説明

樹脂成形体の製造方法

【課題】 光学歪が発生しにくく、ヒケの発生しにくい、樹脂成形体の製造方法を提供すること。
【解決手段】 成形型に多官能(メタ)アクリルモノマーを注入し、前記多官能(メタ)アクリルモノマーに対して、重合転化率が1〜10%となるまで放射エネルギー線を照射して前記多官能(メタ)アクリルモノマーの一部を重合させる第1工程と、前記第1工程の後、重合させた前記多官能(メタ)アクリルモノマーを前記成形型内に保持した状態で、重合させた前記多官能(メタ)アクリルモノマーを加熱して重合転化率が60%以上になるまで前記多官能(メタ)アクリルモノマーの残部をさらに重合させる第2工程とを有することを特徴とする樹脂成形体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
比重が低く軽量化できることや耐衝撃性に優れているという利点から、樹脂製の光学材料が、光学ガラスに替わって、光学用材料として用いられてきた。
特許文献1では光学用材料としての樹脂成形体の製造方法が記載されている。具体的には、まず、多官能(メタ)アクリレート化合物から構成される樹脂組成物を紫外線照射により、温度を60℃以下に保ちながら重合度が40〜60%に達するまで紫外線により重合させる。そして、この重合させた多官能(メタ)アクリレート化合物を成形型から取り出して熱重合させる。この方法でクラックの発生を抑制でき、線膨張係数の小さい樹脂成形体を製造できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−280261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の樹脂成形体の製造方法では、重合度が高くなるまで紫外線による重合を行うため、光学歪の発生、ヒケが発生すると考えられる。
そこで本発明の目的は、光学歪が発生しにくく、ヒケが発生しにくい、樹脂成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る樹脂成形体の製造方法は、成形型に多官能(メタ)アクリルモノマーを注入し、前記多官能(メタ)アクリルモノマーに対して、重合転化率が1〜10%となるまで放射エネルギー線を照射して前記多官能(メタ)アクリルモノマーの一部を重合させる第1工程と、前記第1工程の後、重合させた前記多官能(メタ)アクリルモノマーを前記成形型内に保持した状態で、重合させた前記多官能(メタ)アクリルモノマーを加熱して重合転化率が60%以上になるまで前記多官能(メタ)アクリルモノマーの残部をさらに重合させる第2工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、光学歪が発生しにくく、ヒケが発生しにくい、樹脂成形体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に係る樹脂成形体の製造方法は以下の第1工程および第2工程を有する。
・第1工程
成形型に多官能(メタ)アクリルモノマーを注入し、この多官能(メタ)アクリルモノマーに対して、重合転化率が1〜10%となるまで放射エネルギー線を照射して、多官能(メタ)アクリルモノマーの一部を重合させる工程。
・第2工程
第1工程の後、重合させた前記多官能(メタ)アクリルモノマーを成形型内に保持した状態で、重合させた前記多官能(メタ)アクリルモノマーを加熱して重合転化率が60%以上になるまで前記多官能(メタ)アクリルモノマーの残部をさらに重合させる熱重合工程。
【0008】
(第1工程について)
本実施形態に係る第1工程は、具体的には、まず、多官能(メタ)アクリルモノマーを、少なくとも1面が放射エネルギー線を透過させる成形型に注入する。次いで、成形型に注入された多官能(メタ)アクリルモノマーに対して、この多官能(メタ)アクリルモノマーの重合転化率が1〜10%となるまで放射エネルギー線を照射して重合させる。
多官能(メタ)アクリルモノマーの重合転化率が10%を超えるまで放射エネルギー線を照射して重合させると、放射エネルギー線による重合速度が大きいため、重合反応が急速に進み、重合反応が不均一となり光学歪が発生するおそれがある。さらに、重合転化率が10%を超えると、重合転化率の上昇に伴い、不均一な重合収縮が起こり、重合体の表面にヒケ(凹凸)が発生するとともに、クラックも発生するおそれがある。
【0009】
多官能(メタ)アクリルモノマーの重合転化率が1〜10%となるまで放射エネルギー線を照射して重合させた場合、重合反応は不均一となりにくく、光学歪が発生しにくい。また、放射エネルギー線によって重合させることで、多官能(メタ)アクリルモノマーの重合体のネットワーク構造が形成される。
【0010】
前記放射エネルギー線とは、活性光線及び電離性放射線を指す。前記活性光線とは赤外線、可視光線、あるいは紫外線を指し、とくに本実施形態においては紫外線を含む光線が好ましい。活性光線を発生する光源としては各種のものが使用可能であるが、処理効率などの点から低圧、高圧、超高圧水銀灯、キセノン放電灯、アーク灯などが好ましく用いられる。前記電離性放射線とは、コバルト60からでるガンマ線、あるいは電子線加速器で発生した電子線さらにはX線装置で発生したX線や原子炉で発生した中性子線などを用いることもできるが、その取り扱いやすさ、得られやすさなどからとくに電子線が好ましい。
【0011】
前記放射エネルギー線を透過させる成形型とは、放射エネルギー線が紫外線の場合、紫外線照射で劣化したり、変形したりしないようにガラスを用いることが好ましい。成形型は、2枚のガラスとガスケットからなり、必要によりバネつきのクリップなどで固定してもよい。ガスケットの厚みにより樹脂板の厚みを任意に制御できる。
前記重合転化率はフーリエ変換型赤外分光(FT−IR)の測定により二重結合の吸収ピークの減少量から求めることができる。
【0012】
重合転化率が1〜10%となるように、重合反応を制御して、紫外線を照射する方法としては、低照度の紫外線を照射する方法、一部波長の紫外線を遮断する方法、紫外線源から発生する赤外線を除去して熱重合を防ぐ方法が挙げられる。
その中でも、低照度の紫外線を照射する方法が好ましい。この場合、波長365nmの紫外線の照度が100mW/cm以下となるようにすることが好ましい。高照度の紫外線を照射した場合、重合反応が早く、所定の重合転化率に制御することが困難である。
【0013】
一部波長の紫外線を遮断する方法としては、紫外線を吸収するフィルターを用いることが好ましい。この際、放射エネルギー線による重合開始剤の吸収スペクトルを考慮し、放射エネルギー線による重合開始剤の最大吸収波長の紫外線を低減するフィルターを用いると効果が大きい。
紫外線源から発生する赤外線により重合性組成物が加熱されないようにする方法としては、赤外線を遮断するフィルターや赤外線を反射しない鏡などを用いる方法が挙げられる。
【0014】
(第2工程について)
本実施形態に係る第2工程は、前記第1工程の後、重合させた前記多官能(メタ)アクリルモノマーを前記成形型内に前記を保持した状態で、この重合させた多官能(メタ)アクリルモノマーを加熱することでさらに重合させる熱重合工程である。具体的には、重合させた多官能(メタ)アクリルモノマーを加熱して、重合転化率が60%以上になるまで、重合させた多官能(メタ)アクリルモノマーの残部を重合させる。
【0015】
この工程では、放射エネルギー線を照射して重合転化率を1〜10%とした多官能(メタ)アクリルモノマーを脱型することなく、加熱して重合反応を完結させる。加熱温度は、熱重合開始剤を用いる場合は、その分解温度に応じて適時選択し、徐々に加熱温度を上昇させていくが、最終硬化温度は、100℃以上、特に120℃以上、220℃以下、特に200℃以下が好ましい。最終硬化温度が220℃を超えると、樹脂の着色が顕著となるおそれがある。加熱時間は通常、2〜48時間である。そして、重合反応を完結させ最終硬化が終了した後、脱型する。100℃以上が好ましい理由は2つある。1つは、重合開始剤の失活(分解)を充分に行うことで、ラジカル発生源である活性を保った重合開始剤の残存量を減らすためである。もう1つは、重合反応を充分に進行させ、最終的に到達する樹脂の重合転化率を可能な限り高くするためである。
【0016】
この熱重合工程において、重合させた前記多官能(メタ)アクリルモノマーの対流が、前記第1工程における放射エネルギー線照射時に構築されたネットワーク構造により抑制されることで、光学歪が低減され、ヒケの発生も抑制される。もし、前記第1工程の放射エネルギー線による重合反応を行わなかった場合、多官能(メタ)アクリルモノマーの重合体のネットワーク構造が形成されないため、光学歪や、ヒケが発生しやすいと考えられる。
【0017】
(その他の工程)
本実施形態に係る樹脂成形体の製造方法は上記第1工程と第2工程以外の工程を有していてもよい。例えば、前記成形型内の前記多官能(メタ)アクリルモノマーに無機微粒子を加える工程や、前記、放射エネルギー線の照射や加熱処理により重合反応を開始せしめる成分(重合開始剤)を前記多官能(メタ)アクリルモノマーに加える工程を有していてもよい。
【0018】
さらに、得られる樹脂成形体の物性を損なわない範囲で、連鎖移動剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、染料、顔料、充填剤を前記成形型に入れる工程を有していてもよい。
【0019】
((メタ)アクリルモノマー)
本明細書において、(メタ)アクリルモノマーとは、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を意味する。また、本明細書において、単官能(メタ)アクリルモノマーとは、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を意味し、多官能(メタ)アクリルモノマーとは、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を意味する。また、本明細書において、(メタ)アクリロイル基を2個有する化合物を2官能(メタ)アクリルモノマー、3個有する化合物を3官能(メタ)アクリルモノマー、4個有する化合物を4官能(メタ)アクリルモノマーということがある。
【0020】
本実施形態に係る多官能(メタ)アクリルモノマーとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが好ましい。
なお、本明細書において(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基とメタクリロイル基の総称であり、アクリロイル基とは、CH=CHCO−で表される基を、メタクリロイル基とは、CH=C(CH)CO−で表される基を意味する。
なお、本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの総称である。
【0021】
単官能(メタ)アクリルモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェニルグリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、フェニルセロソルブ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0022】
(多官能(メタ)アクリルモノマー)
多官能(メタ)アクリルモノマーとして以下の化合物を例示できる。
2官能(メタ)アクリルモノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサメチレンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0023】
3官能(メタ)アクリルモノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートなどを挙げることができる。
4官能以上の(メタ)アクリルモノマーとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0024】
なお、前記、放射エネルギー線の照射や加熱処理により重合反応を開始せしめる成分とは、通常、放射エネルギー線による重合開始剤及び熱重合開始剤である。前記放射エネルギー線による重合開始剤としては、放射エネルギー線による重合に用いられる公知の物質を特に限定することなく使用できる。
【0025】
(放射エネルギー線による重合開始剤)
放射エネルギー線による重合開始剤を具体的に示せば、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロ−ル−1−イル)−フェニル)チタニウムなどが好適に用いられるものとして挙げられる。2種以上の、放射エネルギー線による重合開始剤を組み合わせて使用することもできる。なお、放射エネルギー線による重合開始剤に加えて、放射エネルギー線による重合促進剤としてアミノ化合物を添加してもよい。放射エネルギー線による重合促進剤に用いられるアミノ化合物としては、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエートなどが挙げられる。
【0026】
放射エネルギー線による重合開始剤の添加量は、多官能(メタ)アクリルモノマーの合計を100重量部としたとき、0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、更に好ましくは0.1重量部以上である。その上限は、通常10重量部、好ましくは1重量部、更に好ましくは0.3重量部である。放射エネルギー線重合開始剤の添加量が多すぎると、急激に重合が進行してしまい、重合転化率の制御が困難になる。また、色相が悪化するおそれもある。一方、少なすぎると放射エネルギー線を照射しても重合が十分に進行しないおそれがある。
【0027】
(熱重合開始剤)
前記熱重合開始剤としては、アゾ系開始剤および過酸化物開始剤が挙げられる。熱重合に用いられるこれら公知の物質を特に限定することなく使用できる。
(アゾ系開始剤)
前記アゾ系開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネイト)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]フォルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)などが挙げられる。
【0028】
(過酸化物開始剤)
前記過酸化物開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5,−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシドなどが挙げられる。
【0029】
熱重合開始剤として、最終硬化の際のクラックやヒケの発生を抑制するとともに、熱対流を利用し光学歪を低減するため、少なくとも1種は10時間半減期温度が室温〜100℃、好ましくは40℃〜90℃、さらに好ましくは50℃〜80℃である。熱重合開始剤は加熱により分解して濃度が減少するが、温度によって分解する速度が異なることが知られている。10時間半減期温度とは、10時間で開始剤の濃度が2分の1になる温度をいう。これらの重合開始剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0030】
熱重合開始剤の添加量は、多官能(メタ)アクリルモノマーの合計を100重量部としたとき、0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、更に好ましくは0.1重量部以上である。その上限は、通常10重量部、好ましくは5重量部、更に好ましくは3重量部である。熱重合開始剤の添加量が多すぎると、色相が悪化するおそれがある。一方、少なすぎると熱重合が十分に進行しないおそれがある。
【0031】
前記充填剤としては、例えば、無機微粒子が挙げられる。微粒子とは、具体的には、平均粒径100nm以下、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下の粒状の物質のことである。平均粒径は、通常、動的光散乱などの手段で測定することができる。
【0032】
(無機微粒子)
前記無機微粒子としては、特に限定されないが、金属酸化物微粒子、たとえば酸化ストロンチウム(SrO)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ニオブ(Nb)、酸化タンタル(Ta)、酸化モリブデン(MoO)、酸化タングステン(WO、W)、酸化鉄(Fe、FeO、Fe)、酸化ルテニウム(RuO)、酸化銅(CuO、CuO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化インジウム(In、InO)、酸化ゲルマニウム(GeO、GeO)、酸化スズ(SnO)、酸化鉛(PbO、PbO)、酸化アンチモン(Sb、Sb)、酸化ビスマス(Bi)、酸化ランタン(La)、酸化セリウム(CeO、Ce)などの酸化物微粒子、または、これらの酸化物に他の金属を複合化した複合酸化物微粒子、または、ダイヤモンド、シリカなどが挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。後述する表中の各評価は次の方法に従い実施した。
【0034】
<樹脂板の評価方法>
(1)全光線透過率の測定:
樹脂の透明性を評価するためプラスチック透明材料の全光線透過率の試験方法(JIS−K7361、ISO13468)に示される測定法に準拠して全光線透過率を測定した。
(2)ヘイズの測定:
樹脂の光学歪及び表面のヒケが発生した場合、光が散乱され、ヘイズが上昇する。樹脂の光学歪及びヒケの評価を行うため、プラスチック透明材料のヘイズの求め方(JIS−K7136、ISO14782)に示される測定法に準拠して、ヘイズ(拡散光線透過率/全光線透過率×100)を測定した。
【0035】
(3)外観(ヒケ及びクラック):
目視にて、ヒケ(重合収縮による凹凸)及びクラック(重合収縮によるひび割れ)の発生の有無を確認した。ヒケ及びクラックについて、目視にて確認できない場合は○(良好)、目視にて確認できた場合は×(不良)と示した。
【0036】
<樹脂板の製造>
(実施例1)
メチルメタクリレート50重量部と、多官能(メタ)アクリルモノマーとしてのペンタエリスリトールテトラアクリレート50重量部とを混合した。この混合物100重量部に対して、開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.1重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を混合して、吸引瓶に仕込み、真空脱気を行い、液状重合性組成物を得た。
【0037】
この液状重合性組成物を一対の石英ガラスにガスケットを挟み構成された成形型に注入した。そして、250W超高圧水銀ランプ(HOYA CANDEO OPTRONICS株式会社製、商品名:EX250)を用いて、照射光量80mW/cmで10秒間紫外線を照射した。紫外線照射後の重合転化率を測定したところ、重合転化率は2.1%であった。
【0038】
なお、紫外線の照度は、ウシオ電機製の紫外線積算光量計(UIT−250)及びセパレート型受光機(UVD−S365)を用いて、365nmの紫外線の照度を測定した。
【0039】
次いで、オーブン中で加熱処理し(60℃で12時間、80℃で5時間、100℃で4時間、120℃で2時間)重合を行い、厚み2.5mmの樹脂成形体を得た。
得られた樹脂成形体は、重合硬化中及び脱型中にクラックが発生せず、ヒケのない良好な外観を有していた。また、ヘイズを測定したところ0.6%であり、良好な透明性を示した。本実施例の重合性組成物の主要な原料組成及び評価結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
(実施例2)
紫外線照射時間が15秒である以外は、実施例1と同様に行った。
得られた樹脂成形体は、紫外線照射後の重合転化率は3.6%であり、重合硬化中及び脱型中にクラックが発生せず、ヒケのない良好な外観を有していた。また、ヘイズを測定したところ0.6%であり、良好な透明性を示した。本実施例の重合性組成物の主要な原料組成及び評価結果を表1に示す。
【0042】
(実施例3)
紫外線照射時間が20秒である以外は、実施例1と同様に行った。
得られた樹脂成形体は、紫外線照射後の重合転化率は6.9%であり、重合硬化中及び脱型中にクラックが発生せず、ヒケのない良好な外観を有していた。また、ヘイズを測定したところ0.8%であり、良好な透明性を示した。本実施例の重合性組成物の主要な原料組成及び評価結果を表1に示す。
【0043】
(実施例4)
紫外線照射時間が25秒である以外は、実施例1と同様に行った。
得られた樹脂成形体は、紫外線照射後の重合転化率は9.1%であり、重合硬化中及び脱型中にクラックが発生せず、ヒケのない良好な外観を有していた。また、ヘイズを測定したところ0.8%であり、良好な透明性を示した。本実施例の重合性組成物の主要な原料組成及び評価結果を表1に示す。
【0044】
(実施例5)
紫外線照射時間を10秒とし、得られた樹脂成形体の厚みが1.5mmである以外は、実施例1と同様に行った。
得られた樹脂成形体は、紫外線照射後の重合転化率は8.8%であり、重合硬化中及び脱型中にクラックが発生せず、ヒケのない良好な外観を有していた。また、ヘイズを測定したところ0.7%であり、良好な透明性を示した。本実施例の重合性組成物の主要な原料組成及び評価結果を表1に示す。
【0045】
(実施例6)
紫外線照射時間を15秒とし、得られた樹脂成形体の厚みが3.5mmである以外は、実施例1と同様に行った。
得られた樹脂成形体は、紫外線照射後の重合転化率は6.8%であり、重合硬化中及び脱型中にクラックが発生せず、ヒケのない良好な外観を有していた。また、ヘイズを測定したところ0.8%であり、良好な透明性を示した。本実施例の重合性組成物の主要な原料組成及び評価結果を表1に示す。
【0046】
(比較例1)
メチルメタクリレート50重量部と、多官能(メタ)アクリルモノマーとしてのペンタエリスリトールテトラアクリレート50重量部との混合物100重量部に対して、開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を混合して、吸引瓶に仕込み、真空脱気を行い、液状重合性組成物を得た。
【0047】
この液状重合性組成物を一対の石英ガラスにガスケットを挟み構成された成形型に注入し、オーブン中で加熱処理し(60℃で12時間、80℃で5時間、100℃で4時間、120℃で2時間)重合を行い、厚み2.5mmの樹脂成形体を得た。
得られた樹脂成形体は、重合硬化中及び脱型中にクラックは発生しなかったが、重合収縮によりヒケが発生し、良好な外観が得られなかった。また、ヘイズを測定したところ2.8%であった。本比較例の重合性組成物の主要な原料組成及び評価結果を表1に示す。
【0048】
(比較例2)
紫外線照射時間が5秒である以外は、実施例1と同様に行った。
得られた樹脂成形体は、紫外線照射後の重合転化率は0.0%(0.5%未満)であり、クラックの発生は確認できなかった。しかし、ヒケが顕著に発生したため、ヘイズの測定が行えなかった。本比較例の重合性組成物の主要な原料組成及び評価結果を表1に示す。
【0049】
(比較例3)
紫外線照射時間が30秒である以外は、実施例1と同様に行った。
得られた樹脂成形体は、紫外線照射後の重合転化率は18%であり、クラックの発生は確認できなかったが、ヒケが発生した。また、ヘイズを測定したところ1.7%であった。本比較例の重合性組成物の主要な原料組成及び評価結果を表1に示す。
【0050】
(比較例4)
(メタ)アクリルモノマーとして、メチルメタクリレート50重量部と、多官能(メタ)アクリルモノマーとしてのペンタエリスリトールテトラアクリレート50重量部との混合物100重量部に対して、開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.1重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド0.1重量部、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)1.0重量部を混合して、吸引瓶に仕込み、真空脱気を行い、液状重合性組成物を得た。
【0051】
この液状重合性組成物を一対の石英ガラスにガスケットを挟み構成された成形型に注入した。そして、250W超高圧水銀ランプ(HOYA CANDEO OPTRONICS株式会社製、商品名:EX250)を用いて、照射光量80mW/cmで120秒間紫外線を照射した。成形型は冷却した台の上に静置し、照射面側ガラスの温度を60℃以下に保った。紫外線照射後の重合転化率を測定したところ、重合転化率は47%であった。
【0052】
なお、紫外線の照度は、ウシオ電機製の紫外線積算光量計(UIT−250)及びセパレート型受光機(UVD−S365)を用いて、365nmの紫外線の照度を測定した。
次いで、オーブン中で200℃で4時間加熱処理を行い、厚み2.5mmの樹脂成形体を得た。
得られた樹脂成形体は、重合硬化中及び脱型中にクラック及びヒケが発生した。なお、ヘイズについては、測定できず、良好な成形体を得ることができなかった。本比較例の重合性組成物の主要な原料組成及び評価結果を表1に示す。
【0053】
(実施例7)
メチルメタクリレート35重量部と、多官能(メタ)アクリルモノマーとしてのペンタエリスリトールテトラアクリレート35重量部と、ジルコニアナノ粒子(住友大阪セメント、平均粒径7nm)30重量部との混合物100重量部に対して、開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.1重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を混合して、吸引瓶に仕込み、真空脱気を行い、液状重合性組成物を得た。
【0054】
この液状重合性組成物を一対の石英ガラスにガスケットを挟み構成された成形型に注入した、そして、250W超高圧水銀ランプ(HOYA CANDEO OPTRONICS株式会社製、商品名:EX250)を用いて、照射光量80mW/cmで1秒間紫外線を照射した。紫外線照射後の重合転化率を測定したところ、重合転化率は1.3%であった。
【0055】
なお、紫外線の照度は、ウシオ電機製の紫外線積算光量計(UIT−250)及びセパレート型受光機(UVD−S365)を用いて、365nmの紫外線の照度を測定した。
次いで、オーブン中で加熱処理し(60℃で12時間、80℃で5時間、100℃で4時間、120℃で2時間)重合を行い、厚み2.5mmの樹脂成形体を得た。
得られた樹脂成形体は、重合硬化中及び脱型中にクラックも発生せず、ヒケのない良好な外観を有していた。また、ヘイズを測定したところ2.5%であり、良好な透明性を示した。本実施例の重合性組成物の主要な原料組成及び評価結果を表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
(実施例8)
紫外線照射時間が2秒である以外は、実施例7と同様に行った。
得られた樹脂成形体は、紫外線照射後の重合転化率は1.7%であり、重合硬化中及び脱型中にクラックが発生せず、ヒケのない良好な外観を有していた。また、ヘイズを測定したところ3.1%であり、良好な透明性を示した。本実施例の重合性組成物の主要な原料組成及び評価結果を表2に示す。
【0058】
(比較例5)
メチルメタクリレート35重量部と、多官能(メタ)アクリルモノマーとしてのペンタエリスリトールテトラアクリレート35重量部と、ジルコニアナノ粒子(住友大阪セメント、平均粒径7nm)30重量部との混合物100重量部に対して、開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を混合して、吸引瓶に仕込み、真空脱気を行い、液状重合性組成物を得た。
【0059】
この液状重合性組成物を一対の石英ガラスにガスケットを挟み構成された成形型に注入し、オーブン中で加熱処理し(60℃で12時間、80℃で5時間、100℃で4時間、120℃で2時間)重合を行い、厚み2.5mmの樹脂成形体を得た。
得られた樹脂成形体は、重合硬化中及び脱型中にクラックは発生しなかったが、重合収縮によりヒケが発生し良好な外観が得られなかった。また、ヘイズを測定したところ5.4%であった。本比較例の重合性組成物の主要な原料組成及び評価結果を表2に示す。
【0060】
(比較例6)
紫外線照射時間が15秒である以外は、実施例7と同様に行った。
得られた樹脂成形体は、紫外線照射後の重合転化率は39%であり、クラック及びヒケが顕著に発生し、ヘイズの測定はできなかった。本比較例の重合性組成物の主要な原料組成及び評価結果を表2に示す。
【0061】
(比較例7)
メチルメタクリレート35重量部と、多官能(メタ)アクリルモノマーとしてのペンタエリスリトールテトラアクリレート35重量部と、ジルコニアナノ粒子(住友大阪セメント、平均粒径7nm)30重量部との混合物100重量部に対して、開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.1重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド0.1重量部、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)1.0重量部を混合して、吸引瓶に仕込み、真空脱気を行い、液状重合性組成物を得た。
【0062】
この液状重合性組成物を一対の石英ガラスにガスケットを挟み構成された成形型に注入した。そして、250W超高圧水銀ランプ(HOYA CANDEO OPTRONICS株式会社製、商品名:EX250)を用いて、照射光量80mW/cmで45秒間紫外線を照射した。成形型は冷却した台の上に静置し、照射面側ガラスの温度を60℃以下に保った。紫外線照射後の重合転化率を測定したところ、重合転化率は41%であった。
【0063】
なお、紫外線の照度は、ウシオ電機製の紫外線積算光量計(UIT−250)及びセパレート型受光機(UVD−S365)を用いて、365nmの紫外線の照度を測定した。
次いで、オーブン中で200℃で4時間加熱処理を行い、厚み2.5mmの樹脂成形体を得た。
【0064】
得られた樹脂成形体は、重合硬化中及び脱型中にクラックは発生しなかったが、顕著なヒケが発生した。なお、ヘイズを測定したところ17.8%であった。本比較例の重合性組成物の主要な原料組成及び評価結果を表2に示す。
【0065】
(実施例9)
多官能(メタ)アクリルモノマーとしてのトリメチロールプロパントリメタクリレート100重量部に対して、開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.1重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を混合した。そして、混合物を吸引瓶に仕込み、真空脱気を行い、液状重合性組成物を得た。
【0066】
この液状重合性組成物を一対の青板ガラスにガスケットを挟み構成された成形型に注入した。そして、250W超高圧水銀ランプ(HOYA CANDEO OPTRONICS株式会社製、商品名:EX250)を用いて、照射光量35mW/cmで15秒間紫外線を照射した。紫外線照射後の重合転化率を測定したところ、重合転化率は6.4%であった。
なお、紫外線の照度は、ウシオ電機製の紫外線積算光量計(UIT−250)及びセパレート型受光機(UVD−S365)を用いて、365nmの紫外線の照度を測定した。
【0067】
次いで、オーブン中で加熱処理し(60℃で12時間、80℃で5時間、100℃で4時間、120℃で2時間)重合を行い、厚み2.5mmの樹脂成形体を得た。
得られた樹脂成形体は、重合硬化中及び脱型中にクラックも発生せず、ヒケのない良好な外観を有していた。また、ヘイズを測定したところ0.3%であり、良好な透明性を示した。本実施例の重合性組成物の主要な原料組成及び評価結果を表3に示す。
【0068】
(比較例8)
多官能(メタ)アクリルモノマーとしてのトリメチロールプロパントリメタクリレート100重量部に対して、開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を混合して、吸引瓶に仕込み、真空脱気を行い、液状重合性組成物を得た。
この液状重合性組成物を一対の青板ガラスにガスケットを挟み構成された成形型に注入し、オーブン中で加熱処理し(60℃で12時間、80℃で5時間、100℃で4時間、120℃で2時間)重合を行い、厚み2.5mmの樹脂成形体を得た。
得られた樹脂成形体は、重合硬化中及び脱型中にヒケは発生しなかったが、クラックが発生し、良好な外観が得られなかった。また、ヘイズを測定したところ0.4%であった。本比較例の重合性組成物の主要な原料組成及び評価結果を表3に示す。
【0069】
(比較例9)
紫外線照射時間が30秒である以外は、実施例9と同様に行った。
得られた樹脂成形体は、紫外線照射後の重合転化率は12%であり、ヒケは確認されなかったが、クラックが発生し、良好な外観が得られなかった。また、ヘイズを測定したところ3.2%であった。本比較例の重合性組成物の主要な原料組成及び評価結果を表3に示す。
【0070】
【表3】

【0071】
(実施例10)
多官能(メタ)アクリルモノマーとしてのジメチロールトリシクロデカンジアクリレート100重量部に対して、開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.1重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を混合した。そして、混合物を吸引瓶に仕込み、真空脱気を行い、液状重合性組成物を得た。
この液状重合性組成物を一対の青板ガラスにガスケットを挟み構成された成形型に注入した。そして、250W超高圧水銀ランプ(HOYA CANDEO OPTRONICS株式会社製、商品名:EX250)を用いて、照射光量35mW/cmで10秒間紫外線を照射した。紫外線照射後の重合転化率を測定したところ、重合転化率は0.7%であった。
【0072】
なお、紫外線の照度は、ウシオ電機製の紫外線積算光量計(UIT−250)及びセパレート型受光機(UVD−S365)を用いて、365nmの紫外線の照度を測定した。
次いで、オーブン中で加熱処理し(60℃で12時間、80℃で5時間、100℃で4時間、120℃で2時間)重合を行い、厚み2.5mmの樹脂成形体を得た。
得られた樹脂成形体は、重合硬化中及び脱型中にクラックも発生せず、ヒケのない良好な外観を有していた。また、ヘイズを測定したところ1.0%であり、良好な透明性を示した。本実施例の重合性組成物の主要な原料組成及び評価結果を表4に示す。
【0073】
(比較例10)
多官能(メタ)アクリルモノマーとしてのジメチロールトリシクロデカンジアクリレート100重量部に対して、開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を混合して、吸引瓶に仕込み、真空脱気を行い、液状重合性組成物を得た。
この液状重合性組成物を一対の青板ガラスにガスケットを挟み構成された成形型に注入し、オーブン中で加熱処理し(60℃で12時間、80℃で5時間、100℃で4時間、120℃で2時間)重合を行い、厚み2.5mmの樹脂成形体を得た。
得られた樹脂成形体は、重合硬化中及び脱型中にクラックは発生しなかったが、著しいヒケが発生し、良好な外観が得られなかった。また、ヘイズを測定したところ77.3%であった。本比較例の重合性組成物の主要な原料組成及び評価結果を表4に示す。
【0074】
(比較例11)
紫外線照射時間が20秒である以外は、実施例10と同様に行った。
得られた樹脂成形体は、紫外線照射後の重合転化率は38%であり、クラックは発生しなかったが、著しいヒケが発生し、良好な外観が得られなかった。また、ヘイズを測定したところ35.6%であった。本比較例の重合性組成物の主要な原料組成及び評価結果を表4に示す。
【0075】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明で得られる樹脂成形体は、種々の光学材料に有利に利用できる。例えば、カメラレンズ、眼鏡用レンズ、マイクロレンズなどの各種レンズ、更には機能性フィルム・シート、反射防止膜、光学多層膜など各種光学フィルム・シート・コーティング用途に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型に多官能(メタ)アクリルモノマーを注入し、前記多官能(メタ)アクリルモノマーに対して、重合転化率が1〜10%となるまで放射エネルギー線を照射して前記多官能(メタ)アクリルモノマーの一部を重合させる第1工程と、
前記第1工程の後、重合させた前記多官能(メタ)アクリルモノマーを前記成形型内に保持した状態で、重合させた前記多官能(メタ)アクリルモノマーを加熱して重合転化率が60%以上になるまで前記多官能(メタ)アクリルモノマーの残部をさらに重合させる第2工程とを有することを特徴とする樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
前記多官能(メタ)アクリルモノマーがペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項3】
前記第1工程が、前記成形型内の前記多官能(メタ)アクリルモノマーに無機微粒子を加える工程を有することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂成形体の製造方法。

【公開番号】特開2011−11541(P2011−11541A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119883(P2010−119883)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】