説明

樹脂粒子

【課題】 光散乱強度が高い樹脂粒子を提供する。
【解決手段】 第一の樹脂(a)からなる体積平均粒子径が0.1〜2.0μmの微粒子(A)が平均1.5個以上第二の樹脂(b)に内包されてなり、体積平均粒子径が0.3〜80μmである樹脂粒子を用いる。第一の樹脂(a)と第二の樹脂(b)の屈折率差が0.02〜0.23であり、第一の樹脂(a)の溶解度パラメーター(SP値)が第二の樹脂(b)のSP値より低く、(a)と(b)のSP値の差(ΔSP)が1〜5であるものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂粒子としては、各種の樹脂組成から構成されるものが提案されている。特に、体積平均粒子径が0.1〜80μm程度の樹脂粒子は、塗料用添加剤、化粧用添加剤及び電子部品製造部材などに使用されている。これらの樹脂粒子には、その用途に応じて各種の要求性能が求められているが、これらの用途に共通の課題として光学特性としての光散乱強度が低いという問題点があった。例えば、光散乱強度が低いと、ギラツキなどの現象により、外観が悪くなるという問題があった。その他、液晶ディスプレイ等に使用されるAGフィルムでは光学特性として光散乱強度が高く、尚且つコントラストを低下させないような樹脂粒子が望まれている。
【0003】
これらの樹脂粒子として用いられているものには、無機系粒子、アクリル系樹脂粒子やシリコン系樹脂粒子などが挙げられるが、無機系粒子やアクリル系樹脂粒子は光散乱強度は解決されているが、柔軟性や変形回復率が共に不十分であり、一方のシリコン系樹脂粒子は、光散乱強度が不十分であるという問題点があった(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−180820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、光散乱強度が高い樹脂粒子を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究した結果本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、第一の樹脂(a)からなる体積平均粒子径が0.1〜2.0μmの微粒子(A)が平均1.5個以上第二の樹脂(b)に内包されてなり、体積平均粒子径が0.3〜80μmである樹脂粒子である。
また、本発明は、第一の樹脂(a)からなる微粒子(A)と第二の樹脂(b)の前駆体(b´)を有機溶媒中に溶解または分散させた溶液または分散液を、必要により乳化剤を含有した水性媒体と混合し、乳化した後に脱有機溶媒し、さらに第二の樹脂(b)の前駆体(b´)を反応させる工程を含むことを特徴とする上記の樹脂粒子の製造方法でもある。
【発明の効果】
【0007】
本発明の樹脂粒子は、光散乱強度が高く、変形回復率に優れた樹脂粒子である。また、粒子径分布がシャープである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の樹脂粒子に使用される微粒子(A)は、体積平均粒子径が通常0.1〜2.0μm、好ましくは0.15〜1.0μm、更に好ましくは0.2〜0.8μmである。
微粒子(A)の体積平均粒子径が上記範囲内より大き過ぎても小さ過ぎても、十分な光散乱強度は得られない。また、小さ過ぎる場合は一次粒子としての安定性が損なわれる可能性がある。
【0009】
微粒子(A)の体積平均粒子径は、以下の条件で測定できる。
装置:堀場製作所製 LB−550/動的光散乱式粒径分布測定装置
測定範囲:1nm〜6000nm
【0010】
本発明の樹脂粒子において、第一の樹脂(a)からなる微粒子(A)は、第二の樹脂(b)に内包されている。内包されているとは、(b)を主成分とする樹脂粒子の表面より内部に微粒子(A)が存在していることを意味する。
本発明明の樹脂粒子中に内包される微粒子(A)の個数は、平均1.5個以上が好ましく、平均5〜100個が更に好ましい。微粒子(A)が1.5個未満の場合、十分な光散乱強度が得られない。
【0011】
本発明においては、以下の式(1)により求められる値を、本発明の樹脂粒子に内包される微粒子(A)の平均の個数であるとみなす。

微粒子(A)の個数=[MA×L3×(da×MA+db×Mb)]
/[da×l3×(MA+Mb)2 ] (1)

[ここで、MAは微粒子(A)の重量(g)、Mbは樹脂(b)の重量(g)、daは樹脂(a)の比重(g/cm3)、dbは樹脂(b)の比重(g/cm3)、lは微粒子(A)の体積平均粒子径(μm)、Lは本発明の樹脂粒子の体積平均粒子径(μm)を表す。]
【0012】
本発明の樹脂粒子は、体積平均粒子径が、通常0.3〜80μm、好ましくは0.5〜20μm、更に好ましくは1.0〜10μmであり、かつ粒度分布の変動係数(以下において、CVと略記することがある。)が、好ましくは0.1〜30%、さらに好ましくは0.1〜20%である。変動係数(CV)とは、粒子径分布における標準偏差を平均粒子径で除した値を百分率で表示したものであって、粒子径分布の指標となる。変動係数(CV)が小さいほど単分散に近くなる。
【0013】
体積平均粒子径及び粒度分布のCVの測定は、エレクトロゾーン法で行い、以下の条件で測定できる。
装置 :ベックマン・コールター社製 マルチサイザーIII
測定範囲 :0.4〜1200μm
測定資料濃度 :アパーチャー詰まりが発生せぬよう、適宜設定。水で希釈し使用する。
【0014】
本発明において、樹脂粒子の構成成分である第一の樹脂(a)と第二の樹脂(b)の屈折率差(Δ屈折率)は、好ましくは0.02〜0.23であり、さらに好ましくは0.04〜0.20である。Δ屈折率が0.02以上では光散乱強度がより高くなり、0.23以下であると微粒子(A)が第二の樹脂(b)内で良好に分散され、光散乱強度がより向上する。
【0015】
本発明において、樹脂粒子の構成成分である微粒子(A)を構成する第一の樹脂(a)のSP値は、第二の樹脂(b)のSP値より低いことが好ましい。(a)のSP値が(b)のSP値よりも低い場合、微粒子(A)が第二の樹脂(b)内に良好に取り込まれ、光散乱強度が向上する。第一の樹脂(a)のSP値と、第二の樹脂(b)のSP値との差(ΔSP)は好ましくは1〜5であり、更に好ましくは1.5〜4である。ΔSPが1以上では光散乱強度がさらに高い粒子になり、また、ΔSPが5以下であると微粒子(A)が第二の樹脂(b)内で良好に分散され、光散乱強度がさらに向上する。なお、本発明におけるΔSPは、(b)のSP値から(a)のSP値を差し引いた正の値である。
【0016】
本発明におけるSP値は、Fedors法[Polym.Eng.Sci.14(2)P152,(1974)]によって算出される値である。
【0017】
本発明の樹脂粒子中の微粒子(A)の含有量は、光散乱強度、柔軟性及び変形回復率の観点から、好ましくは10〜50重量%、更に好ましくは12〜30重量%である。
【0018】
本発明の樹脂粒子の製造方法は特に限定されないが、微粒子(A)を第二の樹脂(b)の前駆体(b´)と共に水系乳化重合して得られたものが好ましい。
【0019】
また、微粒子(A)は、第一の樹脂(a)から構成され、体積平均粒子径が前記範囲内のものであれば、特に限定されないが、第一の樹脂(a)の前駆体(a´)を水系乳化重合して得られたものが好ましい。
【0020】
第一の樹脂(a)及び第二の樹脂(b)としては、例えば、ビニル系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂及びこれらの混合物等が使用できる。これらのうち、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びこれらの混合物が好ましく、さらに好ましくは、ビニル樹脂、およびビニル樹脂とウレタン樹脂の複合樹脂であり、とくに好ましくは、ビニル重合性二重結合を有するウレタン樹脂(u)の二重結合を、必要により他のビニルモノマーとビニル重合させて得られる(共)重合体(U)〔特に(u)の構成単位の含有量が80重量%以上〕である。
なお、本発明において、(共)重合体は、単独重合体または共重合体を意味する。
【0021】
以下において、樹脂粒子を構成する成分である、樹脂(a)の前駆体(a´)、及び樹脂(b)の前駆体(b´)について説明する。
【0022】
第一の樹脂(a)及び第二の樹脂(b)としてさらに好ましい樹脂である、ビニル樹脂及びビニル樹脂とウレタン樹脂の複合樹脂に使用する、前駆体(a´)及び前駆体(b´)としては、芳香族ビニル単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、(メタ)アリルエステル単量体、(メタ)アリルエーテル単量体、ビニルエーテル単量体及びビニル重合性二重結合を有するウレタン樹脂(u)等が挙げられる。
【0023】
芳香族ビニル単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−、m−、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン及びジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0024】
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、(メタ)アクリル酸と多価アルコール類とのエステル、例えばエチレングリコールジアクリレート及びメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート及びメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びメタクリレート並びにジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0025】
(メタ)アリルエステル単量体としては、(メタ)アリルアルコールと多価カルボン酸類とのエステル、例えばジアリルフタレート及びトリメリット酸トリアリルエステル等が挙げられる。
【0026】
(メタ)アリルエーテル単量体としては、多価アルコール類のポリ(メタ)アリルエーテル、例えばペンタエリスリトールトリアリルエーテル及びメタリルエーテル等が挙げられる。
【0027】
ビニルエーテル単量体としては、多価アルコール類のポリビニルエーテル、例えばエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0028】
その他、多価アルコール類のポリプロペニルエーテル(エチレングリコールジプロペニルエーテル等)、マレイン酸とジオールとのエステル及びイタコン酸とジオールとのエステル(エチレンジイタコネート等)が挙げられる。
【0029】
ビニル重合性二重結合を有するウレタン樹脂(u)として好ましいのは、ビニル重合性二重結合を1分子中に、好ましくは平均で1個以上、さらに好ましくは1〜2個有するものであり、従来から公知のウレタン樹脂の片末端、両末端及び/又はペンダント位置にビニル重合性二重結合を有する構造の変性ウレタン樹脂である。これらのうち、片末端又は両末端にビニル重合性二重結合を有するウレタン樹脂は、通常、ポリオール成分とジイソシアネートを反応させて得られる末端イソシアネート基を有するウレタン樹脂プレポリマーの末端を、(メタ)アクリレート化又は(メタ)アリル化して得られる。
【0030】
前記ポリオール成分としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール、ポリオレフィンポリオール、ポリマーポリオール及びひまし油ポリオール等が挙げられる。
【0031】
ポリエーテルポリオールとしては、低分子活性水素原子含有化合物のアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。前記低分子活性水素原子含有化合物としては、芳香族ポリヒドロキシ化合物及び脂肪族ポリヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0032】
芳香族ポリヒドロキシ化合物としては、ビスフェノール類、例えばビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールS、ジエチルスチルベストロール、4,4´−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、3,3´−チオビスフェノール及び4,4´−(3,4−ヘキサンジイル)ビスフェノール等が挙げられる。
【0033】
また、脂肪族ポリヒドロキシ化合物としては、アルカンジオール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール及びヘキシレングリコール等並びに3価以上のアルカンポリオール、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0034】
低分子活性水素原子含有化合物のうち、好ましいのは、得られる樹脂粒子の光散乱強度の観点から、芳香族ポリヒドロキシ化合物、更に好ましいのはビスフェノールA、ビスフェノールB及び4,4´−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)であり、特に好ましいのはビスフェノールA及びビスフェノールSであり、とりわけ好ましいのはビスフェノールAである。
【0035】
低分子活性水素原子含有化合物に付加されるアルキレンオキサイド(以下、AOと略記する。)としては、炭素数2〜12又はそれ以上のAO、例えばエチレンオキサイド(以下、EOと略記する。)、1,2−プロピレンオキサイド(以下、POと略記する。)、1,2−、2,3−及び1,3−ブチレンオキサイド、α−オレフィンオキサイド、スチレンオキサイド、エピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等)、及びこれらの2種以上の併用(ランダム及び/又はブロック)が挙げられ、SP値の観点から好ましいのはEO及び/又はPOであり、更に好ましいのはPOである。
【0036】
ポリエーテルポリオールの製造は通常の方法で行うことができ、無触媒又は公知の触媒の存在下で、反応温度は通常50〜150℃、反応時間は通常2〜20時間である。2種類以上のAOを併用する場合はブロック付加(チップ型、バランス型、活性セカンダリー型等)でもランダム付加でも両者の混合系でもよい。
【0037】
ポリエーテルポリオールの数平均分子量(以下、Mnと略記する。)は、好ましくは300〜1300、更に好ましくは320〜1200、特に好ましくは340〜1100である。尚、本発明におけるポリエーテルポリオールのMnは水酸基価と出発物質の官能基数から計算されるMnである。
【0038】
前記ポリエステルポリオールとしては、通常の方法、すなわちジオール成分(例えば前記アルカンジオールの単独又は2種以上の混合物等)とジカルボン酸成分{脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸及びセバチン酸等)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸及びフタル酸等)等の単独又は2種以上の混合物等}とを反応(縮合)させることによる方法、又はラクトン(ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン及びγ−バレロラクトン等の単独又は2種以上の混合物等)を開環重合させることによる方法で得られるもの等が挙げられる。
【0039】
前記ポリカーボネートジオール等としては、通常の方法、すなわちジオール成分(例えば前記アルカンジオールの単独又は2種以上の混合物等)とエチレンカーボネートを反応させ脱エチレングリコール化による方法、又は上記ジオール成分とアリールカーボネート、例えばジフェニルカーボネートとのエステル交換反応による方法で得られるもの等が挙げられる。
【0040】
前記ウレタン樹脂プレポリマーのポリオール成分として好ましいのは、SP値の観点からポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールであり、更に好ましいのは光散乱強度の観点から芳香族ポリヒドロキシ化合物のAO付加物であり、特に好ましいものの例としては、ビスフェノールAのPO2〜20モル付加物、ビスフェノールAのEO2〜20モル付加物、及びビスフェノールSのPO2〜20モル付加物等が挙げられる。
【0041】
前記ウレタンプレポリマーの製造に使用できるポリイソシアネートとしては、通常のポリイソシアネートが挙げられ、例えば、脂肪族ジイソシアネート[エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネート等]、脂環族ジイソシアネート[イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記する。)、ジシクロヘキシルメタン−4,4´−ジイソシアネート(以下、水添MDIと略記する。)、ジシクロヘキシレンジイソシアネート及びメチルシクロヘキシレンジイソシアネート(以下、水添TDIと略記する。)等]、芳香脂肪族ジイソシアネート[m−及び/又はp−キシリレンジイソシアネート(以下、XDIと略記する。)、α,α,α´,α´−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(以下、TMXDIと略記する。)等]、芳香族ジイソシアネート[2,4−トルエンジイソシアネート(以下、TDIと略記する。)等]及びこれらのジイソシアネートの変性物(カーボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基及びウレア基等を有するジイソシアネート)、並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。ポリイソシアネートのうち好ましいものは、光散乱強度の観点から、脂環族ジイソシアネート及び芳香脂肪族ジイソシアネートであり、更に好ましいものは、IPDI、XDI及びTMXDIである。
【0042】
ウレタン樹脂プレポリマーは、例えば、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートを、1/1.5〜1/1.06の当量比(水酸基/NCO基)で通常のウレタン化反応の条件で反応させて得ることができ、得られるプレポリマーの末端NCO含量は、好ましくは0.5〜7重量%である。
【0043】
ウレタン樹脂プレポリマーの末端のイソシアネート基を(メタ)アクリレート化又は(メタ)アリル化する方法は、イソシアネート基と反応可能な活性水素基を有する(メタ)アクリレート化合物又は(メタ)アリル化合物を、ウレタン樹脂プレポリマーに反応させる方法が挙げられる。前記(メタ)アクリレート化合物としては2−ヒドロキシエチルアクリレート(以下、HEAと略記する。)及び2−ヒドロキシエチルメタアクリレート(以下、HEMAと略記する。)等が挙げられる。前記(メタ)アリル化合物としては、アリルアルコール及びメタリルアルコール等が挙げられる。末端の(メタ)アクリレート化反応は、例えば、プレポリマーのNCO基と(メタ)アクリレート化合物の水酸基の当量比が1/1〜1/1.2で、40〜80℃で6〜48時間反応させることで達成できる。
【0044】
本発明におけるビニル重合性二重結合を有するウレタン樹脂(u)のMnは、屈折率とSP値の観点から、好ましくは500〜8000、更に好ましくは800〜5000、特に好ましくは1000〜4000である。尚、(u)のMnは、末端NCO含量から算出されるプレポリマーのMnに(メタ)アクリレート基の分子量を加えて計算されるMnである。
【0045】
(u)のうちで、好ましいものは、光散乱強度、柔軟性及び変形回復率の観点から、芳香族ポリヒドロキシ化合物のAO付加物とポリイソシアネートを反応させて得られるウレタン樹脂プレポリマーの末端のイソシアネート基を(メタ)アクリレート化して得られる(メタ)アクリル変性ウレタン樹脂〔芳香族ポリヒドロキシ化合物のAO付加物を構成単位として含有する(メタ)アクリル変性ウレタン樹脂〕であり、更に好ましいのは、ビスフェノールAのEO及び/又はPOの2〜20モル付加物とポリイソシアネート(好ましくはXDI)から得られるプレポリマーの両末端を(メタ)アクリレート化して得られる(メタ)アクリル変性ウレタン樹脂及びビスフェノールSのEO又はPOの2〜20モル付加物とポリイソシアネート(好ましくはXDI)から得られるプレポリマーの両末端を(メタ)アクリレート化して得られる(メタ)アクリル変性ウレタン樹脂である。
【0046】
ビニル樹脂の場合は、上記単量体を単独または共重合させて得られる。ビニル樹脂とウレタン樹脂の複合樹脂の場合は、ビニル重合性二重結合を有するウレタン樹脂(u)と、必要により(u)以外の上記の単量体とを単独または共重合させて得られる。
【0047】
本発明の樹脂粒子の製造方法としては、第一の樹脂(a)からなる微粒子(A)と第二の樹脂(b)の前駆体(b´)を有機溶媒中に溶解または分散させた溶液または分散液を、必要により乳化剤を含有した水性媒体と混合し、乳化した後に脱有機溶媒を行い、さらに加熱することで第二の樹脂の前駆体(b´)を重合し、固液分離する方法等が挙げられる。
【0048】
微粒子(A)の製造方法としては、第一の樹脂(a)の前駆体(a´)を有機溶媒中に溶解又は分散させた溶液を、必要により乳化剤を含有した水性媒体と混合し、乳化した後に脱有機溶媒し、加熱して乳化重合し、固液分離する方法等が挙げられる。
【0049】
微粒子(A)の体積平均粒子径は乳化時間または乳化剤量を変化させることで調整可能である。乳化時間が長い、あるいは乳化剤量が多いほど、粒子径は小さくなる。
【0050】
前駆体(a´)及び前駆体(b´)を溶解できる有機溶媒としては、酢酸エチル及び酢酸イソプロピルなどのエステル系溶媒、トルエン及びキシレン等の芳香環系溶媒等が挙げられる。好ましい有機溶媒は、蒸気圧が高いので脱溶剤し易いという観点から酢酸エチル及びトルエンである。有機溶剤の使用量は、(a´)及び(b´)の合計100重量部に対して、好ましくは10〜400重量部、更に好ましくは100〜300重量部である。
【0051】
乳化重合するのに必要なラジカル重合開始剤は、好ましくは前記(a´)及び(b´)の溶液[以下において、重合性溶液と略記する場合がある。]中に溶解して使用される。ラジカル重合開始剤としては通常の乳化重合に使用できる開始剤であれば特に限定されず、例えば有機過酸化物及びアゾ系化合物等が好適に用いられる。有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド及びその誘導体、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシブチレート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等が挙げられる。また、アゾ系化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。ラジカル重合開始剤の配合量は、(a´)及び(b´)の合計100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、更に好ましくは3〜8重量部である。
【0052】
前記重合性溶液と混合される、必要により乳化剤を含む水性媒体[以下において、乳化剤水溶液と略記する場合がある。]において使用される乳化剤としては、(a´)及び(b´)を安定に乳化でき、かつ得られる樹脂粒子をも安定に分散できるものであればとくに限定されず、下記のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び高分子型界面活性剤等が挙げられる。
【0053】
アニオン性界面活性剤としては、炭素数8〜24の炭化水素基を有する、エーテルカルボン酸、硫酸エステル、エーテル硫酸エステル、スルホン酸、スルホコハク酸、リン酸エステル、エーテルリン酸エステル及びそれらの塩、脂肪酸塩並びにアシル化アミノ酸塩等が挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、脂肪族アルコール(炭素数8〜24)AO(炭素数2〜8)付加物、多価(2価〜10価又はそれ以上)アルコール脂肪酸(炭素数8〜24)エステル、脂肪酸(炭素数8〜24)アルカノールアミド、(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8)アルキル(炭素数1〜22)フェニルエーテル、(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8)アルキル(炭素数8〜24)アミン、並びにアルキル(炭素数8〜24)ジアルキル(炭素数1〜6)アミンオキシド等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩型及びアミン塩型カチオン性界面活性剤が挙げられる。両性界面活性剤としては、ベタイン型両性界面活性剤及びアミノ酸型両性界面活性剤等が挙げられる。高分子型界面活性剤としては、不飽和カルボン酸/オレフィン共重合体等が挙げられる。
【0054】
上記の界面活性剤のうち好ましいものはアニオン性界面活性剤、高分子型界面活性剤及びこれらの併用であり、特に好ましいものとしては、スチレン化アルキルフェノールのEO付加物の硫酸エステル塩(例えば「エレミノールLD−7」三洋化成工業(株)製)、アルキル化ジフェニルエーテルのスルホン酸塩(例えば「エレミノールMON−7」三洋化成工業(株)製)及び不飽和カルボン酸/オレフィン共重合体(例えば「エレミノールPS−8」三洋化成工業(株)製)等が挙げられる。
【0055】
なお、得られる樹脂粒子の分散安定性の向上と粒子径分布を狭くするために、必要により更に保護コロイド及び/又は目的とする本発明の樹脂粒子の平均粒子径の好ましくは1/10以下、更に好ましくは1/20〜1/300の平均粒子径を有する樹脂微粒子を含有させてもよい。前記保護コロイドとしては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、デンプン及びその誘導体、並びにポリアクリル酸ソーダ等のカルボキシル基含有(共)重合体でMn=1,000〜50,000のもの等が挙げられる。前記樹脂微粒子を構成する樹脂としては、水性分散液を形成し、かつ水性媒体及び前記有機溶剤に不溶の樹脂であることが好ましく、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよく、例えば、本発明の樹脂粒子とは異なる組成からなるビニル系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂微粒子は、通常は水性分散体の形態で添加されるため、水性分散体が得られやすいという観点から、好ましいのはビニル系樹脂、ウレタン樹脂及びそれらの併用である。
【0056】
また、通常の乳化重合と同様に、系内のpHを制御するためにpH調整剤を含有してもよい。pH調整剤のうちの酸性化合物としては酢酸等の有機酸が挙げられ、アルカリ性化合物としてはアミン化合物等が挙げられる。
【0057】
乳化剤水性液における水性媒体としては、水及び水と水溶性溶媒の混合溶媒が挙げられる。混合溶媒中での水溶性溶媒の比率は0〜30重量%が好ましい。水溶性溶媒としては、アルコール類(メタノール及びエタノール等)、ケトン類(アセトン等)、エーテル類(テトラヒドロフラン等)等が挙げられる。
【0058】
乳化剤水性液における乳化剤の含有量は、乳化剤水性液の重量に基づいて20重量%以下が好ましく、更に0.1〜10重量%が好ましい。乳化剤水性液において、保護コロイド及び/又は分散性向上用微粒子を使用する場合の合計の含有量は、乳化剤水性液の重量に基づいて10重量%以下が好ましく、更に5重量%以下が好ましい。
【0059】
前記重合性溶液を乳化剤水性液と混合して乳化する工程において使用できる乳化分散設備としては、一般に乳化機又は分散機として市販されているものであれば特に限定されず、例えば、ホモジナイザー(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)TKオートホモミキサー(プライミクス社製)等のバッチ式乳化機、エバラマイルダー(荏原製作所社製)、TKフィルミックス、TKパイプラインホモミキサー(プライミクス社製)、コロイドミル(神鋼パンテック社製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(三井三池化工機社製)、キャピトロン(ユーロテック社製)等の連続乳化機、マイクロフルイダイザー(みずほ工業社製)ナノマイザー(ナノマイザー社製)、APVガウリン(ガウリン社製)等の高圧乳化機、膜乳化機(冷化工業社製)等の膜乳化機、バイブロミキサー(冷化工業社製)等の振動式乳化機、超音波ホモジナイザー(ブランソン社製)等の超音波乳化機等が挙げられる。これらのうち粒径の均一化の観点で好ましいものは、APVガウリン、ホモジナイザー、TKオートホモミキサー、エバラマイルダー、TKフィルミックス及びTKパイプラインホモミキサーである。
【0060】
上記の混合及び乳化工程における温度は、好ましくは0〜40℃であり、更に好ましくは10〜30℃である。工程中の撹拌回転数は好ましくは6000〜20000rpmであり、更に好ましくは8000〜16000rpmである。乳化時間は、好ましくは10〜120秒、更に好ましくは20〜90秒である。
【0061】
前記の乳化工程で得られた乳化物は、引き続いて脱有機溶媒を行う。装置としては、バッチ式反応槽内での攪拌下での常圧若しくは減圧下での留去及びフィルムエバポレーター等が使用できる。脱有機溶媒の温度は、ラジカル重合開始剤のラジカル発生温度より低くする必要があることから10〜40℃が好ましい。脱有機溶媒の終点は、得られる樹脂粒子の用途によって異なるが、有機溶媒の残存量が、有機溶媒の当初仕込み重量の好ましくは1%以下、更に好ましくは0.2%以下になった時点である。
【0062】
脱有機溶媒工程の後の加熱重合工程では、温度は50〜120℃、時間は3〜20時間で行うのが好ましい。
【0063】
重合終了後は、公知の方法(遠心分離や濾過等)によって、固液分離及び/又は洗浄して本発明の樹脂粒子を得ることができる。一方固液分離を行わず、水に分散した状態若しくは、溶剤等に分散した状態で製品とすることも可能である。
【0064】
固液分離及び/又は洗浄を行う場合、この後、乾燥及び/又は解砕してもよい。乾燥及び解砕は、既知の方法により行うことができ、気流乾燥機、循風乾燥機及びナウターミキサー(ホソカワミクロン社製)等を使用できる。また、乾燥及び解砕は粉砕乾燥機等によって同時に行うこともできる。本発明の樹脂粒子は、必要により分級操作により粒度分布を調整してもよい。
【0065】
本発明の樹脂粒子は、フィッシャー硬度計で測定して得られる圧縮変形回復率が、好ましくは80〜100%、さらに好ましくは83〜100%である。
【0066】
<圧縮変形回復率>
装置 :フィッシャーインスツルメント社製 フィッシャースコープH100C
測定条件 :25℃雰囲気下、試料台上で粒子の中心方向に対し該粒子に荷重をかけ、9.8mNまで荷重をかけた後、0.98mNまで除荷し、0.98mN荷重時の変位を9.8mN荷重時の変位で除した値を百分率にて表した数値を得る。100から該数値を引いた差を圧縮変形回復率とする。
圧縮変形回復率=100−(0.98mN荷重変位/9.8mN荷重変位)×100
【0067】
本発明の樹脂粒子は、ペンタエリスリトールトリアクルレートをバインダーとし、トルエンを溶剤として被膜形成性組成物とし、トリアセチルセルロースフィルム上で得られた厚さ10μmの被膜のヘイズが、好ましくは10〜40%、さらに好ましくは15〜30%である。
【0068】
上記のヘイズの測定は、具体的には以下のように行われる。
(1)樹脂粒子を固形分で0.45重量部、バインダーとしてのペンタエリスリトールトリアクリレートを8.5重量部、溶剤としてのトルエンを14.5重量部及び光重合開始剤としてのIRGACURE184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を0.085重量部を室温で混合して混合液を調製する。
(2)前記混合液を、トリアセチルセルロースフィルム上にバーコーターを使用して、硬化乾燥後の厚さが10±1μmとなるように塗布する。
(3)紫外線照射ランプで波長365nmの紫外線を2分間照射し、硬化させる。
(4)ヘイズを測定する。ヘイズの測定方法は、日本工業規格JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」に準拠して、反射防止膜付防眩フィルムのヘイズを測定する。ヘイズは下記の式で表される。
ヘイズ(%)=(散乱光透過率/全光線透過率)×100
なお、全光線透過率(%)=(透過光量/全光量)×100である。
【0069】
本発明の樹脂粒子は、塗料用添加剤、化粧品用添加剤及び電子部品製造用部材等として使用できる。
【0070】
塗料用添加剤としては、例えば以下のように使用できる。車体塗料用の添加剤として、本発明の樹脂粒子を使用した場合、外光による車体のギラツキが抑制される効果が期待できる。また、昇華型プリンタ用紙の添加剤として本発明の樹脂粒子をすることで、サーマルヘッドによる圧力による紙の応答性が増加し、その結果印画性能が上昇する。また、圧縮変形に対する回復性の高い樹脂粒子であるため、紙の平滑性が保たれ画像の歪みなどが発生し難い特徴がある。
【0071】
化粧品用添加剤としては、例えば以下のように使用できる。化粧品中に本発明の樹脂粒子を含有させることで、自然光などの外光が屈折率差により屈折し、皮膚のギラツキなどが防止でき、また単分散かつ柔軟な樹脂粒子であるため、手触りが良好で皮膚の違和感を生じにくい特徴がある。
【0072】
電子部品製造用部材としては、例えば以下のように使用できる。フィルム中に本発明の樹脂粒子を分散させることで、自然光などの外光が屈折率差により屈折し、液晶ディスプレイ等への映り込みが防止できる(防眩効果)。また、柔軟で回復性の高い樹脂粒子であるため、ディスプレイへの外的圧力による傷つきが防止でき変形を起こし難い特徴がある。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、特に記載のない限り、「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を意味する。
【0074】
<製造例1〜4>
ビニル重合性二重結合を有するウレタン樹脂(u)の製造:
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、表1に示した種類と部数のポリオール成分を投入し、3mmHgの減圧下で120℃に加熱して2時間脱水を行った。続いて表1に示した種類と部数のイソシアネート成分を投入し、110℃で10時間反応を行ってウレタン樹脂プレポリマーを製造した。更に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、HEMAと記載)を表1に示した部数投入し、70℃で24時間反応を行い、メタクリレート基を1分子中に平均で2個有するウレタン樹脂(u−1)〜(u−4)を製造した。(u−1)〜(u−4)のMn及びSP値は表1に示した。尚、表1におけるポリオール成分であるポリオール−1〜ポリオール−4の組成は以下の通りである。
【0075】
ポリオール−1:Mnが350(水酸基価320)のビスフェノールAのPO2モル付加物
ポリオール−2:Mnが370(水酸基価305)のビスフェノールSのPO2モル付加物
ポリオール−3:Mnが1080(水酸基価104)のビスフェノールAのEO20モル付加物
ポリオール−4:Mnが1020(水酸基価110)のポリカーボネートジオール
【0076】
【表1】

【0077】
<製造例5>
乳化剤水性液に配合される樹脂微粒子の製造:
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、水683部、スチレン139部、メタクリル酸138部、メタクリル酸プロピレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(「エレミノールRS−30」三洋化成工業(株)製)31部及び過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して系内温度を75℃まで昇温し5時間反応させた。更に1%過硫酸アンモニウム水溶液30部を加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂の水性微粒子分散液を得た。この樹脂微粒子の体積平均粒子径は0.05μmであった。
【0078】
<製造例6〜7>
乳化剤水性液の製造:
<製造例6>
水900部、活性剤としてスチレン化クミルフェノールのエチレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩(イオネットLD−7、三洋化成工業(株)社製)97部、粘度調整剤としてカルボキシメチルセルロース3部を室温で混合撹拌し、淡黄色の乳化剤水性液(E−1)を得た。
【0079】
<製造例7>
水563部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(「エレミノールMON−7」三洋化成工業(株)製)116部及び製造例5で得られた樹脂微粒子水性分散液317部、粘度調整剤としてカルボキシメチルセルロース4部を室温で混合撹拌し、乳白色の乳化剤水性液(E−2)を得た。
【0080】
<製造例8>
水977部、活性剤としてスチレン化クミルフェノールのエチレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩(イオネットLD−7、三洋化成工業(株)社製)20部、粘度調整剤としてカルボキシメチルセルロース3部を室温で混合撹拌し、淡黄色の乳化剤水性液(E−3)を得た。
【0081】
<製造例9〜12>
第一の樹脂(a)からなる微粒子(A)の製造:
<製造例9>
ビーカー内に、ジビニルベンゼンを100部、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル1部および有機溶媒としての酢酸エチル40部を混合して均一に溶解させて重合性溶液を調整した。この重合性溶液を、製造例6で得られた乳化剤水性液(E−1)210部に添加し、室温下、TK−オートホモミキサー(プライミクス社製)を使用し、回転数16000rpmで1分間混合・乳化した。乳化物を40℃に加熱し、減圧下で2時間かけて酢酸エチルを留去した。脱酢酸エチルした後、窒素雰囲気下95℃で6時間乳化重合反応を行い、樹脂粒子の水性分散液を得た。得られた樹脂粒子を遠心分離によって個液分離した後、水400部に再分散させて、更に遠心分離を行った。水への再分散と遠心分離を2〜3回繰り返すことにより樹脂粒子の洗浄を行った。得られた樹脂粒子を乾燥し微粒子(A−1)を得た。得られた微粒子の粒子径は0.4μmであった。
【0082】
<製造例10>
ビーカー内に、スチレンを100部、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル1部および有機溶媒としての酢酸エチル40部を混合して均一に溶解させて重合性溶液を調整した。この重合性溶液を、製造例6で得られた乳化剤水性液(E−1)210部に添加し、室温下、TK−オートホモミキサー(プライミクス社製)を使用し、回転数16000rpmで1分間混合・乳化した。乳化物を40℃に加熱し、減圧下で2時間かけて酢酸エチルを留去した。脱酢酸エチルした後、窒素雰囲気下95℃で6時間乳化重合反応を行い、樹脂粒子の水性分散液を得た。得られた樹脂粒子を遠心分離によって個液分離した後、水400部に再分散させて、更に遠心分離を行った。水への再分散と遠心分離を2〜3回繰り返すことにより樹脂粒子の洗浄を行った。得られた樹脂粒子を乾燥し微粒子(A−2)を得た。得られた微粒子の粒子径は0.3μmであった。
【0083】
<製造例11>
ビーカー内に、前記ウレタン樹脂(u−1)を32部、ジビニルベンゼン48部、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル1部および有機溶媒としての酢酸エチル40部を混合して均一に溶解させて重合性溶液を調整した。この重合性溶液を、製造例6で得られた乳化剤水性液(E−1)210部に添加し、室温下、TK−オートホモミキサー(プライミクス社製)を使用し、回転数16000rpmで1分間混合・乳化した。乳化物を40℃に加熱し、減圧下で2時間かけて酢酸エチルを留去した。脱酢酸エチルした後、窒素雰囲気下95℃で12時間乳化重合反応を行い、樹脂粒子の水性分散液を得た。得られた樹脂粒子を遠心分離によって個液分離した後、水400部に再分散させて、更に遠心分離を行った。水への再分散と遠心分離を2〜3回繰り返すことにより樹脂粒子の洗浄を行った。得られた樹脂粒子を乾燥し微粒子(A−3)を得た。得られた微粒子の粒子径は0.35μmであった。
【0084】
<製造例12>
ビーカー内に、ジビニルベンゼンを100部、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル1部および有機溶媒としての酢酸エチル40部を混合して均一に溶解させて重合性溶液を調整した。この重合性溶液を、製造例8で得られた乳化剤水性液(E−3)210部に添加し、室温下、TK−オートホモミキサー(プライミクス社製)を使用し、回転数8000rpmで1分間混合・乳化した。乳化物を40℃に加熱し、減圧下で2時間かけて酢酸エチルを留去した。脱酢酸エチルした後、窒素雰囲気下95℃で6時間乳化重合反応を行い、樹脂粒子の水性分散液を得た。得られた樹脂粒子を遠心分離によって個液分離した後、水400部に再分散させて、更に遠心分離を行った。水への再分散と遠心分離を2〜3回繰り返すことにより樹脂粒子の洗浄を行った。得られた樹脂粒子を乾燥し微粒子(A−4)を得た。得られた微粒子の粒子径は3.0μmであった。
【0085】
<実施例1〜6>
ビーカー内に、前記微粒子(A)として(A−1)〜(A−3)、樹脂(b)の前駆体である前記ウレタン樹脂(u)として(u−1)〜(u−4)、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及び有機溶媒として酢酸エチルをそれぞれ表2に記載の量(部)混合して均一に溶解又は分散させて重合性溶液を調製した。この重合性溶液に製造例7で得られた乳化剤水性液(E−2)を表2に記載の量(部)添加し、室温下、TKオートホモミキサー(プライミクス社製)を使用し、回転数16000rpmで1分間混合・乳化した。乳化物を40℃に加熱し、減圧下で2時間かけて酢酸エチルを留去した。脱酢酸エチルした後、窒素雰囲気下95℃で6時間乳化重合反応を行い、樹脂粒子の水性分散液を得た。得られた水性分散液を水500部で貫通洗浄・乾燥し、表2に記載の樹脂粒子(P−1)〜(P−6)を得た。走査電子顕微鏡(SEM)を用い、樹脂粒子の表面を1万倍および3万倍拡大して観察したところ、いずれの樹脂粒子も表面に微粒子(A)は見られなかった。
【0086】
<比較例1〜2>
ビーカー内に、前記微粒子(A)として(A−4)又は(A−1)、前記ウレタン樹脂(u)として(u―1)、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及び有機溶媒として酢酸エチルをそれぞれ表2に記載の量(部)混合して均一に溶解又は分散させて重合性溶液を調製した。この重合性溶液に、製造例7で得られた乳化剤水性液(E−2)を表2に記載の量(部)添加し、室温下、TKオートホモミキサー(プライミクス社製)を使用し、回転数16000rpmで1分間混合・乳化した。乳化物を40℃に加熱し、減圧下で2時間かけて酢酸エチルを留去した。脱酢酸エチルした後、窒素雰囲気下95℃で6時間乳化重合反応を行い、樹脂粒子の水性分散液を得た。得られた水性分散液を水500部で貫通洗浄・乾燥し、表2に記載の樹脂粒子(X−1)及び(X−2)を得た。走査電子顕微鏡(SEM)を用い、樹脂粒子の表面を1万倍および3万倍拡大して観察したところ、いずれの樹脂粒子も表面に微粒子(A)は見られなかった。
【0087】
<比較例3>
ビーカー内に前記ウレタン樹脂(u)として(u―1)、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及び有機溶媒として酢酸エチルをそれぞれ表2に記載の量(部)混合して均一に溶解又は分散させて重合性溶液を調製した。この重合性溶液に、製造例7で得られた乳化剤水性液(E−2)を表2に記載の量(部)添加し、室温下、TKオートホモミキサー(プライミクス社製)を使用し、回転数16000rpmで1分間混合・乳化した。乳化物を40℃に加熱し、減圧下で2時間かけて酢酸エチルを留去した。脱酢酸エチルした後、窒素雰囲気下95℃で6時間乳化重合反応を行い、樹脂粒子の水性分散液を得た。得られた水性分散液を水500部で貫通洗浄・乾燥し、表2に記載の樹脂粒子(X−3)を得た。
【0088】
得られた樹脂粒子(P−1)〜(P−6)及び(X−1)〜(X−3)について、体積平均粒子径、変動係数(CV)、ヘイズ、及び圧縮変形回復率を評価した。評価方法は以下の通りであり、結果を表2に示した。
【0089】
体積平均粒子径及び変動係数:
前述のエレクトロゾーン法で行い、前述の条件で測定した。
ヘイズ:
前述と同様の方法で測定した。
圧縮変形回復率:
前述の装置、即ちフィッシャーインスツルメント社製「フィッシャースコープH100C」を使用し、前述と同様の条件で測定した。
【0090】
(1)屈折率
樹脂組成物約1gを、PETフィルム[商品名:ルミラーS、東レ(株)製、厚さ80μm]2枚で組成物が約5μmになるように挟み、紫外線照射装置[商品名:VPS/I600、フュージョンUVシステムズ(株)製、以下同じ]を用いて1000mJ/cm2の紫外線を照射して硬化フィルムを得た。
この硬化物から片方のPETフィルムだけを剥がし、得られた硬化フィルムの屈折率を25℃の環境下でアッベ式屈折率計を用いて測定した。
【0091】
【表2】

【0092】
上記の結果から、本発明の樹脂粒子はいずれも、比較例の樹脂粒子よりも、光散乱性(ヘイズ)が優れており、圧縮変形回復率は同等以上であった。また、比較例1の樹脂粒子は、光散乱性は、本発明の樹脂粒子との差は大きくなかったが、粒子径分布(変動係数)が著しく劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の樹脂粒子は、塗料用添加剤(例えば、反射防止車体塗料用添加剤)、化粧品用添加剤(例えば皮膚コーティング用添加剤)及び電子部品製造用部材(例えば光学フィルム用添加剤[AGフィルム、ARフィルム、光拡散フィルム等]、液晶用スペーサー)等に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の樹脂(a)からなる体積平均粒子径が0.1〜2.0μmの微粒子(A)が平均1.5個以上第二の樹脂(b)に内包されてなり、体積平均粒子径が0.3〜80μmである樹脂粒子。
【請求項2】
第一の樹脂(a)と第二の樹脂(b)の屈折率差が0.02〜0.23である請求項1に記載の樹脂粒子。
【請求項3】
第一の樹脂(a)の溶解度パラメーター(SP値)が第二の樹脂(b)のSP値より低く、(a)と(b)のSP値の差(ΔSP)が1〜5である請求項1または2に記載の樹脂粒子。
【請求項4】
第一の樹脂(a)及び/又は第二の樹脂(b)が、芳香族ビニル単量体を含有するビニル樹脂、およびビニル樹脂とウレタン樹脂の複合樹脂から選ばれる一種類以上の樹脂を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂粒子。
【請求項5】
樹脂粒子中の微粒子(A)の含有量が10〜50重量%である請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂粒子。
【請求項6】
第一の樹脂(a)からなる微粒子(A)と第二の樹脂(b)の前駆体(b´)が有機溶媒中に溶解または分散された溶液または分散液が、必要により乳化剤が含有された水性媒体と混合され、乳化された後に脱有機溶媒され、さらに第二の樹脂(b)の前駆体(b´)が反応されて得られたものである請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂粒子。
【請求項7】
第二の樹脂(b)の前駆体(b´)がビニル重合性二重結合を有するウレタン樹脂(u)を含有する請求項6に記載の樹脂粒子。
【請求項8】
ウレタン樹脂(u)が芳香族ポリヒドロキシ化合物のアルキレンオキサイド付加物を構成単位として含有する(メタ)アクリル変性ウレタン樹脂である請求項7に記載の樹脂粒子。
【請求項9】
第一の樹脂(a)からなる微粒子(A)と第二の樹脂(b)の前駆体(b´)を有機溶媒中に溶解または分散させた溶液または分散液を、必要により乳化剤を含有した水性媒体と混合し、乳化した後に脱有機溶媒し、さらに第二の樹脂(b)の前駆体(b´)を反応させる工程を含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂粒子の製造方法。

【公開番号】特開2010−202707(P2010−202707A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46932(P2009−46932)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】