説明

樹脂成形品の成形方法

【課題】結晶性高分子樹脂を用い、その結晶化度を向上させる前記の方法を容易かつ確実に実現することができる樹脂成形品の成形方法を提供する。
【解決手段】成形型11内において、温度が融点以下、結晶化温度以上である結晶性高分子樹脂材A’2,A’3にねじり力を加えることにより、該樹脂材A’2,A’3を、臨界伸長ひずみ速度以上のひずみ速度で伸長させ、配向融液状態を経て結晶化させるように成形する。この際、前記ねじり力と共に、該ねじり力の回転軸に略平行な方向に沿った引張り力または圧縮力の少なくとも一方を加えることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用部品等の樹脂成形品、特に結晶性高分子樹脂を用いた成形品の成形方法に関し、樹脂成形品の成形技術の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成形品の材料として、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、或いはポリ塩化ビニルなどの所謂汎用プラスチックは、安価であるとともに成形性に優れているなどの理由で、各種の分野で広く用いられているところであるが、自動車用部品や機械用部品等の工業製品用の材料としては、十分な機械的強度や耐久性等を得られないことがある。
【0003】
そのため、これらの特性が要求される工業製品用材料としては、ポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート、或いはポリアミドなどのなどの所謂エンジニアリングプラスチックが好適に用いられるが、エンジニアリングプラスチックは高価であるため、材料コストが高騰してしまう欠点がある。
【0004】
このような実情に対処するものとして、特許文献1には、結晶性高分子樹脂融液の成形時における結晶化度を大幅に向上させることにより、ポリプロピレン等の汎用プラスチック材を用いながら、エンジニアリングプラスチックに相当する機械的強度や耐熱性を実現する発明が開示されている。
【0005】
この発明は、結晶性高分子樹脂の融液を、融点以下、結晶化温度以上の状態、換言すれば過冷却状態で、臨界伸長ひずみ速度以上のひずみ速度で所定方向に伸長させることを特徴とするものである。このようにして伸長された融液は、高分子鎖が引き伸ばされて平行に揃えられた配向融液となると共に、結晶化の基点となる核が融液内に多数形成され、その後、短時間で且つ極めて高い割合で結晶化が起こるため、機械的強度や耐熱性に優れた成形品が得られることが期待される。
【0006】
ここで、前記臨界伸長ひずみ速度とは、過冷却状態の融液を伸長させて、その伸長方向のひずみ速度を上げたときに、結晶サイズが不連続的に小さくなるときの速度であり、この速度以上で伸長させることにより、従来の方法で結晶化させた場合に比べて、結晶化度が大幅に向上するのである。
【0007】
そして、前記特許文献1には、臨界速度以上の伸長ひずみ速度を実現するための方法として、上下の板の間にディスク状の高分子樹脂融液のサンプルを挟み、これを過冷却状態に保持して、一方の板を他方の板の方へ一定速度で移動させることにより押しつぶす方法、ダイの吐出口から急冷却しながら高分子樹脂融液を高速で吐出する方法、一対の引き抜きローラにより高分子樹脂融液を急冷却しながらダイから引き抜く方法などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開WO2008/108251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、前記特許文献1に記載された上下の板で高分子樹脂融液のサンプルを挟む方法では、予めサンプルを作成する必要があると共に、周囲が不規則な形状となるため、周辺部を機械的に成形するなどの他の工程がさらに必要となる。
【0010】
また、ダイから高分子樹脂融液を吐出する方法も、一定断面形状の長尺物が得られるだけであり、さらに、一対のローラによって高分子樹脂融液を引き抜く方法も、フィルム状のものが得られるだけで、これを積層して製品を得ようとすると再度樹脂を溶融しなければならず、結晶化によって向上させた強度が低下することになる。
【0011】
これに対して、成形型を用いる通常の射出成形方法は、前記各方法に比べて製品形状の自由度は高いが、射出時にせん断ひずみが発生するだけで、成形型内に高速で射出しても臨界伸長ひずみ速度を得ることはできない。
【0012】
以上の問題に鑑みて、成形型を用いつつ、高分子樹脂融液に臨界伸長ひずみ速度以上の速度で伸長ひずみを生じさせるように成形する方法として、成形型を構成する可動型と固定型とで囲まれるキャビティ内に発泡剤を含有する高分子樹脂融液を射出して充填した後、該融液が過冷却状態であるときに、可動型を固定型から離間する方向へ高速で移動(以下、「コアバック」ともいう。)させて、高分子樹脂材を発泡させながら成形することで、該高分子樹脂材をコアバック方向に高速で伸長させることが考えられる。
【0013】
しかしながら、この場合、非常に大きなコアバック速度を得るためには、サーボバルブ等の非常に高価な装置が必要となる欠点がある。また、コアバックの立ち上がり速度が不足したり、コアバック中の可動型にキャビティ内の高分子樹脂材が十分に追従できなかったりすると、臨界伸長ひずみ速度以上の伸長ひずみを確実に実現できなくなる。
【0014】
また、高分子樹脂材をプレス成形する場合において、高速でプレスを行うことにより、樹脂材の一部をプレス方向に臨界伸長ひずみ速度以上の速度で伸長させることも考えられるが、この場合も、非常に大きなプレス速度を得るための高価な装置の使用が不可欠である。また、プレス速度が不足すると、臨界伸長ひずみ速度以上の伸長ひずみを確実に実現できなくなる。
【0015】
そこで、本発明は、結晶性高分子樹脂を用い、その結晶化度を向上させる前記の方法を容易かつ確実に実現することができる樹脂成形品の成形方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するため、本発明に係る樹脂成形品の成形方法は、次のように構成したことを特徴とする。
【0017】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、成形型内において、温度が融点以下、結晶化温度以上である結晶性高分子樹脂材にねじり力を加えることにより、該樹脂材を、臨界伸長ひずみ速度以上のひずみ速度で伸長させ、配向融液状態を経て結晶化させるように成形することを特徴とする。
【0018】
次に、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記樹脂材を臨界伸長ひずみ速度以上のひずみ速度で伸長させる際、前記ねじり力と共に、該ねじり力の回転軸に略平行な方向に沿った引張り力または圧縮力の少なくとも一方を加えることを特徴とする。
【0019】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の発明において、前記樹脂材は汎用プラスチックであることを特徴とする。
【0020】
さらに、請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載の発明において、前記汎用プラスチックはポリプロピレンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明によれば、過冷却状態(融点以下、結晶化温度以上の状態)の結晶性高分子樹脂材が、成形型内で加えられるねじり力により臨界伸長ひずみ速度以上のひずみ速度で伸長することで、絡み合っていた高分子鎖が引き伸ばされて平行に揃えられた配向融液となると共に、結晶化の基点となる核が融液内に多数形成され、その後、極めて短時間で且つ高い割合でナノ結晶が形成されるため、結晶化度が非常に高い樹脂成形品を得ることができる。
【0022】
また、請求項1に記載の発明において、結晶性高分子樹脂材の臨界伸長ひずみ速度以上の伸長ひずみを実現するために必要なねじり力は、安価なサーボモータ等を用いることで比較的容易かつ確実に得ることができる。すなわち、樹脂材に並進方向の力のみを加える場合のようにサーボバルブ等の高価な装置を必要としたり速度が不足したりすることを回避しやすいため、臨界伸長ひずみ速度以上の伸長ひずみ、ひいては高結晶化度での成形を容易かつ確実に実現することができる。
【0023】
さらに、請求項2に記載の発明によれば、結晶性高分子樹脂材を臨界伸長ひずみ速度以上のひずみ速度で伸長させる際、前記ねじり力に加えて、該ねじり力の回転軸に略平行な方向に沿った引張り力または圧縮力の少なくとも一方が用いられるため、ねじり力による伸長方向だけでなく引張り力または圧縮力による伸長方向にも樹脂材を伸長させることができる。そのため、該樹脂材の伸長ひずみ速度を一層高めることができ、該樹脂材の結晶化度をさらに向上させることができる。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、前記樹脂材として、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等の結晶性の汎用プラスチックが用いられるため、成形品を安価に製造することができる。
【0025】
さらに、請求項4に記載の発明によれば、前記汎用プラスチックとして広く用いられているポリプロピレンが採用されるため、価格面及び入手面でさらに有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施形態に係る成形方法で使用する成形装置の構成図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1に示す装置の射出工程が完了した状態を示す図である。
【図4】同じく結晶化工程の状態を示す図である。
【図5】第2の実施形態に係る成形方法で使用する成形装置の構成図である。
【図6】図5に示す装置の結晶化工程の状態を示す図である。
【図7】第3の実施形態に係る成形方法で使用する成形装置の構成図である。
【図8】図7に示す装置でプレスした状態を示す図である。
【図9】第4の実施形態に係る成形方法で使用する成形装置の構成図である。
【図10】図9に示す装置の結晶化工程の状態を示す図である。
【図11】第5の実施形態に係る成形方法で使用する成形装置の構成図である。
【図12】図11のB−B線断面図である。
【図13】図11に示す装置の射出工程が完了した状態を示す図である。
【図14】図11に示す装置の第1のコアバック工程が完了した状態を示す図である。
【図15】図11に示す装置の第1の結晶化工程の状態を示す図である。
【図16】図11に示す装置の第2のコアバック工程が完了した状態を示す図である。
【図17】図11に示す装置の第2の結晶化工程の状態を示す図である。
【図18】第6の実施形態に係る成形方法で使用する成形装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0028】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る成形方法で樹脂成形品を成形するために使用される成形装置10を示す。この成形装置10は、第1の型12と第2の型13とを有する成形型11と、第1の型12と第2の型13とで囲まれたキャビティ15に樹脂の融液を射出する射出装置16とを有する。
【0029】
成形型11の第1の型12には、前記キャビティ15を構成する面すなわち成形面12aと外部への露出面12bとに通じる射出通路18が設けられており、該射出通路18を通して、射出装置16から射出された融液がキャビティ15に導かれるようになっている。
【0030】
一方、第2の型13の成形面は、第1の型12の成形面12aとの対向面13aと、該対向面13aの周縁から第1の型12の成形面12aの周縁に向かって延びる筒状内周面13bとを有する。該筒状内周面13bには、該筒状内周面13bの軸方向に延びる複数の突条部24が設けられている。図2に示すように、該突条部24は筒状内周面13bの全周に亘って隙間無く列設されており、各突条部24は例えば断面三角形状に形成されている。このようにして突条部24が設けられていることにより筒状内周面13bは全体として凹凸面となっているため、該筒状内周面13bに、後述のように過冷却状態となることで粘性が大きくなったキャビティ15内の樹脂材が密着しやすいようになっている。
【0031】
ただし、突条部24の延出方向、配置及び断面形状は上記構成に限定されるものでなく、例えば、突条部24は、筒状内周面13bの軸方向に対して傾斜した方向に延設されてもよい。また、筒状内周面13bを凹凸面とするための構成として、突条部24を設ける構成以外の構成を採用してもよく、例えば、筒状内周面13bに複数の溝を形成したり、シボ加工を施したり、ブラスト処理を施したりすることにより、筒状内周面13bに凹凸を形成するようにしてもよい。
【0032】
図1に戻って、第1の型12の成形面12aと、第2の型13の前記対向面13aとの間には、円盤状の回転体20が介装されており、これにより、キャビティ15は、該回転体20を囲むリング状の空間となっている。
【0033】
回転体20の中央部には、例えば図示しないモータ等の駆動源に駆動連結された回転軸28の先端部が連結されており、前記駆動源により回転軸28が回転駆動されると、該回転軸28と共に、該回転軸28を中心として回転体20が回転駆動されるようになっている。なお、本実施形態において、回転軸28は、第1の型13を貫通して設けられているが、第2の型12を貫通して設けられるようにしてもよい。
【0034】
回転体20の外周面には、該回転体20の厚み方向に延びる複数の突条部22が設けられている。図2に示すように、該突条部22は回転体20の外周面の全周に亘って隙間無く列設されており、各突条部22は例えば断面三角形状に形成されている。これにより、回転体20の外周面も、前記筒状内周面13bと同様の凹凸面となっているため、回転体20の外周面に、過冷却状態の樹脂材が密着しやすいようになっている。
【0035】
ただし、回転体20の外周面についても、前記筒状内周面13bと同様、突条部22の構成には種々の変更を加えることができ、また、突条部22に代えて、溝を形成したり、シボ加工を施したり、ブラスト処理を施したりすることにより、回転体20の外周面に凹凸を形成してもよい。
【0036】
図1に戻って、射出装置16は、シリンダ16aと、該シリンダ16aの一端部において該シリンダ16a内に樹脂材料を供給するホッパ16bと、供給された樹脂材料を加熱溶融し、該樹脂材料の融液をシリンダ16aの他端部に設けられた吐出口16cに向けて圧送するスクリュー16dとを有する。シリンダ16aは、成形型11の第1の型12に設けられた前記射出通路18の一端に吐出口16cが接続されるように、第1の型12に取り付けられている。
【0037】
樹脂材料の種類は、結晶性高分子樹脂であれば特に限定されないが、価格面および入手面において、好ましくは、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等の結晶性の汎用プラスチックが用いられ、それらの中でもポリプロピレンが特に好適に用いられる。
【0038】
また、樹脂材料には、回転体20の外周面と前記筒状内周面13bとの間の間隔以上の長さを有する主鎖を備えた超高分子量成分を添加することが好ましい。詳細については後述するが、この超高分子量成分の添加により、該成分を起点にして後述の結晶化が起こりやすくなる。あるいは、超高分子量成分の添加に代えて、高分子の末端同士を引き合わせるための官能基(例えば、カルボキシル基と水酸基)を加えることで、互いに引き合わされた複数の高分子からなる擬似的な超高分子量成分を形成してもよく、これによっても同様の効果を得ることができる。
【0039】
次に、上記の成形装置10を用いた樹脂成形品の成形方法について説明する。
【0040】
図3に示すように、先ず、図示しない成形型開閉装置により成形型11を型締めする。また、これと並行して、射出装置16のホッパ16bに、固形の結晶性高分子樹脂材料Aを投入し、シリンダ16a内において、スクリュー16dを作動させて、樹脂材料Aを融点以上まで加熱して溶融させることで、融液A’を得る。
【0041】
次に、射出工程として、射出装置16により、前記融液A’をキャビティ15内に射出して充填させる。
【0042】
続いて、キャビティ15内の融液A’が冷却されて、融点以下、結晶化温度以上まで温度が低下したとき、すなわち、融液A’が過冷却状態となるタイミングで、図4に示すように、結晶化工程として、図示しない駆動源により回転軸28と共に回転体20を高速で回転駆動する。これにより、キャビティ15内の融液A’に、回転体20の回転方向に沿ったねじり力が加えられ、該回転方向に沿った伸長ひずみが生じる。
【0043】
この回転体20の回転速度は、融液A’の伸長ひずみ速度が臨界伸長ひずみ速度以上となる速度に設定されている。したがって、この回転体20の回転により、融液A’は臨界伸長ひずみ速度以上の速度で伸長し、絡み合っていた高分子鎖が引き伸ばされて平行に揃えられた配向融液となると共に、結晶化の基点となる核が融液A’内に多数形成され、その後、短時間で且つ極めて高い割合で結晶化が起こる。なお、この結晶化は極めて短時間で起こるため、回転体20の回転駆動時間は極めて短くてよい。
【0044】
また、上述のように、予め樹脂材料Aに、超高分子量成分を添加するか、又は擬似的な超高分子量成分を形成するための官能基を添加しておけば、該超高分子量成分または擬似的な超高分子量成分の主鎖の一端が回転体20の外周面に拘束され、他端が前記筒状内周面13bに拘束されることで、該成分が回転体20の回転に追従して伸長しやすくなるため、該成分を起点にして、融液A’全体の伸長ひずみが促進される。
【0045】
結晶化工程の後、成形型11が所定温度まで冷却されると型開きを行い、これにより、機械的強度および耐熱性等に優れた高結晶化度の樹脂成形品を得ることができる。
【0046】
この実施形態によれば、結晶性高分子樹脂材の臨界伸長ひずみ速度以上の伸長ひずみを実現するために、回転体20の高速回転による生じるねじり力が用いられ、所要のねじり力を加えるために必要な回転体20の回転速度は、安価なサーボモータ等を用いることで比較的容易かつ確実に得ることができる。したがって、本実施形態によれば、樹脂材の臨界伸長ひずみ速度以上の伸長ひずみ、ひいては高結晶化度での成形を容易かつ確実に実現することができる。
【0047】
また、上記の射出工程と結晶化工程とは単一の成形装置10を用いて連続して実行されるため、高結晶化度の樹脂成形品を効率的に生産することができる。
【0048】
[第2の実施形態]
図5及び図6を参照しながら、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。また、図5及び図6において、第1の実施形態と同様の機能を有する部材には同符号を付してある。
【0049】
図5は、第2の実施形態に係る成形方法で樹脂成形品を成形するために使用される成形装置30を示す。この成形装置30は、第1の型12と第2の型13とを有する成形型11と、第1の型12と第2の型13とで囲まれたキャビティ15に樹脂の融液を射出する射出装置16とを有する。
【0050】
第1の型12の成形面12aには、例えば円形の収容凹部32が設けられ、該収容凹部32には、該収容凹部32の開放端部を塞ぐようにして、例えば円盤状のスライド部材34が収容されている。該スライド部材34には、収容凹部32の底面部を貫通する支持軸36の一端が連結されている。該支持軸36の他端には、スライド部材34を支持軸36と共に軸方向にスライド移動させるための図示しない駆動源が連結されている。
【0051】
一方、第2の型13には、収容凹部32に対向する位置において例えば円形の貫通穴40が設けられ、該貫通穴40には回転突出ピン42が嵌め込まれている。回転突出ピン42の基端部は、該回転突出ピン42を軸方向にスライド移動させながら該軸方向を中心として回転させるための図示しない駆動源に連結されており、回転突出ピン42の先端部は、軸方向のスライド移動により前記対向面13aから第1の型12側に出没可能となっている。
【0052】
射出装置16の構成、及び使用する樹脂材料は、第1の実施形態と同様である。
【0053】
また、樹脂材料には、収容凹部32の半径と同程度か又はそれ以上の長さを有する主鎖を備えた超高分子量成分を添加することが好ましく、これにより、後述の結晶化が起こりやすくなる。あるいは、超高分子量成分の添加に代えて、高分子の末端同士を引き合わせるための官能基(例えば、カルボキシル基と水酸基)を加えることで、互いに引き合わされた複数の高分子からなる擬似的な超高分子量成分を形成してもよく、これによっても同様の効果を得ることができる。
【0054】
次に、上記の成形装置30を用いた樹脂成形品の成形方法について説明する。
【0055】
図5に示すように、先ず、図示しない成形型開閉装置により成形型11を型締めする。このとき、スライド部材34のキャビティ15側の表面は第1の型12の成形面12aと面一となっており、回転突出ピン42の先端面は前記対向面13aと面一となっている。
【0056】
また、これと並行して、射出装置16のホッパ16bに、固形の結晶性高分子樹脂材料Aを投入し、シリンダ16a内において、スクリュー16dを作動させて、樹脂材料Aを融点以上まで加熱して溶融させることで、融液A’を得る。
【0057】
次に、射出工程として、射出装置16により、前記融液A’をキャビティ15内に射出して充填させる。
【0058】
続いて、キャビティ15内の融液A’が冷却されて、融点以下、結晶化温度以上まで温度が低下したとき、すなわち、融液A’が過冷却状態となるタイミングで、図6に示すように、結晶化工程として、図示しない前記駆動源によりスライド部材34を収容凹部32の底面に向かって該底面に当接するまでスライド移動させつつ、図示しない別の前記駆動源により回転突出ピン42を高速で回転させながら前記対向面13aから第1の型12側に突出するようにスライド移動させる。このとき、スライド部材34及び回転突出ピン42の各スライド移動は、スライド方向における両部材34,42の間隔がスライド移動開始時からスライド移動終了時にかけて次第に縮小されるような速度およびタイミングで行う。
【0059】
この結晶化工程において、回転突出ピン42の側面付近の融液部分A’2には、該回転突出ピン42の回転方向に沿ったねじり力と共に、回転突出ピン42の軸方向に略平行な方向に沿った引張り力が加えられ、これら両方向への伸長ひずみが生じる。
【0060】
一方、回転突出ピン42の先端面とスライド部材34との間の融液部分A’3には、回転突出ピン42の回転方向に沿ったねじり力と共に、回転突出ピン42の軸方向に略平行な方向に沿った圧縮力が加えられ、回転突出ピン42の回転方向およびせん断方向への伸長ひずみが生じる。
【0061】
回転突出ピン42の回転速度と、回転突出ピン42及びスライド部材34のスライド移動速度とは、融液A’の伸長ひずみ速度が臨界伸長ひずみ速度以上となる速度に設定されている。ただし、前記融液部分A’2,A’3の伸長ひずみをもたらす力は、主として前記ねじり力であり、前記引張り力または前記圧縮力は補助的な役割を果たすものであるため、特に回転速度を高速にすることが重要である。
【0062】
かかる結晶化工程により、前記融液部分A’2,A’3は臨界伸長ひずみ速度以上の速度で伸長し、絡み合っていた高分子鎖が引き伸ばされて平行に揃えられた配向融液となると共に、結晶化の基点となる核が前記融液部分A’2,A’3内に多数形成され、その後、短時間で且つ極めて高い割合で結晶化が起こる。
【0063】
また、上述のように、予め樹脂材料Aに、超高分子量成分を添加するか、又は擬似的な超高分子量成分を形成するための官能基を添加しておけば、該超高分子量成分または擬似的な超高分子量成分の主鎖の一端が回転突出ピン42に拘束され、他端が収容凹部32の内壁面またはスライド部材34の表面に拘束されることで、該成分が回転突出ピン42の回転およびスライド移動に追従して伸長しやすくなるため、該成分を起点にして、前記融液部分A’2,A’3全体の伸長ひずみが促進される。
【0064】
結晶化工程の後、成形型11が所定温度まで冷却されると型開きを行い、これにより、上記の結晶化により部分的に機械的強度および耐熱性等が高められた樹脂成形品を得ることができる。
【0065】
この実施形態によれば、結晶性高分子樹脂材の臨界伸長ひずみ速度以上の伸長ひずみを実現するために、主として回転突出ピン42の高速回転による生じるねじり力が用いられ、所要のねじり力を加えるために必要な回転突出ピン42の回転速度は、安価なサーボモータ等を用いることで比較的容易かつ確実に得ることができる。したがって、第1の実施形態と同様、樹脂材の臨界伸長ひずみ速度以上の伸長ひずみ、ひいては高結晶化度での成形を容易かつ確実に実現することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、結晶性高分子樹脂材を臨界伸長ひずみ速度以上のひずみ速度で伸長させる際、前記ねじり力に加えて、該ねじり力の回転軸に略平行な方向に沿った引張り力および圧縮力が用いられるため、ねじり力による伸長方向(回転方向)だけでなく引張り力による伸長方向(軸方向に略平行な方向)および圧縮力による伸長方向(せん断方向)にも樹脂材を伸長させることができる。そのため、該樹脂材の伸長ひずみ速度を一層高めることができ、該樹脂材の結晶化度をさらに向上させることができる。
【0067】
さらに、上記の射出工程と結晶化工程とは単一の成形装置30を用いて連続して実行されるため、部分的に結晶化度が高められた樹脂成形品を効率的に生産することができる。
【0068】
なお、第2の実施形態において、回転突出ピン42の先端面および側面、スライド部材34の表面、並びに収容凹部32の内壁面のうち少なくとも1つを、過冷却状態の樹脂材が密着しやすいような凹凸面としてもよく、これにより、該樹脂材が回転突出ピン42の回転およびスライド移動に追従して伸長しやすくなる。この場合、凹凸面を形成するための構成は限定されるものでなく、例えば、第1の実施形態と同様に複数の突条部を設ける構成、或いは、複数の溝部を形成する構成、シボ加工を施す構成、ブラスト処理を施す構成などが採用され得る。
【0069】
[第3の実施形態]
図7及び図8を参照しながら、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、第3の実施形態において、第1及び第2の実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0070】
図7は、第3の実施形態に係る成形方法で樹脂成形品を成形するために使用される成形装置50を示す。この成形装置50は、固定型52と可動型53とを有する成形型51を有する。
【0071】
固定型52の成形面52aには、例えば円形の収容凹部56が設けられ、該収容凹部56には、該収容凹部56の開放端部を塞ぐようにして、例えば円盤状のスライド部材57が収容されている。該スライド部材57には、収容凹部56の底面部を貫通する支持軸58の一端が連結されている。該支持軸58の他端には、スライド部材57を支持軸58と共に軸方向にスライド移動させるための図示しない駆動源が連結されている。また、固定型52の成形面52aには、収容凹部56とは別に複数の凹部54,55が設けられている。
【0072】
一方、可動型53には、前記収容凹部56に対向する位置において例えば円形の貫通穴62が設けられ、該貫通穴62には回転突出ピン63が嵌め込まれている。回転突出ピン63の基端部は、支持軸64を介して、該回転突出ピン63を軸方向にスライド移動させながら該軸方向を中心として回転させるための図示しない駆動源に連結されており、回転突出ピン63の先端部は、軸方向のスライド移動により成形面53aから固定型52側に出没可能となっている。また、可動型53の成形面53aには、固定型52の前記複数の凹部54,55に対向する各位置においてそれぞれ凸部60,61が設けられており、可動型53を型締めしたときに、該凸部60,61と固定型52の凹部54,55とが互いに噛み合うようになっている(図8参照)。
【0073】
次に、上記の成形装置50を用いた樹脂成形品の成形方法について説明する。
【0074】
図7に示すように、先ず、固定型52の成形面52aにシート状の樹脂材料Bを載置する。このとき、スライド部材57の可動型53側の表面は固定型52の成形面52aと面一となっており、回転突出ピン63の先端面は可動型53の成形面53aと面一となっている。
【0075】
樹脂材料Bとしては、第1の実施形態と同様の樹脂材料を使用する。また、該樹脂材料には、樹脂シートBの厚みと同程度か又はそれ以上の長さを有する主鎖を備えた超高分子量成分を添加することが好ましく、これにより、後述の結晶化が起こりやすくなる。あるいは、超高分子量成分の添加に代えて、高分子の末端同士を引き合わせるための官能基(例えば、カルボキシル基と水酸基)を加えることで、互いに引き合わされた複数の高分子からなる擬似的な超高分子量成分を形成してもよく、これによっても同様の効果を得ることができる。
【0076】
次に、図示しないヒータにより、樹脂材料Bを融点以上の温度になるまで加熱する。ただし、シート状の樹脂材料Bを予め加熱した後に固定型52の成形面52aに載置するようにしてもよい。
【0077】
続いて、このように加熱してなる樹脂材料B’が冷却され、融点以下、結晶化温度以上まで温度が低下したとき、すなわち、樹脂材料B’が過冷却状態となるタイミングで、図8に示すように、可動型53を型締めしてプレス成形する。
【0078】
また、該型締めと同時に、図示しない前記駆動源によりスライド部材57を収容凹部56の底面に向かって該底面に当接するまでスライド移動させつつ、図示しない別の前記駆動源により回転突出ピン63を高速で回転させながら成形面53aから固定型52側に突出するようにスライド移動させる。このとき、スライド部材57及び回転突出ピン63の各スライド移動は、スライド方向における両部材57,63の間隔がスライド移動開始時からスライド移動終了時にかけて次第に縮小されるような速度およびタイミングで行う。
【0079】
このとき、回転突出ピン63の側面付近の樹脂部分B’1には、該回転突出ピン63の回転方向に沿ったねじり力と共に、回転突出ピン63の軸方向に略平行な方向に沿った引張り力が加えられ、これら両方向への伸長ひずみが生じる。
【0080】
一方、回転突出ピン63の先端面とスライド部材57との間の樹脂部分B’2には、回転突出ピン63の回転方向に沿ったねじり力と共に、回転突出ピン63の軸方向に略平行な方向に沿った圧縮力が加えられ、回転突出ピン63の回転方向およびせん断方向への伸長ひずみが生じる。
【0081】
回転突出ピン63の回転速度と、回転突出ピン63及びスライド部材57のスライド移動速度とは、上記の樹脂部分B’1,B’2の伸長ひずみ速度が臨界伸長ひずみ速度以上となる速度に設定されている。ただし、前記樹脂部分B’1,B’2の伸長ひずみをもたらす力は、主として前記ねじり力であり、前記引張り力または前記圧縮力は補助的な役割を果たすものであるため、特に回転速度を高速にすることが重要である。
【0082】
かかる工程により、前記樹脂部分B’1,B’2は臨界伸長ひずみ速度以上の速度で伸長し、絡み合っていた高分子鎖が引き伸ばされて平行に揃えられた配向融液となると共に、結晶化の基点となる核が前記樹脂部分B’1,B’2内に多数形成され、その後、短時間で且つ極めて高い割合で結晶化が起こる。
【0083】
また、上述のように、予め樹脂材料Bに、超高分子量成分を添加するか、又は擬似的な超高分子量成分を形成するための官能基を添加しておけば、該超高分子量成分または擬似的な超高分子量成分の主鎖の一端が回転突出ピン63に拘束され、他端が収容凹部56の内壁面またはスライド部材57の表面に拘束されることで、該成分が回転突出ピン63の回転およびスライド移動に追従して伸長しやすくなるため、該成分を起点にして、前記樹脂部分B’1,B’2全体の伸長ひずみが促進される。
【0084】
プレス成形後、成形型51が所定温度まで冷却されると型開きを行い、これにより、上記の結晶化により部分的に機械的強度および耐熱性等が高められた樹脂成形品を得ることができる。
【0085】
この実施形態によれば、結晶性高分子樹脂材の臨界伸長ひずみ速度以上の伸長ひずみを実現するために、主として回転突出ピン63の高速回転による生じるねじり力が用いられ、所要のねじり力を加えるために必要な回転突出ピン63の回転速度は、安価なサーボモータ等を用いることで比較的容易かつ確実に得ることができる。したがって、第1及び第2の実施形態と同様、樹脂材の臨界伸長ひずみ速度以上の伸長ひずみ、ひいては高結晶化度での成形を容易かつ確実に実現することができる。
【0086】
また、本実施形態によれば、第2の実施形態と同様、前記ねじり力に加えて、該ねじり力の回転軸に略平行な方向に沿った引張り力および圧縮力が用いられるため、樹脂材の伸長ひずみ速度を一層高めることができ、該樹脂材の結晶化度をさらに向上させることができる。
【0087】
なお、第3の実施形態において、回転突出ピン63の先端面および側面、スライド部材57の表面、並びに収容凹部56の内壁面のうち少なくとも1つを、過冷却状態の樹脂材が密着しやすいような凹凸面としてもよく、これにより、該樹脂材が回転突出ピン63の回転およびスライド移動に追従して伸長しやすくなる。この場合、凹凸面を形成するための構成は限定されるものでなく、例えば、第1の実施形態と同様に複数の突条部を設ける構成、或いは、複数の溝部を形成する構成、シボ加工を施す構成、ブラスト処理を施す構成などが採用され得る。
【0088】
[第4の実施形態]
図9及び図10を参照しながら、本発明の第4の実施形態について説明する。なお、第4の実施形態において、第1〜第3の実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0089】
図9は、第4の実施形態に係る成形方法で樹脂成形品を成形するために使用される成形装置70を示す。この成形装置70は、例えば射出成形により成形された樹脂成形品Cを後加工するために使用されるものであり、固定型72と可動型73とを有する成形型71を有する。
【0090】
固定型72の成形面72aには、例えば円形の収容凹部76が設けられ、該収容凹部76には、該収容凹部76の開放端部を塞ぐようにして、例えば円盤状のスライド部材77が収容されている。該スライド部材77には、収容凹部76の底面部を貫通する支持軸78の一端が連結されている。該支持軸78の他端には、スライド部材77を支持軸78と共に軸方向にスライド移動させるための図示しない駆動源が連結されている。
【0091】
一方、可動型73には、前記収容凹部76に対向する位置において例えば円形の貫通穴80が設けられ、該貫通穴80には回転突出ピン82が嵌め込まれている。回転突出ピン82の基端部は、支持軸82を介して、該回転突出ピン82を軸方向にスライド移動させながら該軸方向を中心として回転させるための図示しない駆動源に連結されており、回転突出ピン82の先端部は、軸方向のスライド移動により成形面73aから固定型72側に出没可能となっている。
【0092】
次に、上記の成形装置70を用いた樹脂成形品の成形方法について説明する。
【0093】
図9に示すように、先ず、例えば射出成形により予め成形された例えばシート状の樹脂成形品Cを固定型72の成形面72aに載置する。このとき、スライド部材77の可動型73側の表面は固定型72の成形面72aと面一となっており、回転突出ピン82の先端面は可動型73の成形面73aと面一となっている。
【0094】
樹脂成形品Cの材料としては、第1の実施形態と同様の樹脂材料を使用する。また、該樹脂材料には、樹脂成形品Cの厚みと同程度か又はそれ以上の長さを有する主鎖を備えた超高分子量成分を添加することが好ましく、これにより、後述の結晶化が起こりやすくなる。あるいは、超高分子量成分の添加に代えて、高分子の末端同士を引き合わせるための官能基(例えば、カルボキシル基と水酸基)を加えることで、互いに引き合わされた複数の高分子からなる擬似的な超高分子量成分を形成してもよく、これによっても同様の効果を得ることができる。
【0095】
次に、図示しないヒータにより、少なくともスライド部材77の上方部分において樹脂成形品Cを融点以上の温度になるまで加熱する。
【0096】
続いて、樹脂成形品Cの前記加熱部分C’1が冷却され、融点以下、結晶化温度以上まで温度が低下したとき、すなわち、樹脂成形品Cの前記加熱部分C’1が過冷却状態となるタイミングで、固定型72の成形面72aと可動型73の成形面73aとで樹脂成形品Cの前記加熱部分C’1を挟み込むように可動型73を型締めする。
【0097】
また、該型締めと同時に、図示しない前記駆動源によりスライド部材77を収容凹部76の底面に向かって該底面に当接するまでスライド移動させつつ、図示しない別の前記駆動源により回転突出ピン82を高速で回転させながら成形面73aから固定型72側に突出するようにスライド移動させる。このとき、スライド部材77及び回転突出ピン82の各スライド移動は、スライド方向における両部材77,82の間隔がスライド移動開始時からスライド移動終了時にかけて次第に縮小されるような速度およびタイミングで行う。
【0098】
このとき、回転突出ピン82の側面付近の樹脂部分C’2には、該回転突出ピン82の回転方向に沿ったねじり力と共に、回転突出ピン82の軸方向に略平行な方向に沿った引張り力が加えられ、これら両方向への伸長ひずみが生じる。
【0099】
一方、回転突出ピン82の先端面とスライド部材77との間の樹脂部分C’3には、回転突出ピン82の回転方向に沿ったねじり力と共に、回転突出ピン82の軸方向に略平行な方向に沿った圧縮力が加えられ、回転突出ピン82の回転方向およびせん断方向への伸長ひずみが生じる。
【0100】
回転突出ピン82の回転速度と、回転突出ピン82及びスライド部材77のスライド移動速度とは、上記の樹脂部分C’2,C’3の伸長ひずみ速度が臨界伸長ひずみ速度以上となる速度に設定されている。ただし、前記樹脂部分C’2,C’3の伸長ひずみをもたらす力は、主として前記ねじり力であり、前記引張り力または前記圧縮力は補助的な役割を果たすものであるため、特に回転速度を高速にすることが重要である。
【0101】
かかる工程により、前記樹脂部分C’2,C’3は臨界伸長ひずみ速度以上の速度で伸長し、絡み合っていた高分子鎖が引き伸ばされて平行に揃えられた配向融液となると共に、結晶化の基点となる核が前記樹脂部分C’2,C’3内に多数形成され、その後、短時間で且つ極めて高い割合で結晶化が起こる。
【0102】
また、上述のように、予め樹脂材料に、超高分子量成分を添加するか、又は擬似的な超高分子量成分を形成するための官能基を添加しておけば、該超高分子量成分または擬似的な超高分子量成分の主鎖の一端が回転突出ピン82に拘束され、他端が収容凹部76の内壁面またはスライド部材77の表面に拘束されることで、該成分が回転突出ピン82の回転およびスライド移動に追従して伸長しやすくなるため、該成分を起点にして、前記樹脂部分C’2,C’3全体の伸長ひずみが促進される。
【0103】
プレス成形後、成形型71が所定温度まで冷却されると型開きを行い、これにより、上記の結晶化により部分的に機械的強度および耐熱性等が高められた樹脂成形品Cを得ることができる。
【0104】
この実施形態によれば、結晶性高分子樹脂材の臨界伸長ひずみ速度以上の伸長ひずみを実現するために、主として回転突出ピン82の高速回転による生じるねじり力が用いられ、所要のねじり力を加えるために必要な回転突出ピン82の回転速度は、安価なサーボモータ等を用いることで比較的容易かつ確実に得ることができる。したがって、第1〜第3の実施形態と同様、樹脂材の臨界伸長ひずみ速度以上の伸長ひずみ、ひいては高結晶化度での成形を容易かつ確実に実現することができる。
【0105】
また、本実施形態によれば、第2及び第3の実施形態と同様、前記ねじり力に加えて、該ねじり力の回転軸に略平行な方向に沿った引張り力および圧縮力が用いられるため、樹脂材の伸長ひずみ速度を一層高めることができ、該樹脂材の結晶化度をさらに向上させることができる。
【0106】
なお、第4の実施形態において、回転突出ピン82の先端面および側面、スライド部材77の表面、並びに収容凹部76の内壁面のうち少なくとも1つを、過冷却状態の樹脂材が密着しやすいような凹凸面としてもよく、これにより、該樹脂材が回転突出ピン82の回転およびスライド移動に追従して伸長しやすくなる。この場合、凹凸面を形成するための構成は限定されるものでなく、例えば、第1の実施形態と同様に複数の突条部を設ける構成、或いは、複数の溝部を形成する構成、シボ加工を施す構成、ブラスト処理を施す構成などが採用され得る。
【0107】
[第5の実施形態]
図11〜図17を参照しながら、本発明の第5の実施形態について説明する。なお、第5の実施形態において、第1〜第4の実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。また、図11〜図17において、第1の実施形態と同様の機能を有する部材には同符号を付してある。
【0108】
図11は、第5の実施形態に係る成形方法で樹脂成形品を成形するために使用される成形装置90を示す。この成形装置90は、固定型92と可動型93とを有する成形型91と、固定型92と可動型93とで囲まれたキャビティ95に樹脂の融液を射出する射出装置16とを有する。
【0109】
成形型91の固定型92には、前記キャビティ95を構成する面すなわち成形面92aと外部への露出面92bとに通じる射出通路98が設けられており、該射出通路98を通して、射出装置16から射出された融液がキャビティ95に導かれるようになっている。また、固定型92の成形面92aには、後述の回転体100との干渉を避けるための凹部96が設けられている。
【0110】
一方、可動型93の成形面は、固定型92の成形面92aとの対向面93aと、該対向面93aの周縁から固定型92の成形面92aの周縁に向かって延びる筒状内周面93bとを有する。該筒状内周面93bには、該筒状内周面93bの軸方向に延びる複数の突条部104が設けられている。図12に示すように、該突条部104は筒状内周面93bの全周に亘って隙間無く列設されており、各突条部104は例えば断面三角形状に形成されている。このようにして突条部104が設けられていることにより筒状内周面93bは全体として凹凸面となっているため、該筒状内周面93bに、後述のように過冷却状態となることで粘性が大きくなったキャビティ95内の樹脂材が密着しやすいようになっている。
【0111】
ただし、突条部104の延出方向、配置及び断面形状は上記構成に限定されるものでなく、例えば、突条部104は、筒状内周面93bの軸方向に対して傾斜した方向に延設されてもよい。また、筒状内周面93bを凹凸面とするための構成として、突条部104を設ける構成以外の構成を採用してもよく、例えば、筒状内周面93bに複数の溝を形成したり、シボ加工を施したり、ブラスト処理を施したりすることにより、筒状内周面93bに凹凸を形成するようにしてもよい。
【0112】
また、図11に示すように、可動型93の前記対向面93aには、円盤状の回転体100が回転可能に取り付けられており、これにより、キャビティ95は、該回転体100を囲むリング状の空間となっている。型締めした状態において、回転体100の大部分は、固定型92の前記凹部96に収容されるようになっている。
【0113】
回転体100の中央部には、例えば図示しないモータ等の駆動源に駆動連結された回転軸108の先端部が連結されており、前記駆動源により回転軸108が回転駆動されると、該回転軸108と共に、該回転軸108を中心として回転体100が回転駆動されるようになっている。なお、回転軸108は、可動型93を貫通して設けられている。
【0114】
図11に示すように、射出装置16の構成は第1の実施形態と同様である。該射出装置16のシリンダ16aは、固定型92に設けられた前記射出通路98の一端に吐出口16cが接続されるように、固定型92に取り付けられている。
【0115】
また、シリンダ16aには、該シリンダ16a内に物理発泡剤を供給する発泡剤供給ユニット120が接続されている。物理発泡剤としては、二酸化炭素または窒素が好適に用いられるが、本発明に用いられる物理発泡剤の種類はこれらに限定されるものでない。
【0116】
発泡剤供給ユニット120は、二酸化炭素または窒素等の不活性ガスを収容するボンベ122と、該ボンベ122から供給される不活性ガスを原料として公知の方法により物理発泡剤を生成する発泡剤生成装置124と、該生成装置124で生成された物理発泡剤をシリンダ16a内に供給する供給ノズル126とを備えている。この供給ノズル126からシリンダ16a内に供給された物理発泡剤は、シリンダ16a内の樹脂融液に溶解される。これにより、シリンダ16a内の樹脂融液は、物理発泡剤を含有した状態で前記成形型91のキャビティ95に射出される。
【0117】
ただし、本実施形態では、物理発泡剤に代えて、化学発泡剤を用いるようにしてもよく、この場合、化学発泡剤は、ホッパ16bを通してシリンダ16a内に供給される。
【0118】
樹脂材料としては、第1の実施形態と同様の樹脂材料Aを使用する。また、該樹脂材料には、回転体100の外周面と前記筒状内周面93bとの間の間隔以上の長さを有する主鎖を備えた超高分子量成分を添加することが好ましく、これにより、後述の結晶化が起こりやすくなる。あるいは、超高分子量成分の添加に代えて、高分子の末端同士を引き合わせるための官能基(例えば、カルボキシル基と水酸基)を加えることで、互いに引き合わされた複数の高分子からなる擬似的な超高分子量成分を形成してもよく、これによっても同様の効果を得ることができる。
【0119】
次に、上記の成形装置90を用いた樹脂成形品の成形方法について説明する。
【0120】
図11に示すように、先ず、図示しない成形型開閉装置により成形型91を型締めする。また、これと並行して、射出装置16のホッパ16bに、固形の結晶性高分子樹脂材料Aを投入し、シリンダ16a内において、スクリュー16dを作動させて、樹脂材料Aを融点以上まで加熱して溶融させることで融液A’を得るとともに、発泡剤供給ユニット120からシリンダ16a内に物理発泡剤を供給して、該物理発泡剤を前記融液A’に溶解させる。
【0121】
次に、図13に示すように、射出工程として、射出装置16により、前記融液A’をキャビティ95内に射出して充填させる。
【0122】
続いて、図14に示すように、第1のコアバック工程として、キャビティ95’内に充填された結晶性高分子樹脂の融液A’の温度が融点以下で、結晶化温度以上になるまで冷却される直前、即ち、該融液A’が過冷却状態になる直前のタイミングで、図14に示すように、図示しない成形型開閉装置を作動させて可動型93を固定型92から離間する方向へコアバックさせる。これにより、キャビティ95’の容積は増大し、キャビティ95’内の高分子樹脂は発泡しながら成形される。
【0123】
また、この第1のコアバック工程中において、キャビティ95内の融液A’がさらに冷却されて過冷却状態となるタイミングで、図15に示すように、第1の結晶化工程として、図示しない駆動源により回転軸108と共に回転体100を高速で回転駆動する。これにより、キャビティ95内の融液A’に、回転体100の回転方向に沿ったねじり力が加えられ、該回転方向に沿った伸長ひずみが生じる。
【0124】
この回転体100の回転速度は、融液A’の伸長ひずみ速度が臨界伸長ひずみ速度以上となる速度に設定されている。したがって、この回転体100の回転により、融液A’は臨界伸長ひずみ速度以上の速度で伸長し、絡み合っていた高分子鎖が引き伸ばされて平行に揃えられた配向融液となると共に、結晶化の基点となる核が融液A’内に多数形成され、その後、短時間で且つ極めて高い割合で結晶化が起こる。なお、この結晶化は極めて短時間で起こるため、回転体100の回転駆動時間は極めて短くてよい。
【0125】
また、上述のように、予め樹脂材料Aに、超高分子量成分を添加するか、又は擬似的な超高分子量成分を形成するための官能基を添加しておけば、該超高分子量成分または擬似的な超高分子量成分の主鎖の一端が回転体100の外周面に拘束され、他端が前記筒状内周面93bに拘束されることで、該成分が回転体100の回転に追従して伸長しやすくなるため、該成分を起点にして、融液A’全体の伸長ひずみが促進される。
【0126】
さらに、回転体100の回転駆動時において、キャビティ95内の融液A’には、可動型93のコアバックに伴って、該コアバック方向の引張り力が加えられるため、回転体100の回転方向への伸長ひずみだけでなく、回転体100の軸方向に略平行な方向への伸長ひずみも生じる。よって、融液A’の伸長ひずみが一層促進される。
【0127】
第1の結晶化工程の完了時においてキャビティ95内で結晶化された樹脂A’4の厚みが所定厚さに達していなければ、引き続き、図16に示すように、第2のコアバック工程を実行する。この第2のコアバック工程では、シリンダ16aからキャビティ95への射出と、可動型93のコアバックとを並行して行い、このコアバック中において、キャビティ95内の融液A’5が冷却されて過冷却状態になるタイミングで、図17に示すように、第2の結晶化工程として、再び回転体100を高速で回転駆動する。これにより、第2のコアバック工程で新たにキャビティ95内に供給された融液A’5には、回転体100の回転方向に沿ったねじり力が加えられることにより、該回転方向への伸長ひずみが生じるとともに、コアバックに伴う引張り力も加えられていることにより、コアバック方向への伸長ひずみも生じる。したがって、第1の結晶化工程と同様、融液A’5は、臨界伸長ひずみ速度以上の速度で伸長し、短時間で且つ極めて高い割合で結晶化する。
【0128】
こうした一連の工程を繰り返し行うことにより、キャビティ95内で結晶化した樹脂A’4,A’5,・・・の厚みが所定厚さに達すると、成形型91が所定温度まで冷却された後に型開きを行い、これにより、機械的強度および耐熱性等に優れた高結晶化度の樹脂成形品を得ることができる。
【0129】
この実施形態によれば、結晶性高分子樹脂材の臨界伸長ひずみ速度以上の伸長ひずみを実現するために、回転体100の高速回転による生じるねじり力が用いられ、所要のねじり力を加えるために必要な回転体100の回転速度は、安価なサーボモータ等を用いることで比較的容易かつ確実に得ることができる。したがって、第1〜第4の実施形態と同様、樹脂材の臨界伸長ひずみ速度以上の伸長ひずみ、ひいては高結晶化度での成形を容易かつ確実に実現することができる。
【0130】
また、本実施形態によれば、第2〜第4の実施形態と同様、前記ねじり力に加えて、該ねじり力の回転軸に略平行な方向に沿った引張り力が用いられるため、樹脂材の伸長ひずみ速度を一層高めることができ、該樹脂材の結晶化度をさらに向上させることができる。
【0131】
さらに、上記の射出工程、コアバック工程および結晶化工程は単一の成形装置90を用いて連続して実行されるため、高結晶化度の樹脂成形品を効率的に生産することができる。
【0132】
さらにまた、この実施形態によれば、高分子樹脂融液A’のひずみ伸長に発泡を利用しているため、発泡体でありながら結晶化度の高い成形品が得られる。そのため、軽量性、断熱性および衝撃吸収性等に優れた樹脂発泡体の特性と、機械的強度および耐熱性等に優れた高分子結晶体の特性とを兼ね備えた成形品を得ることができる。
【0133】
[第6の実施形態]
図18を参照しながら、本発明の第6の実施形態について説明する。なお、第6の実施形態において、第1〜第5の実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0134】
図18は、第6の実施形態に係る成形方法で樹脂成形品を成形するために使用される成形装置130を示す。この成形装置130は、固定型132と可動型133とを有するプレス成形用の成形型131を有する。
【0135】
可動型133は、支持軸138を介して図示しない駆動源に連結されており、該駆動源により、支持軸138の軸方向を中心として回転しながらプレス方向に移動するように駆動されるようになっている。
【0136】
固定型132の成形面132aと、可動型133の成形面133aとには、それぞれ複数の突条部134,136が設けられている。これらの突条部134,136は、例えば、断面三角形状に形成され、各成形面132a,133aの中心から放射状に延設されている。各成形面132a,133aは、突条部134,136が設けられていることにより全体として凹凸面となっているため、該成形面134,136に、後述のように過冷却状態となることで粘性が大きくなった樹脂材が密着しやすいようになっている。
【0137】
ただし、突条部134,136の延出方向、配置及び断面形状は上記構成に限定されるものでない。また、各成形面132a,133aを凹凸面とするための構成として、突条部134,136を設ける構成以外の構成を採用してもよく、例えば、成形面132a,133aに複数の溝を形成したり、シボ加工を施したり、ブラスト処理を施したりすることにより、成形面132a,133aに凹凸を形成するようにしてもよい。
【0138】
次に、上記の成形装置130を用いた樹脂成形品の成形方法について説明する。
【0139】
図18に示すように、先ず、固定型132の成形面132aにシート状の樹脂材料Dを載置する。該樹脂材料Dとしては、第1の実施形態と同様の樹脂材料を使用する。また、該樹脂材料には、該材料の厚みと同程度か又はそれ以上の長さを有する主鎖を備えた超高分子量成分を添加することが好ましく、これにより、後述の結晶化が起こりやすくなる。あるいは、超高分子量成分の添加に代えて、高分子の末端同士を引き合わせるための官能基(例えば、カルボキシル基と水酸基)を加えることで、互いに引き合わされた複数の高分子からなる擬似的な超高分子量成分を形成してもよく、これによっても同様の効果を得ることができる。
【0140】
次に、図示しないヒータにより、樹脂材料Dを融点以上の温度になるまで加熱する。ただし、シート状の樹脂材料Dを予め加熱した後に固定型132の成形面132aに載置するようにしてもよい。
【0141】
続いて、樹脂材料Dが冷却され、融点以下、結晶化温度以上まで温度が低下したとき、すなわち、樹脂材料Dが過冷却状態となるタイミングで、可動型133を回転させながら型締めしてプレス成形する。
【0142】
これにより、樹脂材料Dには、可動型133の回転方向に沿ったねじり力が加えられ、該回転方向への伸長ひずみが生じる。
【0143】
可動型133の回転速度は、樹脂材料Dの伸長ひずみ速度が臨界伸長ひずみ速度以上となる速度に設定されている。これにより、樹脂材料Dは臨界伸長ひずみ速度以上の速度で伸長し、絡み合っていた高分子鎖が引き伸ばされて平行に揃えられた配向融液となると共に、結晶化の基点となる核が樹脂材料D内に多数形成され、その後、短時間で且つ極めて高い割合で結晶化が起こる。
【0144】
また、上述のように、予め樹脂材料Dに、超高分子量成分を添加するか、又は擬似的な超高分子量成分を形成するための官能基を添加しておけば、該超高分子量成分または擬似的な超高分子量成分の主鎖の一端が固定型132の成形面132aに拘束され、他端が可動型133の成形面133aに拘束されることで、該成分が可動型133の回転に追従して伸長しやすくなるため、該成分を起点にして、樹脂材料D全体の伸長ひずみが促進される。
【0145】
プレス成形後、成形型131が所定温度まで冷却されると型開きを行い、これにより、上記の結晶化により機械的強度および耐熱性等が高められた樹脂成形品を得ることができる。
【0146】
この実施形態によれば、結晶性高分子樹脂材の臨界伸長ひずみ速度以上の伸長ひずみを実現するために、可動型133の高速回転による生じるねじり力が用いられ、所要のねじり力を加えるために必要な可動型133の回転速度は、安価なサーボモータ等を用いることで比較的容易かつ確実に得ることができる。したがって、第1〜第5の実施形態と同様、樹脂材の臨界伸長ひずみ速度以上の伸長ひずみ、ひいては高結晶化度での成形を容易かつ確実に実現することができる。
【0147】
以上、第1〜第6の実施形態に係る各成形方法は、樹脂製のあらゆる部品又は部品の一部の成形に適用することができ、具体的には、例えば、種々の自動車部品のボス部または締結座面部、あるいは、スペアタイヤカバー又はスペアタイヤパン等の成形に好適に適用される。
【0148】
また、本発明については、以上の実施形態を挙げて説明したが、本発明は、成形型内において過冷却状態の結晶性高分子樹脂材にねじり力を加えることにより、該樹脂材を臨界伸長ひずみ速度以上のひずみ速度で伸長させて結晶化させるように成形する構成であれば、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0149】
さらに、上述した実施形態以外のいかなる実施形態においても、樹脂材を臨界伸長ひずみ速度以上のひずみ速度で伸長させる際、前記ねじり力と共に、該ねじり力の回転軸に略平行な方向に沿った引張り力または圧縮力の少なくとも一方を加えるようにすることが好ましく、これにより、樹脂材を一層効果的に伸長させることができる。
【実施例】
【0150】
最後に、上記第1の実施形態に係る方法による成形を実施した実施例について説明する。
【0151】
この実施例では、株式会社日本製鋼所製、型締力220トンの成形型と射出装置とを備えた第1の実施形態に係る成形装置10と同様の装置を用い、結晶性高分子樹脂材料として、日本ポリプロ株式会社製のポリプロピレン樹脂材料(商品名:ノバテック)を用いた。
【0152】
そして、射出装置における樹脂材料の溶融温度を180℃、型温度を150℃に設定し、型締めした成形型のキャビティに、射出装置のシリンダから約134cmの前記結晶性高分子樹脂材料の融液をゆっくり射出して充填した。その後、該融液の温度が約160℃に低下するまで約10秒間待機した。この温度は、該樹脂の融点よりも低く、結晶化温度よりも高い温度であり、これにより、融液は過冷却状態となった。
【0153】
前記約10秒間の待機が完了したとき、前記回転体20を600rpmで回転させた。その後、型温度が80℃以下になるまで冷却した後、型開きし、板厚約3mmの樹脂成形品を取り出した。
【0154】
この成形品の中央部分の強度を測定したところ、該成形品が所望の高い機械的強度を備えていることを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0155】
以上のように、本発明により得られる成形品は、機械的強度や耐熱性等に優れた高分子結晶体の特性を有するため、そのような特性が要求される例えば自動車用部品等の製造技術分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0156】
10,30,50,70,90,130:成形装置、11,51,71,91,131:成形型、20,100:回転体、34,57,77:スライド部材、42,63,82:回転突出ピン、132:固定型、133:可動型。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型内において、温度が融点以下、結晶化温度以上である結晶性高分子樹脂材にねじり力を加えることにより、該樹脂材を、臨界伸長ひずみ速度以上のひずみ速度で伸長させ、配向融液状態を経て結晶化させるように成形することを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項2】
前記樹脂材を臨界伸長ひずみ速度以上のひずみ速度で伸長させる際、前記ねじり力と共に、該ねじり力の回転軸に略平行な方向に沿った引張り力または圧縮力の少なくとも一方を加えることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項3】
前記樹脂材は汎用プラスチックであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項4】
前記汎用プラスチックはポリプロピレンであることを特徴とする請求項3に記載の樹脂成形品の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−28020(P2013−28020A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164476(P2011−164476)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】