説明

樹脂組成物および積層体の製造方法

【課題】耐ボイル性、耐レトルト性等の耐水性に優れ、かつ高レベルのガスバリア性を兼ね備えた積層体を好適に製造する。
【解決手段】少なくとも、高水素結合性樹脂と、無機層状化合物と、上記高水素結合性樹脂と架橋反応し得る金属有機化合物と、液体とを含む混合液をpH5以下で調製し、該混合液から液体を除去することにより樹脂組成物を製造する。上記樹脂組成物を用いて積層体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性に優れると共に、耐ボイル性、耐レトルト性等の耐水性に優れた樹脂組成物および該樹脂組成物からなる層を備えた積層体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性樹脂等からなるフィルムは、優れた力学的性質や耐熱性、透明性等を有し、菓子袋、カツオパック、レトルトパウチ、炭酸ガス飲料容器等の食品分野、化粧品分野、農薬分野、医療分野等の多くの分野で、広く包装材料として用いられている。
【0003】
これら包装材料に求められる機能は、上述したように多岐に渡っているが、これら包装材料に求められる機能のなかでも、内容物保護性としてのバリア性、特にガスバリア性が、食品の保存性を左右する大切な性質として重要視されている。つまり、食品の変質要因としては、酸素、光、熱、水分等があげられるが、その中でもとりわけ酸素はその起因物質として重要である。
【0004】
しかしながら、ガスバリア性は、一般的なプラスチック材料の弱点であり、上述した各種フィルムを食品包装用の包装材料として用いる場合には、酸素やその他の気体の遮断性が不充分であるため、酸化劣化や好気性微生物による内容物の変質を招来したり、香気成分が透過して風味が損なわれる等、種々の問題を生じる。さらに、近年、流通形態、包装技術の多様化、添加物規制、嗜好の変化等により、包装材料におけるガスバリア性は、その必要性が以前にも増して大きくなっている。
【0005】
このため、ガスバリア性を向上すべく、近年、ガスバリア性に優れるガスバリア材の開発が種々試みられており、上記ガスバリア材からなるガスバリア層を上述した各種フィルムに積層してなる積層体が、上述した各種分野における包装材料として注目されつつある。
【0006】
このような積層体において、ガスバリア材は、酸素を有効に遮断すると同時にガス充填や真空包装等の食品の変質を制御する手段として欠くことができない材料であり、酸素のみならず、各種ガス、水蒸気、有機溶剤蒸気、香気等のバリア機能を有することにより、防錆、防臭、昇華防止に利用することができる。
【0007】
そこで、本願発明者等は、以前に、ガスバリア性に優れる積層体として、高水素結合性樹脂と無機層状化合物とを含む樹脂組成物よりなるフィルムを基材フィルムに積層してなるフィルム積層体を提案した(特開平6−93133号公報、特開平7−304128号公報)。該フィルム積層体は、ガスバリア性に優れ、上述した各種用途に好適に用いることができるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のフィルム積層体は、従来よりもガスバリア性は向上されているものの、耐ボイル性、耐レトルト性等の厳しい条件下では未だ充分な耐水性が得られるとは言い難い。
【0009】
しかしながら、流通形態、包装技術の多様化、添加物規制、嗜好の変化等に加え、携帯
性、簡便性、保存性を求めて、パック食品や、ボイル用あるいはレトルト用食品の需要が高まりつつある昨今の食品事情、あるいは、上述した各種分野での各種利用用途において、ガスバリア性のみならず、耐ボイル性、耐レトルト性等の耐水性に優れる包装材料は、必要不可欠とも言える。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、耐ボイル性、耐レトルト性等の耐水性に優れ、かつ、高レベルのガスバリア性を兼ね備えた積層体の製造方法並びに該積層体のバリア材として用いられる樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者等は、上記の目的を達成すべく、鋭意検討した結果、少なくとも、高水素結合性樹脂と、無機層状化合物と、上記高水素結合性樹脂と架橋反応し得る金属有機化合物とから調製される樹脂組成物からなる層を備えた積層体が、耐ボイル性、耐レトルト性等の耐水性に優れ、かつ、高レベルのガスバリア性を兼ね備えていること、および、少なくとも、高水素結合性樹脂と、無機層状化合物と、上記高水素結合性樹脂と架橋反応し得る金属有機化合物と、液体とを含みph5以下で調製されてなる混合液から該樹脂組成物を好適に製造し得ることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明にかかる樹脂組成物の製造方法は、上記の課題を解決するために、少なくとも、高水素結合性樹脂と、無機層状化合物と、上記高水素結合性樹脂と架橋反応し得る金属有機化合物と、液体とを含む混合液をpH5以下で調製する工程、および該混合液から液体を除去する工程を包含することを特徴としている。
【0013】
また、本発明にかかる積層体の製造方法は、基材と、該基材上に形成された樹脂組成物からなる層とを備えている積層体の製造方法であって、少なくとも、高水素結合性樹脂と、無機層状化合物と、上記高水素結合性樹脂と架橋反応し得る金属有機化合物と、液体とを含む混合液をpH5以下で調製する工程、該基材の少なくとも一方の面上に該混合液を塗工する工程、および該基材上に塗工された混合液から液体を除去して樹脂組成物からなる層を形成する工程を包含することを特徴としている。
【0014】
上記の構成によれば、無機層状化合物が、その層状という形状により互いに対向すると共に、上記樹脂組成物からなる層の表面方向と略平行となるように配向することから、上記無機層状化合物の迷路効果を生じて、上記樹脂組成物からなる層に、高レベルのガスバリア性を付与することができる。
【0015】
また、上記の構成によれば、上記高水素結合性樹脂の架橋剤として上記金属有機化合物を用いることにより、上記樹脂組成物からなる層に、耐ボイル性、耐レトルト性等の高レベルの耐水性を付与することができる。さらに、上記樹脂組成物を製造するための、上記金属有機化合物を含む混合液をpH5以下で調製することにより、該混合液の安定性を向上させることができる。従って、上記の構成によれば、耐ボイル性、耐レトルト性等の耐水性に優れ、かつ、高レベルのガスバリア性を兼ね備える積層体、並びに、該積層体に上記の物性を与えるバリア材として好適に用いられる樹脂組成物を好適に製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る請求項1記載の樹脂組成物の製造方法は、以上のように、少なくとも、高水素結合性樹脂と、無機層状化合物と、上記高水素結合性樹脂と架橋反応し得る金属有機化合物と、液体とを含む混合液をpH5以下で調製する工程、および該混合液から液体を除去する工程を包含している。
【0017】
本発明に係る請求項2記載の樹脂組成物の製造方法は、以上のように、請求項1記載の樹脂組成物の製造方法において、上記混合液が、pH3以下で調製されてなるものである。
【0018】
本発明に係る請求項3記載の樹脂組成物の製造方法は、以上のように、請求項1または2に記載の樹脂組成物の製造方法において、上記金属有機化合物が、チタン有機化合物、ジルコニウム有機化合物、アルミニウム有機化合物、珪素有機化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物である。
【0019】
本発明に係る請求項4記載の樹脂組成物の製造方法は、以上のように、請求項1〜3の何れか1項に記載の樹脂組成物の製造方法において、上記高水素結合性樹脂がポリビニルアルコール、多糖類、およびエチレンービニルアルコール共重合体から選ばれる少なくとも一種の化合物である。
【0020】
本発明に係る請求項5記載の樹脂組成物の製造方法は、以上のように、請求項1〜4の何れか1項に記載の樹脂組成物の製造方法において、上記高水素結合性樹脂における架橋性官能基の割合が、20モル%〜60モル%の範囲内である。
【0021】
本発明に係る請求項6記載の樹脂組成物の製造方法は、以上のように、請求項1〜5の何れか1項に記載の樹脂組成物の製造方法において、上記高水素結合性樹脂における架橋性官能基のモル数に対する金属有機化合物の架橋生成基のモル数の比が、0.001〜10の範囲内である構成を有している。
【0022】
本発明に係る請求項7記載の樹脂組成物の製造方法は、以上のように、請求項1〜6の何れか1項に記載の樹脂組成物の製造方法において、上記無機層状化合物のアスペクト比が、50〜5,000の範囲内である。
【0023】
本発明に係る請求項8記載の樹脂組成物の製造方法は、以上のように、請求項1〜7の何れか1項に記載の樹脂組成物の製造方法において、上記無機層状化合物が溶媒に膨潤または劈開する化合物である。
【0024】
本発明に係る請求項9記載の樹脂組成物の製造方法は、以上のように、請求項1〜8記載の樹脂組成物の製造方法において、上記高水素結合性樹脂に対する上記無機層状化合物の重量比が、1/20〜10/1の範囲内である。
【0025】
上記の構成によれば、積層体に、耐ボイル性、耐レトルト性等の耐水性並びに高レベルでのガスバリア性を付与するバリア材として好適に用いられる樹脂組成物を好適に製造することができるという効果を奏する。
【0026】
本発明に係る請求項10記載の積層体の製造方法は、以上のように、基材と、該基材上に形成された樹脂組成物からなる層とを備えている積層体の製造方法であって、少なくとも、高水素結合性樹脂と、無機層状化合物と、上記高水素結合性樹脂と架橋反応し得る金属有機化合物と、液体とを含む混合液をpH5以下で調製する工程、該基材の少なくとも一方の面上に該混合液を塗工する工程、および該基材上に塗工された混合液から液体を除去して樹脂組成物からなる層を形成する工程を包含している。
【0027】
本発明に係る請求項11記載の積層体の製造方法は、以上のように、請求項10記載の積層体の製造方法において、上記樹脂組成物からなる層の膜厚が1nm〜10μmの範囲内である。
【0028】
上記の構成によれば、耐ボイル性、耐レトルト性等の耐水性に優れ、かつ、高レベルでのガスバリア性を兼ね備えた積層体を好適に製造することができるという効果を奏する。
【0029】
上記の積層体の製造方法は、食品分野、化粧品分野、農薬分野、医療分野等の多くの分野で、例えば包装材料等の製造方法として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の実施の一形態について図1ないし図7に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0031】
本発明にかかる樹脂組成物の製造方法は、少なくとも、高水素結合性樹脂と、無機層状化合物と、上記高水素結合性樹脂と架橋反応し得る金属有機化合物とから調製されてなる樹脂組成物を製造するためのものである。また、本発明にかかる積層体の製造方法は、図1に示すような、上記の樹脂組成物からなるバリア層3を少なくとも1層備えた構成を有している積層体を製造するためのものである。該バリア層3は、図1に示すように、例えば基材1上にアンカー層2を介して積層されていてもよく、あるいは、上記基材1上に直接積層されていてもよい。
【0032】
上記バリア層3は、図2に示すように、無機層状化合物が、その層状という形状により、層同士、例えば単位結晶層31同士が互いに対面すると共にバリア層3の表面方向と略平行となるように配向し、該無機層状化合物の層間、例えば単位結晶層31・31間に、上記高水素結合性樹脂と金属有機化合物とが架橋してなる架橋生成物である樹脂32が介在している構成を有している。
【0033】
本発明において上記バリア層3を構成するバリア材としての樹脂組成物に用いられる上記の高水素結合性樹脂は、架橋性官能基として、水素結合性基またはイオン性基を有する化合物である。該高水素結合性樹脂中の水素結合性基またはイオン性基の含有量(両者を含む場合には両者の合計量)は、通常、20モル%〜60モル%の範囲内であり、好ましくは30モル%〜50モル%の範囲内である。これら水素結合性基およびイオン性基の含有量は、例えば、核磁気共鳴(例えば、1H−NMR、13C−NMR等)によって測定することができる。
【0034】
上記高水素結合性樹脂が有する水素結合性基とは、具体的には、水酸基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基等が挙げられる。また、イオン性基としては、カルボキシレート基、スルホン酸イオン基、燐酸イオン基、アンモニウム基、ホスホニウム基等のイオン性基が挙げられる。これら水素結合性基およびイオン性基のなかでも特に好ましい官能基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、カルボキシレート基、スルホン酸イオン基、アンモニウム基等が挙げられる。
【0035】
上記高水素結合性樹脂としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、多糖類、後述するエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリル酸およびそのエステル類、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリベンゼンスルホン酸、ポリベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンおよびその4級アンモニウム塩、ポリビニルチオール、ポリグリセリン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。
【0036】
上記のポリビニルアルコール(PVA)としては、例えば、ビニルアルコールと酢酸ビニルとの共重合体であり、酢酸ビニル重合体の酢酸エステル部分を加水分解ないしエステル交換(けん化)して得られるポリマー;トリフルオロ酢酸ビニル重合体、ギ酸ビニル重
合体、ピバリン酸ビニル重合体、t−ブチルビニルエーテル重合体、トリメチルシリルビニルエーテル重合体等をけん化して得られるポリマー;等が挙げられる。該ポリビニルアルコールの詳細については、例えば、ポバール会編の「PVAの世界」(1992年、(株)高分子刊行会);「ポバール」(1981年、(株)高分子刊行会、長野等著);等を参照することで、より明らかになるであろう。
【0037】
上記ポリビニルアルコールのけん化率は、70モル%以上であることが好ましく、85モル%以上であることがより好ましく、98モル%以上であることが特に好ましく、完全けん化物であることが最も好ましい。また、上記ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5,000の範囲内であることが好ましく、200〜3,000の範囲内であることがより好ましい。また、上記のPVAとしては、本発明の目的が阻害されない限り、少量の共重合モノマーで変性されていてもよい。
【0038】
多糖類とは、種々の単糖類の縮重合によって生体系で合成される生体高分子であり、本発明では、該生体高分子に化学修飾を施したものも含まれる。上記多糖類としては、具体的には、例えば、セルロース;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;アミロース;アミロペクチン;プルラン;カードラン;ザンタン;キチン;キトサン等が挙げられる。
【0039】
また、上記のエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)とは、ビニルアルコール分率が40モル%〜80モル%の範囲内のEVOHであり、好ましくは、ビニルアルコール分率が45モル%〜75モル%の範囲内のEVOHである。該EVOHのメルトインデックス(MI)としては、特に限定されるものではないが、温度190℃、荷重2,160gの条件下で、0.1g/10分〜50g/10分であることが好ましい。上記のEVOHは、本発明の目的が阻害されない限り、少量の共重合モノマーで変性されていてもよい。
【0040】
これら高水素結合性樹脂は、一種類のみを用いてもよく、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。これら高水素結合性樹脂のなかでも、ポリビニルアルコール、多糖類、エチレンービニルアルコール共重合体が特に好適である。
【0041】
また、本発明において用いられる上記の金属有機化合物は、上記高水素結合性樹脂と、配位結合、水素結合、イオン結合等により架橋反応し得る化合物である。該金属有機化合物は、上記高水素結合性樹脂の架橋剤として、該高水素結合性樹脂と架橋し、該高水素結合性樹脂の柔軟性を維持したままで、上記バリア層3に、ボイル性およびレトルト性等の高レベルの耐水性を付与することができる。
【0042】
しかも、有機金属化合物は、上記高水素結合性樹脂との架橋反応性が高く、例えば無機系の金属塩と比較して架橋効率を向上することができる。また、上記バリア層3を、例えば上記樹脂組成物を含む塗工液のコーティングにより積層する場合、あまり反応性が高いとコーティング液中で架橋反応が進行し、コーティングには適さなくなる。しかしながら、有機金属化合物は、その配位子を変えることで反応性をコントロールし易く、コーティングに適している。
【0043】
上記金属有機化合物の好適な例としては、チタン有機化合物、ジルコニウム有機化合物、アルミニウム有機化合物、および珪素有機化合物が挙げられる。これら金属有機化合物は、一種類のみを用いてもよく、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0044】
上記チタン有機化合物の具体例としては、例えば、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシ
ル)チタネート、テトラメチルチタネート等のチタンオルソエステル類;チタンアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート、ポリチタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、チタンエチルアセトアセテート等のチタンキレート類;ポリヒドロキシチタンステアレート等のチタンアシレート類;等が挙げられる。
【0045】
上記ジルコニウム有機化合物の具体例としては、例えば、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムモノアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナートビスエチルアセトアセテート等が挙げられる。
【0046】
上記アルミニウム有機化合物の具体例としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウム有機酸キレート等が挙げられる。
【0047】
上記珪素有機化合物の具体例としては、例えば、上述したチタン有機化合物およびジルコニウム有機化合物で例示した配位子を有する化合物が挙げられる。
【0048】
上記金属有機化合物は、一種類のみを用いてもよく、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。上記金属有機化合物のなかでも、キレート化合物、例えばアセチルアセトナートのようなキレート性の配位子を有し、上記高水素結合性樹脂と配位結合する金属有機化合物が、架橋反応性が適度であることから好ましく、そのなかでも特にチタンキレート化合物が、得られる樹脂組成物を塗工する際の塗工液中での安定性の面で特に好ましい。また、チタンキレート化合物は、耐水性の向上に特に優れた効果を発揮する。
【0049】
本発明において用いられる上記の無機層状化合物とは、単位結晶層31…が互いに積み重なって層状構造を有している無機化合物である。本発明では、酸素の透過防止効果を有する該無機層状化合物が、その単位結晶層31同士が互いに対向するように上記バリア層3の樹脂32中に、膨潤、または膨潤して劈開した状態で分散して配向していることから、迷路効果を生じ、優れたガスバリア性を得ることができる。
【0050】
上記無機層状化合物は、劈開した状態において、粒径が5μm以下、アスペクト比がガスバリ性の観点から50〜5,000の範囲内であることが好ましく、アスペクト比が200〜3,000の範囲内であることがより好ましい。アスペクト比が50未満であればガスバリア性に関して充分でなく、5,000より大きいものは技術的に難しく、経済的にも高価なものとなる。また、粒径が3μm以下であれば透明性がより良好となり、さらに粒径が1μm以下であれば、透明性が重視される用途にはより好ましい。
【0051】
上記無機層状化合物の平均粒径は、回折/散乱法による方法、動的光散乱法による方法、電気抵抗変化による方法、液中顕微鏡撮影後画像処理による方法等により測定することができる。
【0052】
例えば、水等の純溶媒中での上記無機層状化合物の平均粒径を測定する方法としては、動的光散乱法が好適に用いられる。
【0053】
但し、上記動的光散乱法は、樹脂が共存している場合は見かけ液粘度が純溶媒と変わってしまうため評価し難く、電気抵抗変化による方法は液の電解質濃度等に制限があり、液中顕微鏡撮影後画像処理による方法は分解能の問題があり、使用上の制限を受ける。
【0054】
このため、樹脂の共存下で無機層状化合物の平均粒径を測定する場合、樹脂を含む溶液、例えば樹脂水性液が透明で実質上散乱が少なく、無機層状化合物の粒子に由来する散乱
が支配的である場合には、樹脂の有無に拘らず、無機層状化合物の粒子の粒度分布のみの情報が得られるため、回折/散乱法による方法が好適に用いられる。
【0055】
そこで、本発明で用いられる無機層状化合物の粒径とは、分散媒中、回折/散乱法により求めた粒径を示す。バリア層3中での真の粒径測定はきわめて困難であるが、回折/散乱法で用いた分散媒と同種の分散媒で充分に膨潤・劈開させて、バリア層3に用いる樹脂32に複合させる場合、図2に示すバリア層3での、劈開した無機層状化合物の粒径は、分散媒中での劈開した無機層状化合物の粒径に相当すると考えることができる。
【0056】
以下に、上記回折/散乱法により無機層状化合物の平均粒径を測定する方法について説明する。
【0057】
上記回折/散乱法による無機層状化合物の粒度分布および平均粒径は、上記無機層状化合物の分散液に光を通過させたときに得られる回折/散乱パターンから、ミー散乱理論等により、上記回折/散乱パターンに最も矛盾のない粒度分布を計算することにより得ることができる。
【0058】
上記回折/散乱法に用いられる回折/散乱パターンの測定装置としては、市販の装置を用いることができる。具体的には、例えば、コールター社製レーザー回折・光散乱法粒度測定装置LS230、同LS200、同LS100;島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置SALD2000、同SALD2000A、同SALD3000;堀場製作所製レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置LA910、同LA700、同LA500;日機装製マイクロトラックSPA、同マイクロトラックFRA等が挙げられる。
【0059】
次に、上記無機層状化合物のアスペクト比(アスペクト比(Z))の測定方法について説明する。
【0060】
上記アスペクト比(Z)とは、Z=L/aで示される関係から求められる比である。ここで、Lは、分散液中、上記した回折/散乱法による粒径測定法により求めた無機層状化合物の粒径(体積基準のメジアン径)を示し、aは、図2に示す劈開した無機層状化合物の単位厚さ、即ち、無機層状化合物の単位結晶層31の厚みを示す。
【0061】
上記無機層状化合物の「単位厚さa」は、後述する粉末X線回析法(「機器分析の手引き(a)」(1985年、化学同人社発行、塩川二朗監修)69頁参照)等によって、無機層状化合物単独の測定に基づいて決められる値である。より具体的には、図3に示すグラフで模式的に示すように、X線回析により観測される回折ピークのうち最も低角側のピークに対応する角度θから、Braggの式(nλ=2Dsinθ、n=1,2,3・・・)に基づいて求められる間隔を「単位厚さa」とする。
【0062】
また、分散液から溶媒を取り除いてなる、バリア層3に相当する樹脂組成物を粉末X線回析する際には、通常、該樹脂組成物における無機層状化合物の面間隔を、図2に示す「面間隔d」として求めることが可能である。
【0063】
より具体的には、図4のグラフに模式的に示すように、上記した「単位厚さa」に対応する回折ピーク位置より、低角(間隔が大きい)側に観測される回折ピークのうち、最も低角側のピークに対応する間隔を「面間隔d」(但し、a<d)とする。
【0064】
そして、上記粉末X線回析の結果、図5のグラフに模式的に示すように、上記「面間隔d」に対応するピークがハロー(ないしバックグラウンド)と重なって検出することが困難な場合には、2θdより低角側のベースラインを除いた部分の面積を、「面間隔d」に
対応するピークとする。ここで、「θd」は、「(単位厚さa)+(樹脂1本鎖の幅)」に相当する回折角である。尚、「面間隔d」の決定法の詳細については、例えば、「粘土の事典」(1985年、(株)朝倉書店出版、岩生周一等編)の35頁以下および271頁以下を参照することでより明らかになるであろう。
【0065】
このように樹脂組成物の粉末X線回析において観測される回折ピークの積分強度は、基準となる回折ピーク(即ち、「面間隔d」に対応する回折ピーク)の積分強度に対する相対比で2以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。
【0066】
通常は、上記の「面間隔d」と「単位厚さa」との差k(k=(d−a))は、長さに換算した場合、樹脂組成物を構成する樹脂1本鎖の幅に等しいかこれより大である(k=(d−a)≧樹脂1本鎖の幅)。このような「樹脂1本鎖の幅」は、シミュレーション計算(例えば、「高分子化学序論」(1981年、化学同人)の103頁〜110頁参照)等により求めることが可能であるが、ポリビニルアルコールの場合には4〜5Åである(水分子では2Å〜3Å)。
【0067】
バリア層3の樹脂32中の無機層状化合物の「真のアスペクト比」を直接測定することはきわめて困難である。従って、上記した「アスペクト比(Z)」は、必ずしも、バリア層3の樹脂32中の無機層状化合物の「真のアスペクト比」と等しいとは限らないが、下記の理由により、この「アスペクト比(Z)」をもって「真のアスペクト比」を近似することには妥当性がある。
【0068】
つまり、樹脂組成物の粉末X線回析法により求められる「面間隔d」と、無機層状化合物単独の粉末X線回析測定により求められる「単位厚さa」との間にa<dなる関係があり、かつ、上記kの値((d−a)値)が上記樹脂組成物中の樹脂1本鎖の幅以上である場合には、樹脂組成物中において、無機層状化合物の層間に樹脂が挿入されていることになる。従って、バリア層3の樹脂32中の無機層状化合物の厚みを上記「単位厚さa」で近似すること、即ち、バリア層3中の無機層状化合物の「真のアスペクト比」を、上記した無機層状化合物の分散液中での「アスペクト比(Z)」で近似することには、充分な妥当性がある。
【0069】
上述したように、バリア層3の樹脂32中における無機層状化合物の真の粒径測定はきわめて困難であるが、バリア層3の樹脂32中での無機層状化合物の粒径は、その分散液中の無機層状化合物の粒径Lに相当すると考えることができる。
【0070】
但し、回折/散乱法で求められる分散液中での上記無機層状化合物の粒径Lは、無機層状化合物の長径(Lmax)を越える可能性はかなり低いと考えられるため、「真のアスペクト比(Lmax/a)」が、本発明で用いる「アスペクト比(Z)」を下回る(Lmax/a<Z)可能性は、理論的にはかなり低い。
【0071】
従って、上述した2つの理由から、本発明で用いる「アスペクト比(Z)」の定義は、充分な妥当性を有するものと考えられる。本実施の形態において、「アスペクト比」とは上記で定義した「アスペクト比(Z)」を示し、「粒径」とは、「回折/散乱法で求めた粒径L」を示すものとする。
【0072】
上記無機層状化合物の具体例としては、例えば、グラファイト、リン酸塩系誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物等)、カルコゲン化物、粘土鉱物等を挙げることができる。上記カルコゲン化物とは、IV族(Ti,Zr,Hf)、V族(V,Nb,Ta)およびVI族(Mo,W)のジカルコゲン化物であって、化学式MX2(但し、式中、Mは上記IV族およびVI族の元素を表し、Xはカルコゲン(S,Se,Te)を表す)で
示される化合物である。
【0073】
上記無機層状化合物は、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合して用いてもよい。上記無機層状化合物のなかでも、大きなアスペクト比を容易に与える点から、溶媒に膨潤または劈開する性質を有するものが好ましく、溶媒に劈開(溶媒に膨潤して劈開)する性質を有するものがより好ましい。上記無機層状化合物の溶媒への膨潤性および劈開性は、後述する膨潤性試験並びに劈開性試験により評価することができる。
【0074】
〔膨潤性試験〕
100mlメスシリンダーに溶媒100mlを入れ、これに無機層状化合物2gをゆっくり加える。23℃にて24時間静置後、上記メスシリンダー内における無機層状化合物分散層と上澄みとの界面の目盛から無機層状化合物分散層の体積(ml)を膨潤値として読む。この数値が大きい程、膨潤性が高いことを示す。
【0075】
〔劈開性試験〕
無機層状化合物30gを溶媒1,500mlにゆっくり加え、分散機(浅田鉄工株式会社製、デスパMH−L、羽根径52mm、回転数3,100rpm、容器容量3L、底面−羽根間の距離28mm)にて、周速8.5m/分、23℃で90分間分散させた後、この分散液100mlをメスシリンダーに採取した。60分静置後、上記メスシリンダー内における無機層状化合物分散層と上澄みとの界面の目盛から無機層状化合物分散層の体積(ml)を劈開値として読む。この数値が大きい程、劈開性が高いことを示す。
【0076】
上記膨潤性測定試験並びに劈開性測定試験において用いられる溶媒としては、無機層状化合物の密度より小さい密度を有する溶媒である。上記無機層状化合物が天然の膨潤性粘土鉱物である場合、溶媒としては、水を用いることが好ましい。
【0077】
上記無機層状化合物の膨潤性は、上述した膨潤性測定試験において、無機層状化合物分散層の体積(即ち、無機層状化合物2gの膨潤後の体積)が約5ml以上(即ち、膨潤値5以上)であることが好ましく、約20ml以上(即ち、膨潤値20以上)であることがより好ましい。
【0078】
一方、無機層状化合物の劈開性は、上述した劈開性試験において、無機層状化合物分散層の体積(即ち、上記分散液100ml中に含まれる無機層状化合物(約2gに相当)の膨潤後の体積)が約5ml以上(即ち、劈開値5以上)であることが好ましく、約20ml以上(即ち、劈開値20以上)であることがより好ましい。
【0079】
上記無機層状化合物のうち、溶媒に膨潤または劈開する無機層状化合物としては、溶媒への膨潤性、劈開性を有する粘土鉱物が特に好ましく用いられる。該粘土鉱物は、一般に、(i)シリカの四面体層の上部に、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属とした八面体層を有する2層構造を有するタイプと、(ii)シリカの四面体層が、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属とした八面体層を両側から狭んでなる3層構造を有するタイプに分類される。前者(i)の2層構造タイプとしては、カオリナイト族およびアンチゴライト族等の粘土鉱物が挙げられる。後者(ii)の3層構造タイプとしては、層間カチオンの数によってスメクタイト族、バーミキュライト族、およびマイカ族等の粘土鉱物が挙げられる。
【0080】
これらの粘土鉱物としては、より具体的には、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、スチブンサイトヘクトライト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、タ
ルク、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石等が挙げられる。また、これら粘土鉱物を有機物で処理したもの(朝倉書店、「粘土の事典」参照;以下、有機修飾粘土鉱物と称する場合もある)も無機層状化合物として用いることができる。
【0081】
上記粘土鉱物の中でも、膨潤性または劈開性の観点から、スメクタイト族、バーミキュライト族、およびマイカ族の粘土鉱物が好ましく、スメクタイト族がより好ましい。上記スメクタイト族の粘土鉱物としては、具体的には、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、スチブンサイト、ヘクトライトが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0082】
上記無機層状化合物を膨潤または劈開させる分散媒としては、例えば、上記無機層状化合物が天然の膨潤性粘土鉱物の場合には、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール類;ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド;アセトン;等が挙げられ、その中でも、水や、メタノール等のアルコール類がより好ましい。また、上記無機層状化合物が有機修飾粘土鉱物の場合には、上記分散媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類;クロロベンゼン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル;メタアクリル酸メチル(MMA);フタル酸ジオクチル(DOP);ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド;メチルセロソルブ;シリコンオイル;等が挙げられる。
【0083】
上記樹脂組成物中における上記高水素結合性樹脂、無機層状化合物、および金属有機化合物の各配合割合は、特に限定されるものではないが、例えば、上記高水素結合性樹脂に対する上記無機層状化合物の重量比(無機層状化合物/高水素結合性樹脂)は、1/100〜100/1の範囲内、さらには、1/20〜10/1の範囲内であることが好ましく、1/20〜2/1の範囲内であることがより好ましい。無機層状化合物の重量比が高いほどバリア性に優れるが、耐屈曲性の点を考慮すると、上記重量比は1/20〜2/1の範囲内が好ましい。
【0084】
また、上記高水素結合性樹脂に対する上記金属有機化合物の配合割合としては、上記高水素結合性樹脂における架橋性官能基のモル数(即ち、水素結合性基およびイオン性基の合計のモル数)をHN、上記金属有機化合物における配位子を含む架橋生成基のモル数をCNとすると、上記高水素結合性樹脂が有する架橋性官能基のモル数に対する金属有機化合物の架橋生成基のモル数との比K(K=CN/HN)が、0.001〜10の範囲内となるように用いることが好ましく、0.01〜1の範囲内となるように用いることがより好ましい。
【0085】
さらに、上記樹脂組成物は、バリア層3とアンカー層2との密着性を向上するための界面活性剤を含むことが好ましい。該界面活性剤としては、アンカー層2とバリア層3との間の密着性を向上できるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0086】
アニオン性界面活性剤としては、脂肪族モノカルボン酸塩、N−アシロイルグルタミン酸塩等のカルボン酸型、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩−ホルムアルデヒド縮合物、スルホこはく酸ジアルキルエステル等のスルホン酸型、硫酸アルキル塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩等の硫酸エステル型、リン酸アルキル塩等のリン酸エステル型、ホウ酸アルキル塩等のホウ酸エステル型などの炭化水素系アニオン性界
面活性剤、パーフルオロデカン酸ナトリウム、パーフルオロオクチルスルホン酸ナトリウム等のフッ素系アニオン性界面活性剤、ポリジメチルシロキサン基とカルボン酸金属塩とを有する重合体など陰イオン性基を有するシリコーン系アニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0087】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩等のアミン塩型、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩型等が挙げられる。
【0088】
両性イオン性界面活性剤としては、N,N−ジメチル−N−アルキルアミノ酢酸ベタイン等のカルボキシベタイン型、1−アルキル−1−ヒドロキシエチル−1−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン等のグリシン型が挙げられる。
【0089】
非イオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等のエステル型、ポリジメチルシロキサン基とアルキレンオキシド付加物の縮重合体、ポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等のエーテル型、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のエステルエーテル型、脂肪族アルカノールアミド等のアルカノールアミド型、パーフルオロデカン酸−ジグリセリンエステルやパーフルオロアルキルアルキレンオキサイド化合物などのフッ素型が挙げられる。
【0090】
上記界面活性剤の中では、特に、炭素数6以上、24以下のアルキル鎖を有するカルボン酸のアルカリ金属塩、ポリジメチルシロキサン−ポリオキシエチレン共重合体等のエーテル型の非イオン性界面活性剤(シリコーン系非イオン性界面活性剤)や、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド化合物等のフッ素型非イオン性界面活性剤(フッ素系非イオン性界面活性剤)が好ましい。
【0091】
界面活性剤の配合量は、バリア層3を形成する際に、例えば塗工液を使用する場合、効果の観点から、該塗工液中の含有量が0.001重量%〜5重量%となるように設定することが好ましく、0.003重量%〜0.5重量%となるように設定することがより好ましく、0.005重量%〜0.1重量%となるように設定することが特に好ましい。
【0092】
上記樹脂組成物が界面活性剤をさらに含むことにより、バリア層3のアンカー層2に対する親和性、即ち、ぬれ性を改善することができるので、基材1との接着強度に優れるアンカー層2とバリア層3との間での密着性を向上することができる。
【0093】
また、上記樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、紫外線吸収剤、着色剤、酸化防止剤等の、従来公知の種々の添加剤を含んでいてもよい。
【0094】
本発明の積層体は、上記樹脂組成物と液体とを含む塗工液(組成物混合液)をコーティングにより基材1あるいはアンカー層2上に塗布して塗工膜を形成し、上記塗工膜を乾燥、熱処理することにより上記塗工膜から液体を除去して、上記樹脂組成物からなるバリア層3を基材1あるいはアンカー層2上に積層することにより容易に得ることができる。また、上記樹脂組成物からなるフィルムを上記基材1上あるいはアンカー層2上にラミネートしてもよく、特に好ましくは前者である。
【0095】
このようにコーティングによって、バリア層3を積層することにより、上記バリア層3の形成を容易化することができ、また、上記アンカー層2をコーティングにより積層する
場合、上記バリア層3を連続的にアンカー層2上に形成できる。従って、大量生産に好適である。
【0096】
本発明で用いる塗工液は、上記樹脂組成物を、溶媒や分散媒等の液体中に分散または溶解させた液である。得られる積層体のガスバリア性の観点から、上記液体としては、上述した無機層状化合物を膨潤または劈開させる分散媒が好ましい。上記液体が分散媒の場合、上記無機層状化合物は、上記液体に膨潤または劈開した状態で分散されている。
【0097】
上記塗工液中の上記高水素結合性樹脂および無機層状化合物の濃度は、両者の合計で、通常、0.1重量%〜70重量%の範囲内であり、4重量%〜15重量%の範囲内であることが好ましく、4重量%〜10重量%の範囲内が、生産性の観点からより好ましい。
【0098】
また、上記した塗工液のコーティングに用いられる方法としては、ダイレクトグラビア法、リバースグラビア法、マイクログラビア法等のグラビア法;2本ロールビートコート法、ボトムフィード3本リバースコート法等のロールコーティング法;ドクターナイフ法;ダイコート法;ディップコート法;バーコーティング法;あるいはこれらを組み合わせたコーティング法;等、従来公知の各種方法を採用することができる。
【0099】
上記塗工液の調製方法および上記高水素結合性樹脂、無機層状化合物、および金属有機化合物の配合方法は、特に限定されるものではない。例えば、上記高水素結合性樹脂と無機層状化合物とを配合する方法としては、配合時の均一性ないし操作の容易性の観点から、例えば、(1)上記高水素結合性樹脂を溶媒に溶解させてなる溶液と、無機層状化合物を予め膨潤または劈開させた分散液とを混合する方法;(2)無機層状化合物を分散媒により膨潤または劈開させた分散液を上記高水素結合性樹脂に添加し、上記高水素結合性樹脂を上記分散液に溶解させる方法;(3)上記高水素結合性樹脂を溶媒に溶解させてなる溶液に無機層状化合物を添加し、上記無機層状化合物を上記の溶液で膨潤または劈開させて分散液とする方法;が好適に用いられる。最終的には上記の溶液あるいは分散液は除去される。
【0100】
また、金属有機化合物は、上記高水素結合性樹脂と無機層状化合物とを混合した後で添加、混合することが好ましいが、上記高水素結合性樹脂あるいは無機層状化合物と同時に添加、あるいは、予め、上記溶媒あるいは分散媒に溶解あるいは分散させて用いてもよい。上記金属有機化合物はアルコール類に溶解させて添加することが好ましい。また、上記金属有機化合物を含む塗工液の安定性の面から、上記塗工液は酸性にすることが好ましく、pH5以下がより好ましく、3以下が特に好ましい。上記塗工液のpHに特に下限はないが、通常、0.5以上である。上記高水素結合性樹脂と上記金属有機化合物との混合工程を含むことで、上記高水素結合性樹脂が架橋されたバリア層3を得ることができる。
【0101】
さらに、上記高水素結合性樹脂と無機層状化合物との好適な配合方法としては、上記(1)〜(3)の方法以外に、例えば、(4)上記高水素結合性樹脂と無機層状化合物と金属有機化合物とを熱混練する方法;等が挙げられる。
【0102】
上述した方法のなかでも、無機層状化合物の大きなアスペクト比が容易に得られる点から、上記(1)〜(3)の方法がより好適である。また、上記(1)〜(3)の方法を採用する場合、高圧分散装置を用いて処理することが無機層状化合物の分散性の観点から好ましい。
【0103】
上記高圧分散装置としては、例えばMicrofluidicsCorporation社製超高圧ホモジナイザー(商品名:マイクロフルイダイザー)あるいはナノマイザー社製ナノマイザーがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフード
マシナリ製ホモゲナイザー等が挙げられる。上記無機層状化合物と樹脂とを含む組成物混合液を、高圧分散処理、特に、100kgf/cm2以上の圧力条件で高圧分散処理することにより、上記無機層状化合物と樹脂とが均一に分散された樹脂組成物および該樹脂組成物を含む塗工液を得ることができる。
【0104】
本発明における高圧分散処理とは、図7に示すように、分散させるべき粒子または分散媒等を混合した組成物混合液を複数本の細管11中に高速通過させ衝突させることにより、高剪断や高圧状態等の特殊な条件下で、分散処理することである。
【0105】
このような高圧分散処理では、組成物混合液を、管径1μm〜1,000μmの細管11中を通過させることが好ましく、細管11を通過時に、組成物混合液には、最大圧力条件が100kgf/cm2以上の圧力が印加されることが好ましく、さらに、500kgf/cm2以上の圧力が印加されることがより好ましく、1,000kgf/cm2以上の圧力が印加されることが特に好ましい。また、組成物混合液が、細管11内を通過する際、上記組成物混合液の最高到達速度は100m/s以上に達することが好ましく、伝熱速度は100kcal/hr以上であることが好ましい。
【0106】
上記高圧分散処理に用いる高圧分散処理装置内での高圧処理の原理を模式的に説明すると、まず、ポンプ12により、細管11より太い管径を有するフィーダー管13に組成物混合液が吸引されて取り込まれる。続いて、ポンプ12によって、フィーダー管13内の組成物混合液に対し、高圧が印加される。このとき、フィーダー管13に設けられた逆流防止弁(図示せず)により、フィーダー管13内の組成物混合液は、細管11に向かって押し出される。従って、組成物混合液は、細管11内において、高圧および高速状態となり、組成物混合液の各無機層状化合物粒子が互いに、および細管11の内壁と衝突して、上記各無機層状化合物粒子の径および厚さ、特に厚さが細分化され、かつ、より均一に分散されて、排出管14から外部に取り出される。
【0107】
例えば、細管11部分で処理サンプルである組成物混合液に対し、瞬間的に最高速度に達する地点の流速が、例えば300m/sの場合、体積1×10−3m3の立方体中を1/(3×105)secで通過し、組成物混合液の温度が35℃上昇するとき、圧力損失により組成物混合液にエネルギーが伝達される。伝熱速度は、組成物混合液の比重が1g/cm3比熱1cal/g℃のとき、3.8×104kcal/hrとなる。
【0108】
上記(1)〜(3)の方法において、上記塗工液を基材1あるいはアンカー層2上にコーティングしてなる塗工膜から溶媒や分散媒を除去し、積層した後、得られた積層体を、例えば110℃以上、220℃以下で熱エージングすることは、とりわけ積層体の耐水性、即ち、耐水環境テスト後のガスバリア性を向上させることができることから好ましい。エージング時間に限定はないが、積層体が少なくとも設定温度に到達する必要があり、例えば熱風乾燥機のような熱媒接触による方法の場合、1秒以上、100分以下が好ましい。
【0109】
上記の熱源としては、特に限定されるものではなく、熱ロール接触、熱媒接触(空気、オイル等)、赤外線加熱、マイクロ波加熱等、種々の方法を適用することができる。
【0110】
上記エージング処理は、上記無機層状化合物が膨潤性を有する粘土鉱物である場合に、耐水性の改良において特に優れた効果を発揮する。
【0111】
上記塗工液の基材1あるいはアンカー層2に対する塗工厚みは、塗工すべき基材1やアンカー層2の種類、目的とするバリア性能、用途等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、乾燥性および密着性の観点から、乾燥厚み(即ち、バリア層3
の膜厚)が10μm以下となるように設定することが好ましく、得られるバリア層3の透明性が著しく高くなることから、1μm以下となるように設定することが好ましい。上記バリア層3の膜厚の下限は、特に限定されるものではないが、上記無機層状化合物の単位厚さaの関係上、効果的なガスバリア性を得るためには、1nm以上であることが好ましい。
【0112】
上記フィルム積層体に用いられる基材1としては、特に限定されるものではなく、用途等に応じて適宜選択、設定することができる。該基材1としては、具体的には、例えば、樹脂(以下、基材樹脂と称する)、紙、アルミ箔、木材、布、不織布等の一般的な基材が挙げられる。
【0113】
上記の基材樹脂としては、ポリエチレン(低密度、高密度)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6、メタキシレンジアミン−アジピン酸縮重合体、ポリメチルメタクリルイミド等のアミド系樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリル等のスチレン−アクリロニトリル系樹脂;トリ酢酸セルロース、ジ酢酸セルロース等の疎水化セルロース系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、テフロン等のハロゲン含有樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロース誘導体等の水素結合性樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリメチレンオキシド樹脂、液晶樹脂等のエンジニアリングプラスチック系樹脂;等があげられる。
【0114】
これら基材樹脂を用いた基材1のなかでも、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の基材樹脂を二軸延伸してなるフィルム;これらポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の基材樹脂を二軸延伸後、さらに、Kコートと呼ばれるポリ塩化ビニリデンをコートしてなるフィルム;これらポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の基材樹脂を二軸延伸後、さらに、アルミニウム、シリカ、アルミナ等を蒸着してなるフィルム;強帯電防止用途のOPP(AS−OP);等が好適である。上記基材樹脂を用いた基材1は、例えば、フィルム状であってもよく、シート状であってもよい。
【0115】
上記基材1が基材樹脂からなる場合には、基材1と本発明にかかる樹脂組成物からなるバリア層3との密着性を向上すべく、上述したアンカー層2を設けることが好ましい。該アンカー層2は、例えば、ポリエチレンイミン系化合物、チタン系化合物、ポリブタジエン系化合物、ウレタン系化合物等、種々の化合物(アンカーコート剤)を用いて成膜することができるが、耐水性の観点から、イソシアネート化合物と活性水素化合物とを反応させてなるものが好ましい。
【0116】
上記アンカー層2に用いられるイソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート(H12MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が挙げられる。
【0117】
活性水素化合物としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリ
コール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン等の低分子量ポリオール;ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール;ポリ−β−メチル−δ−バレロラクトン、ポリカプロラクトン、ジオール/二塩基酸からのポリエステル等のポリエステルポリオール;等が挙げられる。
【0118】
上記活性水素化合物としては、特に、低分子量ポリオールが好ましく、そのなかでもジオールがより好ましい。ここで、ジオールとは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等であり、二塩基酸としてアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、イソフタル酸、テレフタル酸等である。その他のポリオールとして、ひまし油、液状ポリブタジエン、エポキシ樹脂、ポリカーボネートジオール、アクリルポリオール、ネオプレン等の活性水素化合物がある。
【0119】
イソシアネート化合物と活性水素化合物の混合比は、特に限定されないが、イソシアネート基と、活性水素基、例えば−OH基、−NH基、−COOH基との当量関係を考慮し、添加量を決定することが好ましい。例えば、イソシアネート基のモル数をAN、活性水素化合物の活性水素基のモル数をBNとすると、該活性水素基のモル数に対するイソシアネート基のモル数の比R(R=AN/BN)は、接着強度の観点から0.001以上であることが好ましく、粘着性およびブロッキングの観点から10以下であることが好ましい。このモル数の比Rは、0.01以上、1以下の範囲内であることがさらに好ましい。イソシアネート基および活性水素基の各モル数は、1H−NMR、13C−NMRにより定量することができる。
【0120】
アンカー層2を基材1へ積層する方法としては、特に限定されないが、上述したアンカーコート剤、例えばイソシアネート化合物と活性水素化合物とを含むアンカーコート剤を溶媒に溶解してなるアンカーコート剤を用いたコーティング法が好ましい。該コーティング法としては、例えば、ダイレクトグラビア法、リバースグラビア法、マイクログラビア法等のグラビア法;2本ロールビートコート法、ボトムフィード3本リバースコート法等のロールコーティング法;ドクターナイフ法;ダイコート法;ディップコート法;バーコーティング法;あるいはこれらを組み合わせたコーティング法;等を採用することができる。
【0121】
上記アンカーコート剤溶液における溶媒成分は、主として有機溶媒であり、例えば、アルコール類、脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類、エステル類、ケトン類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、これらの混合溶媒が挙げられる。
【0122】
上記アンカーコート剤溶液の基材1に対する塗工(塗布)厚みは、特に限定されないが、乾燥厚み(アンカー層2の膜厚)が0.01μm〜5μmの範囲内となるように設定されることが好ましい。塗工厚みが大きいほどヒートシール強度には優れるが、耐ゲルボフレックス性には劣る。このため、上記塗工厚みは、より好ましくは0.03μm〜2.0μmの範囲内であり、特に好ましくは0.05μm〜1.0μmの範囲内である。
【0123】
また、上記積層体には、上記バリア層3上に、図6に示すように、ヒートシール強度を向上させるためのシーラント層4を積層してもよい。該シーラント層4の材料としては、ヒートシール強度や食品の香り、樹脂臭等の脱着の問題から、ポリエチレン(低密度、高密度)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共
重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマー樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂(PAN)、ポリエステル樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体が好ましく用いられる。
【0124】
上記シーラント層4をバリア層3上に積層する方法としては、特に限定はされないが、例えば、上記シーラント層4に用いる樹脂を溶媒に溶解し、バリア層3上にコーティングする方法;シーラント層4をバリア層3上に押し出しラミネートする方法;シーラント層4をバリア層3上にドライラミネートする方法;等が好ましい例として挙げられる。また、シーラント層4とバリア層3との界面は、コロナ処理、オゾン処理、電子線処理や、アンカーコート剤の塗布等の処理がされていてもよい。
【0125】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、基材1、アンカー層2、バリア層3、およびシーラント層4の少なくとも1つに対し、紫外線吸収剤、着色剤、酸化防止剤等の種各の添加剤を混合してもよい。さらに、上記積層体は、必要に応じて、上述した層以外の層をさらに備えた構成を有していてもよい。
【0126】
本発明によれば、耐ボイル性、耐レトルト性等の高レベルの耐水性と高レベルのガスバリア性とを兼ね備えた積層体および該積層体のバリア材として用いられる樹脂組成物を好適に製造することができる。
【0127】
本発明にかかる上記のフィルム積層体の製造方法は、食品分野、化粧品分野、農薬分野、医療分野等の多くの分野で、例えば包装材料等の製造方法として好適に用いることができる。
【実施例】
【0128】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。また、実施例および比較例で得られたフィルム積層体の各種物性は、以下のようにして測定した。
【0129】
〔厚み測定〕
0.5μm以上の厚みは、市販のデジタル厚み計(接触式厚み計、商品名:超高精度デシマイクロヘッドMH−15M、日本光学社製)により測定した。一方、0.5μm未満の厚みは、重量分析法(一定面積のフィルムの重量測定値をその面積で除し、更に樹脂組成物の比重で除した)またはIR法により実際の塗工膜の膜厚とIR吸収との検量線を作成し、検量線より求めた。さらに本発明の樹脂組成物の塗工膜の膜厚に関する測定の場合等は、元素分析法(積層体の特定無機元素分析値(バリア層由来)と無機層状化合物単独の特定元素分率の比から本発明のバリア層と基材フィルムとの比を求める方法)によった。
【0130】
〔粒径測定〕
レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LA910、堀場製作所(株)製)を使用し、媒体の樹脂マトリックス中に存在する無機層状化合物とみられる粒子の体積基準のメジアン径を粒径Lとして測定した。尚、分散液原液はペーストセルにて光路長50μmで測定し、分散液の希釈液はフローセル法にて光路長4mmで測定した。
【0131】
〔アスペクト比計算〕
X線回折装置(XD−5A、(株)島津製作所製)を用い、無機層状化合物単独と樹脂組成物の粉末法による回折測定を行った。これにより無機層状化合物の単位厚さaを求め、さらに樹脂組成物の回折測定から、無機層状化合物の面間隔dが広がっている部分があることを確認した。上述の方法で求めた粒径Lを用いて、アスペクト比Zを、Z=L/a
の式により算出した。
【0132】
〔ボイルテスト〕
フィルム積層体のシーラント層間を、ヒートシーラー(FUJIIMPULSET230:FUJIIMPULSECO.LTD製)を用いて、温度208℃、時間0.5秒、ヒートシール幅10mmでヒートシールを行い、105mm×150mmの袋を作製した。この袋に、50ccの水を入れ、95℃で60分間、ボイルし、端面のうき(デラミ)、白化、袋の変形等、外観の変化を目視で確認した。
【0133】
〔レトルトテスト〕
フィルム積層体のシーラント層間を、ヒートシーラー(FUJIIMPULSET230:FUJIIMPULSECO.LTD製)を用いて、温度208℃、時間0.5秒、ヒートシール幅10mmでヒートシールを行い、105mm×150mmの袋を作製した。この袋に、50ccの水を入れ、120℃で30分間、レトルトし、端面のうき(デラミ)、白化、袋の変形等、外観の変化を目視で確認した。
【0134】
〔酸素透過度測定〕
JISK7126に基づき、超高感度酸素透過度測定装置(OX−TRANML、MOCON社製)にて23℃、50%RH条件で測定を行った。
【0135】
〔耐ゲルボフレックス性テスト〕
ASTMF392に基づき、得られたフィルム積層体を23℃、50%RHの環境下で、24時間エージングした後、筒状に保持した上記フィルム積層体を、恒温槽付ゲルボフレックステスター(テスター産業(株))で、上記筒状での中心軸を回転軸として440°ねじった後、元に戻すテストを100回、繰り返し行った。
【0136】
〔実施例1〕
分散釜(商品名:デスパMH−L、浅田鉄工(株)製)に、イオン交換水(比電気伝導率0.7μs/cm以下)1,410gと、高水素結合性樹脂としてのポリビニルアルコール(PVA117H;(株)クラレ製,ケン化度;99.6%、重合度1,700)80gとを仕込み、低速攪拌下(1,500rpm、周速度4.10m/分)で95℃に昇温し、1時間攪拌して溶解させて溶液(B)を得た。
【0137】
一方、1−ブタノール92gとイソプロピルアルコール277gとを混合した後、さらに非イオン性界面活性剤(商品名:SH3746、東レ・ダウコーニング(株)製)0.18gを添加して混合液(A)を得た。上記非イオン性界面活性剤は、ポリジメチルシロキサン−ポリオキシエチレン共重合体である。
【0138】
次に、上記分散釜内の溶液(B)を攪拌したまま60℃まで温度を下げた後、該溶液(B)に、予め調製した上記の混合液(A)を添加した。さらに、無機層状化合物としての天然モンモリロナイト(商品名:クニピアF;クニミネ工業(株)製)を粉末のまま40g添加し、上記天然モンモリロナイト(クニピアF)が液中にほぼ沈殿したことを確認後、高速攪拌(3,100rpm、周速度8.47m/分)を90分行い、トータル固形分濃度6.3重量%の混合液(C)を得た。このとき、劈開した上記天然モンモリロナイト(クニピアF)の粒径は560nm、粉末X線回折から得られるa値は1.2156nmであり、アスペクト比(Z)は461であった。
【0139】
上記の混合液(C)に、金属有機化合物としてのチタンアセチルアセトナート(商品名:TC100、松本製薬工業(株)製)5.3gを、低速攪拌下(1,500rpm、周速度4.10m/分)において、系のpHが3以下となるように塩酸で調整しながら徐々
に添加することにより、本発明にかかる樹脂組成物と溶媒とを含む塗工液(1)を調製した。
【0140】
厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(商品名:パイレンP2102;東洋紡(株)製)の表面コロナ処理したものを基材(基材フィルム)とし、該基材上にアンカコート剤(アドコートAD335AE/CAT10=15/1(重量比):東洋モートン(株)製)を、テストコーター(康井精機製)を用いて、マイクログラビア塗工法により、塗工速度3m/分、乾燥温度80℃でグラビア塗工した。当該塗工層の乾燥厚み(アンカー層の膜厚)は0.05μmであった。
【0141】
さらに、TOPコート液として、上記の塗工液(1)を、テストコーター(康井精機製)を用いて、マイクログラビア塗工法により、塗工速度3m/分、乾燥温度100℃でグラビア塗工し、基材上に、アンカー層を介して、上記塗工液(1)に基づくフィルム(バリア層)が形成された塗工フィルム(積層体)を得た。上記バリア層の膜厚、即ち、上記塗工液(1)を上記アンカー層上に塗工してなる塗工層の乾燥厚みは0.5μmであった。
【0142】
次に、当該塗工フィルムのバリア層上に、ウレタン系接着剤(商品名:ユーノフレックスJ3、三洋化成製)を用いて、表面コロナ処理したリニアポリエチレン((LLDPE)、商品名:KF101、関フィル(株)製、厚み40μm)を外層(シーラント層)としてドライラミネートし、本発明にかかる積層体としてフィルム積層体を得た。該フィルム積層体に対し、上述した方法によりボイルテストを行った。その結果、ボイル前後で外観の変化が見られず、外観は良好であった。
【0143】
〔比較例1〕
実施例1において、金属有機化合物の代わりに、メラミン−ホルマリン系架橋剤(商品名:SumitexResinM−3、住友化学工業(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較用のフィルム積層体を得た。該フィルム積層体に対し、実施例1と同様の方法によりボイルテストを行った。その結果、ボイル後のフィルム積層体端面にデラミ(フィルムの浮き)が見られ、外観は不良であった。
【0144】
〔実施例2〕
分散釜(商品名:デスパMH−L、浅田鉄工(株)製)に、イオン交換水(比電気伝導率0.7μs/cm以下)1,860gと、高水素結合性樹脂としてのポリビニルアルコール(PVA117H;(株)クラレ製,ケン化度;99.6%、重合度1,700)128とを仕込み、低速攪拌下(1,500rpm、周速度4.10m/分)で95℃に昇温し、1時間攪拌して溶解させて溶液(D)を得た。
【0145】
一方、1−ブタノール125gとイソプロピルアルコール375gとを混合した後、さらに非イオン性界面活性剤(商品名:SH3746、東レ・ダウコーニング(株)製)0.25gを添加して混合液(E)を得た。上記非イオン性界面活性剤は、ポリジメチルシロキサン−ポリオキシエチレン共重合体である。
【0146】
次に、上記分散釜内の溶液(D)を攪拌したまま60℃まで温度を下げた後、該溶液(D)に、予め調製した上記の混合液(E)を添加して混合液(F)を得た。
【0147】
次いで、攪拌乳化装置(商品名:真空乳化装置PVQ−3UN、みずほ工業(株)製)に、上記混合液(F)1,960gを仕込み、さらに、上記高水素結合性樹脂と無機層状化合物との重量比が2:1となるように、無機層状化合物としての天然モンモリロナイト(商品名:クニピアF;クニミネ工業(株)製)を粉末のまま50g添加した。続いて、
上記天然モンモリロナイト(クニピアF)が液中にほぼ沈殿したことを確認後、600mmHg、5,000rpmで10分間高速攪拌し、混合液(G)を得た。
【0148】
次に、高圧分散装置(商品名:超高圧ホモジナイザーM110−E/H、MicrofluidicsCorporation製)に、上記の混合液(G)2,000gを通し、1,750kgf/cm2で1回処理することで、分散性が良好で均一な分散液(G’)を得た。分散液(G’)の固形分濃度は7.5重量%であった。PVAとモンモリロナイトからなる分散液をフィルム状にキャストして、X線解析を行い、膨潤・劈開した上記天然モンモリロナイト(クニピアF)の面間隔dを測定した。上記天然モンモリロナイト(クニピアF)は充分に劈開されていた。このときの上記天然モンモリロナイト(クニピアF)のアスペクト比は450以上であった。上記の分散液(G’)に、金属有機化合物としてのチタンアセチルアセトナート(商品名:TC100、松本製薬工業(株)製)5.33gを、低速攪拌下(1,500rpm、周速度4.10m/分)において、系のpHが3以下となるように塩酸で調整しながら徐々に添加することにより、本発明にかかる樹脂組成物と溶媒とを含む塗工液(2)を調製した。
【0149】
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(OPET)フィルム(商品名:エスペットT4102;東洋紡(株)製)の表面コロナ処理したものを基材(基材フィルム)とし、該基材上にアンカコート剤(アドコートAD503/CAT10=15/1(重量比):東洋モートン(株)製)を、テストコーター(康井精機製)を用いて、マイクログラビア塗工法により、塗工速度3m/分、乾燥温度80℃でグラビア塗工した。当該塗工層の乾燥厚み(アンカー層の膜厚)は0.05μmであった。
【0150】
さらに、TOPコート液として、上記の塗工液(2)を、テストコーター(康井精機製)を用いて、マイクログラビア塗工法により、塗工速度3m/分、乾燥温度100℃でグラビア塗工し、基材上に、アンカー層を介して、上記塗工液(2)に基づくフィルム(バリア層)が形成された塗工フィルム(積層体)を得た。上記バリア層の膜厚、即ち、上記塗工液(2)を上記アンカー層上に塗工してなる塗工層の乾燥厚みは0.5μmであった。
【0151】
次に、当該塗工フィルムのバリア層上に、アンカコート剤(アドコートAD503/CAT10=15/1(重量比):東洋モートン(株)製)を接着剤として用いて、表面コロナ処理したレトルト用CPP(商品名:P1156、東洋紡績(株)製:厚み50μm)を外層(シーラント層)としてドライラミネートし、本発明にかかる積層体としてフィルム積層体を得た。該フィルム積層体に対し、上述した方法によりレトルトテストを行った。その結果、レトルト前後で外観の変化が見られず、外観は良好であった。
【0152】
〔比較例2〕
実施例2において、金属有機化合物の代わりに、メラミン−ホルマリン系架橋剤(商品名:SumitexResinM−3、住友化学工業(株)製)を用いた以外は、実施例2と同様にして、比較用のフィルム積層体を得た。該フィルム積層体に対し、実施例1と同様の方法によりレトルトテストを行った。その結果、レトルト後のフィルム積層体端面にデラミ(フィルムの浮き)が見られ、外観は不良であった。
【0153】
〔実施例3〕
分散釜(商品名:デスパMH−L、浅田鉄工(株)製)に、イオン交換水(比電気伝導率0.7μs/cm以下)1,410gと、高水素結合性樹脂としてのポリビニルアルコール(PVA117H;(株)クラレ製,ケン化度;99.6%、重合度1,700)50gとを仕込み、低速攪拌下(1,500rpm、周速度4.10m/分)で95℃に昇温し、1時間攪拌して溶解させた。
【0154】
次いで、次に、上記分散釜内の溶液を攪拌したまま60℃まで温度を下げた後、該溶液に、1−ブタノール15gを滴下し、最終的な1−ブタノール分率が重量にして1%となるようにした。そして、無機層状化合物としての天然モンモリロナイト(商品名:クニピアF;クニミネ工業(株)製)を粉末のまま25g添加し、上記天然モンモリロナイト(クニピアF)が液中にほぼ沈殿したことを確認後、高速攪拌(3,100rpm、周速度8.47m/分)を90分行い、トータル固形分濃度5wt%の混合液(H)を得た。このとき、劈開した上記天然モンモリロナイト(クニピアF)の粒径は560nm、粉末X線回折から得られるa値は1.2156nmであり、アスペクト比(Z)は461であった。
【0155】
一方、1−ブタノール92gとイソプロピルアルコール277gとを混合した後、さらに非イオン性界面活性剤(商品名:SH3746、東レ・ダウコーニング(株)製)0.18gを添加して混合液(A)を得た。上記非イオン性界面活性剤は、ポリジメチルシロキサン−ポリオキシエチレン共重合体である。
【0156】
次に、上記の混合液(H)に上記混合液(A)を低速攪拌下(1,500rpm、周速度4.10m/min)において徐々に添加し、さらに、金属有機化合物としてのチタンアセチルアセトナート(商品名:TC100、松本製薬工業(株)製)3.3gを、低速攪拌下(1,500rpm、周速度4.10m/min)において系のpHが3以下となるように塩酸で調整しながら徐々に添加することにより、本発明にかかる樹脂組成物と溶媒とを含む塗工液(3)を調製した。
【0157】
厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(商品名:パイレンP2102;東洋紡(株)製)の表面コロナ処理したものを基材(基材フィルム)とし、該基材上にアンカコート剤(アドコートAD335/CAT10=15/1(重量比):東洋モートン(株)製)を、テストコーター(康井精機製)を用いて、マイクログラビア塗工法により、塗工速度3m/分、乾燥温度80℃でグラビア塗工した。当該塗工層の乾燥厚み(アンカー層の膜厚)は0.15μmであった。
【0158】
さらに、TOPコート液として、上記の塗工液(3)を、テストコーター(康井精機製)を用いて、マイクログラビア塗工法により、塗工速度3m/分、乾燥温度100℃でグラビア塗工し、基材上に、アンカー層を介して、上記塗工液(3)に基づくフィルム(バリア層)が形成された塗工フィルム(積層体)を得た。上記バリア層の膜厚、即ち、上記塗工液(3)を上記アンカー層上に塗工してなる塗工層の乾燥厚みは0.5μmであった。前述の耐ゲルボフレックス性テストを行う前の当該塗工フィルム(表中では0回と記載)と、当該塗工フィルムに対し、耐ゲルボフレックス性テストを100回行った後の塗工フィルムとを、それぞれ、酸素透過度を測定した。それらの結果を表1に示した。
【0159】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】本発明を用いて製造される積層体の一例を示す概略断面図である。
【図2】上記積層体のバリア層を示す概略断面図である。
【図3】上記積層体における無機層状化合物の「単位厚さa」を算出するための無機層状化合物のX線回折グラフである。
【図4】上記積層体における無機層状化合物の「面間隔d」を算出するための無機層状化合物のX線回折グラフである。
【図5】上記図4のグラフにおいて、「面間隔d」に対応するピークがハロー(ないしバックグラウンド)と重なって検出することが困難な場合における無機層状化合物の「面間隔d」を算出するときの、X線回折グラフである。
【図6】本発明を用いて製造される積層体の他の例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の一実施形態において用いる高速分散処理を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0161】
1 基材
2 アンカー層
3 バリア層
4 シーラント層
11 細管
12 ポンプ
13 フィーダー管
14 排出管
31 単位結晶層
32 樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、高水素結合性樹脂と、無機層状化合物と、上記高水素結合性樹脂と架橋反応し得る金属有機化合物と、液体とを含む混合液をpH5以下で調製する工程、および該混合液から液体を除去する工程を包含することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
上記混合液が、pH3以下で調製されてなるものであることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
上記金属有機化合物が、チタン有機化合物、ジルコニウム有機化合物、アルミニウム有機化合物、珪素有機化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
上記高水素結合性樹脂がポリビニルアルコール、多糖類、およびエチレンービニルアルコール共重合体から選ばれる少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
上記高水素結合性樹脂における架橋性官能基の割合が、20モル%〜60モル%の範囲内であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
上記高水素結合性樹脂における架橋性官能基のモル数に対する金属有機化合物の架橋生成基のモル数の比が、0.001〜10の範囲内であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
上記無機層状化合物のアスペクト比が、50〜5,000の範囲内であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
上記無機層状化合物が溶媒に膨潤または劈開する化合物であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
上記高水素結合性樹脂に対する上記無機層状化合物の重量比が、1/20〜10/1の範囲内であることを特徴とする請求項1〜8記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
基材と、該基材上に形成された樹脂組成物からなる層とを備えている積層体の製造方法であって、
少なくとも、高水素結合性樹脂と、無機層状化合物と、上記高水素結合性樹脂と架橋反応し得る金属有機化合物と、液体とを含む混合液をpH5以下で調製する工程、
該基材の少なくとも一方の面上に該混合液を塗工する工程、および
該基材上に塗工された混合液から液体を除去して樹脂組成物からなる層を形成する工程を包含することを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項11】
上記樹脂組成物からなる層の膜厚が1nm〜10μmの範囲内であることを特徴とする請求項10記載の積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−262410(P2007−262410A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106306(P2007−106306)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【分割の表示】特願平10−117208の分割
【原出願日】平成10年4月27日(1998.4.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】