説明

樹脂被覆金属材への印字方法、及び印字を備えた樹脂被覆金属材

【課題】 樹脂被覆金属材に良好な耐食性と鮮明な視認性とを備えた印字部を形成する。
【解決手段】樹脂被覆金属材1への印字方法において、金属材2の表面2aに、プライマコート剤3を用いて光透過性のプライマコート層4を形成し、有色顔料7が添加されたトップコート剤5より成るトップコート層6をプライマコート層4の上に形成し、レーザ8をトップコート層6に向かって印字形状に合わせて走査状に照射することで、トップコート層6の表面6aに、外部から金属材2の表面2aの反射光11が見えるように凹状の印字部9を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造ロット等の製品情報を樹脂被覆金属材に印字する方法、及びこの方法により形成される印字を備えた樹脂被覆金属材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼材などの金属材に対して製品情報(品名、定格、認定マーク、製造ロット等)の印字を行う印字方法としては、特許文献1及び特許文献2に示された方法がある。
特許文献1の印字方法は、金属材の表面に樹脂を下塗りしてプライマコート層を形成し、その上から塗料を上塗りしてトップコート層を形成するものである。この印字方法では、プライマコート層とトップコート層との間に感熱変色塗料を塗布する工程がある。この感熱変色塗料は熱を加えると変色する性質を備えている。それゆえ、レーザをトップコート層の上から印字形状に合わせて走査状に照射すると、熱変色した塗料により印字を形成することができる。
【0003】
また、特許文献2の印字方法は、金属材の表面にクロム酸系顔料などの有色顔料を含む樹脂を塗布・乾燥して塗膜を形成するものである。特許文献2の印字方法においても、レーザの照射により塗膜を熱変色させて印字を形成することができる。
【特許文献1】特開昭53−81134号公報
【特許文献2】特開2000−248388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで感熱変色塗料は、プライマコート層やトップコート層に用いられる樹脂との密着性に劣るという問題を有している。それゆえ、特許文献1の印字方法で形成された印字部は、プライマコート層とトップコート層との剥離強度を低下させて耐食性を損なう原因となるという問題を有していた。
また、特許文献2の印字方法では、印字部にレーザの照射で熱が加えられると、トップコート層を構成する樹脂が熱劣化してしまう可能性がある。一度トップコート層の樹脂が熱劣化すると、プライマコート層がないため腐食が進行しやすく耐食性が著しく低下する。
【0005】
さらに、電化製品などの製品には白色のトップコート層が通常設けられる。ところが、プライマコート層はグレーの色彩を呈し白色のトップコート層との間に色相コントラストが殆どなく、印字の鮮明さが低くなるという問題が指摘されていた。
本発明は上記の問題点を解消するためになされたものであって、印字方法に係る本発明の目的は、良好な耐食性と鮮明な視認性とを備えた印字部を簡単に形成できる印字方法を提供することにある。
また、樹脂被覆金属材に係る本発明の目的は、良好な耐食性を備えると共に、視認性に優れた印字を備えた樹脂被覆金属材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、樹脂被覆金属材への印字方法に係る本発明が講じた技術的手段は、金属材の表面に、プライマコート剤を用いて光透過性のプライマコート層を形成し、有色顔料が添加されたトップコート剤より成るトップコート層を、当該プライマコート層の上に形成し、レーザを前記トップコート層に向かって印字形状に合わせて走査状に照射することで、前記トップコート層の表面に、外部から金属材表面の反射光が見えるように凹状の印字部を形成する点にある。
また、本発明の他の技術的手段は、前記金属材がアルミ材であり、前記有色顔料が白色顔料とされている点にある。
【0007】
また、本発明の他の技術的手段は、前記印字部を、前記トップコート層を貫通して前記トップコート層とプライマコート層との界面に達する深さに形成する点にある。
さらに、印字を備えた樹脂被覆金属材に係る本発明が講じた技術的手段は、表面が金属光沢を有する金属材と、前記金属材の表面に積層されると共に光透過性のプライマコート剤で形成されたプライマコート層と、有色顔料が添加されたトップコート剤で成ると共に前記プライマコート層の上に積層されたトップコート層とを有し、前記トップコート層の表面に、外部から金属材の表面の反射光が見えるように凹状の印字部が形成されている点にある。
【0008】
また、本発明の他の技術的手段は、前記プライマコート剤及び/又はトップコート剤が、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、ビニル系樹脂のうち少なくとも1種類を含んでいる点にある。
【発明の効果】
【0009】
樹脂被覆金属材への印字方法に係る本発明により、良好な耐食性と鮮明な視認性とを備えた印字部を簡単に形成できる。
また、印字を備えた樹脂被覆金属材に係る本発明により、良好な耐食性を備えると共に、視認性に優れた印字を備えた樹脂被覆金属材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
図1に示されるように、本発明の樹脂被覆金属材1は、金属光沢を備えた表面2aを有する金属材2と、この金属材2の表面2aに積層されると共にプライマコート剤3で形成されたプライマコート層4と、このプライマコート層4の上に積層されると共に有色顔料7が添加されたトップコート剤5で形成されたトップコート層6と、レーザ8の照射によりトップコート剤5が溶融除去されると共にトップコート層6の表面6aに印字形状に合わせて凹状に形成された印字部9とを有している。
【0011】
金属材2は、本実施形態においては表面2aが金属光沢を有するアルミニウム板(A3004H14、t=0.6mm)が用いられている。金属材2には例えば鋼、鉄、銅、マグネシウム合金などの金属で形成されたものを用いることができ、また金属材2には管状、棒状などに形成したものを用いることもできる。
アルミニウム板(金属材)2は、平滑な仕上がり面が得られるように加工されるか、又は仕上げに研磨や研削を行われる。これにより、アルミニウム板2の表面2aを金属光沢に仕上げることができ、印字部9に入射された外光10を鏡面反射に近いかたちで反射して、反射光11により印字部9の視認性を高めることができる。
【0012】
プライマコート層4は、アルミニウム板2の表面2aの上に積層状に形成されている。プライマコート層4は、プライマコート剤3を塗布した後に乾燥又は硬化させることで形成される。
プライマコート剤3は、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、ビニル系樹脂の少なくとも1種類以上から成る合成樹脂であってクリア色(透明色)のものが用いられる。プライマコート剤3にはこれらの合成樹脂の中でもエポキシ系樹脂が好ましくは用いられる。プライマコート剤3にエポキシ系樹脂を用いることで、優れた耐食性に加えて高い光透過性をプライマコート層4に付与することが可能となる。
【0013】
プライマコート層4は、前述のクリア色のプライマコート剤3を塗布することで光透過性を有する皮膜に形成されている。プライマコート層4を光透過性にすることで、印字部9から入射した外光10を吸収したり反射したりすることなく金属材2の表面2aまで導くと共にこの金属材2の表面2aで反射された反射光11を印字部9から外に導き、印字部9が金属光沢に視認できるようになる。
プライマコート層4の厚みは1〜10μmとされるのが好ましい。プライマコート層4の厚みを10μm以下とすることで、形成に必要とされる合成樹脂の量を減らすことが可能となり、また塗布や乾燥に必要以上に時間をかける必要がなくなる。また、プライマコート層4の厚みを1μm以上とすることで、金属材2の発錆を防ぐことが可能となる。
【0014】
トップコート層6は、プライマコート層4の上に積層されており、トップコート剤5を塗布した後に乾燥又は硬化させることで形成されている。トップコート剤5には、合成樹脂のバインダと、このバインダに配合されてトップコート層6を着色する有色顔料7とが含まれている。
トップコート剤5を構成するバインダは、プライマコート剤3を構成する合成樹脂と同様に、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、ビニル系樹脂の少なくとも1種類以上の合成樹脂から成る。なお、上述の合成樹脂の中からであればトップコート剤5を構成するバインダとプライマコート剤3を構成する合成樹脂とに異なる種類の合成樹脂や異なった組み合わせを用いることができる。
【0015】
トップコート層6は、配合される有色顔料7により白色、黒色、赤色、黄色、青色、緑色、紫色、茶色などの多彩な色に着色される。この有色顔料7はメタリックに視認される印字部9に対して背景色をトップコート層6に付与する。それゆえ、金属材2の表面2aで反射された反射光11に対して、強いコントラストを示す色彩であればどのような色でも採用できる。
なお、トップコート層6の色は好ましくは白色とされるのが良い。トップコート層6を電化製品や照明器具の外観の塗装色(白色)に合わせた白色にすれば、電化製品や照明器具などでは外筺が白色に塗装されることが多いため、本発明の樹脂被覆金属材1と外筺の色との差がなくなり、自然な風合いに仕上げることができるようになる。
【0016】
有色顔料7は、本実施形態では有機又は無機の白色顔料が用いられる。白色顔料(有色顔料7)には、例えばタルク、カオリン、炭酸カルシウム、亜鉛華、酸化チタンなどを用いることができる。白色顔料にはこれらの顔料の中でも特に酸化チタンを用いるのが好ましい。白色顔料に酸化チタンを用いることで、トップコート層6を電化製品や照明器具の外観の塗装色に対して色相差の少ない白色に着色することができるからである。
トップコート層6は、厚みが1〜20μmに形成されている。トップコート層6の厚みを20μm以下とすることで、印字部9を形成するためにレーザ8を照射する時間を短くしてコストを下げることができる。また、トップコート層6の厚みを1μm以上とすることで、印字部9に対して十分なコントラストを発揮できる色にトップコート層6を着色可能となる。
【0017】
印字部9はトップコート層6の表面6aに印字形状に合わせて凹状に形成されている。この印字部9は、レーザ8をトップコート層6に向かって照射することにより、照射部分のトップコート剤5が溶融・除去されて形成される。印字部9の深さは、印字部9に入射された外光10が金属材2の表面2aで反射されて再び印字部9から脱出することができる深さ、言い替えれば金属材2の表面2aで反射された反射光11が視認可能な深さとされている。
印字部9の深さは、より具体的には印字部9の下層側に除去されずに残ったトップコート層6の厚みが5μm以下とされる。印字部9の下層側に除去されずに残ったトップコート層6の厚みが5μm以下になる深さに印字部9を形成することで、印字部9から放出される反射光11が十分な輝度を備えるようになり、印字を鮮明な金属光沢に視認させることが可能となる。
【0018】
なお、印字部9は、トップコート層6を貫通してプライマコート層4の表面4aに達する深さに形成することもできる。このようにすれば、入射された外光10を金属材料2の表面2aで鏡面反射させることが可能となり、印字をより鮮明に視認させることが可能となるからである。
次に、図2及び図3を用いて、本発明の樹脂被覆金属材1への印字方法について説明する。
本発明の樹脂被覆金属材1への印字方法は、図2の第1工程から第3工程の順に行われる。
【0019】
図3の(a)に示されるように、第1工程は、金属材2の表面2aに、プライマコート剤3を用いて光透過性のプライマコート層4を形成するものである。金属材2は、予め研磨や研削が行われ金属光沢を備えている。プライマコート層4は、プライマコート剤3をスプレーやロールコータなどで金属材2の表面2aに塗布し、続いて送風や加熱の手段を用いて乾燥することで、厚みが1〜10μmに形成される。
図3の(b)に示されるように、第2工程は、プライマコート層4の上に、有色顔料7が添加されたトップコート剤5より成るトップコート層6を、プライマコート層4に対して積層されるように形成するものである。トップコート剤5は、プライマコート剤3同様にスプレーやロールコータなどでトップコート層6の表面6aに塗布され、続いて送風や加熱の手段を用いて乾燥することで、厚みが1〜20μmで有色に形成される。
【0020】
図3の(c)に示されるように、第3工程は、レーザ8をトップコート層6に向かって印字形状に合わせて走査状に照射することで、トップコート層6の表面6aに凹状の印字部9を形成するものである。第3工程では、この印字部9を、印字部9に入射された外光10が金属材2の表面2aで反射されて印字部9から再び脱出可能な深さに形成している。
レーザ8には、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ(ダイオードレーザ)などの赤外線レーザを用いることができる。これらの中でもレーザ出力が大きく加工性に優れた炭酸ガスレーザを用いるのが好ましい。炭酸ガスレーザ(レーザ)8をレーザ出力15〜30Wで走査速度2000〜5000mm/secで照射することで、トップコート層6の表面6aに凹状の印字部9を形成することが可能となる。
【0021】
レーザ8の照射を受けたトップコート層6は、このトップコート層6を構成するトップコート剤5が溶融・飛散される。その結果、トップコート層6の表面6aには凹状の印字部9が形成される。また、レーザ8の照射部分を印字形状に合わして走査することで、印字形状に沿ってトップコート層6の表面6aが溝状に凹んだ印字部9を形成することができる。
本発明では、金属材2の表面2aに、光透過性のプライマコート層4と、有色顔料7が添加されて有色とされたトップコート層6とを、互いに積層状に形成している。そして、レーザ8をトップコート層6に向かって印字形状に合わせて走査状に照射することで、トップコート層6の表面6aに凹状の印字部9を形成している。
【0022】
このように印字部9をトップコート層6の表面6aに凹状に形成することで、印字部9から入射された外光10が金属材2の表面2aで反射されて印字部9から再び外に届き、印字部9が金属光沢を帯びるようになる。その結果、金属光沢の印字部9が有色のトップコート層6に十分なコントラストで視認され、印字部9に鮮明な視認性を付与することができる。
また、本発明の樹脂被覆金属材1では、プライマコート層4により金属材2が被覆されているため、印字部9を形成するためにトップコート層6の一部を溶融・除去しても、耐食性が低下することがない。それゆえ、良好な耐食性と鮮明な視認性とを実現することができる。
【0023】
なお、好ましくは、金属材2を電化製品に多用されるアルミニウム材とし、トップコート層6に含まれる有色顔料7を白色顔料とするのが良い。本発明では印字部9が金属光沢を帯び、トップコート層6を白色としても印字部9とのコントラストを十分大きくできるため、白色の外観を備えた電化製品に対しても視認性が優れた印字部9を提供できる。
また、印字部9の視認性をより高めたい場合には、印字部9をトップコート層6を貫通してプライマコート層4の表面4aに達する深さに形成するのが良い。このようにすれば、印字部9から入射された外光10がトップコート層6で吸収される心配がなく、印字部9の金属光沢をより鮮明にして印字部9の視認性をより高めることができるからである。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を用いて本発明の樹脂被覆金属材1をさらに詳しく説明する。なお本発明は、その要旨を越えない限り、以下に説明する実施例の構成に限定されるものではない。
実施例1の樹脂被覆金属材1は、以下に示す第1工程から第3工程を順番に行うことで形成される。
まず、第1工程において、アルミニウム板2(A3004P−H14)t=0.6mmの表面2aに、プライマコート層4を形成する。プライマコート層4の形成には、エポキシ系樹脂のプライマコート剤3を使用した。このプライマコート剤3をスプレーしてアルミニウム板2の表面2aに塗工し、次に熱風を吹き付けて乾燥させることにより厚み3μmのプライマコート層4を形成した。
【0025】
次に、第2工程において、第1工程で形成したプライマコート層4の上にトップコート層6を形成した。トップコート層6の形成には、ポリエステル系樹脂のバインダに酸化チタンの白色顔料を配合したトップコート剤5を用いた。このトップコート剤5をプライマコート層4の表面4aに塗工し、次に熱風を吹き付けて乾燥させることにより厚み6μmのトップコート層6を形成した。
最後に、第3工程において、レーザ発振器からトップコート層6の表面6aに向けて出力20Wで炭酸ガスレーザ8を照射した。炭酸ガスレーザ8を走査速度(印字速度)2000mm/secで印字形状に合わせて移動させ、トップコート層6の表面6aに凹状の印字部9を形成して樹脂被覆金属材1を得た。なお、印字部9はトップコート層6の表面6aからトップコート層6を貫通してプライマコート層4の表面4aに達する深さ(6μm)に形成されている。
【0026】
上述の第1工程から第3工程を経て得られた樹脂被覆金属材1に対して、性能評価を行った。性能評価は、印字判読試験による印字の鮮明さ及びJIS−H4001に基づく耐食性の評価により行った。
印字の鮮明さは、印字判読試験により評価した。印字判読試験は、無作為に選ばれた複数の検査者が印字を読み取り、読み取りに成功したか否かで印字の鮮明さ(印字のコントラスト)を官能評価するものである。すべての検査者が読み取りに成功した場合を○の評価、読み取りできない検査者がいる場合を×の評価とした。
【0027】
耐食性については、JIS−H4001に基づく、促進耐候性、耐アルカリ性、耐酸性、耐湿性、耐腐食性の評価により行った。促進耐候性、耐アルカリ性、耐酸性、耐湿性、耐腐食性の評価において、全ての評価が合格となったときを○の評価、またいずれかが不合格となった場合を×の評価とした。
「比較例」
比較例1及び比較例2は実施例1と第1工程の処理内容が異なっている。
比較例1は、第1工程においてプライマコート剤3により厚み3μmのプライマコート層4を形成している。比較例1のプライマコート層4は、実施例1のプライマコート層4が透明色であるのに対し、グレー色を呈している。比較例1の他の実験条件については実施例1と同じとされている。
【0028】
比較例2は、プライマコート層4を形成せずに、アルミニウム板2の表面2aに直接にトップコート剤5を塗布して、厚み9μmのトップコート層6を形成している。それゆえ、比較例2には、実施例1のようなプライマコート層4がない。比較例2の他の実験条件については実施例、比較例とも同じとされている。
表1に評価結果を示す。
【0029】
【表1】

【0030】
表1に示すように、プライマコート層4が透明色でありトップコート層6が白色とされた実施例1は、印字の鮮明さが○の評価結果となっている。実施例1において印字の鮮明さが○の評価になったのは、印字部9がトップコート層6の表面6aからトップコート層6を貫通してプライマコート層4の表面4aに達する深さに形成されているためである。
つまり、実施例1では、外光10がプライマコート層4に直接入射され、次に光透過性のプライマコート層4を殆ど吸収や反射されることなく透過し、アルミニウム板2の表面2aで反射され反射光11も吸収や反射を殆ど受けずに印字部9から高い輝度を備えたまま放出される。それゆえ、印字部9から放出される反射光11が、トップコート層6の表面6aで反射される反射光11と大きなコントラストの差を奏することになり、金属光沢の印字が白色の背景に映えて鮮明に視認される。
【0031】
また、実施例1では、トップコート層6の下にはプライマコート層4が形成されているので、レーザ8によりトップコート層6に除去されてもプライマコート層4によりアルミニウム板2の表面2aが保護される。それゆえ、耐食性も○の評価結果となっている。
一方、比較例1では印字の鮮明さが○の評価結果となっている。比較例1では、トップコート層6は白色であるが、プライマコート層4は外光10を吸収又は反射しやすいグレー色を呈している。それゆえ、印字部9から外光10をプライマコート層4に入射しても、プライマコート層4を透過する間に外光10が吸収又は反射される。つまり、比較例1では、印字部9が白色のトップコート層6に対してコントラストの弱いグレー色に視認され、印字が鮮明に視認されなかったと考えられる。
【0032】
また、比較例2では、印字部9がトップコート層6を貫通してアルミニウム板2の表面2aに達しており、アルミニウム板2の表面2aはプライマコート層4により保護(被覆)されていない。それゆえ、印字部9から腐食が進行しやすく、耐食性が低下したと考えられる。
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の本質を変更しない範囲で各部材の形状、構造、材質、組み合わせなどを適宜変更可能である。
上記実施形態では、トップコート剤5に用いられる有色顔料7にタルク、カオリン、炭酸カルシウム、亜鉛華、酸化チタンなどの白色顔料を用いていた。しかし、有色顔料7は白色顔料に限定されるものではなく、白色以外の色彩を呈する顔料を用いることができる。
【0033】
上記実施形態では、金属材2の表面2aにプライマコート層4とトップコート層6とを形成していたが、プライマコート層4と金属材2の表面2aとの間に他の機能性皮膜が形成されていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の樹脂被覆金属材の断面図である。
【図2】樹脂被覆金属材への印字方法のフロー図である。
【図3】樹脂被覆金属材への印字方法の説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 樹脂被覆金属材
2 金属材(アルミニウム板)
2a 金属材の表面
3 プライマコート剤
4 プライマコート層
4a プライマコート層の表面
5 トップコート剤
6 トップコート層
6a トップコート層の表面
7 有色顔料
8 レーザ(炭酸ガスレーザ)
9 印字部
10 外光
11 反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材の表面に、プライマコート剤を用いて光透過性のプライマコート層を形成し、
有色顔料が添加されたトップコート剤より成るトップコート層を、当該プライマコート層の上に形成し、
レーザを前記トップコート層に向かって印字形状に合わせて走査状に照射することで、前記トップコート層の表面に、外部から金属材表面の反射光が見えるように凹状の印字部を形成することを特徴とする樹脂被覆金属材への印字方法。
【請求項2】
前記金属材がアルミ材であり、前記有色顔料が白色顔料とされていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂被覆金属材への印字方法。
【請求項3】
前記印字部を、前記トップコート層を貫通して前記トップコート層とプライマコート層との界面に達する深さに形成することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂被覆金属材への印字方法。
【請求項4】
表面が金属光沢を有する金属材と、
前記金属材の表面に積層されると共に光透過性のプライマコート剤で形成されたプライマコート層と、
有色顔料が添加されたトップコート剤で成ると共に前記プライマコート層の上に積層されたトップコート層とを有し、
前記トップコート層の表面に、外部から金属材の表面の反射光が見えるように凹状の印字部が形成されていることを特徴とする印字を備えた樹脂被覆金属材。
【請求項5】
前記プライマコート剤及び/又はトップコート剤が、
ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、ビニル系樹脂のうち少なくとも1種類を含んでいることを特徴とする請求項4に記載の印字を備えた樹脂被覆金属材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−78374(P2009−78374A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−247490(P2007−247490)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000210078)池田電機株式会社 (21)
【Fターム(参考)】