説明

樹脂流路開閉機構及びその制御方法

【課題】射出成形装置等の樹脂流路を有する構造体において、弁移動機構を小型にすることができる技術を提供することを課題とする。
【解決手段】樹脂流路の軸Yに平行な通孔71が備えられている弁体72を加熱筒23に設ける。通孔71が樹脂流路に合うと弁開状態になり、通孔71が樹脂流路から外れると弁閉状態になる。
【効果】弁移動機構70は、弁体72を移動させる役割のみを果たす。すなわち、弁移動機構70の能力の大小は弁のシール性に影響しない。結果、弁移動機構70の小型化が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂流路の開閉を行う樹脂流路開閉機構に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂流路に溶融樹脂を間欠的に流すには、樹脂流路開閉機構が必要になる。
樹脂流路開閉機構には各種の形態のものが提案されてきた(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図11は従来の技術の基本構成を説明する図であり、射出機100の加熱筒101に、回転自在に且つ軸方向に移動自在にスクリュー102が収納される。
さらに、加熱筒101の先端に設けられるノズル103を開閉することを目的としたニードル104が加熱筒101に内蔵され、ニードル104を移動させるニードル駆動シリンダ105が加熱筒101の外側に配置される。ニードル104とニードル駆動シリンダ105はクランクレバー106で連結される。
【0004】
ニードル104は、加熱筒101内へ大きく張り出した支持部107で支持される。
可塑化・計量工程では、ニードル104でノズル103が塞がれ、この状態でスクリュー102が回転し樹脂材料を可塑化(溶融化)する。
射出工程では、ノズル103からニードル104を離し、射出シリンダ108でスクリュー102を前進させる。すると、溶融樹脂は、支持部107と加熱筒101との間の隙間109を通って、ノズル103から金型111へ射出される。
【0005】
ニードル104をノズル103に強く押し付けるほど、シール機能が高まり、樹脂漏れを防止することができる。そのためには、ニードル駆動シリンダ105の径を増加する必要があり、結果、クランクレバー106を丈夫にする必要がある。
クランクレバー106が大型化すると支持部107が大きくなる。この大きな支持部107に溶融樹脂が衝突し、回り込むため流路損失が増大し、スクリュー102を押す射出シリンダ108が大型になる。
【0006】
射出シリンダ108及びニードル駆動シリンダ105が大型になると、射出成形装置が大型化する。
しかし、射出成形装置等の樹脂流路を有する構造体の小型化が求められる中、射出シリンダ108及びニードル駆動シリンダ105を小型にすることができる構造が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−42680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、射出成形装置等の樹脂流路を有する構造体において、射出シリンダ及びニードル駆動シリンダを小型にすることができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、溶融した樹脂を流す樹脂流路が備えられ且つこの樹脂流路を所定の温度に保つ主ヒータが備えられている構造体に取付けられ、前記樹脂流路の開閉を行う樹脂流路開閉機構において、
前記樹脂流路の軸に直角な軸若しくは傾斜する軸に沿って移動可能に前記構造体に取付けられ前記樹脂流路の軸に平行に通孔が備えられている弁体と、前記構造体に取付けられ前記通孔が前記樹脂流路に合う弁開位置から前記通孔が前記樹脂流路から外れる弁閉位置まで前記弁体を移動させる弁移動機構と、前記構造体に取付けられ前記弁体を移動自在に支持する弁体支持機構と、この弁体支持機構に設けられ弁閉位置における前記通孔周りを加熱するサブヒータとからなる樹脂流路開閉機構が提供される。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、溶融した樹脂を流す樹脂流路が備えられ且つこの樹脂流路を所定の温度に保つ主ヒータが備えられている構造体に取付けられ、前記樹脂流路の開閉を行う樹脂流路開閉機構において、
前記樹脂流路の軸に直角な軸若しくは傾斜する軸に沿って移動可能に前記構造体に取付けられ前記樹脂流路の軸に平行に通孔が備えられている弁体と、前記構造体に取付けられ前記通孔が前記樹脂流路に合う弁開位置から前記通孔が前記樹脂流路から外れる弁閉位置まで前記弁体を移動させる弁移動機構と、前記構造体に取付けられ前記弁体を移動自在に支持する弁体支持機構とからなり、
前記主ヒータで前記弁体支持機構をも加熱するようにしたことを特徴とする樹脂流路開閉機構が提供される。
【0011】
請求項3に係る発明では、主ヒータは主温度制御部で制御され、サブヒータはサブ温度制御部で制御され、主ヒータとサブヒータは互いに独立して制御され、構造体の樹脂流路周りの温度と通孔周りの温度とを個別に設定できるようにしたことを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明では、弁体支持機構は、一端がキャップ部材で塞がれており、このキャップ部材は、断熱層を介して弁体支持機構に取付けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明では、請求項3記載の樹脂流路開閉機構を用いて行う樹脂流路開閉機構の制御方法において、構造体の樹脂流路周りの温度より通孔周りの温度が低く設定されることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明では、請求項4記載の樹脂流路開閉機構を用いて行う樹脂流路開閉機構の制御方法において、弁体の先端部は、常にキャップ部材に収納させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、樹脂流路の軸に平行な通孔が備えられている弁体を採用する。通孔が樹脂流路に合うと弁開状態になり、通孔が樹脂流路から外れると弁閉状態になる。
弁開状態では、弁体に起因する抵抗が殆ど無く、溶融樹脂は樹脂流路の軸に沿って直線的に流れる。結果、射出シリンダの能力を高める必要が無く、射出シリンダの小型化が図れる。
【0016】
また、ニードル駆動シリンダに相当する弁移動機構は、弁体を移動させる役割のみを果たす。すなわち、弁移動機構の能力の大小は弁のシール性に影響しない。
結果、弁移動機構の小型化が図れる。
本発明によれば、射出成形装置等の樹脂流路を有する構造体において、射出シリンダ及び弁移動機構を小型にすることができる技術が提供される。
【0017】
また、弁閉状態では通孔に溶融樹脂が残留している。弁体支持機構には通孔周りを加熱するサブヒータが備えられる。サブヒータで加熱されるため、通孔に残留する溶融樹脂が固まる心配はない。結果、通孔に残留する溶融樹脂は次に射出に供される。
【0018】
請求項2に係る発明では、請求項1と同様に、樹脂流路の軸に平行な通孔が備えられている弁体を採用する。通孔が樹脂流路に合うと弁開状態になり、通孔が樹脂流路から外れると弁閉状態になる。
弁開状態では、弁体に起因する抵抗が殆ど無く、溶融樹脂は樹脂流路の軸に沿って直線的に流れる。結果、射出シリンダの能力を高める必要が無く、射出シリンダの小型化が図れる。
【0019】
また、ニードル駆動シリンダに相当する弁移動機構は、弁体を移動させる役割のみを果たす。すなわち、弁移動機構の能力の大小は弁のシール性に影響しない。
結果、弁移動機構の小型化が図れる。
本発明によれば、射出成形装置等の樹脂流路を有する構造体において、射出シリンダ及び弁移動機構を小型にすることができる技術が提供される。
【0020】
また、弁閉状態では通孔に溶融樹脂が残留している。主ヒータで弁体支持機構をも加熱するようにした。主ヒータで加熱されるため、通孔に残留する溶融樹脂が固まる心配はない。結果、通孔に残留する溶融樹脂は次に射出に供される。
請求項2は、請求項1に比較して、サブヒータを別個設ける必要がないため、樹脂流路開閉機構のコストダウンが図れる。
【0021】
請求項3に係る発明では、主ヒータは主温度制御部で制御され、サブヒータはサブ温度制御部で制御され、主ヒータとサブヒータは互いに独立して制御される。
構造体で要求される温度と通孔周りで要求される温度が異なることがある。本発明によれば、主ヒータで暖める構造体とサブヒータで暖める弁体支持機構とを、異なる温度に設定することができる。
【0022】
請求項4に係る発明では、断熱層により、構造体からキャップ部材への熱伝導が遮断又は減少される。熱干渉がないため、構造体における温度制御とキャップ部材における温度制御が、共に良好に行われる。
【0023】
請求項5に係る発明では、構造体の樹脂流路周りの温度より通孔周りの温度が低く設定される。
弁閉状態では、弁体の通孔に残留する溶融樹脂は、サブヒータで加熱される。この際に、溶融樹脂が熱劣化することは避けなければならない。
本発明では、通孔周りの温度を下げることにより、残留する溶融樹脂の熱劣化を防止するようにした。
【0024】
請求項6に係る発明では、弁体の先端部は、常にキャップ部材に収納させるようにした。構造体にキャップ部材がボルト等で連結されている場合、構造体に対しキャップ部材がずれると弁体の移動に支障がでることがある。
本発明では、常に弁体の先端部がキャップ部材に進入しており、弁体の先端部がキャップ部材のずれを防止する作用を発揮する。結果、弁体の円滑な移動が継続される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】射出成形装置の全体図である。
【図2】図1の要部断面図である。
【図3】本発明に係る流路開閉機構の断面図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】本発明に係る流路開閉機構の作用図である。
【図6】図3の変更例を説明する図である。
【図7】図6の変更例を説明する図である。
【図8】図6のさらなる変更例を説明する図である。
【図9】図8の作用図である。
【図10】図8の変更例を説明する図である。
【図11】従来の技術の基本構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0027】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
本発明に係る流路開閉機構の詳細は、図3以降で説明するが、流路開閉機構の利用(使用)形態を、図1,2で先に説明する。また、請求項2に対応する実施例は図10で説明する。
【0028】
図1に示すように、射出成形装置10は、射出機20と、この射出機20に隣接して配置される型締装置30と、この型締装置30で型締めされ射出機20から溶融樹脂の供給を受ける金型40とからなる。
【0029】
射出機20は、機台21と、この機台21に射出軸X方向へ移動可能に支持されるスライダ22と、このスライダ22に支持される加熱筒23と、この加熱筒23に回転自在に且つ軸方向移動可能に内蔵されるスクリュー24と、加熱筒23の後端に設けられスクリュー24を軸方向へ移動させるシリンダユニット25と、このシリンダユニット25に付設されスクリュー24を回転させる回転手段26と、加熱筒23内へ樹脂材料を投入するホッパ27と、加熱筒23の先端に設けられるノズル28と、スライダ22を移動させる移動手段29とからなるスクリュー式射出機(スクリュー・イン・ライン式射出機)が好適である。
【0030】
スクリュー・イン・ライン式射出機では、加熱筒23の中心軸が、射出軸Xとなる。移動手段29により加熱筒23は射出軸Xに沿って移動される。
このような射出機20のノズル28近傍に、本発明の流路開閉機構70Bが取付けられる。すなわち、樹脂流路が備えられ構造体の代表例は加熱筒23である。
【0031】
型締装置30は、射出機20側に配置される固定盤31と、射出機20から遠い側に配置されるシリンダ支持盤32と、このシリンダ支持盤32と固定盤31に渡されるタイバー33、33と、これらのタイバー33、33に移動自在に支持される可動盤34と、シリンダ支持盤32に設けられ可動盤34を移動させる型締シリンダ35とからなる。型締シリンダ35はトグル・リンク機構であってもよい。
【0032】
型締装置30で型締めされる金型40は、固定盤31に取付けられる中間型41と、この中間型41に取付けられる固定型42と、可動盤34に取付けられる可動型43とからなり、固定型42と可動型43とでキャビティ44、44が形成される。
中間型41にも、本発明の本発明の流路開閉機構70が取付けられる。
【0033】
図2に示すように、中間型41は、大きな空洞状の収納部45を有し、この収納部45にランナーブロック46を収納する。収納部45に図面表裏方向に延びる上ブリッジ49、49及び下ブリッジ51、51を渡す。
固定型42側の上ブリッジ49とランナーブロック46との間に、逆方向押圧手段としての圧縮コイルばね53を介在させる。
同様に、固定型42側の下ブリッジ51とランナーブロック46との間に、逆方向押圧手段としての圧縮コイルばね53を介在させる。
【0034】
圧縮コイルばね53、53により、ランナーブロック46は、図右へ(射出機側へ)は付勢される。
逆方向押圧手段としての圧縮コイルばね53は、付勢手段であればよく、例えばその他の弾性体やシリンダユニットであってもよい。
【0035】
固定型42に、固定型側スプル55と固定型側ランナー56が設けられる。
一方、ランナーブロック46に、ブロック側スプル57とブロック内ランナー58が設けられる。このブロック内ランナー58の先端にブロック側ノズル59が設けられる。
【0036】
ランナーブロック46のブロック内ランナー58に、バルブ61、射出シリンダ62、流路開閉機構70がこの順に設けられている。すなわち、樹脂流路が備えられ構造体の別の代表例はランナーブロック46である。
【0037】
射出シリンダ62は、駆動ピストン64と、この駆動ピストン64から延びるピストンロッド65と、このピストンロッド65の先端に固定される従動ピストン66と、この従動ピストン66を囲う円筒67とからなり、この円筒67が溶融樹脂の貯留室となる。
【0038】
図示するように、ノズルタッチ前には、圧縮コイルばね53、53の作用で固定型側スプル55からブロック側ノズル59が十分に離れる。
射出機のノズル(図1、符号28)をブロック側スプル57へ押し当てる。するとランナーブロック46は押されて図左へ移動する。結果、固定型側スプル55にブロック側ノズル59が当たる。
【0039】
バルブ61を開き、流路開閉機構70を弁閉状態にする。そして、溶融樹脂を射出する。流路開閉機構70が弁閉状態であるため、溶融樹脂は従動ピストン66を押し上げつつ円筒67内に溜まる。溜まり量が所定量に達したら、バルブ61を閉じて流路開閉機構70を弁開状態にする。
【0040】
駆動ピストン64で従動ピストン66を前進(図では下降)させる。溶融樹脂はブロック側ノズル59と固定型側スプル55を通ってキャビティへ射出される。
【0041】
次に、流路開閉機構70の詳細を説明する。
図3に示すように、流路開閉機構70は、樹脂流路(ブロック内ランナー58)の軸Yに直角な軸Zに沿って移動可能に構造体としてのランナーブロック46に取付けられ樹脂流路の軸Yに平行に通孔71が備えられている棒状又は板状の弁体72と、中間型41にブラケット91を用いて取付けられ通孔71が樹脂流路(ブロック内ランナー58)に合う弁開位置から通孔71が樹脂流路から外れる弁閉位置まで弁体72を前進(図面下方へ)移動させ次に後進移動させる弁移動機構73と、ランナーブロック46に取付けられ弁体72の少なくとも先端部72aを常に収納するキャップ部材74と、このキャップ部材74に設けられるサブヒータ75と、このサブヒータ75を制御しキャップ部材74を所定の温度に保つサブ温度制御部76とからなる。
【0042】
ところで弁構造は、一般に、弁体と、この弁体を移動自在に収納する弁箱(弁体を移動自在に支持する弁体支持機構に相当)と、弁体を移動させるアクチュエータ(弁移動機構)とから構成される。図3において、想像線で示す箱本体部80と、この箱本体部80の一端(弁移動機構73から最も遠い方の端)を閉じるキャップ部材74とで、弁体支持機構が構成される。この例では箱本体部80は、中間型41に一体形成したが、箱本体部80を別個作製し、ランナーブロック46に嵌めるようにしても良い。
【0043】
図4に示すように、弁体72が円柱の場合は、切削により平坦面72b、72bを形成し、回転(空転)を防止するようにすることが望ましい。
【0044】
図3に示すように、弁移動機構73は、アクチュエータであれば種類は問わないが、この例では、シリンダ77とピストン78とピストンロッド79からなる油圧シリンダを採用した。シリンダ77にストローク調整用ねじ81を設け、この調整用ねじ81で、ピストン78の後退限(ストロークエンド)を決めることで、通孔71を樹脂流路(ブロック内ランナー58)に合わせることができる。
【0045】
キャップ部材74は、弁体72の先端部72aを収納するポケット部82を有するブロックが好適であり、シート状断熱材からなる断熱層83を介してランナーブロック46にボルト84、84で取付けられる。
【0046】
熱膨張収縮が繰り返されると、ランナーブロック46に対してキャップ部材74が僅かにずれることがある。このずれにより、弁体72がポケット部82に進入し難くなることがある。
対策として、弁体72の先端部72aを常にポケット部82に介在させ、先端部72aでキャップ部74のずれを防止することが有効となる。
【0047】
樹脂流路(ブロック内ランナー58)は、主ヒータ85で囲われる。この主ヒータ85は主温度センサ86で温度情報がフィードバックされる主温度制御部87で制御される。
これとは別に、サブヒータ75はサブ温度センサ88で温度情報がフィードバックされるサブ温度制御部76で制御される。
主ヒータ85とサブヒータ75は互いに独立して制御され、樹脂流路(ブロック内ランナー58)周りの温度と通孔71周りの温度とを個別に設定できるようにした。
【0048】
図3に示す流路開閉機構70は弁開状態とされ、この状態で射出工程が実施される。射出工程が終了すると、弁移動機構73が作動され、ピストン78及びピストンロッド79が前進し始める。すると、弁体72が前進移動(図下へ移動)を開始し、弁体72の先端部72aがポケット部82へ進入する。
【0049】
図5に示すように、弁体72の先端部72aがポケット部82へ大きく進入し、通孔71が樹脂流路(ブロック内ランナー58)から外れる。弁体72の一般面(通孔71を除く面)が樹脂流路(ブロック内ランナー58)を塞ぎ、流路開閉機構70は弁閉状態になる。この状態で、可塑化・計量工程を実施する。
【0050】
弁閉中は、溶融樹脂89が通孔71に残留する。この残留した溶融樹脂89が凝固すると、次の射出ができなくなる。そこで、サブヒータ75で所望の温度に保つことで、凝固を防ぐようにした。
【0051】
好ましくは、樹脂流路(ブロック内ランナー58)周りの温度より通孔71周りの温度を低く設定する。
樹脂流路(ブロック内ランナー58)周りの温度は、射出に要求される射出温度である。通孔71周りの温度は、射出温度より低く、樹脂の凝固温度より高く設定される。
【0052】
樹脂の種類によっては、弁体72とポケット部82との隙間に侵入し滞留する溶融樹脂89が、射出温度に長時間保たれると熱劣化することがある。低い温度に保つことで、溶融樹脂89の熱劣化を防止することができる。
【0053】
なお、断熱層83が無いときには、高温側のランナーブロック46から低温側のキャップ部材74に熱が伝わり、通孔71周りを低温に制御することが難しくなる。
断熱層83を設けることで、中間型41とキャップ部材74とを熱的に絶縁することができ、通孔71周りの温度を容易に制御することができる。
【0054】
弁閉状態で、通孔71がキャップ部材74に、全部又は一部が入ることが望まれる。断熱層83の熱的絶縁作用が期待できるからである。
【0055】
次に、流路開閉機構70Bの詳細を、図6に基づいて説明する。
図6に示すように、流路開閉機構70Bは、樹脂流路(ノズル28)の軸Yに直角な軸Zに沿って移動可能に構造体としての加熱筒23に取付けられ樹脂流路の軸Yに平行に通孔71が備えられている棒状又は板状の弁体72と、加熱筒23にブラケット91を用いて取付けられ通孔71が樹脂流路(ノズル28)に合う弁開位置から通孔71が樹脂流路から外れる弁閉位置まで弁体72を前進(図面下方へ)移動させ次に後進移動させる弁移動機構73と、加熱筒23に取付けられ弁体72を移動自在に支持する弁体支持機構90と、この弁体支持機構90に設けられる弁閉位置における通孔71周りを加熱するサブヒータ75と、このサブヒータ75を制御し通孔71周りを所定の温度に保つサブ温度制御部76とからなる。
【0056】
弁体支持機構90は、筒状の箱本体部80と、この箱本体部80の一端を閉じるキャップ部材74とからなる。この例では、箱本体部80は加熱筒23とは別に作製され、加熱筒23に嵌められる。
【0057】
箱本体部80が交換可能であるため、摩耗が進行したときに箱本体部80を交換することができる。または、箱本体部80を、加熱筒23より耐摩耗性に富む硬い材料で作製することもできる。ただし、箱本体部80を加熱筒23に一体形成して、弁体72を直接加熱筒23に差し込むこと差し支えない。
【0058】
その他は、図3と同様であるため、図3の符号を流用して説明は省略する。
【0059】
次に、図6の変更例を図7で説明する。
図7に示すように、樹脂流路の軸Yに対して傾斜する軸Z1に沿って、弁体72を移動自在に配置してもよい。その他は、図6と同様であるため、図6の符号を流用して説明を省略する。
【0060】
次に、図6のさらなる変更例を図8で説明する。
図8に示すように、弁体支持機構90Bは、底有り筒体からなる。そして、このような弁体支持機構90Bに、弁体72が軸Zに沿って移動自在に収納されている。図では弁体72は下限位置にあり、且つ弁開状態にある。そして、サブヒータ75は、弁体支持機構90Bの図面上半部分に設けられる。
【0061】
図9は図8の作用図であり、弁体72は上昇し、上限位置にあり、且つ弁閉状態にある。この弁閉状態で、通孔71がサブヒータ75で加熱され、通孔71に残留する溶融樹脂89が凝固しないように所望の温度に保持される。
図9に示すように弁体72を上方へ移動して弁閉状態にすることや、図5に示すように弁体72を下方へ移動して弁閉状態にすることができるため、弁体72の移動方向は限定されない。
【0062】
上述の図3では、サブヒータ75及びサブ温度制御部76を備えたが、これらを省くことにより樹脂流路開閉機構のコストダウンを図ることができる。図7、図8も同様である。その具体例を、図10で説明する。
【0063】
図10に示すように、弁体支持機構90Bを、主ヒータ85で囲う。すなわち、主ヒータ85は加熱筒23を加熱すると共に、弁体支持機構90Bを加熱する。
主ヒータ85で加熱されるため、通孔71に残留する溶融樹脂が固まる心配はない。結果、通孔71に残留する溶融樹脂は次に射出に供される。
その他の構成要素は、図6及び図8で説明済みであるから、詳細な説明は省略する。
【0064】
尚、構造体は、加熱筒23や中間型41の他、樹脂流路を有する物であれば種類は問わない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の流路開閉機構は、金型内や射出機のノズル近傍に配置することが望ましい。
【符号の説明】
【0066】
23…構造体としての加熱筒、41…構造体としての中間型、70、70B…流路開閉機構、71…通孔、72…弁体、73…弁移動機構、74…キャップ部材、75…サブヒータ、76…サブ温度制御部、80…箱本体部、83…断熱層、85…主ヒータ、87…主温度制御部、90、90B…弁体支持機構、Y…樹脂流路の軸、Z…軸Yに直角な軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融した樹脂を流す樹脂流路が備えられ且つこの樹脂流路を所定の温度に保つ主ヒータが備えられている構造体に取付けられ、前記樹脂流路の開閉を行う樹脂流路開閉機構において、
前記樹脂流路の軸に直角な軸若しくは傾斜する軸に沿って移動可能に前記構造体に取付けられ前記樹脂流路の軸に平行に通孔が備えられている弁体と、前記構造体に取付けられ前記通孔が前記樹脂流路に合う弁開位置から前記通孔が前記樹脂流路から外れる弁閉位置まで前記弁体を移動させる弁移動機構と、前記構造体に取付けられ前記弁体を移動自在に支持する弁体支持機構と、この弁体支持機構に設けられ弁閉位置における前記通孔周りを加熱するサブヒータとからなる樹脂流路開閉機構。
【請求項2】
溶融した樹脂を流す樹脂流路が備えられ且つこの樹脂流路を所定の温度に保つ主ヒータが備えられている構造体に取付けられ、前記樹脂流路の開閉を行う樹脂流路開閉機構において、
前記樹脂流路の軸に直角な軸若しくは傾斜する軸に沿って移動可能に前記構造体に取付けられ前記樹脂流路の軸に平行に通孔が備えられている弁体と、前記構造体に取付けられ前記通孔が前記樹脂流路に合う弁開位置から前記通孔が前記樹脂流路から外れる弁閉位置まで前記弁体を移動させる弁移動機構と、前記構造体に取付けられ前記弁体を移動自在に支持する弁体支持機構とからなり、
前記主ヒータで前記弁体支持機構をも加熱するようにしたことを特徴とする樹脂流路開閉機構。
【請求項3】
前記主ヒータは主温度制御部で制御され、前記サブヒータはサブ温度制御部で制御され、前記主ヒータと前記サブヒータは互いに独立して制御され、前記構造体の前記樹脂流路周りの温度と前記通孔周りの温度とを個別に設定できるようにしたことを特徴とする請求項1記載の樹脂流路開閉機構。
【請求項4】
前記弁体支持機構は、一端がキャップ部材で塞がれており、このキャップ部材は、断熱層を介して前記弁体支持機構に取付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の樹脂流路開閉機構。
【請求項5】
請求項3記載の樹脂流路開閉機構を用いて行う樹脂流路開閉機構の制御方法において、
前記構造体の前記樹脂流路周りの温度より前記通孔周りの温度が低く設定されることを特徴とする樹脂流路開閉機構の制御方法。
【請求項6】
請求項4記載の樹脂流路開閉機構を用いて行う樹脂流路開閉機構の制御方法において、
前記弁体の先端部は、常に前記キャップ部材に収納させるようにしたことを特徴とする樹脂流路開閉機構の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−56450(P2013−56450A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195438(P2011−195438)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】