説明

樹脂部品の製造方法及び樹脂部品同士の固定構造

【課題】光透明樹脂で形成された部品と光吸収樹脂で構成された部品の部品同士の固定部が見栄えを損なうことなく観視者に違和感を与えないような固定構造及びそのような部品の製造方法を提供することにある。
【解決手段】光吸収部材1と光透明部材11の夫々に、断面矩形の凹溝2、12と断面矩形の凸壁3、13を交互に1回以上繰り返し有する嵌合部を設けて嵌合部同士を嵌め合わせ、少なくとも光吸収部材1の各凹溝2の側面の底面側の領域を除いた領域と各凸壁3の上面全面とに金属蒸着膜が形成されると共に各凹溝2の側面の金属蒸着膜が形成されていない領域に光吸収部材1と光透明部材11との溶着接合部26a、26bを形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二種類の樹脂部品同士を互いに固定する固定構造及びその固定方法に関するものであり、詳しくは、光透明樹脂で形成された部品と光吸収樹脂で形成された部品の部品同士の固定構造及びその固定方法に関するものであり、例えば、車両用灯具におけるレンズ(光透明樹脂)とリフレクタ(光吸収樹脂)との固定、或いは、レンズ(光透明樹脂)とハウジング(光吸収樹脂)との固定等に用いられる。
【背景技術】
【0002】
そこで、具体的に車両用灯具の従来の、光透明樹脂からなるレンズ(インナーレンズ或いはアウターレンズ)と光吸収樹脂からなるハウジング(ランプハウジング)との固定構造を見てみると、アウターレンズとランプハウジングとで灯室を形成し、該灯室内にストップランプ、バックアップランプ及びターンシグナルランプの各領域を区画してテールランプを構成したものがある。
【0003】
そのうち、ストップランプの区画領域は図8のように、回路基板80に複数のLED81を実装してなるLED構体82がランプハウジング83に取り付けられ、アウターレンズ84とLED構体82との間に位置するインナーレンズ85が該インナーレンズ85の背面側に突出した脚部86の先端部に設けられたランスフック87を介してランプハウジング83に支持固定された構造となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−49232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記灯具を車両(例えば、エンジンルーム内)に設置した状態において、灯具のストップランプ領域を前方から観視すると、アウターレンズ84を通して見るインナーレンズ85の脚部86の部分に、ランスフック87が位置するエンジンルーム内の暗部が脚部86を通して映し出され、見栄えを損なうものとなって観視者に違和感を与えることになる。
【0006】
そこで、本発明は上記問題に鑑みて創案なされたもので、その目的とするところは、光透明樹脂で形成された部品(例えば、車両用灯具におけるレンズ)と光吸収樹脂で形成された部品(例えば、車両用灯具におけるハウジング)の部品同士の固定部が見栄えを損なうことなく観視者に違和感を与えないような固定構造及びそのような部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載された発明は、複数の部品同士を固定して製造される樹脂部品の製造方法であり、レーザ光に対して吸収性を有する光吸収樹脂で形成され、断面矩形の凹溝と断面矩形の凸壁を交互に1回以上繰り返し設けてなる光吸収部材を準備する工程と、少なくとも、前記各凹溝の対向する側面の底面側の領域を除いた領域と、前記凸壁の上面全面とに金属蒸着膜を形成する工程と、レーザ光に対して透過性を有する光透明樹脂で形成され、断面矩形の凹溝と断面矩形の凸壁を交互に1回以上繰り返し設けてなる光透明部材を準備する工程と、前記光吸収部材の各凸壁を前記光透明部材の各凹溝に嵌合すると共に前記光透明部材の各凸壁を前記光吸収部材の各凹溝に嵌合して嵌め合わせ部を構成する工程と、前記嵌め合わせ部に互いに対向する側に向かう力を加えた状態で、前記嵌め合わせ部の前記光透明部材側から前記光吸収部材の凹溝に向けてレーザ光を照射し、前記光透明部材を透過して前記凹溝の底面の金属蒸着膜で反射されたレーザ光が、前記凹溝側面の底面側の金属蒸着膜が形成されないで光吸収部材が露出した領域に照射されて吸収され、その光吸収による発熱領域に位置する前記光吸収部材と前記光透明部材とが溶着される工程と、を有することを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の請求項2に記載された発明は、請求項1において、前記光吸収部材の各凹溝は、その深さが幅の2倍によりも1mm以上深いことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の請求項3に記載された発明は、請求項1又は請求項2のいずれかにおいて、前記嵌め合わせ部の前記光吸収部材の凹溝と前記光透明部材の凸壁との隙間、及び前記光透明部材の凹溝と前記光吸収部材の凸壁との隙間はいずれも2mm以下であることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の請求項4に記載された発明は、レーザ光に対して吸収性を有する光吸収樹脂で形成され、断面矩形の凹溝と断面矩形の凸壁を交互に1回以上繰り返し設けてなる光吸収部材と、レーザ光に対して透過性を有する光透明樹脂で形成され、断面矩形の凹溝と断面矩形の凸壁を交互に1回以上繰り返し設けてなる光透明部材とが、前記光吸収部材の各凸壁を前記光透明部材の各凹溝に嵌合すると共に前記光透明部材の各凸壁を前記光吸収部材の各凹溝に嵌合して嵌め合わせ部が形成されており、少なくとも前記光吸収部材の各凹溝の対向する側面の底面側の領域を除いた領域と各凸壁の上面全面とに金属蒸着膜が形成されていると共に前記光吸収部材の各凹溝の対向する側面の底面側の領域には前記光吸収部材が露出しており、前記光吸収部材の露出部と該露出部に接する前記光透明部材の部分が溶着固定されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の請求項5に記載された発明は、請求項4において、前記光吸収部材の各凹溝は、その深さが幅の2倍によりも1mm以上深いことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の請求項6に記載された発明は、請求項4又は請求項5のいずれかにおいて、前記嵌め合わせ部の前記光吸収部材の凹溝と前記光透明部材の凸壁との隙間、及び前記光透明部材の凹溝と前記光吸収部材の凸壁との隙間はいずれも2mm以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、光吸収部材と光透明部材の夫々に、断面矩形の凹溝と断面矩形の凸壁を交互に1回以上繰り返し有する嵌合部を設けて嵌合部同士を嵌め合わせ、少なくとも光吸収部材の各凹溝の側面の底面側の領域を除いた領域と各凸壁の上面全面とに金属蒸着膜を形成すると共に各凹溝の側面の金属蒸着膜が形成されていない領域で光吸収部材と光透明部材とを溶着固定するようにした。
【0014】
その結果、光吸収部材と光透明部材との嵌め合わせ部を光透明部材側から観視すると、その方向から光透明部材を通して見える光吸収部材の各凹溝の底面及び各凸壁の上面には全面に亘って金属蒸着膜が形成されており、嵌め合わせ部の全面に金属蒸着膜が形成されているように見える。
【0015】
したがって、更に、光吸収部材の嵌め合わせ部を除いた部分の、光透明部材に対向する側の面にも金属蒸着膜を形成すると、光透明部材を通して見た見え方が、光吸収部材の光透明部材に対向する側の面の全面にアルミニウム蒸着膜が形成された状態として視認され、嵌め合わせ部が特別な見え方をすることはない。そのため、嵌め合わせ部によって見栄えが損なわれることがなく、観視者に違和感を与えることのない商品性の高い溶着固定構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の製造工程に係わる説明図である。
【図2】同じく、本発明の製造工程に係わる説明図である。
【図3】同じく、本発明の製造工程に係わる説明図である。
【図4】同じく、本発明の製造工程に係わる説明図である。
【図5】同じく本発明の製造工程に係わる説明図である。
【図6】本発明の製造工程を経た完成品の説明図である。
【図7】同じく、本発明の製造工程を経た完成品の説明図である。
【図8】従来例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の好適な実施形態を図1〜図7を参照しながら、詳細に説明する(同一部分については同じ符号を付す)。尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限られるものではない。
【0018】
図1〜図5は、レーザ光に対して透過性を有する光透明樹脂で形成された部品とレーザ光に対して吸収性を有する光吸収樹脂で形成された部品の部品同士の固定方法に係わる基本工程を示したものである。
【0019】
この場合、光透明樹脂及び光吸収樹脂の夫々の種類には種々のものが考えられ、光透明樹脂で形成される部品及び光吸収樹脂で形成される部品の夫々の種類も多岐に亘る。
【0020】
そこで、本実施形態においては、車両用灯具を想定し、光透明樹脂をPMMA(ポリメチルメタアクリレート)とし、光吸収樹脂をASA(アクリロニトリルスチレンアクリレート)とし、PMMA樹脂で形成される部品をインナーレンズとし、ASA樹脂で形成される部品をリフレクタとする設定を行った。
【0021】
まず、図1の光吸収部材の準備工程において、レーザ光に対して吸収性を有する光吸収樹脂で形成され、断面矩形の凹溝2と断面矩形の凸壁3を交互に1回以上繰り返す第1嵌合部4を所定の幅及び所定の長さに亘って形成した光吸収部材1を準備する。このとき、凸壁3の高さ(凹溝2の深さ)H1を3mm、凸壁3及び凹溝2の夫々の長さD1を共に3mmとし、凸壁3の幅Wa及び凹溝2の幅Waを共に1mmとする。したがって、凹溝2と凸壁3の繰り返しピッチPは2mmとなる。
【0022】
次に、図2の蒸着工程において、真空中において、所定の位置に複数(図では3つを記載)の蒸着源(アルミニウムの線材)20a、20b、20cをコイル状のフィラメント21a、21b、21cに保持させて配置すると共に、対向する位置に第1嵌合部4が蒸着源側を向くように光吸収部材1を配置する。このとき、第1嵌合部4から直上近傍に位置する蒸発源20aまでの距離は100mm以上に設定されている。
【0023】
そして、フィラメント21a、21b、21cの夫々を通電加熱して蒸発源のアルミニウム20a、20b、20cを蒸発させ、蒸発したアルミニウムを光吸収部材1の基台部5(図1参照)の表面、第1嵌合部4の凸壁3の上面及び凹溝2の内面(正確には内面の一部)に蒸着させてアルミニウム蒸着膜を形成する。
【0024】
このとき、蒸発源20a、20b、20cの夫々から第1嵌合部4までの距離(100mm以上)に対して凹溝2の幅(1mm)が極めて狭く、更に、凹溝2の幅(1mm)に対して深さ(3mm)が大幅に深くなっている。そのため、凹溝2の内面に対するアルミニウム蒸着膜の形成過程を観察すると、凹溝2の直上近傍に配置された蒸発源20aからのアルミニウム蒸気は、該アルミニウム蒸気が大きい仰角で飛着する凹溝2の底面2aに堆積して第1のアルミニウム蒸着膜6aを形成し、凹溝2の一方の斜め方向に配置された蒸発源20bからのアルミニウム蒸気は、該アルミニウム蒸気が大きい仰角で且つ手前の凸壁3で遮られることなく飛着する凹溝2の第1の側面2bの上部領域(底面2aと反対の開口側)に堆積して第2のアルミニウム蒸着膜6bを形成し、凹溝2の他方の斜め方向に配置された蒸発源20cからのアルミニウム蒸気は、該アルミニウム蒸気が大きい仰角で且つ手前の凸壁3で遮られることなく飛着する凹溝2の第2の側面2cの上部領域(底面2aと反対の開口側)に堆積して第3のアルミニウム蒸着膜6cを形成する。
【0025】
そのため、各凹溝2は、内面全面にアルミニウム蒸着膜が形成されるのではなく、第1の側面2b及び第2の側面2cの両側面とも、下部領域(底面2a側)にアルミニウム蒸着膜が形成されないで光吸収部材1がそのまま露出した部分7a、7bを有している。
【0026】
なお、第1嵌合部4の凸壁3の上面3aには、全面に亘って第4のアルミニウム蒸着膜6dが形成されている。
【0027】
次に、図3の光透明部材の準備工程において、レーザ光に対して透過性を有する光透明樹脂で形成され、断面矩形の凹溝12と断面矩形の凸壁13を交互に1回以上繰り返す第2嵌合部14を所定の幅及び所定の長さに亘って形成した光透明部材11を準備する。このとき、凸壁13の高さ(凹溝12の深さ)H2を3mm、凸壁13及び凹溝12の夫々の長さD2を共に3mmとし、凸壁13の幅をWbとし凹溝12の幅をWbとすると、Wb=0.9mm、Wb=1.1mmとする。凹溝12と凸壁13の繰り返しピッチPは光吸収部材1の第1嵌合部4と同様に2mmとなる。
【0028】
次に、図4の嵌合工程において、光吸収部材1の第1嵌合部4の凸壁3を光透明部材11の第2嵌合部14の凹溝12に嵌合すると共に光透明部材11の第2嵌合部14の凸壁13を光吸収部材1の第1嵌合部4の凹溝2に嵌合して、光吸収部材1の第1嵌合部4と光透明部材11の第2嵌合部14とを嵌め合わせる。この嵌め合わせ状態では、互いの凸壁3と凹溝12同士及び凸壁13と凹溝2同士の隙間は0.1mmとなっている。
【0029】
次に、図5の溶着工程において、第1嵌合部4と第2嵌合部14との嵌め合わせを介して光吸収部材1と光透明部材11とを対向させた状態を保持しながら光透明部材11に光吸収部材1側に向かう力を加え、第1嵌合部4と第2嵌合部14との嵌め合わせ部15に0.5MPa程度の圧力を印加する。
【0030】
そして、圧力が印加された状態の嵌め合わせ部15に対して、光透明部材11側から光吸収部材1の第1嵌合部4の各凹溝2の底面2aに向けてレーザ光を照射する。レーザは波長が1060〜1070nm、スポット径が3mmφ、熱量が3.8J/mmのファイバーレーザであり、各凹溝2に対するレーザ光の照射方向は、該各凹溝2の中心軸X方向ではなく、中心軸Xに対して凹溝2の幅方向の夫々の方向に所定の角度(α)だけ傾いた2つの方向となっている。各凹溝2に対するレーザ光の2方向からの照射は、同時に行ってもよいし、別個に行ってもよい。
【0031】
なお、レーザはファイバーレーザに限られるものではなく、YAGレーザや半導体レーザ等の他の種類のレーザを用いることも可能である。
【0032】
そこで、光透明部材11側の一方の方向から凹溝2の底面2aに向けて照射されたレーザ光25aは、光透明部材11に入射して前記凹溝2に嵌合された凸壁13内を導光され、先端面から出射して凹溝2の底面2aに向けて照射される。このとき、凹部2の底面2aには第1のアルミニウム蒸着膜6aによる鏡面反射面が形成されており、第1のアルミニウム蒸着膜6aに照射されたレーザ光25aは第1のアルミニウム蒸着膜6aに対する入射角と同一角度の反射角で反射して再度光透明部材11の凸壁部13に入射し、凸壁部13内を導光されて凹溝2の第1の側面2bの底面2a側領域に向かって再度出射される。
【0033】
このとき、凹溝2の第1の側面2bの底面2a側領域は光吸収部材1が露出した部分7aとなっており、レーザ光はこの露出部7aに照射される。すると、この露出部7aはレーザ光を吸収して発熱し溶融すると同時に、該溶融部の熱膨張及び溶融部に対する加圧(嵌め合わせ部15に対する加圧に基づく)とによって対峙する光透明部材11の凸壁部13に向かう圧力を生じ、凸壁部13の前記溶融部と対峙する部分に熱と圧力が加えられてその部分を溶融すると共に溶融した露出部7aとの間で溶着接合部26aを形成する。
【0034】
一方、光透明部材11側の他方の方向から凹溝2の底面2aに向けて照射されたレーザ光25bは、上記、光透明部材11側の一方の方向から凹溝2の底面2aに向けて照射されたレーザ光25aが、光吸収部材1の凹溝2の第1の側面2bの光吸収部材露出部7aと、光透明部材11の凸壁部13の該光吸収部材露出部7aと対峙する部分との溶着接合部26aを形成するのと同様の作用によって、光吸収部材1の凹溝2の第2の側面2cの光吸収部材露出部7bと、光透明部材11の凸壁部13の該光吸収部材露出部7bと対峙する部分との溶着接合部26bを形成する。したがって、レーザ光25bによる溶着接合部26bの形成については説明を省略する。
【0035】
以上、上記図1から図5に示す工程を経て実現した、樹脂部品同士の固定構造は、図6のように、レーザ光に対して吸収性を有する光吸収樹脂で形成され、断面矩形の凹溝2と断面矩形の凸壁3を交互に1回以上繰り返し設けてなる光吸収部材1と、レーザ光に対して透過性を有する光透明樹脂で形成され、断面矩形の凹溝12と断面矩形の凸壁を交互に1回以上繰り返し設けてなる光透明部材11とが、光吸収部材1の各凸壁3を光透明部材11の各凹溝12に嵌合すると共に光透明部材11の各凸壁13を光吸収部材1の各凹溝2に嵌合して嵌め合わせ部15が形成されている。
【0036】
そして、少なくとも、光吸収部材1の各凹溝2の対向する側面2b、2cの底面2a側の領域を除いた領域と各凸壁3の上面全面とにアルミニウムからなる金属蒸着膜6b、6c、6aが形成されている。つまり、光吸収部材1の各凹溝2の対向する側面2b、2cの底面側の領域にはアルミニウム蒸着膜が形成されておらず、光吸収部材が露出した状態となっている。
【0037】
そして、光吸収部材1の前記露出部分と11光透明部材の前記光吸収部材露出部に接する部分とが互いに溶着されて溶着接合部26a、26bが形成されている。
【0038】
その結果、図7のように、この光吸収部材1と光透明部材11との嵌め合わせ部15を光透明部材11側から観視すると、その方向から光透明部材11を通して見える光吸収部材1の各凹溝2の底面及び各凸壁の上面には全面に亘ってアルミニウム蒸着膜(第1のアルミニウム膜6a及び第4のアルミニウム膜6d)6が形成されており、嵌め合わせ部15の全面にアルミニウム蒸着膜が形成されているように見える。したがって、光吸収部材1の嵌め合わせ部15を除いた部分(基台部5)の、光透明部材11に対向する側の面にもアルミニウム蒸着膜6を形成すると、光透明部材11を通して見た見え方が、光吸収部材1の光透明部材11に対向する側の面の全面にアルミニウム蒸着膜6が形成された状態として視認され、嵌め合わせ部15が特別な見え方をすることはない。
【0039】
そこで、上述したように、光吸収部材1を車両用灯具を構成するインナーレンズと想定し、光透明部材11を同様に車両用灯具を構成するリフレクタと想定すると、インナーレンズとリフレクタとの支持固定部となる嵌め合わせ部15がインナーレンズ側から観視したときに特別な見え方をすることがなくその部分が見栄えを損なうことはない。その結果、観視者に違和感を与えることのない商品性の高いものとなる。
【0040】
ところで、以上のような過程を経て形成された溶着接合部の接合強度(引張強度)は、79.9Kgf/cmを有し、車両用灯具として信頼性を確保するためには十分の強度である。
【0041】
なお、光吸収部材1の凹溝2の幅と該凹溝2に嵌合する光透明部材11の凸壁13との隙間は0.2mm以下であることが好ましい。この隙間を0.1mmとした上記実施形態では引張強度が79.9Kgf/cmであったが、隙間を0.2mmとした実験では引張強度は80.4Kgf/cmであった。したがって、隙間が0.1mmのときと0.2mmのときでは引張強度にほとんど差がなかった。但し、隙間が0.3mm以上になると、光吸収部材1の凹溝2と該凹溝2に嵌合した光透明部材11の凸壁13との溶着ができなかった。
【0042】
また、レーザ光照射による光吸収部材1の第1嵌合部4と光透明部材11の第2嵌合部14との溶着工程では、第1嵌合部4と第2嵌合部14との嵌め合わせ部15に圧力を加えた状態で溶着を行うようにした。これは、加圧した状態で溶着することにより、加圧しない状態で溶着するよりも強固な溶着固定を得ることができるためである。したがって、加圧しない状態での溶着も可能である。
【符号の説明】
【0043】
1… 光吸収部材
2… 凹溝
2a… 底面
2b… 第1の側面
2c… 第2の側面
3… 凸壁
3a… 上面
4… 第1嵌合部
5… 基台部
6… アルミニウム蒸着膜
6a… 第1のアルミニウム蒸着膜
6b… 第2のアルミニウム蒸着膜
6c… 第3のアルミニウム蒸着膜
6d… 第4のアルミニウム蒸着膜
7a、7b… 光吸収部材露出部
11… 光透明部材
12… 凹溝
13… 凸壁
14… 第2嵌合部
15… 嵌め合わせ部
20… 蒸発源
20a〜20c… 蒸発源
21a〜21c… コイルフィラメント
25a… レーザ光
25b… レーザ光
26a、26b… 溶着接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品同士を固定して製造される樹脂部品の製造方法であり、
レーザ光に対して吸収性を有する光吸収樹脂で形成され、断面矩形の凹溝と断面矩形の凸壁を交互に1回以上繰り返し設けてなる光吸収部材を準備する工程と、
少なくとも、前記各凹溝の対向する側面の底面側の領域を除いた領域と、前記凸壁の上面全面とに金属蒸着膜を形成する工程と、
レーザ光に対して透過性を有する光透明樹脂で形成され、断面矩形の凹溝と断面矩形の凸壁を交互に1回以上繰り返し設けてなる光透明部材を準備する工程と、
前記光吸収部材の各凸壁を前記光透明部材の各凹溝に嵌合すると共に前記光透明部材の各凸壁を前記光吸収部材の各凹溝に嵌合して嵌め合わせ部を構成する工程と、
前記嵌め合わせ部に互いに対向する側に向かう力を加えた状態で、前記嵌め合わせ部の前記光透明部材側から前記光吸収部材の凹溝に向けてレーザ光を照射し、前記光透明部材を透過して前記凹溝の底面の金属蒸着膜で反射されたレーザ光が、前記凹溝側面の底面側の金属蒸着膜が形成されないで光吸収部材が露出した領域に照射されて吸収され、その光吸収による発熱領域に位置する前記光吸収部材と前記光透明部材とが溶着される工程と、を有することを特徴とする樹脂部品の製造方法。
【請求項2】
前記光吸収部材の各凹溝は、その深さが幅の2倍によりも1mm以上深いことを特徴とする請求項1に記載の樹脂部品の製造方法。
【請求項3】
前記嵌め合わせ部の前記光吸収部材の凹溝と前記光透明部材の凸壁との隙間、及び前記光透明部材の凹溝と前記光吸収部材の凸壁との隙間はいずれも2mm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の樹脂部品の製造方法。
【請求項4】
レーザ光に対して吸収性を有する光吸収樹脂で形成され、断面矩形の凹溝と断面矩形の凸壁を交互に1回以上繰り返し設けてなる光吸収部材と、レーザ光に対して透過性を有する光透明樹脂で形成され、断面矩形の凹溝と断面矩形の凸壁を交互に1回以上繰り返し設けてなる光透明部材とが、前記光吸収部材の各凸壁を前記光透明部材の各凹溝に嵌合すると共に前記光透明部材の各凸壁を前記光吸収部材の各凹溝に嵌合して嵌め合わせ部が形成されており、少なくとも前記光吸収部材の各凹溝の対向する側面の底面側の領域を除いた領域と各凸壁の上面全面とに金属蒸着膜が形成されていると共に前記光吸収部材の各凹溝の対向する側面の底面側の領域には前記光吸収部材が露出しており、前記光吸収部材の露出部と該露出部に接する前記光透明部材の部分が溶着固定されていることを特徴とする樹脂部品同士の固定構造。
【請求項5】
前記光吸収部材の各凹溝は、その深さが幅の2倍によりも1mm以上深いことを特徴とする請求項4に記載の樹脂部品同士の固定構造。
【請求項6】
前記嵌め合わせ部の前記光吸収部材の凹溝と前記光透明部材の凸壁との隙間、及び前記光透明部材の凹溝と前記光吸収部材の凸壁との隙間はいずれも2mm以下であることを特徴とする請求項4又は請求項5のいずれかに記載の樹脂部品同士の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−187897(P2012−187897A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55300(P2011−55300)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】