠体内のモールド樹脂が前記第1の枠体内のモールド樹脂よりも低くなっていることを特徴とする樹脂封止型電子機器。
【0013】
(2)の発明では、第1の枠体のモールド樹脂よりも第2の枠体のモールド樹脂が低くなっており、第2の枠体のモールド樹脂が低くなっている分、モールド樹脂の量を削減でき、電子機器の軽量化及び回路基板や回路基板に実装されている電子部品への悪影響をなくすことができる。
【0014】
(3) 前記第2の枠体は、前記モールド樹脂を第1の枠体に注入するための注入口が形成されていることを特徴とする(1)又は(2)に記載の樹脂封止型電子機器。
【0015】
(3)の発明によれば、第2の枠体の注入口から第1の枠体内に対してモールド樹脂を注入でき、第1の枠体へのモールド樹脂のポッティングが簡単となる。
【0016】
(4) 前記第1及び第2の回路基板を相互に位置決めする位置決め部材をさらに有し、前記第2の枠体は、前記位置決め部材に位置決めされていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂封止型電子機器。
【0017】
(4)の発明によれば、回路基板の相互の位置決めを行う位置決め部材によって枠体を位置決めするため、専用の位置決め用の部材が不要となり、構造が簡単となる。
【0018】
(5) 前記第2の枠体は、前記第1の回路基板に実装された一の電子部品上のモールド樹脂が略均一の厚さとなり、且つ他の電子部品上のモールド樹脂よりも薄くなるように調整可能な調整部を備えていることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂封止型電子機器。
【0019】
(5)の発明によれば、第2の枠体の調整部が一の電子部品上のモールド樹脂厚を調整するため、一の電子部品に対して作用するモールド樹脂からの応力が小さくなる。このため、破壊され易い電子部品を保護できる。
【0020】
(6) 第1の回路基板が内部に配置された第1の枠体の内部に、前記第1の回路基板よりも上方に位置するように第2の枠体を配置する工程と、前記第2の枠体の内部に第2の回路基板を配置する工程と、前記第1及び第2の枠体内で各々の回路基板をモールド樹脂によって封止する封止工程とを備え、前記封止工程では、第1の枠体内のモールド樹脂が前記第2の枠体内のモールド樹脂よりも低くなるように制御することを特徴とする樹脂封止型電子機器の製造方法。
【0021】
(6)の発明によれば、第1の枠体及び第2の枠体の内部をモールド樹脂により封止する際に、第2の枠体内のモールド樹脂に対し第1の枠体内のモールド樹脂が低くなるように制御するため、モールド樹脂の量を削減した電子機器を製造できる。
【0022】
(7) 第1の回路基板が内部に配置された第1の枠体の内部に、前記第1の回路基板よりも上方に位置するように第2の枠体を配置する工程と、前記第2の枠体の内部に第2の回路基板を配置する工程と、前記第1及び第2の枠体内で各々の回路基板をモールド樹脂によって封止する封止工程とを備え、前記封止工程では、第2の枠体内のモールド樹脂が前記第1の枠体内のモールド樹脂よりも低くなるように制御することを特徴とする樹脂封止型電子機器の製造方法。
【0023】
(7)の発明によれば、第1の枠体及び第2の枠体の内部をモールド樹脂により封止する際に、第1の枠体内のモールド樹脂に対し第2の枠体内のモールド樹脂が低くなるように制御するため、モールド樹脂の量を削減した電子機器を製造できる。
【0024】
(8) 前記封止工程は、前記第2の枠体から第1の枠体の内部に向かってモールド樹脂をポッティングし、第1の枠体内でモールド樹脂を硬化させる第1ポッティング工程と、前記第2の枠体の内部にモールド樹脂をポッティングし、第2の枠体内でモールド樹脂を硬化させる第2ポッティング工程とを備えていることを特徴とする(6)又は(7)に記載の樹脂封止型電子機器の製造方法。
【0025】
(8)の発明によれば、第1の枠体にモールド樹脂をポッティングする第1ポッティング工程及び第2の枠体にモールド樹脂をポッティングする第2ポッティング工程を備えるため、モールド樹脂の量を削減するポッティングが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の樹脂封止型電子機器によれば、第2の枠体内のモールド樹脂よりも第1の枠体内のモールド樹脂が低くなっているため、又は、第1の枠体内のモールド樹脂よりも第2の枠体内のモールド樹脂が低くなっているため、モールド樹脂の量を削減でき、削減した分、軽量化できる。又、モールド樹脂の量を削減することにより、電子部品や回路基板に作用するモールド樹脂の膨張、収縮による応力が少なくなり、悪影響を防止できる。
【0027】
本発明の樹脂封止型電子機器の製造方法によれば、第2の枠体内のモールド樹脂に対し第1の枠体内のモールド樹脂が低くなるように封止するため、又は、第2の枠体内のモールド樹脂に対し第1の枠体内のモールド樹脂が低くなるように封止するため、モールド樹脂の量を削減した電子機器を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0029】
図1は本発明の第1実施形態における断面図、図2は平面図である。樹脂封止型電子機器1は、第1の枠体2と、第2の枠体3と、これらの枠体2,3の内部をそれぞれ封止するモールド樹脂4,5とを備えている。
【0030】
図2に示すように、第1の枠体2は矩形状に形成されており、内部には第1の回路基板6が配置される(図1参照)。第2の枠体3の内部には第2の回路基板7が配置される。第1の回路基板6及び第2の回路基板7には、パターン回路(図示省略)が形成されていると共に電子部品が実装される。符号8は、第2の回路基板7に実装された電子部品であり、図示を省略するが、第1の回路基板6にも同様に電子部品が実装される。
【0031】
第1の回路基板6及び第2の回路基板7は、相互に位置決めされている。すなわち、第1の回路基板6及び第2の回路基板7に対して上下方向に延びる位置決め部材としての複数の位置決め軸9を掛け渡し、各位置決め軸9に対して第1の回路基板6側からねじ10を締め付けると共に、第2の回路基板7側からねじ10を締め付ける。これにより、第1の回路基板6及び第2の回路基板7が相互の位置決め状態となる。相互に位置決めされた第1の回路基板6及び第2の回路基板7は、接続子13によって電気的に接続され、基板6,7間で電流信号の送受信が可能となっている。
【0032】
第1の枠体2には、複数の位置決め突起11が立設されている。第1の回路基板6は位置決め突起11上に載置され、ねじ12を締め付けることにより固定され、第1の回路基板6が第1の枠体2に対して位置決めされる。ここで、位置決め突起11は第2の枠体3よりも外側に位置するように第1の枠体2に設けられており、樹脂封止型電子機器1の組み付け時に第2の枠体3との相互干渉が防止されている。
【0033】
第2の枠体3は、第2の回路基板7の周囲を囲むように設けられ、第2の回路基板7は第2の枠体3の内部に配置された構造となる。第2の枠体3は第1の回路基板6の上方に位置するように第1の枠体2の内部に設けられる。このような第2の枠体3は、第1の枠体2に比べて容量が小さくなっている。
【0034】
第2の枠体3は、底壁3a及び4周壁3bを有した有底の矩形枠形状となっている。底壁3aには、位置決め軸9に対応した位置決め筒部3c3aが形成されている。位置決め筒部3aは上下方向の所定の長さを有しており、位置決め筒部3aに位置決め軸9を貫通させることにより第2の枠体2が固定される。この固定状態において、位置決め筒部3aは上端面が第2の回路基板7の下面に当接し、下端面が第1の回路基板6の上面に当接する。このような固定構造では、第1の回路基板6及び第2の回路基板7の間隔が所定寸法となるように保持できる。又、第2の枠体3を第1及び第2の回路基板6,7に対して位置決め固定できると共に第1の枠体2に対しても位置決め固定でき、安定した取り付けが可能となる。
【0035】
図2に示すように、第2の枠体3の4周壁の一つには、外側に突出した注入口16が形成されている。注入口16は後述するように、モールド樹脂を第1の枠体2にポッティングするために用いられる。このため、注入口16に対応した底壁3aは、部分的に開口されている。注入口16を設けることにより、モールド樹脂容易且つ確実にポッティングできる。
【0036】
次に、樹脂封止型電子機器1の製造手順を説明する。第2の枠体3を位置決め軸9に取り付けた後、第1の回路基板6及び第2の回路基板7を位置決め軸9に組み付けて基板アッシィとする。この基板アッシィを第1の枠体2内に入れ、第1の回路基板6を位置決め突起11に固定して回路基板組み付け工程を終了する。
【0037】
回路基板組み付け工程後には、モールド樹脂をポッティングして回路基板2,3を封止する封止工程に移行する。封止に用いるモールド樹脂としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、その他の絶縁性樹脂を選択できる。封止工程は、第1ポッティング工程及び第2ポッティング工程の2段階で行う。
【0038】
第1ポッティング工程では、第2の枠体3からモールド樹脂を第1の枠体2の内部に向かってポッティングする。このとき、第2の枠体3の注入口16にモールド樹脂を注入し、注入口16から第1の枠体2の内部にモールド樹脂を落とし込む。第1の枠体2の内部におけるモールド樹脂4は、第1の回路基板6を覆い、且つその上面が第2の枠体3の底壁3aよりも幾分高くなる程度が好適であり、高さH1となるようにポッティング量を調整する。このとき、第1の枠体2の内部全体を埋めることのないようにポッティング量を調整する。ポッティングの後、第1の枠体2の内部でモール後樹脂4を硬化させて第1の回路基板6を封止し、その後、第2ポッティング工程に移行する。
【0039】
第2ポッティング工程では、第2の枠体3の内部にモールド樹脂5をポッティングする。モールド樹脂5は第1の枠体2内のモールド樹脂4と同一の樹脂であってもよく、異なった樹脂であってもよい。ポッティングは、第2の回路基板7を覆う高さH2となるようにその量を調整する。第2の枠体3が第1の回路基板6よりも上方に位置しているため、このようなポッティング調整により、第1の枠体2内のモールド樹脂4が第2の枠体3内のモールド樹脂5よりも低い状態となる(H1<H2)。このポッティングの後、モールド樹脂5を硬化させて第2の回路基板7を封止して、製造を終了する。
【0040】
以上の樹脂封止型電子機器1では、第2の枠体3内のモールド樹脂5よりも第1の枠体2内のモールド樹脂4が低くなる。このため、全体のモールド樹脂の量を削減でき、電子機器を軽量化できる。又、モールド樹脂の量が削減されることにより、電子部品8や回路基板6,7に作用するモールド樹脂4,5の膨張、収縮による応力が少なくなり、悪影響を防止できる。発明者らが図1の樹脂封止型電子機器1を−40℃雰囲気中に30分放置した後、100℃雰囲気内中に30分放置することを繰り返すヒートショック試験を行ったところ、600サイクルでも、割れが生じたり、壊れたりすることがないものとなったものである。
【0041】
図3は、本発明の第2実施形態における樹脂封止型電子機器1Aの断面図である。
【0042】
図3の実施形態では、第1の枠体2から位置決め部材としての位置決め支柱17が立設している。位置決め支柱17は、下から上方に向かって大径部17a、中径部17b、小径部17cが順に形成された段付き形状となっている。
【0043】
位置決め支柱17に対し、第1の回路基板6は小径部17c、中径部17bを貫通して大径部17a上に載置され、位置決め固定される。第2の枠体3は、その位置決め筒部15が中径部17bを貫通し、第1の回路基板6上に当接して位置決め固定される。第2の回路基板7は、小径部17cを貫通し、第2の枠体3の上端面に当接して位置決め固定される。なお、小径部17cの外周面に雄ねじ(図示省略)を形成し、雌ねじを有した押え筒(図示省略)を雄ねじに螺合させて小径部17cに固定することにより、第2の回路基板7を押え筒により押さえ込むことが可能である。
【0044】
図3の構造とすることにより、第1の回路基板6、第2の枠体3、第2の回路基板7の相互の位置決めが簡単となり、組み付けが容易となる。図3の実施形態においても、第1の枠体2内のモールド樹脂4が第2の枠体3内のモールド樹脂5よりも低くなるようにポッティングされる(H1<H2)。従って、全体のモールド樹脂の量を削減できるため、電子部品8や回路基板6,7に作用するモールド樹脂4,5の膨張、収縮による応力が少なくなり、電子機器を軽量化できる。
【0045】
図4は、本発明の第3実施形態における樹脂封止型電子機器1Bの断面図である。
【0046】
位置決め支柱17が貫通することにより第2の枠体3が位置決め状態で固定される。なお、第2の回路基板7は、位置決め支柱17の小径部17cに螺合した押え筒19に押さえられることにより固定されている。
【0047】
第2の枠体3には、調整部20が形成されている。調整部20は第1の回路基板6に実装された一の電子部品21を封止する第1の枠体2内のモールド樹脂4が略均一の厚さとなり、且つ第1の回路基板6上の他の電子部品8を封止するモールド樹脂4よりも薄くなるように調整する部分である。図4の形態では、調整部20は一の電子部品21の上方を覆うように外側に略水平状に張り出すように形成されている。又、その高さは他の電子部品8を封止するモールド樹脂4よりも低い位置となっている。なお、調整部20は一の電子部品21の略半分を覆うように形成されているが、一の電子部品21の全体を覆うように形成してもよい。
【0048】
第2の枠体3が調整部20を有した状態で、第2の枠体3の注入口16から第1の枠体2内にモールド樹脂4をポッティングすると、モールド樹脂は調整部20で量が規制され、調整部20よりも厚くなることがない。これにより、一の電子部品21上のモールド樹脂4aが略均一の厚さとなると共に、他の電子部品8上のモールド樹脂4よりも薄くなる。従って、膨張、収縮等により一の電子部品21に対して作用するモールド樹脂の応力が小さく且つ均一となる。
【0049】
図5は、第2の枠体3が調整部20を有していない場合を示し、第1の枠体2内のモールド樹脂4が薄い部分と厚い部分とを有した状態で一の電子部品21上を覆っている。モールド樹脂4このような厚さが異なった状態でモールド樹脂が膨張、収縮すると、一の電子部品21上に作用する応力が異なり、一の電子部品21が破壊される不都合がある。図4の実施形態では、モールド樹脂からの応力が小さく且つ均一となるため、電子部品21が破壊されることがない。このため、例えば、フォトカプラ等の破壊され易い電子部品の保護が可能となる。
【0050】
なお、図示を省略するが、本発明では、第2の枠体3内のモールド樹脂5が第1の枠体2内のモールド樹脂4よりも低くなっていてもよい(H2<H1)。すなわち、第1及び第2の枠体2,3内で各々の回路基板6,7をモールド樹脂によって封止する際に、第2の枠体3内のモールド樹脂5が第1の枠体2内のモールド樹脂4よりも低くなるように制御するものである。
【0051】
このような構造においても、モールド樹脂の全体量を削減できるため、電子機器を軽量化できる。又、モールド樹脂の量が削減されることにより、電子部品8や回路基板6,7に作用するモールド樹脂4,5の膨張、収縮による応力が少なくなり、悪影響をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態における樹脂封止型電子機器を示す断面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】本発明の第2実施形態における樹脂封止型電子機器を示す断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態における樹脂封止型電子機器を示す断面図である。
【図5】第3実施形態に対する比較例を示す断面図である。
【図6】従来の樹脂封止型電子機器を示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1、1A、1B 樹脂封止型電子機器
2 第1の枠体
3 第2の枠体
4、5 モールド樹脂
6 第1の回路基板
7 第2の回路基板
8 電子部品
9 位置決め軸(位置決め部材)
16 注入口
17 位置決め支柱
20 調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回路基板が内部に配置される第1の枠体と、
第2の回路基板が内部に配置され、前記第1の回路基板の上方に位置するように前記第1の枠体の内部に設けられた第2の枠体と、
前記第1及び第2の枠体内で各々の回路基板を封止するモールド樹脂とを備え、
前記第1の枠体内のモールド樹脂が前記第2の枠体内のモールド樹脂よりも低くなっていることを特徴とする樹脂封止型電子機器。
【請求項2】
第1の回路基板が内部に配置される第1の枠体と、
第2の回路基板が内部に配置され、前記第1の回路基板の上方に位置するように前記第1の枠体の内部に設けられた第2の枠体と、
前記第1及び第2の枠体内で各々の回路基板を封止するモールド樹脂とを備え、
前記第2の枠体内のモールド樹脂が前記第1の枠体内のモールド樹脂よりも低くなっていることを特徴とする樹脂封止型電子機器。
【請求項3】
前記第2の枠体は、前記モールド樹脂を第1の枠体に注入するための注入口が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂封止型電子機器。
【請求項4】
前記第1及び第2の回路基板を相互に位置決めする位置決め部材をさらに有し、前記第2の枠体は、前記位置決め部材に位置決めされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂封止型電子機器。
【請求項5】
前記第2の枠体は、前記第1の回路基板に実装された一の電子部品上のモールド樹脂が略均一の厚さとなり、且つ他の電子部品上のモールド樹脂よりも薄くなるように調整可能な調整部を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂封止型電子機器。
【請求項6】
第1の回路基板が内部に配置された第1の枠体の内部に、前記第1の回路基板よりも上方に位置するように第2の枠体を配置する工程と、
前記第2の枠体の内部に第2の回路基板を配置する工程と、
前記第1及び第2の枠体内で各々の回路基板をモールド樹脂によって封止する封止工程とを備え、
前記封止工程では、第1の枠体内のモールド樹脂が前記第2の枠体内のモールド樹脂よりも低くなるように制御することを特徴とする樹脂封止型電子機器の製造方法。
【請求項7】
第1の回路基板が内部に配置された第1の枠体の内部に、前記第1の回路基板よりも上方に位置するように第2の枠体を配置する工程と、
前記第2の枠体の内部に第2の回路基板を配置する工程と、
前記第1及び第2の枠体内で各々の回路基板をモールド樹脂によって封止する封止工程とを備え、
前記封止工程では、第2の枠体内のモールド樹脂が前記第1の枠体内のモールド樹脂よりも低くなるように制御することを特徴とする樹脂封止型電子機器の製造方法。
【請求項8】
前記封止工程は、前記第2の枠体から第1の枠体の内部に向かってモールド樹脂をポッティングし、第1の枠体内でモールド樹脂を硬化させる第1ポッティング工程と、前記第2の枠体の内部にモールド樹脂をポッティングし、第2の枠体内でモールド樹脂を硬化させる第2ポッティング工程とを備えていることを特徴とする請求項6又は7に記載の樹脂封止型電子機器の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−160034(P2008−160034A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350182(P2006−350182)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】