説明

樹脂組成物

【課題】エポキシ樹脂やポリイミド樹脂などのマトリックス樹脂となる熱硬化性樹脂に影響を与えることなく、該熱硬化性樹脂中に微分散して、該熱硬化性樹脂のガラス転移温度を上昇させるとともに、ガラス転移温度以下の温度域で内部応力および外部応力を緩和する機能を発現することができる樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】ポリロタキサンおよび熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、特に電子、電気部品のパッケージング用として好適な樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子、電気部品のパッケージングには、種々の熱硬化性樹脂が用いられているが、中でもエポキシ樹脂は、機械特性、電気特性、耐熱性、接着性、成形加工性などに優れていることから、最も広範囲にしかも多量に使用されている。電子部品のパッケージは、ICに代表されるように、薄層化、小型化の方向にあるが、従来のエポキシ樹脂組成物では冷熱サイクルに供された時にパッケージにクラックが発生し易いという欠点があった。これは、冷熱サイクル時にパッケージ内に生じる内部応力によって発生するものである。また、外部からの機械的応力や半田処理に伴う直接的な外部からの熱刺激によっても、クラックが発生しやすい。これらの欠点を解消する方法として、構造的な解決策として、例えばパッケージ材料の低線膨張率化、接続端子の高さアップによる応力吸収、プリント基板と半導体チップ間に設けられた緩衝層(低弾性率体)による応力吸収などの対策が取られている。一方、パッケージ材料そのものに耐クラック性を賦与する対策も検討されており、例えば硬化剤を含有するエポキシ樹脂に、シリコーンゴム微粒子にポリオルガノシルセスキオキサン樹脂を被覆したシリコーン微粒子を添加剤として配合した熱硬化性樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。しかしながら、このような添加剤は、エポキシ樹脂の性能に弾性率などの機械的強度の低下という悪影響を与える恐れがある。
【特許文献1】特開平8−85753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記従来技術の課題を背景になされたもので、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂などのマトリックス樹脂に影響を与えることなく、該熱硬化性樹脂中に微分散して、該熱硬化性樹脂のガラス転移温度を上昇させるとともに、ガラス転移温度以下の温度域で内部および外部応力を緩和する機能を発現することができる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、ポリロタキサンおよび熱硬化性樹脂を含むことを特徴とする樹脂組成物に関する。
ここで、上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、アルキッド樹脂などが挙げられる。
また、上記ポリロタキサンとしては、ポリアルキレングリコールを軸分子とし、これにシクロデキストリンが嵌め込まれ、かつ、シクロデキストリン分子がポリアルキレングリコール分子から脱離することがないように、封鎖基で該ポリアルキレングリコール分子の両末端が封止されているものが好ましい。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂にポリロタキサンを添加することにより、これらの熱硬化性樹脂の熱硬化時および冷熱サイクル時の内部応力を効果的に吸収緩和することができ、さらに機械的強度とガラス転移温度を維持あるいは向上することができるなどの効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明に用いられる熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂のほか、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、アルキッド樹脂などが挙げられるが、特にエポキシ樹脂が好ましい。
【0007】
このうち、本発明に用いられるエポキシ樹脂としては、1分子中にエポキシ基を少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個有する化合物が挙げられ、分子構造、分子量などは特に制限はない。このようなエポキシ化合物としては、例えば、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンまたはこのハロゲン化物のジグリシジルエーテル、ブタジエンジエポキシド、ビニルシクロヘキセンジオキシド、レゾルシンのジグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ジフェニルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキセン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、1,2−ジオキシベンゼンあるいはレゾルシノール、多価フェノールまたは多価アルコールとエピクロルヒドリンとを縮合させて得られるエポキシグリシジルエーテルあるいはポリグリシジルエステル、ノボラック型フェノール樹脂(あるいはハロゲン化ノボラック型フェノール樹脂)とエピクロルヒドリンとを縮合させて得られるエポキシノボラック、過酸化法によりエポキシ化したエポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化ポリブタジエンなどが挙げられる。
【0008】
なお、上記のエポキシ基を1分子中に少なくとも2個有するエポキシ化合物にモノエポキシ化合物を適宜併用することは差し支えなく、このモノエポキシ化合物としてはスチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、プロピレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、オクチレンオキシド、ドデセンオキシドなどが例示される。また、用いるエポキシ樹脂は必ずしも1種類のみに限定されるものではなく、2種もしくはそれ以上を併用することができる。
【0009】
本発明において、エポキシ樹脂とともに、エポキシ樹脂用硬化剤として従来から知られている種々のものを使用することができる。これには、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、メタキシリレンアミン、メンタンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどのアミン系化合物;2-エチル−4−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデ−7−センなどのイミダゾール系化合物;エポキシ樹脂−ジエチレントリアミンアダクト、アミン−エチレンオキサイドアダクト、シアノエチル化ポリアミンなどの変性脂肪族ポリアミン;ビスフェノールA、トリメチロールアリルオキシフェノール、低重合度のフェノールノボラック樹脂、エポキシ化もしくはブチル化フェノール樹脂あるいは”Super Beckcite”1001[日本ライヒホールド化学工業(株)製]、”Hitanol”4010[(株)日立製作所製]、Scado form L 9(オランダ Scado Zwoll社製)、Methylon 75108(米国ゼネラルエレクトリック社製)などの商品名で知られているフェノール樹脂;”Beckamine ”P.138[日本ライヒホールド化学工業(株)製]、”メラン”[(株)日立製作所製]、”U-Van”10R[東洋高圧工業(株)製]などの商品名で知られている炭素樹脂;メラミン樹脂、アニリン樹脂などのアミノ樹脂;式 HS(C2H4OCH2OC2H4SS)nC2H4OCH2OC2H4SH(n=1〜10の整数)で示されるような1分子中にメルカプト基を少なくとも2個有するポリスルフィド樹脂;無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、メチルナジック酸、ドデシル無水こはく酸、無水クロレンディック酸などの有機酸もしくはその無水物などが挙げられる。
【0010】
上記した硬化剤のうちでも、フェノール樹脂、有機酸無水物、およびイミダゾール系化合物は、硬化反応を効果的に促進し、本発明の組成物に良好な成形作業性を与え、IC、LSIなどの樹脂封止に利用した場合に優れた機械的性質を与え望ましいものである。
上記した硬化剤は、その使用にあたっては必ずしも1種類に限定されるものではなく、それら硬化剤の硬化性能などに応じて2種以上を併用してもよい。
この硬化剤の使用量はその具体的種類によって好適な配合量は相違するが、通常、エポキシ樹脂 100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。硬化剤の使用量が0.1重量部未満では、本発明の組成物を良好に硬化させることが困難となり、一方、20重量部を超えると経済的に不利となるほか、エポキシ樹脂が希釈されて硬化に長時間を要するようになり、さらには硬化物の物性が低下する。
【0011】
また、ポリイミド樹脂とは、一般に、二酸無水物とジアミンとの付加反応によりポリアミド酸を合成し、その後、加熱反応処理により水の脱離をともなう閉環反応を起こさせて得られるものであり、この範疇に属するポリイミド樹脂は特に制限なく、本発明に用いられる。
【0012】
本発明に用いられるポリイミド樹脂としては、有機溶媒に可溶なポリイミド(以下「可溶性ポリイミド」という)が好ましい。
本発明において使用される溶媒に可溶なポリイミドは、例えば、少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物と少なくとも1種のジアミンとを重付加縮合反応させることによって製造することができる。
このような可溶性ポリイミドとしては、少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸二無水物と、下記一般式(1)、(2)もしくは(3)〔一般式(1)〜(3)において、X1〜X6は同一でも異なってもよく、-O-、-S-、-SO2-、-CO-、-CONH-、-(CH2)n
-(但し、nは1〜4の整数である。)または-C(R1)(R2)-(但し、R1およびR2は同一でも異なってもよく、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のフルオロアルキル基またはハロゲン原子を示す。)の2価の基を示し、Ar1〜Ar3は同一でも異なってもよく、2価の芳香族基を示す。〕または(4)〔一般式(4)において、R3は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のアルコキシ基を示し、mは1〜4の整数である。〕で表される化合物の群から選ばれる少なくとも1種の芳香族ジアミンとの重付加縮合反応により製造されるフェノール系溶媒に可溶なポリイミドが好ましい。




















【0013】
【化1】

【0014】
本発明における特に好ましい可溶性ポリイミドは、下記(イ)あるいは(ロ)の共重付加縮合反応により製造されるポリイミドである。
(イ)2種以上の芳香族テトラカルボン酸二無水物と、上記一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物の群から選ばれる1種以上の芳香族ジアミンとの共重付加縮合反応。
(ロ)3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物単独と、上記一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される化合物の群から選ばれる2種以上の芳香族ジアミンとの共重付加縮合反応。
【0015】
上記(イ)の共重付加縮合反応に使用される芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物および下記一般式(5)、(6)または(7)〔一般式(5)、(6)および(7)において、Y1〜Y6は同一でも異なってもよく、単結合、-O- 、-SO2- 、-CO-または-C(R4)(R5)-(但し、R4およびR5は同一でも異なってもよく、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のフルオロアルキル基またはハロゲン原子を示す。)の2価の基を示し、
Ar4〜Ar6 は同一でも異なってもよく、2価の芳香族基を示す。〕で表される化合物の群から選ばれる芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。






【0016】
【化2】

【0017】
上記一般式(5)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物などを挙げることができる。
【0018】
上記一般式(6)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、1,3−フェニレンビストリメリテート二無水物、1,4−フェニレンビストリメリテート二無水物、2,7−ナフタレンビストリメリテート二無水物、1,5−ナフタレンビストリメリテート二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、3,3’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,7−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ナフタレン二無水物、1,5−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ナフタレン二無水物などを挙げることができる。
【0019】
上記一般式(7)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンビストリメリテート二無水物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンビストリメリテート二無水物、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルビストリメリテート二無水物、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルホンビストリメリテート二無水物、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンビストリメリテート二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ヘキサフルオロプロパン二無水物などを挙げることができる。
【0020】
また、上記(イ)の共重付加縮合反応に使用される芳香族ジアミンのうち、上記一般式(1)で表される芳香族ジアミンの具体例としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどを挙げることができる。
【0021】
上記一般式(2)で表される芳香族ジアミンの具体例としては、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,7−ビス(3−アミノフェノキシ)ナフタレン、1,5−ビス(3−アミノフェノキシ)ナフタレン、2,7−ビス(4−アミノフェノキシ)ナフタレン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ナフタレンなどを挙げることができる。
【0022】
上記一般式(3)で表される芳香族ジアミンの具体例としては、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ケトン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ケトン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)メタン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)メタン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどを挙げることができる。
【0023】
前述した(イ)の共重付加縮合反応の際に使用される2種以上の芳香族テトラカルボン酸二無水物と1種以上の芳香族ジアミンとの好ましい組合せは、ピロメリット酸二無水物および上記一般式(5)、(6)または(7)で表される化合物の群から選ばれる1種以上の芳香族テトラカルボン酸二無水物と、上記一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物の群から選ばれる1種以上の芳香族ジアミンとの組合せである。上記組合せの具体例としては、ピロメリット酸二無水物/ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ピロメリット酸二無水物/ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル/4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ピロメリット酸二無水物/ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ピロメリット酸二無水物/ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルスルホン/4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ピロメリット酸二無水物/ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物/4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ピロメリット酸二無水物/ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物/4,4’−ジアミノベンゾフェノン/4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ピロメリット酸二無水物/ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ピロメリット酸二無水物/ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルメタン/2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、ピロメリット酸二無水物/ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物/2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、ピロメリット酸二無水物/ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物/2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ピロメリット酸二無水物/ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルメタン/2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ピロメリット酸二無水物/ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物/2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ピロメリット酸二無水物/ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル/2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ピロメリット酸二無水物/ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルメタン/2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ピロメリット酸二無水物/3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ピロメリット酸二無水物/3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルメタン/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ピロメリット酸二無水物/3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルメタン/4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ピロメリット酸二無水物/ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物/3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ピロメリット酸二無水物/ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物/3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルメタン/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ピロメリット酸二無水物/3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物/3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ピロメリット酸二無水物/3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物/3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルメタン/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ピロメリット酸二無水物/3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルメタン/2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ピロメリット酸二無水物/3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物/3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルメタン/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル/2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパンなどを挙げることができる。
【0024】
次に、上記(ロ)の共重付加縮合反応においては、芳香族テトラカルボン酸二無水物として、上記一般式(5)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物の1種である3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物が単独で使用され、また芳香族ジアミンとして、上記一般式(1)、(2)もしくは(3)で表される化合物または上記一般式(4)で表される化合物の群から選ばれる2種以上が使用される。上記(ロ)の共重付加縮合反応において使用される上記一般式(1)、(2)もしくは(3)で表される芳香族ジアミンの具体例としては、上記(イ)の共重付加縮合反応について例示した化合物を挙げることができ、また上記一般式(4)で表される芳香族ジアミンの具体例としては、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、2−メトキシ−1,3−フェニレンジアミン、2−メトキシ−1,4−フェニレンジアミン、4−メトキシ−1,3−フェニレンジアミン、6−メトキシ−1,3−フェニレンジアミンなどを挙げることができる。
【0025】
上記(ロ)の共重付加縮合反応の際に使用される3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と組合せて使用される2種以上の芳香族ジアミンの具体例としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル/4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル/4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル/2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル/2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン/4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン/2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン/2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン/2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン/2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン/2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル/4,4’−ジアミノジフェニルスルホン/4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル/4,4’−ジアミノジフェニルスルホン/2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル/4,4’−ジアミノジフェニルスルホン/2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン/4,4’−ジアミノジフェニルメタン/2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン/4,4’−ジアミノジフェニルメタン/2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン/2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン/2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,4−ジアミノトルエン/2,6−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノトルエン/2−メトキシ−1,3−フェニレンジアミン、2,6−ジアミノトルエン/2−メトキシ−1,3−フェニレンジアミンなどを挙げることができる。
【0026】
上記(イ)および(ロ)の共重付加縮合反応に際しては、得られるポリイミドがフェノール系溶媒に可溶である限り、ピロメリット酸および一般式(5)、(6)または(7)で表される化合物の群から選ばれる芳香族テトラカルボン酸二無水物以外の芳香族テトラカルボン酸二無水物や、一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される化合物の群から選ばれる芳香族ジアミン以外の芳香族ジアミンを1種以上使用することができ、さらに樹脂組成物の用途に応じて、脂肪族あるいは脂環族のテトラカルボン酸二無水物や脂肪族あるいは脂環族のジアミンを1種以上併用することもできる。
【0027】
可溶性ポリイミドを製造する際には、(1)上記の如き少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸二無水物と少なくとも1種の芳香族ジアミンとを、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンの如きアミド系溶媒中で重付加することにより、ポリアミック酸を合成し、その後、該ポリアミック酸を加熱イミド化法または化学イミド化法により脱水閉環する二段階法、あるいは(2)上記の如き少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸二無水物と少なくとも1種の芳香族ジアミンとを、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−クロロフェノールの如きフェノール系溶媒中で加熱して、反応させることによりポリイミドを製造する一段階法を採用することができるが、(2)の一段階法が好ましい。
このようにして得られる可溶性ポリイミドの対数粘度〔ηinh〕(ウベローデ粘度計により、m−クレゾール中、30℃、濃度0.5g/dl で測定)は、通常、0.1〜10.0dl/g、好ましくは0.3〜3.0dl/gであり、またガラス転移点(Tg;動的粘弾性試験により、昇温速度4℃/分、1Hzで測定)は、通常、100〜400℃、好ましくは200〜350℃である。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、以上の熱硬化性樹脂の熱硬化時の内部応力を緩和する材料としてポリロタキサンを添加した組成物である。
ここで、ロタキサンは、ダンベル形の軸分子に輪状の分子をはめこんだ形の分子をいい、軸分子としてポリエチレングリコールなどの高分子を用いることにより、シクロデキストリンのような輪状分子を複数閉じ込めたものをポリロタキサンと称する。
【0029】
本発明の樹脂組成物におけるポリロタキサンとしては、輪状の分子に軸分子となる末端官能基を有する鎖状ポリマー分子が串刺し状に包接されており、かつ上記シクロデキストリン分子が上記末端官能基を有する鎖状ポリマー分子から脱離できなくするに充分嵩高い封鎖基で上記末端官能基が化学修飾されている化合物が挙げられる。
上記ポリロタキサンに用いられる輪状の分子としては、その輪の中に鎖状ポリマー分子を通しうるものであれば、何ら制限無く用いることができる。好適に用いられる輪状分子としては、シクロデキストリン類、クラウンエーテル類、クリプタンド類、大環状アミン類、カリックスアレーン類、シクロファン類などが挙げられる。特にシクロデキストリン類が有機化合物と抱接化合物を作りやすい性質を持つことから好ましい。シクロデキストリン類は複数のグルコースがα−1、4−結合で環状に連なった化合物であり、中でも、6個、7個、および8個のグルコースで形成された化合物は、α−、β−、およびγ−シクロデキストリンと呼ばれより好適に用いられる。また、これらのシクロデキストリンの水酸基の少なくとも一つが他の有機基によって置換された修飾デキストリン類は、その溶剤への溶解性が向上するため、さらに好ましく用いられる。
【0030】
上記末端官能基を有する鎖状ポリマー分子としては、封鎖基を結合しうる反応性基を末端に有している分子であれが何ら制限無く用いることができる。ここで好適に用いられる末端官能基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、酸クロライド基、フェノール基、イソシアネート基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、スチリル基、活性エステル基、チオール基、ラクトン環基、環状/鎖状酸無水物基、カーボネート基、シラン基、シラノール基、アルコキシシリル基などであり、特に好ましくは、水酸基、アミノ基、カルボキシル基が挙げられる。一つの分子中にこれらの末端官能基が複数種共存することも好適に用いられる。また、上記鎖状ポリマー分子としては、貫通した輪状分子が脱離できないような構造を形成しうる鎖状ポリマー分子であれば、何ら制限無く用いることができる。好適に用いられる鎖状ポリマー分子としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール類;ポリブタジエンジオール、ポリイソプレンジオール、ポリイソブチレンジオール、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)ジオール、水素化ポリブタジエンジオール、ポリエチレンジオール、ポリプロピレンジオールなどの末端水酸基ポリオレフィン類;ポリカプロラクトンジオール、ポリ乳酸、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル類;末端シラノール型ポリジメチルシロキサンなどの末端官能性ポリシロキサン類;末端アミノ基ポリエチレングリコール、末端アミノ基ポリプロピレングリコール、末端アミノ基ポリブタジエンなどの末端アミノ基鎖状ポリマー類;および上記官能基を一分子中に3つ以上有する3官能性以上の多官能性鎖状ポリマー分子類などが挙げられる。
上記末端官能基を有する鎖状ポリマーは、その分子量は2千〜100万、好ましくは1万〜50万の範囲が好適に用いられる。分子量が2千未満では、末端封鎖基による運動性への制限効果があり、応力緩和効果が十分に発現しない。また、分子量が100万を超える場合、該ロタキサンのマトリックス樹脂への溶解性が低下し、また作業性も低下する。
【0031】
上記嵩高い封鎖基としては、上記した末端官能基と反応することによって末端に結合し、上記輪状の分子が脱離できないような十分嵩高い基であれば何ら制限無くもちいることができる。特に好ましく用いられる封鎖基としては、2,4−ジニトロフェニル基、トリチル基、ダンシル基、2,4,6−トリニトロフェニル基、トリイソプロピルシリル基、ナフタレン誘導体基、アントラセン誘導体基などが挙げられる。末端官能基を有する鎖状ポリマーと封鎖基との反応に先立ち、該鎖状ポリマーの末端官能基をより反応性の高い官能基に変換することも好適に行われる。たとえば、ポリエチレングリコールの水酸基末端にカルボニルジイミダゾールと反応させ、つづいてエチレンジアミンと反応させることによって、末端アミノ基ポリエチレングリコールが合成される。なお、以下「ポリエチレングリコール」、「ポリプロピレングリコール」は、これらの分子末端が化学修飾によって変成されている場合も包含される。
【0032】
本発明に用いられるポリロタキサンの輪状の分子と軸分子との比率は、本発明の樹脂組成物の応力緩和特性に強く影響する重要な因子である。軸分子に嵌め込まれる輪状分子の数は、軸分子の長さや輪状分子1分子の幅によって決定される。一般的に、このポリロタキサンの輪状の分子と軸分子との比率は「充填率」と言われ、例えば、α−シクロデキストリン(α-CD)とポリエチレングリコール(PEG)からなるポリロタキサンの場合、下式(3)で表現される。

H-NMR積分強度比:R =(α-CDのC1-Hの積分強度)/(PEG-Hの積分強度)
(1)
PEG に付加したα-CDの数:N =R × (4/6) × (PEGの重合度) (2)
充填率(%):FR =N×100/(PEGの重合度/2) (3)

上記で表される充填率:FRは、0〜100(%)の範囲の値を取りうるが、本発明の樹脂組成物の応力緩和特性を発現させる場合、好ましくは1〜30%、より好ましくは2〜20%、さらに好ましくは、3〜10%の範囲である。充填率が1%未満では、シクロデキストリン分子とマトリックスとの多点結合による固定および機械的強度保持向上の効果が少なく、一方、充填率が30%を超える範囲では、軸分子の運動性が制限され、十分な応力緩和効果が発現しない。
【0033】
本発明に用いられるポリロタキサンの具体的実施態様においては、上記輪状の分子がシクロデキストリンであり、上記末端官能基を有する鎖状ポリマー分子がポリアルキレングリコールであるのが好ましく、このポリアルキレングリコールの水酸基末端をアミノ基に変性し、このアミノ基末端を、2,4−ジニトロフェニル基のような嵩高い基で封鎖することにより、ポリロタキサンが調製される。
例えば、シクロデキストリンを内部に取り込んだ末端アミノ基変性ポリアルキレングリコールに2,4−ジニトロフェニルフルオライドを反応させることにより、上記嵩高い封鎖基としての2,4−ジニトロフェニル基で軸分子末端がエンドキャップされ、α−シクロデキストリンとポリエチレングリコールからなるポリロタキサンが調製される。
【0034】
なお、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリンは、ポリプロピレングリコールとから上記と同様にポリロタキサンを形成することができる。これらのポリロタキサンも、上記のα−シクロデキストリンとポリエチレングリコールとからなるポリロタキサンの場合と同様に、シクロデキストリンを取り込んだポリプロピレングリコールの末端を嵩高い封鎖基で化学修飾することによって調製される。
【0035】
α−シクロデキストリン(α−CD)とポリエチレングリコール〔PEG、例えば、分子両末端をアミノ基変成したものとしてポリ(エチレングリコール)ビスアミン(PEG−BA)〕からのポリロタキサンならびにβ−またはγ−シクロデキストリン(β−またはγ−CD)とアミノ基変性ポリプロピレングリコール(PPG-BA)からのポリロタキサンの製造方法を、さらに詳しく説明する。
【0036】
例えば、α−、β−またはγ−CD1モルに対して、PEGやPPGのアルキレングリコール単位(ユニット)として2モル以上となるように両者を水性媒体中で攪拌・混合して、例えば、常温〜90℃の温度範囲で10分〜1時間程度反応させる。PEGやPPGを必要以上に多量に使用することはコスト的に高くつき好ましくない。特に、PPGを用いる場合、これが溶解状態ではなく分散状態であることがあるので、超音波を照射しながら攪拌するのが好ましい。その後、必要に応じて0〜10℃の温度に冷却し、生成した沈澱を反応混合物から固液分離する。この固液分離の方法としては、濾過、遠心分離、限外濾過膜などを使用した膜分離などが一般的である。
【0037】
次に、代表的な封鎖基による軸分子の末端の化学修飾方法として、α−CDとPEG−BAの包接化合物と2,4−ジニトロフェニルフルオライド〔2,4−ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)〕とを反応させる場合の一例を説明する。
【0038】
例えば、ジメチルホルムアミドなどの溶媒に溶解した上記の高分子化合物の溶液にDNFBを加え、例えば、常温近辺で30分〜5時間攪拌する。反応混合物をジメチルスルホキサイドに溶解し、水中に投入、生成した沈殿を水およびメタノールでそれぞれ3回ずつ洗浄して回収する。もっと精製するためには、上記のジメチルスルホキサイド/水系を用いて溶解/沈殿処理を繰り返す。
【0039】
上記の2,4−ジニトロフェニルフルオライドの代わりに、例えば、トリチルブロマイド、ダンシルクロライド、2,4,6−トリニトロフェニルフルオライド、9−アントラアルデヒド、9−アントラセンカルボン酸などを使用することもできる。
【0040】
ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどの高分子化合物を軸分子とし、シクロデキストリン類を輪状分子として串刺し状に包接化した後、該高分子化合物の両高分子末端を嵩高い封鎖基で化学修飾して封鎖すると、かかる嵩高い封鎖基が輪状分子としてのシクロデキストリン分子の該高分子化合物の鎖からの脱離を妨げ、加熱や溶剤との接触があっても得られるポリロタキサンが輪状分子と軸分子に脱離することが無くなる。
【0041】
以上のようなポリロタキサンは、マトリックス樹脂(熱硬化性樹脂)の中で分子レベルで分散ドメインを形成し、低温での自由運動モードを確保し、さらにマトリックス樹脂の機械的物性保持機構と共存することができる。
本発明の樹脂組成物は、ポリロタキサンと高ガラス転移温度(Tg)の熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂など)との組成物であるが、該ポリロタキサンは柔軟性材料の均一微分散状態でありながら、得られる組成物のTgおよび貯蔵弾性率を増大させ、かつ応力緩和成分の分子運動性を確保することができる。
【0042】
本発明の樹脂組成物は、マトリックス樹脂である熱硬化性樹脂にポリロタキサンが微分散してなる。
ここで、マトリックス樹脂のガラス転移温度(Tg)以下の転移温度を有する一般的な応力緩和材料添加の影響と本発明に用いられるポリロタキサンの効果の相違を下記に示す。




一般的分子分散系 相分離系 本発明のポリロタキサン系
透明性 維持 不透明 透明
貯蔵弾性率 顕著な低下 維持〜低下 増加
マトリックスTg 低下 変化せず 増加

このように、ポリロタキサンの優位性は、分子レベルでの凝集効果の発現とマトリックスと輪状分子との多点結合による架橋構造の形成と、それに伴う熱的・機械的性質の向上寄与にある。
【0043】
マトリックス樹脂のガラス転移温度(Tg)および貯蔵弾性率がポリロタキサンを添加することにより上昇する原因は、
(1)エポキシ基の開環重合時にシクロデキストリン分子に対して起こる連鎖移動反応とそれに伴うマトリックスとの化学結合の形成
(2)シクロデキストリン分子を複数有するロタキサン分子の、分子レベルでの分散による効果的な多点架橋の形成
(3)多点架橋による架橋密度の増大
にあるものと考えられる。
上記(1)〜(3)の機能は、シクロデキストリンに限らず、他の輪状分子を用いた場合も、その分子上にマトリックス樹脂と結合しうる反応性基を有しているあるいは賦与することによって同様に発現させることが可能である。
また、樹脂組成物から得られる成形品への外部からの応力は、熱および衝撃によるマトリックスの変形を伴う機械的応力であるが、本発明のポリロタキサンを添加することにより、この応力が緩和される機能がある。
すなわち、マトリックス樹脂によって束縛された輪状分子群によって形成された自由体積内で、ポリロタキサンの軸分子鎖の分子運動が自由に行われることによって熱および歪みエネルギーが分子運動に変換される応力緩和機能が働く。具体的には、ポリロタキサン分子中の複数のシクロデキストリン分子によって形成される自由体積中での非束縛ポリエチレングリコール分子鎖が自由運動することによって応力緩和機構が発現される。
【0044】
本発明の樹脂組成物において、マトリックス樹脂となるエポキシ樹脂やポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂に対する上記ポリロタキサンの配合量は、熱硬化性樹脂100重量部に対し、1〜20重量部、好ましくは5〜15重量部である。1重量部未満では、ポリロタキサンによる応力緩和効果が十分ではなく、一方、20重量部を超えると、ポリロタキサン分子同士の凝集が始まり、効果的な分散状態が形成しがたいためである。
【0045】
なお、本発明の樹脂組成物には、上述の熱硬化性樹脂やその硬化剤、ポリロタキサン成分以外に、熱硬化性樹脂組成物に一般に使用されている各種の添加剤を、用途、目的に応じて必要に応じ配合することができる。このような添加剤としては、例えば、ヒュームドシリカ、溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナなどの無機質充填剤、酸化アンチモン、ハロゲン化合物、リン化合物などの難燃剤、高級脂肪酸金属塩、エステル系ワックスなどの内部離型剤、シランカップリング剤、顔料、染料などが例示される。
【0046】
本発明の樹脂組成物は、必要とされる各成分を、ロール、ニーダーなどの混合装置を用いて均一に混練りすることにより調製することができる。あるいは、必要に応じて有機溶剤に均一に溶解したのち、溶媒を除去することによっても調整することができる。
【0047】
実施例
次に、本発明の実施例を挙げる。なお、例中の部は重量部を、%は重量%を示す。
実施例中、シクロデキストリンの充填率、応力緩和試験、および熱分析は、下記のようにして測定した。
【0048】
充填率: ポリロタキサンを重水素化ジメチルスルホキサイドに溶解し、バリアン製400MHz H-NMRを用いてNMRスペクトルを測定した。得られたスペクトル中、4.8ppm付近のα−シクロデキストリンC1-Hに基づくピークと3.5ppm付近のエチレングリコールユニット中の水素に基づくピークの積分強度を求め、これらの積分強度から、下記の式を用いて、シクロデキストリンの充填率を計算した。
H-NMR積分強度比:R =(α-CDのC1-Hの積分強度)/(PEG-Hの積分強度)
PEG に付加したα-CDの数:N =R × (4/6) × (PEGの重合度)
充填率(%):FR =N×100/(PEGの重合度/2)
【0049】
応力緩和試験(動的粘弾性測定): セイコーインスツルメント社製SDM 5600
DMS200を用いて動的粘弾性を測定した。0.5、1、2、5、10Hzの異なる周波数を用いて、昇温速度を2℃/分、-100℃〜220℃の温度範囲で本発明の樹脂組成物の貯蔵弾性率、損失弾性率および損失正接Tanδを測定した。測定は引っ張りモードを用いた。試料片の断面積は厚さゲージを用いて測定し、約3平方mmとし、チャック間の距離は2cmとした。なお、測定は空気雰囲気中で行った
【0050】
熱分析: セイコーインスツルメント社製EXTAR SI I−6200を用いて示差走査熱量測定を行った。直径5mmのアルミパン中にサンプルを封じ、窒素気流(20ml/分)下に昇温速度5℃/分で室温〜200℃まで加熱し、次に液体窒素によってサンプルを急冷した後、再度、昇温速度5℃/分で−100℃から200℃まで加熱して測定した。
【0051】
参考例1
平均分子量が2,000の末端アミノ基ポリエチレングリコール(和光純薬 試薬PEG-2000)1gに対し、α−シクロデキストリン1.9gを加え、それぞれ蒸留水に溶解した後、混合し、80℃で1時間攪拌し、透明の溶液を得た。次に、この透明溶液を冷蔵庫(5℃)内で一晩冷却し、白色ゲル状物を得た。白色ゲル状物は、エバポレーターを用いて、減圧下に水を揮発除去した。得られた白色固体生成物をジメチルホルムアミド20mlに溶解し、これに末端封止剤として2,4−ジニトロフェニルフルオライド2mlを加え、懸濁液の状態で室温で2時間撹拌した。得られた反応混合物に、ジメチルスルホキシド50mlを加えて溶解し透明溶液を得た。次に、この透明溶液を分液ロートに移し、これに蒸留水300mlを加えて、黄色沈殿物を生成した。この黄色沈殿物を300mlの蒸留水で3回洗浄し、さらに300mlのメタノールで3回洗浄した。黄色沈殿生成物は、遠心分離(7,000rpm、10〜15分間)により分離した。分離した黄色生成物は、減圧下80℃で24時間乾燥しポリロタキサンを得た。このようにして合成したポリロタキサンは、軸分子あたり3.9個のα-シクロデキストリンを含有する充填率が17.7%のポリロタキサンであった。結果を表1に示す。
【0052】
参考例2
平均分子量が20,000のポリエチレングリコール(和光純薬 試薬 PEG-20,000)5gを乾燥塩化メチレン50mlに溶解した。この溶液にN,N’−カルボニルジイミダゾール2gを加えて溶解し、室温で12時間攪拌した。生成した溶液にジエチルエーテル300mlを加えて白色沈殿を得た。この白色沈殿を遠心分離(7,000rpm、5分間)により分離した。分離した白色沈殿を、ジエチルエーテル300mlで二回洗浄し、末端をイミダゾイルカルボニルオキシ基変性PEG-20,000を合成した。得られた生成物3.45gを塩化メチレン50mlに溶解し、この液を室温で攪拌しながら、エチレンジアミン10mlを滴下し、その後、2時間攪拌した。得られた溶液にジエチルエーテル300mlを加えて白色沈殿を得た。白色沈殿は、蒸留水100mlに溶解し、透析チューブ(分画分子量12,000)を用いて精製した。最後に、精製水溶液からエバポレーターを用いて水分を揮発除去し、末端アミノ基変性PEG-20,00を得た(収量2.6g)。このようにして得られた末端アミノ基変性PEG-20,000とDNFBとから、参考例1と同様にしてポリロタキサンを得た。結果を表1に併記する。
【0053】
参考例3
参考例2と同様にして、平均分子量が35,000(Fluka社 試薬 PEG-35,000)を用いてポリロタキサンを得た。結果を表1に併記する。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例1
参考例1〜3で得られたポリロタキサン0.1gを、それぞれ1gのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、この溶液にベースエポキシ樹脂原料(大日本インキ社製、ノボラック型エポキシ樹脂EPICLON
N-730-A)1gを加えて均一溶液とした。次に、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.02gを1−メチル−ピロリドン(NMP)0.2mlに溶解して上記溶液に添加した。この溶液を、短冊形の注型枠に流し込み、140℃で3時間加熱し硬化させた。硬化物から溶剤(DMSOとNMP)を揮発除去するために、220℃で2時間加熱した。以上の操作により、厚み約0.5mmの硬化フィルムを作成した。この硬化フィルムの動的粘弾性を動的粘弾性測定装置(DMA)により測定した。10Hzで測定した結果を図1および表2に示す。
図1(a)および(b)から、ポリロタキサンの添加により、50〜100℃の温度範囲に新たな分散ピークが見られた。上記の新たな分散ピークは、PEGあるいはα−CD単独の添加では現れない。
また、ポリロタキサンの添加は、貯蔵弾性率を増大させることがわかる。さらに、ポリロタキサンの添加は、マトリックスのエポキシ樹脂のガラス転移温度を向上させることがわかる。
【0056】
【表2】

【0057】
実施例2
参考例2で得られたポリロタキサンを用い、ベースエポキシ樹脂原料に対する添加量を変化させて、実施例1と同様にして応力緩和効果を調べた。10Hzで測定した結果を図2、表3に示す。
図2(a)および(b)から、ポリロタキサンの添加量が5%から20%の範囲で、貯蔵弾性率も50〜100℃にかけての分散ピークもリファレンス1のベースエポキシ樹脂よりも高いことがわかる。また、ポリロタキサンの添加量が5%から10%に増加するに伴い、貯蔵弾性率も50〜100℃にかけての分散ピークも増大するが、ポリロタキサンの添加が10%から20%に増加するに伴い、ガラス転移温度はさらに上昇する一方で、貯蔵弾性率は逆に若干減少することが分かる。
【0058】
【表3】

【0059】
比較例1
実施例1で用いられたベースエポキシ樹脂原料1gに対し、DNFBで末端を封鎖した平均分子量が20,000のポリエチレングリコール0.0677gとα−シクロデキストリン0.0323gとからなる混合物0.1gを配合して樹脂組成物を調製し、これを用いて、実施例1と同様にして応力緩和効果を調べた。10Hzで測定した結果を図3と表4に示す。
【0060】
【表4】

【0061】
表4、図3(a)および(b)から、末端をDNFGでキャップしたPEG-20,000とα-CDを別個に添加した系では、50〜100℃にかけての分散ピークは観測されない。また、エポキシ樹脂中に単に分散したポリエチレングリコールには、50〜100℃にかけての分子運動モードは存在しないことがわかる。
【0062】
実施例3
実施例1で作成した樹脂組成物の熱分析を示唆走査熱量計(DSC)を用いて測定した。結果を図4に示す。ポリロタキサンを含有した樹脂組成物はいずれも60℃付近で熱転移が観察される。一方、リファレンスではそのような熱転移は観察されない。また、参考例2で得られたポリロタキサン、α−シクロデキストリン、およびPEG-20,000をそれぞれ同様にして熱分析を行った。結果を図5に示す。その結果、PEG−20、000は、約60℃に明確な融点ピークを表すことがわかる。一方、ポリロタキサンもα−シクロデキストリンも50〜100℃の温度範囲に熱転移を示さないことがわかる。
これから、ポリロタキサン単独では、PEG単独の分子運動モードを失っている、すなわちPEGの結晶構造を喪失していることが分かる。
また、本発明の樹脂組成物(エポキシ樹脂/ポリロタキサン複合体)では、何らかのPEG鎖の運動モードを発現している、すなわちポリロタキサンとマトリックスとの相互作用の中で新たなPEG鎖の分子運動モードが生じているものと推察される。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本 発明で使用されるポリロタキサンは、従来のシリコーンゴム微粒子などに比べ、凝集性が弱く、ベースエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂への分散性に優れるため、本発明の熱硬化性の樹脂組成物は、熱硬化時および冷熱サイクルによるクラックの発生が起こりにくく、耐衝撃性に優れた成形品を与え、パッケージ用材料として極めて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施例1により得られたデータで、ポリロタキサンの軸分子成分であるポリエチレングリコールの分子量の効果であり、(a)はDMAの貯蔵弾性率および損失弾性率結果を示し、(b)は損失正接結果を示す。
【図2】実施例2により得られたデータで、ポリロタキサンの添加量の効果であり、(a)はDMAの貯蔵弾性率および損失弾性率結果を示し、(b)は損失正接を示す。
【図3】比較例1により得られたデータで、(PEG-DNFB+α−CD)混合物添加系の効果であり、(a)はDMAの貯蔵弾性率および損失弾性率結果を示し、(b)は損失正接を示す。
【図4】実施例3により得られたデータで、実施例1で得られた樹脂組成物フィルムのDSCによる熱分析結果である。
【図5】実施例3により得られたデータであり、原料PEG−20,000、α−CD、および生成したポリロタキサンのDSCによる熱分析結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂にポリロタキサンを配合したことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂またはポリイミドである請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
ポリロタキサンが、ポリアルキレングリコールを軸分子とし、これにシクロデキストリンが嵌め込まれ、かつ、シクロデキストリン分子がポリアルキレングリコール分子から脱離することがないように、封鎖基で該ポリアルキレングリコール分子の両末端が封止されているものである請求項1記載の樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−316089(P2006−316089A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−136941(P2005−136941)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】