説明

樹脂組成物並びにこれを用いた多層構造体

【課題】 ガスバリア性および疎水性熱可塑性樹脂への接着性が同時に優れる樹脂組成物
を提供する。
【解決手段】 エチレン含有率20〜60モル%のエチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(A)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(B)、エチレン含有率が60モル%超であり、極性基を含有するエチレン−酢酸ビニル系共重合体(C)、粘着付与剤(D)を含有し、かつ組成物中におけるエチレン含有率20〜60モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)の含有量が50〜75重量%であり、組成物中における数平均分子量100〜3000であり且つ60℃以上170℃未満の軟化点を有している炭化水素系樹脂(D)の含有量が1〜20重量%である樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物を含有する樹脂組成物に関し、特に、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の疎水性熱可塑性樹脂との接着力に優れたエチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物組成物、およびこれを用いた多層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(以下、「EVOH樹脂」と称することがある)は、高分子側鎖に存在する水酸基同士の水素結合のため、非常に強い分子間力を有すため、気体分子等はEVOH樹脂フィルムを通過することができない。このようなことから、EVOH樹脂を用いた包装材は優れたガスバリア性を示し、水、飲食料品の包装用フィルム、包装容器素材として利用されている。
【0003】
また、EVOH樹脂は水分の混入によって分子間および分子内水素結合が阻害され、ガスバリア性能が低下する傾向があるため、一般的にはポリオレフィン系樹脂や、ポリエステル系樹脂等の疎水性熱可塑性樹脂を積層し、多層構造体として各種用途に用いられている。
しかしながら、EVOH樹脂はポリオレフィン系樹脂や、ポリエステル系樹脂等の疎水性熱可塑性樹脂との接着力に乏しいため、通常は接着性樹脂を介してポリオレフィン系樹脂や、ポリエステル系樹脂等の疎水性熱可塑性樹脂を積層する必要がある。
【0004】
しかしながら、EVOH樹脂層と疎水性熱可塑性樹脂層間に接着性樹脂層を介在させることが非常に困難な成形方法による多層構造体においては接着性樹脂を用いることが最早不可能な場合がある。たとえば、PET/EVOH/PET構成のガスバリア性ペットボトルなどは共射出成形法によって製造されるが、共射出成形装置としては2種構成の成形機が市場の主流であるため、PET/EVOH層間に他原料である接着性樹脂を介在させることは装置上の理由により困難である。そのような接着性樹脂を使用できない多層構造体は、当然ながらEVOH樹脂層と疎水性熱可塑性樹脂層間が剥離するという問題がある。
そこで、接着性樹脂層を設けず、EVOH樹脂層と汎用熱可塑性樹脂層間の接着性が優れる多層構造体を得るための技術が求められていた。
【0005】
このとき、解決手法の1つとして、EVOH樹脂そのものに接着性樹脂を混合して接着性を付与する手法が考えられるが、この場合、ガスバリア性のない接着性樹脂を配合することによってEVOH樹脂が本来有するガスバリア性が低下するという問題があった。
【0006】
例えば、特開平7−173348号公報(特許文献1)には、EVOH樹脂を主成分とし、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂およびC5〜C10の石油炭化水素樹脂からなる群より選ばれた1種または2種以上の樹脂を配合した樹脂組成物が開示されている。そして、かかる樹脂組成物はガスバリア性と内容物の非吸着性を維持しつつ、かつ低温での熱封緘性(ヒートシール性)が改善されることが記載されている。また、上記の構成に熱可塑性エラストマー成分を配合することで熱封緘性と耐屈曲性がさらに向上することが記載されている。
【0007】
また、特開平6−240067号公報(特許文献2)では、エチレン−酢酸ビニル系共重合体を主成分とし、EVOH樹脂と、粘着付与剤を含有する組成物が記載されており、かかる構成を採用することにより、EVOH樹脂との接着性に優れ、共押出成形に適した樹脂組成物が得られることが記載されている。
【0008】
また、特開平11−60875(特許文献3)には、EVOH樹脂を主成分とし、EVOHと反応性のある熱可塑性樹脂とEVOHと反応性のない熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が記載されており、かかる構成を採用することにより、耐ピンホール性、耐ゲル化性に優れた樹脂組成物が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−173348号公報
【特許文献2】特開平6−240067号公報
【特許文献3】特開平11−60875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の樹脂組成物では熱可塑性エラストマー成分の配合比率を高くすることによって疎水性熱可塑性樹脂層との接着力を得ることは可能であるが、接着力の向上に反してガスバリア性の低下が著しいことから改善の余地があった。また、特許文献2の樹脂組成物では、エチレン−酢酸ビニル系共重合体が主成分であるが故に、ガスバリア成分であるEVOH樹脂の連続相形成が不十分であり、より高度なガスバリア性が必要な場合には性能不足となることが懸念される。また、特許文献3の樹脂組成物では、ガスバリア性と耐ピンホール性については十分な性能を確保できるものの、疎水性熱可塑性樹脂層との接着力に関しては改善の余地があった。
上記の問題を解決し、ガスバリア性および疎水性熱可塑性樹脂への接着性が同時に優れる樹脂組成物が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記実情に鑑み鋭意検討した結果、下記特定の4成分を選択して用いることにより、ガスバリア性を損なうことなく、かつ疎水性熱可塑性樹脂への接着性が良好な樹脂組成物を得ることができることを見出した。
すなわち、本発明の要旨は、エチレン含有率20〜60モル%のエチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(A)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(B)、エチレン含有率60モル%超であり極性基を含有するエチレン−酢酸ビニル系共重合体(C)、数平均分子量100〜3000であり且つ60℃以上170℃未満の軟化点を有している炭化水素系樹脂(D)を含有する樹脂組成物に存する。
【0012】
本発明は、上記本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む多層構造体も含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明の樹脂組成物は、エチレン含有率20〜60モル%のエチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(A)をマトリックスとし、エチレン−酢酸ビニル共重合体(B)を分散したものである。そして、かかる(B)成分を分散させるにあたり、(A)成分と(B)成分の両方に親和性を有する、エチレン含有率60モル%超であり極性基を含有するエチレン−酢酸ビニル系共重合体(C)を用い、さらに、数平均分子量100〜3000であり且つ60℃以上170℃未満の軟化点を有している炭化水素系樹脂(D)を併用することにより、積層体とした場合にEVOHが連続相形成を維持した状態となり、かつ疎水性熱可塑性樹脂層との接着成分となるエチレン酢酸ビニル共重合体(B)が層の表面側に排斥され集中する働きに機能した結果、EVOH樹脂が本来有するガスバリア性能を損なうことが無く、疎水性熱可塑性樹脂に対する接着性に優れた樹脂組成物が得られたものと推測される。
このような本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む多層構造体は、ガスバリア性と接着性を兼ね備えることが可能となる。
【0014】
なお、本発明での数平均分子量100〜3000であり且つ60℃以上170℃未満の軟化点を有している炭化水素系樹脂(D)は、樹脂組成物自体の粘着性付与を目的に配合するものでなく、EVOH樹脂の連続相を維持しながらEVA成分を表層側に排斥させる作用を付与する目的で配合している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
はじめに本発明のEVOH樹脂組成物について説明する。
【0016】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、エチレン含有率20〜60モル%のエチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(A)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(B)、エチレン含有率60モル%超であり極性基を含有するエチレン−酢酸ビニル系共重合体(C)、数平均分子量100〜3000であり且つ60℃以上170℃未満の軟化点を有している炭化水素系樹脂(D)である。
以下、各成分について、順に説明する。
【0017】
〔EVOH樹脂(A)〕
組成物の主成分となるEVOH樹脂(A)は、エチレン含有率20〜60モル%の公知の非水溶性の熱可塑性樹脂であり、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体をケン化することによって得られる。エチレン−酢酸ビニル共重合体は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合などにより製造され、エチレン−ビニルエステル共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。
【0018】
本発明の樹脂組成物に用いられるEVOH樹脂(A)は、ISO14663に基づいて測定したエチレン構造単位の含有率が通常20〜60モル%であり、好ましくは25〜50モル%、さらに好ましくは27〜35モル%である。エチレン構造単位の含有率が少なすぎると、樹脂の熱安定性が低下する傾向にある。一方、エチレン構造単位の含有率が高くなりすぎると、必然的にポリマー鎖中に含まれるOH基の割合が低下し、ガスバリア性が不足する傾向にある。特に、本発明の樹脂組成物では、EVOH樹脂に基づく高いガスバリア性を確保する必要性から、エチレン含有率を上記範囲に設定することが好ましい。
【0019】
また、酢酸ビニル成分のケン化度は、JIS K6726(ただし、EVOH樹脂は水/メタノール溶媒に均一に溶解した溶液にて)に基づいて測定した値で、通常95モル%以上であり、より好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは98〜100モル%である。ケン化度が低くなると、ガスバリア性が低下する傾向にあるからである。
【0020】
さらに、EVOH樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)においては、190℃、荷重2160g条件下で、通常0.1〜50g/10分であり、好ましくは0.5〜25g/10分であり、特に好ましくは1〜10g/10分である。MFRの値が小さすぎる場合、すなわち溶融粘度が高い場合、溶融加工時の負荷が高くなり加工性が低下する傾向がある。一方、MFRの値が大きすぎる場合、溶融加工時に粘度が不足し、垂れ等の問題が生じてフィルム等の成形性が低下する傾向がある。
【0021】
本発明の樹脂組成物に用いられるEVOH樹脂(A)としては、上記要件を充足するEVOH樹脂であれば、エチレン含有率、ケン化度、MFRが異なる2種以上を混合して用いてもよい。
【0022】
また、本発明に用いられるEVOH樹脂は、本発明の効果を阻害しない少量の範囲で、共重合可能な不飽和化合物を共重合してもよい。かかる不飽和化合物としては、例えば具体的にはプロピレン、イソブテン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のα−オレフィン、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、3―ブテン―1,2―ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類やそのエステル化物、アシル化物などのヒドロキシ基含有α−オレフィン誘導体、不飽和カルボン酸又はその塩・部分アルキルエステル・完全アルキルエステル・ニトリル・アミド・無水物、不飽和スルホン酸又はその塩、ビニルシラン化合物、塩化ビニル、スチレン等が上げられる。さらに、本発明に用いられるEVOH樹脂は、公知の方法にてウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等「後変性」されていても差し支えない。
特にヒドロキシ基含有α−オレフィン類を共重合したEVOH樹脂は、延伸フィルム成形、カップ成形、ボトル成形などの二次成形性改善の点で好ましく、中でも1,2−ジオールを側鎖に有するEVOH樹脂が好ましい。
【0023】
本発明で用いられるEVOH樹脂(A)には、本発明の効果を阻害しない範囲において、あらかじめ一般にEVOH樹脂に配合する配合剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、光安定剤、界面活性剤、抗菌剤、乾燥剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、架橋剤、硬化剤、発泡剤、結晶核剤、防曇剤、生分解用添加剤、シランカップリング剤、酸素吸収剤などが含有されていてもよい。
【0024】
上記熱安定剤としては、溶融成形時の熱安定性等の各種物性を向上させる目的で、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の有機酸類またはこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)、亜鉛族金属塩(亜鉛等)などの塩;または、硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸類、またはこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)、亜鉛族金属塩(亜鉛等)などの塩等の添加剤を添加してもよい。これらのうち、特に、酢酸、リン酸、ホウ酸およびその塩を含むホウ素化合物、酢酸塩、リン酸塩を添加することが好ましい。
【0025】
酢酸を添加する場合、その添加量は、EVOH樹脂(A)100重量部に対して通常0.001〜1重量部、好ましくは0.005〜0.2重量部、特に好ましくは0.01〜0.1重量部である。酢酸の添加量が少なすぎると、酢酸の含有効果が十分に得られない傾向があり、逆に多すぎると厚みや外観が均一なフィルムを得ることが難しくなる傾向がある。
【0026】
リン酸を添加する場合、その添加量は、EVOH樹脂(A)100重量部に対して(硫酸と硝酸で加熱分解してリン酸根を原子吸光度法にて分析)通常0.0005〜0.1重量部、好ましくは0.001〜0.05重量部、特に好ましくは0.002〜0.03重量部である。リン酸の添加量が少なすぎると、リン酸の含有効果が十分に得られない傾向があり、逆に多すぎると厚みや外観が均一なフィルムを得ることが難しくなる傾向がある。
【0027】
また、ホウ素化合物を添加する場合、その添加量は、EVOH樹脂(A)100重量部に対してホウ素換算(灰化後、ICP発光分析法にて分析)で通常0.001〜1重量部であり、好ましくは0.002〜0.2重量部であり、特に好ましくは0.005〜0.1重量部である。ホウ素化合物の添加量が少なすぎると、ホウ素化合物の添加効果が十分に得られないことがあり、逆に多すぎると厚みや外観が均一なフィルムを得るのが困難となる傾向がある。
【0028】
また、酢酸塩、リン酸塩(リン酸水素塩を含む)の添加量としては、EVOH樹脂(A)100重量部に対して金属換算(灰化後、ICP発光分析法にて分析)で通常0.0005〜0.1重量部、好ましくは0.001〜0.05重量部、特に好ましくは0.002〜0.03重量部である。かかる添加量が少なすぎるとその含有効果が十分に得られないことがあり、逆に多すぎると得られるフィルムが着色したり臭気が発生したりする傾向がある。尚、EVOH樹脂(A)に2種以上の塩を添加する場合は、その総量が上記の添加量の範囲にあることが好ましい。
【0029】
EVOH樹脂(A)に酢酸、リン酸、ホウ素化合物、酢酸塩、リン酸塩を添加する方法については、特に限定されず、i)含水率20〜80重量%のEVOH樹脂(A)の多孔性析出物を、添加物の水溶液と接触させて、添加物を含有させてから乾燥する方法;ii)EVOH樹脂(A)の均一溶液(水/アルコール溶液等)に添加物を含有させた後、凝固液中にストランド状に押し出し、次いで得られたストランドを切断して円柱状のペレットとしたり、アンダーウォーターカット法により球状のペレットとしたりして、さらに乾燥処理をする方法;iii)EVOH樹脂(A)と添加物を一括して混合してから押出機等で溶融混練する方法;iv)EVOH樹脂(A)の製造時において、ケン化工程で使用したアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を酢酸等の有機酸類で中和して、残存する酢酸等の有機酸類や副生成する塩の量を水洗処理により調整したりする方法等を挙げることができる。
本発明の効果をより顕著に得るためには、生産性に優れ添加物の分散性に優れるi)、ii)の方法、有機酸およびその塩を含有させる場合はiv)の方法が好ましい。
【0030】
〈エチレン−酢酸ビニル共重合体(B)〉
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと称することがある)(B)とは、エチレンと、酢酸ビニルを共重合した重合体であり、上記EVA(B)は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合等により製造される。
【0031】
上記EVA(B)中の酢酸ビニルの含有率としては、通常1〜40モル%であり、さらには2〜25モル%、特には5〜15モル%であることが好ましい。すなわち、酢酸ビニル含有率が少なすぎた場合、共押出成形時に他樹脂層との接着性が不十分となる傾向があり、逆に、多すぎた場合、熱安定性や押出成形性の低下や酢酸臭の発生量が増加する傾向にある。
かかる上記EVA(B)のエチレン含有率は、通常60モル%超であり、好ましくは75〜98モル%であり、特に好ましくは85〜95モル%である。かかるエチレン含有率が低すぎる場合は熱安定性や押出成形性の低下や酢酸臭の発生量が増加する傾向があり、高すぎる場合は共押出成形時に他樹脂層との接着性が低下する傾向がある。
【0032】
上記EVA(B)のメルトフローレート(MFR)(190℃、荷重2160g)としては、通常0.1〜50g/10分であり、さらには0.5〜30g/10分、特には1〜10g/10分であることが好ましい。MFRが小さすぎた場合も大きすぎた場合も、他樹脂と混合時の他樹脂に対する分散性不良により本発明の効果を充分に発現できないという傾向がある。
【0033】
また、上記EVA(B)は、単独で、もしくは酢酸ビニル含有率、分子量、MFR、密度等の異なるEVAを2種以上併せて用いることができる。
【0034】
上記EVA(B)の具体例としては、ウルトラセン(東ソー社製)、エバフレックス(三井デュポンポリケミカル社製)、ノバテックEVA(日本ポリエチレン社製)、UBEポリエチレン[EVA](宇部丸善ポリエチレン社製)、エバテート(住友化学社製)、サンテック−EVA(旭化成ケミカルズ社製)、NUCコポリマー[EVA](日本ユニカー社製)などが挙げられる。
【0035】
〈エチレン含有率60モル%超であり極性基を含有するエチレン−酢酸ビニル系共重合体(C)〉
本発明に用いるエチレン含有率60モル%超であり極性基を含有するエチレン−酢酸ビニル系共重合体(C)は、その構造からEVOH樹脂(A)とEVA(B)の両方に親和性を有する樹脂である。
極性基の種類としては、カルボキシル基、酸無水物基等のカルボキシル基類、アルキルエステル基、ニトリル基、アミド基、水酸基等が挙げられる。
EVOH樹脂(A)との反応性が適度である点から、カルボキシル基類を有することが最も好ましい。
【0036】
かかる(C)成分のエチレン含有率は、未変性のEVA樹脂をベースとして60モル%超であり、好ましくは75〜98モル%であり、特に好ましくは85〜95モル%である。かかるエチレン含有率が低すぎる場合は熱安定性や押出成形性の低下や酢酸臭の発生量が増加する傾向があり、高すぎる場合は共押出成形時に他樹脂層との接着性が低下する傾向がある。
また、酢酸ビニルの含有率は、未変性のEVA樹脂をベースとして通常1〜40モル%であり、特に好ましくは5〜15モル%である。
また、極性基の含有率は、通常0.01〜20モル%であり、好ましくは0.01〜15モル%である。
【0037】
かかるエチレン含有率60モル%超であり極性基を含有するエチレン−酢酸ビニル系共重合体(C)がカルボキシル基類を含有する場合、かかる樹脂は不飽和カルボン酸または無水物又はそのエステルを共重合や付加反応やグラフト反応等により化学的に結合して得られるものである。
かかる不飽和カルボン酸としては、例えば具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸などを挙げることができる。また、不飽和カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸無水物などを挙げることができる。また、不飽和カルボン酸エステルとしては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート等のα,β−不飽和モノカルボン酸エステルなどを挙げることができる
中でもα,β−不飽和カルボン酸が好ましく、例えば具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のα,β−不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、フタル酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸などを挙げることができる。かかるカルボキシル基は金属(ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属等)塩でもよい。
【0038】
このときのカルボキシル基類の変性量は通常0.01〜15重量%、好ましくは0.01〜10重量%、特に好ましくは0.1〜5重量%、殊に好ましくは0.2〜2重量%である。かかる変性量が少なすぎた場合では、得られる樹脂組成物の相溶性が低下して本発明の効果が得られにくくなり、逆に多すぎた場合フィルム成形時の成形性、熱安定性等が低下する傾向にある。
【0039】
また、水酸基を含有する(C)成分を得るにあたっては、エチレン含有率60モル%超であるエチレン−酢酸ビニル系共重合体に含まれるエステル構造をケン化する方法や、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、3―ブテン―1,2―ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類を共重合またはグラフト化する方法等が挙げられる。例えばエチレン含有率60モル%超であるエチレン−酢酸ビニル系共重合体をケン化したり、エチレン含有率60モル%超であるエチレン−酢酸ビニル系共重合体に3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、3―ブテン―1,2―ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類を共重合したり、ヒドロキシ基含有α−オレフィン類のエステル化物、アシル化物を共重合した後にケン化したりすればよい。
かかる場合の水酸基含有率は、通常1〜25モル%である。
【0040】
また、(C)成分のメルトフローレート(MFR)においては、190℃、荷重2160g条件下で、通常0.1〜100g/10分であり、好ましくは1〜50g/10分であり、より好ましくは1〜20g/10分である。
【0041】
上記(C)成分の具体例としてはアドマー[品番 VF500、VE300](三井化学社製)、バイネル[1100シリーズ、3000シリーズ、3100シリーズ、3800シリーズ、3900シリーズ] (デュポン社製)、オレヴァック[Tシリーズ](アルケマ社製)、プレクサー[1000シリーズ](イクイスター社製)、モディックAP[品番 A515、A543](三菱化学社製)、フサボンド[品番 C190、C250](デュポン社製)などが挙げられる。また、酢酸ビニル基をケン化した水酸基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有率が通常1〜25モル%、酢酸ビニルのケン化度が通常20モル%以上である)の具体例としては、メルセン[Hシリーズ](東ソー社製)が挙げられる。
【0042】
〔数平均分子量100〜3000であり且つ60℃以上170℃未満の軟化点を有している炭化水素系樹脂(D)〕
本発明で用いるD成分たる炭化水素系樹脂は、EVOH樹脂の連続相を維持しながらEVA成分を表層側に排斥させる作用を付与する目的で添加されるもので、炭化水素系の数平均分子量が100から3000で且つ軟化点が60℃以上170℃未満の炭化水素系樹脂である(以下、単に「炭化水素系樹脂(D)」ということがある)。このような炭化水素系樹脂は、通常、常温で液体又は固体の熱可塑性樹脂に属する。
【0043】
D成分としては、具体的には、ロジン系樹脂(ロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等の変性ロジン、変性ロジンのグリセリンエステルやペンタエリスリトールエステル等のロジンエステル等)やテルペン系樹脂(テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂)等の天然炭化水素樹脂;石油樹脂、クマロンインデン樹脂、フェノール系樹脂(アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、等)、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂等の合成炭化水素樹脂が挙げられる。
【0044】
上記石油樹脂とは、石油ナフサ等の熱分解により副生する不飽和炭化水素モノマーを含有する留分を重合したものを意味し、具体的には、脂肪族系石油樹脂(C5系石油樹脂)、芳香族系石油樹脂(C9系石油樹脂)、脂肪族/芳香族系石油樹脂(C5/C9系石油樹脂)、脂環族系石油樹脂(水添系石油樹脂)に分類される。
【0045】
脂肪族系石油樹脂(C5系石油樹脂)とは、石油ナフサ分解油のC5留分の精製成分を重合して得られた合成樹脂であり、具体例としては、クイントン100シリーズ(日本ゼオン社製)、エスコレッツ1000シリーズ(エクソンモービル社製)などが挙げられる。
【0046】
芳香族系石油樹脂(C9系石油樹脂)とは、石油ナフサ分解油のC9留分の精製成分を重合して得られた合成樹脂であり、具体例としては、ペトコール(東ソー社製)、日石ネオポリマー(新日本石油社製)などが挙げられる。
【0047】
脂肪族/芳香族系石油樹脂(C5/C9系石油樹脂)とは、上記C5留分とC9留分をブレンドした原料を共重合して得られた合成樹脂であり、具体例としては、ペトロタック(東ソー社製)、トーホーハイレジン(東邦化学工業社製)、クイントン100シリーズ(日本ゼオン社製)、エスコレッツ2000シリーズ(エクソンモービル社製)などが挙げられる。
【0048】
脂環族系石油樹脂には、上記の芳香族系石油樹脂、または脂肪族/芳香族系石油樹脂を水素添加して得られた水添系石油樹脂およびC5留分から抽出されたジシクロペンタジエンを主原料に合成して得られた合成樹脂がある。
中でも上記の芳香族系石油樹脂、または脂肪族/芳香族系石油樹脂を水素添加して得られた水添系石油樹脂が代表的であり、具体例としては、アルコン(荒川化学工業社製)、アイマーブ(出光興産社製)、エスコレッツ5000シリーズ(エクソンモービル社製)などが挙げられる。
かかる水添系石油樹脂の場合には、水添率によって樹脂の極性が異なり、主に水添率90%以上の完全水添型と水添率90%未満の部分水添型に2種類に分類される。前者の具体例としては、アルコンPグレード(荒川化学工業社製)、アイマーブPタイプ(出光興産社製)などが挙げられ、後者の具体例としては、アルコンMグレード(荒川化学工業社製)、アイマーブSタイプ(出光興産社製)などが挙げられる。
【0049】
また、水素添加以外の方法で得られる脂環族系石油樹脂としてはC5留分から抽出されたジシクロペンタジエンを主原料に合成して得られた合成樹脂の具体例としては、クイントン1000シリーズ(日本ゼオン社製),マルカレッツMシリーズ(丸善石油化学製)が挙げられる。
【0050】
本発明においては、樹脂組成物の透明性や色調などの外観や無臭性を向上させる点で、石油樹脂を用いることが好ましく、さらには脂環族系石油樹脂を用いることが好ましく、特には水添系石油樹脂を用いることが好ましい。
また、水添系石油樹脂の水添率については、特に限定されないが、EVA(B)との親和性を考慮すると、部分水添型の水添系石油樹脂を用いることが好ましい。
【0051】
D成分の数平均分子量としては、通常100〜3000、好ましくは300以上1500未満、特に好ましくは400以上1000未満である。数平均分子量が小さすぎる場合、溶融混合の際に原料投入部で液体になりやすく、特に粘度が低い液体になると、混合不良をおこしやすくなり、分散不良によってフィルム透明性が低下するおそれや、D成分が成形品から溶出しやすくなるおそれがある。また、数平均分子量が大きすぎる場合、溶融混練時に流体としてB成分の凝集体内に侵入しにくくなる傾向があり、親油性というD成分の特性から、EVOH樹脂と分離しやすくなり、ひいては成形品において、目ヤニやス
ジなど外観不良の原因となるおそれがある。
上記数平均分子量は、ゲルバーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られるポリスチレン換算値により算出することができる。
【0052】
D成分の軟化点としては、通常60℃以上170℃未満、好ましくは95℃以上160℃未満、特に好ましくは120℃以上150℃未満である。軟化点が低すぎる場合、D成分が成形品から溶出しやすくなるといった問題も生じやすい。軟化点が高すぎる場合は、溶融混合の際にD成分の未溶融部分が残存してフィルム成形物にフィッシュアイなどの異物が発生するおそれがある。
【0053】
なお、軟化点の測定方法としては、JIS K2207(環球法)に準拠した方法を用いることができる。
【0054】
D成分の色相としては、ガードナーナンバーが通常3以下好ましくは2以下、特に好ましくは1以下である。ガードナーナンバーが3を超えると、樹脂組成物の黄色度が強くなり外観特性が低下する恐れがある。
また、水添系石油樹脂の場合には、ハーゼンナンバーが通常200以下好ましくは150以下、特に好ましくは100以下である。ハーゼンナンバーが200以下のものを用いると、外観特性に優れた無色透明な樹脂組成物を得ることができる。
なお、色相の測定方法としては、JIS K0071−1(ハーゼンナンバー)、JIS K0071−2(ガードナーナンバー)に準拠した方法を用いることができる。
【0055】
D成分の常温での形態としては、例えば粉末状、塊状、フレーク状、ペレット状(粒状)、液状などが挙げられるが、特に限定しない。混合時の作業性や計量性の観点からは、フレーク状、ペレット状が好ましく、特にペレット状が好ましい。
【0056】
以上のようなD成分は、EVOH樹脂の連続相を維持しながらB成分を表層側に排斥させる効果だけでなく、溶融成形時には液体化しているので、溶融時における組成物の粘度を減少(MFR値を増加)させることも可能となる。このことは、以下のような効果をもたらすと考えられる。
すなわち、C成分である極性基変性ビニル系ポリマーに用いた極性基含有化合物、特にカルボキシル基とEVOH樹脂中の水酸基とは反応可能であるため、溶融混練過程において、両官能基が反応し、高重合度化物が生成される場合がある。この高重合度化物の生成によって溶融粘度が増加して、押出機内でのせん断発熱が発生しやすくなり、高重合度化物がさらに増加して、フィルム成形物においてスジやフィッシュアイなどの外観不良などを招くおそれがある。しかしながら、D成分の配合により溶融時の組成物の粘度を減少させることが可能になると、せん断発熱の抑制、高重合度化物の生成が抑制され、ひいては品質改善の観点でも有効に寄与できると考えられる。
【0057】
〔配合比率〕
本発明の特徴の一つは、上記(A)〜(D)成分が特定割合で配合されている点であり、特にEVOH樹脂(A)がマトリックスとして存在することが重要である。
本発明の樹脂組成物において、樹脂組成物全体に対するEVOH樹脂(A)の含有量は50〜75重量%であり、好ましくは60〜70重量%、特に好ましくは65〜70重量%である。かかる量が多すぎる場合、表面側へのEVA樹脂排斥量が不足して疎水性熱可塑性樹脂層との接着力が十分に得られない傾向があり、少なすぎる場合、ガスバリア成分であるEVOH樹脂の連続相形成が不十分となり樹脂組成物のガスバリア性が大幅に低下する傾向がある。
【0058】
本発明の樹脂組成物において、EVOH樹脂(A)とEVA樹脂(B)との重合比率(A/B)が通常70/30〜99/1、好ましくは70/30〜85/15、より好ましくは75/25〜80/20である。EVOH樹脂(A)を主成分とし、EVA樹脂(B)の2倍以上の比率で配合することにより、EVOH樹脂(A)がマトリックスとして存在するとともに、EVOH樹脂(A)が本来有するガスバリア性を保持することができる。
【0059】
EVA樹脂(B)に対する極性基を含有するエチレン−酢酸ビニル系共重合体(C)の重量比率(C/B)は、極性基を含有するエチレン−酢酸ビニル系共重合体(C)の変性率にもよるが、通常0.01〜0.5であり、好ましくは0.05〜0.4であり、より好ましくは0.05〜0.3である。
本発明の樹脂組成物では、極性基を含有するエチレン−酢酸ビニル系共重合体(C)を、EVOH樹脂(A)とEVA樹脂(B)との相溶化剤として用いており、配合比率を上記のように調節することにより、マトリックスであるEVOH樹脂(A)中にEVA樹脂(B)の小さな島を全体にわたって多数分散させることが可能となり、得られた樹脂組成物のガスバリア性を制御する上で重要な役割を持つ。
【0060】
かかる配合比率(C/B)が低くなりすぎると、EVOH(A)成分とEVA樹脂(B)成分間との相溶性が不足することによって、主成分であるEVOH(A)成分マトリックスの連続層形成が不完全となり、EVOH連続層の欠陥が生じガスバリア性が低下する恐れがある。
かかる配合比率(C/B)が高くなりすぎると、EVOH樹脂(A)と極性基を含有するエチレン−酢酸ビニル系共重合体(C)の親和性が高くなることによって高重合度化物が発生しやすくなり、樹脂組成物のMFRが低下して成形加工性が低下しやすい傾向がある。また、高重合度化物の発生は、樹脂組成物内での粘度の偏りの原因となり、成形により得られるフィルムにスジが発生しやすくなる傾向がある。さらに、樹脂組成物が黄色に着色しやすくなる原因ともなる。
【0061】
したがって、EVOH樹脂(A)に対する(B)成分と(C)成分の和の総量は、重量比率(A)/〔(B)+(C)〕として通常50以上/50未満〜99/1、好ましくは60/40〜80/20、特に好ましくは70/30〜80/20である。
【0062】
本発明では、上記EVOH樹脂(A)、EVA樹脂(B)、極性基を含有するエチレン−酢酸ビニル系共重合体(C)に対してさらに数平均分子量100〜3000であり且つ60℃以上170℃未満の軟化点を有している炭化水素系樹脂(D)を配合するものであり、組成物全体に対して炭化水素系樹脂(D)の重量比率が通常1〜20重量%であり、好ましくは5〜15重量%であり、特に好ましくは5〜10重量%である。かかる配合量が少なすぎる場合、表面側へのEVA樹脂の排斥量が不足して疎水性熱可塑性樹脂層との接着力が十分に得られない傾向があり。また、多すぎる場合EVA樹脂の分散状態が不均一となり安定した薄膜層が得られない傾向がある。なお、本発明での炭化水素系樹脂(D)は、樹脂組成物自体の粘着性付与を目的に配合するものでなく、EVOH樹脂の連続相を維持しながらEVA成分を表層側に排斥させる作用を付与する目的で配合している。
【0063】
また、EVOH樹脂(A)をマトリックスとするためには、EVOH樹脂(A)の溶融粘度とEVA樹脂(B)との溶融粘度の比が重要である。具体的には、190℃、荷重2160g条件下で測定したMFR比(EVOH樹脂(A)/EVA樹脂(B))が、通常0.05〜1.5であり、好ましくは0.1〜1であり、より好ましくは0.2〜0.5である。かかるMFR比が小さすぎる場合、EVA樹脂の分散状態が不均一となり安定した薄膜層が得られない恐れがあり、かかるMFR比が大きすぎる場合、EVA樹脂を表面側に排斥する作用が弱まり疎水性熱可塑性樹脂層との接着性が得られない恐れがある。
また、EVA樹脂(B)の溶融粘度と極性基を含有するエチレン−酢酸ビニル系共重合体(C)との溶融粘度比は例えば具体的には、190℃、荷重2160g条件下で測定したMFR比(EVA樹脂(B)/極性基を含有するエチレン−酢酸ビニル系共重合体(C))が、通常0.1〜10、好ましくは0.1〜5、より好ましくは0.2〜3である。
【0064】
以上のような配合比率で配合した本発明の樹脂組成物は、EVOH樹脂(A)をマトリックスとして、エチレン−酢酸ビニル系共重合体(B)が均一に分散されており、溶融成形性に優れている。具体的には、190℃、2160gにおけるメルトフローレート(MFR)が、通常0.1〜50g/10分であり、好ましくは0.5〜25g/10分であり、特に好ましくは1〜10g/10分、特に好ましくは1.5〜8g/10分である。このような場合、押出機に供給した場合に、溶融成型に適した吐出量となり、スジの発生が少ない、外観的にも優れたフィルムを得ること・BR>ェできる。
【0065】
〔その他の成分〕
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲(例えば樹脂組成物の2重量%以下)にて、上記EVOH樹脂(A)、エチレン−酢酸ビニル系共重合体(B)、極性基を含有するエチレン−酢酸ビニル系共重合体(C)、炭化水素系樹脂(D)の他に、必要に応じて、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、界面活性剤、抗菌剤、乾燥剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、架橋剤、硬化剤、発泡剤、結晶核剤、防曇剤、生分解用添加剤、シランカップリング剤、酸素吸収剤等の添加剤を適宜含有してもよい。
【0066】
〔樹脂組成物の調製〕
本発明の樹脂組成物は、以上のような成分を混合することによって調製できる。かかる混合方法としては、溶融混合法、溶液混合法等が挙げられる。生産性の点からは溶融混合法が好ましい。
溶融混合方法としては、各成分をドライブレンドした後に溶融して混合する方法や、例えば、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、プラストミルなどの公知の混練装置を使用して行うことができるが、通常は単軸又は二軸の押出機を用いることが工業上好ましく、また、必要に応じて、ベント吸引装置、ギヤポンプ装置、スクリーン装置等を設けることも好ましい。
溶液混合方法としては、例えば各成分を良溶媒に溶解して混合し、貧溶媒中で析出させる方法等が挙げられる。
【0067】
<多層構造体>
本発明の多層構造体は、上記本発明の樹脂組成物からなる層(以下、単に「樹脂組成物層」という)を少なくとも1層有する多層構造体である。
本発明の多層構造体を構成する樹脂組成物層以外の層を構成する樹脂としては、特に限定しないが、EVOH樹脂以外の熱可塑性樹脂が挙げられる。例えば具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、環状ポリオレフィン、或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したもの等の広義のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、共重合ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂で構成される層が挙げられる。
中でも、水のバリア性に優れた疎水性熱可塑性樹脂層を外表面層として、樹脂組成物層を中間層とする構成の多層構造体が、ガスバリア性を有する包装フィルム、包装容器用途として好ましく用いられる。かかる水のバリア性に優れた熱可塑性樹脂として好ましくはポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂であり、特に好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートである。
【0068】
これらの樹脂の他に、紙、金属箔、1軸又は2軸延伸プラスチックフイルム又はシート、織布、不織布、金属綿条、木質面、アルミやシリカ蒸着と組み合わせた多層構造体であってもよい。
【0069】
該多層構造体の製造方法としては、樹脂組成物を溶融した状態で成形する方法(溶融成形法)と、樹脂組成物を溶媒に溶解して成形する方法(例えば溶液コート法)等に大別される。中でも生産性の観点から、溶融成形法が好ましい。
具体的には、例えば、樹脂組成物層と熱可塑性樹脂層とを共射出する方法、EVOH樹脂組成物の成形品(例えばフィルムやシート)に熱可塑性樹脂を溶融押出する方法、熱可塑性樹脂等の基材に樹脂組成物層を溶融押出する方法、樹脂組成物層と熱可塑性樹脂層とを共押出する方法が挙げられ、詳細にはT−ダイ押出、インフレーション押出、ブロー成形、異型押出等が採用される。
本発明の樹脂組成物は、接着性樹脂層を介さずに疎水性熱可塑性樹脂と接するような多層構造体を製造する場合に用いることが好ましく、さらには2種構成による共押出成形、2種構成による共射出成形によって多層構造体を製造する場合が好ましく、特には2種構成による共射出成形によって多層構造体を製造する場合が好ましい。
【0070】
また、場合によっては、EVOH樹脂組成物フィルムと熱可塑性樹脂フィルム等の基材とを、有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエチレンイミン系化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン系化合物等の公知の接着剤を用いてドライラミネートする方法、接着性樹脂層を介層させてラミネートする方法も併用可能である
【0071】
以上のように、本発明の多層構造体は、本発明に係る樹脂組成物層を少なくとも1層含むものであればよく、その構成は特に限定しないが、水分による樹脂組成物のガスバリア性能の低下を防ぐ目的で、樹脂組成物層が中間層であることが好ましい。
【0072】
多層構造体の層構成は、樹脂組成物層をa(a1、a2、・・・)、EVOH樹脂以外の熱可塑性樹脂層をb(b1、b2、・・・)とするとき、通常3〜20層、好ましくは3〜15層、特に好ましくは3〜10層である。例えば具体的には、b/a/b、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、b2/b1/a/b1/b2、b2/b1/a/b1/a/b1/b2等任意の組み合わせが可能である。
また、該多層構造体を製造する過程で発生する端部や不良品等を再溶融成形して得られる、樹脂組成物とEVOH以外の熱可塑性樹脂の混合物を含むリサイクル層をRとするとき、b/a/R、R/b/a、b/R/a/b、b/R/a/R/b、b/a/R/a/b、b/R/a/R/a/R/b等とすることも可能である。
本発明の多層構造体は疎水性熱可塑性樹脂との接着性に優れるEVOH樹脂組成物を用いるため、接着層は不要である。しかしながら、さらに優れた接着性を得るために、上記した多層構造体の層間に公知の接着性樹脂を用いても良い。
【0073】
中でも、樹脂組成物層のガスバリア性能の低下防止のために、樹脂組成物層への水分の透過を防止できるように、疎水性熱可塑性樹脂層が最内外層で樹脂組成物層が中間層となるような多層構造体が最も好ましい。例えば、EVOH樹脂以外の熱可塑性樹脂層/樹脂組成物層/疎水性熱可塑性樹脂層の2種3層構造体や、疎水性熱可塑性樹脂層/樹脂組成物層/疎水性熱可塑性樹脂層/樹脂組成物層/疎水性熱可塑性樹脂層の2種5層構造体が挙げられる。
具体的には、2種3層構造体としてポリエチレン層/樹脂組成物層/ポリエチレン層、ポリプロピレン層/樹脂組成物層/ポリプロピレン層、ポリエチレンテレフタレート層/樹脂組成物層/ポリエチレンテレフタレート層、ポリエチレンナフタレート層/樹脂組成物層/ポリエチレンナフタレート層、等;2種5層構造体として、ポリエチレン層/樹脂組成物層/ポリエチレン層/樹脂組成物層/ポリエチレン層、ポリプロピレン層/樹脂組成物層/ポリプロピレン層/樹脂組成物層/ポリプロピレン層、ポリエチレンテレフタレート層/樹脂組成物層/ポリエチレンテレフタレート層/樹脂組成物層/ポリエチレンテレフタレート層、ポリブチレンテレフタレート層/樹脂組成物層/ポリブチレンテレフタレート層/樹脂組成物層/ポリブチレンテレフタレート層等が挙げられる。なかでも、経済性および装置面の汎用度を考慮すると2種3層構造体が最も好ましい。
【0074】
本発明の多層構造体の厚みは、通常1〜1500μm、好ましくは1〜1000μm、より好ましくは10〜700μmである。また、多層構造体中のEVOH樹脂以外の熱可塑性樹脂層の厚みは、特に限定しないが、通常0.1〜1000μm、好ましくは1〜500μm、特に好ましくは2〜50μmである。樹脂組成物層の厚みは、特に限定しないが、通常0.1〜500μm、好ましくは1〜100μmである。
【0075】
また、熱可塑性樹脂層/樹脂組成物層の厚み比は、各層が複数ある場合は、最も厚みの厚い層同士の比で、通常1超〜30であり、好ましくは2〜30である。
【0076】
本発明の多層構造体は、上記のように、他の熱可塑性樹脂や基材と積層しただけの多層構造体であるが、必要に応じて延伸処理されていてもよい。
【0077】
なお、延伸については、公知の延伸方法でよく、例えば、一軸延伸、二軸延伸等が挙げられる。二軸延伸の場合は同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。延伸温度は、多層構造体の温度(多層構造体近傍温度)で、通常40〜170℃、好ましくは60〜160℃程度の範囲から選ばれる。延伸倍率は、面積比にて、通常2〜50倍、好ましくは2〜20倍である。
【0078】
かくして得られた本発明の多層構造体は、例えばチューブ状、袋状、ボトル状などの形態に加工され、みりん、醤油、ソース、麺つゆ、食用油等の食品、ワイン、ジュース、牛乳、ミネラルウォーター、日本酒、焼酎、コーヒー、紅茶等の飲料、医薬品、化粧品、次亜塩素酸ソーダ、現像液、バッテリー液等の工業用薬品、液体肥料等の農薬、洗剤等各種の液体の包装材料として広範囲の用途に使用することが可能である。なかでも、食品、飲料、農薬用のボトル容器に用いることが好ましい。
【0079】
かくして得られた容器は、食品、飲料、医薬品、化粧品、工業薬品、農薬、洗剤等の包装材料として用いることができる。
【0080】
本発明の多層構造体は、種々の成形品材料として用いることができるが、上述のように、EVOH樹脂(A)本来の有するガスバリア性を損なうことなく、疎水性熱可塑性樹脂に対する接着性を有している。従って、接着性樹脂層を用いることが困難な用途、たとえば共射出装置で成形される2種3層構造の多層容器に好適である。
【実施例】
【0081】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
尚、実施例中「部」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0082】
〔樹脂組成物ペレット及び多層構造体の製造〕
EVOH樹脂(A)として、エチレン含有率32モル%、ケン化度99.7モル%、MFR 2g/10分[190℃,2160g荷重]、ホウ酸をホウ素換算で160ppm(EVOH100重量部に対して0.016重量部)のエチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物を用いた。
EVA樹脂(B)として、酢酸ビニル含有率11モル%(28重量%)、エチレン含有率89モル%、MFR 6g/10分[190℃,2160g荷重]のエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いた。
極性基を含有するエチレン−酢酸ビニル系共重合体(C)として、無水マレイン酸変性量0.8重量%、酢酸ビニル含有率11モル%(ベースとなる未変性のEVAに対して28重量%)、エチレン含有量89モル%、MFR 16g/10分[190℃,2160g荷重]を用いた。
数平均分子量100〜3000であり且つ60℃以上170℃未満の軟化点を有している炭化水素系樹脂(D)として、軟化点135℃、ハーゼンナンバー30、数平均分子量860の部分水添型脂環族系炭化水素樹脂を用いた。
以上の各成分を表1に示す重量割合でドライブレンドした。
【0083】
【表1】

【0084】
得られた樹脂組成物を下記条件で溶融混練してストランド状に押し出し、ペレタイザーでカットして、円柱形ペレット形状の樹脂組成物を得た。
押出機:直径(D)30mm、二軸押出機、L/D=42
スクリーンパック:90/90メッシュ
スクリュ回転数 :150rpm
吐出量:12kg/hr
設定温度:C1/C2/C3/C4/C5/C6−D=120/180/220/220/220/220℃
【0085】
得られた樹脂組成物と、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)(日本ポリエチレン株式会社製「NOVATEC−LL UF240」)を用い、フィードブロック3種5層の多層Tダイを備えた多層押出装置に供給し、LLDPE層(a)/LLDPE層(b)/樹脂組成物層/LLDPE層(c)/LLDPE層(d)(厚み20(a)/10(b)/20/10(c)/20(d)(μm))として成形することでLLDPE層/樹脂組成物層/LLDPE層からなる2種3層構造の多層フィルムを作製した。なお、(a)〜(d)は全て同一の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂である。
【0086】
〔多層フィルム成形条件〕
樹脂組成物層押出機:40mmφ単軸押出機(バレル温度230℃)
(a)(d)層押出機:40mmφ単軸押出機(バレル温度220℃)
(b)(c)層押出機:32mmφ単軸押出機(バレル温度220℃)
ダイ温度 :220℃
引取速度 :4m/分
ロール温度 :50℃
【0087】
[評価]
〔フィルム物性評価〕
各樹脂組成物から得られた多層フィルムについて、上記評価方法に基づいて、ガスバリア性、LLDPE/EVOH層間の接着強度を測定評価した。結果を表2に示す。
(1)ガスバリア性
得られた多層フィルムについて、MOCON社のOxtran2/20を用いて、20℃、80%RH条件下の酸素透過度(cc/m2・day・atm)を測定した。
(2)LLDPE/EVOH層間の接着強度
得られた多層フィルムより、TD軸方向15mm、MD軸方向に100mmの短冊状試験片を切り出し、試験片端部のLLDPE層と樹脂組成物の界面を僅かに剥離させてからオートグラフのチャックに掴み、T型剥離試験法でLLDPE/EVOH層間の接着強度を測定した。結果を表2に示す。
〔接着強度試験条件〕
装置:島津製作所製オートグラフ AGS−H
試験雰囲気:23℃,50%RH
試験方法:T型剥離
試験片幅:15mm
試験速度:300mm/分
【0088】
【表2】

【0089】
以上の結果より、本発明の樹脂組成物は、ガスバリア性が良好であり、かつ接着強度にも優れるという、両効果を兼ね備えるものであることがわかった。
(C)成分を用いなかった比較例1は、酸素透過度が非常に高く、ガスバリア性が不足する結果となった。また、(D)成分を用いなかった比較例2は、接着強度が非常に弱く、接着性が不足する結果となった。
【0090】
〔EVOH樹脂相/EVA相 相構造評価〕
得られたペレットのEVOH樹脂の良溶媒に対する溶解性、及びEVAの良溶媒に対する溶解性を観察することより、得られた樹脂組成物の相構造を評価した。
〔相構造評価試験条件〕
EVOH樹脂良溶媒として水/イソプロパノール(重量比)=50/50を用いた。また、EVA良溶媒としてキシレンを用いた。
300ml三角フラスコに溶媒49gと樹脂組成物のペレット1gを入れ、ホットスターラーを用いて溶媒を加熱沸騰させてからペレットを1時間攪拌した。攪拌後のペレット状態を目視で確認した。結果を表3に示す。
[目視観察基準]
・溶解:良溶媒に溶解してペレット形状が完全崩壊する。溶解した成分が連続相を形成していると判定。
・半溶解:溶解までは至らないもののペレット形状が崩れモチ状に変形する、あるいは未溶解ペレットが部分的に残存する。半溶解した成分が部分的に連続相を形成していると判定。
・未溶解:ペレットが溶解せず試験前の形状を維持する。未溶解成分が非連続相であると判定
【0091】
【表3】

【0092】
以上の結果より、本発明の樹脂組成物は、EVOH樹脂が連続相を形成していることが確認された。
(C)成分を用いなかった比較例1では、EVOH樹脂が連続相を形成することが出来なかったために、上記評価においてガスバリア性が十分でなかったと推測される。また、(D)成分を用いなかった比較例2においては、EVOH樹脂相が連続相となったが、上記評価において接着性が十分でなかった。これは、樹脂組成物層の表面にEVA(B)成分が排斥される力が弱く、樹脂組成物層とLLDPE層の境界面に存在するEVA(B)粒子が少なかったためであると推測される。
【0093】
〔樹脂組成物のMFR評価〕
本発明の樹脂組成物を東洋精機社のメルトインデクサーF−BO1を用いて、荷重2160g、温度190℃にてMFR(g/10分)を測定した。結果を表4に示す。
【0094】
【表4】

【0095】
(C)成分を用いなかった比較例1では、EVOH樹脂(A)に対してMFRが2.8倍に増加(すなわち溶融粘度が低下)した。このように溶融粘度が低下すると、垂れや溶融張力の低下を招きフィルム成形性低下の要因になる。また、(D)成分を用いなかった比較例2では、EVOH樹脂(A)に対してMFRが0.65倍に低下(すなわち溶融粘度が上昇)した。このように溶融粘度が上昇すると押出機内のせん断発熱が発生しやすくなり、フィルム成形でのスジやフィッシュアイなどの発生要因となる。
(C)成分、(D)成分を共存させた実施例1、実施例2では、EVOH樹脂(A)に近い溶融粘度を示し、フィルム成形性低下を招くおそれがある溶融粘度低下、およびフィルムでのスジやフィッシュアイ発生を招くおそれがある溶融粘度上昇を抑制できることが認められる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の樹脂組成物は、EVOH樹脂が本来有するガスバリア性を損なうことなく、かつ疎水性熱可塑性樹脂に対する接着性が改善された高品質なものであり、本発明の樹脂組成物層を含む多層構造体は、疎水性熱可塑性樹脂層との接着性に優れるため、接着性樹脂層を設けることが困難な成形方法、たとえば共射出成形にて得られる2種3層構造の多層容器として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン含有率20〜60モル%のエチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(A)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(B)、エチレン含有率が60モル%超であり極性基を含有するエチレン−酢酸ビニル系共重合体(C)、数平均分子量100〜3000であり且つ60℃以上170℃未満の軟化点を有している炭化水素系樹脂(D)を含有し、かつ組成物中におけるエチレン含有率20〜60モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)の含有量が50〜75重量%であり、組成物中における数平均分子量100〜3000であり且つ60℃以上170℃未満の軟化点を有している炭化水素系樹脂(D)の含有量が1〜20重量%である樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)成分に対する(B)成分の重量比率(A/B)が70/30〜99/1である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)成分に対する(C)成分の重量比率(C/B)が0.01〜0.5である請求項1または2のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)成分と(B)成分の190℃、荷重2160gにおけるメルトフローレート値の比(A/B)が0.05〜1.5である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂組成物が海島構造であり、(A)成分が海で(B)成分が島である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C)成分の極性基が、カルボキシル基類である請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記(D)成分が、石油樹脂であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む多層構造体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物からなる層の少なくとも片面に疎水性熱可塑性樹脂層が接してなることを特徴とする多層構造体。

【公開番号】特開2011−94121(P2011−94121A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214905(P2010−214905)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】