説明

機能性パネル

【課題】近年において使用頻度が増している酸を含む洗浄剤やヘアーカラーなどの染色剤に起因した損傷や変質、変色や染色に耐えうる機能パネルを提供すること。
【解決手段】本発明の機能性パネルは、溶解パラメーター(SP値)が20.0(J/cm3)0.5以下である光重合性モノマーと光重合性オリゴマーとから得られる光硬化性樹脂組成物を硬化させてなる、ガラス転移温度が50℃以上である塗布層、および基材層を含むことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の光重合性モノマーを含む光硬化性樹脂組成物を用いることにより、耐薬品性および耐染色性を向上させた機能性パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
建築用資材としての機能性パネルは、建築物の壁面、床面または天井の壁面として配置される部材であり、その配置される場所に応じ、防音効果や湿度調節性などの様々な機能が付与されている。こうした機能性パネルは、特に住宅内における浴室、洗面所または台所などの水廻り用部材として用いられる場合には、より過酷な使用環境下に耐えうる、耐水性、耐湿性など種々の特性を有することが求められる。
【0003】
たとえば、特許文献1には、基材の表面に形成した下塗塗膜上に、さらに紫外線硬化性アクリレート樹脂塗料からなる上塗塗膜が形成された化粧板が開示されている。この化粧板を上記のような水廻り部材として使用すれば、耐温水性、硬度特性、肉持ち感、耐汚染性等に優れ、膨れや剥がれなどが生じにくいことが示されている。
【0004】
一方、近年、住宅内の壁面、特に浴室、洗面所または台所において、酸などを配合した刺激性の強い洗浄剤や、ヘアーカラーなどの染色剤を使用する機会が増しており、これらの薬剤が付着することによって、壁面の変質や劣化が生じるだけでなく、変色や染色をも引き起こされることとなる。変質や劣化の発生は望ましい現象でないことはいうまでもなく、変色が一度発生すれば元の色に戻すことができず、また染色が発生すれば元の色に戻すことが経時的に困難となることからも、変色や染色の発生も望ましい現象ではない。このような場所に配置される機能性パネルとしては、洗浄剤や染色剤の使用に耐え得る、変質や劣化、変色や染色が生じないパネルであることが要求される。
【0005】
【特許文献1】特開平11−20112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されるような上塗塗膜が形成された機能性パネルでは、これら洗浄剤や染色剤などに起因する、より過酷な使用環境下におけるパネルとして採用した場合、変質、劣化、変色および染色のすべてに対して必ずしも充分な耐性を発揮し得ず、依然として改善すべき余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、近年において使用頻度が増している刺激性の強い洗浄剤やヘアーカラーなどの染色剤によって引き起こされる、変質や劣化の発生のみならず、変色や染色の発生にも耐えうる機能パネルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく、特定の溶解パラメーター(SP値)を有する光重合性モノマーを用い、特定のガラス転移温度を示す光硬化性樹脂組成物を採用することで、耐薬品性とともに耐染色性にも優れた機能性パネルが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の機能性パネルは、溶解パラメーター(SP値)が20.0(J/cm3)0.5以下である光重合性モノマーと光重合性オリゴマーとから得られる光硬化性樹脂組成物を硬化させてなる、ガラス転移温度が50℃以上である塗布層、および基材層を含むことを特徴とする。
【0010】
また、前記光重合性モノマーは、下記式(1)で表されるモノマーであるのが望ましい。
(CH2=CR1COO)n2 ・・・・・(1)
(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は炭素数5〜20のn価の炭化水素基を示す。nは1〜4の整数を示す。)。
【0011】
さらに、前記光重合性モノマーは、イソボルニル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーであるのが好ましい。
【0012】
また、前記光重合性モノマーと前記光重合性オリゴマーとの配合量は、質量比で70:30〜30:70の量であるのが望ましい。
さらに、前記基材層は、不飽和ポリエステル樹脂、充填剤およびガラス繊維もしくは炭素繊維を含む材質からなるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の機能性パネルは、耐薬品性および耐染色性ともに優れており、酸を含む洗浄剤やヘアーカラーなどの染色剤が付着しても、変質や劣化のみならず変色や染色をも充分に抑止することができる。したがって、本発明の機能性パネルは、住宅内の浴室、洗面所または台所などの水廻り用部材として最適である。また、必ずしも下塗層など他の層の形成を要せず、基材に特定の光硬化性樹脂組成物から形成される塗布層を設けるだけで、充分な耐薬品性および耐染色性に優れた機能性パネルを容易に実現することができる。
【0014】
特に、基材として不飽和ポリエステル樹脂、充填剤およびガラス繊維もしくは炭素繊維を含む素材を採用した際、これらの特性に加え、さらに良好な耐久性をも保持した機能性パネルを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の機能性パネルは、溶解パラメーター(SP値)が20.0(J/cm3)0.5以下である光重合性モノマーと光重合性オリゴマーとから得られる光硬化性樹脂組成物を硬化させてなる、ガラス転移温度が50℃以上である塗布層、および基材層を含むことを特徴としている。
【0016】
[光重合性モノマー]
上記光硬化性樹脂組成物に用いる光重合性モノマーは、溶解パラメーター(SP値)が20.0(J/cm3)0.5以下であることを特徴としている。このSP値(δ)とは、一般に液体のモル蒸発エネルギー(ΔEv)およびモル体積(V)より、次式によって定義される。
SP値(δ)=(δEv/V)0.5
さらに、SP値はFedors法によれば化学構造のみから推算することができる(「溶解パラメーター値(Solubility Parameter Values)」、ポリマーハンドブック(Polymer Handbook)、第4版(J,Brandrup他編集)参照)。なお、本明細書においてSP値とは、Fedors法よって算出される値を意味し、該値が低いほど光重合性モノマーが低極性であることを示す。上記光重合性モノマーのSP値は、好ましくは19.6(J/cm3)0.5以下、より好ましくは19.4(J/cm3)0.5以下である。SP値の下限値については特に制限されないが、通常17.0(J/cm3)0.5以上である。
【0017】
このようなSP値を示す光重合性モノマーであると、後述する光重合性オリゴマーとの良好な相溶性を保持しつつ、該モノマー自体が有する極性が有効に低下する。そして用いる光重合性モノマーが低極性であるが故に、これから得られる光重合成樹脂組成物を硬化させて塗布層を形成した際に、硬化後の塗布層自体の反応性を充分に抑制することが可能となるものと推定される。このように、上記塗布層が形成された本発明の機能性パネルは、必要以上に洗浄剤や染色剤などと反応することがなく、良好な耐薬品性および耐染色性を発現することができる。特に耐染色性において顕著な効果を発揮する。
【0018】
上記光重合性モノマーとしては、アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)またはメタクロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を1つ以上有する(メタ)アクリレートモノマーが好ましく用いられ、単官能性モノマー、2官能性モノマーおよび多官能性モノマーのいずれであってもよい。
【0019】
単官能性モノマーとしては、たとえば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート;エーテル骨格(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0020】
2官能性モノマーとしては、たとえば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加ジオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加ジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
多官能性モノマーとしては、たとえば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これら光重合性モノマーは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0022】
なお、2種以上の光重合性モノマーを用いた場合のSP値は、該モノマーが有するSP値に各々のモノマーが有するSP値に各配合割合(モノマー全量を1とした場合の各モノマーの割合)を乗じ、これらを加算した値を意味する。たとえば、光重合性モノマー全量1に対し、SP値19.0の光重合性モノマーを3/4、SP値21.0の光重合性モノマーを1/4の量で配合した場合、下記式(X)にしたがって、用いた光重合性モノマー全体のSP値が求められる。
光重合性モノマーのSP値=(19.0×3/4)+(21.0×1/4)=19.5・・・(X)
【0023】
上記光重合性モノマーのなかでも、下記式(1)で表されるモノマーであるのが好ましい。
(CH2=CR1COO)n2 ・・・・・(1)
【0024】
上記式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示す。
上記式(1)中、R2は炭素数5〜20のn価の炭化水素基を示し、ヘテロ原子を含まず、鎖状であっても環状であってもよい。また、基中の−CH2−は、−CH=CH−で置き換えられてもよい。nは1〜4の整数を示す。
【0025】
すなわち、上記式(1)において、たとえば鎖状であって飽和モノマーである場合、n=1のときにR2は炭素数5〜20のアルキル基となり、n=2のときにR2は炭素数5〜20のアルキレン基となる。さらに、鎖状であって飽和モノマーである場合、n=3のときにR2は炭素数5〜20のアルカントリイル基となり、n=4のときに炭素数5〜20のアルカンテトライル基となる。このようなR2としては、たとえば、−CH2CH3、−CH2CH2CH3、−CH(CH3)CH3、シクロヘキシル基、シクロヘプタン基、シクロオクタン基、シクロノナン基、シクロデカン基等のアルキル基、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH(CH3)CH2−等のアルキレン基、下記式(2)で表されるようなアルカントリイル基、下記式(3)で表されるようなアルカンテトライル基などがある。
【0026】
【化1】

【0027】
【化2】

【0028】
2の炭素数が5未満であると、鎖状の炭化水素基の場合にはモノマーのSP値が上昇する傾向にあり、環状の炭化水素基の場合には入手自体が困難となる。また、R2の炭素数が20を超えると、鎖状の炭化水素基の場合には得られる光硬化性樹脂組成物のガラス転移温度が低下する傾向にあり、環状の炭化水素基の場合には得られる光硬化性樹脂組成物の架橋密度が低下する傾向にある。仮に、架橋密度が必要以上に低下すると、ヘアーカラーなどの染色剤が塗布層内部に浸出しやすくなるため、パネルが染色されてしまうおそれがある。
【0029】
上記式(1)で表されるモノマーとしては、具体的には、イソボルニル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。なかでも、ガラス転移温度を向上させる観点から、環状の炭化水素基を有するモノマーが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレートがより好ましい。このようなモノマーであると、より好適なSP値を有するために良好な低極性を示す傾向にあり、得られる機能性パネルの耐薬品性および耐染色性をさらに向上させることが可能となる。また、後述する光重合性オリゴマーの反応性希釈剤としての機能を有効に発揮することもできる。
【0030】
また、上記光重合性モノマーの官能基数は、通常1〜6、好ましくは1〜4である。なお、ここで官能基数とは、上記官能基の数を複数の分子から求め、これらを平均して1分子中に有する官能基の数として換算した値を意味する。官能基数が1である場合、架橋密度が上昇する傾向にあるが、ガラス転移温度を上げることで良好な耐薬品性および耐染色性を発揮する塗布層が形成された機能性パネルを得ることができる。この際にガラス転移温度を上げるには、環状構造を有する光重合性モノマーであるのが好ましい。一方、官能基数が2〜6、好ましくは2〜4であると、光硬化性組成物の架橋反応を適度に保持することができる傾向にあるため、特に染色剤が塗布層内部に浸出してパネルが染色される現象をより有効に抑止しやすくなるものと推定される。したがってこの場合にも、耐薬品性および耐染色性を保持したまま、好適な硬化性を有する塗布層が形成された機能性パネルを得ることができる。
【0031】
[光重合性オリゴマー]
上記光硬化性樹脂組成物に用いる光重合性オリゴマーとしては、具体的には、たとえば、ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマー、エーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エステル系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート系(メタ)アクリレートオリゴマー、フッ素系(メタ)アクリレートオリゴマー、シリコーン系(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。これら光重合性オリゴマーは、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、多価アルコールとε-カプロラクトンの付加物等と、(メタ)アクリル酸との反応により、あるいはポリイソシアネート化合物及び水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物をウレタン化することにより合成することができる。
【0032】
上記光重合性オリゴマーは、単官能オリゴマー、2官能オリゴマー、多官能オリゴマーのいずれであってもよく、得られる光硬化性樹脂組成物の適度な架橋密度を実現させる観点から、多官能オリゴマーであるのが好ましい。
【0033】
これら光重合性オリゴマーの中でも、機能性パネルとして耐薬品性および耐染色性以外の好適な特性を付与する観点から、ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーは、たとえば、ポリオールとポリイソシアネートとからウレタンプレポリマーを合成し、該ウレタンプレポリマーに水酸基を有する(メタ)アクリレートを付加させることによって製造することができ、カーボネート骨格を有するウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーであってもよい。
【0034】
上記ウレタンプレポリマーの合成に用いるポリオールは、水酸基(OH基)を複数有する化合物であり、具体的には、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブタジエンポリオール、アルキレンオキサイド変性ポリブタジエンポリオール及びポリイソプレンポリオール等が挙げられる。これらポリオールは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なお、上記ポリエーテルポリオールは付加重合により得ることができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコールに、エチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキサイドを付加させる。また、開環重合によりポリエーテルポリオールを得ることもでき、このようなポリエーテルポリオールとしては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)の開環重合により得られるポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
【0035】
上記ポリエステルポリオールも付加重合により得ることができ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、プロピレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の多価アルコールと、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、セバシン酸、ピメリン酸、スベリン酸等の多価カルボン酸とから得られる。また、開環重合によりポリエステルポリオールを得ることもでき、このようなポリエステルポリオールとしては、ε−カプロラクトンの開環重合により得られるラクトン系ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0036】
上記ポリイソシアネートは、イソシアネート基(NCO基)を複数有する化合物であり、具体的には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート(クルードMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)や、これらのイソシアヌレート変性物、カルボジイミド変性物、グリコール変性物等が挙げられる。これらポリイソシアネートは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0037】
上記ウレタンプレポリマーの合成においては、ウレタン化反応用の触媒を用いることが好ましい。該ウレタン化反応用触媒としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズチオカルボキシレート、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズチオカルボキシレート、オクテン酸スズ、モノブチルスズオキシド等の有機スズ化合物;塩化第一スズ等の無機スズ化合物;オクテン酸鉛等の有機鉛化合物;トリエチレンジアミン等の環状アミン類;p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロ硫酸等の有機スルホン酸;硫酸、リン酸、過塩素酸等の無機酸;ナトリウムアルコラート、水酸化リチウム、アルミニウムアルコラート、水酸化ナトリウム等の塩基類;テトラブチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のチタン化合物;ビスマス化合物;四級アンモニウム塩等が挙げられる。これら触媒の中でも、有機スズ化合物が好ましい。これら触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。上記触媒の使用量は、上記ポリオール100質量部に対して0.001〜2.0質量部の範囲の量であるのが好ましい。
【0038】
また、上記ウレタンプレポリマーに付加させる水酸基を有する(メタ)アクリレートは、水酸基を1つ以上有し、(メタ)アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−またはCH2=C(CH3)COO−)を1つ以上有する化合物である。該水酸基を有する(メタ)アクリレートは、上記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基に付加することができる。該水酸基を有するアクリレートとしては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。これら水酸基を有するアクリレートは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0039】
このような光重合性オリゴマーを上記光重合性モノマーとともに配合することにより、後述するように、得られる光硬化性樹脂組成物を硬化させた塗布層が示すガラス転移温度を最適化することができ、耐薬品性および耐染色性に優れた効果を発揮し得る光硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0040】
[光硬化性樹脂組成物]
本発明の機能性パネルに用いられる光硬化性樹脂組成物は、上記光重合性オリゴマーと上記光重合性モノマーとを含有している。これら光重合性オリゴマーと光重合性モノマーとの配合量は、質量比で、通常70:30〜30:70、好ましくは40:60〜60:40の量である。モノマーの配合量が少なすぎると、得られる光硬化性樹脂組成物の粘度が上昇して塗布性が悪化するおそれがあるとともに、耐薬品性および耐染色性を充分に発揮できない可能性がある。また、モノマーの配合量が多すぎると、塗膜の柔軟性が低下して脆性が高くなるおそれがある。したがって、光重合性オリゴマーと光重合性モノマーとの配合量が上記範囲内であると、光重合性モノマーが有する低極性を充分に発揮させることができるとともに、光硬化性樹脂組成物を硬化させた後の塗布層のガラス転移温度を好適な値に保持させることができる。これにより、これらSP値およびガラス転移温度の数値に起因する、機能性パネルの耐薬品性および耐染色性を向上させることが可能となる。さらに、光重合性モノマーが光重合性オリゴマーに対して有効な希釈剤として作用することも可能となり、光硬化性樹脂組成物が適度な粘度を呈しやすく、良好な塗布性をも付与することができる。
【0041】
なお、上記光硬化性樹脂組成物は、モノマーとして上記所定のSP値を有する光重合性モノマーのほか、本発明の効果を損なわない範囲内で、さらに上記光重合性モノマー以外のモノマーを含有してもよい。すなわち、他のモノマーを配合する場合、他のモノマー各々のSP値から上記式(X)にしたがって算出されるSP値が、上記SP値の範囲内であればよい。
【0042】
上記光硬化性樹脂組成物には、公知の光重合開始剤を用いることができる。該光重合開始剤は紫外線を照射させることによって、上述した光重合性モノマーと光重合性オリゴマーとの重合を開始させる作用を奏する。該光重合開始剤としては、具体的には、たとえば、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エステル、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、アセトフェノンジエチルケタール、アルコキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノンおよび3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4,4-ジメトキシベンゾフェノン、4,4-ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、ベンゾイル安息香酸アルキル、ビス(4-ジアルキルアミノフェニル)ケトン、ベンジル及びベンジルメチルケタール等のベンジル誘導体、ベンゾイン及びベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン誘導体、ベンゾインイソプロピルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、キサントン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、フルオレン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1,2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(モルホリノフェニル)-ブタノン-1等が挙げられる。これら光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記光硬化性組成物における光重合開始剤の配合量は、上記光重合性モノマーおよび光重合性オリゴマーの合計100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲の量であるのが望ましい。
【0043】
光重合開始剤の配合量が0.1質量部以下では、重合反応を開始させる効果が小さく、一方、10質量部を超えると、重合反応を開始させる効果が飽和する一方、原料のコストが高くなる。
【0044】
また、上記光硬化性組成物には、求められる硬化反応性や安定性等を考慮し、必要に応じてさらに光増感剤を含有させてもよい。該光増感剤は、光を照射させることによって、エネルギーを吸収し、該エネルギーまたは電子が重合開始剤に移動して、重合を開始させる作用を有する。該光増感剤としては、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等が挙げられる。これら光増感剤の配合量は、上記光重合性モノマーおよび光重合性オリゴマーの合計100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲の量であるのが望ましい。
【0045】
さらに、上記光硬化性樹脂組成物には、求められる硬化反応性や安定性等を考慮し、必要に応じて重合禁止剤を含有させてもよい。該重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエ−テル、p-メトキシフェノール、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチルヒドロキシアニソール、3-ヒドロキシチオフェノール、α-ニトロソ-β-ナフトール、p-ベンゾキノン、2,5-ジヒドロキシ-p-キノン等が挙げられる。これら重合禁止剤の配合量は、上記上記光重合性モノマーおよび光重合性オリゴマーの合計100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲の量であるのが望ましい。
【0046】
また、上記塗布層の形成に用いる光硬化性樹脂組成物は、希釈溶媒としてエーテル、ケトン、エステル等の有機溶媒を含有していてもよく、該有機溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトン、または乳酸ブチル等が挙げられる。これらの希釈溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
上記光硬化性組成物は、上述のとおり必要に応じて希釈溶媒を用い、塗布液状としてこれを基材上の面に塗布する。塗布する方法には公知の方法を採用することができ、グラビアコート、ロールコート、リバースコート、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ドクターコート、エクストルージョンコート、スライドコート、ワイヤーバーコート、カーテンコート、押出コート、スピンコート等が挙げられる。
【0048】
[塗布層]
上記光硬化性組成物を基材上に塗布し、次いで光硬化させることによって、基材層上に塗布層を形成する。形成された塗布層のガラス転移温度は、50℃以上であり、70℃以上であるのが好ましく、80℃以上であるのがより好ましい。ガラス転移温度の上限値は特に制限されないが、原料入手の容易性等の観点からすれば、通常200℃以下であるのが望ましい。塗布層のガラス転移温度が上記範囲内であると、上述した光重合性モノマーが有するSP値に起因する効果と相まって、機能性パネルの耐薬品性および耐染色性をより向上させることが可能となる。特に耐染色性において顕著な効果を発揮する。
【0049】
上記塗布した光硬化性組成物を光硬化させる方法としては、紫外線を照射させる方法が一般的である。塗布層を形成する基材層上の面は、表面および裏面のうち、一方の面だけであっても双方の面であってもよく、必要に応じて適宜選択すればよい。なお、光硬化性組成物を硬化させる際の光の照射量は、紫外線を採用する場合、通常、照射強度20〜2000mW/cm2、照射量100〜5000mJ/cm2である。
【0050】
上記塗布層の厚さは、要求される意匠性や耐薬品性の程度から適宜選択し得るものであり、特に限定されないが、通常1μm〜200μmの範囲の厚さであると想定される。
【0051】
なお、紫外線を照射する場合、紫外線硬化反応はラジカル反応であるため、酸素による阻害を受けやすい。そのため、上記光硬化性組成物を基材に塗布した後、酸素との接触を回避し得るよう、窒素雰囲気下で該組成物を硬化させてもよい。
【0052】
[基材層]
本発明の機能性パネルに用いられる基材層の材質としては、スレート、コンクリート、金属、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、ガラス等の無機質材;木質材のほか、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、不飽和ポリエステル樹脂等の有機質材;およびこれらの複合材が挙げられる。なかでも、有機質剤にガラス繊維や炭素繊維などの繊維を加えた材質、いわゆるFRP(繊維強化プラスチック)であるのが好ましい。FRPとしては、不飽和ポリエステル樹脂、充填剤およびガラス繊維もしくは炭素繊維を含むシート状のシートモールディングコンパウンド(SMC)、SMCと同様の複合材であって短繊維を含む塊状のBMCなどが挙げられる。一般に、FRPは、熱硬化性樹脂、有機過酸化物(硬化剤)、充填剤、低収縮剤、内部離型剤、強化材、架橋剤、および増粘剤などを配合したものであって、所定の温度に設定した金型内に入れて加圧し、建材として配置する場所に応じた形状に成形して用いられるものである。なかでも、熱可塑性樹脂として不飽和ポリエステル、充填剤、および強化材としてガラス繊維もしくは炭素繊維を含むFRPであると、得られる機能性パネル全体の強度および耐久性等をより向上させることができる。
【0053】
不飽和ポリエステルは、無水マレイン酸、フマル酸などの多塩基酸の不飽和酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリメチルペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチルプロパンモノアリルエーテル、水素添加ビスフェノール、ビスフェノールジオキシプロピルエーテルなどの多価アルコールとから生成される。
【0054】
充填剤としては、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。コストダウンの観点からは炭酸カルシウムが好ましく、FRP自体の耐薬品性を向上させる観点からは水酸化アルミニウムが好ましい。しかしながら上述のとおり、上記塗布層を形成すれば、基材として充填剤に炭酸カルシウムを用いたFRPを採用しても、機能性パネル全体の耐薬品性を充分に向上させることができるため、低コストのFRPからなる基材層を有した機能性パネルを容易に実現できる。
【0055】
強化材としてのガラス繊維および炭素繊維は、繊維長が20〜50mm程度、繊維径が5〜25μm程度のものが好適に用いられ、FRP中に10〜70質量%の量で含有されているのが望ましい。上記基材層として用いられるFRPは、これらの成分を混合し、FRP製造装置などにより所定の厚みおよび大きさを有するFRPとして製造される。
【0056】
なお、基材層の厚さは、機能性パネルの用途により変動し得るが、通常2.5mm以上である。厚さの上限は特に制限されず、適宜選択することができる。
【0057】
[機能性パネル]
本発明の機能性パネルは、上記塗布層と基材層を含み、該塗布層は該基材層上に形成されてなる。機能性パネル全体の厚さは、通常、2.5mm以上であるのが好ましい。機能性パネル全体の厚さの上限は特に制限されず、上記塗布層を基材層上の表面および裏面の双方に形成してもよく、必要に応じてこれら基材層および塗布層に加え、これらの層間に種々の材質からなる中間層を形成した多層構造としてもよい。この際、上記塗布層は上述のとおり優れた耐薬品性および耐染色性を奏するため、該塗布層を機能性パネルの最表面層として形成するのが望ましい。中間層としては、たとえば、基材層と塗布層との接着性を向上させるためのアンダーコート層、機能性パネルの意匠性を向上させるための模様や色彩を付与した化粧層等が挙げられる。
【0058】
このようにして得られる本発明の機能性パネルは、基材層に上記特定の塗布層が形成されているため、耐薬品性および耐染色性に優れており、酸やアルカリを含んだ刺激性の強い洗浄剤の使用によっても変質や劣化が発生しにくい。また、ヘアーカラーのような染色剤の使用によっても変色や染色が生じにくい。したがって、本発明の機能性パネルは、特に住宅内の浴室または台所に配置される機能性パネルとして好適である。
【0059】
また、基材層として、不飽和ポリエステル樹脂およびガラス繊維もしくは炭素繊維を含むFRPを採用すれば、耐薬品性および耐染色性だけでなく、さらに優れた耐久性が付与された機能性パネルを実現することができる。
【0060】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0061】
[光硬化性樹脂組成物の調製]
表1に示す内容に従い、攪拌装置に光重合性オリゴマー60質量部および光重合性モノマー40質量部を投入して混合し、次いで光重合開始剤(IRGACURE 184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)1質量部を加えて2分間攪拌し、脱泡処理を施して光硬化性樹脂組成物(C1〜C11)を得た。
【0062】
【表1】

【0063】
[実施例1]
FRP(デックマット(登録商標)2415、DIC化工(株)製)からなる基材の上面に、上記調製した光硬化性樹脂組成物C1を厚さ20μmになるように塗布した。次いで、UV照射(1000mW/cm2、4000mJ/cm2)して光硬化性樹脂組成物C1を硬化させ、機能性パネルを得た。
【0064】
[実施例2〜6]
各々上記調製した光硬化性樹脂組成物C2〜C6を用いた以外は、実施例1にしたがって機能性パネルを得た。
【0065】
[比較例1〜5]
各々上記調製した光硬化性樹脂組成物C7〜C11を用いた以外は、実施例1にしたがって機能性パネルを得た。
【0066】
(1)ガラス転移温度の測定
ガラス転移温度(Tg)の測定は、動的粘弾性装置(DMS6100、セイコーインスツル(株)製)を用いて、測定周波数:1.0Hz、昇温速度:3.0℃/minの条件下で行った。
【0067】
(2)耐薬品性の評価
実施例1で得られた機能性パネルを用い、下記に示す薬品を各条件下で浸漬し、機能性パネルの変化を観察し、その変化の度合いを色差計(SpectroEye、サカタインクスエンジニアリング(株)製)を用いて下記式(A)に基づき、浸漬部位と未浸漬部位とのLab色差(ΔE)を求めた。
ΔE=(Δa2+Δb2+ΔL21/2 ・・・(A)
該数値は、小さいほど薬品に対して良好な耐性を有することを意味し、3.0以下であるのが好ましくは、1.0以下であるのがより好ましい。1.0以下の場合には、ほぼ変化がないものとみなすことができる。
【0068】
なお、対照例1として光硬化性樹脂組成物を塗布しない上記FRPからなる基材を用い、同様にして耐薬品性の評価を行った。
HCl・・・3質量%濃度のHCl水溶液に1時間浸漬した。
NaOH・・5質量%濃度のNaOH水溶液に1時間浸漬した。
BM・・・・市販洗剤(パワースプレー\バスマジックリン(登録商標)、花王株式会社製)に24時間浸漬した。
これらの結果を表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
(3)耐染色性の評価
ガラス基板上に、厚さ1.0mmになるよう上記光硬化性樹脂組成物(C1〜C11)を塗布した。窒素雰囲気下、UV照射(1000mW/cm2、4000mJ/cm2)して光硬化性樹脂組成物(C1〜C11)を硬化させ、各サンプルを得た。
【0071】
得られたサンプルを用い、市販の毛染め剤(GATSBY黒髪もどし(登録商標):1剤と2剤との混合物、(株)マンダム社製)に24時間浸漬後水洗し、上記(1)耐薬品性の評価と同様、上記色差計を用いて式(A)に基づき、浸漬部位と未浸漬部位とのLab色差(ΔE)を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0072】
上記結果によれば、本発明の機能性パネルは良好な耐薬品性を保持しつつ、耐染色性に優れた効果を発揮することがわかる。特に光重合性モノマーとして、イソボルニル(メタ)アクリレート、またはジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレートなどの低極性のものを採用した場合、高極性のものを採用した場合と比較して、耐染色性が大きく低減された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解パラメーター(SP値)が20.0(J/cm3)0.5以下である光重合性モノマーと光重合性オリゴマーとから得られる光硬化性樹脂組成物を硬化させてなる、ガラス転移温度が50℃以上である塗布層、および基材層を含むことを特徴とする機能性パネル。
【請求項2】
前記光重合性モノマーが、下記式(1)で表されるモノマーであることを特徴とする請求項1に記載の機能性パネル;
(CH2=CR1COO)n2 ・・・・・(1)
(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は炭素数5〜20のn価の炭化水素基を示す。nは1〜4の整数を示す。)。
【請求項3】
前記光重合性モノマーが、イソボルニル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーであることを特徴とする請求項1または2に記載の機能性パネル。
【請求項4】
前記光重合性モノマーと前記光重合性オリゴマーとの配合量が、質量比で70:30〜30:70の量であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の機能性パネル。
【請求項5】
前記基材層が、不飽和ポリエステル樹脂、充填剤およびガラス繊維もしくは炭素繊維を含む材質からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の機能性パネル。

【公開番号】特開2010−30100(P2010−30100A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193412(P2008−193412)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】