説明

樹脂組成物及び樹脂組成物を使用して作製した半導体装置

【課題】
作業性、低応力性および耐湿性に優れ、かつリフロー剥離耐性に優れる半導体用樹脂組成物を提供し、該樹脂組成物を半導体用ダイアタッチペーストまたは放熱部材接着用材料として使用することで信頼性に優れた半導体装置を提供する。
【解決手段】
構成単位として所定の一般式(1)で示される化合物を30%重量以上含む重合体に無水マレイン酸を付加した化合物(A)、分子量500以上5000以下のポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸あるいは(メタ)アクリル酸エステルとを反応することで得られる化合物(B)、充填材(C)を含む樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び樹脂組成物を使用して作製した半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話、携帯情報端末、DVC(Digital Video Camera)等の高機能化、小型化、軽量化の進展は著しいものがあり、半導体パッケージの高機能化、小型化、軽量化が強く求められている。このため小型,薄型で多ピン化が可能なのFPBGA(Fine Pitch BGA)、CSP(Chip Scale Package)など片面封止タイプの半導体パッケージが広く用いられるようになってきている。
さらには機能の異なる複数の半導体素子または同一機能の複数の半導体素子を1つのパッケージに搭載する、あるいは複数のパッケージを積層するなど半導体パッケージの形態もより複雑になり、半導体パッケージの反りの問題がますます顕在化してきている。
ここで半導体パッケージの反りは半導体パッケージをプリント配線基板に搭載する際の接続信頼性に大きく影響するが、同時にダイアタッチ材の剥離による信頼性低下も無視できない。
【0003】
ダイアタッチ材の剥離を抑制するためには、ダイアタッチ材層の弾性率を低くし変形(反り)により生じる応力を低減する必要があり、弾性率を低くするためには架橋密度を低くする(例えば特許文献1)、熱可塑性成分を配合する(例えば特許文献2)、充填材量を少なくする/弾性率の低い充填材を使用する(例えば特許文献3)、などの手法が一般的に知られている。しかしながら、いずれの手法を用いてもTg(ガラス転移温度)が下がる、凝集力が低下するなど特に高温での密着性の低下が課題となる。
【0004】
そこで片面封止タイプの半導体装置のような低応力性と高密着性が高いレベルで要求される用途に使用しても剥離の生じないダイアタッチ材の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−084974号公報
【0006】
【特許文献2】特開2005−154687号公報
【0007】
【特許文献3】特開2003−347322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の樹脂組成物は作業性に優れ、かつ硬化物の弾性率が低く低応力性に優れるとともに耐湿性が良好であり、かつリフロー剥離耐性に優れるため、該樹脂組成物を半導体用ダイアタッチペーストまたは放熱部材接着用材料として使用することで信頼性に優れた半導体装置を提供することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の[1]〜[4]により達成される。
[1] 構成単位として一般式(1)で示される化合物を30%重量以上含む重合体に無水マレイン酸を付加した化合物(A)、分子量500以上5000以下のポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸あるいは(メタ)アクリル酸エステルとを反応することで得られる化合物(B)、充填材(C)を含む樹脂組成物。
【化1】


、R:水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基。
[2] 前記化合物(B)が1,4−シクロヘキサンジメタノールを構成単位として含むポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸あるいは(メタ)アクリル酸エステルとを反応することで得られる化合物である[1]項記載の樹脂組成物。
[3] 前記化合物(A)が、前記一般式(1)の重合体に無水マレイン酸を付加した化合物である[2]項記載の樹脂組成物。
[4] [1]〜[3]のいずれか1項に記載の樹脂組成物をダイアタッチ材料または放熱部材接着用材料として使用して作製した半導体装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂組成物は、作業性に優れ、かつ硬化物の弾性率が低く低応力性に優れるとともに耐湿性およびリフロー剥離耐性に優れるため、該樹脂組成物を半導体用ダイアタッチペーストまたは放熱部材接着用材料として使用することで信頼性に優れた半導体装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の樹脂組成物をダイアタッチペーストとして使用し作製することができる片面封止タイプの半導体パッケージ(半導体装置)の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の樹脂組成物は、構成単位として前記一般式(1)で示される化合物を30%重量以上含む重合体に無水マレイン酸を付加した化合物(A)、分子量500以上5000以下のポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸あるいは(メタ)アクリル酸エステルとを反応することで得られる化合物(B)、充填材(C)を含む樹脂組成物であり、該樹脂組成物は作業性に優れ、また樹脂組成物硬化物は耐湿特性に優れるものとなる。さらに該樹脂組成物を半導体用ダイアタッチペーストまたは放熱部材接着用材料として使用した場合には、接着性が良好で耐リフロー剥離特性に優れることから信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明では、構成単位として前記一般式(1)で示される化合物を30%重量以上含む重合体に無水マレイン酸を付加した化合物(A)を使用する。構成単位として一般式(1)で示される化合物を30%重量以上含む重合体に無水マレイン酸を付加した化合物であれば特に限定されるわけではないが、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体で構成単位としてブタジエンを30%重量以上含むもの、ブタジエン−スチレン共重合体で構成単位としてブタジエンを30%重量以上含むもの、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体で構成単位としてブタジエンを30%重量以上含むものに無水マレイン酸を付加した化合物などが挙げられる。これら化合物の好ましい分子量は700以上50000以下であり、より好ましいのは700以上5000以下である。前記範囲内であれば良好な作業性を有する樹脂組成物を得ることが可能であるからである。
【0014】
ここで化合物(A)は構成単位として前記一般式(1)で示される化合物を30%重量以上含む重合体に無水マレイン酸を付加する必要があるが、これは構成単位として一般式(1)で示される化合物を含むことで化合物(A)の骨格に1,2ビニル結合、1,4ビニル結合などといった2重結合を導入することが可能となり、このことにより分子量が700以上5000以下と比較的大きいにも係わらず室温で液状あるいは後述する化合物(B)などと混合した状態で液状になり、後述する充填材(C)を配合しても良好な流動特性を示す樹脂組成物が得られるからである。
【0015】
また、化合物(A)の骨格に2重結合を導入することにより樹脂組成物硬化物の弾性率を低くすることが可能となり良好な耐剥離特性を示すことが可能となる。
さらに化合物(A)は、無水マレイン酸を付加する必要があるが、これは構成単位として一般式(1)で示される化合物を30%重量以上含む重合体は極性が低いため他の成分と混合した場合に相溶性が悪く層分離する可能性がある。層分離は作業性ならびに作業性の安定性悪化の原因となる場合がある。ここで構成単位として前記一般式(1)で示される化合物を30%重量以上含む重合体に無水マレイン酸を付加することで、樹脂組成物硬化物の低弾性率化ならびに良好な耐剥離特性を維持したまま他の成分との相溶性を大幅に向上することが可能となる。
【0016】
好ましい化合物(A)としては、分子量が700以上5000以下の無水マレイン酸を付加したポリブタジエン、無水マレイン酸を付加したポリイソプレン、無水マレイン酸を付加したブタジエン−アクリロニトリル共重合体で構成単位としてブタジエンを30%重量以上含むもの、無水マレイン酸を付加したブタジエン−スチレン共重合体で構成単位としてブタジエンを30%重量以上含むもの、無水マレイン酸を付加したアクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体で構成単位としてブタジエンを30%重量以上含むものなどが挙げらる。
【0017】
なかでも特に好ましい化合物(A)は、分子量が700以上5000以下の無水マレイン酸を付加したポリブタジエンであり、特に好ましいものは1,2−ビニル結合と1,4−ビニル結合の合計に対する1,4−ビニル結合の割合が30%以上の無水マレイン酸を付加したポリブタジエンで分子量が700以上5000以下のものである。ここで1,2−ビニル結合と1,4−ビニル結合の合計に対する1,4−ビニル結合の割合は、溶媒として重クロロホルムを使用した1H−NMR(400MHz)における1.8〜2.2ppm(1,4ビニル結合)および4.8〜5.1ppm(1,2ビニル結合)のピーク面積比より算出することが可能である。
【0018】
1,2−ビニル結合と1,4−ビニル結合の合計に対する1,4−ビニル結合の割合が高い方が室温での粘度が低くなるため好ましい。より好ましくは1,2−ビニル結合と1,4−ビニル結合の合計に対する1,4−ビニル結合の割合が50%以上の場合であり、特に好ましいのは60%以上85%以下である。この範囲であれば樹脂組成物の作業性が良好であり、樹脂組成物硬化物は弾性率が低く、耐剥離特性に優れたものとなるからである。
【0019】
無水マレイン酸を付加したポリブタジエンとしては、ラジカル重合あるいはイオン重合法により得られる分子量700以上5000以下のポリブタジエンと無水マレイン酸を200℃程度の高温化で反応させた後、減圧により未反応の無水マレイン酸を除去するなどして得られたものが好ましい。より好ましくは分子量700以上3000以下のポリブタジエンに無水マレイン酸を付加したものである。
【0020】
化合物(A)は樹脂組成物から後述する充填材(C)を除いた成分中、0.5重量%以上70重量%以下含まれることが好ましい。より好ましくは1重量%以上50重量%以下であり、特に好ましいのは5重量%以上25重量%以下である。前記範囲であれば、樹脂組成物の作業性が良好であり、樹脂組成物硬化物は弾性率が低く、耐剥離特性に優れたものとなるからである。
【0021】
本発明では前記化合物(A)と分子量500以上5000以下のポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸あるいは(メタ)アクリル酸エステルとを反応することで得られる化合物(B)を併用することが好ましい。好ましい化合物(B)としては、炭素数が3〜10の有機基がカーボネート結合を介して繰り返したポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸あるいは(メタ)アクリル酸エステルとが反応した化合物であり、前記炭素数が3〜10の有機基として芳香族環を含まないものが好ましい。芳香族環を含む場合、樹脂組成物硬化物の弾性率が高くなる場合があるからである。
【0022】
前記ポリカーボネートジオールの構成単位として以下に示すジオール化合物を含むことが好ましい。1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジエタノール、1,3−シクロヘキサンジエタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノールなど。なかでも炭素数が4〜8のブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールが好ましく、これらは単独で使用しても2種以上を併用してもかまわない。
【0023】
前記ポリカーボネートジオールは上記ジオール化合物と炭酸ジアルキルとのエステル交換反応などにより得ることが可能である。炭酸ジアルキルとしては炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジブチル、炭酸ジオクチルなどが挙げられるが、反応性の点から炭酸ジメチルが好ましい。反応にはエステル交換触媒として一般的に使用される触媒を使用する。例えばジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド等の有機錫化合物、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のテトラアルキルチタネート、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等の炭酸アルカリ金属塩あるいは炭酸アルカリ土類金属塩、カリウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド等のアルカリ金属のアルキルアルコキシド、ジメチルアニリン、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン等の3級アミン、アセチルアセトンハフニウム等のハフニウムの有機金属錯体などである。ジオール化合物を炭酸ジアルキルに対し過剰に用いることで末端が水酸基のポリカーボネートジオールを得ることができ、ジオール化合物を複数使用する場合には複数のジオール化合物を同時に仕込むことでランダム共重合体を得ることも、それぞれ短鎖のポリカーボネートジオール同士を反応させることでブロック共重合体を得ることも可能である。
【0024】
前記ポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸あるいは(メタ)アクリル酸エステルとの反応は、(メタ)アクリル酸を用いる場合には、直接エステル化反応を用いることが可能であり、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチルなどの(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合にはエステル交換反応を用いることが可能である。
【0025】
上述のように化合物(B)は、ポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸あるいは(メタ)アクリル酸エステルと反応した化合物であることが好ましいが、これはポリカーボネートジオールに含まれるカーボネート結合が、一般的に用いられるポリエーテルジオール、ポリエステルジオールに含まれるエーテル結合、エステル結合に比較し耐湿性に優れるからで、化合物(B)を用いた樹脂組成物の硬化物は高温高湿条件下でも特性の劣化が少ないからである。
【0026】
ポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸あるいは(メタ)アクリル酸エステルとを反応することで得られる化合物の分子量は500以上5000以下が好ましい。前記範囲内であれば、良好な作業性と上述した耐湿性の両立が可能であるからである。
【0027】
化合物(B)は樹脂組成物から後述する充填材(C)を除いた成分中、0.5重量%以上70重量%以下含まれることが好ましい。より好ましくは10重量%以上50重量%以下であり、特に好ましいのは25重量%以上45重量%以下である。前記範囲であれば、樹脂組成物の作業性が良好であり、樹脂組成物硬化物は耐湿性に優れたものとなるからである。
【0028】
本発明では上記化合物(A)、化合物(B)に加えて熱硬化性樹脂を使用することも可能である。熱硬化性樹脂とは、加熱することで反応可能な官能基を2個以上有する化合物であり、好ましい官能基とは例えばアクリル基、アリル基、ビニル基、マレエート基、マレイミド基、エポキシ基、オキセタン基、シアネートエステル基などが挙げられる。なかでも好ましい官能基はアクリル基、アリル基、ビニル基、マレエート基、マレイミド基であり、特に好ましいのはアクリル基、アリル基、マレイミド基である。これら官能基は1分子内に2つ以上含まれることが好ましいが、これは官能基は1分子内に1つしかない場合には硬化物の架橋密度が上がらず機械的特性が悪化するからである。なお本明細書ではアクリロイル基のα位及び/又はβ位に置換基を有する官能基を含めアクリル基とする。
【0029】
官能基を2個以上有する化合物の分子量は500以上、50000以下であることが好ましい。前記範囲より小さい場合には樹脂組成物硬化物の弾性率が高くなりすぎ、前記範囲より大きい場合には樹脂組成物の粘度が高くなりすぎるためである。
以下に好ましい官能基を2個以上有する化合物を例示するがこれらに限定されるわけではない。
【0030】
アクリル基を1分子内に2つ以上有する化合物として好ましいものは、分子量が500以上、50000以下のポリエーテル、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレートでアクリル基を1分子内に2つ以上有する化合物である。
【0031】
ポリエーテルとしては、炭素数が3〜6の有機基がエーテル結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。芳香族環を含む場合にはアクリル基を1分子内に2つ以上有する化合物として固形あるいは高粘度になり、また硬化物とした場合の弾性率が高くなりすぎるからである。またアクリル基を1分子内に2つ以上有する化合物の分子量は上述のように500以上、50000以下が好ましいが、より好ましいのは500以上、5000以下であり、特に好ましいのは500以上、2000以下である。前記範囲であれば作業性が良好で、硬化物の弾性率が低い樹脂組成物が得られるからである。このようなアクリル基を1分子内に2つ以上有するポリエーテル化合物は、ポリエーテルポリオールと(メタ)アクリル酸およびその誘導体との反応により得ることが可能である。
【0032】
ポリエステルとしては、炭素数が3〜6の有機基がエステル結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。芳香族環を含む場合にはアクリル基を1分子内に2つ以上有する化合物として固形あるいは高粘度になり、また硬化物とした場合の弾性率が高くなりすぎるからである。またアクリル基を1分子内に2つ以上有する化合物の分子量は上述のように500以上、50000以下が好ましいが、より好ましいのは500以上、5000以下であり、特に好ましいのは500以上、2000以下である。前記範囲であれば作業性が良好で、硬化物の弾性率が低い樹脂組成物が得られるからである。このようなアクリル基を1分子内に2つ以上有するポリエステル化合物は、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸およびその誘導体との反応により得ることが可能である。
【0033】
ポリ(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体または水酸基を有する(メタ)アクリレートと極性基を有さない(メタ)アクリレートとの共重合体、グリシジル基を有する(メタ)アクリレートと極性基を有さない(メタ)アクリレートとの共重合体などが好ましい。またアクリル基を1分子内に2つ以上有する化合物の分子量は上述のように500以上、50000以下が好ましいが、より好ましいのは500以上、25000以下である。この範囲であれば作業性が良好で、硬化物の弾性率が低い樹脂組成物が得られるからである。このようなアクリル基を1分子内に2つ以上有する(メタ)アクリレート化合物は、カルボキシ基を有する共重合体の場合は水酸基を有する(メタ)アクリレートあるいはグリシジル基を有する(メタ)アクリレートと反応することで、水酸基を有する共重合体の場合は(メタ)アクリル酸およびその誘導体と反応することで、グリシジル基を有する共重合体の場合は(メタ)アクリル酸およびその誘導体と反応することで得ることが可能である。
【0034】
アリル基を1分子内に2つ以上有する化合物として好ましいものは、分子量が500〜50000のポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリブタジエン、ブタジエンアクリロニトリル共重合体でアリル基を有する化合物、例えばしゅう酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びこれらの誘導体といったジカルボン酸及びその誘導体とアリルアルコールを反応することで得られるジアリルエステル化合物とエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコールといったジオールとの反応物などである。
【0035】
マレイミド基を1分子内に2つ以上有する化合物として好ましいものは、例えば、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンなどのビスマレイミド化合物が挙げられる。より好ましいものは、ダイマー酸ジアミンと無水マレイン酸の反応により得られる化合物、マレイミド酢酸、マレイミドカプロン酸といったマレイミド化アミノ酸とポリオールの反応により得られる化合物である。マレイミド化アミノ酸は、無水マレイン酸とアミノ酢酸またはアミノカプロン酸とを反応することで得られ、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリメタクリレートポリオールが好ましく、芳香族環を含まないものが特に好ましい。芳香族環を含む場合にはマレイミド基を1分子内に2つ以上有する化合物として固形あるいは高粘度になり、また硬化物とした場合の弾性率が高くなりすぎるからである。
【0036】
また本発明の樹脂組成物の諸特性を調整するために以下の化合物を使用することも可能である。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレートやこれら水酸基を有する(メタ)アクリレートとジカルボン酸またはその誘導体を反応して得られるカルボキシ基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ここで使用可能なジカルボン酸としては、例えばしゅう酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0037】
上記以外にもメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他のアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジンクモノ(メタ)アクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフロロブチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,2−ジ(メタ)アクリルアミドエチレングリコール、ジ(メタ)アクリロイロキシメチルトリシクロデカン、N−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルフタルイミド、n−ビニル−2−ピロリドン、スチレン誘導体、α−メチルスチレン誘導体、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メチルイソボルニル(メタ)アクリレート、エチルイソボルニル(メタ)アクリレート、ブチルイソボルニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシイソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレ−ト、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ−ト、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレ−ト、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレ−ト、シクロヘキシルエチル(メタ)アクリレ−ト、シクロヘキシルブチル(メタ)アクリレ−ト、デカリル(メタ)アクリレ−ト、メチルデカリル(メタ)アクリレ−ト、エチルデカリル(メタ)アクリレ−ト、ブチルデカリル(メタ)アクリレ−ト、ヒドロキシデカリル(メタ)アクリレ−ト、アダマンチル(メタ)アクリレ−ト、メチルアダマンチル(メタ)アクリレ−ト、エチルアダマンチル(メタ)アクリレ−ト、ブチルアダマンチル(メタ)アクリレ−ト、ヒドロキシアダマンチル(メタ)アクリレ−トなどを使用することも可能である。これら化合物は単独で使用することも複数併用することも可能である。
【0038】
上記化合物以外にもエポキシ基を有する化合物を使用することも好ましい。好ましいエポキシ基を有する化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノール等のビスフェノール化合物又はこれらの誘導体、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF、水素添加ビフェノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シジロヘキサンジエタノール等の脂環構造を有するジオール又はこれらの誘導体、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール等の脂肪族ジオール又はこれらの誘導体等をエポキシ化した2官能のもの、トリヒドロキシフェニルメタン骨格、アミノフェノール骨格を有する3官能のもの、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等をエポキシ化した多官能のもの等が挙げられるがこれらに限定されるわけではなく、また樹脂組成物として室温で液状である必要があるので、単独で又は混合物として室温で液状のものが好ましい。通常行われるように反応性の希釈剤を使用することも可能である。
【0039】
エポキシ基を有する化合物と反応する目的でエポキシ樹脂用硬化剤を使用することも可能である。エポキシ樹脂用硬化剤としては、フェノール系化合物、酸無水物、アミン系化合物など公知のものが使用可能であり、特に好ましいものはフェノール系化合物である。これは硬化物の耐湿信頼性に優れるからである。好ましい硬化剤としてはフェノール性水酸基が1分子内に2つ以上あれば特に限定されないが、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノール等のビスフェノール類、トリ(ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリ(ヒドロキシフェニル)エタン等の3官能フェノール化合物、フェノールノボラック、又はクレゾールノボラック等が挙げられる。
またフェノール系硬化剤とイミダゾール類の併用も好ましい。特に好ましいイミダゾール類としては2−メチルイミダゾールと2,4−ジアミノ−6−ビニルトリアジンとの付加物又は2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールである。またリン系、アミン系等の反応触媒を使用することも可能である。
【0040】
さらに重合開始剤として熱ラジカル重合開始剤を使用することも可能である。通常熱ラジカル重合開始剤として用いられるものであれば特に限定しないが、望ましいものとしては、急速加熱試験における分解開始温度(試料1gを電熱板の上にのせ、4℃/分で昇温した時の分解開始温度)が40〜140℃となるものが好ましい。分解温度が40℃未満だと、樹脂組成物の常温における保存性が悪くなり、140℃を越えると硬化時間が極端に長くなるため好ましくない。これを満たす熱ラジカル重合開始剤の具体例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、P−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、桂皮酸パーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、α、α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどが挙げられるが、これらは単独または硬化性を制御するため2種類以上を混合して用いることもできる。
【0041】
本発明で用いられる充填材(C)は、特に限定されないが平均粒径は30μm以下が好ましく、ナトリウム、塩素などのイオン性の不純物が少ないものであることが好ましい。平均粒径がこれよりも大きい場合には樹脂組成物をノズルを使用して吐出する場合にノズル詰まりの原因となる可能性があるからである。より好ましい平均粒径は10μm以下である。
【0042】
本発明で用いられる充填材(C)としては、銀粉、金粉、銅粉、アルミニウム粉、ニッケル粉、パラジウム粉等の金属粉、シリカ粉末、アルミナ粉末、チタニア粉末、アルミニウムナイトライド粉末、ボロンナイトライド粉末等のセラミック粉末、ポリエチレン粉末、ポリアクリル酸エステル粉末、ポリテトラフルオロエチレン粉末、ポリアミド粉末、ポリウレタン粉末、ポリシロキサン粉末、ポリシルセスキオキサン粉末等の高分子粉末等が挙げられる。
【0043】
樹脂組成物硬化物に高い熱伝導性が求められる場合には、単体の熱伝導率が10W/mK以上の熱伝導性充填材が好ましい。このような充填材としては、銀粉、金粉、銅粉、アルミニウム粉、ニッケル粉、パラジウム粉などの金属粉、アルミナ粉末、チタニア粉末、アルミニウムナイトライド粉末、ボロンナイトライド粉末などのセラミック粉末が挙げられる。これらの中でも、熱伝導率の観点からより好ましいのは単体での熱伝導率が200W/mK以上の金属粉であり、特に好ましいのは、銀粉、金粉、銅粉、アルミニウム粉、ベリリウム粉からなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の充填材である。
【0044】
これら充填材のなかでも良好な熱伝導率及び酸化などへの安定性の観点からもっとも好ましいものは、銀粉である。
ここで銀粉とは純銀または銀合金の微粉末である。銀合金としては銀を50重量%以上、好ましくは70重量%以上含有する銀−銅合金、銀−パラジウム合金、銀−錫合金、銀−亜鉛合金、銀−マグネシウム合金、銀−ニッケル合金などが挙げられる。
【0045】
通常電子材料用として市販されている銀粉であれば、還元粉、アトマイズ粉などが入手可能で、好ましい粒径としては平均粒径が0.5μm以上、30μm以下である。より好ましい平均粒径は1μm以上、10μm以下である。下限値以下では樹脂組成物の粘度が高くなりすぎ、上限値以上ではディスペンス時にノズル詰まりの原因となりうるからであり、電子材料用以外の銀粉ではイオン性不純物の量が多い場合があるので注意が必要である。必要により平均粒径が1μm以下の金属粉との併用も可能である。
【0046】
銀粉の形状としては、フレーク状、球状など特に限定されないが、好ましくはフレーク状であり、その添加量は通常樹脂組成物中70重量%以上、95重量%以下であることが好ましい。銀粉の割合が下限値より少ない場合には硬化物の熱伝導性が悪化し、上限値より多い場合には熱伝導性樹脂組成物の粘度が高くなりすぎ塗布作業性が悪化するおそれがあるためである。
【0047】
その他樹脂組成物の接着特性を高めるためにカップリング剤を使用することも好ましい。
使用可能なカップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などが挙げられ、特にシラン系カップリング剤が好適に用いられる。
【0048】
使用可能なシラン系カップリング剤としては、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、イソシアン酸3-(トリエトキシシリル)プロピル、アクリル酸 3-(トリメトキシシリル)プロピル、メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、トリエトキシ-1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチルシラン、2-シアノエチルトリエトキシシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、n-ドデシルトリエトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、トリアセトキシメチルシラン、トリエトキシエチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリメトキシ(メチル)シラン、トリメトキシ(プロピル)シラン、トリメトキシフェニルシラン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)モノスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)モノスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)モノスルフィド、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)モノスルフィド、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)モノスルフィド、ビス(ジブトキシメチルシリルプロピル)モノスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(ジブトキシメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(ジブトキシメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(ジブトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(ジブトキシメチルシリルプロピル)ポリスルフィドなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いて2種以上を併用してもよい。
【0049】
カップリング剤の好ましい含有量は、樹脂組成物から充填材(C)を除いた成分中、0.01重量%以上10重量%以下である。より好ましくは0.1重量%以上5重量%以下である。前記範囲であれば樹脂組成物の接着特性を向上することが可能であるからである。
【0050】
なかでも特に好ましいカップリング剤は、スルフィドシラン化合物である。スルフィドシラン化合物としてはビス(トリメトキシシリルプロピル)モノスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)モノスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)モノスルフィド、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)モノスルフィド、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)モノスルフィド、ビス(ジブトキシメチルシリルプロピル)モノスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(ジブトキシメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(ジブトキシメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(ジブトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(ジブトキシメチルシリルプロピル)ポリスルフィドなどである。
【0051】
ここでスルフィドシラン化合物として前述の化合物名を例示したが、実際にはスルフィド結合の繰り返し数nの値は平均値であり分布を有している。例えば、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドといってもスルフィド結合の繰り返し数nの値は平均値で約4であり、一例としてSi−69(商品名、デグサ社製)の場合、スルフィド結合の繰り返し数nの値は約3.7でありn=2の成分は20.3%、n=3の成分は27.5%、n=4の成分は26.3%、n=5の成分は14.3%、n=6以上の成分は11.6%である。
【0052】
スルフィドシラン化合物が好ましい第1の理由は良好な接着特性を得るためである。硫黄原子を含有する化合物が金属との密着を向上させることはよく知られているが、なかでもスルフィドシラン化合物を用いた場合に接着性向上効果が著しい。スルフィドシラン化合物と同様に硫黄原子とアルコキシシリル基を有する化合物として3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが一般的に知られているが、メルカプト基は、熱硬化性樹脂に含まれるグリシジル基やアクリル基と室温でも反応するため樹脂組成物の保存性が悪化するため好ましくない。特にアクリル基との反応は室温でも著しく進行し場合によっては室温でも10分程度で流動しなくなる。グリシジル基との反応はアクリル基との反応の場合ほど急激ではないが含有する割合が多い場合には室温24時間程度で粘度の増加が観察され始める。このため含有する量を調整する必要があるが保存性を確保するためには、良好な接着性を得るのに十分な量を含有することができない。
ここでスルフィドシラン化合物には急激な反応を起こす活性水素基が存在しないため室温での保存性を悪化させることなく接着性を向上することが可能となる。
【0053】
スルフィドシラン化合物が好ましい第2の理由は硬化反応時に充填剤(C)として金属粉を使用した場合に金属粉と反応することで樹脂組成物と支持体との接着力向上のみならず樹脂組成物自体の凝集力を向上させる点である。前述のように硫黄原子は金属と結合可能であり金属との良好な接着性を要求される場合によく利用されるが、スルフィドシラン化合物に含まれる硫黄原子の結合の場合室温付近での金属粉との反応は例えばメルカプト基に比較すると非常にゆっくりしたものである。このため硬化時には樹脂組成物中に未反応で存在するため、被着体との接着性向上のみならず金属粉とも強固に結合することが可能となり樹脂組成物自体の凝集力を向上させることが可能となる。
【0054】
スルフィドシラン化合物が好ましい第3の理由は、良好な保存性である。熱硬化性樹脂が重合開始剤として有機過酸化物を含む場合、保存中でも分解は進行しており特に分解温度の低い重合開始剤の場合には分解により発生したラジカルが熱硬化性樹脂の反応を引き起こし粘度上昇が顕著になる場合がある。通常ハイドロキノンなどの禁止剤を添加することで粘度上昇を抑えるが、禁止剤を多量に含有すると硬化性の悪化が著しくなる場合、硬化物特性に悪影響を及ぼす場合がある。ここでスルフィド結合は発生したラジカルをトラップすることが可能なので禁止剤として働き粘度上昇を抑制することが可能であると共に、硬化開始温度の上昇は見られるが汎用の禁止剤ほどの悪影響はない。なかでも硬化物特性への悪化は見られないので好適に使用することが可能である。
【0055】
スルフィドシラン化合物が好ましい第4の理由は、化合物(A)の骨格に含まれる2重結合と反応することが可能であるため、硬化後の樹脂組成物は弾性率が低くかつ耐剥離特性に優れるものとなる点である。
【0056】
ここでスルフィドシラン化合物は前述のようにスルフィド結合の繰り返し数nの値に分布を有するが、検討の結果スルフィド結合の繰り返し数nの値により反応性が異なることが判明した。すなわちスルフィドシラン化合物は充填剤(C)としての金属粉と室温でも非常にゆっくりではあるが反応し、その反応はスルフィド結合の繰り返し数nの値が大きい成分が選択的に反応することが確認された。特にスルフィド結合の繰り返し数nの値が6以上の成分が選択的に反応し、スルフィド結合の繰り返し数nの値が2の場合には反応進行は極めて遅いことが確認された。
上記理由によりスルフィドシラン化合物に含まれるスルフィド結合の繰り返し数nの値が大きい成分の割合が大きい場合には、室温保存中にスルフィドシラン化合物が充填剤(C)としての金属粉と徐々に反応し支持体との接着力向上に必要な量が不足し、接着力の低下が観察されることがある。ここでスルフィドシラン化合物に含まれるスルフィド結合の繰り返し数nが4以上の成分の割合をX%とするとき、密着性の室温での経時変化を考慮した場合、Xの値は小さい方が良い。特に好ましいのはXが55%以下の場合である。スルフィド結合の繰り返し数nが4以上の成分の割合Xは、スルフィドシラン化合物を高速液体クロマトグラムにて測定して得られたチャートのスルフィドシラン化合物の面積に対するn=4以上の成分の面積比をパーセント表示したものである。
【0057】
一方、スルフィドシラン化合物には、出発原料であるハロゲン化化合物(スルフィドシラン化合物がビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドの場合にはハロゲン化トリエトキシシリルプロピル)が含まれることが知られている。ここでハロゲン化化合物は、前記スルフィドシラン化合物のアルコキシシリル基の加水分解を促進し、アルコキシシリル基同士の結合が生じる。このアルコキシシリル基同士が結合した化合物は樹脂組成物の接着特性を向上させる効果が低減される。このためスルフィドシラン化合物の含有量を多くする必要があるが、ハロゲン化化合物に含まれるのハロゲン化アルキル基は反応性が高く、熱硬化性樹脂中のシアネートエステル基やエポキシ基、アクリル基、マレイミド基などの官能基と室温で反応する。このため、室温で保存することによって樹脂組成物の粘度上昇や接着特性低下の原因となる。
【0058】
ここでスルフィドシラン化合物に含まれるハロゲン化化合物の割合をY%としたとき、Yが小さい方が好ましい。Yの値は、ガスクロマトグラフ法(例えば、装置:(株)島津製作所製「GC−14B」、カラム:TC−5(直径0.25mm×30m)、検出器:FID、キャリアーガス:He、温度プログラム:50℃×2分→6.5℃/分→260℃×15分、内部標準物質:ウンデカンを20質量%添加、測定試料:0.5μl)により測定した質量%である。
好ましいYの値は、1.0%以下であり、より好ましくは0.8%以下であり、特に好ましいのは0.5%以下である。
【0059】
前述のようにX、Yとも小さい値の方が好ましいが、Xの値が小さければスルフィドシラン化合物の含有量が少なくても十分な接着特性を室温で長時間保存した後でも得ることが可能であり、Yが多少大きくても含有されるハロゲン化化合物の含有量が許容される範囲となることを見出した。すなわち十分な保存特性と接着特性とを有する樹脂組成物を得るためにはYの値が多少大きくても、Xの値が小さければ室温で保存した後でも十分な接着特性を得ることが可能であることを見出し、XとYが以下の関係式1を満たすとき好適に使用可能なことを見出した。
[関係式1:Y<−2.7x10−3X+0.8]
スルフィドシラン化合物のX、Yの値が上記関係式1を満たす範囲内であれば、室温で長時間保存した後でも十分な接着特性を有する樹脂組成物を得ることが可能である。
【0060】
本発明の樹脂組成物には、必要により、消泡剤、界面活性剤、各種重合禁止剤、酸化防止剤などの添加剤を用いることができる。
【0061】
本発明の樹脂組成物は、例えば各成分を予備混合した後、3本ロールを用いて混練した後真空下脱泡することにより製造することができる。
【0062】
本発明の樹脂組成物を用いて半導体装置を製作する方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、市販のダイボンダーを用いて、リードフレームの所定の部位に樹脂組成物をディスペンス塗布した後、チップをマウントし、加熱硬化する。その後、ワイヤーボンディングして、エポキシ樹脂を用いてトランスファー成形することによって半導体装置を製作する。またはフリップチップ接合後アンダーフィル材で封止したフリップチップBGA(Ball Grid Array)などのチップ裏面に樹脂組成物をディスペンスしヒートスプレッダー、リッドなどの放熱部品を搭載し加熱硬化するなどの使用方法も可能である。
【実施例】
【0063】
以下実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。配合割合は重量部で示す。
実施例および比較例ともに下記原材料を表1に示す重量部で配合した上で3本ロールを用いて混練、脱泡することで樹脂組成物を得た。
【0064】
(化合物(A))
化合物A1:マレイン化ポリブタジエン(サートマー社製、Ricon131MA20、一般式(1)のR、Rが水素原子である化合物を構成要素として100%含む重合体に無水マレイン酸を付加した化合物、以下化合物A1)
化合物A2:マレイン化ポリブタジエン(サートマー社製、Ricon130MA8、一般式(1)のR、Rが水素原子である化合物を構成要素として100%含む重合体に無水マレイン酸を付加した化合物、以下化合物A2)
【0065】
(化合物(B))
化合物B1:1,4−シクロヘキサンジメタノール/1,6−ヘキサンジオール(=3/1(重量比))と炭酸ジメチルの反応により得られたポリカーボネートジオールとメチルメタクリレートの反応により得られたポリカーボネートジメタクリレート化合物(宇部興産(株)製、UM−90(3/1)DM、分子量1000、以下化合物B1)
化合物B2:1,4−シクロヘキサンジメタノール/1,6−ヘキサンジオール(=1/3(重量比))と炭酸ジメチルの反応により得られたポリカーボネートジオールとメチルメタクリレートの反応により得られたポリカーボネートジメタクリレート化合物(宇部興産(株)製、UM−90(1/3)DM、分子量1000、以下化合物B2)
【0066】
(充填材)
充填材C1:平均粒径6μm、タップ密度6.2g/cm3、比表面積0.23m2/gのフレーク状銀粉(以下充填材C1)
充填材C2:平均粒径1.5μm、比表面積4.0m2/gの球状シリカ粉末(以下充填材C2)
【0067】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂1:ポリテトラメチレングリコールとマレイミド化酢酸の反応により得られたビスマレイミド化合物(DIC(株)製、LUMICURE MIA−200、分子量580、以下熱硬化性樹脂1)
熱硬化性樹脂2:シクロヘキサンジカルボン酸のジアリルエステルとプロピレングリコールとの反応により得られたジアリルエステル化合物(昭和電工(株)製、アリルエステル樹脂 DA101、分子量1000、ただし原料として用いたシクロヘキサンジカルボン酸のジアリルエステルを約15%含む、以下熱硬化性樹脂2)
熱硬化性樹脂3:ポリプロピレングリコールジメタクリレート(日本油脂(株)製、ブレンマーPDP−700、分子量870、以下熱硬化性樹脂3)
熱硬化性樹脂4:ポリエステルジオールジメタクリレート(蒸留装置を取り付けたガラス製フラスコにポリエステルポリオール(プラクセルL212AL、ダイセル化学工業(株)製、分子量1250)125g(0.10モル)、メタクリル酸メチル50g(0.50モル)、ヒドロキノン0.068g(0.60ミリモル)、テトラブトキシチタン0.34g(1.00ミリモル)及びトルエン500gを入れ、常圧下窒素気流中、バス温130〜140℃で9時間加熱攪拌した。この間メタノールを合む液を蒸留で留出させた。反応後、反応液に水6.0gを添加してバス温90℃で2時間攬伴した,次いで、不溶物を吸引濾過で除去しトルエンを減圧下、120℃で留去し、低沸点成分(アクリル酸メチル残存トルエン等)を50〜20mmHg、バス温120〜190℃で留去して、無色透明のポリエステルジオールアクリレ一ト化合物138gを得た。このものは、NMRより、末端メタクリレート化率(原料ジオールの末端水酸基がメタクリレート化された割合)が94.0%で、GPCにより測定した平均分子量が1400であった。以下熱硬化性樹脂4)
【0068】
(スルフィドシラン化合物)
スルフィドシラン1:ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(デグサ(株)製、Si69、スルフィド結合の繰り返し数nが約3.7、ハロゲン化化合物が塩化トリエトキシシリルプロピルで、Xが52.2%、Yが0.590で、−2.7×10−3X+0.8=0.659>Y、以下スルフィドシラン1)
スルフィドシラン2:ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(ダイソー(株)製、カブラス2A、スルフィド結合の繰り返し数nが約2.4、ハロゲン化化合物が塩化トリエトキシシリルプロピルで、Xが9.8%、Yが0.703で、−2.7×10−3X+0.8=0.774>Y、以下スルフィドシラン2)
スルフィドシラン3:ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(ダイソー(株)製、カブラス2B、スルフィド結合の繰り返し数nが約2.1、ハロゲン化化合物が塩化トリエトキシシリルプロピルで、Xが1.5%、Yが0.157で、−2.7x10−3X+0.8=0.796>Y、以下スルフィドシラン3)
スルフィドシラン4:ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(デグサ(株)製、Si75、スルフィド結合の繰り返し数nが約2.4、ハロゲン化化合物が塩化トリエトキシシリルプロピルで、Xが12.4%、Yが0.332で、−2.7×10−3X+0.8=0.767>Y、以下スルフィドシラン4)
スルフィドシラン5:ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(日本ユニカー(株)製、A−1289、スルフィド結合の繰り返し数nが約3.8、ハロゲン化化合物が塩化トリエトキシシリルプロピルで、Xが53.1%、Yが0.703で、−2.7×10−3X+0.8=0.657<Y、以下スルフィドシラン5)
スルフィドシラン6:ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業(株)製、KBE−846、スルフィド結合の繰り返し数nが約3.8、ハロゲン化化合物が塩化トリエトキシシリルプロピルで、Xが55.3%、Yが0.836で、−2.7×10−3X+0.8=0.651<Y、以下スルフィドシラン6)
【0069】
(添加剤)
添加剤1:1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(日本化成(株)製、CHDMMA、以下添加剤1)
添加剤2:1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(共栄社化学(株)製、ライトエステル1、6HX、以下添加剤2)
添加剤3:2−エチルヘキシルメタクリレート(共栄社化学(株)製、ライトエステルEH、以下添加剤3)
添加剤4:水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、YX−8000、エポキシ当量205、以下添加剤4)
添加剤5:ジクミルパーオキサイド(日油(株)製、パークミルD、急速加熱試験における分解開始温度:126℃、以下添加剤5)
添加剤6:グリシジル基を有するカップリング剤(信越化学工業(株)製、KBM−403E、以下添加剤6)
添加剤7:メタクリル基を有するカップリング剤(信越化学工業(株)製、KBM−503P、以下添加剤7)
【0070】
(その他の化合物)
化合物D1:カルボキシ基末端アクリロニトリルブタジエン共重合体(宇部興産(株)製、Hycar CTBN 1300X8、一般式(1)のR、Rが水素原子である化合物を構成要素として約73%含む重合体で末端にカルボキシ基を有する化合物、以下化合物D1)
化合物D2:エポキシ化ポリブタジエン(ダイセル化学工業(株)製、エポリードPB3600、一般式(1)のR、Rが水素原子である化合物を構成要素として100%含む重合体をエポキシ化した化合物、以下化合物D2)
【0071】
(評価試験)
上記より得られた実施例および比較例の樹脂組成物について以下の評価試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0072】
(広がり性試験1)
実施例および比較例の樹脂組成物30gを充填したシリンジ(充填後すぐのもの)を用いてシリコンチップ(10×10×0.35mm)をNiメッキした銅ヒートスプレッダー(25×25×2mm)にマウントした。マウントは、ディスペンサーを用いて表1に示す樹脂組成物約0.01ccを上記ヒートスプレッダー上に塗布した後、15分以内に奥原電気株式会社製コンパクトマウンタSMT−64RHを用いて、上記シリコンチップを載せ、室温で0.5kgfの加重を10秒間与えて行い、その後150℃60分間硬化し接着した。硬化後のサンプルを超音波探傷装置(透過型)により接着面積の測定を行った。チップの面積に対する接着面積がほぼ100%であれば◎、チップ面積の90%以上であれば○、75%程度であれば△、50%以下であれば×とした。
【0073】
(広がり性試験2)
実施例および比較例の樹脂組成物30gを充填したシリンジ(10cc)を25℃に調整した恒温槽内でシリンジの先が下になるように24時間保管した後に使用した以外は広がり性試験1と同様に樹脂組成物の広がり性を測定した。チップの面積に対する接着面積がほぼ100%であれば◎、チップ面積の90%以上であれば○、75%程度であれば△、50%以下であれば×とした。
【0074】
(耐湿性試験1)
広がり性試験1で接着面積を測定したサンプルを125℃、100%RH、2.3気圧の条件で168時間処理し、処理後の接着面積を超音波探傷装置(透過型)により測定した。チップの面積に対する接着面積がほぼ100%であれば◎、チップ面積の90%以上であれば○、75%程度であれば△、50%以下であれば×とした。
【0075】
(耐湿性試験2)
広がり性試験2で接着面積を測定したサンプルを用いた以外は耐湿性試験1と同様に処理後の接着面積の測定を行った。チップの面積に対する接着面積がほぼ100%であれば◎、チップ面積の90%以上であれば○、75%程度であれば△、50%以下であれば×とした。
【0076】
(弾性率)
実施例および比較例の各樹脂組成物について、4×20×0.1mmのフィルム状の試験片を作製し(硬化条件150℃30分)、動的粘弾性測定機(DMA)にて引っ張りモードでの測定を行った。測定条件は以下の通りである。
測定温度:−100〜300℃
昇温速度:5℃/分
周波数:10Hz
荷重:100mN
25℃における貯蔵弾性率を弾性率とし5000MPa以下の場合を合格とした。弾性率の単位はMPaである。
【0077】
(耐リフロー性1)
実施例および比較例の各樹脂組成物(樹脂組成物作製後すぐのもの)を用いて、下記のリードフレームとシリコンチップを150℃60分間硬化し接着した。さらに、封止材料(スミコンEME−G620A、住友ベークライト(株)製)を用い封止し、半導体装置を作製した。この半導体装置を用いて、30℃、相対湿度60%、168時間吸湿処理した後、IRリフロー処理(260℃、10秒、3回リフロー)を行った。処理後の半導体装置を超音波探傷装置(透過型)により剥離の程度を測定した。チップの面積に対する剥離面積の割合が10%未満の場合を合格とした。剥離面積の単位は%である。
半導体装置:epLQFP(28×28×1.4mm:ダイパッド裏面がパッケージ裏面に露出)
リードフレーム:Ni−Pd/Auめっきした銅フレーム
チップサイズ:7×7mm
樹脂組成物の硬化条件:オーブン中150℃、60分
【0078】
(耐リフロー性2)
実施例および比較例の各樹脂組成物(樹脂組成物作製後すぐのもの)を用いて、下記の基板とシリコンチップを150℃60分間硬化し接着した。さらに、封止材料(スミコンEME−G770、住友ベークライト(株)製)を用い封止した後、ダイシングソーを用いて固片化することで半導体装置を作製した。この半導体装置を用いて、85℃、相対湿度60%、168時間吸湿処理した後、IRリフロー処理(260℃、10秒、3回リフロー)を行った。処理後の半導体装置を超音波探傷装置(透過型)により剥離の程度を測定した。チップの面積に対する剥離面積の割合が10%未満の場合を合格とした。剥離面積の単位は%である。
半導体装置:FPBGA(固片化後のパッケージサイズ:14×14×0.86mm(半田ボールを含まず))
基板:BT(ビスマレイミド・トリアジン)基板0.36mm厚
チップサイズ:10×10×0.2mm
樹脂組成物の硬化条件:オーブン中150℃、60分
【0079】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の樹脂組成物は、作業性に優れ、かつ硬化物の耐湿性およびリフロー剥離耐性が良好であるため、半導体用ダイアタッチペーストまたは放熱部材接着用材料として使用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1・・・樹脂組成物の硬化物層
2・・・ダイパッド
3・・・半導体素子
4・・・リード
5・・・封止材
10・・・半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成単位として一般式(1)で示される化合物を30%重量以上含む重合体に無水マレイン酸を付加した化合物(A)、分子量500以上5000以下のポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸あるいは(メタ)アクリル酸エステルとを反応することで得られる化合物(B)、充填材(C)を含む樹脂組成物。
【化1】


、R:水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基。
【請求項2】
前記化合物(B)が1,4−シクロヘキサンジメタノールを構成単位として含むポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸あるいは(メタ)アクリル酸エステルとを反応することで得られる化合物である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記化合物(A)が、一般式(1)の重合体に無水マレイン酸を付加した化合物である請求項2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物をダイアタッチ材料または放熱部材接着用材料として使用して作製した半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−57862(P2011−57862A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209282(P2009−209282)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】