説明

樹脂注入のための自動樹脂及び繊維配置

【課題】大規模な複合構造体を樹脂注入プロセスを用いて製造する方法において、自動化によってコスト削減すると共に高速化を可能とし、且つ、品質向上させる為の樹脂フィルムの自動敷設方法と装置を提供する。
【解決手段】少なくとも一つの繊維強化材のプライと、少なくとも一つの樹脂層とをツール上に積み上げることにより、複合構造体が作製される。樹脂フィルムの層は、樹脂フィルムのストリップを配置することにより形成される。繊維強化材には、樹脂層から樹脂が注入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して複合構造体の製造に関し、具体的には、樹脂を用いた強化材の注入に使用される繊維強化材及び樹脂フィルムの配置方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模な複合構造体は、自動的テープ敷きマシン及び自動的繊維配置マシンといった自動化された装置を用いて製造される。これらの自動化マシンは、複数のコースのプリプレグテープ又は粗麻を敷くことにより、プライをツール上に積み上げる。プリプレグの自動レイアップは複数の欠点を有し、それらには、プリプレグ材の品質保持期間が比較的短いこと、テープ配置ヘッドが目詰りする可能性があること、硬化のために資本集約的なオートクレーブが必要であること、及び利用可能なプリプレグフォーマットの種類が限られることが含まれる。
【0003】
上述の欠点の一部は、限定しないが、繊維プリフォームの樹脂注入などのリキッドモールディング技術を用いて克服することができる。しかしながら、樹脂注入プロセスは、従来のツーリング中への樹脂の位置決め及び配置を制御する際の柔軟性に限界があること、高弾性で高度に強化された樹脂の大規模構造体への注入が困難であることなど、特定の欠点も有している。また、樹脂注入は、長時間を要し、且つ比較的複雑なバギングの配置と樹脂移動システムとを必要とし、さらには樹脂に直接接触するための技術を必要とする。さらに、樹脂注入は、材料の廃棄物及び消耗材といった観点から比較的コスト高である。
【0004】
樹脂の分配を改善し、処理時間を短縮するために、大きなシートから分割されて、乾燥プリフォームの前にマンドレル上に配置される樹脂フィルムの断片を用いて、繊維プリフォームを注入することが提案された。樹脂の流れを制御するために、比較的複雑なダムと様々な消耗材が必要である。したがって、樹脂フィルム注入プロセス及び装置は、自動化が望ましい大量生産の環境にはなじまない。
【0005】
自動手段によるスプレーガンを用いてツール上に樹脂を配置する樹脂スプレー技術が使用されている。しかしながら、このプロセスのためには、樹脂がスプレーガンからツールへと移動するときの液相から固相への相変化を制御するために、ツールを低温に維持しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、コストを削減し、且つ自動化に適している、樹脂注入プロセスを用いて複合構造を製造する方法、特に大規模な複合構造体を製造する方法が求められている。また、高速の敷設を可能にし、樹脂の品質、位置、及び分配の制御を向上させ、高弾性で高度に強化された樹脂の使用を可能にする樹脂フィルムの自動敷設方法と装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示される方法と装置により、大規模複合構造体を製造するための繊維プリフォームの樹脂注入において使用可能な、樹脂フィルムの自動配置が提供される。開示される実施形態は、軽量化と、エネルギー及び材料の無駄のない利用とを達成しながら、設計及びプロセスの要件に適合したフォーマットでの樹脂の配置を可能にする。開示される自動樹脂配置プロセスは、以前は材料を用意するために必要であった処理工程を排除しながら、経常費用を削減することができる。高度に再現可能な自動化により、品質及び性能の向上が達成される。従業員と樹脂との直接接触を最小化又は排除しながら、材料の浪費も低減される。オートクレーブ処理の必要性、並びに樹脂ポット、配管系統、及び樹脂取り扱い設備の必要性が排除される。
【0008】
開示される一実施形態によれば、複合構造体の作製方法が提供される。この方法は、圧密ローラに樹脂フィルムを供給すること、基板の表面に沿って圧密ローラを移動させること、並びに、ローラを基板に沿って移動させながら基板上に及び/又は基板中にフィルムを圧密化することを含む。樹脂フィルムを供給することは、圧密ローラに樹脂フィルムのストリップを案内すること、及び圧密ローラを基板表面に沿って移動させながら樹脂フィルムを所望の長さに切断することを含む。この方法は、さらに、圧密ローラに繊維強化材を供給すること、及び基板に沿ってローラを移動させながら、基板上に繊維強化材を圧密化することを含む。繊維強化材及び樹脂フィルムは、ほぼ同時に圧密ローラに供給される。自動制御されるマニピュレータを使用して、基板に沿って圧密ローラを移動させ、実質的に端から端まで樹脂フィルムのストリップを配置してもよい。
【0009】
開示される別の実施形態によれば、繊維強化材と樹脂フィルムとを別々に圧密ローラに供給することを含む複合構造体の作製方法が提供される。この方法も、基板の表面に沿って圧密ローラを移動させること、並びに、圧密ローラを使用して基板に対して樹脂フィルム及び繊維強化材を圧密化することを含む。繊維強化材と樹脂フィルムとを別々に供給することは、繊維強化材と樹脂フィルムのストリップをスプールから引き出して圧密ローラに案内することを含む。一実施形態では繊維強化材が基板と樹脂フィルムとの間に供給され、別の実施形態では樹脂フィルムが基板と繊維強化材との間に供給される。この方法は、さらに、圧密ローラを基板表面に沿って移動させながら、繊維強化材及び樹脂フィルムの長さを切断することを含む。
【0010】
さらなる一実施形態により、複合構造体の作製方法が提供される。この方法はツール上でレイアップを組み立てることを含み、この工程には、繊維強化材からなる少なくとも一つのプライをツール上に積み上げることと、樹脂フィルムのストリップを積み上げることにより、少なくとも一層の樹脂をツール上に積み上げることとを含む。この方法は、さらに、繊維強化材に樹脂層から樹脂を注入することを含む。樹脂フィルムのストリップを積み上げることは、エンドエフェクタを使用して樹脂フィルムを所望の長さに切断すること、及びエンドエフェクタを使用してツールに対してフィルムのストリップを圧密化することを含む。繊維強化材に注入することは、レイアップの上に真空バッグをシールすること、真空バッグを真空引きすること、及びレイアップを加熱することを含む。
【0011】
さらに別の実施形態によれば、複合構造体を作製するための装置が提供され、この装置は、基板表面に沿って移動するエンドエフェクタと、エンドエフェクタ上の樹脂フィルム供給部とを備えている。この装置は、さらに、エンドエフェクタが基板表面に沿って移動するときに基板に対して樹脂フィルムを圧密化するための圧密ローラをエンドエフェクタ上に備えている。フィルム供給部は樹脂フィルムのスプールを含むことができ、エンドエフェクタは樹脂フィルムをスプールから圧密ローラへと導くガイドと、樹脂フィルムを所望の長さに切断するカッタを含むことができる。この装置は、エンドエフェクタ上の繊維強化材のスプールと、繊維強化材をスプールから圧密ローラへと導くガイドとを含むこともできる。
【0012】
要約すると、本発明の一態様により、繊維強化材と樹脂フィルムとを別々に圧密ローラに供給すること、圧密ローラを基板表面に沿って移動させること、並びに、圧密ローラを用いて基板に対して樹脂フィルムと繊維強化材とを圧密化することを含む、複合構造体の作製方法が提供される。
【0013】
有利には、繊維強化材と樹脂フィルムとを別々に供給する本発明の方法は、繊維強化材のストリップを繊維供給スプールから引き出すこと、樹脂フィルムのストリップを樹脂フィルム供給スプールから引き出すこと、並びに繊維強化材及び樹脂フィルムのストリップを圧密ローラへと案内することを含む。
【0014】
有利には、繊維強化材を基板と樹脂フィルムとの間に供給し、樹脂フィルムと繊維とを圧密化する本発明の方法は、圧密ローラを使用して樹脂フィルムを繊維強化材上に圧密化することを含む。
【0015】
有利には、樹脂フィルムを基板と繊維強化材との間に供給し、樹脂フィルムと繊維とを圧密化する本発明の方法は、圧密ローラを使用して繊維強化材を樹脂フィルム上に圧密化することを含む。
【0016】
有利には、この方法は、さらに、圧密ローラを基板表面に沿って移動させながら、繊維強化材及び樹脂フィルムの長さを切断することを含む。
【0017】
本発明の別の態様によれば、ツール上でレイアップを組み立てることを含む複合構造体の製造方法が提供され、この組み立ての工程には、繊維強化材からなる少なくとも一つのプライをツール上に積み上げること、樹脂フィルムのストリップを積み上げることにより、ツール上に少なくとも一層の樹脂を積み上げること、並びに、繊維強化材に樹脂層から樹脂を注入することが含まれる。
【0018】
有利には、本方法の、樹脂フィルムのストリップを積み上げることは、エンドエフェクタを使用して樹脂フィルムを所望の長さに切断すること、及びエンドエフェクタを使用してツールに対してフィルムのストリップを圧密化することを含む。
【0019】
有利には、本方法の、繊維強化材からなるプライを積み上げることは、エンドエフェクタを使用して繊維強化材のストリップを所望の長さに切断すること、並びにエンドエフェクタを使用して切断された長さの繊維強化材をツールに対して圧密化することを含む。
【0020】
有利には、本方法の、繊維強化材に注入することは、レイアップの上に真空バッグをシールすること、真空バッグを真空引きすること、及びレイアップを加熱することを含む。
【0021】
本発明のまた別の態様によれば、航空機用複合構造体の積層方法が提供される。この方法は、ツールの表面上でエンドエフェクタを移動させること;プログラムしたマニュピレータを使用して、ツール表面上におけるエンドエフェクタの動きを自動制御すること;樹脂フィルムのスプールから樹脂フィルムのストリップをエンドエフェクタ上に引き出すこと;樹脂フィルムのストリップを所望の長さに切断すること;切断された長さの樹脂フィルムをエンドエフェクタ上の圧密ローラに供給すること;乾燥繊維強化材のスプールから乾燥繊維強化材のストリップをエンドエフェクタ上に引き出すこと;乾燥繊維強化材のストリップを所望の長さに切断すること;切断された長さの樹脂フィルムのストリップを第1のローラに供給すること;第1のローラを使用して、切断された長さの樹脂フィルムのストリップをツールに対して圧密化すること;切断された長さの乾燥繊維強化材を第2のローラに供給すること;第2のローラを使用して、切断された長さの乾燥繊維強化材を、圧密化された樹脂フィルムストリップと整列しているツールに対して圧密化すること;並びに、第1のローラ及び第2のローラによって樹脂フィルムのストリップ及び乾燥繊維強化材のストリップにそれぞれ印加される圧密圧力を別々に制御することを含む。
【0022】
本発明の別の態様によれば、航空機用複合構造体の積層装置が提供される。この装置は、マニュピレータ;マニピュレータ上に装着されるエンドエフェクタであって、フレームと、フレーム上に位置する樹脂フィルムのスプールと、フレーム上に位置する乾燥繊維強化材のスプールと、樹脂フィルム及び繊維強化材のストリップをツール上に圧密化するための、フレーム上に位置する圧密ローラと、スプールからローラへとストリップを案内するための、フレーム上に位置するガイドと、樹脂フィルム及び繊維強化材を所望の長さのストリップに切断するための、フレーム上に位置する切断機構と、樹脂フィルムの裏紙を巻き取るための、フレーム上に位置する巻取りリールとを含むエンドエフェクタ;ローラによって印加される圧密圧力を制御するための圧密化制御部;並びに、マニピュレータ、エンドエフェクタ、及び圧密化制御部の動作を制御するためのコントローラを含んでいる。
【0023】
開示される実施形態の他の特徴、恩恵、及び利点は、添付図面及び特許請求の範囲を見るとき、後述する実施形態の説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】自動樹脂フィルム配置を用いた複合構造体作製方法の工程を示している。
【図2】図1に示した作製方法に用いられる、真空バッグを使用したレイアップアセンブリの断面図である。
【図3】図1に示したレイアップのプライを積み上げるための装置の機能ブロック図である。
【図4】図3に示した装置のエンドエフェクタ形成部分の一実施形態の斜視図である。
【図5】図4の線5−5に沿った断面図である。
【図6】エンドエフェクタの別の実施形態の側面図である。
【図7】図6において「7」と示された領域を示している。
【図8】エンドエフェクタのさらなる実施形態の側面図である。
【図9】図8において「9」と示された領域を示している。
【図10】エンドエフェクタのまた別の実施形態の側面図である。
【図11】本発明のエンドエフェクタを用いた図1に示すレイアップ形成方法のフロー図である。
【図12】航空機の製造及び保守方法を示すフロー図である。
【図13】航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示す複合構造体20は、標準の又は非標準のツーリング22と自動レイアップを用いて作製される。図示の実施例では、複合構造体20は、ツール基部24上に支持されたほぼ平坦なツーリング22上で形成される平坦なパネルであるが、単純な形状又は複雑な形状を有するものを含めてツーリング22には他の形状も利用可能である。28に示すように、ロボット、ガントリシステム、又はその他のハンドリングシステムを含むマニピュレータ27は、コントローラ30によって自動制御されるもので、ツーリング22上に複数の層50及びプライ52を積み上げるためのエンドエフェクタ26を含んでいる。
【0026】
31に示すように、層50及びプライ52はそれぞれ、連続する樹脂フィルム及び乾燥繊維強化材のスプール32及び34を使用して積み上げられる。樹脂フィルムは、ロボットを利用したプロセスを用いて、乾燥繊維強化材全体に亘って効果的に樹脂が分配され、且つ樹脂が含浸されるように選択される。樹脂フィルムは、例えば、限定しないが、熱硬化性エポキシビスマレイミド又はベンズオキサジンといった熱硬化性物質とすることができるが、別の構成では、樹脂フィルムは、熱可塑性物質、又は熱硬化性物質と熱可塑性物質との組み合わせとすることができる。樹脂フィルムは、有機フィラー又は無機フィラーを含む強化剤を含有するものでもよい。強化材は、どのような連続繊維フォーマットを有してもよい。樹脂フィルムは、効率的な配置、圧密化、硬化、及び積層特性を達成するための処理要件を満たすために、所望の面積重量、厚み、物理的状態、及び化学的状態を提供するように計算される。
【0027】
スプール32、34は、36で示されるように、エンドエフェクタ26に装着されたクリール32a、34aにそれぞれ装てんされる。マニピュレータ27がツール22の上にエンドエフェクタ26を移動させると、樹脂フィルム及び乾燥繊維のストリップ38、40はクリール32a、34aから引き出され、互いにほぼ整列して重なり合った状態で、圧密ローラ42に供給される。圧密ローラ42は、何らかの適切な支持表面を含む基板44上に、重なり合うストリップ38、40を圧密化する。基板44は、例えば、限定しないが、ツーリング22であるか、或いはエンドエフェクタ26によって手動又は自動で既に積み上げられている基礎となる層50又はプライ52である。エンドエフェクタ26は、ストリップ38、40のコース98を、端から端まで互いにほぼ平行に積み上げる。後述するように、エンドエフェクタ26を使用して、上述のような樹脂フィルム38の層と繊維強化材40の層(プライ)からなる二重層のコース98を敷くことができるか、或いは、樹脂フィルム38又は繊維強化材40の単層コースを敷くことができる。
【0028】
46で示すように、エンドエフェクタ26を使用して、繊維強化プライ52のスタック52aの上に積み上げられた個々の樹脂層50からなるスタック50aを含むレイアップ48aを組み立てることができる。プライ52は、特定の構造体の所定のプライスケジュールに従って、様々な繊維方向を有することができる。別の構成では、上述のような二重層ストリップ98を使用して、樹脂フィルム38の層50と繊維強化材40のプライ52とを交互に積み上げることにより、レイアップ48bを形成することができる。ツーリング22上にレイアップ48を組み立てた後、54で示すように、真空バッグ処理及び炉硬化のようなオートクレーブ外プロセスを使用して、レイアップ48を圧密化し、硬化させることができる。例えば、図2に示すように、ツーリング22上に組み立てられたレイアップ48aは、所望の繊維方向を有する繊維強化プライ52のスタック52aの上に積み上げられた樹脂層50のスタック50aを含んでいる。ブリーザ、剥離プライなどの消耗材からなる他の層62がレイアップ48aの上に配置されている。真空バッグ49がレイアップ48aの上に配置されて、従来のシーラントテープを含むエッジシール64によりツーリング22にシールされる。バッグ49から空気、水分、及び揮発油を抜くために、バッグ49には適切な真空源66が連結されている。
【0029】
図1の56で示すように、真空バッグに入れられたレイアップ48aは、オーブン58内に配置され、熱60を用いて硬化される。限定しないが、オートクレーブ、マイクロ波、全体的に加熱された型といった他の装備を使用してレイアップ48aを加熱してもよい。硬化プロセスの間に、熱60により樹脂層50が溶けて、制御された量の樹脂が繊維強化プライ52の中へほぼ均一に流入可能となることにより、真空バッグ49(図2)からレイアップ48aに圧密圧力が印加されると繊維強化材に樹脂が注入される。
【0030】
図3は、図1に示した複合構造体の作製方法を実行するために使用される装置の機能コンポーネントを概略的に示している。エンドエフェクタ26は、マニピュレータ27に装着されており、圧密ローラ42によって印加される圧密圧力の量を制御する圧密化制御部85を含んでいる。コントローラ30は、プログラムされた任意の適切なコンピュタを含み、マニピュレータ27の動作、圧密化制御部85、及びエンドエフェクタ26の機能を制御する。エンドエフェクタ26は、クリール32a、34aにそれぞれ収容される樹脂フィルムのスプール32と、繊維強化材のスプール34とを含んでいる。樹脂フィルム及び繊維強化材のストリップ38、40は、ガイド82、84によってそれぞれ切断機構88及び圧密ローラ42に導かれる。切断機構88は、圧密ローラ42によってストリップ38、40が基板44上に圧密化されるとき、ストリップ38、40を所望の長さに切断する。エンドエフェクタ26は、さらに裏紙巻き取りリール96を含み、このリール96は、樹脂フィルムのストリップ38がガイド82を通過した後、基板44に対して圧密化される直前で、樹脂フィルムのストリップ38から裏紙94が剥がれるときに、ストリップ38上の裏紙94を巻き取る。圧密化制御部85と、エンドエフェクタ26のその他の機能は、図1に示すコントローラ30によって制御される。
【0031】
図4は、エンドエフェクタ26の一実施形態のさらなる詳細を示している。クリール32a、34a、巻き取りリール96、及び切断機構88は、フレーム74に装着されている。フレーム74は、マニピュレータ27のアーム68に固定された第2のプレート70にスライド可能に装着されたプレート72を含んでいる。プレート70に固定された空気圧シリンダ76は、プレート72に連結された出力軸78を有している。空気圧シリンダ76は、プレート72を動かすことにより、矢印80によって示す方向にフレーム74を動かし、基板44に近づけたり基板44から離したりする。
【0032】
圧密化制御部85が配置され、空気圧シリンダ76に沿ってプレート70、72のアセンブリがスライドすることにより、ローラ42によって印加される圧密圧力が調節される。クリール32aから引き出された樹脂フィルムのストリップ38は、ガイド82を通過し、ガイド82によって圧密ローラ42と基板44との間のニップ86に誘導される。樹脂フィルムのストリップ38は、スプール32(図1)上に巻きつけられた樹脂フィルム38の層が互いに付着することを防止する裏紙94を含むことができる。裏紙94は、樹脂フィルム38がガイド82を通過した後で剥がれ、巻き取りリール96に巻き取られる。
【0033】
クリール32a、34aが基板44上でのエンドエフェクタ26の進行方向75に沿って互いに整列していることにより、基板44上に配置されて圧密ローラ42によって圧密化されるとき、樹脂フィルムのストリップ38と繊維強化材のストリップ40とは重なり合って実質的に互いに整列する。ストリップ38、40は、ほぼ同じ速さでクリール32a、34aから引き出され、それぞれガイド82、84を通過し、それらガイドによって重なりあった状態でニップ86に誘導される。切断機構88は、フレーム74に固定されて、切刃90を往復運動させる空気圧シリンダ92を含むことができる。切刃90は、ストリップ38、40を同時に所望の長さに切断する。
【0034】
樹脂フィルムのストリップ38は、乾燥繊維のストリップ40の下で圧密ローラ42によって圧密化される。樹脂フィルムのストリップ38は、基板44と、ストリップ38の上に位置する繊維ストリップ40とを緩く結合する接着剤として機能する。幾つかの実施形態では、利用される特定の樹脂システムによっては、樹脂フィルムのストリップ38を加熱してニップ86に入る際の厚みを増加させることが必要であるか、又は望ましい。このような加熱プロセスは、限定しないが、赤外線ヒータ、ガストーチ、又はレーザ(すべて図示しない)といった種々の技術及びデバイスのいずれかを使用して行うことができる。樹脂フィルムのストリップ38の面積重量は、硬化させた構造体20(図1)の繊維の容積分率を制御するために予め規定することができる。図4には示していないが、ガイド82、84は、まずクリール32a、34aから、ニップ86に入るまでストリップ38、40を引き出すローラドライブを組み込んでいる。ストリップ38、40がニップ86に入ると、エンドエフェクタ26の運動によりストリップ38、40がクリール32a、34aから引き出され、ローラドライブの動力を絶つことができる。エンドエフェクタ26上におけるストリップ38、40の経路及び運動を制御するためのガイド、ローラ、切断機構、及びドライブに関するその他の詳細は、米国特許第4699683号、及び同7213629号、米国特許出願公開第20070029030号(2007年2月8日公開)、並びに米国特許出願第12/038155号(2008年2月27日出願)に見ることができ、これら特許文献のすべては参照により本明細書に包含される。
【0035】
図4に示す実施形態では、二重層ストリップ98が基板44上に敷設され、この場合の樹脂フィルムのストリップ38は、基板44と、ストリップ38上に位置する繊維強化材のストリップ40との間に挟まれている。このような構成により、図1に示すレイアップ48bを形成するための、樹脂層50と繊維強化材プライ52とを交互に配置するレイアップが可能となる。図4に示されるエンドエフェクタ26を使用して、ガイド82、84に関して上述したドライブを制御することにより、及び/又はクリール32a、34aからスプール32、34(図3)のうちの一方を除去することにより、単一の樹脂フィルムのストリップ38、又は単一の繊維強化材のストリップ40を含む単層ストリップ98を積み上げることもできる。
【0036】
図6は、図5に示されたエンドエフェクタ26に類似であるが、基板44上への樹脂フィルム38(乾燥繊維プリフォームでもよい)のコース98の敷設専用である別の実施形態を示している。上述のように、基板44は、ツール22、既に敷設された樹脂フィルムの層50(図2)又は繊維強化材のプライ52を含むことができる。クリール32aから引き出された樹脂フィルムのストリップ38は、ガイド82を通過し、ガイド82によって基板44と圧密ローラ42との間のニップ86に導かれ、圧密ローラ42によって基板に対して圧密化される。巻き取りリール96は、ストリップ38が圧密ローラ42の下で圧密化された後、ストリップ38から剥がされた裏紙94を巻き取る。これにより、ローラ42に樹脂が付着する可能性が低減し、ストリップ38の切断が容易になる。図7は、裏紙94が剥がれた後の、基板44上に配置されて圧密化された樹脂フィルムのストリップ38を示している。
【0037】
図8は、繊維強化材40が、図9に示すように基板44と樹脂フィルム38との間に配置される多層コース98の敷設に使用されるエンドエフェクタ26のさらなる実施形態を示している。この実施形態では、圧密ローラ42と基板44との間のニップ86に入るときに繊維ストリップ40が樹脂フィルムのストリップ38と基板44との間に配置されるように、クリール32a、34aがフレーム74上に配置されている。裏紙94が、樹脂フィルムのストリップ38上に残り、後で剥がされることにより、樹脂が従業員に接触する可能性が低下する。樹脂フィルムのストリップ38の積層により形成された層50(図1)の、裏紙94が除去された後に露出する粘着性の表面には、乾燥繊維プリフォーム又はその他の基板を付着させることができる。或いは、別の実施形態では、裏紙94はその場で剥がされて、巻き取りリール96に巻き取られる。
【0038】
ここで図10を参照する。図10は、エンドエフェクタ26のまた別の実施形態を示している。この実施形態では、クリール32a、34aは、マニピュレータ27のアーム68に接続された共通支持部77上に装着された別々のフレーム74a、74b上に位置している。クリール32a、34aは、進行方向75に沿って互いに整列しており、別々の圧密ローラ42a、42bにそれぞれ樹脂フィルムのストリップ38及び繊維強化材のストリップ40を供給する。切断機構86a、86bは、フレーム74a、74bに装着されて、それぞれストリップ38、40を所望の長さに切断する。フレーム74a、74bと共通支持体77との間の別々の圧密化制御部85a、85bにより、ローラ42a、42bによって印加される圧密力は、互いに独立して調節される。図10に示す実施形態では、繊維ストリップ40は樹脂ストリップ38の前に配置されるが、二つのフレーム74a、74bの位置を逆にすることにより、樹脂ストリップ38を繊維ストリップ40の前に配置することが可能である。
【0039】
ここで図11を参照する。図11は、樹脂フィルムの配置方法の工程と、任意選択で、配置された樹脂フィルムと共に繊維強化材を配置するための工程とを示している。工程100において、まず、樹脂フィルムのスプール32を、エンドエフェクタ26上のクリール32aに装てんする。使用される特定の樹脂システムによっては、使用に先立ち、スプール32及び/又は32aを冷凍又は他の方法で冷却することが必要であるか、又は望ましい。工程102では、樹脂フィルムのストリップ38をガイド82に供給し、工程104では、ガイド82を用いて樹脂フィルムのストリップ38を圧密ローラ42に案内する。繊維強化ストリップ40も配置される用途では、樹脂フィルムのストリップ38を繊維強化材のストリップ40の下又は上に案内することができる。工程106では、クリール34aから引き出すときに樹脂フィルムのストリップ38を所望の長さに切断する。
【0040】
工程108では、圧密ローラ42によって樹脂フィルムのストリップ38を基板44に対して圧密化するとき、樹脂フィルムのストリップ38から裏紙94を任意選択で除去し、巻き取りリール96に巻き取ることができる。工程110では、圧密ローラ42を使用して、所望の長さに切断した樹脂フィルムのストリップ38を基板44上に圧密化する。上述のように、この基板44は、ツーリング22、積層された樹脂の層50、又は積層された繊維強化材のプライ52を含むことができる。工程122では、エンドエフェクタ26を基板44上に移動させることにより、基板44に対して樹脂フィルムのストリップ38を配置してこのストリップ38を圧密化する。利用される特定の樹脂システムによっては、圧密化プロセスの間に基板44に接着させるために必要な所望の厚みをフィルムストリップ38に持たせるために、基板44に対して圧密化する直前に樹脂フィルムのストリップ38を加熱することが必要である。
【0041】
任意選択の工程112〜120は、樹脂フィルムのストリップ38が基板44上に敷設される際に繊維強化材のストリップ40をレイアップするために実行される。工程112において、まず、繊維強化材のスプールを、エンドエフェクタ26上のクリール34aに装てんする。工程114では、繊維強化材のストリップ40をガイド84に供給する。ガイド84は、樹脂フィルムのストリップ38の上又は下で、圧密ローラ42に繊維強化材のストリップ40を誘導する。工程118では、繊維強化材のストリップ40を所望の長さに切断し、工程120において基板44上で圧密化する。
【0042】
本発明の実施形態は、様々な用途に使用される可能性を有し、例えば航空宇宙、船舶、及び自動車を含む特に輸送産業の分野に用途を見出すことができる。したがって、図12及び13に示すように、本発明の実施形態は、図12に示す航空機の製造及び保守方法124、及び図13に示す航空機126に関して使用することが可能である。開示された実施形態の航空機に関する用途には、例えば、限定しないが、胴体外板、翼外板、操縦面、ハッチ、フロアパネル、ドアパネル、アクセスパネル、及び尾翼といった補剛複合部材が含まれる。製造前の段階では、例示的な方法124は、航空機126の仕様及び設計128と、材料調達130とを含みうる。製造段階では、航空機126のコンポーネント及びサブアセンブリの製造132と、システムインテグレーション134とが行われる。その後、航空機126は認可及び納品136を経て運航138される。顧客により運航される間に、航空機126は定期的な整備及び保守140(改造、再構成、改修なども含みうる)を受ける。
【0043】
方法124の各プロセスは、システムインテグレーター、第三者、及び/又はオペレーター(例えば顧客)によって実施又は実行されうる。本明細書の目的のために、システムインテグレーターは、限定しないが、任意の数の航空機製造者、及び主要システムの下請業者を含むことができ、第三者は、限定しないが、任意の数のベンダー、下請業者、及び供給業者を含むことができ、オペレーターは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス機関などでありうる。
【0044】
図13に示されるように、例示的方法124によって製造された航空機126は、複数のシステム144及び内装146を有する機体142を含むことができる。高レベルのシステム144の例には、推進システム148、電気システム150、油圧システム152、及び環境システム154のうちの一又は複数が含まれる。任意の数の他のシステムが含まれてもよい。航空宇宙産業の例を示したが、本発明の原理は、船舶及び自動車産業などの他の産業にも適用可能である。
【0045】
本明細書に具現化されたシステムと方法は、製造及び保守方法124の一又は複数の任意の段階で採用することができる。例えば、製造工程132に対応するコンポーネント又はサブアセンブリは、航空機126の運航中に生産されるコンポーネント又はサブアセンブリに類似の方法で作製又は製造される。また、一又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、或いはそれらの組み合わせは、例えば、航空機126の組立てを実質的に効率化するか、又は航空機126のコストを削減することにより、製造段階132及び134の間に利用することができる。同様に、装置の実施形態、方法の実施形態、或いはそれらの組み合わせのうちの一又は複数を、航空機126の運航中に、例えば限定しないが、整備及び保守140に利用することができる。
【0046】
特定の例示的実施形態に関連させて本発明の実施形態について説明したが、これらの特定の実施形態は説明を目的としているのであって限定を目的とするものではなく、当業者には他の変形例も想起可能であろう。
【符号の説明】
【0047】
20 複合構造体
22 ツーリング
24 ツール基部
26 エンドエフェクタ
27 マニピュレータ
30 コントローラ
32、34 スプール
32a、34a クリール
38 樹脂フィルムのストリップ
40 繊維強化材のストリップ
42 圧密ローラ
44 基板
48a、48b レイアップ
49 真空バッグ
50 樹脂層
50a 樹脂層のスタック
52 繊維強化プライ
52a 繊維強化プライのスタック
58 オーブン
60 熱
62 他の層
64 エッジシール
66 真空源
68 マニピュレータのアーム
70、72 プレート
74 フレーム
76、92 空気圧シリンダ
78 出力軸
82、84 ガイド
86 ニップ
88 切断機構
90 切刃
94 裏紙
96 巻き取りリール
98 コース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合構造体の作製方法であって、
圧密ローラに樹脂フィルムを供給すること、
基板の表面に沿って圧密ローラを移動させること、及び
ローラを基板に沿って移動させながら基板上においてフィルムを圧密化すること
を含む方法。
【請求項2】
樹脂フィルムを供給することが、
樹脂フィルムのストリップを圧密ローラへ案内すること、及び
圧密ローラを基板表面に沿って移動させながら、樹脂フィルムのストリップを所望の長さに切断すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
圧密ローラに繊維強化材を供給すること、及び
ローラを基板に沿って移動させながら、基板上において繊維強化材を圧密化すること
をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
樹脂フィルム及び繊維強化材を圧密ローラに供給して、ほぼ同時に基板上において圧密化する、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
繊維強化材のストリップを圧密ローラへ案内すること、及び
圧密ローラを基板表面に沿って移動させながら、繊維強化材のストリップを所望の長さに切断すること
をさらに含む、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
樹脂フィルムをストリップの状態で圧密ローラに供給し、
自動制御されるマニピュレータを使用して、基板に沿って圧密ローラを移動させ、実質的に端から端まで樹脂フィルムのストリップを配置する、
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
繊維強化材及び樹脂フィルムを別々に圧密ローラに供給する、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
複合構造体の作製装置であって、
基板の表面に沿って移動するエンドエフェクタ、
エンドエフェクタ上に位置する樹脂フィルム供給部、及び
エンドエフェクタが基板表面に沿って移動するときに基板に対して樹脂フィルムを圧密化するための、エンドエフェクタ上に位置する圧密ローラ
を備えた装置。
【請求項9】
樹脂フィルム供給部が樹脂フィルムのスプールを含み、且つ
エンドエフェクタが、樹脂フィルムをスプールから圧密ローラへと導くガイドと、樹脂フィルムを所望の長さに切断するカッタとを含む、
請求項8に記載の装置。
【請求項10】
エンドエフェクタ上に繊維強化材のスプールをさらに備えており、
エンドエフェクタが、繊維強化材をスプールから圧密ローラへと導くガイドと、繊維強化材を所望の長さに切断するカッタとをさらに含む、
請求項8又は9に記載の装置。
【請求項11】
基板の表面に沿ってエンドエフェクタを移動させる自動制御式マニピュレータと、
エンドエフェクタ上に位置する繊維強化材供給部と、
をさらに備えており、
エンドエフェクタが、樹脂フィルムの供給部及び繊維強化材の供給部から、樹脂フィルム及び繊維強化材を、ほぼ整列して重なり合った状態で圧密ローラへと導くガイドを含んでいる、
請求項8ないし10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
エンドエフェクタが、圧密ローラへと案内される樹脂フィルム及び強化材を所望の長さに切断する少なくとも一つのカッタを含んでいる、請求項11に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−6415(P2013−6415A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−141252(P2012−141252)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】