説明

樹脂製サッシ、樹脂製サッシ用形材及び樹脂製サッシ用形材の製造方法

【課題】 本発明は、万全な耐火性能を効率的に備えることができる樹脂製サッシ及び樹脂製サッシ用形材、樹脂製サッシ用形材の製造方法を提供することにある。
【解決手段】 枠体1〜3と障子4a,4bとを備えており、枠体1〜3及び障子4a,4bを形成する枠材1〜3や框6〜8の樹脂製サッシ用形材形成部22aの任意の箇所に、熱膨張耐火成分を含有する熱膨張耐火成分含有部22bを一体成形してあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火対策の施された樹脂製サッシ、樹脂製サッシ用形材及び樹脂製サッシ用形材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミ製のものと比較して熱伝導率が低く断熱効果が期待できることから、近年、寒冷地を中心に樹脂製サッシが普及している。その樹脂製サッシは、障子框や枠体のすべてを樹脂製サッシ用形材で構成するものの他、アルミ製サッシ用形材からなる障子や枠体の室内側にのみ樹脂製部品を取り付ける複合型のもの等があり、アルミ製サッシよりも高い結露防止性や断熱性を確保するものであった。しかしながら、樹脂製部品を使用することから、すべてをアルミ製サッシ用形材で構成するものと比べて耐火性能に劣る問題点があり、このことにより、一定の耐火基準を満たすために樹脂製形材間の隙間等、随所に耐火対策が施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−244832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような樹脂製サッシに対して耐火対策を施すときには、耐火素材で形成されたシール材やテープを、枠体や障子を組立て後の樹脂製サッシの所定の箇所に貼り付けるのが一般的な手法であった。このことから、一定の耐火基準を満たすためには、組立て後の樹脂製サッシを隈なく検査し、耐火対策の必要な箇所の一つ一つにシール材やテープを貼らなければならず、大変な手間がかかって生産性を極端に低下させる上、上記の耐火対策が現場合わせだったために、万一、対策の漏れがあったときには、耐火基準を満たさない危険性があった。
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、万全な耐火性能を効率的に備えることができる樹脂製サッシ及び樹脂製サッシ用形材、樹脂製サッシ用形材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のうち請求項1記載の発明は、枠体と障子とを備えており、枠体及び障子を形成する枠材や框の樹脂サッシ用形材形成部の任意の箇所に、熱膨張耐火成分を含有する熱膨張耐火成分含有部を一体成形してあることを特徴とする。
【0006】
本発明のうち請求項2記載の発明は、樹脂製サッシ用形材形成部に熱膨張耐火成分を含有する熱膨張耐火成分含有部を一体成形したことを特徴とする。
【0007】
本発明のうち請求項3記載の発明では、熱膨張耐火成分含有部は、樹脂製サッシ用形材形成部と同一の樹脂成分が50〜80重量部、膨張黒鉛が20〜50重量部の配合比で含まれることを特徴とする。
【0008】
本発明のうち請求項4記載の発明では、樹脂製サッシ用形材の基本樹脂成分と、熱膨張耐火成分と基本樹脂成分との混合物を共押出し成形機により異種の樹脂成分を共押出しする押出し工程、押出し工程により得られた成形物を冷却して硬化させる冷却工程、冷却工程により得られた成形物を所定の長さや形状に加工する加工工程を経ることを特徴とする。ここで基本樹脂成分は、樹脂製サッシ用形材に一般的に使用される塩化ビニル系樹脂などが挙げられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のうち請求項1及び4記載の発明によれば、熱膨張耐火成分含有部が一体成形されたサッシ用形材によって枠体と障子を組み立てるので、組立ての段階で樹脂製サッシにおける耐火対策の必要な箇所に熱膨張耐火成分含有部が配置される。このことから、工場出荷前の段階で耐火対策の必要な箇所を把握し、熱膨張耐火成分含有部を配することができるので、樹脂製サッシを組み立てた後に、樹脂製サッシにおける樹脂部品への延焼が予測される隙間のすべてに耐火対策用のシール材を貼る作業や検査が省略され、しかも、耐火対策が万全に施された樹脂製サッシを効率的に生産することができる。
【0010】
本発明のうち請求項2記載の発明によれば、樹脂製サッシ用形材形成部に熱膨張耐火成分を含有する熱膨張耐火成分含有部を一体成形した樹脂製サッシ用形材を既存のアルミ製サッシの枠体や障子に取り付けることで、既設住宅のリフォームにおいても適用範囲が広げられる。
【0011】
本発明のうち請求項3記載の発明によれば、熱膨張耐火成分含有部は、樹脂製サッシ用形材形成部と同一の樹脂成分が50〜80重量部、膨張黒鉛が20〜50重量部の配合比で含まれることにより、火災発生時の熱によって樹脂製サッシの任意の箇所に配置された熱膨張耐火成分含有部に含まれる膨張黒鉛が膨張することにより、枠体と障子の隙間やガラスパネルと框の隙間を塞いで樹脂部品に対する延焼を遅延させるので、樹脂製サッシの耐火性能を飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施による樹脂製サッシの縦断面図を示すものである。
【図2】(a)(b)は、本実施による樹脂製サッシを構成する形材の斜視図である。
【図3】本実施による樹脂製サッシ用形材の製造工程を示す簡略化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面に基づいて本実施による樹脂製サッシについて説明する。
【0014】
本実施では、樹脂製サッシとして引違い戸を挙げ、この引違い戸に、熱膨張耐火成分として膨張黒鉛を含有する樹脂製サッシ用形材を使用したものである。そして、引違い戸は、上枠1と下枠2と縦枠3とから躯体開口の四周を囲む枠体21と、その枠体21内周の内外位置にそれぞれ配置する二枚の障子4a,4bとから構成している。
【0015】
上記の枠体21を構成する上枠1と下枠2の構成について説明する。
上枠1は、図1のように、断面形状が下向きほぼコ字型をなすものであり、内周側に、障子4a,4bを走行させるための上レール5,5が内外に間隔をあけて二本配置してある。そして、上枠1内周側の上レール5,5間には、枠材用樹脂製カバー材13aが取り付けてある。また、上枠1の室内側には、室内側に配置する障子4b上部を囲む樹脂製アングル材14aが取り付けてある。さらに、下枠2は、上枠1との上下の対向位置に下レール15,15が内外に間隔をあけて二本配置してあり、その下レール15,15間には、枠材用樹脂製カバー材13bが取り付けてある。また、下枠2の室内側には、室内側に配置する障子4b下部を囲む枠材用樹脂製アングル材14bが取り付けてある。
【0016】
障子4a,4bは、上下框6,7と縦框8とからなり、その内周側にガラスパネル9を保持する構造である。また、ガラスパネル9の外周には、四周に渡ってグレージングチャンネル10が取り付けてあり、そのグレージングチャンネル10の外周を覆うように、上下框6,7と縦框8のガラスパネル9を保持する内周側には、ステンレス製カバー11が介在してある。また、上下框6,7の室内側には、框用樹脂製カバー材12a〜12dが取り付けてあり、上述した各框用樹脂製カバー材12a〜12dには、後述するが共押出し成形法により樹脂製サッシ用形材形成部22aと一体成形された熱膨張耐火成分含有部22bが設けられている(図2(a)(b)参照)。
【0017】
上述したように、枠体21に取り付けてある枠材用樹脂製カバー材13a,13bと樹脂製アングル材14a,14b、そして、障子4a,4bに取り付けてある框用樹脂製カバー材12a〜12dのすべてについて、本実施による樹脂製サッシを組立てた後の枠体21と障子4a,4bの隙間における炎の侵入が想定される箇所に、膨張黒鉛を含有する熱膨張耐火成分含有部22bが樹脂製サッシ用形材形成部22bと一体成形されている。このように形成すると、枠体21と障子4a,4bの間隔や形材間の隙間に熱膨張耐火成分含有部22bが配置されるので、万一の火災時には、その熱膨張耐火成分含有部22bが膨張して隙間や間隔を塞ぎ、炎や熱の侵入を防ぐことになる。
【0018】
このうちの図1中AとBで囲む箇所の樹脂製カバー材12b、樹脂製アングル材14aについて説明する。図2(a)に示すものは、上枠1の室内側に取り付けられて室内側に配置する障子4b上框6と対向する位置に配置するものであり、上枠1の上レール5室内側面に沿う室外側垂直壁部17と、障子4bの室内側面に対向する室内側垂直壁部19と、室外側垂直壁部17と室内側垂直壁部19の上端をつなぐ上壁部18と、室内側垂直壁部19の下端から室内側にほぼ水平に延出する室内側延出壁部20とから、下向きほぼコ字型をなすものである。その樹脂製アングル材14aの障子4b上框6と対向する内周側に、膨張黒鉛を含有する熱膨張耐火成分含有部22bが、塩化ビニル系樹脂からなる樹脂製サッシ用形材形成部22aと一体成形してあり、上枠1の所定の箇所に取り付けたときには、室外側垂直壁部17が上框6のレール呑込み部16に入ると共に、上壁部18と室内側垂直壁部19が、上框6の上端面と樹脂製カバー材12cの一部を囲む状態となる(図1参照)。
【0019】
図2(b)に示すものは、室外側に配置する障子4a下框7の室内側に取り付けられる樹脂製カバー材12bである。この樹脂製カバー材12bは、下框7の室内側見付け面の全体を覆うかたちで取り付けてあり、上部はガラスパネル9を保持するステンレス製カバー11を支持すると共に(図1参照)、下部は、下枠2の下レール15の室内側側面に向けて突出するヒレ部が設けてあり、そのヒレ部は、膨張黒鉛を含む熱膨張耐火成分含有部22bとなっており、樹脂製カバー材12bの塩化ビニル系樹脂からなる樹脂製サッシ用形材形成部22a一体成形されている。
【0020】
そして、上述した樹脂製カバー材12a〜12d、枠材用樹脂製カバー材13a,13b、樹脂製アングル材14a,14bの成形については、共押出し成形法にて行われる。具体的には、図3のように、共押出し成形機31を使用しており、その共押出し成形機31に配置された二つのタンク32,33のうちの一方のタンク32には、樹脂製サッシ用形材形成部22aの原料となる塩化ビニル系樹脂溶剤が充填されており、他方のタンク33には、熱膨張耐火成分含有部22bの原料となる塩化ビニル系樹脂溶剤に膨張黒鉛を含有した混合溶剤が充填されている。また、前述した混合溶剤の配合比率は、塩化ビニル系樹脂50〜80重量部に対して膨張黒鉛が20〜50重量部の範囲内で設定されている。また、共押出し成形機31には、任意形状及び断面サイズの成形物Pを得るのに対応した型34が具備されており、その型34に各タンク32,33から同時に原料が送り出されることで、異種原料が一体成形された2色の成形物Pが成形される。そして、共押出し成形機31から送り出された成形物Pは、引取り機35で連続的に外に引き出されて冷却工程に移行される。冷却工程では、共押出し成形機31ら押し出された成形物Pに対し、水が満たされたプール36に通して冷却することにより、成形物Pの硬度を確保する。そして、切断工程・曲げ加工工程(加工工程)を行う加工機37では、共押出し成形機31から成形物Pが連続して供給されるため、サッシ寸法や樹脂製部品の適用箇所に対応して成形物Pを所定寸法に切断したり、あるいは、枠材のアール部等に対応する曲げ加工が行われるものである。以上の各工程を経て得られた成形物Pは、膨張黒鉛を含む熱膨張耐火成分含有部22bと他の塩化ビニル樹脂製の樹脂製サッシ用形材形成部22aとが一体的に成形された樹脂製サッシ用形材12a〜12d,13a,13b,14a,14bとして提供される(図中のものは樹脂製アングル材14a)
【0021】
本発明の樹脂製サッシと樹脂製サッシ用形材は、上記実施形態に限らず、樹脂製サッシ用形材形成部22aの様々な箇所に、熱膨張耐火成分含有部22bを形状や大きさを自由に設定して一体成形することができる(図1参照)。また、上記実施形態では、アルミ製サッシと複合型の樹脂製サッシに本発明が適用されているが、枠体と障子のすべてが樹脂で成形されたサッシにおいても適用できる。さらに、樹脂製サッシ形材の製造方法にて使用される共押出し成形機31やプール36、加工機37についても、その他、成形物Pを所望の形状、サイズに加工できる手段であれば、上記実施形態のものに限定するものではない。
【符号の説明】
【0022】
1 上枠(枠材)
2 下枠(枠材)
3 縦枠(枠材)
4a,4b 障子
6 上框(框)
7 下框(框)
8 縦框(框)
21 枠体
22a 樹脂製サッシ用形材形成部
22b 熱膨張耐火成分含有部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と障子とを備えており、枠体及び障子を形成する枠材や框の樹脂サッシ用形材形成部の任意の箇所に、熱膨張耐火成分を含有する熱膨張耐火成分含有部を一体成形してあることを特徴とする樹脂製サッシ。
【請求項2】
樹脂製サッシ用形材形成部に熱膨張耐火成分を含有する熱膨張耐火成分含有部を一体成形したことを特徴とする樹脂製サッシ用形材。
【請求項3】
熱膨張耐火成分含有部は、樹脂製サッシ用形材形成部と同一の基本樹脂成分が50〜80重量部の範囲内であり、膨張黒鉛が20〜50重量部の範囲内で含まれることを特徴とする請求項2記載の樹脂製サッシ用形材。
【請求項4】
樹脂サッシ用形材の基本樹脂成分と、熱膨張耐火成分と基本樹脂成分との混合物を共押出し成形機により共押出しする押出し工程、押出し工程により得られた成形物を冷却して硬化させる冷却工程、冷却工程により得られた成形物を所定の長さや形状に加工する加工工程を経ることを特徴とする樹脂製サッシ用形材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−202186(P2012−202186A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70564(P2011−70564)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000112185)ビニフレーム工業株式会社 (53)
【Fターム(参考)】