説明

樹脂投入装置

【課題】繰り返しの樹脂投入でも樹脂の噛み込み等による動作不良を起こすことがなく、簡易且つ正確に樹脂を投入することが可能な樹脂投入機構を提供する。
【解決手段】皿部102に収容されている樹脂110を下型130へと投入する樹脂投入装置100であって、皿部102を反転させることが可能な容器反転機構104を備え、反転させる際の少なくとも一定の時間、皿部102に収容されている全ての樹脂110に対して皿部102の底面側に向かう押圧力が発生するように反転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂を投入する樹脂投入装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載される樹脂封止成形装置が公知である。図6に、この樹脂封止成形装置の一部としての樹脂投入装置1を示している。
【0003】
樹脂投入装置1は、パレット2に備わる収容空間4内に樹脂10を予め収容しておき、当該パレット2を水平方向に移動可能に構成されている。パレット(第1の容器)2が、投入先である下型(第2の容器)30の上部(キャビティ20の上部)にまで達すると、シャッタ3が開き、収容空間4内に収容されていた樹脂10が投入される。樹脂投入後は、シャッタ3が閉じ、再度収容空間4に樹脂が収容されるというサイクルが繰り返されて樹脂の投入が繰り返される。
【0004】
【特許文献1】特開2007−125783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記のような樹脂投入装置1では、繰り返される樹脂の投入によって、シャッタ3が開閉する隙間等に樹脂が噛み込み、シャッタ3の開閉に支障(動作不良)を来すことがあった。即ち、意図した通りにシャッタ3の開閉ができないことから、収容空間4に収容した樹脂の全量を投入できなかったり、適切なタイミングでの樹脂の投入ができないといった不具合があった。
【0006】
特に、投入先が樹脂封止金型である場合には、金型からの輻射熱(樹脂封止のため金型は予め所定の温度に加熱・維持されている)を受けて樹脂の一部が溶融する場合があり、当該溶融した樹脂がシャッタ3の隙間に侵入すれば固着してシャッタの開閉に支障を来す可能性が高い。
【0007】
本発明はこのような問題点を解消するべくなされたものであって、繰り返しの樹脂投入でも樹脂の噛み込み等による動作不良を起こすことがなく、簡易且つ正確に樹脂を投入することが可能な樹脂投入機構を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1の容器に収容されている樹脂を第2の容器へと投入する樹脂投入装置であって、前記第1の容器を反転させることが可能な容器反転機構を備え、反転させる際の少なくとも一定の時間、前記第1の容器に収容されている全ての樹脂に対して前記第1の容器の底面側に向かう押圧力が発生するように反転させることにより上記課題を解決するものである。
【0009】
発明者は、シャッタの動作不良を改善するにあたり、シャッタの存在を前提として単に樹脂の噛み込みを防止する手段を付加するのではなく、「樹脂を投入するという機能」にまで立ち返り、シャッタその物を使用しないで樹脂を正確に投入する手法を見出している。即ち、第1の容器に収容した全ての樹脂に対して、反転させる際の少なくとも一定の時間、該第1の容器の底面側に向かう押圧力が発生するように反転させ、第2の容器へと樹脂を投入するという手法である。
【0010】
樹脂を投入する「のみ」であれば、例えば、単に容器を反転させることで投入可能である。しかしながら、単に容器を反転させるだけでは樹脂が一箇所に山盛り状態となってしまう。例えば投入先が圧縮金型の場合、このような状態(山盛り状態)のままで圧縮動作を行うと、圧縮時に不可避的に樹脂の流動が発生し、成形品質に悪影響をおよぼしてしまう。
【0011】
しかし本発明は、少なくとも一定の時間、第1の容器に収容されている全ての樹脂に対して前記第1の容器の底面側に向かう押圧力(分力も含む)が発生するように反転させ、第2の容器へと樹脂を投入するという手法を採用している。ここでの押圧力の程度は、収容される樹脂の性質によって変化し得るものであり、換言すると、収容されている樹脂がこぼれ落ちない程度の底面側への押圧力である。その結果、第1の容器に収容されている全ての樹脂の位置関係(粉状や粒状の樹脂それぞれの位置関係)を大幅に崩すことなくそっくりそのまま反転することが可能となっている。このような構成を採用したことによって、(シャッタそのものが存在せず)樹脂の噛み込みによる動作不良を根本的に排除すると同時に、投入先において一箇所に山盛り状態となることを防止することを可能としている。
【0012】
このとき、反転動作の開始から終了まで継続して押圧力を発生させるようにすれば、樹脂のこぼれを完全に排除することが可能となる。
【0013】
なお、前記第1の容器が、複数の領域に仕切られている構成を採用すれば、反転動作によって樹脂が偏ることをより効果的に防止することができ、より均一化した状態(より均した状態)で樹脂を第2の容器に投入することが可能となる。
【0014】
また、前記反転機構が搬送機構に連結され、前記第1の容器を水平方向に移動可能に構成すれば、例えば投入先となる金型の開閉に併せて自動投入が可能となる。
【0015】
また、前記第2の容器が、圧縮成形金型であり前記第1の容器を冷却可能な冷却機構を備えた構成とすれば、金型から受ける輻射熱による樹脂の溶融を防止でき、第1の容器に溶融樹脂が溶着することを効果的に防止することが可能となる。
【0016】
また、前記第1の容器を振動させることが可能な振動手段を備えた構成とすれば、第1の容器に収容される樹脂をより完全に投入することが可能となり、樹脂のムダを防止すると共に、後工程において生じ得る、樹脂の過不足による品質誤差を低減することが可能となる。
【0017】
また、前記第1の容器の反転動作に干渉せず、且つ、該第1の容器の側部および上部を包囲するカバーを備える構成とすれば、万が一、当該反転動作により樹脂が飛散してしまう事態が生じても、飛散範囲を最小限に抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明を適用することにより、樹脂の噛み込みによる動作不良を根本的に解決でき、メンテナンス作業を大幅に削減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態の一例を示す樹脂投入装置100の斜視図である。図2は、押圧力を概念的に示した図である。図3は、皿部第1の容器)が仕切られている状態を示した図である。図4は、皿部(第1の容器)を冷却する冷却機構が備わる例を示した図である。図5は、皿部(第1の容器)を包囲するカバーが備わる例を示した図である。
【0021】
なお、上記の図面はいずれも説明および理解容易性を優先し、図面上の各部の縮尺等は誇張した表現を採用している。その結果、必ずしも実施レベルでの実際の寸法と対応する関係にはない。
【0022】
<樹脂投入装置の構成>
樹脂投入装置100は、容器反転機構104と、この容器反転機構104に連結される皿部102とを有した構成とされている。容器反転機構104は、駆動源(例えばサーボモータと減速機など)が収まる本体104Aと、当該本体104A側面から突出して出力軸として機能する回転軸105と、この回転軸105の先端にオフセットして連結固定された板状のクランク部106と、更にこのクランク部106に連結(回転軸105に対してオフセットされた位置に連結)された皿支持体107と、この皿支持体107に連結される皿部(第1の容器)102とから構成される。皿部102は略矩形とされ、その上面(図1(A)において上面)略中央部に凹部103が形成されている。この凹部103も略矩形に構成されており、当該凹部103に所望量の樹脂110を収容することが可能とされている。ここで樹脂110は、図1においては丸い粒状の樹脂として示しているが、樹脂の形状はこれに限定される趣旨のものではない。例えば、粉状であってもよいし円筒形をしたものや、予め所定の形状に予備成形されたもの等、更にはこれらが混合されたものであっても差し支えない。
【0023】
また、容器反転機構104は、本体104A部分において搬送機構108と連結固定されている。搬送機構108は水平方向に敷設されたスライダと当該スライダを駆動する駆動源を有している。その結果、皿部102を含めた容器反転機構104全体を当該スライダの長手方向に(図1においては左右方向に)自在に移動・停止させることが可能である。
【0024】
なお、符号130は、当該樹脂投入装置100における樹脂110の投入先となる金型(例えば圧縮成形金型)の一部である下型(第2の容器)であり、当該下型130の上面に形成されている窪みがキャビティCを形成する。
【0025】
<樹脂投入装置の作用>
皿部102における凹部103には、図示せぬ樹脂計量装置によって計量された樹脂110が所定のタイミングで計量・供給される。その後搬送機構108が、金型が離間しているタイミングで、皿部102および容器反転機構104全体を水平方向に移動させ、金型間への進入が行われる(図1(A)参照)。この移動(進入)は、樹脂の投入先となる下型(第2の容器)130を基準に所定の位置にて停止する。より具体的には、後述する皿部102の反転動作によって、反転後の皿部102の位置が下型130の位置と一致する位置(丁度重なる位置)にまで移動して停止する。
【0026】
その後、容器反転機構104の本体104Aに収まる駆動源が作動して回転軸105を回転させる(図1(B)参照)。その結果、当該回転軸105の回転がクランク部106および皿支持体107を介して皿部102にまで伝達され、皿部102全体が回転軸105の軸心を中心に円弧を描きながら反転する。この時、図2に示すように、凹部103に収容される全ての樹脂110に対して、皿部(第1の容器)102の底面側に向って押圧力F(F1〜F5)が発生する。本実施形態の場合、樹脂110に発生する押圧力Fの大きさは、反転動作の回転中心O(回転軸105の軸芯)から各樹脂110までの距離に応じて異なるが、容器からこぼれ落ちない程度の押圧力である限り全く問題は生じない。なお反転速度は固定されたものではなく、樹脂110の形状や比重、樹脂量などに応じて、反転動作中に樹脂110がこぼれ落ちてしまわない程度以上の押圧力Fが発生するように最適に設定される値である。このような押圧力Fを発生させながら反転させる結果、皿部102の反転動作が行われても、凹部103に収容されている樹脂110が周囲に毀れ落ちることはない。
【0027】
このように本発明は、反転させる際の少なくとも一定の時間、皿部102(の凹部103)に収容されている全ての樹脂110に対して皿部102の底面側に向かう押圧力Fが発生するように反転させ、下型(第2の容器)130へと樹脂110を投入するという手法を採用している。即ち、皿部102に収容されている樹脂110の位置関係(粉状や粒状の樹脂それぞれの位置関係)を大幅に崩すことなくそっくりそのまま反転することを実現している。このような構成を採用したことによって、樹脂噛み込みの余地があるシャッタそのものを排除し、樹脂の噛み込みによる動作不良を根本的に排除すると同時に、投入先(金型など)において一箇所に山盛り状態となることを防止することを可能としている。単に容器を反転させるだけでは樹脂が一箇所に山盛り状態となり、(特に圧縮成形の場合)圧縮による樹脂の流動が促進されることとなり望ましくないが、本実施形態ではそのような不具合は生じない。また、山盛り状態を均すための大掛かりな装置等も不要である。
【0028】
なお、皿部102の反転後の状態を図示した図1(B)においては、皿部102の反転後における皿部102と下型130との隙間Gが誇張して大きく表現されているが、実際の隙間Gはわずかである。
【0029】
また、クランク部106と皿部102とを連結する皿支持体107は、クランク部106と皿部102とを完全に固定するように構成されていても良いし、また、例えば皿部102が皿支持体107の軸心を中心としてクランク部106に対して回転可能に構成されていてもよい。回転可能に構成すれば、回転軸105の回転に合わせて皿部102の角度(反転方向に対する角度)を微調整することが可能となり、皿部102(凹部103)に収容される樹脂110に対してより望ましい方向(例えば押圧力Fが最大となる方向)から押圧力Fを付与することが可能となる。即ち、皿部102を反転させる際の樹脂の毀れ落ちをより完全に排除することが可能である。
【0030】
なお、上記では、クランク部106を設け回転軸105に対して樹脂110が収容されている皿部102をオフセットすることで、全ての樹脂110に対して皿部102の底面側に向かう押圧力Fが発生するように構成とされていたが、このような押圧力Fを発生できる限りにおいてその構成自体は限定されない。
【0031】
また、図3に示すように、皿部202に設けられた凹部に対して適宜仕切り板202Aを形成して複数に分割された分割凹部203を形成し、当該分割凹部203に対してそれぞれ適量の樹脂を収容しておくことによって、反転動作によって樹脂が偏ることを効果的に防止することができ、第2の容器(例えば金型など)への投入後の樹脂の状態をより均一化した状態(均した状態)とすることが可能となる。
【0032】
また、図4に示すように、皿部102に対して樹脂110が計量・供給される樹脂供給部120の位置において、皿部102の下方向に当該皿部102を冷却可能な冷却部112を設ける構成としてもよい。このような構成とすれば、金型から受ける輻射熱によって皿部102が加熱され、凹部103に収容する樹脂110が溶融して固着してしまうことを防止することが可能となる。勿論、冷却部112の構成はこのような内容のものに限定されるものではなく、搬送機構108による搬送途中に冷却部112が設けられていても良い。
【0033】
また、図5に示すように容器反転機構104によって皿部102が反転する際に、当該皿部102に干渉せず、且つ、当該皿部102の側面および上面を包囲するカバー114を設けておくとよい。このような構成とすれば、万が一、皿部102の反転によって収容している樹脂110が飛散するような場合が生じても、樹脂110の飛散を最小限に抑えることが可能となる。
【0034】
また、図示していないが、例えば皿部102の側面に振動を発生させる振動発生装置を設けるような構成を採用するとよい。このような構成とすれば、凹部103に収容していた樹脂110を完全に下型(第2の容器)130へと投入することが可能となり、樹脂110の無駄を防止すると同時に、後工程において生じ得る樹脂の過不足による品質誤差を低減することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、例えば、樹脂封止金型に対して封止材料としての樹脂を投入する装置としての利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す樹脂投入装置の斜視図
【図2】押圧力を概念的に示した図
【図3】第1の容器が仕切られている状態を示した図
【図4】第1の容器を冷却する冷却機構が備わる例を示した図
【図5】第1の容器を包囲するカバーが備わる例を示した図
【図6】特許文献1に記載されている樹脂投入装置
【符号の説明】
【0037】
100…樹脂投入装置
102、202…皿部(第1の容器)
103…凹部
104…容器反転機構
105…回転軸
106…クランク部
107…皿支持体
108…搬送機構
110…樹脂
112…冷却部
114…カバー
130…下型(第2の容器)
202A…仕切り板
203…分割凹部
F…押圧力
O…回転中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の容器に収容されている樹脂を第2の容器へと投入する樹脂投入装置であって、
前記第1の容器を反転させることが可能な容器反転機構を備え、
反転させる際の少なくとも一定の時間、前記第1の容器に収容されている全ての樹脂に対して前記第1の容器の底面側に向かう押圧力が発生するように反転させる
ことを特徴とする樹脂投入装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記押圧力が、反転の開始から終了時点まで継続する
ことを特徴とする樹脂投入装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1の容器が、複数の領域に仕切られている
ことを特徴とする樹脂投入装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記反転機構が搬送機構に連結され、前記第1の容器を水平方向に移動可能である
ことを特徴とする樹脂投入装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記第2の容器が、圧縮成形金型であり
前記第1の容器を冷却可能な冷却機構が備わっている
ことを特徴とする樹脂投入装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記第1の容器を振動させることが可能な振動手段を備わる
ことを特徴とする樹脂投入装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記第1の容器の反転動作に干渉せず、且つ、該第1の容器の側部および上部を包囲するカバーを備える
ことを特徴とする樹脂投入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−234042(P2009−234042A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83175(P2008−83175)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】