説明

樹脂成形機の金型に窒素ガスを送り込む方法および装置

【課題】 金型というものは何点かの部品によって構成されていて、当然その間には隙間を形成することになり、その隙間によって金型によって形成されているキャビティに窒素ガスを送り込もうとする場合には、濃度を上げるのに手間がかかった。 一方、濃度を上げるのを容易にしようとするには、隙間を狭くすれば良いのであるが、高額の費用を必要とした。
【解決手段】 樹脂成形機410の金型411を閉じた直後に金型411によって形成されたキャビティ410aを減圧して窒素ガスを送り込み、その後キャビティ410aに溶融した樹脂を送り込むようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形機の金型に窒素ガスを送り込む方法および装置に関する技術であって、更に詳細に述べるならば、射出成形機等の樹脂成形機は、構成している金型によってキャビティを形成しているが、このキャビティ内に空気が入っていると溶融樹脂が酸化し不良の原因となるので、一般的には窒素ガスを送り込むことによって対応しているのに対し、より確実性を確保する意味からキャビティを減圧して窒素ガスを送り込み、その後キャビティに溶融した樹脂を送り込む技術について述べたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成形機の金型に窒素ガスを送り込む方法および装置に関する技術としては、金型に窒素ガスを送り込む内容のものは数多く有った(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この場合、溶融した樹脂の流れに先行してキャビティに窒素ガスを注入することで樹脂が空気に接触するのを防ぎ、それによって樹脂の酸化を防止していた。
【特許文献1】特開2006−182000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の樹脂成形機の金型に窒素ガスを送り込む方法および装置に関しては以下に示すような課題があった。
【0005】
先ず、金型というものは何点かの部品によって構成されていて、当然その間には隙間を形成することになり、その隙間によって金型によって形成されているキャビティに窒素ガスを送り込もうとする場合には、濃度を上げるのに手間がかかった。 即ち、非常に時間を要した。
【0006】
一方、濃度を上げるのを容易にしようとするには、隙間を狭くすれば良いのであるが、高額の費用を必要とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、樹脂成形機410の金型411を閉じた直後に前記金型411によって形成されたキャビティ410aを減圧して窒素ガスを送り込み、その後前記キャビティ410aに溶融した樹脂を送り込むことを特徴とし、更には、前記金型411を閉じた時点に対して、減圧の動作を開始する時間および窒素ガスを送り込む動作を開始する時間、そして減圧の動作を持続する時間および窒素ガスを送り込む動作を持続する時間、これらの時間を制御することが可能であることを特徴とし、更には、窒素ガスは加熱することで温度を高めることが可能であることを特徴とし、更には、前記キャビティ410aを減圧して窒素ガスを送り込む時間は、0.5〜3秒であることを特徴とし、更には、前記キャビティ410aを減圧するのは、圧縮空気をベンチュリー管に送り込むことによるものであり、窒素ガスは、圧縮空気を分離膜方式またはPSA方式によって分離することによるものであり、その圧縮空気は共通のコンプレッサー120によって作り出すものであることを特徴とすることによって、上記課題を解決したのである。
【0008】
また、本発明は、樹脂成形機410の金型411によって形成されたキャビティ410aに、前記キャビティ410aの内部を減圧することが出来るように真空エジェクター510と、前記キャビティ410aの内部に常に一定量の窒素ガスを送り込むことが出来るように窒素ガスを貯留したタンク330を接続したことを特徴とし、更には、前記タンク330と前記キャビティ410aとの間に窒素ガスを流したり閉じたりすることが出来るように電磁弁380を位置させ、前記真空エジェクター510の減圧の動作を行なったり停止することが出来るように前記真空エジェクター510の圧縮空気が流れる側の上流に電磁弁220を設け、両方の前記電磁弁380、220を前記金型411の開閉の動作に合わせて作動することが出来るように樹脂成形機コントローラ412に接続したことを特徴とし、更には、前記タンク330の内部に貯留されている窒素ガスを加熱することで温度を高めることが出来るように前記タンク330の何れかの部分にヒータ340を付設し、前記タンク330の内部に貯留されている窒素ガスの温度を測定出来るように前記タンク330の何れかの部分に温度センサー350を付設し、前記ヒータ340と前記温度センサー350を樹脂に合わせて温度管理が可能であるように前記樹脂成形機コントローラ412に接続したことを特徴とし、更には、前記タンク330に圧縮空気より窒素ガスを分離することが出来るように窒素ガス発生装置310を接続し、前記真空エジェクター510は圧縮空気をベンチュリー管に送り込むことによって成されるものであり、前記窒素ガス発生装置310と前記真空エジェクター510の両者は圧縮空気を作り出すコンプレッサー120に接続していることを特徴とし、更には、前記コンプレッサー120と前記窒素ガス発生装置310と前記タンク330と前記真空エジェクター510と前記電磁弁380、220は、台710の上または箱710の中に一体に構成したことを特徴とすることによって、上記課題を解決したのである。
【発明の効果】
【0009】
以上の説明から明らかなように、本発明によって、以下に示すような効果をあげることが出来る。
【0010】
第一に、樹脂成形機の金型を閉じた直後に金型によって形成されたキャビティを減圧して窒素ガスを送り込み、その後キャビティに溶融した樹脂を送り込むことで、従来の金型の構造のままであっても金型によって形成されているキャビティに窒素ガスを送り込んだ場合に、容易に隅々まで窒素ガスが入り込んで窒素ガスの濃度を上げるのに手間がかからなくなった。
【0011】
第二に、金型を閉じた時点に対して、減圧の動作を開始する時間および窒素ガスを送り込む動作を開始する時間、そして減圧の動作を持続する時間および窒素ガスを送り込む動作を持続する時間、これらの時間を制御することが可能であることで、最短のサイクルタイムを確保した、無駄のない窒素ガスの供給が可能となった。
【0012】
第三に、窒素ガスは加熱することで温度を高めることが可能であることで、使用する個々の樹脂に対応させてキャビティを温め、必要に応じて溶融樹脂の流動性を高めることが可能となった。
【0013】
第四に、キャビティを真空にして窒素ガスを送り込む時間は、0.5〜3秒であることで、より具体的に最短のサイクルタイムを確保することで、成形を含めた全体のサイクルタイムに殆ど影響を与えないような無駄のない窒素ガスの供給が可能となった。
【0014】
第五に、キャビティを減圧するのは、圧縮空気をベンチュリー管に送り込むことによるものであり、窒素ガスは、圧縮空気を分離膜方式またはPSA方式によって分離することによるものであり、その圧縮空気は共通のコンプレッサーによって作り出すものであることで、非常に簡単で単純な装置によって、使用している機器を色々な形でそのまま流用して、安価な装置で対応が可能となった。
【0015】
第六に、コンプレッサーと窒素ガス発生装置とタンクと真空エジェクターと電磁弁は、台の上または箱の中に一体に構成したことで、運搬に便利で、設置に用意な、設置面積が最小の装置が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面と共に詳細に説明する。
ここで、図1は、本願発明の全体を示した図である。
【0017】
図1に見られるように、410は射出成形機を含む樹脂成形機であって、キャビティ410aを形成した金型411と、金型411が開閉する時点に対してキャビティ410aに溶融樹脂を送り込む時点を制御する樹脂成形機コントローラ412等から構成されている。 尚、樹脂成形機410には、その他に可塑化シリンダーや、駆動装置や、ホッパーや、移動装置等も構成しているが、本発明には直接関係無いので図1には具体的に示していない。
【0018】
この場合、可塑化シリンダーは、ホッパーから供給されてくる樹脂材料を、加熱しながら可塑化シリンダー内に構成されているスクリューの回転により溶融と混錬を繰り返しながら、その溶融樹脂をスクリューの後退により可塑化シリンダーの先端部内に計量し、所定量の溶融樹脂が計量されると、スクリューの回転を停止して、可塑化シリンダー内に構成されているスクリュー駆動装置の軸方向駆動部によってスクリューが前進することにより、計量された溶融樹脂を金型411に射出することで送り込むことが可能となっているのである。
【0019】
一方、固定金型と移動金型より成る金型411は、樹脂供給路とキャビティ410aを形成することで、可塑化シリンダーから射出された溶融樹脂が、樹脂供給路を通ってキャビティ410aに送り込まれるようになっている。 この場合、キャビティ410aに送り込まれた溶融樹脂が冷却して固化すると、成形品として取出すことが可能になるのである。
【0020】
そして、この時キャビティ410aに空気が入っていると溶融樹脂が酸化をし、黒点や焼けやシルバー等の不良の原因となるのである。
【0021】
そこで、本発明では先ずキャビティ410a内の空気を減圧して効率良く抜くことで、更に減圧されたその後にキャビティ410a内に窒素ガスを送り込むことにより、加えて確実に窒素ガスを送り込むことによって、最終的には溶融樹脂の酸化を防ごうとしているのである。
【0022】
その為に、金型411には、金型411によって形成されているキャビティ410aに接続することが出来るように、キャビティ410aに対してキャビティ410aと別の端部の側を減圧することによってキャビティ410a内の空気を抜いて減圧する目的の減圧を意図した配管系統の一部である減圧配管831を接続することが出来るようにした減圧流路411yと、空気を抜いて減圧した後にキャビティ410a内に窒素ガスを送り込む目的の窒素ガスを作り出す配管系統の一部である窒素ガス配管826を接続することが出来るようにした窒素ガス流路411xを形成している。
【0023】
尚、金型411に形成されている窒素ガス流路411xには、窒素ガス配管826が接続しているが、窒素ガス配管826には窒素ガスを送り込むために、その上流に以下に示す機器を接続している。
【0024】
即ち、圧縮空気を作り出すコンプレッサー120は、大気をエアーフィルタ−110と空気配管801を経由して取り込む中で空気中の異物を除去した状態で吸引して圧縮空気を作り出し、作り出された圧縮空気は、圧縮空気配管811と、圧縮空気を乾燥させるドライヤー130と、圧縮空気配管812を経由して、タンク140に貯留している。 尚、タンク140は、コンプレッサー120と一体ということも考えられる。
【0025】
そして、タンク140に貯留された圧縮空気は、圧縮空気配管813と、圧縮空気中の各種の異物を除去するフィルター150を経由して、二つに分岐している圧縮空気配管814に到達する。 この場合、圧縮空気配管814を流れている圧縮空気の圧力が測定出来るように、圧縮空気配管814には圧力計160が接続している。
【0026】
ところで、分岐している圧縮空気配管814の一方の側では、圧縮空気の流量を減少させることが出来る絞り弁170と、圧縮空気配管815と、圧縮空気の圧力を制限することが出来るレギュレータ180と、圧縮空気配管816を経由して、窒素ガスを作り出す窒素ガス発生装置310に送り込まれるようになっている。
【0027】
この場合、窒素ガス発生装置310に関しては、圧縮空気から膜分離方式またはPSA方式によって作り出す窒素ガスの製造装置が考えられる。 但し、窒素ガスの発生装置310に関しては、膜分離方式またはPSA方式に限定する必要はなく、圧縮空気を使用しないでボンベに貯留された窒素ガスを使用するということも考えられる。 また、溶融樹脂の酸化を防止するという意味からは、窒素ガスでなく、ヘリウムや、ネオンや、アルゴンや、クリプトンや、キセノンや、ラドン等の不活性ガスの何れかのガスや炭酸ガスを使用するために充填したボンベを使用するということも考えられる。 当然のことながら、ボンベに貯留されたガスを使用する場合には、圧縮空気配管816に接続する必要性は無いとも言える。
【0028】
ところで、PSA方式は、Pressure Swing Adsorption、の略称を意味していて、圧縮空気を活性炭の一種である吸着材に通し、高圧力下で特定のガスを吸着し、低圧力下で特定のガスを吐き出す、という吸着材の特性を利用して、圧縮空気から酸素等を吸着することで窒素を分離する方式である。 この場合、ヒートレス・ドライヤと同様の原理をもっていて、装置は二筒式で膜分離式よりも大型となり、電磁弁などのメンテナンス負荷もかかる。 尚、窒素純度で見た場合には通常99〜99.9999%程度であった。
【0029】
一方、膜分離方式は、圧縮空気を中空糸状の高分子膜である中空糸膜内に送り込んで、圧縮空気に含まれている各ガス成分の膜への透過量の差を利用して窒素を分離する方式である。 この場合、PSA方式よりも小型でメンテナンス負荷も小さい反面、窒素純度で見た場合には95〜99.9%程度であるため、高純度のニーズには適しなかった。
【0030】
尚、中空糸膜は、ポリエステル製で何千ものストロー状の中空糸が束ねられたものより形成され、中空糸の内部に圧縮空気を通すことで、それぞれのガスが固有に持っている中空糸の膜の透過スピードの違いを利用し、空気中に最も多く含まれている窒素ガスを残存させている。
【0031】
そして、圧縮空気を構成しているガスが中空糸の膜を透過するスピードとしては、速く放出するガスと放出しにくいガスがあり、残ったガスが窒素ガスということになるのである。 特に、中空糸の膜がポリエステル製の場合には、水蒸気が一番透過しやすく、以下水素やヘリウムが続き、更に炭酸ガスと一酸化炭素が続き、最後に酸素とアルゴンと窒素が一番透過しにくく、その中でも窒素ガスが一番透過しにくいガスということで残存するのである。
【0032】
ここで、温度が変化しない場合には、圧縮空気の圧力と時間、即ち流量によって、発生する窒素ガスの純度は左右される。 尚、中空糸の膜としては、ポリエステルの他に、ポリオレフィンやポリプロピレン等の樹脂も考えられる。
【0033】
更に、窒素ガス発生装置310から流れて来る窒素ガスは、窒素ガス配管821と、圧縮空気の圧力を制限するレギュレータ320と、窒素ガス配管822を経由して、窒素ガスを貯留する一方で貯留した窒素ガスを加熱することが出来るタンク330に送り込まれるようになっている。 この場合、タンク330に一定量の窒素ガスが貯留されているということは、常時かなりの量の窒素ガスを瞬時にキャビティ410aに供給することが可能となっているということである。
【0034】
従って、タンク330には、窒素ガスを加熱するためのヒータ340が、内部または外部の何れかの位置に付設されている。 そして、図1に於いては、ヒータ340は、ニクロム線等の電気によるもの等を意図しているが、それに限定する必要は無く、蒸気によるものでもガスによって加熱しても構わない。 また、加熱した窒素ガスの温度を測定するために温度センサー350をタンク330の外部を中心とする何れかの位置に付設している。
【0035】
この場合、ヒータ340はヒータコード853によって、温度センサー350はセンサーコード854によって、他に電磁弁220、380と共に温度の管理や開閉を制御することが出来るコントローラ610と接続している。 従って、温度センサー350の測定結果をコントローラ610に送ることで、送られてきた測定結果からコントローラ610の制御によって、ヒータ340を加熱したり加熱を中止したりすることが可能となっているのである。
【0036】
尚、コントローラ610は、樹脂成形機410を制御することが出来る樹脂成形機コントローラ412と、樹脂成形機コード852で接続している。 従って、コントローラ610に接続しているヒータ340や温度センサー350や電磁弁220、380も、樹脂成形機410の金型411の開閉や溶融樹脂の送り込みの制御に合わせて制御することが出来るのである。 また、コントローラ610と樹脂成形機コントローラ412は、必ずタイマーを設けているので、時間管理を行なうことは容易なのである。 ところで、コントローラ610と樹脂成形機コントローラ412とを、一体にするようなことも十分に考えられる。
【0037】
一方、タンク330から流れて来る窒素ガスは、窒素ガス配管823と、窒素ガスの流量を減少させることが出来る絞り弁360と、窒素ガス配管824と、窒素ガスの流量を測定することが出来る流量計370と、窒素ガス配管825と、窒素ガスの流れを開閉することが出来る電磁弁380と、窒素ガス配管826を経由して、金型411に形成されている窒素ガス流路411xを通ってキャビティ410aに送り込むことが出来るようになっている。
【0038】
そうして、既に述べている通り電磁弁380とコントローラ610を電磁弁コード855によって、更にその先では樹脂成形機コントローラ412とも接続していることで、金型411の開閉に合わせて、また後に述べるキャビティ410a内の空気の排出に合わせて、電磁弁380を開放したり閉鎖したりすることが、即ち窒素ガスを送ったり送ることを中断することが可能となっているのである。
【0039】
ところで、分岐している圧縮空気配管814の他方の側では、圧縮空気の流量を減少させることが出来る絞り弁210と、圧縮空気配管817と、圧縮空気の流れを開閉することが出来る電磁弁220と、圧縮空気配管818と、圧縮空気の圧力を制限することが出来るレギュレータ230と、圧縮空気配管819を経由して、真空エジェクター510に送り込むことが出来るようになっている。
【0040】
ここで、真空エジェクター510に於いては、真空エジェクター510であるベンチュリー管に圧縮空気を流すと、ベンチュリー管の括れ部510gが負圧になることで、その括れ部510gにキャビティ410aに接続している減圧配管831を位置させると、キャビティ410a内の空気を減圧配管831から真空エジェクター510の方に吸引することが可能となっているのである。 尚、真空エジェクター510であるベンチュリー管は非常に簡単な構造であり、真空エジェクター510としての価格も安いものであるが、真空ポンプを代用させることも可能である。 当然のことながら、その場合には圧縮空気配管819の接続は不用となる。
【0041】
また、既に述べている通り電磁弁220とコントローラ610を電磁弁コード856によって、更にその先では樹脂成形機コントローラ412が接続していることで、金型411の開閉に合わせて、電磁弁220を開放したり閉鎖したりすることが、即ち圧縮空気を送ったり送ることを中断することが可能となっているのである。
【0042】
尚、コンプレッサー120と、窒素ガス発生装置310と、タンク330と、真空エジェクター510と、電磁弁380、220は、台710の上、または箱710の中に一体に構成することで、一体のままで運搬したり設置したりすることが可能となり、あらゆる点で非常に便利となっているのである。
【0043】
本発明による、樹脂成形機の金型に窒素ガスを送り込む方法および装置は前述したように構成されており、以下にその動作について説明する。
【0044】
一般的に樹脂成形機410の動作としては、先ず金型411がタッチして閉じた状態で、可塑化シリンダーより溶融樹脂が送り込まれることで樹脂供給路を経由してキャビティ410aに送り込まれ、その後キャビティ410a内の成形品が冷却したら、金型411を開くことで成形品を取出すことになる。
【0045】
この場合、何の配慮もせずキャビティ410aに溶融樹脂を送り込み成形品を取出すと、キャビティ410a内の空気に含まれている酸素の影響によって溶融樹脂が酸化をし、黒点や焼けやシルバーの原因となる場合がある
【0046】
そこで、本発明では圧縮空気を使うことによって、ベンチュリー管である真空エジェクター510で負圧を作り出し、その負圧によってキャビティ410a内の空気を効率良く抜いて減圧し、その後にキャビティ410a内に窒素ガスを送り込むことにより、溶融樹脂の酸化を防ごうとしているのである。
【0047】
従って、先ずコンプレッサー120を作動させることによって、大気をエアーフィルター110から空気配管801を経由させて綺麗な状態で吸引し、圧縮空気を作り出す。 ここで、作り出された圧縮空気は、圧縮空気配管811を経由して、ドライヤー130で乾燥させられ、圧縮空気配管812を経由して、タンク140に一旦貯留させられるのである。
【0048】
一方、タンク140に一旦貯留した圧縮空気は、圧縮空気配管813を経由して、フィルター150で異物を取り除かれることで、乾燥した綺麗な圧縮空気が二つに分岐した圧縮空気配管814を流れることになる。
【0049】
尚、二つに分岐している圧縮空気配管814からの圧縮空気は、一方では絞り弁170を経由させて窒素ガスを作り出す配管系統である圧縮空気配管815に流し、他方では絞り弁210を経由させて減圧を意図した配管系統である圧縮空気配管817に流し、両方の配管系統共に流量を減少させている。
【0050】
さて、圧縮空気配管815の方に流れた圧縮空気は、レギュレータ180によって一定の圧力に減圧された状態で圧縮空気配管816に流れ、窒素ガス発生装置310に送り込まれる。 この場合、窒素ガス発生装置310に於いては、既に色々の装置を述べているが、窒素ガス、場合によっては不活性ガス、更には二酸化炭素が、作り出されるか貯留されているものと考えると良い。
【0051】
そして、前述の窒素ガスや不活性ガスや二酸化炭素は、窒素ガス配管821を通り、レギュレータ320によって一定の圧力に減圧された状態で窒素ガス配管822に流れ、内部に貯留されている窒素ガス等のガスをヒータ340によって加熱することが出来るタンク330に送り込まれるようになっている。 尚、貯留されている窒素ガス等のガスは、温度センサー350によって測定し、測定結果をセンサーコード854によってコントローラ610に送ることが出来るようになっている。 従って、送られて来た測定結果によって、ヒータコード853を介してコントローラ610からヒータ340に対して、貯留されている窒素ガス等のガスの温度を高めるための過熱を始めたり加熱を止める指示を出すことが可能となっているのである。
【0052】
ところで、タンク330に貯留されている窒素ガス等のガスは、窒素ガス配管823に流れ、絞り弁360によって窒素ガスの流量を減少させ、窒素ガス配管824に流れ、窒素ガスの流量を測定する流量計370を経由して、窒素ガス配管825に流れ、コントローラ610の制御によって窒素ガスの流れを開閉することが出来る電磁弁380に流れるようになっている。 従って、コントローラ610から開放の指示が来ると電磁弁380は開放し、窒素ガス配管826と窒素ガス流路411xを経由して窒素ガスをキャビティ410aに送り込むことが出来るようになっているのである。 また、電磁弁380を閉鎖することで窒素ガスをキャビティ410aに送り込むことを中止することも可能なのである。
【0053】
一方、圧縮空気配管817の方に流れた圧縮空気は、コントローラ610の制御によって圧縮空気の流れを開閉することが出来る電磁弁220に流れるようになっている。 そして、コントローラ610から開放の指示が来ると電磁弁220は開放し、圧縮空気配管818に圧縮空気が流れ、レギュレータ230によって一定の圧力に減圧された状態で圧縮空気配管819に流れ、更にベンチュリー管である真空エジェクター510に流れ込むようになっている。
【0054】
従って、圧縮空気が真空エジェクター510を流れることで、真空エジェクター510であるベンチュリー管の括れ部510gに高速の圧縮空気が流れるようになり、それに従って括れ部510gに接続している減圧配管831が減圧される。 ところで、減圧配管831は、減圧流路411yを経由してキャビティ410aに接続しているので、キャビティ410aも減圧を促進されることになる。
【0055】
尚、キャビティ410aが減圧されたことで、その次のタイミングでこのキャビティ410aに送り込む窒素ガスは、汎用樹脂の場合、加熱する温度を150〜450℃の溶融温度近傍に制御し、またエンプラ樹脂の場合、加熱する温度を30〜80℃の大気温度程度に制御することが有効である。
【0056】
ここで、樹脂成形機410の樹脂成形機コントローラ412から金型411開の信号がコントローラ610に入ると、コントローラ610は減圧を意図した配管系統の電磁弁220に指令を出し、真空エジェクター510が発生する負圧によりキャビティ410a内の空気を吸い出す。 また、コントローラ610は窒素ガスを作り出す配管系統の電磁弁380に指令を出し、窒素ガス発生装置310が発生する窒素ガスをキャビティ410aに送り込む。 この場合、吸引と注入の時間は1〜2秒位である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
この発明は、樹脂成形機の金型に窒素ガスを送り込む方法および装置に関する技術であって、更に詳細に述べるならば、射出成形機等の樹脂成形機は、構成している金型によってキャビティを形成しているが、そのキャビティに溶融樹脂を高圧で注入(射出)してキャビティを充満させて成形品を作り出すのに際して、このキャビティ内に空気が入っていると溶融樹脂が酸化し、黒点や焼けやシルバー等の原因となるので、一般的には窒素ガスを送り込むことによって対応しているのに対し、より確実性を確保する意味からキャビティを減圧して窒素ガスを送り込み、その後キャビティに溶融した樹脂を送り込む技術について述べたものであり、成形品の不良を減少させる意味で多大な効果をもたらすものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】 本願発明の全体を示した図
【符号の説明】
【0059】
110・・・・・エアーフィルター
120・・・・・コンプレッサー
130・・・・・ドライヤー
140・・・・・タンク
150・・・・・フィルター
160・・・・・圧力計
170・・・・・絞り弁
180・・・・・レギュレータ
210・・・・・絞り弁
220・・・・・電磁弁
230・・・・・レギュレータ
310・・・・・窒素ガス発生装置
320・・・・・レギュレータ
330・・・・・タンク
340・・・・・ヒータ
350・・・・・温度センサー
360・・・・・絞り弁
370・・・・・流量計
380・・・・・電磁弁
410・・・・・樹脂成形機
410a・・・・キャビティ
411・・・・・金型
411x・・・・窒素ガス流路
411y・・・・減圧流路
412・・・・・樹脂成形機コントローラ
510・・・・・真空エジェクター
510g・・・・括れ部
610・・・・・コントローラ
710・・・・・台、箱
801・・・・・空気配管
811・・・・・圧縮空気配管
812・・・・・圧縮空気配管
813・・・・・圧縮空気配管
814・・・・・圧縮空気配管
815・・・・・圧縮空気配管
816・・・・・圧縮空気配管
817・・・・・圧縮空気配管
818・・・・・圧縮空気配管
819・・・・・圧縮空気配管
821・・・・・窒素ガス配管
822・・・・・窒素ガス配管
823・・・・・窒素ガス配管
824・・・・・窒素ガス配管
825・・・・・窒素ガス配管
826・・・・・窒素ガス配管
827・・・・・窒素ガス配管
831・・・・・減圧配管
851・・・・・電源コード
852・・・・・樹脂成形機コード
853・・・・・ヒータコード
854・・・・・センサーコード
855・・・・・電磁弁コード
856・・・・・電磁弁コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形機(410)の金型(411)を閉じた直後に前記金型(411)によって形成されたキャビティ(410a)を減圧して窒素ガスを送り込み、その後前記キャビティ(410a)に溶融した樹脂を送り込むことを特徴とする樹脂成形機の金型に窒素ガスを送り込む方法。
【請求項2】
前記金型(411)を閉じた時点に対して、減圧の動作を開始する時間および窒素ガスを送り込む動作を開始する時間、そして減圧の動作を持続する時間および窒素ガスを送り込む動作を持続する時間、これらの時間を制御することが可能であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形機の金型に窒素ガスを送り込む方法。
【請求項3】
窒素ガスは加熱することで温度を高めることが可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂成形機の金型に窒素ガスを送り込む方法。
【請求項4】
前記キャビティ(410a)を減圧して窒素ガスを送り込む時間は、0.5〜3秒であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の樹脂成形機の金型に窒素ガスを送り込む方法。
【請求項5】
前記キャビティ(410a)を減圧するのは、圧縮空気をベンチュリー管に送り込むことによるものであり、窒素ガスは、圧縮空気を分離膜方式またはPSA方式によって分離することによるものであり、その圧縮空気は共通のコンプレッサー(120)によって作り出すものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の樹脂成形機の金型に窒素ガスを送り込む方法。
【請求項6】
樹脂成形機(410)の金型(411)によって形成されたキャビティ(410a)に、前記キャビティ(410a)の内部を減圧することが出来るように真空エジェクター(510)と、前記キャビティ(410a)の内部に常に一定量の窒素ガスを送り込むことが出来るように窒素ガスを貯留したタンク(330)を接続したことを特徴とする樹脂成形機の金型に窒素ガスを送り込む装置。
【請求項7】
前記タンク(330)と前記キャビティ(410a)との間に窒素ガスを流したり閉じたりすることが出来るように電磁弁(380)を位置させ、前記真空エジェクター(510)の減圧の動作を行なったり停止することが出来るように前記真空エジェクター(510)の圧縮空気が流れる側の上流に電磁弁(220)を設け、両方の前記電磁弁(380、220)を前記金型(411)の開閉の動作に合わせて作動することが出来るように樹脂成形機コントローラ(412)に接続したことを特徴とする請求項6に記載の樹脂成形機の金型に窒素ガスを送り込む装置。
【請求項8】
前記タンク(330)の内部に貯留されている窒素ガスを加熱することで温度を高めることが出来るように前記タンク(330)の何れかの部分にヒータ(340)を付設し、前記タンク(330)の内部に貯留されている窒素ガスの温度を測定出来るように前記タンク(330)の何れかの部分に温度センサー(350)を付設し、前記ヒータ(340)と前記温度センサー(350)を樹脂に合わせて温度管理が可能であるように前記樹脂成形機コントローラ(412)に接続したことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の樹脂成形機の金型に窒素ガスを送り込む装置。
【請求項9】
前記タンク(330)に圧縮空気より窒素ガスを分離することが出来るように窒素ガス発生装置(310)を接続し、前記真空エジェクター(510)は圧縮空気をベンチュリー管に送り込むことによって成されるものであり、前記窒素ガス発生装置(310)と前記真空エジェクター(510)の両者は圧縮空気を作り出すコンプレッサー(120)に接続していることを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれか1項に記載の樹脂成形機の金型に窒素ガスを送り込む装置。
【請求項10】
前記コンプレッサー(120)と前記窒素ガス発生装置(310)と前記タンク(330)と前記真空エジェクター(510)と前記電磁弁(380、220)は、台(710)の上または箱(710)の中に一体に構成したことを特徴とする請求項9に記載の樹脂成形機の金型に窒素ガスを送り込む装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−64471(P2010−64471A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261119(P2008−261119)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000154521)株式会社フクハラ (87)
【Fターム(参考)】