説明

樹脂製シートの製造方法

【課題】シート成形時に目やにの発生量が少なく、外観に優れ、層剥離の起こりにくい樹脂製シートの製造方法と、その方法で製造された樹脂製シートを提供することである。
【解決手段】(i)ポリフェニレンエーテルを溶融する工程、(ii)溶融されたポリフェニレンエーテルから揮発分を除去する工程、(iii)液晶ポリエステルを添加し溶融混練する工程、(iv)工程(iii)から得られた樹脂組成物を押出成形する工程、を含む樹脂製シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート成形時に目やにの発生量が少なく、外観に優れた樹脂製シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエーテルは機械的性質・電気的性質及び耐熱性が優れており、しかも寸法安定性に優れるため幅広い用途で使用されているが、単独では成形加工性に劣っており、これを改良するためにポリスチレンを配合することが広く知られている。しかしながら、耐熱性や耐薬品性が低下するという課題があった。
ポリフェニレンエーテルの流動性を改良する技術として、液晶ポリエステルを配合する技術(例えば、特許文献1参照。)が提案されているが、100〜1000(1/秒)の高いシェアレートがかかる射出成形に関するものであり、シェアレートの低い押出成形についての記載はなく、物性も十分とはいえない。
【0003】
ポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルを配合したシート(例えば、特許文献2参照。)、更に難燃剤を配合したシート(例えば、特許文献3参照。)について提案されているが、耐熱性と層剥離がないという点において十分ではなかった。
また、耐熱性に優れ、層剥離がないポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルからなるシートとして、特定の金属元素および/またはシラン化合物を配合する技術(例えば、特許文献4参照。)が提案されているが、シート成形時の目やにの発生量が少ないという点では十分とは言えなかった。
そこで、シート成形時に目やにの発生量が少なく、外観に優れた樹脂製シートとその製造方法が所望されているのが現状であった。
【特許文献1】特開昭56−115357号公報
【特許文献2】特開2002−241515号公報
【特許文献3】特開2002−241601号公報
【特許文献4】特開2004−211084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、耐熱性や電気特性が要求される用途に好適であり、上述した技術では達成し得なかった、シート成形時に目やにの発生量が少なく、外観に優れ、層剥離の起こりにくい樹脂製シートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、(i)ポリフェニレンエーテルを溶融する工程、(ii)溶融されたポリフェニレンエーテルから揮発分を除去する工程、(iii)液晶ポリエステルを添加し溶融混練する工程、(iv)工程(iii)から得られた樹脂組成物を押出成形する工程を経てシート成形することが、上記課題を解決するために有効であることを見出し、本発明に到達した。
次に、本発明の理解を容易にするために、本発明の基本的特徴及び好ましい諸態様を列挙する。
(1)(i)(A)ポリフェニレンエーテルを溶融する工程、(ii)溶融された(A)から揮発分を除去する工程、(iii)(B)ポリフェニレンエーテルを添加し溶融混練する工程、(iv)工程(iii)から得られた樹脂組成物を押出成形する工程、を含む樹脂製シートの製造方法。
(2)(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(A)成分が50〜99質量部、(B)成分が1〜50質量部である上記(1)に記載の樹脂製シートの製造方法。
(3)(C)I価、II価、III価またはIV価の金属元素を含有する化合物を添加する上記(1)、(2)記載の樹脂製シートの製造方法。
(4)(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(C)成分0.1〜10質量部を添加する上記(3)記載の樹脂製シートの製造方法。
(5)(C)が(A)と同時に添加される上記(3)、(4)記載の樹脂製シートの製造方法。
(6)(C)の金属元素が、Zn元素、Mg元素、Ti元素、Sn元素、Sb元素、Al元素およびGe元素から選ばれる1種以上である上記(3)〜(5)記載の樹脂製シートの製造方法。
(7)(C)が、酸化亜鉛、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、テトラブトキシチタネートおよびテトライソプロポキシチタネートから選ばれる1種以上である上記(3)〜(6)記載の樹脂製シートの製造方法。
(8)(D)シラン化合物を添加する上記(1)〜(7)記載の樹脂製シート。
(9)(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(D)成分0.05〜5質量部を添加する上記(8)記載の樹脂製シートの製造方法。
(10)(D)が(A)と同時に添加される上記(8)、(9)記載の樹脂製シートの製造方法。
(11)(D)が、アミノ基、ウレイド基、エポキシ基、イソシアネート基、およびメルカプト基から選ばれる1種以上の官能基を含有する上記(8)〜(10)記載の樹脂製シートの製造方法。
(12)上記(1)〜(11)のいずれか1項に記載の製造方法で製造された樹脂製シート。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、シート成形時に目やにの発生量が少なく、外観に優れた樹脂製シートの製造方法と、その方法で製造された樹脂製シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に本発明で使用することのできる各成分について詳しく述べる。
本発明で使用できる(A)成分のポリフェニレンエーテルとは、式(1)の構造単位からなる、ホモ重合体及び/または共重合体である。
【0008】
【化1】

【0009】
〔式中、Oは酸素原子、Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、炭化水素オキシ、又はハロ炭化水素オキシ(但し、少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てている)を表わす。〕
【0010】
本発明のポリフェニレンエーテルの具体的な例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類との共重合体(例えば、特公昭52−17880号公報に記載されてあるような2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体や2−メチル−6−ブチルフェノールとの共重合体)のごときポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。ポリフェニレンエーテルとして2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体を使用する場合の各単量体ユニットの比率は、ポリフェニレンエーテル共重合体全量を100質量%としたときに、約80〜約90質量%の2,6−ジメチルフェノールと、約10〜約20質量%の2,3,6−トリメチルフェノールからなる共重合体が特に好ましい。
【0011】
これらの中でも特に好ましいポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、またはこれらの混合物である。
本発明で用いるポリフェニレンエーテルの製造方法は公知の方法で得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第3306874号明細書、同第3306875号明細書、同第3257357号明細書及び同第3257358号明細書、特開昭50−51197号公報、特公昭52−17880号公報及び同63−152628号公報等に記載された製造方法等が挙げられる。
【0012】
本発明で使用することのできるポリフェニレンエーテルの還元粘度(ηsp/c:0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.15〜0.70dl/gの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.20〜0.60dl/gの範囲、より好ましくは0.40〜0.55dl/gの範囲である。
本発明においては、2種以上の還元粘度の異なるポリフェニレンエーテルをブレンドしたものであっても構わない。例えば、還元粘度0.45dl/g以下のポリフェニレンエーテルと還元粘度0.50dl/g以上のポリフェニレンエーテルの混合物、還元粘度0.40dl/g以下の低分子量ポリフェニレンエーテルと還元粘度0.50dl/g以上のポリフェニレンエーテルの混合物等が挙げられるが、もちろん、これらに限定されることはない。
【0013】
また、本発明で使用できるポリフェニレンエーテルは、全部又は一部が変性されたポリフェニレンエーテルであっても構わない。
ここでいう変性されたポリフェニレンエーテルとは、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物で変性されたポリフェニレンエーテルを指す。
該変性されたポリフェニレンエーテルの製法としては、(1)ラジカル開始剤の存在下、非存在下で100℃以上、ポリフェニレンエーテルのガラス転移温度未満の範囲の温度でポリフェニレンエーテルを溶融させることなく変性化合物と反応させる方法、(2)ラジカル開始剤の存在下、非存在下でポリフェニレンエーテルのガラス転移温度以上360℃以下の範囲の温度で変性化合物と溶融混練し反応させる方法、(3)ラジカル開始剤の存在下、非存在下でポリフェニレンエーテルのガラス転移温度未満の温度で、ポリフェニレンエーテルと変性化合物を溶液中で反応させる方法等が挙げられ、これらいずれの方法でも構わないが、(1)及び、(2)の方法が好ましい。
【0014】
次に分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する少なくとも1種の変性化合物について具体的に説明する。
分子内に炭素−炭素二重結合とカルボン酸基、酸無水物基を同時に有する変性化合物としては、マレイン酸、フマル酸、クロロマレイン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸及びこれらの酸無水物などが挙げられる。特にフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が良好で、フマル酸、無水マレイン酸が特に好ましい。
また、これら不飽和ジカルボン酸のカルボキシル基の、1個または2個のカルボキシル基がエステルになっているものも使用可能である。
【0015】
分子内に炭素−炭素二重結合とグリシジル基を同時に有する変性化合物としては、アリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、エポキシ化天然油脂等が挙げられる。
これらの中でグリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレートが特に好ましい。
分子内に炭素−炭素二重結合と水酸基を同時に有する変性化合物としては、アリルアルコール、4−ペンテン−1−オール、1,4−ペンタジエン−3−オールなどの一般式C2n−3OH(nは正の整数)の不飽和アルコール、一般式C2n−5OH、C2n−7OH(nは正の整数)等の不飽和アルコール等が挙げられる。
【0016】
上述した変性化合物は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
変性されたポリフェニレンエーテルを製造する際の変性化合物の添加量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、更に好ましくは0.3〜5質量部である。
ラジカル開始剤を用いて変性されたポリフェニレンエーテルを製造する際の好ましいラジカル開始剤の量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して0.001〜1質量部である。
【0017】
また、変性されたポリフェニレンエーテル中の変性化合物の付加率は、0.01〜5質量%が好ましい。より好ましくは0.1〜3質量%である。
該変性されたポリフェニレンエーテル中には、未反応の変性化合物及び/または、変性化合物の重合体が残存していても構わない。
また、ポリフェニレンエーテルの安定化の為に公知となっている各種安定剤も好適に使用することができる。安定剤の例としては、ヒンダードフェノール系安定剤、リン系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤等の有機安定剤であり、これらの好ましい配合量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して5質量部未満である。
【0018】
更に、ポリフェニレンエーテルに添加することが可能な公知の添加剤等もポリフェニレンエーテル100質量部に対して10質量部未満の量で添加しても構わない
本発明の(B)成分の液晶ポリエステルとは、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルで、公知のものを使用できる。例えば、p−ヒドロキシ安息香酸およびポリエチレンテレフタレートを主構成単位とするサーモトロピック液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸および2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸を主構成単位とするサーモトロピック液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸および4,4′−ジヒドロキシビフェニルならびにテレフタル酸を主構成単位とするサーモトロピック液晶ポリエステルなどが挙げられ、特に制限はない。本発明で使用される液晶ポリエステルとしては、下記構造単位(イ)、(ロ)、および必要に応じて(ハ)および/または(ニ)からなるものが好ましく用いられる。
【0019】
【化2】

【0020】
【化3】

【0021】
【化4】

【0022】
【化5】

【0023】
ここで、構造単位(イ)、(ロ)はそれぞれ、p−ヒドロキシ安息香酸から生成したポリエステルの構造単位と、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸から生成した構造単位である。構造単位(イ)、(ロ)を使用することで、優れた耐熱性、流動性や剛性などの機械的特性のバランスに優れた本発明の熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。上記構造単位(ハ)、(ニ)中のXは、下記式よりそれぞれ任意に1種あるいは2種以上選択することができる。
【0024】
【化6】

【0025】
構造式(ハ)において好ましいのは、エチレングリコール、ハイドロキノン、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ビスフェノールAそれぞれから生成した構造単位であり、さらに好ましいのは、エチレングリコール、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンであり、特に好ましいのは、エチレングリコール、4,4′−ジヒドロキシビフェニルである。構造式(ニ)において好ましいのは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ジカルボキシナフタレンそれぞれから生成した構造単位であり、さらに好ましいのは、テレフタル酸、イソフタル酸である。
構造式(ハ)および構造式(ニ)は、上記に挙げた構造単位を少なくとも1種あるいは2種以上を併用することができる。具体的には、2種以上併用する場合、構造式(ハ)においては、1)エチレングリコールから生成した構造単位/ハイドロキノンから生成した構造単位、2)エチレングリコールから生成した構造単位/4,4′−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、3)ハイドロキノンから生成した構造単位/4,4′−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、などを挙げることができる。
【0026】
また、構造式(ニ)においては、1)テレフタル酸から生成した構造単位/イソフタル酸から生成した構造単位、2)テレフタル酸から生成した構造単位/2,6−ジカルボキシナフタレンから生成した構造単位、などを挙げることができる。ここでテレフタル酸量は2成分中、好ましくは40wt%以上、さらに好ましくは60wt%以上、特に好ましくは80wt%以上である。テレフタル酸量を2成分中40wt%以上とすることで、比較的に流動性、耐熱性が良好な樹脂組成物となる。液晶ポリエステル中の構造単位(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の使用分割は特に限定されない。ただし、構造単位(ハ)と(ニ)は基本的にほぼ等モル量となる。
【0027】
また、構造単位(ハ)、(ニ)からなる構造単位(ホ)を、液晶ポリエステル中の構造単位として使用することもできる。具体的には、1)エチレングリコールとテレフタル酸から生成した構造単位、2)ハイドロキノンとテレフタル酸から生成した構造単位、3)4,4′−ジヒドロキシビフェニルとテレフタル酸から生成した構造単位、4)4,4′−ジヒドロキシビフェニルとイソフタル酸から生成した構造単位、5)ビスフェノールAとテレフタル酸から生成した構造単位、などを挙げることができる。
【0028】
【化7】

【0029】
本発明の液晶ポリエステルには、必要に応じて本発明の特徴と効果を損なわない程度の少量の範囲で、他の芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸から生成する構造単位を導入することができる。本発明の液晶ポリエステルの溶融時での液晶状態を示し始める温度(以下、液晶開始温度という)は、好ましくは150〜350℃、さらに好ましくは180〜320℃である。液晶開始温度をこの範囲にすることは、得られる樹脂組成物を好ましい色調と耐熱性と成形加工性バランスの良いものとする。
本発明の液晶ポリエステルの25℃、1MHzにおける誘電正接(tanδ)は、好ましくは0.03以下であり、さらに好ましくは0.025以下である。この誘電正接の値が小さければ小さいほど、誘電損失は小さくなり、この樹脂組成物を電気・電子部品の原料として用いる時、発生する電気的ノイズが抑制され好ましい。特に25℃、高周波数領域下、すなわち1〜10GHz領域において、誘電正接(tanδ)は、好ましくは0.03以下であり、さらに好ましくは0.025以下である。
【0030】
本発明の液晶ポリエステルの見かけの溶融粘度(液晶開始温度+30℃でずり速度100/秒)は、好ましくは10〜3,000Pa・s、さらに好ましくは10〜2,000Pa・s、特に好ましくは10〜1,000Pa・sである。見かけの溶融粘度をこの範囲にすることは、得られる組成物の流動性を好ましいものとする。
本発明においては、液晶ポリエステルは溶融されたポリフェニレンエーテル中へ添加されることが必須である。また、ポリフェニレンエーテルは分割して添加しても構わない。例えば、ポリフェニレンエーテルの一部を予め溶融させた後に、残りのポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルを添加して溶融混練する方法、溶融したポリフェニレンエーテルに液晶ポリエステルを添加して溶融混練した後に、さらにポリフェニレンエーテルを添加して溶融混練する方法等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0031】
本発明においては、液晶ポリエステルを溶融されたポリフェニレンエーテル中に添加する前に、ポリフェニレンエーテル中の揮発分を除去することが必要である。すなわち、(i)ポリフェニレンエーテルを溶融する工程、(ii)溶融されたポリフェニレンエーテルから揮発分を除去する工程、ついで(iii)液晶ポリエステルを添加し溶融混練する工程を経ることが必須である。具体例としては、押出機を用いて上流側よりポリフェニレンエーテルを溶融させた後、真空ベントより揮発分を除去し、その後に液晶ポリエステルを添加し溶融混練する方法が挙げられるがこの限りではない。液晶ポリエステルを添加する前に揮発分を除去することで、驚くべきことに目やにの発生を抑制することができ、かつ優れた外観のシートを得ることができる。また、ポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルを溶融混練した後に更に揮発分を除去することがより好ましい。
【0032】
本発明において、ポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルを溶融混練するための好ましい温度は、250〜350℃の範囲の中から任意に選ぶことができる。中でも250〜330℃の範囲がより好ましい。
本発明におけるポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルの好ましい配合量は、ポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルの合計100質量部としたとき、ポリフェニレンエーテル50〜99質量部、液晶ポリエステル1〜50質量部である。より好ましくはポリフェニレンエーテル60〜99質量部、液晶ポリエステル1〜40質量部、さらに好ましくはポリフェニレンエーテル80〜99質量部、液晶ポリエステル1〜20質量部である。
【0033】
本発明においては、ポリフェニレンエーテルが連続相、液晶ポリエステルが分散相を形成することが好ましい。ポリフェニレンエーテルが連続相を形成することにより、成形品の表面外観に優れ、ペレット作成時に異形ペレット(長いペレットなど)が形成し難くなる。これらモルフォロジーについては、例えば透過型顕微鏡を用いて観察することにより容易に判断することができる。
本発明においては、(C)成分として、I価、II価、III価またはIV価の金属元素を含有する化合物を添加しても構わない。I価、II価、III価またはIV価の金属元素を含有する化合物とは、金属を含有する無機化合物または有機化合物であり、本質的に金属元素を主たる構成成分とする化合物である。I価、II価、III価またはIV価をとりうる金属元素の具体例として、Li、Na、K、Zn、Cd、Sn、Cu、Ni、Pd、Co、Fe、Ru、Mn、Pb、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ti、Ge、Sbが挙げられる。中でもZn、Mg、Ti、Pb、Cd、Sn、Sb、Ni、Al、Ge元素が好ましく、さらにはZn、Mg、Ti元素が好ましい。ダート衝撃性を大きく向上させる観点から、I価、II価、III価またはIV価の金属元素がZn元素および/またはMg元素であることが特に好ましい。
【0034】
具体例としては、上記金属元素の酸化物、水酸化物、アルコキサイド塩、脂肪族カルボン酸塩、酢酸塩が好ましい。さらに、好ましい酸化物の例としては、ZnO、MgO、TiO4、TiO、PbO、CdO、SnO、SbO、Sb、NiO、Al、GeOなどが挙げられる。また、好ましい水酸化物の例としては、Zn(OH)、Mg(OH)、Ti(OH)、Ti(OH)、Pb(OH)、Cd(OH)、Sn(OH)、Sb(OH)、Sb(OH)、Ni(OH)、Al(OH)、Ge(OH)などが挙げられる。また好ましいアルコキサイド塩の例としては、Ti(OPr)、Ti(OBu)などが挙げられる。また好ましい脂肪族カルボン酸塩の例としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸チタニウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸カドニウム、ステアリン酸すず、ステアリン酸アンチモン、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸ゲルマニウムなどが挙げられる。中でも特に好ましい具体例は、ZnO、Mg(OH)、Ti(OPr)、Ti(OBu)、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、が挙げられる。
【0035】
本発明のI価、II価、III価またはIV価の金属元素を含有する化合物の好ましい添加量としては、ポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルの合計100質量部に対して、シートの層剥離の点から0.1質量部以上であり、10質量部以下含有することが好ましく、0.1〜5質量部がより好ましく、さらに0.2〜3質量部が好ましい。
I価、II価、III価またはIV価の金属元素を含有する化合物の添加方法に特に制限はない。ポリフェニレンエーテルと同時に添加しても構わないし、液晶ポリエステルと同時に、溶融したポリフェニレンエーテル中に添加しても構わない。また、もちろん単独で溶融したポリフェニレンエーテル中へ添加しても構わない。好ましい添加方法としてはポリフェニレンエーテルと同時に添加する方法である。
【0036】
本発明においては、必要に応じて(D)シラン化合物を添加しても構わない。ここでいうシラン化合物は、官能基含有シラン化合物のことであり、中でも、アミノ基、ウレイド基、エポキシ基、イソシアネート基およびメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の官能基を含有するシラン化合物が好ましい。シラン化合物は、通常、これらの官能基のうちのいずれか1種を分子中に含有するものであればよいが、場合によっては、これらの官能基の2種以上を分子中に含有するものであっても良い。また、官能基の数としては1つのみ含んでいても2つ以上含んでいても構わない。官能基を2つ以上含む場合は、1種の官能基を2つ以上含んでいても構わないし、2種以上の官能基をそれぞれ1つずつ含んでいても構わないし、1種の官能基を1つ、それ以外の官能基を2つ以上含んでいても構わない。もちろん、2種以上の官能基をそれぞれ2つ以上含んでいても構わない。
本発明で使用できるシラン化合物としては、前記のような官能基を分子中に含有するアルコキシシランが好ましい。
【0037】
具体例としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、などのアミノ基を含有するシラン化合物;γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルメチルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルメチルトリエトキシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基を含有するシラン化合物;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランなどのエポキシ基を含有するシラン化合物;γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリクロロシランなどのイソシアネート基を含有するシラン化合物;γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、β−メルカプトエチルトリメトキシシラン、β−メルカプトエチルトリエトキシシラン、β−メルカプトエチルジメトキシシランなどのメルカプト基を含有するシラン化合物;等が挙げられる。
【0038】
本発明のシラン化合物の好ましい添加量としては、ポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルの合計100質量部に対して、層剥離の点から0.05質量部以上であり、また成形時のシルバー発生の点から5質量部以下含有することが好ましく、より好ましくは0.1〜3質量部、さらに好ましくは0.2〜1質量部である。
シラン化合物の添加方法に特に制限はない。ポリフェニレンエーテルと同時に添加しても構わないし、液晶ポリエステルと同時に、溶融したポリフェニレンエーテル中に添加しても構わない。また、もちろん単独で溶融したポリフェニレンエーテル中へ添加しても構わない。好ましい添加方法としてはポリフェニレンエーテルと同時に添加する方法である。
【0039】
さらに、本発明ではスチレン系重合体を添加してもよい。本発明でいうスチレン系重合体とは、ホモポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン−ゴム質重合体−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)等が挙げられる。スチレン系重合体を含むことで、本発明の課題を達成する他に、耐候性を向上することができる。スチレン系重合体の好ましい添加量としては、ポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルの合計100質量部に対し、50質量部未満の量である。これらスチレン系重合体の添加方法に特に制限はないが、ポリフェニレンエーテル成分と同時に添加されることが好ましい。
【0040】
本発明においては、エラストマーをさらに添加することができる。好ましいエラストマーとしては、少なくとも1個の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体が挙げられる。
本発明の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」とは、当該ブロックにおいて、少なくとも50質量%以上が芳香族ビニル化合物単位であることを指す。より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。また、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」に関しても同様で、少なくとも50質量%以上が共役ジエン化合物単位であることを指す。より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
【0041】
この場合、例えば芳香族ビニル化合物ブロック中にランダムに少量の共役ジエン化合物もしくは他の化合物が結合されているブロックの場合であっても、該ブロックの50質量%が芳香族ビニル化合物単位より形成されていれば、芳香族ビニル化合物を主体とするブロック共重合体とみなす。また、共役ジエン化合物の場合においても同様である。
芳香族ビニル化合物の具体例としてはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもスチレンが特に好ましい。
共役ジエン化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組み合わせが好ましい。
【0042】
ブロック共重合体の共役ジエン化合物ブロック部分のミクロ構造は1,2−ビニル含量もしくは1,2−ビニル含量と3,4−ビニル含量の合計量5〜80%が好ましく、さらには10〜50%が好ましく、15〜40%が最も好ましい。
本発明におけるブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック[A]と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック[B]が、A−B型、A−B−A型、A−B−A−B型から選ばれる結合形式を有するブロック共重合体である事が好ましく、これらの混合物であっても構わない。これらの中でもA−B型、A−B−A型、又はこれらの混合物がより好ましく、A−B−A型がもっとも好ましい。
【0043】
また、本発明で使用することのできる芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体は、水素添加されたブロック共重合体であることがより好ましい。水素添加されたブロック共重合体とは、上述の芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体を水素添加処理することにより、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの脂肪族二重結合の水素添加率を0を越えて100%の範囲で制御したものをいう。該水素添加されたブロック共重合体の好ましい水素添加率は80%以上であり、最も好ましくは98%以上である。
これらブロック共重合体は水素添加されていないブロック共重合体と水素添加されたブロック共重合体の混合物としても問題なく使用可能である。
【0044】
また、これら芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体は、本発明の趣旨に反しない限り、結合形式の異なるもの、芳香族ビニル化合物種の異なるもの、共役ジエン化合物種の異なるもの、1,2−結合ビニル含有量もしくは1,2−結合ビニル含有量と3,4−結合ビニル含有量の異なるもの、芳香族ビニル化合物成分含有量の異なるもの等を混合して用いても構わない。
また、本発明で使用するブロック共重合体は、全部又は一部が変性されたブロック共重合体であっても構わない。
ここでいう変性されたブロック共重合体とは、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物で変性されたブロック共重合体を指す。
【0045】
該変性されたブロック共重合体の製法としては、(1)ラジカル開始剤の存在下、非存在下でブロック共重合体の軟化点温度以上250℃以下の範囲の温度で変性化合物と溶融混練し反応させる方法、(2)ラジカル開始剤の存在下、非存在下でブロック共重合体の軟化点以下の温度で、ブロック共重合体と変性化合物を溶液中で反応させる方法、(3)ラジカル開始剤の存在下、非存在下でブロック共重合体の軟化点以下の温度で、ブロック共重合体と変性化合物を溶融させることなく反応させる方法等が挙げられ、これらいずれの方法でも構わないが、(1)の方法が好ましく、更には(1)の中でもラジカル開始剤存在下で行う方法が最も好ましい。
【0046】
ここでいう分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する少なくとも1種の変性化合物とは、変性されたポリフェニレンエーテルで述べた変性化合物と同じものが使用できる。
本発明におけるエラストマーの添加量としては、ポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルの合計量100質量部に対し、50質量部未満であることが好ましい。これらエラストマーの添加方法に特に制限はないが、ポリフェニレンエーテルと同時に添加されることが好ましい。
本発明においては、さらに難燃剤を添加することができる。難燃剤としては、ケイ素化合物、環状窒素化合物、あるいはリン系難燃剤が好ましい。
ケイ素化合物の例としては、例えば、シリコーン、籠状シルセスキオキサンまたはその部分開裂構造体、シリカ等が挙げられる。
【0047】
シリコーンは、オルガノシロキサンポリマーのことで、直鎖構造のもの、架橋構造のもの、あるいはそれらがある割合で構成された構造のものでもよく、又、単独あるいはそれらの混合物でもよい。難燃性、流動性の観点から、直鎖構造のものがより好ましい。また難燃性、耐衝撃性の観点から、分子内の末端基あるいは側鎖基として官能基を有するものが好ましい。官能基は特にエポキシ基、アミノ基が好ましい。具体的には例えば、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製のシリコーンオイル、変性シリコーンオイル、シリコーンパウダー、信越化学工業株式会社製のストレートシリコーンオイル、反応性シリコーンオイル、非反応性シリコーンオイル、シリコーンパウダーKMPシリーズなどを用いることができる。液体状、固体状いずれのものも用いることができる。液体状のものは、25℃における粘度が、10〜10,000(mm/s)が好ましく、100〜8,000(mm/s)がより好ましく、500〜3,000(mm/s)が特により好ましい。固体のものは、平均粒径が0.1〜100μmが好ましく、0.5〜30μmがより好ましく、0.5〜5μmが特により好ましい。このシリコーンは、ポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルの合計100質量部に対して、難燃効果の点から0.1質量部以上であり、また剛性低下の点から10質量部の割合で添加されていることが好ましく、0.3〜5質量部がさらに好ましく、0.5〜2質量部が特により好ましい。
【0048】
環状窒素化合物とは、窒素元素を含有する環状の有機化合物である。具体的にはメラミン誘導体である、メラミン、メレム、メロンが好ましく用いられる。中でも揮発性の観点から、メレム、メロンが好ましい。
リン系難燃剤としては、赤燐、リン酸エステル化合物、亜リン酸エステル化合物、フォスファゼン化合物等が挙げられる。これらの中で、難燃レベルと環境の観点から赤燐または有機リン化合物が好ましく、中でもリン酸エステル化合物がより好ましい。リン酸エステル化合物としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのモノ有機リン化合物や有機リン化合物オリゴマーが挙げられるが、有機リン化合物オリゴマーが特に好ましい。
有機リン化合物オリゴマーの特に好ましい例としては、下記式(2)で表される化合物群より選ばれるものを挙げることができる。
【0049】
【化8】

【0050】
(式中、Q、Q、Q、Qは、炭素数1から6のアルキル基または水素を表し、nは1以上の整数、m、m、m、mは0から3の整数を示し、Xは以下の式(3)のいずれかから選択される。)
【0051】
【化9】

【0052】
(式中、S、S、Sはメチル基または水素を表す。n、n、nは0から2の整数を示す。)
【0053】
具体的には、大八化学社製のCR−741、CR−747、CR−733Sなどが好適である。
これらのリン系難燃剤の添加量としては、ポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルの合計100質量部に対して、難燃性の点から0.1質量部以上であり、また耐熱性の点から10質量部以下の割合で添加されていることが好ましく、さらに好ましくは1〜8質量部、特により好ましくは3〜5質量部である。
【0054】
本発明では、上記した成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて付加的成分を添加しても構わない。
付加的成分の例を以下に挙げる。
無機充填材(ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、カオリン、マイカ、ゾノトライト等)、導電性付与材(導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ等)、可塑剤(オイル、低分子量ポリオレフィン、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)及び、帯電防止剤、各種過酸化物、硫化亜鉛、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤等である。
【0055】
本発明に使用する具体的な加工機械としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等が挙げられるが、中でも二軸押出機が好ましく、特に、上流側供給口と1カ所以上の下流側供給口を備えた二軸押出機が好ましい。
本発明の好ましい態様は、上流側供給口と下流側供給口を備え、下流側供給口の前に真空ベントを備えた二軸押出機を用い、上流側供給口よりポリフェニレンエーテルを供給して溶融させた後、真空ベントにより揮発分を除去し、下流側供給口より液晶ポリエステルを供給して溶融混練する方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
本発明でいうシートとは、厚みが0.001〜2.0mmのものであり、好ましくは0.005〜0.50mmであり、より好ましくは0.005〜0.20mmである。場合によってはフィルムと呼ばれることもある。
本発明の押出成形する工程とは、本発明の成分を押出シート成形機に直接投入し、ブレンドとシート成形を同時に実施する工程や、同時ではなく、得られた樹脂組成物を原料とし、押出シート成形する工程する工程が挙げられる。
押出成形の例としては、押出しチューブラー法、場合によってはインフレーション法とも呼ばれる方法が挙げられる。円筒から出てきたパリソンがすぐに冷却してしまわないように、50〜320℃の温度範囲の中から適宜選択して、パリソンの温度制御することがシート厚みを均一にし、層剥離のないシートを作成する上で極めて重要である。
【0057】
また、Tダイ押出成形をすることもできる。この場合、無延伸のままでもよいし、1軸延伸してもよいし、2軸延伸しても良い。シートの強度を高めたい場合は、延伸することにより達成することができる。
こうして本発明で得られた樹脂製シートは、耐熱性に優れ、外観に優れるため、これらの特性が要求される用途に好適に用いることができる。例えば、プリント基板材料、プリント基板周辺部品、プリント基板製造用剥離フィルム、半導体パッケージ、データ系磁気テープ、APS写真フィルム、フィルムコンデンサー、モーターやトランスなどの絶縁材料、スピーカー振動板、自動車用シートセンサー、ワイヤーケーブルの絶縁テープ、TABテープ、発電機スロットライナ層間絶縁材料、トナーアジテーター、リチウムイオン電池などの絶縁ワッシャー、などが挙げられる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例及び比較例により、更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例に示されたものに限定されるものではない。
(使用した原料)
(1)ポリフェニレンエーテル(以下、PPEと略記)
ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)
還元粘度:0.412dl/g、(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)
(2)液晶ポリエステル(以下、LCPと略記)
LCP−1:窒素雰囲気下において、p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、無水酢酸を仕込み、加熱溶融し、重縮合することにより、以下の理論構造式を有する液晶ポリエステルを得た。なお、組成の成分比はモル比を表す。
【0059】
【化10】

【0060】
LCP−2:窒素雰囲気下において、p−ヒドロキシ安息香酸、ポリエチレンテレフタレート、無水酢酸を仕込み、加熱溶融し、重縮合することにより、以下の理論構造式を有する液晶ポリエステルを得た。なお組成の成分比はモル比を表す。
【0061】
【化11】

【0062】
LCP−3:窒素雰囲気下において、p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、ハイドロキノン、テレフタル酸、無水酢酸を仕込み、加熱溶融し、重縮合することにより、以下の理論構造式を有する液晶ポリエステルを得た。なお組成の成分比はモル比を表す。
【0063】
【化12】

【0064】
(3)酸化亜鉛(以下、ZnOと略記)
商品名:銀嶺A(登録商標)(東邦亜鉛社製)
(4)シラン化合物
N−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]エチレンジアミン
商品名:KBM−602(登録商標)(信越化学工業社製)
(5)ヒンダードフェノール系安定剤
商品名:Irganox1330(登録商標)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
【0065】
(評価方法)
以下に、評価方法について述べる。
<シートの外観>
実施例および比較例のようにシート成形を行い、運転開始から、30分後、1時間後、2時間後でそれぞれ20×20mmのシートを3枚サンプリングし、表面を観察した。表面が平滑で、褐色の異物等の付着もないものを○、褐色の異物の付着などが見られたものを×とした。
<目やにの発生状況>
実施例および比較例のようにシート成形を行い、2時間運転し、目やにの発生状況を観察した。運転開始から30分までの間に目やにが発生したものを×、30分から1時間までの間に目やにが発生したものを△、1時間から2時間の間に目やにが発生したものを○、2時間後に発生していないものを◎とした。
<層剥離性>
実施例および比較例で得られたシートを、シートの流動方向に対して直角の方向に、はさみを用いて長さ30mmの切込みを入れ、その断面を目視で観察した。観察は10ヶ所について行い、全てにおいて層剥離が見られなかったものを○、1ヶ所以上3ヶ所未満で層剥離が見られたものを△、3ヶ所以上で層剥離が見られたものを×とした。
【0066】
[実施例1〜8および比較例1]
押出機上流側から1番目のバレルに上流側供給口、6番目のバレルに下流側供給口、5番目のバレルと10番目のバレルに真空ベントを有し、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=44(バレル数:11)の二軸押出機[ZSK−40:コペリオン社製(ドイツ)]を用いて、上流側供給口からダイまでを290℃に設定し、スクリュー回転数300rpm、吐出量60kg/hで、表1記載の割合となるように、上流側供給口よりPPE、ZnO、KBM−602、Irganox1330を供給し溶融混練した後、下流側供給口よりZnO、KBM−602、LCPを供給して、更に溶融混練し樹脂組成物ペレットを作製した。尚、このとき表1記載のように真空ベントより揮発分を除去した。得られた樹脂組成物を、乾燥機を用いて120℃で3時間乾燥し、シリンダーの温度300℃、Tダイス(幅:40cm、クリアランス:0.8mm)の温度305℃に設定したスクリュー径40mmの単軸押出機を用いて、スクリュー回転数40rpm、吐出量6kg/h、引き取り速度2.0m/minで押出しシート成形を行った。このときシートの厚みは約100μmであった。シート成形時に目やにについて評価し、得られたシートについて外観、層剥離性を評価した。物性値を組成と共に表1に併記した。
【0067】
[比較例2および3]
実施例1と同様の押出機を用い、同様の条件に設定して、表1記載の割合となるように、上流側供給口よりPPE、ZnO、KBM−602、Irganox1330、LCPを供給し溶融混練して、樹脂組成物ペレットを作製した。尚、このとき表1記載のように真空ベントより揮発分を除去した。得られた樹脂組成物を、実施例1と同様にしてシート成形を行った。シート成形時に目やにについて評価し、得られたシートについて外観、層剥離性を評価した。物性値を組成と共に表1に併記した。
【0068】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明で得られた樹脂製シートは、耐熱性に優れ、外観に優れるため、これらの特性が要求される用途に好適に用いることができ、とりわせ、電気・電子部品などに好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)(A)ポリフェニレンエーテルを溶融する工程、(ii)溶融された(A)から揮発分を除去する工程、ついで(iii)(B)液晶ポリエステルを添加し溶融混練する工程、(iv)工程(iii)から得られた樹脂組成物を押出成形する工程、を含む樹脂製シートの製造方法。
【請求項2】
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(A)成分が50〜99質量部、(B)成分が1〜50質量部である請求項1に記載の樹脂製シートの製造方法。
【請求項3】
(C)I価、II価、III価またはIV価の金属元素を含有する化合物を添加する請求項1または2に記載の樹脂製シートの製造方法。
【請求項4】
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(C)成分0.1〜10質量部を添加する請求項3に記載の樹脂製シートの製造方法。
【請求項5】
(C)が、(A)と同時に添加される請求項3または4に記載の樹脂製シートの製造方法。
【請求項6】
(C)の金属元素が、Zn元素、Mg元素、Ti元素、Sn元素、Sb元素、Al元素およびGe元素から選ばれる1種以上である請求項3〜5のいずれか1項に記載の樹脂製シートの製造方法。
【請求項7】
(C)が、酸化亜鉛、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、テトラブトキシチタネートおよびテトライソプロポキシチタネートから選ばれる1種以上である請求項3〜6のいずれか1項に記載の樹脂製シートの製造方法。
【請求項8】
(D)シラン化合物を添加する請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂製シートの製造方法。
【請求項9】
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(D)成分0.05〜5質量部を添加する請求項8に記載の樹脂製シートの製造方法。
【請求項10】
(D)が、(A)と同時に添加される請求項8または9に記載の樹脂製シートの製造方法。
【請求項11】
(D)が、アミノ基、ウレイド基、エポキシ基、イソシアネート基、およびメルカプト基から選ばれる1種以上の官能基を含有する請求項8〜10のいずれか1項に記載の樹脂製シートの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法で製造された樹脂製シート。

【公開番号】特開2007−217579(P2007−217579A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40313(P2006−40313)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】