説明

機器モニタリング装置および方法

【課題】長期にわたりセンサの保守作業を行うことなく、そのセンサの故障などの異常を設置状態で確認することができる機器モニタリング装置を提供する。
【解決手段】検出対象となる機器1の状態を監視する監視手段7と、監視手段7に模擬信号を付与する模擬信号付与手段14と、監視手段7に付与した模擬信号に基づいて監視手段7の監視結果の健全性を確認する評価手段12とを備え、監視手段12は、機器1に取り付けられ、機器1の物理量を計測するセンサ2と、センサ2の信号を処理する信号処理手段3と、信号処理手段3による信号処理結果の信号を無線で送信する無線送信手段4とを有し、模擬信号付与手段14は、エネルギーを送信するエネルギー送信手段10と、その送信された量のエネルギーを得て、そのエネルギーをセンサ2の計測対象である物理量に変換してセンサ2に付与するエネルギー付与手段8と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力プラントなどのプラントを構成する機器の状態監視に用いられる機器モニタリング装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、原子力プラントなどのプラントを構成する機器の状態監視には、機器モニタリングシステムが適用され始めている。例えば、特許文献1に記載された技術では、広範囲のセンサのデータを一括処理し、各振動センサから同期したデータを収集し、移動体を監視対象からの除外し、オフラインでの振動監視範囲を限定し、任意の時刻に任意の振動センサのデータを収集することにより、広範囲で多点の振動を監視し、検出データの相関関係から、振動の伝達経路や異常発生場所の特定などの異常原因を推定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4257305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1を含む従来の機器モニタリング装置は、プラントへの設置前には、モニタリング性能を測定し、その性能を確認した後に、プラント内に設置される。そして、プラントの定期検査時には、それらのセンサの校正を行うため、センサを一時的に取り外して、別の場所で校正する必要がある。
【0005】
しかしながら、今後、定期検査期間の短縮や、稼動率の向上のために定期検査間の運転期間の長期化が図られていく傾向にあり、これらセンサの校正または健全性の確認を設置された状況で確認できることが望まれている。
【0006】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、長期にわたりセンサの保守作業を行うことなく、そのセンサの故障などの異常を設置状態で確認することができる機器モニタリング装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る機器モニタリング装置は、検出対象となる機器の状態を監視する監視手段と、前記監視手段に模擬信号を付与する模擬信号付与手段と、前記監視手段に付与した模擬信号に基づいて前記監視手段の監視結果の健全性を確認する評価手段と、を備え、前記監視手段は、前記機器に取り付けられ、前記機器の物理量を計測するセンサと、前記センサの信号を処理する信号処理手段と、前記信号処理手段による信号処理結果の信号を無線で送信する無線送信手段と、を有し、前記模擬信号付与手段は、エネルギーを送信するエネルギー送信手段と、前記送信された量のエネルギーを得て、そのエネルギーを前記センサの計測対象である物理量に変換して前記センサに付与するエネルギー付与手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る機器モニタリング装置は、検出対象となる機器の状態を監視する監視手段と、検出対象となる機器の状態をモニタリングするモニタリング手段と、前記監視手段の監視結果と前記モニタリング手段のモニタリング結果とを比較して前記監視手段の監視結果の健全性を確認する比較手段と、を備え、前記監視手段は、前記機器に取り付けられ、前記機器の物理量を計測する第1センサと、前記第1センサの信号を処理する信号処理手段と、前記信号処理手段による信号処理結果の信号を無線で送信する無線送信手段と、を有し、前記モニタリング手段は、前記機器に前記第1センサとは別に取り付けられ、前記機器の物理量を計測する第2センサと、前記第2センサの計測した物理量に基づいて、前記機器の前記第2センサで計測できない位置の前記物理量をシミュレーションにより算出する物理量推定手段と、を有し、通常時には、前記物理量推定手段の算出結果を正として前記比較手段が前記第1センサの信号と前記物理量推定手段の算出結果を比較し、前記第1センサの健全性を確認する一方、異常時には、前記物理量推定手段の算出結果を前記第1センサの出力に基づいて補正することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る機器モニタリング方法は、検出対象となる機器の状態を監視手段により監視する監視ステップと、前記監視手段に模擬信号を付与する模擬信号付与ステップと、前記付与した模擬信号に基づいて前記監視ステップの監視結果の健全性を確認する評価ステップと、を備え、前記監視ステップは、前記機器の物理量を計測するセンサの信号を処理する信号処理ステップと、前記信号処理ステップによる信号処理結果の信号を無線で送信する無線送信ステップと、を有し、前記模擬信号付与ステップは、エネルギーを送信するエネルギー送信ステップと、前記送信された量のエネルギーを得て、そのエネルギーを前記センサの計測対象である物理量に変換して前記センサに付与するエネルギー付与ステップと、を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る機器モニタリング方法は、検出対象となる機器の状態を監視手段により監視する監視ステップと、検出対象となる機器の状態をモニタリング手段によりモニタリングするモニタリングステップと、前記監視ステップの監視結果と前記モニタリングステップのモニタリング結果とを比較して前記監視ステップの監視結果の健全性を確認する比較ステップと、を備え、前記監視ステップは、前記機器の物理量を計測する第1センサの信号を処理する信号処理ステップと、前記信号処理ステップによる信号処理結果の信号を無線で送信する無線送信ステップと、を有し、前記モニタリングステップは、前記第1センサとは別に前記機器の物理量を計測する第2センサの物理量をシミュレーションにより算出する物理量推定ステップと、を有し、通常時には、前記物理量推定ステップの算出結果を正として、前記第1センサの信号と前記物理量推定ステップの算出結果を比較し、前記第1センサの健全性を確認する一方、異常時には、前記物理量推定ステップの算出結果を前記第1センサの出力に基づいて補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、長期にわたりセンサの保守作業を行うことなく、そのセンサの故障などの異常を設置状態で確認することができるため、センサの健全性を容易に確認することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る機器モニタリング装置の第1実施形態を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態においてLEDランプからのエネルギーを蓄電せずに圧電素子に供給して圧電センサの健全性を評価する第1の評価方法を示すフローチャートである。
【図3】第1実施形態においてエネルギー蓄電部で所定のエネルギーが一つだけ設定されて圧電センサの健全性を評価する第2の評価方法を示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態においてエネルギー蓄電部で所定レベルのエネルギーが周波数に応じて複数設定されて圧電センサの健全性を評価する第3の評価方法を示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態において配管が振動しているときに差分処理を用いて圧電センサの健全性を評価する第4の評価方法を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態において配管が振動しているときに異なるレベルで圧電素子を駆動し、差分処理を用いて圧電センサの健全性を評価する第5の評価方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係る機器モニタリング装置の第2実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る機器モニタリング装置の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態では、圧電センサを用いて機器である配管の振動を監視する例について説明する。また、以下の各実施形態では、圧電センサの健全性とは、圧電センサが故障することなく、正常に作動していることであり、圧電センサの校正とは、圧電センサの信号レベルでの誤差の有無の確認をいう。
【0014】
(第1実施形態)
図1は本発明に係る機器モニタリング装置の第1実施形態を示すブロック図である。なお、図1では、一つの圧電センサ2を示しているが、実際は多数設置されている。これは図7も同様である。
【0015】
図1に示すように、検出対象の機器である配管1の外周面には、その配管1の物理量として振動を計測するための圧電センサ2が取り付けられている。この圧電センサ2以外の振動センサとしては、その他の振り子式やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械システム)を用いたものなどでもよい。
【0016】
圧電センサ2の出力は、振動監視用の信号処理手段としての信号処理装置3に入力される。この信号処理装置3では、配管1の振動最大値の算出処理、周波数の算出処理、またはその波形や履歴データのメモリへの保存処理などの各種処理が行われる。
【0017】
なお、信号処理装置3において信号処理に必要な作動エネルギーは、例えば図示しない電池のエネルギーを用いるか、または圧電センサ2の信号を信号処理の作動エネルギーとして用いる場合や、あるいは周辺の振動や温度、または光や音のエネルギーから作動エネルギーを吸収して用いるようにすることが可能である。
【0018】
信号処理装置3の信号処理結果は、無線送受信部4から電波5によってモニタリング情報を収集するための信号送受信部6に送信される。これら圧電センサ2、信号処理装置3、無線送受信部4、および信号送受信部6は、監視手段としての監視装置7を構成する。
【0019】
また、圧電センサ2の上面には、エネルギー付与手段としての振動発生用の圧電素子8が貼り付けられ、この圧電素子8は、エネルギー受信手段としての光受信部9に電気的に接続されている。この光受信部9は、圧電素子8を励起するためのエネルギーを後述するLEDランプから受信する。
【0020】
一方、モニタリング情報を収集する側には、上記信号送受信部6の他、エネルギー送信手段としてのLEDランプ10と、LEDランプ制御部11と、このLEDランプ制御部11に電気的に接続された評価手段としての評価部12と、が設置されている。このLEDランプ制御部11は、LEDランプ10の励起周期、励起強度などを制御する。
【0021】
LEDランプ制御部11で制御されたLEDランプ10の励起周期、励起強度は、信号送受信部6で受信した信号レベルに対応している。そのため、信号送受信部6で受信した信号レベルを評価部12にて評価することで、圧電センサ2の健全性の評価が可能となる。ここで、LEDランプ制御部11は、圧電センサ2を駆動させるための模擬信号を送信することを予め評価部12に通知している。
【0022】
なお、エネルギー送信手段としては、上記LEDランプ10の光エネルギーの他、マイクロ波や電波、蛍光灯などの光や、音なども利用可能である。また、この光エネルギーの伝送効率によって、圧電素子8を励起する電気エネルギーが異なってくることから、光受信部9には、電気エネルギーを一定レベルまで蓄電して圧電素子8に放電するエネルギー蓄積手段としてのエネルギー蓄電部13が設けられている。このエネルギー蓄電部13は、LEDランプ10からの光エネルギーの供給周期や周波数に応じて蓄電レベルを変更可能な回路を備えることにより、蓄電レベルを複数のレベルで設定することができる。その結果、複数のレベルでの圧電センサ2の健全性の評価が可能となる。
【0023】
これら圧電素子8、エネルギー蓄電部13を備える光受信部9、LEDランプ10、およびLEDランプ制御部11は、模擬信号付与手段としての模擬信号付与部14を構成する。
【0024】
なお、無線送受信部4からの無線による情報伝送の周期は、エネルギー蓄電部13のエネルギー蓄電量によりLEDランプ10からのエネルギー発信周期に基づいて設定される。そして、無線送受信部4は、信号処理装置3内部のメモリに保存していた履歴データを伝送する場合や、連続的に振動の周期に応じて最適な伝送間隔で伝送する場合もある。
【0025】
このように構成された本実施形態の機器モニタリング装置においては、圧電センサ2からの信号の健全性を、圧電素子8から与えた模擬信号により確認することができる。もし、想定された範囲内の信号が得られなかった場合は、校正手段としての機能も有する模擬信号付与部14も含め、モニタリングが正常でないことが判明し、その場合には、その圧電センサを機器監視のセンサネットワークから除外してモニタリングを行うこととなる。
【0026】
また、本実施形態では、LEDランプ10からのエネルギーを蓄電するエネルギー蓄電部13を設けたことにより、周囲の環境によりエネルギーの圧電センサ2への供給効率が異なる影響を未然に防止することができる。
【0027】
次に、圧電センサの健全性を評価するための各種の工程について説明する。
【0028】
図2は、第1実施形態においてLEDランプ10からのエネルギーを蓄電せずに圧電素子8に供給して圧電センサ2の健全性を評価する第1の評価方法を示すフローチャートである。すなわち、第1の評価方法は、LEDランプ10からのエネルギーをエネルギー蓄電部13で蓄電せずに光受信部9を経て圧電素子8に供給する場合を示している。なお、以下に説明する第1〜第3の評価方法は、検出対象である配管1内に流体が流れておらず、配管1が振動していない場合を前提条件としている。
【0029】
図2に示すように、ステップS1では、LEDランプ制御部11がLEDランプ10を所定の周波数などで発光させるように制御するとともに、圧電センサ2を駆動させる模擬信号を送信することをLEDランプ制御部11が評価部12に通知する。
【0030】
ステップS2では、光受信部9がLEDランプ10の光を電気エネルギーに変換し、圧電素子8に出力する。
【0031】
ステップS3では、圧電素子8が光受信部9から得られた電気エネルギーにより励起され、圧電センサ2の出力を信号処理装置3に入力する。
【0032】
ステップS4では、信号処理装置3が圧電センサ2の出力を信号処理し、その信号を無線送受信部4から電波5によって信号送受信部6を経由して評価部12に送信する。
【0033】
ステップS5では、評価部12は圧電センサ2の出力が、圧電素子8からの入力に応じた適正な値か否かを判断し、圧電センサ2の健全性を評価する。具体的には、圧電センサ8からの入力による圧電センサ2の出力は、LEDランプ10から光受信部9に送信したエネルギーから分かる。したがって、評価部12はLEDランプ10から送信したエネルギーと信号送受信部6から受信した圧電センサ2の出力信号の大きさから、圧電センサ2の健全性を評価することができる。また、圧電センサ2の出力信号に対して校正を行うことも可能である。これら一連のステップを経て圧電センサ2の健全性を容易に評価することができる。仮に、圧電センサ2の出力が健全でない場合は、上述したように模擬信号付与部14も含めてモニタリングが正常でないことが判明し、その場合には、その圧電センサを機器監視のセンサネットワークから除外してモニタリングを行う。なお、このような手順で圧電センサ2の健全性を評価する場合は、エネルギー蓄電部13が無くとも良い。
【0034】
図3は、第1実施形態においてエネルギー蓄電部で所定のエネルギーが一つだけ設定されて圧電センサの健全性を評価する第2の評価方法を示すフローチャートである。この第2の評価方法は、光受信部9内のエネルギー蓄電部13で蓄電する場合を示している。
【0035】
図3に示すように、ステップS11では、LEDランプ制御部11がLEDランプ10を任意のパラメータで発光させるように制御するとともに、圧電センサ2を駆動させる模擬信号を送信することをLEDランプ制御部11が評価部12に通知する。
【0036】
ステップS12では、光受信部9がLEDランプ10の光エネルギーを電気エネルギーに変換し、その電気エネルギーをエネルギー蓄電部13が蓄電する。
【0037】
ステップS13では、エネルギー蓄電部13が所定量の電気エネルギーを蓄電した後に圧電素子8に出力する。
【0038】
ステップS14では、圧電素子8が光受信部9のエネルギー蓄電部13から得られた所定量の電気エネルギーにより励起され、圧電センサ2の出力を信号処理装置3に入力する。
【0039】
ステップS15では、信号処理装置3が圧電センサ2の出力を信号処理し、その信号を無線送受信部4から電波5によって信号送受信部6を経由して評価部12に送信する。
【0040】
ステップS16では、評価部12は圧電センサ2の出力の健全性を評価する。これら一連のステップを経て圧電センサ2の健全性を容易に評価することができる。
【0041】
このように第2の評価方法によれば、エネルギー蓄電部13で所定量の電気エネルギーを蓄電してから圧電素子8に出力するため、例えばLEDランプ10から光受信部9へのエネルギー供給が塵埃などで阻害される場合でも、圧電素子8から圧電センサ2への入力を安定させることができる。
【0042】
図4は、第1実施形態においてエネルギー蓄電部で所定レベルのエネルギーが周波数に応じて複数設定されて圧電センサの健全性を評価する第3の評価方法を示すフローチャートである。この第3の評価方法は、前記第2の評価方法と同様に光受信部9内のエネルギー蓄電部13で蓄電する場合を示している。
【0043】
図4に示すように、ステップS21では、LEDランプ制御部11がLEDランプ10を、複数設定された所定の周波数から任意に選択された周波数で発光させるように制御するとともに、圧電センサ2を駆動させる模擬信号を送信することをLEDランプ制御部11が評価部12に通知する。
【0044】
ステップS22では、光受信部9がLEDランプ10の光エネルギーを電気エネルギーに変換し、その電気エネルギーをエネルギー蓄電部13が蓄電する。
【0045】
ステップS23では、エネルギー蓄電部13が所定の周波数に対応するレベルの電気エネルギーを蓄電した後に圧電素子8に出力する。
【0046】
ステップS24では、圧電素子8が光受信部9のエネルギー蓄電部13から得られた所定の周波数に対応するレベルの電気エネルギーにより励起され、圧電センサ2の出力を信号処理装置3に入力する。
【0047】
ステップS25では、信号処理装置3が圧電センサ2の出力を信号処理し、その信号を無線送受信部4から電波5によって信号送受信部6を経由して評価部12に送信する。
【0048】
ステップS26では、評価部12は圧電センサ2の出力の健全性を評価する。これら一連のステップを経て圧電センサ2の健全性を容易に評価することができる。
【0049】
このように第3の評価方法によれば、複数のレベルの信号によって圧電センサ2の健全性評価を行うことで、複数の評価指標が得られるため、健全性評価の信頼性が向上する。
【0050】
図5は、第1実施形態において配管が振動しているときに差分処理を用いて圧電センサの健全性を評価する第4の評価方法を示すフローチャートである。なお、以下に説明するステップにおいて、ステップS32、ステップS34〜ステップS36は、評価部12の処理を示している。また、以下に説明する第4および第5の評価方法は、検出対象である配管1内に流体が流れて配管1が振動している場合を前提条件としている。
【0051】
図5に示すように、ステップS31では、LEDランプ制御部11が圧電センサ2を駆動させる模擬信号を送信することをLEDランプ制御部11が評価部12に通知する。
【0052】
ステップS32では、評価部12が圧電センサ2の出力(実際の配管1の振動のみによる出力)を第1データとして記憶する。
【0053】
ステップS33では、圧電素子8を駆動させた際の圧電センサ2の出力を信号処理装置3で信号処理し、その信号を無線送受信部4から電波5によって信号送受信部6を経由して評価部12に送信する。
【0054】
ステップS34では、評価部12が圧電センサ2の出力(実際の配管1の振動のみによる出力+圧電素子8を駆動させた際の出力)を第2データとして記憶する。
【0055】
ステップS35では、評価部12が第1データと第2データとを差分処理し、第3データとするデータ処理を実行する。
【0056】
ステップS36では、評価部12は、第3データに基づいて圧電センサ2の出力の健全性を評価する。これら一連のステップを経て圧電センサ2の健全性を精確かつ容易に評価することができる。
【0057】
このように第4の評価方法によれば、配管1の振動により圧電センサ2から信号が出力されている場合であっても、配管1の振動のみによる出力と、配管1の振動による出力に模擬信号が加わった出力との差分処理を行うため、実際に配管1が振動している場合でも圧電センサ2の健全性を精確かつ容易に評価することができる。
【0058】
なお、第4の評価方法において、評価部12は、第1データを記憶する第1の記憶手段、第2データを記憶する第2の記憶手段、データ処理を実行するデータ処理手段、および圧電センサ2の出力の健全性を評価する評価手段としての機能を有している。
【0059】
図6は、第1実施形態において配管が振動しているときに異なるレベルで圧電素子を駆動し、差分処理を用いて圧電センサの健全性を評価する第5の評価方法を示すフローチャートである。すなわち、第5の評価方法は、エネルギー蓄電部13における蓄電レベルが例えばA,Bについて設定されている場合を示している。また、以下に説明するステップにおいて、ステップS43、ステップS46〜ステップS48は、評価部12の処理を示している。
【0060】
図6に示すように、ステップS41では、LEDランプ制御部11が蓄電レベルA(第1レベル)で模擬信号を送信させることを評価部12に通知する。
【0061】
ステップS42では、信号処理装置3が圧電素子8を駆動させた際の圧電センサ2の出力を信号処理し、その信号を無線送受信部4から電波5によって信号送受信部6を経由して評価部12に送信する。
【0062】
ステップS43では、評価部12が圧電センサ2の出力(実際の配管1の振動のみによる出力+圧電素子8のレベルAでの駆動による出力)を第1データとして記憶する。
【0063】
ステップS44では、LEDランプ制御部11が蓄電レベルB(第2レベル)で模擬信号を送信させることを評価部12に通知する。
【0064】
ステップS45では、信号処理装置3が圧電素子8を駆動させた際の圧電センサ2の出力を信号処理し、その信号を無線送受信部4から電波5によって信号送受信部6を経由して評価部12に送信する。
【0065】
ステップS46では、評価部12が圧電センサ2の出力(実際の配管1の振動のみによる出力+圧電素子8のレベルBでの駆動による出力)を第2データとして記憶する。
【0066】
ステップS47では、評価部12が第1データと第2データとを差分処理し、第3データとするデータ処理を実行する。
【0067】
ステップS48では、評価部12は、第3データに基づいて圧電センサ2の出力の健全性を評価する。これら一連のステップを経て圧電センサ2の健全性を一段と精確に評価することができる。
【0068】
なお、第5の評価方法において、評価部12は、第1データを記憶する第1の記憶手段、第2データを記憶する第2の記憶手段、データ処理を実行するデータ処理手段、および圧電センサ2の出力の健全性を評価する評価手段としての機能を有している。
【0069】
このように第5の評価方法によれば、例えば圧電センサ2の出力について、模擬信号を入力していないときの出力、レベルAの模擬信号を加えたとき(レベルAのエネルギーを変換した物理量を付与した状態)の出力、レベルBの模擬信号を加えたとき(レベルBのエネルギーを変換した物理量を付与した状態)の出力のうち、任意の組合せの差分処理を行うことで、複数の評価指標が得られ、上記第4の評価方法よりも信頼性の高い健全性評価が可能である。
【0070】
このように本実施形態によれば、圧電センサ2へ模擬信号を出力し、その圧電センサ2の出力を評価部12により評価することにより、長期にわたり圧電センサ2の保守作業を行うことなく圧電センサ2の健全性を容易に確認することができるため、モニタリングの健全性の確認が可能となる。
【0071】
(第2実施形態)
図7は、本発明に係る機器モニタリング装置の第2実施形態を示すブロック図である。なお、前記第1実施形態と同一の部分には、同一の符号を用いて異なる構成のみを説明する。また、本実施形態は、検出対象である配管1内に流体が流れて配管1が振動している場合を前提条件としている。
【0072】
本実施形態は、前記第1実施形態と異なり、第1センサとしての複数の圧電センサ2が取り付けられている配管1の振動を、圧電センサ2と別途に取り付けた第2センサとしての振動センサ15を用いて実際に測定を行うようにしている。この振動センサ15は、配管1に数個(例えば、両端付近に1つずつ)設置されており、振動センサ15間の位置における振動は、物理量推定手段としての物理量推定部16でシミュレーションによって算出し、その結果を振動レベル入力部17に入力する。これら振動センサ15、物理量推定部16、および振動レベル入力部17は、モニタリング手段としてのモニタリング部18を構成する。
【0073】
一方、圧電センサ2は、配管の大きさに応じて多数(例えば、配管1の両端に振動センサ15が設置されている場合は、振動センサ15間に一定距離ごとに)設置される。圧電センサ2の出力は、振動監視用の信号処理手段としての信号処理装置3に入力される。この信号処理装置3では、配管1の振動最大値の算出処理、周波数の算出処理、またはその波形や履歴データのメモリへの保存処理などの各種処理が行われる。そして、信号処理装置3の信号処理結果は、無線送受信部4から電波5によってモニタリング情報を収集するための信号送受信部6に送信される。
【0074】
振動レベル入力部17に入力された値と圧電センサ2で測定された値とを比較手段としての信号比較部19で比較し、圧電センサ2の健全性を確認するとともに、信号レベルを校正する。
【0075】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0076】
本実施形態は、通常時、配管1の振動を、振動センサ15を用いて測定し、物理量推定部16によって配管1全体の振動をシミュレーションで算出し、その結果を振動レベル入力部17に入力する。
【0077】
また、圧電センサ2の出力が信号処理装置3に入力し、この信号処理装置3で信号処理を行い、その信号を無線送受信部4から電波5によって信号送受信部6を経由して信号比較部19に送信する。この信号比較部19では、振動レベル入力部17に入力された値と圧電センサ2で測定された値とを信号比較部19で比較することで、振動レベル入力部17に入力された値を正として圧電センサ2の健全性を確認するとともに、信号レベルを校正する。
【0078】
一方、地震などによって配管1に定常運転で想定されるよりも遥かに過大な振動が発生した場合、定常運転を前提としている物理量推定部16によるシミュレーション結果と実際の振動量にかい離が生じる場合が想定される。
【0079】
この場合は、信号送受信部6、信号比較部19、振動レベル入力部17を介して、圧電センサ2の出力信号に基づいた配管1の振動を物理量推定部16に入力する。この物理量推定部16は、配管1の振動を算出した結果に圧電センサ2の出力を反映して補正した上で振動レベル入力部17に入力する。これによって、地震時でも配管1の振動を正確に算出することが可能である。
【0080】
なお、通常時の処理と地震などの発生時の処理との切替に関して、例えば別途プラントなどに設置された地震検出器などの信号の受信、制御室からの指示信号の受信、機器モニタリング装置自体に地震検出機器を組み込みその出力を用いる、あるいは振動センサ15や圧電センサ2の出力信号が異常値に遷移するのをしきい値判定などによって検出して地震発生と判定する、などによって切り替える構成とすることが考えられる。
【0081】
すなわち、本実施形態では、通常時は振動センサ15と物理量推定部16によって求めた配管1の振動に基づいて圧電センサ2の健全性確認および校正を行い、地震などによる異常振動の発生時には、圧電センサ2によって配管1の振動を計測し、その結果を振動センサ15と物理量推定部16によって求めた配管1の振動を補正することで、配管1の振動を高精度に求めることが可能である。
【0082】
このように本実施形態によれば、圧電センサ2の周辺での実際のモニタリングデータを用いることで、保守作業を行うことなく圧電センサ2の健全性を確認することができ、また地震などによる過大な振動の発生時には圧電センサ2を用いて高精度な振動計測が可能である。
【0083】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることなく、種々の変更が可能である。例えば、上記第1実施形態で説明した第3の評価方法と第5の評価方法を併用することなどが可能である。また、上記各実施形態では、物理量として圧電センサ2を用いて配管1の振動を測定するようにしたが、圧電センサ2を他のセンサに代えて温度、歪など、その他の物理量を測定するようにしてもよい。例えば、温度を測定する場合には、圧電センサ2および圧電素子8に代えて、それぞれ熱電対およびヒータが用いられる。
【符号の説明】
【0084】
1…配管(機器)
2…圧電センサ(第1センサ)
3…信号処理装置(信号処理手段)
4…無線送受信部
5…電波
6…信号送受信部
7…監視装置(監視手段)
8…圧電素子(エネルギー付与手段)
9…光受信部
10…LEDランプ(エネルギー送信手段)
11…LEDランプ制御部
12…評価部(評価手段)
13…エネルギー蓄電部(エネルギー蓄積手段)
14…模擬信号付与部(模擬信号付与手段)
15…振動センサ(第2センサ)
16…物理量推定部(物理量推定手段)
17…振動レベル入力部
18…モニタリング部(モニタリング手段)
19…信号比較部(比較手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象となる機器の状態を監視する監視手段と、
前記監視手段に模擬信号を付与する模擬信号付与手段と、
前記監視手段に付与した模擬信号に基づいて前記監視手段の監視結果の健全性を確認する評価手段と、を備え、
前記監視手段は、
前記機器に取り付けられ、前記機器の物理量を計測するセンサと、
前記センサの信号を処理する信号処理手段と、
前記信号処理手段による信号処理結果の信号を無線で送信する無線送信手段と、
を有し、
前記模擬信号付与手段は、
エネルギーを送信するエネルギー送信手段と、
前記送信された量のエネルギーを得て、そのエネルギーを前記センサの計測対象である物理量に変換して前記センサに付与するエネルギー付与手段と、
を有することを特徴とする機器モニタリング装置。
【請求項2】
前記模擬信号付与手段は、前記エネルギーを蓄積するエネルギー蓄積手段を有し、このエネルギー蓄積手段のエネルギーが一定レベルに達したとき、その一定レベルのエネルギーを前記エネルギー付与手段に印加すること、
を特徴とする請求項1に記載の機器モニタリング装置。
【請求項3】
前記エネルギー蓄積手段は、蓄積するエネルギーを複数のレベルで蓄積可能としたこと、
を特徴とする請求項2に記載の機器モニタリング装置。
【請求項4】
前記評価手段は、
前記センサの出力を第1データとして記憶する第1の記憶手段と、
前記エネルギー付与手段が前記センサに物理量を付与した状態での前記センサの出力を第2データとして記憶する第2の記憶手段と、
前記第1データと前記第2データを差分処理して第3データとするデータ処理手段と、
を有し、
前記第3データに基づいて前記センサの健全性を評価すること、
を特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の機器モニタリング装置。
【請求項5】
前記エネルギー蓄積手段は、蓄積するエネルギーを第1レベル、第2レベルで蓄積可能であり、
前記評価手段は、
前記エネルギー付与手段が前記センサに前記第1レベルのエネルギーを変換した物理量を付与した状態での前記センサの出力を第1データとして記憶する第1の記憶手段と、
前記エネルギー付与手段が前記センサに前記第2レベルのエネルギーを変換した物理量を付与した状態での前記センサの出力を第2データとして記憶する第2の記憶手段と、
前記第1データと前記第2データを差分処理して第3データとするデータ処理手段と、
を有し、
前記第3データに基づいて前記センサの健全性を評価すること、
を特徴とする請求項3に記載の機器モニタリング装置。
【請求項6】
検出対象となる機器の状態を監視する監視手段と、
検出対象となる機器の状態をモニタリングするモニタリング手段と、
前記監視手段の監視結果と前記モニタリング手段のモニタリング結果とを比較して前記監視手段の監視結果の健全性を確認する比較手段と、を備え、
前記監視手段は、
前記機器に取り付けられ、前記機器の物理量を計測する第1センサと、
前記第1センサの信号を処理する信号処理手段と、
前記信号処理手段による信号処理結果の信号を無線で送信する無線送信手段と、
を有し、
前記モニタリング手段は、
前記機器に前記第1センサとは別に取り付けられ、前記機器の物理量を計測する第2センサと、
前記第2センサの計測した物理量に基づいて、前記機器の前記第2センサで計測できない位置の前記物理量をシミュレーションにより算出する物理量推定手段と、
を有し、
通常時には、前記物理量推定手段の算出結果を正として前記比較手段が前記第1センサの信号と前記物理量推定手段の算出結果を比較し、前記第1センサの健全性を確認する一方、異常時には、前記物理量推定手段の算出結果を前記第1センサの出力に基づいて補正することを特徴とする機器モニタリング装置。
【請求項7】
前記センサは、振動を検出する振動センサであること、
を特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の機器モニタリング装置。
【請求項8】
前記センサは、温度を検出する温度センサであること、
を特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の機器モニタリング装置。
【請求項9】
検出対象となる機器の状態を監視手段により監視する監視ステップと、
前記監視手段に模擬信号を付与する模擬信号付与ステップと、
前記付与した模擬信号に基づいて前記監視ステップの監視結果の健全性を確認する評価ステップと、を備え、
前記監視ステップは、
前記機器の物理量を計測するセンサの信号を処理する信号処理ステップと、
前記信号処理ステップによる信号処理結果の信号を無線で送信する無線送信ステップと、
を有し、
前記模擬信号付与ステップは、
エネルギーを送信するエネルギー送信ステップと、
前記送信された量のエネルギーを得て、そのエネルギーを前記センサの計測対象である物理量に変換して前記センサに付与するエネルギー付与ステップと、
を有することを特徴とする機器モニタリング方法。
【請求項10】
検出対象となる機器の状態を監視手段により監視する監視ステップと、
検出対象となる機器の状態をモニタリング手段によりモニタリングするモニタリングステップと、
前記監視ステップの監視結果と前記モニタリングステップのモニタリング結果とを比較して前記監視ステップの監視結果の健全性を確認する比較ステップと、を備え、
前記監視ステップは、
前記機器の物理量を計測する第1センサの信号を処理する信号処理ステップと、
前記信号処理ステップによる信号処理結果の信号を無線で送信する無線送信ステップと、
を有し、
前記モニタリングステップは、
前記第1センサとは別に前記機器の物理量を計測する第2センサの物理量をシミュレーションにより算出する物理量推定ステップと、
を有し、
通常時には、前記物理量推定ステップの算出結果を正として、前記第1センサの信号と前記物理量推定ステップの算出結果を比較し、前記第1センサの健全性を確認する一方、異常時には、前記物理量推定ステップの算出結果を前記第1センサの出力に基づいて補正することを特徴とする機器モニタリング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−145262(P2011−145262A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8393(P2010−8393)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】