説明

樹脂組成物

【課題】低透湿性、接着性、透明性、耐候性に加えて、耐溶剤性および耐薬品性に優れた封止材料(シーリング材料)に適した樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記の(A)および(B)を必須成分として含有する樹脂組成物である。
(A)側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系重合体。
(B)平均粒子径が0.3μm以下の無機質充填剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低透湿性、接着性、透明性、耐候性および耐溶剤性・耐薬品性に優れた、例えば、シーリング材料に適した樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高度情報社会の進展に伴い、有機EL表示装置,液晶表示装置や電気泳動表示装置等の各種表示用電子デバイス、有機EL照明装置,光学素子,光導波路等の光学デバイス、薄膜シリコン太陽電池,有機薄膜太陽電池や色素増感型太陽電池等の太陽電池等、多くの機能性デバイスが提案されている。これら機能性デバイスには、通常、封止材料やシーリング材料が用いられるが、従来、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂が用いられてきた(例えば、特許文献1,2,3参照)。
【0003】
上記のように、各種機能性デバイスでは、大気中の水分や酸素による悪影響を防止するため、封止材料やシーリング材料が用いられているが、その透湿性能や各種ガスバリア性能の点で不充分であり、機能性デバイスの寿命向上を図るために、透明性とともに低ガスバリア性能を有する封止材料(シーリング材料)が要望されている。
【0004】
一方、液晶を封入してなる液晶表示装置では、近年、ODF(One Drop Filling)法という液晶注入方式が提案されている(特許文献4参照)。このODF法においては、シーリング材料が未硬化の状態で封入された液晶に接触することになり、これが、シーリング材料が液晶に溶け出すと液晶パネルの配向不良(液晶表示の不均一性)の原因となることから、シーリング材料には液晶に対する非汚染性が要望されている。
【0005】
さらに、アセトニトリル等の有機溶剤にヨウ素を溶解した液体電解質類(ゲル電解質等の擬固体電解質等を含む)を封入する色素増感型太陽電池では、その封止部であるメインシール部とエンドシール部には、低透湿性、接着性、透明性、耐候性に加えて耐電解質液性が求められている(特許文献5参照)。
【特許文献1】特開2005−320404号公報
【特許文献2】特開2008−59945号公報
【特許文献3】特開2007−324259公報
【特許文献4】特開2006−323033号公報
【特許文献5】特開2008−140759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、近年ますます開発が盛んに行なわれている上記機能性デバイス用封止材である封止材料(シーリング材料)には、先に述べたように、低透湿性、接着性、透明性、耐候性に加えて、耐溶剤性および耐薬品性等に関して、優れた特性を備えたものの開発が強く要望されている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、低透湿性、接着性、透明性、耐候性に加えて、耐溶剤性および耐薬品性に優れた封止材料(シーリング材料)に適した樹脂組成物の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の樹脂組成物は、下記の(A)および(B)を必須成分として含有する樹脂組成物という構成をとる。
(A)側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系重合体。
(B)平均粒子径が0.3μm以下の無機質充填剤。
【0009】
すなわち、本発明者らは、低透湿性、接着性、透明性、耐候性に加えて、耐溶剤性および耐薬品性に優れた封止材料(シーリング材料)となり得る樹脂組成物を得るために一連の研究を重ねた。その結果、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系重合体(A)と、平均粒子径が0.3μm以下の無機質充填剤(B)とを用いると、低透湿性、接着性、透明性、耐候性に加えて、優れた耐溶剤性および耐薬品性が得られることを見出し本発明に到達した。すなわち、上記特定の構造を有するアクリル系重合体を用いることにより、特に、上記機能性デバイスが屋外で使用される場合には、優れた耐候性を発揮する。さらに、これに特定の粒子径の無機質充填剤を用いることにより、特に、透湿度を低減することに加えて、紫外線に対する透明性向上が図られるため、紫外線硬化の際の硬化性を損なわないという作用を奏し、結果、上記両者の併用による相乗効果から上記優れた特性が得られるようになるのである。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明は、前記(A)側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系重合体と、(B)平均粒子径が0.3μm以下の無機質充填剤を必須成分として含有してなる樹脂組成物である。このため、優れた低透湿性、接着性、透明性、耐候性はもちろん、さらに優れた耐溶剤性および耐薬品性等の特性を備えるようになる。したがって、本発明の樹脂組成物は、各種機能性デバイスの封止材料(シーリング材料)として、非常に有用である。
【0011】
そして、上記特定のアクリル系重合体(A)の数平均分子量が500〜20000であると、樹脂組成物の塗工性の向上とともに、強度、接着性、耐候性および耐溶剤性・耐薬品性が一層向上する。
【0012】
また、上記無機質充填剤(B)が、球状シリカ粒子であると、その表面を疎水性から親水性まで任意に設計が可能となり、樹脂成分との親和性の向上を図ることが可能となる。
【0013】
さらに、本発明の樹脂組成物において、多官能アクリレート化合物類を反応性希釈剤として含有すると、樹脂組成物の粘度が低減されることから、塗工性を向上するとともに架橋剤としても作用するため、低透湿性や耐溶剤性および耐薬品性に一層優れるようになる。
【0014】
そして、上記無機質充填剤(B)が、その表面が化学的に修飾処理されたものであると、上記(A)成分等との樹脂成分との親和性がより一層向上し、未硬化溶液の粘度低下や無機質充填剤(B)の分散性の向上に寄与することとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0016】
本発明の樹脂組成物は、特定のアクリル系重合体(A成分)と、特定の粒子径を備えた無機質充填剤(B成分)とを用いて得られるものである。なお、本発明の樹脂組成物は、その用途として、各種機能性デバイスの封止材料(シーリング材料)があげられ、その封止対象となる各種機能性デバイスの多くがプラスチック基板やガラス基板等の電極付き基板を対向配設した構造であることから、ボイド発生の原因となる溶剤や揮発成分を含まない無溶剤タイプの樹脂組成物である。しかも、本発明の樹脂組成物は、チクソトロピー性を併せもつため、ディスペンス塗工性やスクリーン印刷等の塗布性に優れた液状を呈するものである。なお、本発明において、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートを、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸あるいはメタクリル酸を、(メタ)アクリロキシとはアクリロキシあるいはメタクリロキシをそれぞれ意味するものである。
【0017】
上記特定のアクリル系重合体(A成分)は、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するものであり、側鎖に水酸基を含有するビニル重合体と、(メタ)アクリロイル基含有のイソシアネート化合物類とを反応させることにより得られる。
【0018】
上記側鎖に水酸基を含有するビニル重合体は、例えば、水酸基を含有するビニル単量体と水酸基を含有しないビニル単量体やその他のビニル単量体の高温連続重合法にて得られるビニル重合体であって、数平均分子量500〜20000を有し、また、水酸基当量(OHV)が5〜200mgKOH/g程度の液状ランダム共重合体である。
【0019】
上記水酸基を含有するビニル単量体としては、水酸基含有(メタ)アクリレートが用いられ、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。中でも、良ランダム共重合性の観点から、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0020】
上記水酸基を含有しないビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルが用いられ、例えば、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、スチリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、トリシクロデキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、クロロエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート類があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。中でも、好適には、得られる硬化体の可撓性とタックフリー性を両立するという観点から、(メタ)アクリレートのエステル残基の炭素数が1以上20以下のものであり、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートが用いられる。
【0021】
上記その他のビニル単量体としては、例えば、クロトン酸エステル類、α−オレフィン類、クロロエチレン類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、イソプロペニルエーテル類、アリルエーテル類、アリルエステル類、芳香族ビニル単量体および(メタ)アクリル酸等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0022】
上記水酸基を含有するビニル単量体と水酸基を含有しないビニル単量体の使用割合は、得られる側鎖に水酸基を含有するビニル重合体の水酸基当量(OHV)が5〜200mgKOH/g程度の液状ランダム共重合体となるように反応に供する各単量体の配合割合を任意に設定すればよい。すなわち、水酸基当量(OHV)が小さ過ぎると、得られる本発明の樹脂組成物の硬化体の架橋密度が不充分となり、強度不足になり易いとともに充分な低透湿性、接着性、透明性、耐候性および耐溶剤性・耐薬品性を発揮できなくなる恐れが生じる傾向がみられるからである。また、水酸基当量(OHV)が大き過ぎると、得られる本発明の樹脂組成物の硬化体のガラス転移温度(Tg)が高くなり易く、弾性率が高くなり、充分な接着性を発揮できなくなる恐れが生じる傾向がみられるからである。
【0023】
上記各単量体を用いて得られる側鎖に水酸基を含有するビニル重合体は、高温(例えば150〜350℃)での連続重合法によって得られるものであり、数平均分子量500〜20000のビニル重合体が得られる。中でも、塗工性とともに、強度、接着性、耐候性および耐溶剤性・耐薬品性の観点から、数平均分子量1000〜15000の液状の重合体が好ましい。なお、本発明において、数平均分子量とは、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)にて測定したポリスチレン換算による数平均分子量を示すものである。
【0024】
一方、本発明で用いる(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物類としては、例えば、2−イソシアネートエチルメタクリレート、2−イソシアネートエチルアクリレート、1,1−ビス(アクリロキシメチル)エチルイソシアネート等の(メタ)アクリロキシイソシアネート化合物等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0025】
上記のように、本発明で用いられる、特定のアクリル系重合体(A成分)は、側鎖に水酸基を含有するビニル重合体と、(メタ)アクリロイル基含有のイソシアネート化合物類とを反応させることにより得られるものである。そして、その合成は、チタン,スズ等の金属やジブチル錫ラウレート等の有機金属塩等の触媒下において、不活性ガス雰囲気下、室温(20℃程度)から場合により30〜80℃の加温下にて反応させることにより、室温(25±15℃)で粘稠な、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系重合体が得られる。
【0026】
上記特定のアクリル系重合体(A成分)の合成反応における変性の進行度合いは、例えば、赤外吸収スペクトルにおいて、反応の進行とともに、イソシアネート基由来の特性吸収帯(2260cm-1近傍)が減少することから、このイソシアネート基由来の特性吸収帯を測定することにより確認することができる。また、合成反応における変性の終点は、イソシアネート基由来の特性吸収帯が消失することによって確認することができる。
【0027】
上記A成分とともに用いられる特定の粒子径を備えた無機質充填剤(B成分)としては、例えば、シリカ粉末、アルミナ粉末、酸化チタン粉末、炭酸カルシウム粉末、珪酸カルシウム粉末等の絶縁性の球状無機質充填剤があけられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、水添エラストマー誘導体への分散性において、無機質充填剤表面を疎水性から親水性まで任意に設計が可能であり、樹脂成分との親和性を向上させやすいという点から、上記シリカ粉末を用いることが好ましく、特に好ましくは平均粒子径が0.3μm以下の球状シリカ粉末を用いることである。なお、上記球状シリカ粉末としては、例えば、破砕状シリカ粉末を溶融してなる溶融球状シリカ粉末等があげられる。
【0028】
上記無機質充填剤の平均粒子径は、0.3μm以下でなけれならず、より好ましくは0.05〜0.2μmである。すなわち、平均粒子径が小さ過ぎ、超微粒子となると、比表面積が大きくなりすぎて、充填量が減少し得られる硬化体の透湿度の低減効果が不充分となる傾向がみられ、逆に平均粒子径が大き過ぎると、硬化体の透明性が損なわれるとともに、紫外線硬化の場合には、硬化性が損なわれる傾向がみられるからである。
【0029】
さらに、上記無機質充填剤の最大粒子径は、10μm以下であることが好ましく、特に好ましくは1μm以下である。そして、上記無機質充填剤の比表面積としては、10〜100m2 /gであることが好ましく、より好ましくは20〜50m2 /gである。
【0030】
上記無機質充填剤の平均粒子径および最大粒子径は、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。また、上記無機質充填剤の比表面積は、例えば、窒素吸着法による細孔特性測定装置(例えば、カンタクローム社製のオートソーブ3B型)により測定することができる。そして、上記平均粒子径および比表面積は、無機質充填剤の母集団から任意に抽出される試料を用い、上記測定装置を利用して導出される値である。
【0031】
また、上記無機質充填剤としては、その表面を化学的に修飾して表面処理されていることが好ましい。これにより、上記特定のアクリル系重合体(A成分)等の樹脂成分との親和性がより向上し、未硬化溶液の粘度低下や、無機質充填剤の分散性が向上する。
【0032】
このような化学的な修飾に用いられる化合物としては、無機質充填剤の表面に存在する水酸基やカルボキシル基等の官能基と反応するものであればよく、より好ましくは、シランカップリング剤、シリル化剤等の反応性シラン化合物、チタネート化合物、イソシアネート化合物等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0033】
上記化学的な修飾に用いられる化合物は、例えば、有機溶剤中に、無機質充填剤とともに上記化合物を配合して無機質充填剤を表面処理する方法等、従来公知の無機質充填剤の表面処理方法と同様の方法において用いられる。このような表面処理方法において用いられる上記化合物の使用量は、例えば、無機質充填剤に対して最小被覆面積となる添加割合に設定することが好ましい。
【0034】
上記シランカップリング剤としては、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0035】
上記シリル化剤としては、例えば、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリフロロプロピルトリクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0036】
上記チタネート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート等のテトラアルキルチタネート化合物や、その他の低分子量縮合物等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0037】
上記イソシアネート化合物としては、例えば、2−イソシアネートエチルメタクリレート、2−イソシアネートエチルアクリレート、1,1−ビス(アクリロキシメチル)エチルイソシアネート等の(メタ)アクリロキシイソシアネート化合物等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0038】
上記特定の粒子径を備えた無機質充填剤(B成分)の配合量は、樹脂組成物全体に対して30〜70重量%に設定することが好ましく、より好ましくは40〜60重量%である。すなわち、B成分の配合量が少な過ぎると、シーリング材料の低透湿性が不充分となる傾向がみられ、B成分の配合量が多過ぎると、未硬化の樹脂組成物の液粘度が極度に高くなり、塗工に支障をきたす傾向がみられるからである。
【0039】
本発明の樹脂組成物には、上記A成分およびB成分とともに、重合開始剤を任意に配合することができる。
【0040】
上記重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤あるいは光重合開始剤があげられる。より好適には、本発明の樹脂組成物を硬化させる過程において、加熱による機能性デバイスへの悪影響を避ける目的から、紫外線を利用する光重合開始剤を用いることである。
【0041】
上記熱重合開始剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイド等の過酸化物や、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)等のラジカル発生剤を用いることができる。
【0042】
上記光重合開始剤としては、例えば、紫外線(UV)を利用したUV硬化剤である光ラジカル発生剤が用いられる。具体的には、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0043】
上記光重合開始剤の配合量は、本発明の樹脂組成物全体の0.1〜30重量%の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは0.5〜20重量%の範囲である。すなわち、光重合開始剤の配合量が少な過ぎると、重合度が不充分となる傾向がみられ、多過ぎると、分解残渣が多くなり、シーリング材料の耐久性が低下するとともに、耐溶剤性・耐薬品性が低下する傾向がみられるからである。
【0044】
本発明の樹脂組成物には、反応性希釈剤として、また各成分配合時には希釈剤として、そして硬化時には架橋剤として作用する多官能アクリレート化合物類を含有することができる。このような多官能アクリレート化合物類としては、例えば、多官能(メタ)アクリレートがあげられる。
【0045】
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−オクタデカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノルボルネンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートル類の3官能(メタ)アクリレート類、およびその他ポリ(メタ)アクリレート化合物等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。中でも、好適には、水添エラストマー誘導体との相溶性が良好であるという観点から、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレートが賞用される。
【0046】
さらに、本発明の樹脂組成物には、上記各配合成分以外に、その用途等に応じて他の添加剤である、単官能(メタ)アクリレート、酸化防止剤、消泡剤、界面活性剤、着色剤、有機質充填剤、各種スペーサー等を必要に応じて適宜配合することができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0047】
本発明の樹脂組成物は、例えば、特定のアクリル系重合体(A成分),特定の粒子径を備えた無機質充填剤(B成分)および他の配合成分を配合し、3本ロール等の混練分散機を用いて、混合,混練することにより製造することができる。
【0048】
このようにして得られる本発明の樹脂組成物は、例えば、UVランプ等を用いての紫外線照射等による光照射により硬化体として供される。また、上記紫外線照射等の光照射後、必要に応じて所定の温度でのポストキュアを行なうことにより硬化させ、封止材料(シーリング材料)による封止層(封止部,シール部)が形成される。
【0049】
上記紫外線照射に際して用いられる光源としては、公知の各種光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線を有効に照射するものが用いられる。一方、紫外線照射以外の光照射として、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に照射するものも用いられる。
【0050】
本発明の樹脂組成物を用いて各種機能性デバイスの封止を行なう際には、樹脂組成物(封止材料,シーリング材料)硬化体と電極基板や基板間の接着性をより向上させるために、予め、封止部の表面をシランカップリング剤で被覆することがより有効であり好ましい。
【0051】
上記シランカップリング剤としては、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0052】
上記各種機能性デバイスでは、一対の電極基板、および、電極基板とキャップ材(蓋)の少なくとも一方が所定間隔を保って対向配設され、上記一対の電極基板、および、電極基板とキャップ材(蓋)の少なくとも一方の周辺部の表面をシランカップリング剤で被覆処理した後、空隙を保って配設する封止部を形成する。このときの上記シランカップリング剤の被覆処理としては、例えば、0.1〜2重量%のメタノール等を配合したシランカップリング剤のアルコール溶液を封止部表面に塗工した後、100℃で5分間乾燥させることが好ましい。
【実施例】
【0053】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0054】
〔実施例1〕
水酸基を含有するビニル重合体として、粘度6000mPa・s、数平均分子量2000、水酸基当量(OHV)110mgKOH/gの液状アクリル重合体(東亞合成社製、ARUFON UH−2032)を40g(OH基として0.0784mol)、2−イソシアネートエチルメタクリレート14.6g(0.0941mol)をそれぞれを反応容器に投入し、窒素気流下、湯浴にて50℃に保持した。その後、ジブチル錫ラウレート(触媒)0.028g(2−イソシアネートエチルメタクリレートに対して0.19重量%)添加し、8時間保持した。赤外吸収スペクトル(FT−IR:サーモエレクトロン社製、FT−IR200型)を用いて、2260cm-1の消失を確認し、側鎖にメタクリロイル基含有を有するアクリル系重合体を準備した。
【0055】
一方、平均粒子径が0.1μm(最大粒子径0.2μm)の球状シリカ粉末(比表面積28m2 /g)100g、ヘキサメチルジシラザン64.55g、トルエン250gを反応容器に投入し、超音波をかけながら室温(25℃)にて2時間反応させた。その後、濾紙を用いて分離し、トルエンとエタノールにより洗浄、乾燥を行ない表面疎水化した球状シリカ粉末を得た。
【0056】
つぎに、上記側鎖にメタクリロイル基含有を有するアクリル系重合体7g、表面疎水化した球状シリカ粉末10g、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)3g、光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製、イルガキュア651)0.5gを準備し、それぞれを遮光下、乳鉢で予備混合した後、3本ロールで混練分散することにより、目的とするシーリング材料用樹脂組成物を作製した。
【0057】
得られたシーリング材料用樹脂組成物を、ギャップ(隙間)を100μmに調整して2枚の厚み50μmのポリエステルフィルムであるセパレーターに挟持した後、紫外線ランプを用いて、窒素ガス気流下で紫外線照射(10mW/cm2 ×300秒)して硬化体フィルムを作製した。得られた硬化体フィルムを用いて、カップ法による透湿度試験(JIS Z 0208)、0.1Mヨウ素アセトニトリル溶液に、室温(25℃)にて168時間浸漬したことによる重量変化と着色観察(目視による変色の判定)を測定し、耐溶剤性試験を行なうとともに、粘弾性試験装置(TAインスツルメンツ社製、RSA3型)により弾性率の測定を行なった。
【0058】
また、上記と同様にして、ギャップを50μmに調整して、予め3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを塗布してガラス表面を予備接着処理した2枚のスライドガラス板(260mm×76mm×厚み1.2mm)に、シーリング材料用樹脂組成物を挟持し、紫外線ランプを用いて、窒素ガス気流下で紫外線照射(3000mJ/cm2 )してガラス/ガラス接着力試験片を得た後、85℃で85%RHの高湿高温槽に168時間放置した。その後、2枚のスライドガラス板の接着性(剥離の有無)を評価した。
【0059】
さらに、上記と同様にして、ギャップを50μmに調整して、2枚のスライドガラス板(260mm×76mm×厚み1.2mm)に、シーリング材料用樹脂組成物を挟持し、紫外線ランプを用いて、窒素ガス気流下で紫外線照射(3000mJ/cm2 )して試験片を得た後、これに超エネルギー照射試験機(スガ試験機社製、UE−1DEC型)を用いて、90W/m2 で168時間照射を行なった。この照射前後における波長350nmの光線透過率保持率を、測定装置(日立社製、分光光度計U−3900型)を用いて測定,評価した。
【0060】
〔実施例2〕
上記実施例1にて作製した側鎖にメタクリロイル基含有を有するアクリル系重合体3g、同じく上記実施例1にて作製した表面疎水化した球状シリカ粉末10g、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)7g、光ラジカル重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製、イルガキュア651)0.5gを準備し、それぞれを遮光下、乳鉢で予備混合した後、3本ロールで混練分散することにより、目的とするシーリング材料用樹脂組成物を作製した。それ以外は実施例1と同様にして各種特性試験による測定,評価を行なった。
【0061】
〔実施例3〕
水酸基を含有するビニル重合体として、粘度14000mPa・s、数平均分子量11000、水酸基当量(OHV)20mgKOH/gの液状アクリル重合体(東亞合成社製、ARUFON UH−2000)を40g(OH基として0.0143mol)、2−イソシアネートエチルメタクリレート2.65g(0.0171mol)のそれぞれを反応容器に投入し、窒素気流下、湯浴にて50℃に保持した。その後、ジブチル錫ラウレート(触媒)0.006g(2−イソシアネートエチルメタクリレートに対して0.23重量%)添加し、8時間保持した。赤外吸収スペクトル(FT−IR:サーモエレクトロン社製、FT−IR200型)を用いて、2260cm-1の消失を確認し、側鎖にメタクリロイル基含有を有するアクリル系重合体を準備した。それ以外は実施例1と同様にしてシーリング材料用樹脂組成物を作製するとともに、このシーリング材料用樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして各種特性試験による測定,評価を行なった。
【0062】
〔比較例1〕
水酸基を含有しないビニル重合体として、粘度5000mPa・s、数平均分子量6000、水酸基当量(OHV)0mgKOH/gの液状アクリル重合体(東亞合成社製、ARUFON UP−1030)を3g、上記実施例1にて作製した表面疎水化した球状シリカ粉末10g、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)7g、光ラジカル重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製、イルガキュア651)0.5gを準備し、それぞれを遮光下、乳鉢で予備混合した後、3本ロールで混練分散することにより、目的とするシーリング材料用樹脂組成物を作製した。それ以外は実施例1と同様にして各種特性試験による測定,評価を行なった。
【0063】
〔比較例2〕
平均粒子径が0.7μm(最大粒子径3.2μm)の球状シリカ粉末(比表面積6.2m2 /g)を100g用い、実施例1と同様にして表面疎水化した球状シリカ粉末を得た。そして、上記実施例1と同様にしてシーリング材料用樹脂組成物を作製するとともに、このシーリング材料用樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして各種特性試験による測定,評価を行なった。
【0064】
〔比較例3〕
平均粒子径が0.4μm(最大粒子径1.0μm)の球状シリカ粉末(比表面積6.2m2 /g)を100g用い、実施例1と同様にして表面疎水化した球状シリカ粉末を得た。そして、上記実施例1と同様にしてシーリング材料用樹脂組成物を作製するとともに、このシーリング材料用樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして各種特性試験による測定,評価を行なった。
【0065】
これら実施例および比較例の各種特性試験による測定,評価結果を下記の表1に併せて示した。
【0066】
【表1】

【0067】
上記結果から、実施例品は、透湿度が低く、重量変化率も低いものであった。さらに、変色の度合いも抑制され、剥離の生じず接着性に優れたものであり、光線透過率保持率も高く透明性にも優れたものであった。
【0068】
これに対して、本発明のA成分となる側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系重合体を用いない比較例1品は、光線透過率保持率は高く透明性に関しては優れたものであった。しかし、透湿度が高く、重量変化率も高い結果が得られた。しかも、フィルムが破断して黒褐色に変色したことが確認された。さらに、剥離が発生し、接着性に劣ることがわかる。また、平均粒子径が大きい球状シリカ粉末を用いた比較例2,3品は、重量変化率は低く、変色の度合いは抑制されていた。また、剥離の生じず接着性に優れたものであった。しかしながら、透湿度が高く、かつ光線透過率保持率の測定においては、照射前ですでに波長350nmの光線が不透過であったため、光線透過率保持率の測定試験に供しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の樹脂組成物は、有機EL表示装置,液晶表示装置や電気泳動表示装置等の各種表示用電子デバイス、有機EL照明装置,光学素子,光導波路等の光学デバイス、薄膜シリコン太陽電池,有機薄膜太陽電池や色素増感型太陽電池等の太陽電池等、各種機能性デバイスの封止材料・シーリング材料に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)および(B)を必須成分として含有することを特徴とする樹脂組成物。
(A)側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系重合体。
(B)平均粒子径が0.3μm以下の無機質充填剤。
【請求項2】
上記(A)側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系重合体の数平均分子量が500〜20000である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
上記(B)無機質充填剤が、球状シリカ粉末である請求項1または2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂組成物に、反応性希釈剤として多官能アクリレート化合物類を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
上記(B)無機質充填剤が、その表面が化学的に修飾処理されたものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
シーリング材料用途に用いられる請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−144092(P2010−144092A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324426(P2008−324426)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】