説明

樹脂粒子

【課題】低温溶融性及び耐ブロッキング性のいずれにも優れた樹脂粒子を提供する。
【解決手段】3価又は4価の芳香族カルボン酸(c)と炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(d1)又はジアルカノールアミン化合物(d2)とのエステル(e)、ポリイソシアネート(i)及びポリアミン(b)を構成単位として有する樹脂(A)を含有することを特徴とする樹脂粒子(R)並びに上記樹脂粒子(R)の表面に樹脂(C)を含有する樹脂粒子(S)が付着されてなる構造の樹脂粒子(T)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂粒子に関する。更に詳しくは、各種用途に有用な樹脂粒子とその水性分散体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒径及び形状が均一で、かつ、電気的特性、熱的特性、化学的安定性等に優れた粒子として、樹脂と必要により有機溶媒を含有する混合液と、水系媒体との懸濁液から有機溶媒を除去することによって得られる樹脂粒子が知られている(特許文献1参照)。
しかしながら、熱定着方式・熱加工方式に用いられる樹脂粒子では、低温溶融性と耐ブロッキング性の両立が求められており、特許文献1に記載の樹脂粒子を、スラッシュ成型用樹脂、粉体塗料、電子写真トナー用母体粒子、静電記録トナー用母体粒子、静電印刷トナー用母体粒子又はホットメルト接着剤として使用した場合には、低温溶融性と耐ブロッキング性が両立できるという効果が十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−284881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、低温溶融性及び耐ブロッキング性のいずれにも優れた樹脂粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、下記7発明である。
(I):3価又は4価の芳香族カルボン酸(c)と炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(d1)又はジアルカノールアミン化合物(d2)とのエステル(e)、ポリイソシアネート(i)及びポリアミン(b)を構成単位として有する樹脂(A)を含有することを特徴とする樹脂粒子(R)。
(II):(I)の樹脂粒子(R)の表面に樹脂(C)を含有する樹脂粒子(S)が付着されてなる構造の樹脂粒子(T)。
(III):樹脂(C)を含有する樹脂粒子(S)の水性分散液(W)と、樹脂(A)及び/又はその前駆体、並びに必要により有機溶剤を含有する油性液(OL)とを混合し、(W)中に(OL)を分散させ、(A)の前駆体を用いる場合は(W)中で前駆体を反応させて、(A)を含有する樹脂粒子(R)を形成させることにより、(R)の表面に(S)が付着された構造の樹脂粒子(T)の水性分散体(X1)を得る工程を含み、樹脂(A)が、3価又は4価の芳香族カルボン酸と炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(d1)又はジアルカノールアミン化合物(d2)とのエステル(e)、ポリイソシアネート(i)及びポリアミン(b)を構成単位として有する樹脂であることを特徴とする水性分散体(X1)の製造方法。
(IV):(III)で得られた水性分散体(X1)から水性溶剤を除去して樹脂粒子(T)を得る工程を含む樹脂粒子の製造方法。
(V):(III)で得られた水性分散体(X1)中において、付着している樹脂粒子(S)を樹脂粒子(R)から脱離させた後、水性分散体から(S)を分離除去して(R)の水性分散体(X2)を得る工程、又は(S)を溶解させ、必要により(S)の溶解物を分離除去して(R)の水性分散体(X2)を得る工程を含む水性分散体(X2)の製造方法。
(VI):(V)の製造方法により得られた水性分散体(X2)から水性溶剤を除去して樹脂粒子(R)を得る工程を含む樹脂粒子の製造方法。
(VII):樹脂(C)を含有する樹脂粒子(S)が、樹脂粒子(R)の表面に付着さ
れてなる構造の樹脂粒子(T)であり、
[1][(S)の体積平均粒径/(T)の体積平均粒径]が0.001〜0.3であり、
[2](S)の体積平均粒径が0.0005〜30μm、かつ(T)の体積平均粒径が0.1〜300μmであり、
[3](R)の表面の5%以上が(S)で覆われており、
[4](T)の[体積平均粒径/個数平均粒径]が1.0〜1.5であり、
[5](R)が樹脂(A)及び必要により架橋構造を有さない樹脂(B)を含有し、樹脂(A)が3価又は4価の芳香族カルボン酸と炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(d1)又はジアルカノールアミン化合物(d2)とのエステル(e)、ポリイソシアネート(i)及びポリアミン(b)を構成単位として有する樹脂である樹脂粒子。
【発明の効果】
【0006】
本発明は以下の効果を有する。
1.低温溶融性及び耐ブロッキング性のいずれにも優れた樹脂粒子を得ることができる。従って、例えば本発明の製造方法によって得られる本発明の樹脂粒子をトナーの母体粒子として用いた場合、低温定着性及び耐熱保存安定性に優れる。
2.粒径が均一な樹脂粒子分散体及び樹脂粒子を安定的に製造できる。
3.水性分散液中で樹脂粒子が得られるため、安全かつ低コストで樹脂粒子を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳述する。
本発明の樹脂粒子(R)が含有する樹脂(A)は、3価又は4価の芳香族カルボン酸(c)と炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(d1)又はジアルカノールアミン化合物(d2)とのエステル(e)を必須構成単位として含有する。
3価又は4価の芳香族カルボン酸(c)としては、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸、1,2,3,5−ベンゼンテトラカルボン酸及び1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸等が挙げられる。
これらのうち、低温溶融性及び耐ブロッキング性の観点から、好ましいのは1,2,4−ベンゼントリカルボン酸及び1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸であり、更に好ましいのは1,2,4−ベンゼントリカルボン酸である。
【0008】
エステル(e)を構成する炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(d1)としては、炭素数2〜10のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール及び1,10−デカンジオール等);炭素数4〜10のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びジプロピレングリコール等);等が挙げられる。
(d1)のうち、3価又は4価の芳香族カルボン酸(c)との反応性の観点から、好ましいのは分子末端に1級水酸基を有する分岐のない脂肪族ジオール(エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール及び1,10−デカンジオール等)であり、更に好ましいのは、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール及び1,4−ブタンジオールであり、特に好ましいのは1,3−プロピレングリコール及びエチレングリコールである。
【0009】
エステル(e)を構成するジアルカノールアミン化合物(d2)としては、式(1)で表される化合物が挙げられる。

HO−R−N−R−OH
| (1)


式中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数が2〜10の脂肪族アルキレン基、Rは、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。
炭素数2〜10のアルキレン基としては、エチレン基、トリメチレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、2,2−ジメチル−トリメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基及びデカメチレン基等が挙げられる。R及びRのうち、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(c)との反応性の観点から好ましいのは、エチレン基、トリメチレン基、メチルエチレン基及びテトラメチレン基であり、更に好ましいのはエチレン基及び/又はトリメチレン基である。
炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基及びn−又はイソプロピル基である。
のうち、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(c)との反応性の観点から好ましいのは、水素原子及びメチル基である。
ジアルカノールアミン化合物(d2)の具体例としては、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−プロピルジエタノールアミン、1−ヒドロキシエチル−1−ヒドロキシ−n−プロピルアミン、ジ(1−ヒドロキシ−n−プロピル)アミン、ジ(1−ヒドロキシ−n−ヘキシル)−N−メチルアミン、ジ(1−ヒドロキシ−n−プロピル)アミン、ジ(1−ヒドロキシ−n−ヘキシル)アミン、ジ(1−ヒドロキシ−n−オクチル)アミン及びジ(1−ヒドロキシ−n−デシル)アミン等が挙げられ、これらの2種以上を併用してもよい。
(d2)のうち、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(c)との反応性の観点から好ましいのは、ジエタノールアミン及びN−メチルジエタノールアミンである。
【0010】
エステル(e)を構成する3価の芳香族カルボン酸(c)と、炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(d1)とのモル比は、耐ホットオフセット性の観点から、好ましくは(c)1モルに対して(d1)が1〜3モルであり、更に好ましくは1.2〜3モル、特に好ましくは2〜3モルである。
エステル(e)を構成する4価の芳香族カルボン酸(c)と、ジアルカノールアミン化合物(d2)とのモル比は、耐ホットオフセット性の観点から、好ましくは(c)1モルに対して(d2)が1〜4モルであり、更に好ましくは1.2〜4モル、特に好ましくは2〜4モルである。
【0011】
エステル(e)を合成する条件としては、副反応抑制の観点から100〜230℃で行うことが好ましく、5〜200mmHgの減圧下で行うことが好ましい。必要により、エステル化触媒を用いてもよい。エステル化触媒としては、スズ含有触媒(例えばジブチルスズオキシド等)、三酸化アンチモン、チタン含有触媒{例えばチタンアルコキシド、シュウ酸チタン酸カリウム、テレフタル酸チタン、特開2006−243715号公報に記載の触媒[チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)及びそれらの分子内重縮合物等]、及び特開2007−11307号公報に記載の触媒(チタントリブトキシテレフタレート、チタントリイソプロポキシテレフタレート及びチタンジイソプロポキシジテレフタレート等)}、ジルコニウム含有触媒(例えば酢酸ジルコニル等)及び酢酸亜鉛等が挙げられる。これらのうち好ましいのはチタン含有触媒である。
【0012】
エステル(e)は、必要によりモノアルコールを構成単位として含有してもよい。モノアルコールとしては、3価又は4価の芳香族カルボン酸(c)とエステルを形成できるものであれば特に限定はない。具体例としては、炭素数1〜30のアルカノール(ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール及びステアリルアルコール等)、炭素数2〜30のアルケノール(オレイルアルコール及びリノリルアルコール等)及び炭素数7〜30の芳香脂肪族アルコール(ベンジルアルコール等)等が挙げられる。これらのうち、生産性の観点から好ましいのは、ベンジルアルコール、炭素数10〜30のアルカノール及び炭素数10〜30のアルケノールである。
【0013】
エステル(e)の数平均分子量(以下Mnと略記する)は、定着画像の強度の観点から好ましくは180〜2,000であり、更に好ましくは200〜800、特に好ましくは220〜700である。
【0014】
本発明において、樹脂の分子量[Mn及び重量平均分子量(以下Mwと略記する)]は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定される。
装置(一例) :「HLC−8120」[東ソー(株)製]
カラム(一例) :「TSK GEL GMH6」2本[東ソー(株)製]
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25重量%のTHF(テトラヒドロフラン)溶液
溶液注入量 :100μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
なお、分子量の測定には、試料をTHFに溶解し、不溶解分をグラスフィルターでろ別したものを試料溶液とし用いる。
【0015】
エステル(e)の酸価は、貯蔵弾性率保持の観点から、好ましくは300(mgKOH/g、以下同じ)であり、更に好ましくは0〜280、特に好ましくは0〜180である。酸価が300以下であるとホットオフセット温度がより高くなる。
(e)の水酸基価は、ポリイソシアネート(i)との反応率の観点から、好ましくは10〜1,000(mgKOH/g、以下同じ)であり、更に好ましくは50〜800、特に好ましくは100〜700である。
【0016】
本発明において、樹脂の酸価及び水酸基価は、JIS K0070(1992年版)に規定の方法で測定される。
なお、試料に架橋に伴う溶剤不溶解分がある場合は、以下の方法で溶融混練後のものを試料として用いる。
混練装置:ラボプラストミル「MODEL4M150」[東洋精機(株)製]
混練条件:130℃、70rpmで30分間
【0017】
樹脂(A)は、耐ホットオフセット性に加えて、定着画像の強度付与を目的に、エステル(e)以外のポリオール(p)を構成成分として用いてもよい。
【0018】
ポリオール(p)としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、シリコーンポリオール及びアルキルポリオールの群から選ばれる1種類以上であることが好ましく、これらの中でもポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールが更に好ましい。
【0019】
ポリエーテルポリオールのうち、脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリオキシエチレンポリオール(ポリエチレングリコール等)、ポリオキシプロピレンポリオール(ポリプロピレングリコール等)、ポリオキシエチレン/プロピレンポリオール及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
芳香族ポリエーテルポリオールとしては、ビスフェノール骨格を有するポリオール(例えばビスフェノールAのエチレオキサイド(以下、EOと略記する)及び/又はプロピレンオキサイド(以下、POと略記する)2〜20モル付加物)、並びにレゾルシンのEO及び/又はPO付加物等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールは、脂肪族又は芳香族活性水素原子含有化合物に、付加触媒(アルカリ金属水酸化物及びルイス酸等の公知の触媒)の存在下にアルキレンオキサイド(以下、AOと略記する)を開環付加反応させることで得られる。
【0020】
ポリエステルポリオールとしては、縮合型ポリエステル及びポリラクトンポリオールが挙げられる。
縮合型ポリエステルとしては、低分子量(Mn300以下)の多価アルコールと多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とのポリエステルが挙げられる。
低分子量の多価アルコールとしては、水酸基当量が30以上150未満の2〜8価又はそれ以上の脂肪族多価アルコール及び水酸基当量が30以上150未満の2〜8価又はそれ以上のフェノールのAO低モル付加物等が挙げられる。
縮合型ポリエステルを構成する低分子量の多価アルコールのうち、好ましいのは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、ビスフェノールAのEO及び/又はPO低モル付加物並びにこれらの併用である。
縮合型ポリエステルを構成する多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フマル酸及びマレイン酸等)、脂環式ジカルボン酸(ダイマー酸等)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸及びフタル酸等)、3価又はそれ以上のポリカルボン酸(1,2,4−ベンゼントリカルボン酸及び1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸等)、これらの無水物(無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸及び無水1,2,4−ベンゼントリカルボン酸等)、これらの酸ハロゲン化物(アジピン酸ジクロライド等)、これらの低分子量アルキルエステル(コハク酸ジメチル及びフタル酸ジメチル等)及びこれらの併用が挙げられる。
【0021】
ポリラクトンポリオールは、低分子量多価アルコールとラクトンとの重付加物であり、ラクトンとしては、炭素数4〜12のラクトンが使用でき、具体的には4−ブタノリド、5−ペンタノリド及び6−ヘキサノリド等が挙げられる。
ポリラクトンポリオールとしては、具体的にはポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール及びポリカプロラクトントリオール等が挙げられる。
【0022】
ポリカーボネートポリオールは、低分子量多価アルコールとアルキレンカーボネートとの重付加物であり、アルキレンカーボネートとしては炭素数2〜8のアルキレンカーボネートが挙げられ、具体的にはエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネート等が挙げられる。これらはそれぞれ2種以上を併用してもよい。
ポリカーボネートポリオールとしては、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等が挙げられる。
【0023】
シリコーンポリオールとしては、シリコーン樹脂の末端に水酸基を有するジオール等が挙げられる。
アルキルポリオールとしては、上記の低分子量の脂肪族多価アルコール等が挙げられる。
【0024】
ポリオール(p)のTHF可溶分のMnは、樹脂強度の観点から、好ましくは100〜20,000であり、更に好ましくは200〜10,000、特に好ましくは400〜9,000である。
【0025】
樹脂(A)を構成するエステル(e)とポリオール(p)の合計モル数に対するエステル(e)の比率は、耐ホットオフセット性の観点から、好ましくは10モル%以上であり、更に好ましくは20モル%以上である。
【0026】
樹脂(A)は、構成単位として、前記のエステル(e)と、ポリイソシアネート(i)及びポリアミン(b)を含有する。
【0027】
上記ポリイソシアネート(i)としては、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6〜20の芳香族ポリイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート、炭素数8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネート及びこれらのポリイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基及びオキサゾリドン基含有変性物等)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0028】
上記芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI、1,5−ナフチレンジイソシアネート、並びに4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0029】
脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート及びビス(2−イソシアナトエチル)フマレート等が挙げられる。
【0030】
脂環式ポリイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート並びに2,5−又は2,6−ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0031】
芳香脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、m−又はp−キシリレンジイソシアネート(XDI)並びにα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。
【0032】
ポリイソシアネート(i)のうち、低温定着性と定着画像強度両立の観点から、好ましいのは炭素数6〜15の芳香族ポリイソシアネート、炭素数4〜12の脂肪族ポリイソシアネート及び炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネートであり、更に好ましいのはTDI、MDI、HDI、水添MDI及びIPDIである。
【0033】
ポリアミン(b)の具体例である脂肪族ジアミン類(炭素数2〜18)としては、
[1]脂肪族ジアミン{アルキレン(炭素数2〜6)ジアミン(エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等)、ポリアルキレン(炭素数2〜6)ジアミン[ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びペンタエチレンヘキサミン等]};
[2]脂肪族ジアミンのアルキル(炭素数1〜4)又はヒドロキシアルキル(炭素数2〜4)置換体[ジアルキル(炭素数1〜3)アミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン及びメチルイミノビスプロピルアミン等];
[3]脂環又は複素環含有脂肪族ジアミン{脂環式ジアミン(炭素数4〜15)[1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン及び4,4´−メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)等]、複素環式ジアミン(炭素数4〜15)[ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン及び3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等]};
[4]芳香環含有脂肪族アミン類(炭素数8〜15)(キシリレンジアミン及びテトラクロロp−キシリレンジアミン等);等が挙げられる。
【0034】
芳香族ジアミン類(炭素数6〜20)としては、
[1]非置換芳香族ジアミン[1,2−、1,3−又は1,4−フェニレンジアミン、2,4´−及び4,4´−ジフェニルメタンジアミン、クルードジフェニルメタンジアミン(ポリフェニルポリメチレンポリアミン)、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、チオジアニリン、2,6−ジアミノピリジン、m−アミノベンジルアミン、トリフェニルメタン−4,4´,4”−トリアミン及びナフチレンジアミン等;
[2]核置換アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基)を有する芳香族ジアミン[例えば2,4−又は2,6−トリレンジアミン、クルードトリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、4,4´−ジアミノ−3,3´−ジメチルジフェニルメタン、4,4´−ビス(o−トルイジン)、ジアニシジン、ジアミノジトリルスルホン、1,3−ジメチル−2,4−ジアミノベンゼン、2,3−ジメチル−1,4−ジアミノナフタレン及び4,4´−ジアミノ−3,3´−ジメチルジフェニルメタン等]及びこれらの異性体の種々の割合の混合物;
[3]核置換電子吸引基(フッ素、塩素、臭素及びヨウ素等のハロゲン原子;メトキシ基及びエトキシ基等のアルコキシ基;ニトロ基等)を有する芳香族ジアミン(メチレンビス−o−クロロアニリン、4−クロロ−o−フェニレンジアミン、2−クロロ−1,4−フェニレンジアミン、3−アミノ−4−クロロアニリン、4−ブロモ−1,3−フェニレンジアミン、2,5−ジクロロ−1,4−フェニレンジアミン、5−ニトロ−1,3−フェニレンジアミン及び3−ジメトキシ−4−アミノアニリン等];
[4]2級アミノ基を有する芳香族ジアミン[上記[1]〜[3]の芳香族ジアミンの−NHの一部又は全部が−NH−R´(R´はアルキル基;例えばメチル基及びエチル基等の低級アルキル基)で置換されたもの][4,4´−ジ(メチルアミノ)ジフェニルメタン及び1−メチル−2−メチルアミノ−4−アミノベンゼン等]が挙げられる。
【0035】
ポリアミン(b)としては、上記のもの以外に、ポリアミドポリアミン[ジカルボン酸(ダイマー酸等)と過剰の(酸1モル当り2モル以上の)ポリアミン類(上記アルキレンジアミン及びポリアルキレンポリアミン等)との縮合により得られる低分子量ポリアミドポリアミン等]及びポリエーテルポリアミン[ポリエーテルポリオール(ポリアルキレングリコール等)のシアノエチル化物の水素化物等]等が挙げられる。
【0036】
樹脂(A)に含有されるウレタン基の濃度は、定着画像の強度の観点から、(A)の全重量に対する、(A)の構成単位としてのポリイソシアネート(i)の量が、好ましくは70重量%以下であり、更に好ましくは0.1〜60重量%、特に好ましくは0.3〜50重量%である。
【0037】
ポリイソシアネート(i)及びポリアミン(b)の構成単位の合計含有率は、定着画像の強度の観点から、樹脂(A)の全重量に対して好ましくは2〜80重量%であり、更に好ましくは10〜75重量%、特に好ましくは15〜70重量%である。
【0038】
樹脂(A)に導入されるウレタン基とウレア基のモル比率は、定着画像の強度の観点から、好ましくはウレタン基/ウレア基=45/55〜100/0であり、更に好ましくは50/50〜90/10である。
上記モル比率は、樹脂(A)を製造する際に使用した、ポリイソシアネート(i)と、ポリアミン(b)の重量から、(A)中に含有されるウレタン基(―NHCOO―)のモル数とウレア基(―NHCONH―)のモル数の比を、計算により求めたものである。
【0039】
構成単位としての3価又は4価の芳香族カルボン酸(c)の含有率は、定着画像の強度の観点から、樹脂(A)の全重量に対して好ましくは2〜60重量%であり、更に好ましくは3〜55重量%であり、特に好ましくは5〜50重量%である。
【0040】
樹脂(A)としては、活性水素基である水酸基を有するエステル(e)及び必要によりポリオール(p)と、ポリイソシアネート(i)とを反応させて得られる樹脂(A)の前駆体であるイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A0)を、更にポリアミン(b)によって伸長反応及び/又は架橋反応させたもの等が挙げられる。
なお、エステル(e)をジカルボン酸(好ましくは直鎖脂肪族ジカルボン酸)と反応させて得られる重縮合ポリエステルポリオールをポリイソシアネート(i)と反応させてプレポリマー(A0)を得てもよい。
【0041】
ポリエステルプレポリマー(A0)を得る際の、ポリイソシアネート(i)の使用比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するエステル(e)及び必要により用いるポリオール(p)の水酸基[OH]との当量比[NCO]/[OH]として、好ましくは5/1〜1/1であり、更に好ましくは4/1〜1.2/1であり、特に好ましくは2.5/1〜1.5/1である。
[NCO]/[OH]が5以下であると低温溶融性が向上する。[NCO]/[OH]が1以上であれば、高温高湿下での耐ブロッキング性が向上する。
【0042】
イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A0)中のポリイソシアネート(i)構成単位の含有率は、低温溶融性及び高温高湿下での耐ブロッキング性の観点から、好ましくは0.5〜40重量%であり、更に好ましくは1〜30重量%、特に好ましくは2〜20重量%である。
【0043】
プレポリマー(A0)のMwは、好ましくは1,000〜50,000であり、更に好ましくは1,500〜40,000、特に好ましくは2,000〜30,000である。1,000以上であれば高温高湿下での耐ブロッキング性が向上し、50,000以下であれば低温溶融性が向上する。
【0044】
ポリアミン(b)の使用比率は、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A0)中のイソシアネート基[NCO]と、ポリアミン(b)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、好ましくは1/2〜2/1であり、更に好ましくは1.5/1〜1/1.5、特に好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が上記範囲内であれば、高温高湿下での保存安定性が向上する。
【0045】
本発明の樹脂粒子においては、例えば、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A0)をポリアミン(b)によって伸長反応及び/又は架橋反応させて得られた、ウレタン基及びウレア基を有する樹脂(A)が樹脂粒子(R)の構成成分となる。
樹脂(A)のMwは、好ましくは1万以上であり、更に好ましくは2万〜1,000万、特に好ましくは3万〜100万である。
【0046】
本発明における樹脂粒子(R)中には、樹脂(A)と共に、架橋構造を有さない樹脂(B)を含有させてもよい。
樹脂(B)としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂及びポリカーボネート樹脂等の、樹脂(A)以外の樹脂が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル樹脂及びエポキシ樹脂であり、更に好ましいのはポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂であり、特に好ましいのはポリエステル樹脂である。
【0047】
樹脂(B)として好ましい樹脂である、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル樹脂及びエポキシ樹脂について以下に説明する。
【0048】
ポリエステル樹脂としては、少なくともポリカルボン酸成分とポリオール成分を重縮合して得られる樹脂が使用できる。
【0049】
ポリオール成分としては、ジオール及び3〜8価又はそれ以上のポリオールが挙げられる。
ジオールとしては、炭素数2〜36のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及びネオペンチルグリコール等);炭素数4〜36のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等);炭素数6〜36の脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール及び水素添加ビスフェノールA等);上記脂環式ジオールの(ポリ)オキシアルキレン(アルキレン基の炭素数2〜4、以下のポリオキシアルキレン基も同じ)エーテル[オキシアルキレン(以下、OAと略記する)単位の数1〜30];ビスフェノールAのEO付加物、2価フェノール[単環2価フェノール(例えばハイドロキノン)及びビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールS等)]のポリオキシアルキレンエーテル等が挙げられる。
【0050】
3〜8価又はそれ以上のポリオールとしては、炭素数3〜36の3価〜8価又はそれ以上の脂肪族多価アルコール(アルカンポリオール及びその分子内又は分子間脱水物(例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン及びジペンタエリスリトール等);糖類及びその誘導体(例えばショ糖及びメチルグルコシド等);上記脂肪族多価アルコールの(ポリ)オキシアルキレンエーテル(OA単位の数=1〜30)等;トリスフェノール類(トリスフェノールPA等)のポリオキシアルキレンエーテル(OA単位の数=2〜30)等;ノボラック樹脂(フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等、平均重合度=3〜60)のポリオキシアルキレンエーテル(OA単位の数=2〜30)等が挙げられる。
【0051】
ポリカルボン酸成分としては、ジカルボン酸及び3〜6価又はそれ以上のポリカルボン酸等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、炭素数4〜36のアルカンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸及びデシルコハク酸等);炭素数6〜40の脂環式ジカルボン酸[ダイマー酸(2量化リノール酸)等]、炭素数4〜36のアルケンジカルボン酸[アルケニルコハク酸(ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸及びオクタデセニルコハク酸等)、マレイン酸、フマール酸及びシトラコン酸等];炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及び4,4’−ビフェニルジカルボン酸等);及びこれらの無水物又は低級アルキル(炭素数1〜4)若しくはヒドロキシアルキル(炭素数1〜4)エステル[(無水)フタル酸、テレフタル酸ジメチル及びテレフタル酸1,2−プロピレングリコールジエステル等]等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0052】
3〜6価又はそれ以上のポリカルボン酸としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(1,2,4−ベンゼントリカルボン酸及び1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸等);炭素数6〜36の脂肪族(脂環式を含む)ポリカルボン酸(ヘキサントリカルボン酸等);及びこれらの無水物又は低級アルキル(炭素数1〜4)エステル[(無水)1,2,4−ベンゼントリカルボン酸及び無水1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸等];(メタ)アクリル酸と必要により他のビニルモノマーとの(メタ)アクリル酸(共)重合体等のポリカルボン酸重合体;及びこれらの無水物又は低級アルキル(炭素数1〜4)若しくはヒドロキシアルキル(炭素数1〜4)エステル等が挙げられる。
【0053】
ポリエステル樹脂は、ポリオール成分及びポリカルボン酸成分の合計モル数に対して、10モル%以下の範囲で、上記以外の他のモノマー、例えば安息香酸、p−置換安息香酸、o−置換安息香酸、酢酸、プロピオン酸及び酪酸等並びにこれらのメチル又はエチルエステル等;モノオール類(ベンジルアルコール、p−置換ベンジルアルコール、o−置換ベンジルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール及びステアリルアルコール等)、ヒドロキシカルボン酸誘導体類(ε−カプロラクトン及びメチルバレロラクトン等並びにその開環重合物等)等を使用することもできる。
【0054】
ポリエステル樹脂は、通常のポリエステル樹脂の製造方法と同様にして製造することができる。例えば、不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、反応温度が好ましくは150〜280℃、更に好ましくは160〜260℃、特に好ましくは170〜240℃で反応させることにより行うことができる。反応時間は、重縮合反応を確実に行う観点から、好ましくは30分以上であり、更に好ましくは2〜40時間である。
重縮合反応は、脂肪族ジオール成分の一部又はポリカルボン酸の低級アルキルエステルに由来する炭素数1〜4のアルコールを系外に除去させながら行ってもよい。
更に反応末期の反応速度を向上させるために、反応系内を減圧にすることも有効である。
上記重縮合反応には、エステル化触媒を使用してもよい。エステル化触媒としては前記のものが挙げられる。
エステル化触媒の添加量としては、全原料に対し、好ましくは10ppm〜1.9重量%であり、更に好ましくは100ppm〜1.7重量%である。添加量を10ppm以上にすることで反応速度が大きくなる点で好ましい。
【0055】
ポリウレタン樹脂としては、前記のポリイソシアネート(i)と活性水素化合物{水、前記ポリオール成分、前記ポリアミン(b)及びポリチオール等}との重付加反応物等が挙げられる。
ポリチオールとしては、エチレンジチオール、1,4−ブタンジチオール及び1,6−ヘキサンジチオール等が挙げられる。重付加反応には、公知の重合触媒等が使用できる。
【0056】
ビニル樹脂は、ビニルモノマーを単独重合又は共重合した重合体である。重合には、公知の重合触媒等が使用できる。
ビニルモノマーとしては、下記(1)〜(10)等が挙げられる。
【0057】
(1)ビニル炭化水素:
(1−1)脂肪族ビニル炭化水素:炭素数2〜12のアルケン(例えばエチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン及び炭素数3〜24のα−オレフィン等);炭素数4〜12のアルカジエン(例えばブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエン及び1,7−オクタジエン等)。
(1−2)脂環式ビニル炭化水素:炭素数6〜15のモノ−又はジ−シクロアルケン(例えばシクロヘキセン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等)、炭素数5〜12のモノ−又はジ−シクロアルカジエン[例えば、(ジ)シクロペンタジエン等];及びテルペン(例えばピネン、リモネン及びインデン等)等。
(1−3)芳香族ビニル炭化水素:スチレン;スチレンの炭化水素(炭素数1〜24のアルキル、シクロアルキル、アラルキル及び/又はアルケニル)置換体(例えばα−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン及びトリビニルベンゼン等);及びビニルナフタレン等。
【0058】
(2)カルボキシル基含有ビニルモノマー及びそれらの塩:
炭素数3〜30の不飽和モノカルボン酸[例えば(メタ)アクリル酸(アクリル酸及び/又はメタクリル酸を表す。以下同様。)、クロトン酸イソクロトン酸及び桂皮酸等];炭素数3〜30の不飽和ジカルボン酸(無水物)[例えば(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(無水)シトラコン酸及びメサコン酸等];及び炭素数3〜30の不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1〜24)エステル(例えばマレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノオクタデシルエステル、フマル酸モノエチルエステル、イタコン酸モノブチルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル及びシトラコン酸モノエイコシルエステル等)等。
カルボキシル基含有ビニルモノマーの塩としては、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩及びカリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩及びマグネシウム塩等)、アンモニウム塩、アミン塩及び4級アンモニウム塩等が挙げられる。アミン塩としては、アミン化合物であれば特に限定されないが、例えば1級アミン塩(エチルアミン塩、ブチルアミン塩及びオクチルアミン塩等)、2級アミン塩(ジエチルアミン塩及びジブチルアミン塩等)、3級アミン塩(トリエチルアミン塩及びトリブチルアミン塩等)が挙げられる。4級アンモニウム塩としては、テトラエチルアンモニウム塩、トリエチルラウリルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩及びトリブチルラウリルアンモニウム塩等)が挙げられる。
カルボキシル基含有ビニルモノマーの塩の具体例としては、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、マレイン酸モノナトリウム、マレイン酸ジナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸カリウム、マレイン酸モノカリウム、アクリル酸リチウム、アクリル酸セシウム、アクリル酸アンモニウム、アクリル酸カルシウム及びアクリル酸アルミニウム等が挙げられる。
【0059】
(3)スルホ基含有ビニルモノマー及びそれらの塩:
炭素数2〜14のアルケンスルホン酸(例えばビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸及びメチルビニルスルホン酸等);スチレンスルホン酸及びこのアルキル(炭素数2〜24)誘導体(例えばα−メチルスチレンスルホン酸等);炭素数5〜18のスルホ(ヒドロキシ)アルキル−(メタ)アクリレート[例えばスルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸及び3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸等];炭素数5〜18のスルホ(ヒドロキシ)アルキル(メタ)アクリルアミド[例えば2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及び3−(メタ)アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸等];アルキル(炭素数3〜18)アリルスルホコハク酸(例えばプロピルアリルスルホコハク酸、ブチルアリルスルホコハク酸及び2−エチルヘキシル−アリルスルホコハク酸等);ポリ[n(重合度を表す。以下同様。)=2〜30]キシアルキレン(オキシエチレン、オキシプロピレン及びオキシブチレン等:単独、ランダム又はブロックでもよい)モノ(メタ)アクリレートの硫酸エステル[例えばポリ(n=5〜15)オキシエチレンモノメタクリレート硫酸エステル及びポリ(n=5〜15)オキシプロピレンモノメタクリレート硫酸エステル等];下記一般式(2−1)〜(2−3)で表される化合物;及びこれらの塩等が挙げられる。
なお、塩としては、(6)カルボキシル基含有ビニルモノマーの塩と同様の塩等が用いられる。
【0060】
O−(AO)SO3

CH2=CHCH2OCH2CHCH2O−Ar−R (2−1)

CH=CH−CH3

R’−Ar−O−(AO)SO3H (2−2)

CH2COOR”

HO3SCHCOOCH2CH(OH)CH2OCH2CH=CH2 (2−3)

式中、R及びR’は、それぞれ独立に炭素数1〜15のアルキル基;AOは炭素数2〜
4のオキシアルキレン基であり、AOは単独でも2種以上を併用したものでもよく、2種以上を併用した場合は、結合形式はランダムでもブロックでもよい;m及びnは、それぞれ独立に1〜50の数;Arはベンゼン環;R”はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルキル基を表す。
【0061】
(4)ホスホノ基含有ビニルモノマー及びその塩:
(メタ)アクリロイルオキシアルキルリン酸モノエステル(アルキル基の炭素数1〜24)[例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート及びフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等]、(メタ)アクリロイルオキシアルキルホスホン酸(アルキル基の炭素数1〜24)(例えば2−アクリロイルオキシエチルホスホン酸等)。
なお、塩としては、(2)カルボキシル基含有ビニルモノマーの塩と同様の塩等が挙げられる。
【0062】
(5)ヒドロキシル基含有ビニルモノマー:
ヒドロキシスチレン、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,
4−ジオール、プロパルギルアルコール、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル及びショ糖アリルエーテル等。
【0063】
(6)含窒素ビニルモノマー:
(6−1)アミノ基含有ビニルモノマー:
アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N−アミノエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アリルアミン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、クロチルアミン、N,N−ジメチルアミノスチレン、メチル−α−アセトアミノアクリレート、ビニルイミダゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルチオピロリドン、N−アリールフェニレンジアミン、アミノカルバゾール、アミノチアゾール、アミノインドール、アミノピロール、アミノイミダゾール、アミノメルカプトチアゾール及びこれらの塩等。
(6−2)アミド基(カルバモイル基)含有ビニルモノマー:
(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレン−ビス(メタ)アクリルアミド、桂皮酸アミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジベンジルアクリルアミド、メタクリルホルムアミド、N−メチルN−ビニルアセトアミド及びN−ビニルピロリドン等。
(6−3)炭素数3〜10のニトリル基(シアノ基)含有ビニルモノマー:
(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン及びシアノアクリレート等。
(6−4)4級アンモニウムカチオンを有する基(第4級アンモニオ基)を含有するビニルモノマー:
トリメチルアンモニオエチル(メタ)アクリレートクロライド、メチルジエチルアンモニオエチル(メタ)アクリレートブロマイド、トリメチルアンモニオエチル(メタ)アクリルアミドメトサルフェート、ベンジルジエチルアンモニオエチル(メタ)アクリルアミドカーボネート、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド及びトリメチルアリルアンモニウムクロライド等。
(6−5)炭素数8〜12のニトロ基含有ビニルモノマー:
ニトロスチレン等。
【0064】
(7)炭素数6〜18のエポキシ基含有ビニルモノマー:
グルシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート及びp−ビニルフェニルフェニルオキサイド等。
【0065】
(8)炭素数2〜16のハロゲン原子含有ビニルモノマー:
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジクロロスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロスチレン及びクロロプレン等。
【0066】
(9)ビニルエステル、ビニル(チオ)エーテル、ビニルケトン、ビニルスルホン:
(9−1)炭素数4〜16のビニルエステル:
酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル−4−ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチル−α−エトキシアクリレート、炭素数1〜50のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート及びエイコシル(メタ)アクリレート等]、ジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数2〜8の直鎖、分枝又は脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数2〜8の直鎖、分枝又は脂環式の基である)、ポリ(メタ)アリロキシアルカン[ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン及びテトラメタアリロキシエタン等]、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニルモノマー[ポリエチレングリコール(Mn=300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(Mn=500)モノアクリレート、メチルアルコールのEO10モル付加物(メタ)アクリレート及びラウリルアルコールのEO30モル付加物(メタ)アクリレート等]、ポリ(メタ)アクリレート[多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等]等。
(9−2)炭素数3〜16のビニル(チオ)エーテル:
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニル2−エチルヘキシルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニル2−メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、ビニル2−ブトキシエチルエーテル、3,4−ジヒドロ−1,2−ピラン、2−ブトキシ−2’−ビニロキシジエチルエーテル、ビニル−2−エチルメルカプトエチルエーテル、アセトキシスチレン及びフェノキシスチレン等。
(9−3)炭素数4〜12のビニルケトン:
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン及びビニルフェニルケトン等。
(9−4)炭素数2〜16のビニルスルホン:
ジビニルサルファイド、p−ビニルジフェニルサルファイド、ビニルエチルサルファイド、ビニルエチルスルホン、ジビニルスルホン及びジビニルスルホキサイド等。
【0067】
(10)その他のビニルモノマー:
イソシアナトエチル(メタ)アクリレート及びm−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等。
【0068】
ビニル樹脂のうち、ビニルモノマーを共重合して得られた重合体(ビニルモノマーの共重合体)としては、上記(1)〜(10)の任意のモノマー同士を、2元又はそれ以上の個数で、任意の割合で共重合して得られた重合体が用いられる。このようなポリマーとしては、例えばスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−(無水)マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−ジビニルベンゼン共重合体及びスチレン−スチレンスルホン酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0069】
エポキシ樹脂としては、ポリエポキシド(11)の開環重合物、ポリエポキシド(11)と前記活性水素化合物との重付加物及びポリエポキシド(11)と前記ポリカルボン酸成分中の酸無水物との硬化物等が挙げられる。
【0070】
ポリエポキシド(11)は、分子中に2個以上のエポキシ基を有していれば特に限定されない。ポリエポキシド(11)として好ましいのは、硬化物の機械的性質の観点から、分子中にエポキシ基を2〜6個有するものである。ポリエポキシド(11)のエポキシ当量(エポキシ基1個当たりの分子量)は、好ましくは65〜1,000であり、更に好ましくは90〜500である。この範囲であると、硬化物の耐水性、耐薬品性及び機械的強度が更に良好となる。なお、エポキシ当量が65未満のポリエポキシドを合成するのは困難である。
【0071】
ポリエポキシド(11)としては、芳香族ポリエポキシド、複素環ポリエポキシド、脂環族ポリエポキシド及び脂肪族ポリエポキシド等が挙げられる。
芳香族ポリエポキシドとしては、多価フェノールのグリシジルエーテル、多価フェノールグリシジルエステル、グリシジル芳香族ポリアミン及びアミノフェノールのグリシジル化物等が挙げられる。
多価フェノールのグリシジルエーテルとしては、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールBジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ハロゲン化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラクロロビスフェノールAジグリシジルエーテル、カテキンジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ピロガロールトリグリシジルエーテル、1,5−ジヒドロキシナフタリンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル、オクタクロロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェニルジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフチルクレゾールトリグリシジルエーテル、トリス(ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、ジナフチルトリオールトリグリシジルエーテル、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンテトラグリシジルエーテル、p−グリシジルフェニルジメチルトリールビスフェノールAグリシジルエーテル、トリスメチル−t−ブチル−ブチルヒドロキシメタントリグリシジルエーテル、9,9’−ビス(4−ヒドキシフェニル)フロオレンジグリシジルエーテル、4,4’−オキシビス(1,4−フェニルエチル)テトラクレゾールグリシジルエーテル、4,4’−オキシビス(1,4−フェニルエチル)フェニルグリシジルエーテル、ビス(ジヒドロキシナフタレン)テトラグリシジルエーテル、フェノール又はクレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、リモネンフェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールA2モルとエピクロロヒドリン3モルの反応から得られるジグリシジルエーテル、フェノールとグリオキザール、グルタールアルデヒド又はホルムアルデヒドの縮合反応によって得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル及びレゾルシンとアセトンの縮合反応によって得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0072】
多価フェノールのグリシジルエステルとしては、フタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル及びテレフタル酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。
グリシジル芳香族ポリアミンとしては、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルキシリレンジアミン及びN,N,N’,N’−テトラグリシジルジフェニルメタンジアミン等が挙げられる。
アミノフェノールのグリシジル化物としては、P−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル等が挙げられる。
芳香族ポリエポキシ化合物には、トリレンジイソシアネート又はジフェニルメタンジイソシアネートとグリシドールとの付加反応によって得られるジグリシジルウレタン化合物、トリレンジイソシアネート又はジフェニルメタンジイソシアネートとグリシドールとポリオールとを反応させて得られるグリシジル基含有ポリウレタン(プレ)ポリマー及びビスフェノールAのAO付加物のジグリシジルエーテルも含まれる。
【0073】
複素環ポリエポキシドとしては、トリスグリシジルメラミン等が挙げられる。
脂環族ポリエポキシドとしては、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、リモネンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エチレングリコールビスエポキシジシクロペンチルエーテル、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)ブチルアミン、ダイマー酸ジグリシジルエステル及び芳香族ポリエポキシドの核水添化物等が挙げられる。
脂肪族ポリエポキシドとしては、多価脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテル、多価脂肪酸のポリグリシジルエステル及びグリシジル脂肪族アミン等が挙げられる。
【0074】
多価脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテルとしては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル及びポリグリセロールンポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
多価脂肪酸のポリグリシジルエステルとしては、ジグリシジルオキサレート、ジグリシジルマレート、ジグリシジルスクシネート、ジグリシジルグルタレート、ジグリシジルアジペート及びジグリシジルピメレート等が挙げられる。
グリシジル脂肪族アミンとしては、N,N,N’,N’−テトラグリシジルヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
脂肪族ポリエポキシドには、ジグリシジルエーテル及びグリシジル(メタ)アクリレートの(共)重合体も含まれる。
ポリエポキシド(11)のうち好ましいのは、脂肪族ポリエポキシド及び芳香族ポリエポキシドである。ポリエポキシド(11)は、2種以上を併用してもよい。
【0075】
樹脂(B)としては、結晶性樹脂であっても非結晶性樹脂であてもよいが、好ましいのは結晶性樹脂であり、更に好ましいのは結晶性ポリエステル樹脂(B1)である。
【0076】
結晶性ポリエステル樹脂(B1)は、耐熱保存性の観点から、その融解熱の最大ピーク温度(Ta)が40〜100℃であることが好ましく、更に好ましくは45〜80℃、特に好ましくは50〜70℃である。
【0077】
結晶性ポリエステル樹脂(B1)の軟化点と融解熱の最大ピーク温度(Ta)との比[軟化点/(Ta)]は、好ましくは0.8〜1.55であり、更に好ましくは0.85〜1.25、特に好ましくは0.9〜1.2、最も好ましくは0.9〜1.19である。この範囲内であると、トナー粒子として用いた場合に、画像劣化しにくくなる。
【0078】
なお、前記樹脂(A)についても、ウレタン基及びウレア基を有する結晶性ポリエステル樹脂(A1)であることが好ましく、その(Ta)、[軟化点/(Ta)]の好ましい範囲は、上記結晶性ポリエステル樹脂(B1)と同様である。
【0079】
本発明において、軟化点及び融解熱の最大ピーク温度は、以下の方法で測定される値である。
<軟化点>
降下式フローテスター{例えば「CFT−500D」[(株)島津製作所製]}を用いて、1gの測定試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出して、「プランジャー降下量(流れ値)」と「温度」とのグラフを描き、プランジャーの降下量の最大値の1/2に対応する温度をグラフから読み取り、この値(測定試料の半分が流出したときの温度)を軟化点とする。
【0080】
<融解熱の最大ピーク温度>
示差走査熱量計(DSC){例えば「DSC210」[セイコー電子工業(株)製]}を用いて、測定する。
融解熱の最大ピーク温度の測定に供する試料は、前処理として、130℃で溶融した後、130℃から70℃まで1.0℃/分の速度で降温し、次に70℃から10℃まで0.5℃/分の速度で降温する。ここで、一度DSCにより、昇温速度20℃/分で昇温して吸発熱変化を測定して、「吸発熱量」と「温度」とのグラフを描き、このとき観測される20℃〜100℃にある吸熱ピーク温度を「Ta*」とする。複数ある場合は最も吸熱量が大きいピークの温度をTa*とする。最後に試料を(Ta*−10)℃で6時間保管した後、(Ta*−15)℃で6時間保管する。
次いで上記試料を、DSCにより、降温速度10℃/分で0℃まで冷却した後、昇温速度20℃/分で昇温して吸発熱変化を測定して、同様のグラフを描き、吸発熱量の最大ピークに対応する温度を、融解熱の最大ピーク温度とする。
【0081】
本発明において、動的粘弾性測定値(貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”)は、動的粘弾性測定装置「RDS−2」(Rheometric Scientific社製)を用い周波数1Hz条件下で測定される。
測定試料は、測定装置の冶具にセットした後、(Ta+30)℃まで昇温して冶具に密着させてから、(Ta+30)℃から(Ta−30)℃まで0.5℃/分の速度で降温し、(Ta−30)℃で1時間静置し、次いで(Ta−10)℃まで0.5℃/分の速度で降温し、更に(Ta−10)℃で1時間静置し、十分に結晶化を進行させたのち、これを用いて測定を行う。測定温度範囲は30〜200℃であり、この温度間の溶融粘弾性を測定することによって、温度−G’、温度−G”の曲線として得ることができる。
なお、結晶性ポリエステル樹脂(B1)を測定する場合、上記の方法で測定した結晶性樹脂粒子の融解熱の最大ピーク温度(Ta’)を、結晶性ポリエステル樹脂(B1)の融解熱の最大ピーク温度(Ta)に読み替えて行う。
【0082】
結晶性ポリエステル樹脂(B1)の粘弾性特性において、(Ta+20)℃(Taは融解熱の最大ピーク温度)の損失弾性率G”は、1×10〜5×10(Pa)の範囲であることが好ましく、更に好ましくは5×10〜3×10(Pa)である。
(Ta+20)℃におけるG”が5×10(Pa)以下であると、低温定着時でコールドオフセットが起きにくくなり、低温定着性がより良好となる。また1×10(Pa)以上であると、定着温度領域が広くなる。
上記条件を満たす結晶性ポリエステル樹脂(B1)は、樹脂中の結晶性成分の比率を調整すること等により得ることができる。例えば、結晶化率や結晶性成分の比率を増加させると、G”(Ta+20)の値は小さくなる。結晶性成分としては、直鎖構造を有するポリオール等が挙げられる。
【0083】
結晶性ポリエステル樹脂(B1)のMwは、定着性の観点から好ましくは5,000〜100,000であり、更に好ましくは6,000〜80,000、特に好ましくは8,000〜50,000である。
【0084】
結晶性ポリエステル樹脂(B1)の結晶化率は、好ましくは20〜60重量%であり、更に好ましくは25〜50重量%、特に好ましくは30〜45重量%である。結晶化率は、例えばX線回折装置「XD−D1」[(株)島津製作所製]で回折X線のピーク角度位置θに応じたピーク強度を測定し、結晶部からの回折線と非晶部からの散乱線のピーク強度比から求める。
結晶化率が20重量%以上であると、低温定着性が更に良好となる。
【0085】
結晶性ポリエステル樹脂(B1)は、ジオールとジカルボン酸とから合成される重縮合ポリエステル樹脂であることが、結晶性の観点から好ましい。ただし、必要に応じて3官能以上のポリオール成分やポリカルボン酸成分を用いてもよい。
なお、ポリエステル樹脂としては、重縮合ポリエステル樹脂以外に、ラクトン開環重合物及びポリヒドロキシカルボン酸も同様に好ましい。
【0086】
結晶性部位として用いるジオールとしては、低温定着性及び耐熱保存安定性の観点から好ましいのは、炭素数2〜36の直鎖又は分岐脂肪族ジオールであり、更に好ましいのは炭素数2〜36の直鎖脂肪族ジオールである。
【0087】
結晶性部位として用いるジオールとしては、具体的にはエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール及び1,20−エイコサンジオール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、入手容易性の観点から好ましいのは、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール及び1,10−デカンジオールである。
なお、結晶性部位には、その他必要に応じて前記のポリオール成分を用いてもよい。
【0088】
結晶部位として用いるジカルボン酸としては、種々のジカルボン酸が挙げられるが、前記カルボン酸成分のうち好ましいのは、直鎖又は分岐脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸であり、更に好ましいのは直鎖脂肪族ジカルボン酸である。
【0089】
結晶性ポリエステル樹脂(B1)のうち、ラクトン開環重合物は、炭素数3〜12のモノラクトン(環中のエステル基数1個)(例えばβ−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン及びε−カプロラクトン等)を、金属酸化物及び有機金属化合物等の触媒を用いて、開環重合させることにより得ることができる。これらのうち、結晶性の観点から好ましいのはε−カプロラクトンである。
開環重合の開始剤としてグリコールを用いると、末端にヒドロキシル基を有するラクトン開環重合物が得られる。例えば、上記炭素数3〜12のモノラクトンと前記ジオール成分(エチレングリコール及びジエチレングリコール等)を触媒の存在下で反応させることにより得ることができる。触媒としては、有機スズ化合物、有機チタン化合物及び有機ハロゲン化スズ化合物等が一般的であり、0.1〜5,000ppm程度の割合で添加して、重合温度100〜230℃で、好ましくは不活性雰囲気下に重合させることにより、ラクトン開環重合物を得ることができる。ラクトン開環重合物は、その末端を例えばカルボキシル基になるように変性したものであってもよい。ラクトン開環重合物は、結晶性の高い熱可塑性脂肪族ポリエステル樹脂である。ラクトン開環重合物は、市販品を用いてもよく、例えば「PLACCEL」シリーズのH1P、H4、H5、H7等[ダイセル(株)製](いずれも、融点=約60℃、Tg=約−60℃の高結晶性ポリカプロラクトン)等が挙げられる。
【0090】
結晶性ポリエステル樹脂(B1)のうち、ポリヒドロキシカルボン酸は、グリコール酸及び乳酸(L体、D体及びラセミ体)等のヒドロキシカルボン酸を直接脱水縮合することにより得られるが、グリコリド、ラクチド(L体、D体及びラセミ体)等のヒドロキシカルボン酸の2分子間又は3分子間脱水縮合物に相当する炭素数4〜12の環状エステル(環中のエステル基数2又は3個)を、金属酸化物又は有機金属化合物等の触媒を用いて開環重合する方が、分子量の調整の観点から好ましい。環状エステルのうち、結晶性の観点から好ましいのは、L−ラクチド及びD−ラクチドである。
【0091】
樹脂(B)として、結晶性ポリエステル樹脂(B1)を単独で用いてもよいが、(B1)以外の樹脂と共に用てもよい。
ただし、低温定着性及び光沢性の観点から、樹脂(B)中の結晶性ポリエステル樹脂(B1)の含有率は、好ましくは65重量%以上であり、更に好ましくは68重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。
【0092】
樹脂粒子(R)中に含有される樹脂(A)と樹脂(B)の合計重量に対する樹脂(A)の含有率は、定着性の観点から、好ましくは5重量%以上であり、更に好ましくは10〜80重量%である。
【0093】
本第2発明の樹脂粒子(T)は、例えば、第3発明の水性分散体の製造方法により得られる水性分散体(X1)を用いて、第4発明の樹脂粒子の製造方法により得ることができる。
更に本第1発明の樹脂粒子(R)は、例えば、第3発明の製造方法により得られる水性分散体(X1)を用いる第5発明の水性分散体の製造方法により得られる水性分散体(X2)を用いて、第6発明の樹脂粒子の製造方法により得ることができる。
【0094】
本第3発明に用いる樹脂(C)としては、水性分散液(W)を形成し得る樹脂であればいかなる樹脂であっても使用でき、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよいが、例えばビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂及びポリカーボネート樹脂等が挙げられる。樹脂(C)としては、上記樹脂の2種以上を併用してもよい。これらのうち、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすいという観点から好ましいのは、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びこれらの併用であり、更に好ましいのはビニル樹脂である。
これらの樹脂の具体例としては、前記樹脂粒子(R)中に含有される樹脂として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0095】
第3発明の製造方法において、樹脂(C)を含有する樹脂粒子(S)の水性分散液(W)と、樹脂(A)及び/又はその前駆体[イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A0)とポリアミン(b)の組合せ]、並びに必要により有機溶剤を含有する油性液(OL)[油性液(OL)中には、必要により、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、樹脂(A)以外のポリウレタンウレア樹脂及びそれらの前駆体等から選ばれる1種以上を含んでいてもよい]とを混合し、水性分散液(W)中に油性液(OL)を分散させて、(A)の前躯体を用いる場合は前駆体を反応させて、樹脂(A)を含有する樹脂粒子(R)が形成される際に、樹脂粒子(S)が樹脂粒子(R)の表面に吸着されるため、樹脂粒子(R)同士あるいは樹脂粒子(T)同士が合一しににくなる。また、このため、高剪断条件下においても、樹脂粒子(T)は分裂されにくくなる。このような現象により、樹脂粒子(T)の粒径は一定の値に収斂するようになり、結果として粒径の均一な樹脂粒子が得られる。そのため、樹脂粒子(S)は、油性液(OL)を分散する際の温度において、剪断により破壊されない程度の強度を有し、水に溶解又は膨潤しにくく、油性液(OL)に溶解又は膨潤しにくいものであることが好ましい。
【0096】
樹脂(C)のガラス転移温度(Tg)は、樹脂粒子(S)及び樹脂粒子(R)の粒径の均一性、粉体流動性、保存時の耐熱性及び耐ストレス性の観点から、好ましくは0〜300℃であり、更に好ましくは20〜250℃、特に好ましくは50〜200℃である。なお、水性分散体(X1)を作製する温度より(Tg)が低いと、合一を防止したり、分裂を防止したりする効果が小さくなり、粒径の均一性を高める効果が小さくなる。
【0097】
樹脂粒子(S)が水性溶剤[水と必要により有機溶剤(u)を含有する溶剤]に対して、溶解したり、膨潤したりすることを低減する観点から、樹脂(C)の分子量、SP値、結晶性、架橋点間分子量等を適宜調整するのが好ましい。
【0098】
樹脂(C)のMnは、好ましくは200〜500万であり、更に好ましくは2,000〜500,000である。樹脂(C)のSP値は、好ましくは7〜18(cal/cm1/2であり、更に好ましくは8〜14(cal/cm1/2である。樹脂(C)の融点(DSCで測定)は、好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは80℃以上である。また、樹脂粒子(T)及び樹脂粒子(R)の耐熱性、耐水性、耐薬品性及び粒径の均一性等を向上させたい場合、樹脂(C)に、例えば3官能以上のモノマーを原料として用いて架橋構造を導入させてもよい。かかる架橋構造は、共有結合性、配位結合性、イオン結合性及び水素結合性等のいずれの架橋形態であってもよい。樹脂(C)に架橋構造を導入する場合の架橋点間分子量は、好ましくは30以上であり、更に好ましくは50以上である。一方、第5発明で樹脂粒子(R)から付着している樹脂粒子(S)を分離除去して樹脂粒子(R)の水性分散体(X2)を得る場合、樹脂(C)に架橋構造を導入しない方が好ましい。
【0099】
樹脂(C)を樹脂粒子(S)の水性分散液(W)にする方法は、特に限定されないが、以下の[1]〜[8]が挙げられる。
[1]ビニル樹脂の場合、モノマーを出発原料として、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法又は分散重合法等の重合反応により、直接、樹脂粒子(S)の水性分散液を製造する方法。
[2]ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加又は縮合樹脂の場合、前駆体(モノマー及びオリゴマー等)又はその有機溶剤(u)溶液を適当な分散剤存在下で水性溶剤[水と必要により有機溶剤(u)を含有する溶剤]中に分散させ、その後に加熱したり、硬化剤を加えたりして、前駆体を硬化させて樹脂粒子(S)の水性分散液を製造する方法。
[3]ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂及びエポキシ樹脂等の重付加又は縮合樹脂の場合、前駆体(モノマー及びオリゴマー等)又はその有機溶剤(u)溶液(液体であることが好ましい。加熱により液状化してもよい)中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化した後、加熱したり、硬化剤を加えたりして前駆体を硬化させて、樹脂粒子(S)の水性分散液を製造する方法。
[4]あらかじめ重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合又は縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい。以下同様。)により作製した樹脂を機械回転式又はジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで分級することにより樹脂粒子を得た後、適当な分散剤存在下で水性溶剤中に分散させて、樹脂粒子(S)の樹脂分散液を製造する方法。
[5]あらかじめ重合反応により作製した樹脂を有機溶剤(u)に溶解した樹脂溶液を、霧状に噴霧することにより樹脂粒子を得た後、該樹脂粒子を適当な分散剤存在下で水性溶剤中に分散させて、樹脂粒子(S)の樹脂分散液を製造する方法。
[6]あらかじめ重合反応により作製した樹脂を有機溶剤(u)に溶解した樹脂溶液に貧
溶剤を添加するか、又はあらかじめ有機溶剤(u)に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより樹脂粒子を析出させ、次いで有機溶剤(u)を除去して樹脂粒子を得た後、前記樹脂粒子を適当な分散剤存在下で水性溶剤中に分散させて、樹脂粒子(S)の樹脂分散液を製造する方法。
[7]あらかじめ重合反応により作製した樹脂を有機溶剤(u)に溶解した樹脂溶液を、適当な分散剤存在下で水性溶剤中に分散させ、これを加熱又は減圧等によって有機溶剤(u)を除去して、樹脂粒子(S)の樹脂分散液を製造する方法。
[8]あらかじめ重合反応により作製した樹脂を有機溶剤(u)に溶解した樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水性溶剤を加えて転相乳化して樹脂粒子(S)の樹脂分散液を製造する方法。
【0100】
上記[1]〜[8]の方法において、併用する乳化剤又は分散剤としては、公知の界面活性剤(s)、水溶性ポリマー(h)等を用いることができる。また、乳化又は分散の助剤として有機溶剤(u)、可塑剤(v)等を併用することができる。
【0101】
界面活性剤(s)としては特に限定されず、アニオン界面活性剤(s−1)、カチオン界面活性剤(s−2)、両性界面活性剤(s−3)及び非イオン界面活性剤(s−4)等が挙げられる。界面活性剤(s)は2種以上の界面活性剤を併用してもよい。
【0102】
アニオン界面活性剤(s−1)としては、カルボン酸又はその塩、硫酸エステル塩、カルボキシメチル化物の塩、スルホン酸塩及びリン酸エステル塩等が挙げられる。
加物等の無機酸塩又は有機酸塩が挙げられる。
カチオン界面活性剤(s−2)としては、第4級アンモニウム塩型界面活性剤及びアミン塩型界面活性剤等が挙げられる。
両性界面活性剤(s−3)としては、カルボン酸塩型両性界面活性剤、硫酸エステル塩型両性界面活性剤、スルホン酸塩型両性界面活性剤及びリン酸エステル塩型両性界面活性剤等が挙げられる。
非イオン界面活性剤(s−4)としては、AO付加型非イオン界面活性剤及び多価アルコ−ル型非イオン界面活性剤等が挙げられる。
これらの界面活性剤(s)の具体例としては、特開2002−284881号公報に記載のもの等が挙げられる。
【0103】
水溶性ポリマー(h)としては、セルロース化合物(例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びそれらのケン化物等)、ゼラチン、デンプン、デキストリン、アラビアゴム、キチン、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、アクリル酸(塩)含有ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸の水酸化ナトリウム部分中和物及びアクリル酸ナトリウム−アクリル酸エステル共重合体等)、スチレン−無水マレイン酸共重合体の水酸化ナトリウム(部分)中和物及び水溶性ポリウレタン(ポリエチレングリコール及びポリカプロラクトンジオール等とポリイソシアネートの反応生成物等)等が挙げられる。
【0104】
有機溶剤(u)は、樹脂(C)の乳化分散の際に必要に応じて水性溶剤中に加えてもよく、被乳化分散体中[油性液(OL)中]に加えてもよい。
有機溶剤(u)の具体例としては、芳香族炭化水素溶剤(トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びテトラリン等);脂肪族又は脂環式炭化水素溶剤(n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット及びシクロヘキサン等);ハロゲン溶剤(塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、四塩化炭素、トリクロロエチレン及びパークロロエチレン等);エステル又はエステルエーテル溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート及びエチルセロソルブアセテート等);エーテル溶剤(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等);ケトン溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン及びシクロヘキサノン等);アルコール溶剤(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール及びベンジルアルコール等);アミド溶剤(ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド等);スルホキシド溶剤(ジメチルスルホキシド等);複素環式化合物溶剤(N−メチルピロリドン等)並びにこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。なお、前記水性溶剤中に用いる有機溶剤(u)としては、これらのうち、25℃で水と任意の割合で混和する溶剤(アセトン及びメタノール等)が好ましい。
【0105】
可塑剤(v)は、樹脂(C)の乳化分散の際に必要に応じて水性溶剤中に加えてもよく、被乳化分散体中[油性液(OL)中]に加えてもよい。
可塑剤(v)としては特に限定されず、(v1)フタル酸エステル(フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ブチルベンジル及びフタル酸ジイソデシル等);(v2)脂肪族2塩基酸エステル(アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル及びセバシン酸−2−エチルヘキシル等);(v3)トリメリット酸エステル(トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル及びトリメリット酸トリオクチル等);(v4)リン酸エステル(リン酸トリエチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル及びリン酸トリクレジール等);(v5)脂肪酸エステル(オレイン酸ブチル等);(v6)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0106】
樹脂粒子(S)の粒径は、通常、樹脂粒子(R)の粒径よりも小さくなり、得られる樹脂粒子(R)又は(T)の粒径の均一性の観点から、粒径比[樹脂粒子(S)の体積平均粒径/樹脂粒子(T)の体積平均粒径]の値が0.001〜0.3の範囲であることが好ましい。粒径比の下限は更に好ましくは0.003、特に好ましくは0.005であり、上限は更に好ましくは0.25、特に好ましくは0.1である。かかる粒径比が、0.3より大きいと樹脂粒子(S)が樹脂粒子(R)の表面に効率よく吸着しないため、得られる樹脂粒子(T)の粒度分布が広くなる傾向がある。
【0107】
樹脂粒子(S)の体積平均粒径は、所望の粒径の樹脂粒子(T)を得るのに適した粒径になるように、上記粒径比の範囲で適宜調整することができる。
樹脂粒子(S)の体積平均粒径は、好ましくは0.0005〜30μmである。上限は、更に好ましくは20μm、特に好ましくは10μm、最も好ましくは2μmであり、下限は、更に好ましくは0.01μm、特に好ましくは0.02μm、最も好ましくは0.04μmである。ただし、例えば、体積平均粒径1μmの樹脂粒子(T)を得たい場合、好ましくは0.0005〜0.3μm、更に好ましくは0.001〜0.2μmであり、10μmの樹脂粒子(T)を得たい場合、好ましくは0.005〜3μm、更に好ましくは0.04〜2μm、特に好ましくは0.05〜1μmであり、100μmの樹脂粒子(T)を得たい場合、好ましくは0.05〜30μm、更に好ましくは0.1〜20μmである。なお、体積平均粒径は、レーザー式粒度分布測定装置{例えば「LA−920」[(株)堀場製作所製]}やコールターカウンター[例えば「マルチサイザーIII」(コールター社製)]で測定できる。
なお、上記粒径比が得やすいことから、後述する樹脂粒子(R)の体積平均粒径は、0.1〜300μmが好ましい。この上限は、更に好ましくは250μm、特に好ましくは200μm、最も好ましくは20μmであり、下限は、更に好ましくは0.5μm、特に好ましくは1μm、最も好ましくは4μmである。
【0108】
樹脂粒子(R)に含有される樹脂(A)のMn、融点、Tg及びSP値は、樹脂粒子(T)又は樹脂粒子(R)の用途によって好ましい範囲に適宜調整すればよい。例えば、樹脂粒子(T)又は樹脂粒子(R)をスラッシュ成形用樹脂、粉体塗料として用いる場合、樹脂(A)のMnは、好ましくは2,000〜50万であり、更に好ましくは4,000〜20万である。(A)の融点は、好ましくは0〜200℃であり、更に好ましくは35〜150℃である。(A)のTgは、好ましくは−60〜100℃であり、更に好ましくは−30〜60℃である。(A)のSP値は、好ましくは7〜18(cal/cm1/2であり、更に好ましくは8〜14(cal/cm1/2である。
樹脂粒子(T)又は樹脂粒子(R)を、電子部品(液晶ディスプレイ等)製造用スペーサー又は電子測定機の標準粒子として用いる場合、樹脂(A)のMnは、好ましくは2万〜1,000万であり、更に好ましくは4万〜200万である。(A)の融点は、好ましくは40〜300℃であり、更に好ましくは70〜250℃である。(A)のTgは、好ましくは−0〜250℃であり、更に好ましくは50〜200℃である。(A)のSP値は、好ましくは8〜18(cal/cm1/2であり、更に好ましくは9〜14(cal/cm1/2である。
樹脂粒子(T)又は樹脂粒子(R)をトナーの母体粒子(電子写真、静電記録又は静電印刷等に使用されるトナーの母体粒子)として用いる場合、樹脂(A)のMnは、好ましくは1,000〜500万であり、更に好ましくは2,000〜50万である。(A)の融点は、好ましくは20〜300℃であり、更に好ましくは80〜250℃である。(A)のTgは、好ましくは20〜200℃であり、更に好ましくは40〜100℃である。(A)のSP値は、好ましくは8〜16(cal/cm1/2であり、更に好ましくは9〜14(cal/cm1/2である。
【0109】
本第3発明の製造方法においては、樹脂(C)を含有する樹脂粒子(S)の水性分散液(W)と、樹脂(A)及び/又はその前駆体[イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A0)とポリアミン(b)の組合せ]、並びに必要により有機溶剤を含有する油性液(OL)[油性液(OL)中に、必要により、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、ウレタン樹脂及びそれらの前駆体等から選ばれる1種以上を含んでいてもよい。]とを混合し、水性分散液(W)中に油性液(OL)を分散させて、(A)の前躯体を用いる場合は前駆体[すなわちプレポリマー(A0)とポリアミン(b)]を反応させて、水性分散液(W)中で、樹脂(A)を含有する樹脂粒子(R)を形成させることにより、樹脂粒子(R)の表面に樹脂粒子(S)が付着した構造の樹脂粒子(T)の水性分散体(X1)を得る。
【0110】
樹脂(A)及び/又はその前駆体、並びに必要により有機溶剤を含有する油性液(OL)を水性分散液(W)に分散させる際に、分散装置を用いることができる。
分散装置としては、一般に乳化機や、分散機として市販されているものであれば特に限定されず、例えばバッチ式乳化機{ホモジナイザー(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)及びTKオートホモミキサー[特殊機化工業(株)製]等}、連続式乳化機{エバラマイルダー[(株)荏原製作所製]、TKフィルミックス、TKパイプラインホモミキサー[特殊機化工業(株)製]、コロイドミル[神鋼パンテック(株)製]、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機[サンテック(株)製]、キャピトロン(ユーロテック社製)及びファインフローミル[太平洋機工(株)製]等}、高圧乳化機{マイクロフルイダイザー[みずほ工業(株)製]、ナノマイザー[エス・ジーエンジニアリング(株)製]及びAPVガウリン(ガウリン社製)等}、膜乳化機{膜乳化機[冷化工業(株)製]等}、振動式乳化機{バイブロミキサー[冷化工業(株)製]等}、超音波乳化機{超音波ホモジナイザー(ブランソン社製)等}等が挙げられる。これらのうち、粒径の均一化の観点から好ましいのは、バッチ式乳化機、連続式乳化機及び高圧乳化機であり、更に好ましいのはAPVガウリン、ホモジナイザー、TKオートホモミキサー、エバラマイルダー、TKフィルミックス及びTKパイプラインホモミキサーである。
【0111】
樹脂(A)及び/又はその前駆体を樹脂粒子(S)の水性分散液(W)に分散させる際、樹脂(A)及びその前駆体[プレポリマー(A0)及びポリアミン(b)]は液体であることが好ましい。樹脂(A)及びその前駆体が常温で固体である場合、それらの融点以上の温度で分散させてもよい。
油性液(OL)の粘度は、粒径均一性の観点から、好ましくは10〜5万mPa・s(分散時の温度でB型粘度計で測定したもの)であり、更に好ましくは100〜1万mPa・sである。
分散時の温度としては、好ましくは0〜150℃(加圧下)であり、更に好ましくは5〜98℃である。上記の粘度が高い場合、温度を上げて上記の好ましい範囲まで粘度を低下させて、乳化分散を行うことが好ましい。
油性液(OL)に必要により用いる有機溶剤は、樹脂(A)及びその前駆体を25℃〜分散時の温度で溶解し得る溶剤であれば特に限定されず、具体的には、有機溶剤(u)と同様のものが挙げられる。好ましいものは樹脂(A)の種類によって異なるが、樹脂(A)とのSP値差が3以下であるのが好適である。また、樹脂粒子(T)の粒径均一性の観点から、樹脂(A)を溶解させるが、樹脂(C)を含有する樹脂粒子(S)を溶解・膨潤させにくい溶剤が好ましい。
【0112】
樹脂粒子(S)及び/又は樹脂粒子(R)中に添加剤(顔料、充填剤、帯電防止剤、着色剤、離型剤、荷電制御剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤及び難燃剤等)を含有させてもよい。樹脂粒子(S)又は樹脂粒子(R)中に添加剤を含有させる方法としては、水性分散液(W)中で水性分散体(X1)を形成させる際に混合してもよいが、あらかじめ樹脂(C)、又は樹脂(C)及び/又はその前駆体を含有する油性液(OL)と添加剤とを混合した後、水性分散液(W)中にその混合物を加えて分散させることが好ましい。
また、本発明においては、添加剤は必ずしも水性分散液(W)中で粒子を形成させる時に混合しておく必要はなく、粒子を形成せしめた後添加してもよい。例えば、着色剤を含まない樹脂粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加したり、有機溶剤(u)及び/又は可塑剤(v)と共に前記添加剤を樹脂粒子に含浸させることもできる。
【0113】
樹脂粒子(R)中に含有される樹脂(A)を含む樹脂100重量部に対する水性分散液(W)の使用量は、好ましくは50〜2,000重量部であり、更に好ましくは100〜1,000重量部である。50重量部以上であれば樹脂(A)の分散状態が良好になり、2,000重量部以下であれば経済的である。
【0114】
伸長及び/又は架橋反応時間は、プレポリマー(A0)の有する反応性基の構造とポリアミン(b)の組み合わせによる反応性により選択されるが、好ましくは10分〜40時間であり、更に好ましくは30分〜24時間である。反応温度は、好ましくは0〜150℃であり、更に好ましくは50〜120℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。例えばイソシアネートと活性水素化合物の反応の場合には、触媒としてジブチルチンラウレート及びジオクチルチンラウレート等が挙げられる。
【0115】
本第2発明の樹脂粒子(T)は、水性分散体(X1)から水性溶剤を除去することにより得られる。水性溶剤を除去する方法としては、以下の方法等が挙げられる。
[1]水性分散体(X1)を減圧下又は大気圧下で乾燥する方法。
[2]遠心分離器、スパクラフィルター又はフィルタープレス等により、水性分散体(X1)を固液分離し、得られた粉末を乾燥する方法。
[3]水性分散体(X1)を凍結させて乾燥させる方法(いわゆる凍結乾燥)。
上記[1]又は[2]の方法において、得られた粉末を乾燥する際、流動層式乾燥機、減圧乾燥機及び循風乾燥機等の公知の設備を用いて行うことができる。また、必要に応じ、風力分級器等を用いて分級し、所定の粒度分布とすることもできる。
【0116】
樹脂粒子(S)と樹脂粒子(R)との付着力を強めたいとき、水性分散液(W)中に油性液(OL)を分散した際に、樹脂粒子(S)と樹脂粒子(R)が正負逆の電荷を持つようにしたり、樹脂粒子(S)と樹脂粒子(R)が同一の電荷持つ場合、樹脂粒子(S)及び樹脂粒子(R)と逆電荷をもつ界面活性剤(s)又は水溶性ポリマー(h)を使用したり、樹脂(C)と樹脂(A)とのSP値差を2以下にしたりすることが有効である。
【0117】
樹脂粒子(T)の粒径均一性、保存安定性等の観点から、樹脂粒子(T)は、0.1〜50(好ましくは0.2〜40)重量%の樹脂粒子(S)と、50〜99.9(好ましくは60〜99.8)重量%の樹脂粒子(R)とから構成されることが好ましい。
【0118】
樹脂粒子(T)の粒径均一性、粉体流動性及び保存安定性等の観点から、樹脂粒子(R)の表面の5%(好ましくは30%、更に好ましくは80%)以上が樹脂粒子(S)で覆われているのが好ましい。なお、表面被覆率は、走査電子顕微鏡(SEM)で得られる像の画像解析から下式に基づいて求めることができる。
表面被覆率(%)=(SS)×100/[(SS)+(SR)]
(SS):樹脂粒子(S)に覆われている部分の面積
(SR):樹脂粒子(R)が露出している部分の面積
【0119】
粒径均一性の観点から、樹脂粒子(T)の[体積平均粒径/個数平均粒径]は、好ましくは1.0〜1.5であり、更に好ましくは1.0〜1.45であり、特に好ましくは1.05〜1.25である。
樹脂粒子(T)の体積平均粒径は、用途により異なるが、好ましくは0.1〜300μmである。上限は、更に好ましくは250μmであり、特に好ましくは200μm、最も好ましくは20μmであり、下限は、更に好ましくは0.5μmであり、特に好ましくは1μm、最も好ましくは4μmである。
なお、体積平均粒径及び個数平均粒径は、コールターカウンターで同時に測定することができる。
【0120】
樹脂粒子(T)は、樹脂粒子(S)と樹脂粒子(R)との粒径及び樹脂粒子(S)による樹脂粒子(R)表面の被覆率を変えることで粒子表面に所望の凹凸を付与することができる。
粉体流動性を向上させたい場合、樹脂粒子(T)のBET値比表面積が0.5〜5.0m/gであることが好ましい。BET比表面積は、比表面積計、例えば「QUANTASORB」[ユアサアイオニクス(株)製]を用いて測定(測定ガス:He/Kr=99.9/0.1vol%、検量ガス:窒素)することができる。
同様に粉体流動性の観点から、樹脂粒子(T)の表面平均中心線粗さRaが0.01〜0.8μmであることが好ましい。Raは、粗さ曲線とその中心線との偏差の絶対値を算術平均した値のことであり、例えば、走査型プローブ顕微鏡システム[(株)東陽テクニカ製]で測定することができる。
【0121】
樹脂粒子(T)の形状は、粉体流動性及び溶融レベリング性等の観点から球状であることが好ましい。その場合、樹脂粒子(S)及び樹脂粒子(R)も球状であることが好ましい。樹脂粒子(T)は、Wadellの実用球形度が好ましくは0.85〜1.00であり、更に好ましくは0.90〜1.00である。なお、Wadellの実用球形度は、粒子の投影面積に等しい面積を持つ円の直径と粒子の投影像に外接する最小面積の円との直径の比から求められる。粒子の投影像は、例えば走査電子顕微鏡(SEM)によって撮影することができる。
【0122】
樹脂粒子(R)の水性分散体(X2)は、水性分散体(X1)中において、樹脂粒子(S)を樹脂粒子(R)から脱離させた後、前記水性分散体から樹脂粒子(S)を分離除去したり、又は水性分散体(X1)中において、樹脂粒子(R)を溶解させることなく樹脂粒子(S)を溶解させたりして得られる。樹脂粒子(S)の溶解物は必要に応じて分離除去してもよい。
更に、水性分散体(X2)から水性溶剤を除去することにより樹脂粒子(R)が得られる。水性溶剤の除去方法としては、水性分散体(X1)から樹脂粒子(T)を得る場合と同様の方法が挙げられる。
水性分散体(X1)中において、付着している樹脂粒子(S)を樹脂粒子(R)から脱離させる方法としては、以下の方法等が挙げられる。
[1]水性分散体(X1)を超音波処理する方法。
[2]水性分散体(X1)を大量の水又は水溶性有機溶剤{メタノール、エタノール及びアセトン等}で希釈し、撹拌により剪断を与える方法。
[3]水性分散体(X1)に酸、アルカリ又は無機塩等を添加し、撹拌により剪断を与える方法。
[4]水性分散体(X1)を加熱し、撹拌により剪断を与える方法。
[5]水性分散体(X1)に有機溶剤を含む場合に、有機溶剤を留去する方法。
【0123】
水性分散体(X1)中において、樹脂粒子(S)を溶解させる方法としては、以下の方法等が挙げられる。
[1]樹脂(C)がカルボキシル基、ホスホノ基、スルホ基等の酸性官能基を有する樹脂(一般に酸性官能基1個当たりのMwが1,000以下であることが好ましい)である場合、水性分散体(X1)中に塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア及びDBU等)又はそれらの水溶液を加える方法。
[2]樹脂(C)が1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基及び4級アンモニオ基等の塩基性官能基を有する樹脂(一般に塩基性官能基1個当たりのMwが1,000以下であることが好ましい)である場合、水性分散体(X1)中に酸(塩酸、硫酸、リン酸及び酢酸等)又はそれらの水溶液を加える方法。
[3]樹脂(C)が、特定の有機溶剤(u)に溶解する場合[一般に樹脂(C)と有機溶剤(u)のSP値の差が2.5以下であることが好ましい]に、水性分散体(X1)中に特定の有機溶剤(u)を加える方法。
【0124】
水性分散体から樹脂粒子(S)又はその溶解物を分離除去する方法としては、以下の方法等が挙げられる。
[1]一定の目開きを有するろ紙、ろ布、メッシュ等を用いてろ過し、樹脂粒子(R)のみをろ別する方法。
[2]遠心分離により樹脂粒子(R)のみを沈降させ、上澄み中に含まれる樹脂粒子(S)又はその溶解物を除去する方法。
【0125】
樹脂粒子(S)の樹脂粒子(R)に対する粒径比及び水性分散体(X1)中における樹脂粒子(S)による樹脂粒子(R)表面の被覆率、水性分散体(X1)中における樹脂粒子(S)/水性溶剤界面上で樹脂粒子(S)が樹脂粒子(R)側に埋め込まれている深さを変えることにより、樹脂粒子(R)の表面を平滑にしたり、表面に所望の凹凸を付与したりすることができる。
樹脂粒子(S)による樹脂粒子(R)表面の被覆率や、樹脂粒子(S)が樹脂粒子(R)側に埋め込まれている深さは、以下のような方法で制御することができる。
[1]水性分散体(X1)を製造する際に、樹脂粒子(S)と樹脂粒子(R)とが正負逆の電荷を持つようにすると被覆率及び深さが大きくなる。この場合、樹脂粒子(S)、樹脂粒子(R)の各々の電荷を大きくするほど、被覆率及び深さが大きくなる。
[2]水性分散体(X1)を製造する際に、樹脂粒子(S)と樹脂粒子(R)とが同極性(いずれも正又はいずれも負)の電荷を持つようにすると、被覆率は下がり、深さが小さくなる傾向にある。この場合、一般に界面活性剤(s)及び/又は水溶性ポリマー(h)[特に樹脂粒子(S)及び樹脂粒子(R)と逆電荷を有するもの]を使用すると被覆率が上がる。また、水溶性ポリマー(h)を使用する場合には、水溶性ポリマー(h)のMwが大きいほど深さが小さくなる。
[3]水性分散体(X1)を製造する際に、樹脂(C)がカルボキシル基、ホスホノ基及びスルホ基等の酸性官能基を有する樹脂(一般に酸性官能基1個当たりのMwが1,000以下であることが好ましい)である場合に、水性溶剤のpHが低いほど被覆率及び深さが大きくなる。逆に、pHを高くするほど被覆率及び深さが小さくなる。
[4]水性分散体(X1)を製造する際に、樹脂(C)が1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基及び4級アンモニオ基等の塩基性官能基を有する樹脂(一般に塩基性官能基1個当たりの分子量が1,000以下であることが好ましい)である場合に、水性溶剤のpHが高いほど被覆率及び深さが大きくなる。逆に、pHを低くするほど被覆率及び深さが小さくなる。
[5]樹脂(C)と樹脂(A)とのSP値差を小さくするほど被覆率及び深さが大きくなる。
【0126】
樹脂粒子(R)の体積平均粒径は、用いられる用途により異なるが、好ましくは0.1〜300μmである。上限は、更に好ましくは250μmであり、特に好ましくは200μm、最も好ましくは20μmであり、下限は、更に好ましくは0.5μmであり、特に好ましくは1μm、最も好ましくは4μmである。また、粒径均一性の観点から、樹脂粒子(R)の[体積平均粒径/個数平均粒径]は、好ましくは1.0〜1.5であり、更に好ましくは1.0〜1.45、特に好ましくは1.05〜1.25である。
【0127】
粉体流動性を向上させたい場合には、樹脂粒子(R)のBET値比表面積を0.5〜5.0m/gとすることが好ましく、表面平均中心線粗さRaを0.01〜0.8μmと
することが好ましい。
樹脂粒子(R)の形状は、粉体流動性及び溶融レベリング性の観点から球状であることが好ましく、Wadellの実用球形度が好ましくは0.85〜1.00であり、更に好ましくは0.90〜1.00である。
【実施例】
【0128】
以下実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の記載において、「%」は重量%、「部」は重量部を示す。
【0129】
Mn及びMwは、THF可溶分について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて前記の条件で測定した。
【0130】
<製造例1>(エステルe−1の製造)
撹拌機、加熱冷却装置、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えた反応容器(特に記載のない限り、以下の製造例で用いる反応容器も同様。)に、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸109部、エチレングリコール291部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)0.5部を投入し、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで225℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水及びエチレングリコールを留去しながら4時間反応させ、更に5〜20mmHgの減圧下に反応させ、Mwがおよそ350になった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化し、重縮合ポリエステル樹脂[エステルe−1]を得た。[エステルe−1]のMnは340、Mwは370、水酸基価は470であった。
【0131】
<製造例2>(エステルe−2の製造)
反応容器に、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸94部、1,3−プロピレングリコール306部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)0.5部を投入し、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで225℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水及び1,3−プロピレングリコールを留去しながら4時間反応させ、更に5〜20mmHgの減圧下に反応させ、Mwがおよそ380になった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化し、重縮合ポリエステル樹脂[エステルe−2]を得た。[エステルe−2]のMnは390、Mwは410、水酸基価は420であった。
【0132】
<製造例3>(エステルe−3の製造)
反応容器に、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸82部、1,4−ブタンジオール318部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)0.5部を投入し、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで225℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水及び1,4−ブタンジオールを留去しながら4時間反応させ、更に5〜20mmHgの減圧下に反応させ、Mwがおよそ420になった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化し、重縮合ポリエステル樹脂[エステルe−3]を得た。[エステルe−3]のMnは430、Mwは460、水酸基価は380であった。
【0133】
<製造例4>(エステルe−4の製造)
反応容器に、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸66部、1,6−ヘキサンジオール334部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)0.5部を投入し、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで225℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水及び1,6−ヘキサンジオールを留去しながら4時間反応させ、更に5〜20mmHgの減圧下に反応させ、Mwがおよそ500になった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化し、重縮合ポリエステル樹脂[エステルe−4]を得た。[エステルe−4]のMnは500、Mwは530、水酸基価は340であった。
【0134】
<製造例5>(エステルe−5の製造)
反応容器に、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸107部、1,3−ベンゼンジカルボン酸8.5部、エチレングリコール285部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)0.5部を投入し、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで225℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水及びエチレングリコールを留去しながら4時間反応させ、更に5〜20mmHgの減圧下に反応させ、Mwがおよそ340になった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化し、重縮合ポリエステル樹脂[エステルe−5]を得た。[エステルe−5]のMnは350、Mwは370、水酸基価は480であった。
【0135】
<製造例6>(エステルe−6の製造)
反応容器に、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸107部、1,4−ベンゼンジカルボン酸8.5部、エチレングリコール285部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)0.5部を投入し、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで225℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水及びエチレングリコールを留去しながら4時間反応させ、更に5〜20mmHgの減圧下に反応させ、Mwがおよそ340になった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化し、重縮合ポリエステル樹脂[エステルe−6]を得た。[エステルe−6]のMnは340、Mwは360、水酸基価は490であった。
【0136】
<製造例7>(エステルe−7の製造)
反応容器に、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸109部、ジエタノールアミン493部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)0.5部を投入し、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで225℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水及びジエタノールアミンを留去しながら4時間反応させ、更に5〜20mmHgの減圧下に反応させ、Mwがおよそ500になった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化し、重縮合ポリエステル樹脂[エステルe−7]を得た。[エステルe−7]のMnは480、Mwは520、水酸基価は107であった。
【0137】
<製造例8>(エステルe−8の製造)
反応容器に、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸132部、エチレングリコール388部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)0.5部を投入し、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで225℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水及びエチレングリコールを留去しながら4時間反応させ、更に5〜20mmHgの減圧下に反応させ、Mwがおよそ466になった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化し、重縮合ポリエステル樹脂[エステルe−8]を得た。[エステルe−8]のMnは、460、Mwは470、水酸基価は118であった。
【0138】
<製造例9>(エステルe−9の製造)
反応容器に、1,2,4、5−ベンゼンテトラカルボン酸114部、1,3−プロピレングリコール408部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)0.5部を投入し、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで225℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水及び1,3−プロピレングリコールを留去しながら4時間反応させ、更に5〜20mmHgの減圧下に反応させ、Mwがおよそ500になった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化し、重縮合ポリエステル樹脂[エステルe−9]を得た。[エステルe−9]のMnは500、Mwは510、水酸基価は106であった。
【0139】
<製造例10>(エステルe−10の製造)
反応容器に、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸99部、1,4−ブタンジオール424部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)0.5部を投入し、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで225℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水及び1,4−ブタンジオールを留去しながら4時間反応させ、更に5〜20mmHgの減圧下に反応させ、Mwがおよそ540になった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化し、重縮合ポリエステル樹脂[エステルe−10]を得た。[エステルe−10]のMnは530、Mwは540、水酸基価は102であった。
【0140】
<製造例11>(結晶性樹脂a−1の製造)
反応容器に、セバシン酸145部、製造例4で得られたエステル(e−4)256部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)0.5部を投入し、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで225℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水及び1,6−ヘキサンジオールを留去しながら4時間反応させ、更に5〜20mmHgの減圧下に反応させ、Mwがおよそ10,000になった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化し、結晶性重縮合ポリエステル樹脂[結晶性樹脂a−1]を得た。[結晶性樹脂a−1]の融点は62℃、Mnは5,300、Mwは11,000、水酸基価は22であった。
【0141】
<製造例12>(結晶性樹脂a−2の製造)
反応容器に、セバシン酸170部、製造例3で得られたエステル(e−3)230部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)0.5部を投入し、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで225℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水及び1,4−ブタンジオールを留去しながら4時間反応させ、更に5〜20mmHgの減圧下に反応させ、Mwがおよそ10,000になった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化し、結晶性重縮合ポリエステル樹脂[結晶性樹脂a−2]を得た。[結晶性樹脂a−2]の融点は58℃、Mnは5,000、Mwは11,500、水酸基価は23であった。
【0142】
<製造例13>(結晶性樹脂B−1の製造)
反応容器に、セバシン酸145部、1,6−ヘキサンジオール255部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)0.5部を投入し、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで225℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水及び1,6−ヘキサンジオールを留去しながら4時間反応させ、更に5〜20mmHgの減圧下に反応させ、Mwがおよそ10,000になった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化し、結晶性重縮合ポリエステル樹脂[結晶性樹脂B−1]を得た。[結晶性樹脂B−1]の融点は67℃、Mnは5,200、Mwは10,000、水酸基価は22であった。
【0143】
<製造例14>(結晶性樹脂B−2の製造)
反応容器に、セバシン酸171部、1,4−ブタンジオール229部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)0.5部を投入し、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで225℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水及び1,4−ブタンジオールを留去しながら4時間反応させ、更に5〜20mmHgの減圧下に反応させ、Mwがおよそ10,000になった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化し、結晶性重縮合ポリエステル樹脂[結晶性樹脂B−2]を得た。[結晶性樹脂B−2]の融点は57℃、Mnは5,000、Mwは10,000、水酸基価は24であった。
【0144】
<製造例15>(非結晶性樹脂p−1の製造)
反応容器に、1,4−ベンゼンジカルボン酸159部、1,2−プロピレングリコール108部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)0.5部を投入し、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで225℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水及び1,2−プロピレングリコールを留去しながら4時間反応させ、更に5〜20mmHgの減圧下に反応させ、Mwがおよそ10,000になった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化し、非晶性重縮合ポリエステル樹脂[非結晶性樹脂p−1]を得た。[非結晶性樹脂p−1]のMnは4,800、Mwは12,000、水酸基価は26であった。
【0145】
<製造例16>(非結晶性樹脂p−2の製造)
反応容器に、1,4−ベンゼンジカルボン酸120部、ビスフェノールAのPO2モル付加物280部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)0.5部を投入し、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで225℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させ、更に5〜20mmHgの減圧下に反応させ、酸価が1となった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化し、非晶性重縮合ポリエステル樹脂[非結晶性樹脂p−2]を得た。[非結晶性樹脂p−2]のMnは5,200、Mwは12,000、水酸基価は25であった。
【0146】
<製造例17>(プレポリマーA0−1の製造)
オートクレーブに、製造例11で得られた[結晶性樹脂a−1]414部、IPDI36部及び酢酸エチル450部を投入し、密閉状態で100℃、5時間反応を行い、分子末端にイソシアネート基を有する[プレポリマーA0−1溶液]を得た。[プレポリマーA0−1溶液]のNCO含量は0.8%であった。
【0147】
<製造例18>(プレポリマーA0−2の製造)
製造例17において、IPDI36部の替わりにヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと記載。)27部を使用した以外は製造例17と同様にして、[プレポリマーA0−2溶液]を得た。[プレポリマーA0−2溶液]のNCO含量は0.8%であった。
【0148】
<製造例19>(プレポリマーA0−3の製造)
製造例17において、[結晶性樹脂a−1]414部の替わりに製造例12で得られた[結晶性樹脂a−2]395部を使用した以外は製造例17と同様にして、[プレポリマーA0−3溶液]を得た。[プレポリマーA0−3溶液]のNCO含量は0.8%であった。
【0149】
<製造例20>(プレポリマーA0−4の製造)
製造例17において、IPDI36部の替わりにHDI27部を使用した以外は製造例17と同様にして、[プレポリマーA0−4溶液]を得た。[プレポリマーA0−4溶液]のNCO含量は0.8%であった。
【0150】
<製造例21>(プレポリマーA0−5の製造)
オートクレーブに、製造例13で得られた[結晶性樹脂B−1]406部、IPDI35部及び酢酸エチル440部を投入し、密閉状態で100℃、5時間反応を行った後、25℃まで冷却し、更に製造例1で得られた[エステルe−1]8.1部及び酢酸エチル10部を投入し、再度密閉状態で100℃、5時間反応を行うことで分子末端にイソシアネート基を有する[プレポリマーA0−5溶液]を得た。[プレポリマーA0−5溶液]のNCO含量は0.4%であった。
【0151】
<製造例22>(プレポリマーA0−6の製造)
製造例21において、IPDI35部の替わりにHDI27部を使用した以外は製造例21と同様にして、[プレポリマーA0−6溶液]を得た。[プレポリマーA0−6溶液]のNCO含量は0.4%であった。
【0152】
<製造例23>(プレポリマーA0−7の製造)
製造例21において、IPDI35部の替わりに2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)28部を使用した以外は製造例21と同様にして、[プレポリマーA0−7溶液]を得た。[プレポリマーA0−7溶液]のNCO含量は0.4%であった。
【0153】
<製造例24>(プレポリマーA0−8の製造)
製造例21において、[結晶性樹脂B−1]406部の替わりに製造例14で得られた[結晶性樹脂B−2]367部を使用した以外は製造例21と同様にして、[プレポリマーA0−8溶液]を得た。[プレポリマーA0−8溶液]のNCO含量は0.5%であった。
【0154】
<製造例25>(プレポリマーA0−9の製造)
製造例21において、[エステルe−1]の替わりに製造例2で得られた[エステルe−2]を使用した以外は製造例21と同様にして、[プレポリマーA0−9溶液]を得た。[プレポリマーA0−9溶液]のNCO含量は0.5%であった。
【0155】
<製造例26>(プレポリマーA0−10の製造)
製造例21において、[エステルe−1]の替わりに製造例3で得られた[エステルe−3]を使用した以外は製造例21と同様にして、[プレポリマーA0−10溶液]を得た。[プレポリマーA0−10溶液]のNCO含量は0.5%であった。
【0156】
<製造例27>(プレポリマーA0−11の製造)
製造例21において、[エステルe−1]の替わりに製造例4で得られた[エステルe−4]を使用した以外は製造例21と同様にして、[プレポリマーA0−11溶液]を得た。[プレポリマーA0−11溶液]のNCO含量は0.5%であった。
【0157】
<製造例28>(プレポリマーA0−12の製造)
製造例21において、[エステルe−1]の替わりに製造例5で得られた[エステルe−5]を使用した以外は製造例21と同様にして、[プレポリマーA0−12溶液]を得た。[プレポリマーA0−12溶液]のNCO含量は0.4%であった。
【0158】
<製造例29>(プレポリマーA0−13の製造)
製造例21において、[エステルe−1]の替わりに製造例6で得られた[エステルe−6]を使用した以外は製造例21と同様にして、[プレポリマーA0−13溶液]を得た。[プレポリマーA0−13溶液]のNCO含量は0.4%であった。
【0159】
<製造例30>(プレポリマーA0−14の製造)
製造例21において、[エステルe−1]の替わりに製造例7で得られた[エステルe−7]を使用した以外は製造例21と同様にして、[プレポリマーA0−14溶液]を得た。[プレポリマーA0−14溶液]のNCO含量は0.4%であった。
【0160】
<製造例31>(プレポリマーA0−15の製造)
製造例21において、[結晶性樹脂B−1]406部の替わりに製造例15で得られた[非結晶性樹脂p−1]339部を使用した以外は製造例21と同様にして、[プレポリマーA0−15溶液]を得た。[プレポリマーA0−15溶液]のNCO含量は0.5%であった。
【0161】
<製造例32>(プレポリマーA0−16の製造)
製造例21において、[結晶性樹脂B−1]406部の替わりに製造例16で得られた[非晶性樹脂p−2]354部を使用した以外は製造例21と同様にして、[プレポリマーA0−16溶液]を得た。[プレポリマーA0−16溶液]のNCO含量は0.5%であった。
【0162】
<製造例33>(プレポリマーA0−17の製造)
製造例21において、[エステルe−1]の替わりに製造例8で得られた[エステルe−8]を使用した以外は製造例21と同様にして、[プレポリマーA0−17溶液]を得た。[プレポリマーA0−17溶液]のNCO含量は0.5%であった。
【0163】
<製造例34>(プレポリマーA0−18の製造)
製造例21において、[エステルe−1]の替わりに製造例9で得られた[エステルe−9]を使用した以外は製造例21と同様にして、[プレポリマーA0−18溶液]を得た。[プレポリマーA0−18溶液]のNCO含量は0.4%であった。
【0164】
<製造例35>(プレポリマーA0−19の製造)
製造例21において、[エステルe−1]の替わりに製造例10で得られた[エステルe−10]を使用した以外は製造例21と同様にして、[プレポリマーA0−19溶液]を得た。[プレポリマーA0−19溶液]のNCO含量は0.4%であった。
【0165】
<比較製造例1>(ポリエステル樹脂q−1の製造)
反応容器に、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸2.1部、1,4−ベンゼンジカルボン酸168部、プロピレングリコール230部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)0.5部を投入し、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで225℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水及びエチレングリコールを留去しながら4時間反応させ、更に5〜20mmHgの減圧下に反応させ、Mwがおよそ10,000になった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化し、重縮合ポリエステル樹脂[ポリエステル樹脂q−1]を得た。[ポリエステル樹脂q−1]のMnは5,200、Mwは10,000、水酸基価は23であった。
【0166】
<比較製造例2>(ポリエステル樹脂q−2の製造)
反応容器に、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸1.5部、1,4−ベンゼンジカルボン酸119部、ビスフェノールAのPO2モル付加物279部及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)0.5部を投入し、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで225℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水及びエチレングリコールを留去しながら4時間反応させ、更に5〜20mmHgの減圧下に反応させ、酸価が1となった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化し、重縮合ポリエステル樹脂[ポリエステル樹脂q−2]を得た。[ポリエステル樹脂q−2]のMnは5,300、Mwは12,000、水酸基価は24であった。
【0167】
<比較製造例3>(比較樹脂溶液D−1の製造)
温度計及び撹拌機を備えた反応容器に、製造例13で得られた[結晶性樹脂B−1]10部及び酢酸エチル10部を投入し、70℃まで昇温し撹拌して均一に分散させ、更に室温まで冷却して[樹脂溶液D−1]を得た。
【0168】
<比較製造例4>(比較樹脂溶液D−2の製造)
比較製造例3において、[結晶性樹脂B−1]の替わりに製造例14で得られた[結晶性樹脂B−2]を使用した以外は比較製造例3と同様にして、[樹脂溶液D−2]を得た。
【0169】
<比較製造例5>(比較樹脂溶液D3の製造)
比較製造例3において、[結晶性樹脂B−1]の替わりに比較製造例1で得られた[ポリエステル樹脂q−1]を使用した以外は比較製造例3と同様にして、[樹脂溶液D−3]を得た。
【0170】
<比較製造例6>(比較樹脂溶液D4の製造)
比較製造例3において、[結晶性樹脂B−1]の替わりに比較製造例2で得られた[ポリエステル樹脂q−2]を使用した以外は比較製造例3と同様にして、[樹脂溶液D4]を得た。
【0171】
<製造例36>{水性分散体[樹脂粒子(S1)分散体]の合成}
温度計及び撹拌機を備えた反応容器に、水682部、メタクリル酸EO付加物硫酸エステルのナトリウム塩「エレミノールRS−30」[三洋化成工業(株)製]11部、スチレン138部、メタクリル酸138部及び過硫酸アンモニウム1部を投入し、25℃、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。この乳濁液を加熱して75℃まで昇温し5時間反応させた。更に、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で5時間熟成してビニル樹脂(C)(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸EO付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散体[樹脂粒子(S1)分散体]を得た。[樹脂粒子(S1)分散体]の体積平均粒径は、0.15μmであった。また、[樹脂粒子(S1)分散体]の一部を乾燥して単離した樹脂粒子(S1)のTgは148℃であった。
【0172】
<製造例37>{樹脂粒子(S1)を含む[水性分散液W−1]の作製}
温度計及び撹拌機を備えた反応容器に、水634部、[樹脂粒子(S1)分散体]286部、カルボキシメチルセルロース「CMCダイセル1170」[ダイセル化学工業(株)製]2部及びドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液「エレミノールMON−7」[三洋化成工業(株)製]154部を投入し、25℃で撹拌し乳白色の液体[水性分散液W−1]を得た。
【0173】
<製造例38>(着色剤分散液の製造)
ビーカーに銅フタロシアニン20部と着色剤分散剤「ソルスパーズ28000」[アビシア(株)製]5部及び酢酸エチル75部を投入し、撹拌して均一に分散させた後、ビーズミルによって銅フタロシアニンを微分散して、[着色剤分散液1]を得た。[着色剤分散液1]の粒子径測定装置「LA−920」[(株)堀場製作所製]で測定した体積平均粒径は0.3μmであった。
【0174】
<製造例39>(変性ワックスの製造)
オートクレーブに、キシレン454部及び低分子量ポリエチレン「サンワックス LEL−400」[軟化点128℃、三洋化成工業(株)製]150部を投入し、窒素置換後170℃に昇温して均一に溶解した後、スチレン595部、メタクリル酸メチル255部、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート34部及びキシレン119部の混合溶液を、170℃で3時間かけて滴下して重合し、更に同温度で30分間保持した。次いで脱溶剤を行い、[変性ワックス1]を得た。[変性ワックス1]のMnは1,900、Mwは5,200、Tgは57℃であった。
【0175】
<製造例40>(ワックス分散液の製造)
温度計及び撹拌機を備えた反応容器に、パラフィンワックス(融点73℃)10部、[変性ワックス1]1部及び酢酸エチル33部を投入し、78℃に昇温して均一に溶解した後、1時間かけて30℃まで冷却し、ワックスを微粒子状に晶析させ、更にウルトラビスコミル(アイメックス製)で湿式粉砕し、[ワックス分散液1]を得た。[ワックス分散液1]の粒子径測定装置「LA−920」で測定した体積平均粒径は0.3μmであった。
【0176】
<実施例1>(樹脂粒子の製造)
ビーカーに[プレポリマーA0−1溶液]366部、[ワックス分散液1]31部、[着色剤分散液1]50部及びイソホロンジアミン3.0部を投入して溶解・混合均一化し、[樹脂溶液1]を得た。得られた[樹脂溶液1]中に[水性分散液W−1]550部を投入し、TKホモミキサー[特殊機化工業(株)製]を使用し、25℃、回転数12,000rpmで1分間分散操作を行い、更にフィルムエバポレータで減圧度−0.05MPa(ゲージ圧)、温度40℃、回転数100rpmの条件で240分間脱溶剤し、水性分散体(X−1)を得た。水性分散体(X−1)100部を遠心分離し、更に水60部を加えて遠心分離して固液分離する工程を2回繰り返した後、35℃で1時間乾燥して樹脂粒子(T1)を得た。
水性分散体(X−1)100部に、5%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え、TKホモミキサーを使用し、40℃に温調し回転数12,000rpmで10分間混合して、(T1)の表面に付着した[水性分散液W−1]由来の微粒子を溶解させた。次いで遠心分離で上澄みを除去し、更に水100部を加えて遠心分離する工程を2回繰り返した後、乾燥して樹脂粒子(R1)を得た。なお、[プレポリマーA0−1溶液]とイソホロンジアミンの反応は、それらを溶解・混合均一化し[樹脂溶液1]を得る工程から、フィルムエバポレータでの脱溶剤工程にかけて徐々に進行し、ウレタン基及びウレア基を有する樹脂が得られる。
【0177】
<実施例2>
実施例1において、[プレポリマーA0−1溶液]の替わりに[プレポリマーA0−2溶液]を使用する以外は実施例1と同様にして、水性分散体(X−2)、樹脂粒子(T2)及び樹脂粒子(R2)を得た。
【0178】
<実施例3>
実施例2において、イソホロンジアミンの替わりにヘキサメチレンジアミンを使用する以外は実施例1と同様にして、水性分散体(X−3)、樹脂粒子(T3)及び樹脂粒子(R3)を得た。
【0179】
<実施例4>
実施例1において、[プレポリマーA0−1溶液]の替わりに[プレポリマーA0−3溶液]を使用する以外は実施例1と同様にして、水性分散体(X−4)、樹脂粒子(T4)及び樹脂粒子(R4)を得た。
【0180】
<実施例5>
実施例1において、[プレポリマーA0−1溶液]の替わりに[プレポリマーA0−4溶液]を使用する以外は実施例1と同様にして、水性分散体(X−5)、樹脂粒子(T5)及び樹脂粒子(R5)を得た。
【0181】
<実施例6>
実施例5において、イソホロンジアミンの替わりにヘキサメチレンジアミンを使用する以外は実施例1と同様にして、水性分散体(X−6)、樹脂粒子(T6)及び樹脂粒子(R6)を得た。
【0182】
<実施例7>
実施例1において、[プレポリマーA0−1溶液]の替わりに[プレポリマーA0−5溶液]を使用する以外は実施例1と同様にして、水性分散体(X−7)、樹脂粒子(T7)及び樹脂粒子(R7)を得た。
【0183】
<実施例8>
実施例7において、イソホロンジアミンの替わりにヘキサメチレンジアミンを使用する以外は実施例7と同様にして、水性分散体(X−8)、樹脂粒子(T8)及び樹脂粒子(R8)を得た。
【0184】
<実施例9>
実施例1において、[プレポリマーA0−1溶液]の替わりに[プレポリマーA0−6溶液]を使用する以外は実施例1と同様にして、水性分散体(X−9)、樹脂粒子(T9)及び樹脂粒子(R9)を得た。
【0185】
<実施例10>
実施例9において、イソホロンジアミンの替わりにヘキサメチレンジアミンを使用する以外は実施例9と同様にして、水性分散体(X−10)、樹脂粒子(T10)及び樹脂粒子(R10)を得た。
【0186】
<実施例11>
実施例1において、[プレポリマーA0−1溶液]の替わりに[プレポリマーA0−7溶液]を使用する以外は実施例1と同様にして、水性分散体(X−11)、樹脂粒子(T11)及び樹脂粒子(R11)を得た。
【0187】
<実施例12>
実施例11において、イソホロンジアミンの替わりにヘキサメチレンジアミンを使用する以外は実施例11と同様にして、水性分散体(X−12)、樹脂粒子(T12)及び樹脂粒子(R12)を得た。
【0188】
<実施例13〜24>
実施例1において、[プレポリマーA0−1溶液]の替わりに[プレポリマーA0−8溶液]〜[プレポリマーA0−19溶液]を使用する以外は実施例1と同様にして、水性分散体(X−13)〜(X−24)、樹脂粒子(T13)〜(T24)及び樹脂粒子(R13)〜(R24)を得た。
【0189】
<比較例1〜4>
実施例1において、[プレポリマーA0−1溶液]の替わりに[樹脂溶液D1]〜[樹脂溶液D4]を使用する以外は実施例1と同様にして、水性分散体(X’−1)〜(X’−4)、樹脂粒子(T’1)〜(T’4)及び樹脂粒子(R’1)〜(R’4)を得た。
【0190】
<物性測定例>
本発明の樹脂粒子(T1)〜(T24)、(R1)〜(R24)及び比較の樹脂粒子(T’1)〜(T’4)、(R’1)〜(R’4)それぞれについて、粒径、粒度分布、結晶化率、定着性及び耐熱保存安定性を以下に記載の方法で測定又は評価した。その結果を表1、2に示す。
【0191】
[体積平均粒径及び粒度分布]
樹脂粒子(T)及び樹脂粒子(R)の体積平均粒径(Dv)並びに粒度分布(体積平均粒径/個数平均粒径;Dv/Dn)は、コールカウンター「マルチサイザーIII」(コールター社製)で測定した(0.5%のイオン交換水の分散液、25℃)。
なお、Dv/Dnが1.25以下であれば、粒度分布が良好であると判断される。
【0192】
[結晶化率]
樹脂粒子(T)及び樹脂粒子(R)の結晶化率は、X線回折装置「XD−D1」[(株)島津製作所製]で回折X線のピーク角度位置θに応じたピーク強度を測定し、結晶部からの回折線と非晶部からの散乱線のピーク強度比から求めた。
【0193】
[定着性]
各樹脂粒子に、「アエロジルR972」[日本アエロジル(株)社製]を1.0%添加し、よく混ぜて均一にした後、この粉体を紙面上に0.6mg/cmとなるよう均一に載せた。このとき粉体を紙面に載せる方法として、熱定着機を外したプリンターを用いた(上記の重量密度で粉体を均一に載せることができるのであれば他の方法を用いてもよい)。この紙を加圧ローラーに定着速度(加熱ローラ周速)213mm/sec、定着圧力(加圧ローラ圧)5kg/cmの条件で通した時の最低定着温度(MFT)及びホットオフセット発生温度(HOT)を測定した。
MFT欄及びHOT欄が“×”は定着領域なしである。
【0194】
[耐熱保存安定性]
50℃に温調された乾燥機に樹脂粒子を15時間静置し、ブロッキングの程度により下記の基準で評価した。
○:ブロッキングが発生しない。
△:ブロッキングが発生するが、力を加えると容易に分散する。
×:ブロッキングが発生し、力を加えても分散しない。
【0195】
【表1】

【0196】
【表2】

【0197】
表1、2に示したように、本発明の樹脂粒子(実施例1〜24)は、比較例の樹脂粒子と比較して、特に定着性がいずれも著しく良好な結果であり、耐熱保存性も同等以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0198】
本発明の樹脂粒子は、定着性に優れ、粒度分布がシャープであり、耐熱保存性にも優れる。そのため用途としては、スラッシュ成形用樹脂、粉体塗料、電子部品製造用スペーサー、電子測定機器の標準粒子、電子写真トナー用母体粒子、静電記録トナー用母体粒子、静電印刷トナー用母体粒子及びホットメルト接着剤等として有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
3価又は4価の芳香族カルボン酸(c)と炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(d1)又はジアルカノールアミン化合物(d2)とのエステル(e)、ポリイソシアネート(i)、及びポリアミン(b)を構成単位として有する樹脂(A)を含有する樹脂粒子(R)。
【請求項2】
樹脂(A)が、更にポリオール(p)を構成単位として有する請求項1記載の樹脂粒子(R)。
【請求項3】
樹脂(A)が、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A0)とポリアミン(b)との伸長反応及び/又は架橋反応により形成された樹脂である請求項1又は2記載の樹脂粒子。
【請求項4】
更に、架橋構造を有さない樹脂(B)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂粒子(R)。
【請求項5】
樹脂(A)及び/又は樹脂(B)が結晶性ポリエステル樹脂であり、結晶化率が20〜60重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂粒子(R)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂粒子(R)の表面に樹脂(C)を含有する樹脂粒子(S)が付着されてなる構造の樹脂粒子(T)。
【請求項7】
樹脂(C)を含有する樹脂粒子(S)の水性分散液(W)と、樹脂(A)及び/又はその前駆体、並びに必要により有機溶剤を含有する油性液(OL)とを混合し、(W)中に(OL)を分散させ、(A)の前駆体を用いる場合は(W)中で前駆体を反応させて、(A)を含有する樹脂粒子(R)を形成させることにより、(R)の表面に(S)が付着された構造の樹脂粒子(T)の水性分散体(X1)を得る工程を含み、樹脂(A)が、3価又は4価の芳香族カルボン酸(c)と炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(d1)又はジアルカノールアミン化合物(d2)とのエステル(e)、ポリイソシアネート(i)及びポリアミン(b)を構成単位として有する樹脂であることを特徴とする水性分散体(X1)の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の製造方法により得られた水性分散体(X1)から、水性溶剤を除去して樹脂粒子(T)を得る工程を含む樹脂粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項7記載の製造方法で得られた水性分散体(X1)中において、付着している樹脂粒子(S)を樹脂粒子(R)から脱離させた後、水性分散体から(S)を分離除去して(R)の水性分散体(X2)を得る工程、又は(S)を溶解させ、必要により(S)の溶解物を分離除去して(R)の水性分散体(X2)を得る工程を含む水性分散体(X2)の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の製造方法により得られた水性分散体(X2)から水性溶剤を除去して樹脂粒子(R)を得る工程を含む樹脂粒子の製造方法。
【請求項11】
樹脂(C)を含有する樹脂粒子(S)が、樹脂粒子(R)の表面に付着されてなる構造の樹脂粒子(T)であり、
[1][(S)の体積平均粒径/(T)の体積平均粒径]が0.001〜0.3であり、
[2](S)の体積平均粒径が0.0005〜30μm、かつ(T)の体積平均粒径が0.1〜300μmであり、
[3](R)の表面の5%以上が(S)で覆われており、
[4](T)の[体積平均粒径/個数平均粒径]が1.0〜1.5であり、
[5](R)が樹脂(A)及び必要により架橋構造を有さない樹脂(B)を含有し、樹脂(A)が3価又は4価の芳香族カルボン酸と炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(d1)又はジアルカノールアミン化合物(d2)とのエステル(e)、ポリイソシアネート(i)及びポリアミン(b)を構成単位として有する樹脂である樹脂粒子。


【公開番号】特開2011−132500(P2011−132500A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247246(P2010−247246)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】