説明

樹脂封止装置

【課題】低い樹脂成形圧でも安定した樹脂成形が可能な信頼性の高い樹脂封止装置を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂封止装置は、ワークを樹脂封止する樹脂封止装置100であって、ワークを上面側から押さえる上型12を保持するように構成されたトッププラテン10と、ワークを下面側から押さえる下型22を保持するように構成されたムービングプラテン20と、上型12及び下型22でワークをクランプしてワークを樹脂封止する際に、溶融した樹脂を圧送するプランジャ23と、下型22のポット21に沿ってプランジャ23を摺動可能に構成されたマルチトランスファユニット24と、マルチトランスファユニット24によりプランジャ23に加えられる樹脂成形圧を検出するロードセル30と、ロードセル30に予圧を加える予圧手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形圧を測定するロードセルを備えた樹脂封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体チップを実装した半導体実装基板に対して樹脂封止を行う樹脂封止装置では、樹脂の注入圧力を制御するため、ロードセル(ひずみゲージ)を用いて駆動系の圧力を監視し、荷重測定を行っていた。
【0003】
例えば特許文献1には、複数のプランジャと、複数のプランジャを支持する押動プレートと、押動プレートを駆動する駆動装置を有し、押動プレートに作用する偏荷重を検出可能に押動プレートと駆動装置との間に圧力センサ(ひずみゲージ)を配設したトランスファ成形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−166047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のトランスファ成形装置において、ロードセルに加えられる圧力が小さい低圧域では、ロードセルの特性上出力電圧が低く、周囲の電源ライン等からのノイズの影響により安定した荷重測定が困難である。
【0006】
そこで本発明は、低い樹脂成形圧でも安定した樹脂成形が可能な信頼性の高い樹脂封止装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての樹脂封止装置は、ワークを樹脂封止する樹脂封止装置であって、前記ワークを上面側から押さえる上型を保持するように構成されたトッププラテンと、前記ワークを下面側から押さえる下型を保持するように構成されたムービングプラテンと、前記上型及び前記下型で前記ワークをクランプして該ワークを樹脂封止する際に、溶融した樹脂を圧送するプランジャと、前記下型のポットに沿って前記プランジャを摺動可能に構成されたトランスファ機構と、前記トランスファ機構により前記プランジャに加えられる樹脂成形圧を検出するロードセルと、前記ロードセルに予圧を加える予圧手段とを有する。
【0008】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低い樹脂成形圧でも安定した樹脂成形が可能な信頼性の高い樹脂封止装置を提供することができる。
【0010】
また、ポットとプランジャの摺動抵抗を測定し、摺動抵抗を考慮に入れた成形圧の設定ができる。
【0011】
また、ポットとプランジャの摺動抵抗を測定し、ポットとプランジャの磨耗状態を判断し、ポット又はプランジャの交換時期及びメンテナンスが必要な時期の算出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施例における樹脂封止装置の概略断面図である。
【図2】本実施例における樹脂封止装置の要部断面図である。
【図3】本実施例における樹脂封止装置の樹脂成形圧の検出値と荷重との関係図である。
【図4】比較例(従来例)における樹脂封止装置の概略断面図である。
【図5】比較例(従来例)における樹脂封止装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
まず、図1を参照して、本実施例における樹脂封止装置の概略構成について説明する。図1は、本実施例における樹脂封止装置100の概略断面図である。樹脂封止装置100は、半導体実装基板等のワークをトランスファモールドで樹脂封止するために用いられる。樹脂封止装置100において、トッププラテン10は、ワーク(不図示)を上面側から押さえる上型12(金型)を保持するように構成されている。またムービングプラテン20は、ワークを下面側から押さえる下型22(金型)を保持するように構成されている。下型22には、複数のポット21が形成されている。また各々のポット21の内部には、プランジャ23が配置されている。後述のように、プランジャ23は、上型12及び下型22でワークをクランプしてワークを樹脂封止する際に、溶融した樹脂を圧送するように構成されている。
【0015】
樹脂封止の際には、熱硬化性樹脂等をタブレット(円柱)状に成形した樹脂タブレット(不図示)をポット21の内部におけるプランジャ23の上に配置する。そして、上型12と下型22とでワーク(不図示)をクランプし(挟み)、下型22を予熱して樹脂タブレットを溶融させ、プランジャ23を上動させて溶融した樹脂を圧送することにより、上型12と下型22との間に形成された所定領域が樹脂で充填される。プランジャ23は、トランスファ機構としてのマルチトランスファユニット24により、ポット21に沿って上下に摺動可能に構成されている。なお、樹脂タブレットに代えて、顆粒樹脂をポット21に投入することも可能であり、又は、液状の熱硬化性樹脂をディスペンサ(不図示)で供給することもできる。また、上型12及び下型22のパーティング面をリリースフィルム(不図示)で覆ってから樹脂を供給して、リリースフィルムを介して上型12及び下型22でワークをクランプしてもよい。
【0016】
マルチトランスファユニット24の下部には、プレート32、34の間に、マルチトランスファユニット24によりプランジャ23に加えられる樹脂成形圧を検出するロードセル30(樹脂成形圧センサ)が設けられている。ロードセル30は、その下に配置されたプレート34と、プレート34の上に配置されたトランスファプレート28とから構成される凹部の内部に配置されている。
【0017】
これらの構造体は、ムービングプラテン20に設けられた複数のボールネジ軸43の上に搭載されている。なお図1で、ムービングプラテン20は、マルチトランスファユニット24が通る大きさの横穴(図面左右方向)が空いてあり、トランスファプレート28が自由に上下できる孔となっている。各々のボールネジ軸43の周囲にはベアリングナット41が設けられており、ベアリングナット41の内周を回転させることで、ボールネジ軸43を正確かつ滑らかに上下動させることができる。なお、ベアリングナット41の内周はボールネジ軸43に螺合回転し、ベアリングナット41の外周はムービングプラテン20に固定されている。ボールネジ軸43が上下動すると、それに連結されたマルチトランスファユニット24が上下動する。ボールネジ軸43とプーリー42の間には隙間があり、プーリー42は、ベアリングナット41の内周下部において、ベアリングナット41の回転中心に取り付けられている。複数のプーリー42は、互いにベルト44で接続されている。エジェクターロッド26は、ムービングプラテン20の下部に通し孔が開けられ、ムービングプラテンの上下動に拠らない底部(不図示)に固定され、ムービングプラテン20の上部に向けて垂直に延びるように設けられている。ムービングプラテン20の上に固定された下型22は、ムービングプラテン20と共に下型22が下動することにより、エジェクターロッド26が下型22に対して相対的に上側に突き出すことにより金型内でエジャクタピン(不図示)が上動し、成形樹脂が離型される。
【0018】
次に、図2を参照して、樹脂封止装置100に設けられたロードセル30(樹脂成形圧センサ)及びその周辺の概略構成について説明する。図2は、樹脂封止装置100の要部断面図である。
【0019】
本実施例のようにトランスファモールドを行う樹脂封止装置100では、樹脂の注入圧力(樹脂成形圧)を制御するため、樹脂封止の際に発生する荷重(推力)を測定し、駆動系の圧力制御が行われる。このためマルチトランスファユニット24の下方には、樹脂封止の際にマルチトランスファユニット24に加えられる荷重を測定する樹脂成形圧センサとしてのロードセル30が設けられている。ロードセル30は、測定対象物の伸縮に比例して抵抗体が伸縮して抵抗値が変化するように構成され、この抵抗変化を用いてひずみ量を測定するセンサである。ロードセル30の抵抗変化は微少な値であるため、例えば、ホイートストンブリッジ回路を用いて電圧に変換される。
【0020】
本実施例の樹脂封止装置100は、フィードバック制御によりロードセル30に与える荷重を制御する。ロードセル30に荷重を与えると、ロードセル30にひずみが発生し、ロードセル30の出力電圧が変化する。このため、この変化値、ロードセル30のゲージ率、及び、入力電圧に基づいてひずみ量を算出することができる。更に、このひずみ量とヤング率とによってロードセル30にかかった圧力が算出可能となる。これにより、樹脂にプランジャ23を用いて加えられる圧力(樹脂圧)は、マルチトランスファユニット24全体に加えられる圧力から算出される。このような関係に基づき、出力電圧を用いて樹脂圧が適切に制御される。
【0021】
図2に示されるように、ロードセル30は、プレート34の上に、かつトランスファプレート28で囲まれた領域に配置されている。ロードセル30は、その中央部において、ボルト39によりプレート34に固定されている。プレート34は、ボルト37によりトランスファプレート28に固定されている。また、ロードセル30は、皿バネ35を介在させたボルト36を用いて、トランスファ機構内のプレート32(第1のプレート)とプレート34(第2のプレート)との間に保持されている。皿バネ35は、所定の縮み量を有してボルト36とプレート34との間に配置されている。ワークを樹脂封止する際に、皿バネ35は、所定の縮み量よりも更に縮むことにより、ロードセル30により樹脂成形圧が検出される。また、ボルト36の側面には、ボルト36の横振れによる擦りや齧りを防止するためのOリング38が設けられている。
【0022】
上述のとおり、ボルト36は、皿バネ35を所定量だけ縮ませた状態で、すなわち、皿バネ35による所定の下方向の力がロードセル30に加えられるように、プレート32とプレート34との間を結合している。このため、プランジャ23に樹脂圧が加えられていない場合、すなわち樹脂成形圧がゼロの場合でも、皿バネ35による所定量の力がロードセル30に加えられており、それに応じたひずみ量がロードセル30に発生している。
【0023】
ロードセル30に加えられる力が小さい低圧域では、ロードセル30の特性上、出力電圧が低く、周囲の電源ライン等からのノイズにより安定した荷重測定及び制御が困難である。このため、本実施例の樹脂封止装置100は、プランジャ23に樹脂圧が全く加えられていない状態(樹脂成形圧がゼロの状態)で、ロードセル30に対してノイズ領域を超えた出力電圧が得られるだけの予圧(プリロード)が加えられるように構成されている。ここで、皿バネ35は、ロードセル30に予圧を加える予圧手段として機能する。
【0024】
次に、図3を参照して、ロードセル30による樹脂成形圧の検出値と荷重との関係について説明する。図3は、ロードセル30による検出値とロードセル30が受ける実際の荷重との関係図である。本実施例において、ロードセル30には300kgfの予圧が加えられている。
【0025】
図3に示されるように、皿バネ35の力によりロードセル30に加えられている荷重(予圧)は300kgfである。このとき、ロードセル30に樹脂成形圧は加えられていないため、300kgfという検出値が出る。この値をソフトウエアによりオフセットし、ロードセル30の検出値は0kgfと認識させる。また、ロードセル30に予圧を含めて3000kgfの荷重が加えられている場合、この荷重から予圧としての300kgfを引いた値である2700kgfがロードセル30の検出値として得られる。
【0026】
なお本実施例において、ロードセル30には300kgfの予圧が加えられているが、これに限定されるものではない。ノイズ領域を超えるのに必要な予圧であれば、これ以外の値、例えば200kgfや500kgf等の予圧を加えてもよい。また、本実施例の樹脂封止装置100では、予圧手段としての皿バネ35の縮み量を変えることにより、設定予圧を変更可能に構成することができる。なお、本実施例では弾性部材として皿バネ35を用いているが、これに限定されるものではなく、通常のバネを用いてもよい。このため、樹脂封止の際の各条件を変更することによりノイズ領域が変わった場合等、予圧を常に適切に設定することが可能である。
[比較例]
次に、図4及び図5を参照して、比較例としての従来の樹脂封止装置の構成について説明する。図4は、従来例における樹脂封止装置1000の概略断面図である。図5は、樹脂封止装置1000の要部断面図であり、ロードセル300及びその周辺の概略構成を示す。図4及び図5は、それぞれ、図1及び図2と対応して示されており、上記実施例における樹脂封止装置100と同様の部分は共通の参照符号が付されている。
【0027】
図4及び図5において、ロードセル300は、プレート340の上に、かつトランスファプレート28で囲まれた領域に配置されている。ロードセル300は、その中央部において、ボルト390によりプレート340に固定されている。プレート340は、ボルト370によりトランスファプレート28に固定されている。また、ロードセル300は、複数のボルト360によりプレート320に固定されている。
【0028】
このように、本比較例の構成では、プランジャ23に樹脂圧が加えられていない場合、すなわち樹脂成形圧がゼロの場合、ロードセル300には力は加えられておらず、ひずみ量はゼロである。このため、ロードセル30に加えられる力が小さい低圧域では、ロードセル30の出力電圧が低く、周囲の電源ライン等からのノイズにより安定した荷重測定及び制御が困難となる。
【0029】
上述の本実施例によれば、低い樹脂成形圧でも安定した樹脂成形が可能な信頼性の高い樹脂封止装置を提供することができる。
【0030】
以上、本発明の実施例について具体的に説明した。ただし、本発明は上記実施例として記載された事項に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0031】
12 上型
22 下型
23 プランジャ
24 マルチトランスファユニット
28 トランスファプレート
30 ロードセル
32、34 プレート
35 皿バネ
41 ベアリングナット
42 プーリー
43 ボールネジ軸
100 樹脂封止装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを樹脂封止する樹脂封止装置であって、
前記ワークを上面側から押さえる上型を保持するように構成されたトッププラテンと、
前記ワークを下面側から押さえる下型を保持するように構成されたムービングプラテンと、
前記上型及び前記下型で前記ワークをクランプして該ワークを樹脂封止する際に、溶融した樹脂を圧送するプランジャと、
前記下型のポットに沿って前記プランジャを摺動可能に構成されたトランスファ機構と、
前記トランスファ機構により前記プランジャに加えられる樹脂成形圧を検出するロードセルと、
前記ロードセルに予圧を加える予圧手段と、を有することを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項2】
前記予圧手段はバネであり、
前記ロードセルは、前記バネを介在させたボルトを用いてトランスファ機構内の第1のプレートと第2のプレートとの間に保持されている、ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂封止装置。
【請求項3】
前記バネは、所定の縮み量を有して前記ボルトと前記第2のプレートとの間に配置されており、
前記ワークを樹脂封止する際に、前記バネは、前記所定の縮み量よりも更に縮むことにより、前記ロードセルにより前記樹脂成形圧が検出される、ことを特徴とする請求項2に記載の樹脂封止装置。
【請求項4】
前記予圧手段は、前記ロードセルに加える前記予圧が変更可能であり、ソフトウエアにより該予圧をオフセットさせて検出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂封止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−111202(P2012−111202A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264336(P2010−264336)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000144821)アピックヤマダ株式会社 (194)
【Fターム(参考)】