説明

機能性流体

開示の発明は、潤滑粘度の少なくとも1種のオイル;少なくとも1種の清浄剤(この清浄剤は、機能性流体の約0.015から約1重量%の範囲の濃度に等しい量の金属を、機能性流体にもたらし、この清浄剤は、約0.3から約2の範囲の全塩基価に等しい量の塩基性を、機能性流体にもたらす);および、少なくとも1種の摩擦調整剤(この摩擦調整剤は、極性基または原子(例えば、窒素原子)に結び付いた少なくとも2つのヒドロカルビル基を含む)を含む機能性流体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、米国特許法§119(e)の下、2006年12月18日に出願された、米国仮出願第60/870,425号の優先権を主張する。この先の出願の開示は、参考として本明細書に援用される。
【0002】
開示の発明は機能性流体に関する。
【背景技術】
【0003】
自動変速機流体(ATF)、トラクション流体、無段変速機流体(CVT)用流体、デュアルクラッチ自動変速機流体、農業用トラクター流体、手動変速機流体、ハイブリッド車変速機用流体、ギアオイルなどとして使用される機能性流体は知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動変速機市場では、重さを減らし、変速容量を増そうとする要求によって動かされる工学上の速い変化がある。これは、結果的に、適正に性能を発揮する自動変速機流体の配合における2つの競合する課題を生じた。第1に、クラッチ保持容量の向上のために大きな静摩擦係数を示す自動変速機流体を提供するという問題がある。同時に、μ/v(摩擦係数 対 滑り速度)曲線における正の勾配特性の保持を改善する自動変速機流体を提供するという競合する課題がある。開示の発明は、これらの課題への解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示の発明は、少なくとも1種の潤滑粘度のオイル;少なくとも1種の清浄剤(この清浄剤は、機能性流体の約0.015から約1重量%の範囲の濃度に等しい量の金属を、機能性流体にもたらし、この清浄剤は、約0.3から約2の範囲の全塩基価に等しい量の塩基性を、機能性流体にもたらす);および少なくとも1種の摩擦調整剤を含む機能性流体に関し、摩擦調整剤は、極性基または原子(例えば、窒素原子)に結び付いた少なくとも2つのヒドロカルビル基を含み、摩擦調整剤は、(a)少なくとも1種のカルボン酸または等価物と少なくとも1種のアミノアルコールとの反応生成物、(b)少なくとも1種のカルボン酸または等価物と少なくとも1種のポリアミンとの反応生成物、(c)次式
N−C(X)R
によって表されるアミドまたはチオアミド(式中、XはOまたはSであり、RおよびRはそれぞれ独立に少なくとも約6個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、Rは、1から約6個の炭素原子のヒドロキシアルキル基、またはアシル化剤と該ヒドロキシアルキル基の、そのヒドロキシル基を通じての縮合によって生成する基である)、(d)2つのヒドロカルビル基と、ポリヒドロキシル含有アルキル基またはポリヒドロキシル含有アルコキシアルキル基とを含む少なくとも1種の第3級アミン、あるいは(e)(a)、(b)、(c)および(d)の2つ以上の混合物である。本発明は、前記機能性流体の製造に使用される濃縮物に関する。
【0006】
機能性流体は、1つまたは複数の、分散剤、粘度調整剤、分散剤粘度調整剤、摩擦安定化剤、耐摩耗剤、リン調節剤、補助摩擦調整剤、抗酸化剤、腐食抑制剤、シール膨潤剤(seal swell agent)、流動点降下剤、染料、流動化剤、臭気マスキング剤、起泡抑制剤(foam inhibitor)、希釈油、またはこれらのいずれかの2種以上の混合物をさらに含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例の配合CおよびDに対するフォード耐シャダー(Anti−Shudder)耐久性試験の結果を示すグラフである。
【図2】実施例の配合CおよびDに対するフォード30K摩擦耐久性試験の結果を示すグラフである。
【図3】実施例の配合Cに対するGM低速クラッチおよびトルク容量試験の結果を示すグラフである。
【図4】実施例の配合Dに対するGM低速クラッチおよびトルク容量試験の結果を示すグラフである。
【図5】実施例の配合Cに対するGM低速クラッチおよびトルク容量試験の結果を示すグラフである。
【図6】実施例の配合Dに対するGM低速クラッチおよびトルク容量試験の結果を示すグラフである。
【図7】実施例の配合Cに対するGM低速クラッチおよびトルク容量試験の結果を示すグラフである。
【図8】実施例の配合Dに対するGM低速クラッチおよびトルク容量試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書では、「機能性流体」という用語は、自動変速機流体(ATF)、トラクション流体、無段変速機流体(CVT)用流体、デュアルクラッチ自動変速機流体、農業用トラクター流体、手動変速機流体、ハイブリッド車変速機用流体、ギアオイル、エンジンオイルまたは潤滑油などを表すのに使用される。一実施形態において、機能性流体はAFTである。一実施形態において、機能性流体はCVTである。
【0009】
「過塩基性(overbased)」という用語は、金属塩および/または金属錯体を含む、よく知られた金属含有組成物類を包括する技術用語である。これらの組成物はまた、「塩基性」、「超塩基性(superbased)」、「多過塩基性(hyperbased)」、「高金属含有塩(high−metal containing salt)」などとも呼ばれることもある。過塩基性金属組成物は、金属(例えば、カルシウム)と、その金属と反応する特定の酸性有機化合物(例えば、スルホン酸)との化学量論に従って存在すると推定される含量を上回る金属含量によって特徴付けられる有機液体組成物の状態にあり得る。こうして、例えば、スルホン酸が塩基性金属化合物(例えば、酸化カルシウム)により中和される場合、生成する「中性」または「正(normal)」金属塩は、各1当量の酸に対して1当量のカルシウムを含むであろう。他方、過塩基性金属組成物は、化学量論的な量を超える金属を含むであろう。例えば、スルホン酸はカルシウム塩基と反応させることができ、得られる過塩基性カルシウムスルホナートは、酸を中和するのに必要とされるカルシウムを上回る量のカルシウムを、例えば、中性塩に存在する約1.15倍のカルシウム、すなわち約0.15当量上回るカルシウムを含み得る。
【0010】
本明細書では、「金属比」という用語は、過塩基性組成物(例えば、過塩基性カルシウムスルホナート)中の金属(すなわち、カルシウム)の全化学当量と、対応する中性塩中の金属の化学当量との比を示すために使用され得る。したがって、例えば、中性カルシウムスルホナートの金属比は1:1であり、前記の金属が0.15当量過剰の過塩基性カルシウムスルホナートの金属比は1.15:1である。
【0011】
本明細書では、「TBN」という用語は、全塩基価を表すために使用され得る。全塩基価は、試料1グラム当たりのKOHのミリグラムとして表した、物質の塩基性の全てまたは一部を中和するために要する酸(過塩素酸または塩酸)の量である。開示の技術に従う清浄剤によって機能性流体にもたらされる全塩基価すなわちTBNは、他の成分もまた、機能性流体に塩基性(またはTBN)をもたらし得るので、全機能性流体に対するTBNを表すことも、表さないこともある。
【0012】
分子の残部に結び付いた基を表す時には、「ヒドロカルビル」という用語は、純粋に炭化水素の、または優越的に炭化水素の特徴を有する基を表し得る。これらの基には以下が含まれる。
【0013】
(1)純粋に炭化水素の基;すなわち、脂肪族、脂環式、芳香族、脂肪族−および脂環式−置換芳香族、芳香族−置換脂肪族および脂環式基など、さらには、環が分子の別の部分を介して完成されている環状基(すなわち、任意の2つの指定された置換基は、一緒に、脂環式基を形成し得る)。例には、メチル、オクチル、シクロヘキシル、フェニルなどが含まれる。
【0014】
(2)置換された炭化水素基;すなわち、その基の優越的に炭化水素の特性を変えない非炭化水素置換基を含む基。例には、ヒドロキシル、ニトロ、シアノ、アルコキシ、アシルなどが含まれる。
【0015】
(3)ヘテロ基;すなわち、特徴は優越的に炭化水素であるが、本来は炭素原子からなる鎖または環に炭素以外の原子を含む基。例には、窒素、酸素および硫黄が含まれる。
【0016】
一般的に、約3個以下の、一実施形態では1個の、置換基またはヘテロ原子が、ヒドロカルビル基の10個の炭素原子ごとに存在し得る。
【0017】
「低級」という用語は、ヒドロカルビル、アルキル、アルケニル、アルコキシなどのような用語に関連して本明細書において使用される場合、合計で7個までの炭素原子を含むこのような基を表し得る。
【0018】
「油溶性」という用語は、鉱油に、25℃で少なくとも約50百万分率(ppm)の程度まで溶ける物質を表し得る。
【0019】
潤滑粘度のオイルは、1種または複数の天然油、1種または複数の合成油、あるいはこれらの2種以上の混合物を含み得る。完全に配合された機能性流体では、潤滑粘度のオイルは、主要な量(例えば、約50重量%を超える量)で存在し得る。通常、潤滑粘度のオイルは、機能性流体の少なくとも約75重量%の濃度で、一実施形態では、機能性流体の約75重量%から約95%の範囲の濃度で存在し得る。濃縮物では、潤滑粘度のオイルは、例えば、約10から約50重量%、一実施形態では約10から約30重量%のより低濃度で、または少量で存在し得る。
【0020】
使用され得る天然油には、動物油および植物油、さらには潤滑鉱油が含まれ得る。鉱油には、パラフィン、ナフテン、もしくはパラフィン/−ナフテン混合型の液体石油オイルおよび溶媒処理または酸処理潤滑鉱油が含まれ得る。これらは、水素化分解および水素化仕上げプロセスによってさら精製され得る。
【0021】
合成潤滑油には、炭化水素油、およびハロ置換炭化水素油、例えば、ポリマー化およびインターポリマー化(interpolymerized)オレフィン(ポリアルファオレフィンとしても知られている);ポリフェニル;アルキル化ジフェニルエーテル;アルキル−またはジアルキルベンゼン;アルキル化ジフェニルジフェニルスルフィド;ならびにこれらの誘導体、類似体および同族体が含まれ得る。アルキレンオキシドポリマーおよびインターポリマーとこれらの誘導体もまた含まれ得る(これらにおいて、末端ヒドロキシル基はエステル化またはエーテル化によって変性されていてもよい)。ジカルボン酸と様々なアルコールとのエステル、あるいはCからC12のモノカルボン酸とポリオールまたはポリオールエーテルとから製造されるエステルもまた含まれ得る。他の合成油には、シリコン系オイル、リン含有酸の液体エステル、およびテトラヒドロフランポリマーが含まれ得る。合成油は、フィッシャー−トロプシュ反応によって製造でき、合成油には通常、水素異性化フィッシャー−トロプシュ炭化水素および/またはワックスが含まれ得る。
【0022】
未精製、精製および再精製油は、天然であれ合成であれ、使用され得る。未精製油は、天然または合成の供給源からさらなる精製処理なしに直接得られるものである。精製油は、1つまたは複数の性質を改善するために、1つまたは複数の精製ステップでさらに処理されている。それらは、例えば、水素化でき、酸化に対する安定性の向上したオイルが得られる。再精製油は、すでに役立てるために使用されていた精製油に適用される、精製油を得るために用いられたプロセスに類似のプロセスによって得られる。再精製油はまた、再生油または再処理油としても知られていることがあり、しばしば、使い古された添加剤およびオイル分解生成物の除去に向けられた技術によってさらに処理されている。
【0023】
潤滑粘度のオイルは、合成油を含めて、APIによるグループII、グループIII、グループIV、またはグループVのオイル、あるいはこれらの混合物であり得る。これらは、API Base Oil Interchangeability Guidelinesによって確立された分類である。グループIIおよびグループIIIの両方のオイルは、<0.03パーセントの硫黄、および>99パーセントの飽和分を含む。グループIIのオイルは、80から120の粘度指数を有し、グループIIIのオイルは、>120の粘度指数を有する。ポリアルファオレフィンは、グループIVとして分類されている。オイルはまた、スラック(slack)ワックスまたはフィッシャー−トロプシュ合成ワックスのようなワックスの水素異性化から誘導されるオイルでもあり得る。グループVは、「他の全て」(グループIを除いて、グループIは、>0.03%のSおよび/または<90%の飽和分を含み、80から120の粘度指数を有する)を包含する。
【0024】
一実施形態において、潤滑粘度のオイルの少なくとも約50重量%は、1種または複数のポリアルファオレフィン(PAO)を含み得る。ポリアルファオレフィンは、約4から約30個の炭素原子、一実施形態では約4から約20個、一実施形態では約6から約16個を有するモノマーから誘導され得る。有用なPAOの例には、1−デセンから誘導されるものが含まれ得る。これらのPAOは、100℃で、約1.5から約150mm/s(cSt)の範囲の粘度を有し得る。これらのPAOは水素化された材料を含み得る。
【0025】
潤滑粘度のオイルは、単一粘度域を有するオイルを含み得る、またはそれは、高粘度および低粘度域オイルの混合物を含み得る。一実施形態において、オイルは、約1から約10mm/s(cSt)の範囲、一実施形態では約1から約8mm/s(cSt)の範囲、一実施形態では約2から約10mm/s(cSt)の範囲、また一実施形態では約2から約8mm/s(cSt)の範囲の100℃での動粘性率を示し得る。全体としての機能性流体は、100℃での粘度が、約1から約20mm/sの範囲、一実施形態では約1から約15mm/sの範囲、一実施形態では約1から約10mm/sの範囲、一実施形態では約1.5から約20mm/sの範囲、一実施形態では約1.5から約15mm/sの範囲、また一実施形態では約1.5から約10mm/sの範囲にあるように、オイルおよび他の成分を用いて配合され得る。−40℃でのブルックフィールド粘度(ASTM−D−2983)は、約20または約15Pa−s(20,000cPまたは15,000cP)まで、一実施形態では約10Pa−sまで、また一実施形態では約5Pa−sまでの範囲にあり得る。
【0026】
清浄剤は、1種または複数の有機酸の1種または複数の金属塩を含み得る。清浄剤の有機酸部分は、スルホナート、カルボキシラート、フェナート(phenate)、サリシラート、またはこれらの2種以上の混合物を含み得る。清浄剤の金属部分は、アルカリまたはアルカリ土類金属を含み得る。金属は、ナトリウム、カルシウム、カリウムおよび/またはマグネシウムであり得る。清浄剤は、カルシウムスルホナートを含み得る。金属塩は、中性塩および/または過塩基性塩であり得る。
【0027】
過塩基性有機塩には、有機物質から生成する実質的に親油性の特徴を有する1種または複数のスルホナート塩が含まれ得る。スルホナート化合物は、平均で、約10から約40個の炭素原子、一実施形態では約12から約36個の炭素原子、一実施形態では約14から32個の炭素原子を含み得る。これらの炭素原子は、芳香族またはパラフィン配置構造のいずれかで提供される。アルキル化芳香族が使用され得る。アルキル化芳香族の芳香族は、ベンゼン部分を含み得る。ナフタレン系化合物が用いられ得る。フェナート、サリシラート、およびカルボキシラートは、類似の配置構造、および実質的にオレフィンの特徴を有し得る。
【0028】
過塩基性モノスルホン化アルキル化ベンゼンが使用され得る。アルキル化ベンゼンには、モノアルキル化ベンゼンまたはジアルキル化ベンゼンが含まれ、モノアルキル化ベンゼンが特に有用であり得る。アルキルベンゼン画分は、モノ−および/またはジ−アルキル化ベンゼンであり得る蒸留器ボトム材料源から得ることができる。
【0029】
モノアルキル化芳香族(ベンゼン)の混合物は、モノ−アルキル化塩(例えば、モノアルキル化ベンゼンスルホナート)を得るために利用され得る。アルキル基の供給源として、組成のかなりの部分がプロピレンのポリマーを含む場合の混合物は、塩の溶解性の助けとなり得る。
【0030】
過塩基性塩からの過剰の金属は、機能性流体に蓄積し得る酸を中和するという利点をもたらし得る。別の利点は、過塩基性塩は動摩擦係数を増し得るということであり得る。過剰の金属は、当量ベースで、約30:1までの比で、一実施形態では約5:1から約18:1の範囲で、陰イオンを中和するのに必要であると推定される金属を超えて存在し得る。
【0031】
ボラート化(borated)または非ボラート化(non−borated)過塩基性清浄剤が使用され得る。これらは、米国特許第5403501号および米国特許第4792410号に記載されており、これらは、この明細書に関連する開示について、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0032】
清浄剤または清浄剤混合物によって、完全に配合された機能性流体にもたらされる金属(例えば、カルシウム)の量は、完全に配合された機能性流体の約0.015から約1重量%の範囲、一実施形態では約0.02から約1重量%の範囲、一実施形態では約0.03から約1重量%の範囲、一実施形態では約0.035から約0.08重量%の範囲、また一実施形態では約0.045から約0.06重量%の範囲であり得る。
【0033】
清浄剤または清浄剤混合物によって、完全に配合された機能性流体にもたらされるTBNは、約0.3から約2の範囲、一実施形態では約0.35から約1.5の範囲、また一実施形態では約0.4から約1の範囲であり得る。
【0034】
完全に配合された機能性流体に用いられる清浄剤(すなわち、中性塩または過塩基性塩組成物)の量は、オイル以外のものの、約0.025から約3重量%の範囲、また一実施形態では、約0.1から約1重量%の範囲であり得る。
【0035】
摩擦調整剤は、極性基または原子(例えば、窒素原子)に結び付いた少なくとも2つのヒドロカルビル基、例えば、アルキル基を含む。オイルへの妥当な溶解度を保証するために、2つのヒドロカルビル基は、合わせて、合計で少なくとも約8個の炭素原子、一実施形態では少なくとも約12個または少なくとも約16個の炭素原子を含み得る。各ヒドロカルビル基は、個々に、少なくとも約6個または少なくとも約8個の炭素原子を、例えば、約10から約30個、または約12から約24個、または約14から約20個、または約16から約18個の炭素原子を含む長鎖アルキル基であり得る。摩擦調整剤は、(a)少なくとも1種のカルボン酸または等価物(無水物、酸ハロゲン化物、エステル)と少なくとも1種のアミノアルコールとの反応生成物、(b)少なくとも1種のカルボン酸または等価物と少なくとも1種のポリアミンとの反応生成物、(c)次式
N−C(X)R
によって表されるアミドまたはチオアミド(式中、XはOまたはSであり、RおよびRは、それぞれ独立に、例えば少なくとも約6個の炭素原子の、ヒドロカルビル基であり、Rは、例えば1から約6個の炭素原子の、ヒドロキシアルキル基、またはアシル化剤と該ヒドロキシアルキル基の、そのヒドロキシル基を通じての縮合によって生成する基である)、(d)2つのヒドロカルビル基と、ポリヒドロキシル含有アルキル基またはポリヒドロキシル含有アルコキシアルキル基とを含む少なくとも1種の第3級アミン、あるいは(e)(a)、(b)、(c)および(d)の2つ以上の混合物、である。
【0036】
摩擦調整剤(a)は、1つまたは複数の次の縮合生成物を含み得る:イソステアリン酸/トリスヒドロキシメチルアミノメタン(「THAM」)(2:1のモル比);イソステアリン酸/2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール(2:1のモル比);オクタデシルコハク酸無水物/エタノールアミン/イソステアリン酸(1:1:1のモル比);または、例えば、1:1のモル比で、プロピレンオキシドと結合させた前記の物質のいずれか。特定の実施形態において、縮合生成物の1つまたは2つの成分は、分岐鎖を含み得る。
【0037】
縮合生成物の各々のタイプにおいて、カルボン酸または等価物は、前記具体例として示されたものであっても、あるいは天然植物油および動物油からの脂肪酸または合成により製造された脂肪酸から誘導される類似のカルボン酸であってもよい。それらは、通常、約8から約30個の炭素原子範囲にあり、実質的に様式は線状である。代わりに、それらは、約10から約24個の炭素原子、または約12から約22個の炭素原子、または約16から20個の炭素原子を含み得る。カルボン酸または等価物は、線状または分岐状であり得る。例には、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、トール油酸、炭化水素の酸化により誘導される酸、置換されたコハク酸、アルコールへのアクリラートまたはメタクリラートの付加により誘導されるエーテル−酸などが含まれ得る。(エーテル−酸の反応生成物は、「ヒドロカルビル」の定義として上で記載されたように、エーテル官能基の存在にも関わらず、基が実質的に炭化水素の特徴を示すという条件で、必須のヒドロカルビル基を含み得る。)酸の混合物、例えば、イソステアリン酸およびオクタデシルコハク酸またはオクタデシルコハク酸無水物もまた使用でき、このような混合物は、エタノールアミンのようなアミノアルコールと反応させる時に有用である。
【0038】
アミノアルコールは、アミン官能基およびアルコール官能基の両方を含む分子であり得る。アミン官能基は、少なくとも1つの置き換え可能な水素を含む窒素原子の形、すなわち、第1級または第2級アミンであり得る。使用され得るアミノアルコールの例には、トリス−ヒドロキシメチルアミノメタン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、およびエタノールアミンが含まれ得る。使用され得る他のアミノアルコールには、3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール、5−アミノ−1−ペンタノール、2−アミノ−1−ペンタノール、2−アミノ−1,2−プロパンジオール、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン、N−N’−ビス−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、および1−アミノプロピル−3−ジイソプロパノールアミンが含まれ得る。前記アミノアルコールの2種以上の混合物も使用され得る。
【0039】
摩擦調整剤に存在する2つのヒドロカルビル基は、酸反応物のヒドロカルビル部分に由来し得る。その場合、2モルの酸が1モルのアミノアルコールと反応させられ、2モルの各々がそれによって1つの長鎖ヒドロカルビル基を提供することが通常望ましい。この比は通常、約1.2:1から約3:1まで、または約1.6:1から約2.5:1まで、または約1.9:1から約2.1:1まで変わり得る。何らかの反応生成物において、生成物の混合物が存在し、上の比のいずれかで反応させることは、出発物質の相対的な量にある程度依存する統計的比率または他の比率の、いくらかの1:1付加物、2:1付加物、3:1付加物などに至り得ることが理解される。必要とされる2つのヒドロカルビル基を生成物の少なくとも一部が含むならば、生成物が1:1付加物の部分を含み得ることは、本発明の範囲からそのような生成物を除外しない。2つの異なる種類の酸が使用される場合、その比は、このような全ての酸のモル数と全てのアミノアルコールのモル数の比が通常の通り約2:1であれば、約1:1:1、などであり得る。代わりに、アミノアルコールそれ自体が、1つの長鎖ヒドロカルビル基の供給源である場合、約1:1の比が、1分子当たり2つのヒドロカルビル基をもたせるのに適切であり得る。
【0040】
摩擦調整剤(b)は、少なくとも1種のカルボン酸または等価物と少なくとも1種のポリアミンとの反応生成物を含み得る。このカルボン酸または等価物は、アルキルまたはアルケニルコハク酸または無水物であり得る。カルボン酸または等価物は、米国特許第5750476号(この特許は参照によって本明細書に組み込まれる)の第2欄、15〜39行、および第3欄、17〜55行に記載のように、異性化アルケニルにより置換されたコハク酸無水物であり得る。これらのアルケニル基は、それらの飽和アルキル類似体になるように、水素化されていてもよい。ポリアミンは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン(pentamene)、またはこれらの2種以上の混合物を含み得る。カルボン酸または等価物とポリアミンのモル比は、約2:1であり得る。反応条件は、米国特許第5750476号に開示されている。
【0041】
摩擦調整剤(c)は、第2級アミンとヒドロキシ酸またはチオ酸との縮合物と見なされ得る。このアミンは、置換基ヒドロカルビル基、例えばアルキル基を含み得る。アミンは次式
NH
によって表すことができ、式中、RおよびRは、それぞれ独立に、少なくとも6個の炭素原子(例えば、約6から約30個の炭素原子、または8から約24個の炭素原子、または約10から約20個、または約10から約18個、または約12から約16個の炭素原子)のヒドロカルビル基である。RおよびR基は、線状または分岐状、飽和または不飽和、脂肪族、芳香族、または脂肪族と芳香族の混合であり得る。特定の実施形態において、それらは、アルキル基、特に線状アルキル基であり得る。RおよびR基は、同じであっても異なっていてもよい。適切なアミンの市販例は、Armeen 2C(商標)の商用名で販売されており、これは、2つのC12アルキル基を有すると考えられる。一実施形態において、アミンは、ジ−ココアルキルアミンまたは同族アミンを含み得る。ジ−ココアルキルアミン(または、ジ−ココアミン)は、上の式における2つのR基が優越的にC12基である(ある量のC乃至C18が存在し得るが)、ココナッツオイルから誘導される第2級アミンである。一実施形態において、基RおよびRの一方または両方が、2−エチルヘキシル基であり得る。一実施形態において、アミドまたはチオアミドのアミン部分RN−は、(2−エチルヘキシル)(水素化獣脂(tallow))アミン部分を含み得る(ここで、「水素化獣脂」部分は優越的にC18基を有する獣脂から誘導される)。市販のジアルキルアミンは、一定量のモノアルキルアミンおよび/またはトリアルキルアミンを含み得る、また、このような市販の材料から生成される生成物は、本発明の範囲内にあると想定されている(どのようなトリアルキルアミン成分もアミドを生成する反応性があるとは期待され得ないことを認めるが)。
【0042】
摩擦調整剤(c)は、前記アミンと、ヒドロキシ酸またはヒドロキシチオ酸あるいはこれらの反応性等価物との縮合生成物であり得る。XがOである場合に、そのアミドは、式RCOOHによって表すことができるヒドロキシ酸の誘導体であり得る。ヒドロキシ酸(または、場合によって、ヒドロキシチオ酸)において、Rは、1から約6個の炭素原子のヒドロキシアルキル基、またはアシル化剤(これには、硫黄含有アシル化剤が含まれ得る)と、このようなヒドロキシアルキル基の、そのヒドロキシル基を通じての縮合によって生成する基であり得る。すなわち、Rの−OH基は、それ自体、潜在的に反応性があり得て、さらなる酸性物質またはそれらの反応性等価物と縮合して、例えばエステルを生成し得る。こうして、ヒドロキシ酸は、例えば、グリコール酸のような酸の1つまたは複数のさらなる分子と縮合し得る。適切なヒドロキシ酸の例は、グリコール酸、すなわち、ヒドロキシ酢酸、HO−CH−COOHである。グルコール酸は、実質的に純粋な状態で、または70%の水溶液としてのいずれかで、市販品が入手できる。Rが2個以上の炭素原子を含む時、ヒドロキシ基は1番の炭素(アルファ)上、または鎖の別の炭素(例えば、ベータ)上にあり得る。炭素鎖そのものは、線状、分岐状または環状であり得る。
【0043】
摩擦調整剤(d)は、次式
NR
により表される第3級アミンを含み得る(式中、RおよびRは、それぞれ独立に、少なくとも約6個の炭素原子(例えば、約8から20個の炭素原子、または約10から約18個、または約12から約16個の炭素原子)のアルキル基であり、Rは、ポリヒドロキシル含有アルキル基またはポリヒドロキシル含有アルコキシアルキル基である)。一実施形態において、このアミンは、ジ−ココアルキルアミンまたは同族アミンからの生成物を含み得る。ジ−ココアルキルアミン(または、ジ−ココアミン)は、上の式における2つのR基が、優越的に、ココナッツオイルから誘導されるC12基である第2級アミンである。一実施形態において、Rは、ポリオール含有アルキル基(すなわち、2つ以上のヒドロキシ基を含む基)、または1つまたは複数のヒドロキシ基および1つまたは複数のアミン基を含む基であり得る。例えば、Rは、−CH−CHOH−CHOH、あるいはこの同族基、例えば、約3から約8個の炭素原子、または約3から約6個の炭素原子、または約3から約4個の炭素原子、および2つ、3つ、4つまたはこれを超えるヒドロキシ基を含む(通常、1個の炭素原子当たり1つ以下のヒドロキシ基)基であり得る。したがって、得られる典型的な生成物は、次式
N−CH−CHOH−CHOH
またはこれらの同族体によって表すことができ、ここで、前記の通り、RおよびRは独立に、約8から約20個の炭素原子のアルキル基であり得る。このような生成物は、ジアルキルアミンと、エポキシドまたはハロゲン化ヒドロキシ(例えば、クロロヒドロキシ、ブロモヒドロキシおよび/またはヨードヒドロキシ)化合物との反応によって得ることができる。特に、第2級アミンとグリシドール(2,3−エポキシ−1−プロパノール)または「クロログリセリン」(すなわち、3−クロロプロパン−1,2−ジオール)との反応は、前記の条件の下で有効であり得る。ジココアミンと1モル以上のグリシドールまたはクロログリセリンとの反応に基づくこのような物質は、摩擦調整の性能をもたせるのに有用であり得る。反応が、数倍モルのグリシドールまたはクロログリセリン、あるいは他のエポキシアルカノールまたはクロロジオールとである場合、エーテル含有ダイマーまたはオリゴマー基、すなわち、ヒドロキシル置換アルコキシルアルキル基が生じ得る。
【0044】
摩擦調整剤(d)は、特定の実施形態において、約3から約8個の炭素原子(例えば、約3から約6個、または約3個の炭素原子)を含むコア部分を含む化合物として、別の仕方で記述でき、このコア部分は、(i)少なくとも2つのヒドロキシ基、または少なくとも1つのヒドロキシ基および1から4個の炭素原子の少なくとも1つのアルコキシ基(このアルコキシ基は少なくとも1つのヒドロキシ基または別のこのようなアルコキシ基によってさらに置換されている);および(ii)少なくとも1つのアミノ基(この窒素原子は、2つのヒドロカルビル基を有し、各ヒドロカルビル基は、独立に、約6から約30個の炭素原子を有する);によって置換されている。
【0045】
摩擦調整剤(a)、(b)、(c)および(d)の2つ以上の混合物(e)も使用され得る。
【0046】
機能性流体における摩擦調整剤の量は、自動変速機におけるシャダー、すなわち、変速機流体の摩擦特性が不適切にバランスされている時にクラッチ操作の間に認められる性能欠陥を低減または抑制するのに適する量であり得る。この量は、機能性流体の約0.25から5重量%であり得る。代わりに、量として、約0.5から約5重量%、または、約1から約3重量%が含まれ得る。濃縮物では、これらの量は比例して大きいであろう。
【0047】
分散剤は1種または複数の「カルボン酸分散剤(carboxylic dispersant)」を含み得る。これらは、次のものを含めて、多くの米国特許に記載されている:米国特許第3219666号、米国特許第3316177号、米国特許第3340281号、米国特許第3351552号、米国特許第3381022号、米国特許第3433744号、米国特許第3444170号、米国特許第3467668号、米国特許第3501405号、米国特許第3542680号、米国特許第3576743号、米国特許第3632511号、米国特許第4234435号、再発行米国特許第26433号、および米国特許第6165235号。
【0048】
カルボン酸分散剤は、1種または複数のスクシンイミド分散剤を含み得る。これらは、ヒドロカルビルで置換された無水コハク酸(またはこの反応性等価物、例えば、酸、酸ハロゲン化物、またはエステル)とアミンとの反応によって調製され得る。ヒドロカルビル置換基は、平均で、少なくとも約8個、または少なくとも約20個、または少なくとも約30個、または少なくとも約35個の炭素原子で、約350個まで、または約200個まで、または約100個までの炭素原子を含み得る。ヒドロカルビル基はポリアルケンから誘導され得る。このポリアルケンは、少なくとも約500の
【0049】
【化1−1】

(数平均分子量)によって特徴付けられ得る。ポリアルケンは、少なくとも約500、または少なくとも約700、または少なくとも約800、または少なくとも約900で、約5000まで、または約2500まで、または約2000まで、または約1500までの
【0050】
【化1−2】

によって特徴付けられ得る。一実施形態において、
【0051】
【化1−3】

は、約500、または約700、または約800から、約1200または約1300まで変わり得る。一実施形態において、多分散性
【0052】
【化1−4】

は少なくとも約1.5であり得る。
【0053】
前記ポリアルケンには、2から約16個の炭素原子、または2から約6個の炭素原子、または2から約4個の炭素原子の重合性オレフィンモノマーのホモポリマーおよびインターポリマーが含まれ得る。オレフィンは、モノオレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、および1−オクテン;またはポリオレフィン性モノマー、例えば、ジオレフィン性モノマー、例えば、1,3−ブタジエンおよびイソプレンであり得る。一実施形態において、インターポリマーはホモポリマーであり得る。使用され得るポリマーの例はポリブテンである。一実施形態において、約50%のポリブテンは、イソブチレンに由来し得る。ポリアルケンは、通常の手順によって調製され得る。
【0054】
前記コハク酸アシル化剤は、ポリアルケンと過剰の無水マレイン酸とを反応させて、置換されたコハク酸アシル化剤を得ることによって調製でき、ここで、置換基の各当量重量に対するコハク酸基の数は、少なくとも約1.3、または少なくとも約1.5、または少なくとも約1.7、または少なくとも約1.8であり得る。1つの置換基当たりのコハク酸基の最大数は、約4.5まで、または約2.5まで、または約2.1まで、または約2.0までであり得る。置換されたコハク酸アシル化剤(この置換基は前記ポリオレフィンに由来する)の調製および使用は、米国特許第4234435号に記載されている。
【0055】
置換されたコハク酸アシル化剤は、前記アミンおよびアミン蒸留器ボトムとして知られている重質アミン生成物を含めて、アミンと反応させることができる。アシル化剤と反応させるアミンの量は、約1:2から約1:0.75のCO:Nの比を与えるような量であり得る。アミンが第1級アミンである場合、イミドへの完全な縮合が起こり得る。様々な量のアミド生成物、例えばアミド酸(amidic acid)もまた存在し得る。反応が、前記と異なり、アルコールとであれば、得られる分散剤はエステル分散剤であろう。別個の分子にであっても、同一の分子にであっても(前記の縮合アミンにおけるように)、アミンとアルコールの両方の官能基が存在する場合、アミド、エステル、および可能性としてイミド官能基の混合が存在し得る。これらは、エステル−アミド分散剤と呼ぶことができる。
【0056】
分散剤は、アミン分散剤であり得る。アミン分散剤は、比較的高分子量の脂肪族または脂環式ハロゲン化物とアミン、例えばポリアルキレンポリアミンとの反応生成物であり得る。これらの例は、次の米国特許に記載されている:米国特許第3275554号、米国特許第3438757号、米国特許第3454555号、および米国特許第3565804号。
【0057】
分散剤はマンニッヒ(Mannich)分散剤であり得る。マンニッヒ分散剤は、アルキルフェノール(このアルキル基は、少なくとも約30個の炭素原子を含む)と、アルデヒド(特に、ホルムアルデヒド)およびアミン(特に、ポリアルキレンポリアミン)との反応生成物である。これらは、例示である次の米国特許に記載されている:米国特許第3036003号、米国特許第3236770号、米国特許第3414347号、米国特許第3448047号、米国特許第3461172号、米国特許第3539633号、米国特許第3586629号、米国特許第号3591598、米国特許第3634515号、米国特許第3725480号、米国特許第3726882号、および米国特許第3980569号。
【0058】
分散剤は、後処理された分散剤であり得る。後処理された分散剤は、カルボキシル、アミンまたはマンニッヒ分散剤を、尿素、チオ尿素、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素で置換されたコハク酸無水物、ニロリル、エポキシド、ホウ酸のようなホウ素化合物(「ボラート化分散剤」を生じるように)、亜リン酸(phosphorus acids)または無水物のようなリン化合物、あるいは2,5−ジメルカプトチアジアゾール(DMTD)のような試薬と反応させることによって得ることができる。これらは、次の米国特許に記載されている:米国特許第3200107号、米国特許第3282955号、米国特許第3367943号、米国特許第3513093号、米国特許第3639242号、米国特許第3649659号、米国特許第3442808号、米国特許第3455832号、米国特許第3579450号、米国特許第3600372号、米国特許第3702757号、および米国特許第3708422号。
【0059】
前記分散剤の任意の2つ以上の混合物も使用され得る。
【0060】
機能性流体中の分散剤の量は、機能性流体の(オイル以外のものの)約6重量%までの範囲、一実施形態では約1から約6重量%までの範囲にあり得る。一実施形態において、分散剤の量は、約1.5から約5.5重量%、または約2から約4重量%の範囲にあり得る。濃縮物では、これらの量は、比例して、より大きいであろう。
【0061】
機能性流体は、1種または複数の粘度調整剤および/または分散剤粘度調整剤を含み得る。粘度調整剤(VM)および分散剤粘度調整剤(DVM)は、よく知られている。VMおよびDVMの例には、ポリメタクリラート、ポリアクリラート、ポリオレフィン、スチレン−マレイン酸エステルのコポリマー、および、ホモポリマー、コポリマーおよびグラフトコポリマーを含めて、類似のポリマー物質が含まれ得る。DVMは、窒素含有メタクリラートポリマー、例えば、少なくとも1種のアルキルメタクリラートおよびジメチルアミノプロピルメタクリルアミドから誘導される窒素含有メタクリラートポリマーを含み得る。
【0062】
市販のVM、DVMの例、およびそれらの化学的タイプには、以下が含まれ得る:ポリイソブチレン(例えば、BP AmocoによるIndopol(商標)、または ExxonMobilによるParapol(商標));オレフィンコポリマー(例えば、LubrizolによるLubrizol(商標)7060、7065、および7067、ならびにMitsuiによるLucant(商標)HC−2000LおよびHC−600);水素化スチレン−ジエンコポリマー(例えば、ShellによるShellvis(商標)40および50、ならびにLubrizolによるLZ(登録商標)7308、および7318);スチレン/マレアートコポリマー、これらは分散剤コポリマーである(例えば、LubrizolによるLZ(登録商標)3702および3715);ポリメタクリラート、これらのいくつかは分散性を有する(例えば、RohMaxによるViscoplex(商標)シリーズのもの、AftonによるHitec(商標)シリーズ、ならびにLubrizolによるLZ 7702(商標)、LZ 7727(商標)、LZ 7725(商標)およびLZ 7720C(商標));オレフィン−グラフト−ポリメタクリラートポリマー(例えば、RohMaxによるViscoplex(商標)2−500および2−600);および、水素化ポリイソプレン星型ポリマー(例えば、ShellによるShellvis(商標)200および260)。使用され得る粘度調整剤は、米国特許第5157088号、米国特許第5256752号、および米国特許第5395539号に記載されている。VMおよび/またはDVMは、約20重量%までの範囲の濃度で、機能性流体に使用され得る。約1から約12重量%、または約3から約10重量%の濃度が用いられ得る。
【0063】
機能性流体は、1種または複数の補助摩擦調整剤を含み得る。これらの摩擦調整剤は、当業者によく知られている。使用され得る摩擦調整剤のリストは、米国特許第4792410号、米国特許第5395539号、米国特許第5484543号、および米国特許第6660695号に含まれている。米国特許第5110488号は、摩擦調整剤として有用な脂肪酸の金属塩、特に亜鉛塩を開示する。使用され得る補助摩擦調整剤のリストは以下を含み得る:
(i)脂肪ホスファイト
(ii)脂肪酸アミド
(iii)脂肪エポキシド
(iv)ボラート化脂肪エポキシド
(v)上で検討された脂肪アミン以外の脂肪アミン
(vi)グリセロールエステル
(vii)ボラート化グリセロールエステル
(viii)アルコキシ化脂肪アミン
(ix)ボラート化アルコキシ化脂肪アミン
(x)脂肪酸の金属塩
(xi)硫化オレフィン
(xii)脂肪イミダゾリン
(xiii)カルボン酸とポリアルキレン−ポリアミンの縮合生成物
(xiv)アルキルサリシラートの金属塩
(xv)アルキルリン酸のアミン塩
(xvi)エトキシ化(ethoxylated)アルコール
およびこれらの2つ以上の混合物。
【0064】
これらのタイプの摩擦調整剤の各々の典型的なものは、知られており、市販されている。例えば、(i)脂肪ホスファイトは、一般に、式(RO)PHOのものである。この式で示されるジアルキルホスファイトは、式(RO)(HO)PHOの少量のモノアルキルホスファイトと共に存在し得る。これらの構造において、用語「R」は、通常の通り、アルキル基を表す。言うまでもなく、アルキルは実際にはアルケニルであってもよく、したがって、本明細書で用いられる場合、用語「アルキル」および「アルキル化」は、飽和および不飽和「アルキル」基の両方を包含すると理解されるべきである。ホスファイトは、そのホスファイトを実質的に親油性にするのに十分なヒドロカルビル基を有するべきである。ヒドロカルビル基は分岐状または非分岐状であり得る。多くの適切なホスファイトが市販されており、米国特許第4752416号に記載のようにして合成され得る。ホスファイトは、各R基に、約8から約24個の炭素原子を含み得る。脂肪ホスファイトは、脂肪基の各々に、約12から約22個の炭素原子、または約16から20個の炭素原子を含み得る。一実施形態において、脂肪ホスファイトは、オレイル基から構成され、こうして、各脂肪基に、18個の炭素原子を有し得る。
【0065】
使用され得る(iv)ボラート化脂肪エポキシドは、カナダ特許第1188704号に開示されている。これらの油溶性ホウ素含有組成物は、約80℃から約250℃の温度で、ホウ酸または三酸化ホウ素を、次式
【0066】
【化1−5】

を有する少なくとも1種の脂肪エポキシドと反応させることによって調製でき、式中、R、R、RおよびRの各々は、水素または脂肪族基である、あるいはこれらの任意の2つは、エポキシ炭素原子またはそれらが結合している原子と一緒に、環状基を形成している。脂肪エポキシドは、少なくとも約8個の炭素原子を含み得る。
【0067】
ボラート化脂肪エポキシドは、2つの物質、すなわち、試薬AおよびBの反応を含むそれらの調製方法によって特徴付けられ得る。試薬Aは、酸化ホウ素、または様々な形のいずれかのホウ酸(メタホウ酸(HBO)、オルトホウ酸(HBO)および四ホウ酸(tetraboric acid、H)を含めて)であり得る。ホウ酸、特にオルトホウ酸が使用され得る。試薬Bは、上の式を有する少なくとも1種の脂肪エポキシドであり得る。その式において、R基の各々は、水素または脂肪族基で、R基の少なくとも1つは、少なくとも6個の炭素原子を含むヒドロカルビルまたは脂肪族基であり得る。試薬Aと試薬Bのモル比は、約1:0.25から約1:4の範囲であり得る。約1:1から約1:3の比が使用でき、約1:2が有用であり得る。ボラート化脂肪エポキシドは、2つの試薬を単にブレンドし、それらを、約80℃から約250℃、一実施形態では約100℃から約200℃の範囲の温度で、反応が起こるのに十分な時間、加熱することによって調製され得る。望まれる場合、反応は、実質的に不活性で、通常は有機液体の希釈剤の存在下に実施され得る。反応の間、水が生成し、蒸留によって除去され得る。
【0068】
(iii)ボラート化されてない脂肪エポキシドは、上の「試薬B」に相当し、補助摩擦調整剤として有用であり得る。
【0069】
使用され得るボラート化アミンは、米国特許第4622158号に開示されている。ボラート化アミン摩擦調整剤((ix)ボラート化アルコキシ化脂肪アミンを含めて)は、前記のホウ素化合物を対応するアミンと反応させることによって調製され得る。アミンは、単なる脂肪アミンまたはヒドロキシ含有第3級アミンであり得る。ボラート化アミンは、前記のホウ素反応物を、アミン反応物に加え、得られる混合物を、約50℃から約300℃、一実施形態では約100℃から約250℃、一実施形態では約150℃から約230℃の範囲の温度で、撹拌しながら加熱することによって調製され得る。反応は、副生成物の水が反応混合物から生成しなくなり、反応の完了を示すまで続けられ得る。
【0070】
ボラート化アミンを調製するのに有用なアミンには、「ETHOMEEN」の商標によって知られ、Akzo Nobelから入手できる市販のアルコキシ化脂肪アミンが含まれ得る。これらのETHOMEEN(商標)物質の代表的な例には、ETHOMEEN(商標)C/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]−ココ−アミン);ETHOMEEN(商標)C/20(ポリオキシエチレン−[10]ココアミン);ETHOMEEN(商標)S/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]ソイアミン(soyamine));ETHOMEEN(商標)T/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]−獣脂−アミン);ETHOMEEN(商標)T/15(ポリオキシエチレン−[5]獣脂アミン);ETHOMEEN(商標)0/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]オレイル−アミン);ETHOMEEN(商標)18/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]オクタデシルアミン);およびETHOMEEN(商標)18/25(ポリオキシエチレン−[15]オクタデシルアミン)が含まれ得る。有用であり得る脂肪アミンおよびエトキシ化脂肪アミンは、米国特許第4741848号に記載されている。
【0071】
前記(viii)アルコキシ化脂肪アミン、および(v)脂肪アミン自体(例えばオレイルアミン)は、摩擦調整剤として有用であり得る。これらのアミンは市販されている。
【0072】
ボラート化されたおよびボラート化されていないグリセロール脂肪酸エステルはいずれも、摩擦調整剤として使用され得る。(vii)ボラート化グリセロール脂肪酸エステルは、グリセロールの脂肪酸エステルを、反応水を除去しながら、ホウ酸によりボラート化することによって調製され得る。各ホウ素が、反応混合物中に存在する約1.5から約2.5のヒドロキシル基と反応し得るように、十分なホウ素が存在すべきである。反応は、約60℃から約135℃の範囲の温度で、有機溶媒なしに、またはメタノール、ベンゼン、キシレン、トルエン、またはオイルのような有機溶媒の存在下に実施され得る。
【0073】
(vi)グリセロールの脂肪酸エステル自体は、当技術分野においてよく知られている様々な方法によって調製され得る。これらのエステルの多くは、例えば、グリセロールモノオレイン酸エステルおよびグリセロール獣脂エステルは、工業的規模で製造されている。有用なエステルは油溶性であり、また、天然の産物中に見出され、下でより詳細に記載される、CからC22の脂肪酸、またはこれらの混合物から調製され得る。グリセロールの脂肪酸モノエステルが使用され得るが、モノ−およびジエステルの混合物もまた使用され得る。例えば、市販のグリセロールモノオレイン酸エステルは、約45重量%から約55重量%のモノエステル、および約55重量%から約45重量%のジエステルの混合物を含み得る。
【0074】
脂肪酸は、上記のグリセロールエステルを調製するのに使用され得る。それらは、また、それらの(x)金属塩、(ii)アミド、および(xii)イミダゾリンを調製するのに使用でき、これらのいずれもまた、摩擦調整剤として使用され得る。脂肪酸は、約6から約24個の炭素原子、または約8から約18個の炭素原子を含み得る。これらの酸は分岐状または直鎖、飽和または不飽和であり得る。適切な酸には、2−エチルヘキサン酸、デカン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、ラウリン酸、およびリノレン酸、ならびに、天然の産物である獣脂、パーム油、オリーブ油、ピーナッツ油、トウモロコシ油、および牛脚油(neat’s foot oil)からの酸が含まれ得る。有用な酸はオレイン酸であり得る。金属塩には、亜鉛およびカルシウムの塩が含まれ得る。例には、過塩基性カルシウム塩および塩基性オレイン酸−亜鉛塩錯体(これは、一般式ZnOleateOによって表すことができる)が含まれ得る。アミドは、アンモニア、または第1級もしくは第2級アミン(例えば、ジエチルアミンおよびジエタノールアミン)との縮合によって調製されものであり得る。脂肪イミダゾリンには、酸とジアミンまたはポリアミン(例えば、ポリエチレンポリアミン)との環状縮合生成物が含まれ得る。イミダゾリンは、次の構造、
【0075】
【化2】

によって表すことができ、ここで、Rは、アルキル基であり、R’は、水素またはヒドロカルビル基もしくは置換されたヒドロカルビル基(−(CHCHNH)n−基を含めて)である。一実施形態において、摩擦調整剤は、CからC24の脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合生成物、例えば、イソステアリン酸とテトラエチレンペンタミンとの生成物であり得る。カルボン酸とポリアルキレンアミンの縮合生成物(xiii)は、イミダゾリンまたはアミドであり得る。
【0076】
硫化オレフィン(xi)は、摩擦調整剤として使用され得るよく知られた市販物質である。これらには、米国特許第4957651号および米国特許第4959168号の教示に従って調製される硫化オレフィンが含まれ得る。これらは、(1)少なくとも1種の多価アルコール脂肪酸エステル、(2)少なくとも1種の脂肪酸、(3)少なくとも1種のオレフィン、または(4)少なくとも1種の1価アルコール脂肪酸エステル、から選択される2種以上の反応物の共硫化混合物を含み得る。
【0077】
反応物(3)のオレフィン成分は、少なくとも1種のオレフィンを含み得る。このオレフィンは脂肪族オレフィン(これは、約4から約40個の炭素原子、または約8から約36個の炭素原子を含み得る)であり得る。末端オレフィン、またはアルファ−オレフィンが使用され得る。これらには、約12から約20個の炭素原子を有するものが含まれ得る。これらのオレフィンの混合物が市販されており、このような混合物が使用され得る。
【0078】
2種以上の反応物の共硫化混合物は、適切な反応物混合物を硫黄源と反応させることによって調製され得る。硫化されようとする混合物は、約10から約90部の反応物(1);または約0.1から約15重量部の反応物(2);または約10から約90重量部、もしくは約15から60重量部、もしくは約25から約35重量部の反応物(3);または約10から約90重量部の反応物(4)を含み得る。混合物は、反応物(3)と、反応物(1)、(2)または(4)と認定される反応物群の少なくとも1つの別の反応物とを含み得る。硫化反応は、撹拌しながら高温で、また任意選択で不活性雰囲気中で不活性溶媒の存在下に、実施され得る。硫化剤には、単体硫黄、硫化水素、ハロゲン化硫黄+硫化ナトリウム、または硫化水素と硫黄もしくは二酸化硫黄との混合物が含まれ得る。約0.5から約3モルの硫黄が1モルのオレフィン結合に対して用いられ得る。
【0079】
アルキルサリシラートの金属塩(xiv)には、長鎖(例えば、C12からC16)アルキル置換サリチル酸のカルシウム塩および他の塩が含まれ得る。
【0080】
アルキルリン酸のアミン塩(xv)には、リン酸のオレイルエステルおよび他の長鎖エステルのアミンとの塩が含まれ得る。有用なアミンには、オレイルアミン、2−エチルヘキシルアミン、メチルオレイルアミン、ジココアミン、およびこれらの2種以上の混合物が含まれ得る。やはり含まれるのは、Primene(商標)の商用名で販売されている、第3級脂肪族第1級アミンである。
【0081】
補助摩擦調整剤は、前記の摩擦調整剤に追加して使用され得る。機能性流体に使用される補助摩擦調整剤の量は、機能性流体の約1.5重量%までの範囲で、一実施形態では約0.1から約1.5重量%、または約0.2から約1.0、または約0.25から約0.75重量%であり得る。一実施形態において、補助摩擦調整剤の量は、約0.2重量%まで、または約0.1重量%までの濃度で、例えば、約0.01から約0.1重量%で存在し得る。
【0082】
機能性流体はまた、少なくとも1種の亜リン酸、亜リン酸塩、亜リン酸エステル、または硫黄含有類似体を含めて、これらの誘導体も含み得る。亜リン酸、塩、エステルまたはこれらの誘導体には、リン酸、亜リン酸、亜リン酸エステルまたはこれらの塩、ホスファイト、リン含有アミド、リン含有カルボン酸またはエステル、リン含有エーテル、およびこれらの2つ以上の混合物が含まれ得る。亜リン酸無水物が使用され得る。一実施形態において、亜リン酸、エステルまたは誘導体は、有機または無機の亜リン酸、亜リン酸エステル、亜リン酸塩、またはこれらの誘導体であり得る。亜リン酸には、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、ならびにチオリン酸類(ジチオリン酸さらにはモノチオリン酸が含まれる)、チオホスフィン酸およびチオホスホン酸が含まれ得る。使用され得るリン化合物の1グループは、次式
【0083】
【化3】

によって表されるアルキルリン酸モノアルキル第1級アミン塩であり、ここで、R、R、Rは、アルキルまたはヒドロカルビル基である、またはRおよびRの1つはHであり得る。ジアルキルとモノアルキルリン酸エステルの1:1混合物が使用され得る。このタイプの化合物は、米国特許第5354484号に記載されている。85%のリン酸(これは15重量%の水を含む)が使用され得る。これらは、リン調節剤として使用され得る。リン調節剤は、機能性流体の重量に対して、約0.01から約3重量%の範囲の濃度で、一実施形態では約0.03重量%から約0.2重量%、または約0.03重量%から約0.1重量%で機能性流体に添加され得る。
【0084】
他の材料は、それらが前記の必要とされる成分または仕様に不適合でなければ、機能性流体に、任意選択で含められてもよい。このような材料には、ヒンダードフェノール抗酸化剤、第2級芳香族アミン抗酸化剤、硫化フェノール抗酸化剤、油溶性銅化合物、リン含有抗酸化剤、有機硫化物、二硫化物、および多硫化物を含めて、抗酸化剤(すなわち、酸化防止剤)が含まれ得る。他の任意選択の成分には、シール膨潤剤、例えば、イソデシルスルホランまたはフタラートエステルが含まれ、これらは、シールを柔軟に保つように意図されている。やはり許容されるのは、流動点降下剤、例えば、アルキルナフタレン、ポリメタクリラート、酢酸ビニル/フマラート/またはマレアートのコポリマー、およびスチレン/マレアートのコポリマーである。別の材料は、耐摩耗剤、例えば1種または複数の亜鉛ジアルキルジチオホスファートであり得る。これらの任意選択の材料は、当業者によく知られており、通常、市販されており、欧州特許出願公開第761805号に、より詳細に記載されている。腐食抑制剤、染料、流動化剤、臭気マスキング剤、および消泡剤のような知られている材料もまた含めることができる。有機ボラートエステルおよび有機ボラート塩が含められてもよい。
【0085】
上の複数の成分は、完全に配合された機能性流体の状態、または少量の潤滑油中の濃縮物の状態であることができる。それらが、濃縮物で存在する場合、通常、これらの濃度は、最終ブレンドにおける、より希釈された状態のそれらの濃度に正比例するであろう。濃縮物は、量を減らしたオイルを、例えば、約10重量%から約50重量%のオイルを含み得る。
【実施例】
【0086】
配合A〜Fが表1に開示されている。これらの配合は自動変速機流体として有用である。表1において、全ての数値は重量部である。全てのパーセンテージは重量パーセントである。配合C(これは、清浄剤を全く含まない)は、比較のために提供されている。
【0087】
【表1−1】

【0088】
【表1−2】

【0089】
【表1−3】

配合中の分散剤粘度調整剤および基油の量は、流体を、自動変速機流体として使用されるのに適したものとするように選択されている。
【0090】
配合CおよびDは、フォード耐シャダー耐久性(Ford Anti−Shudder Durability)(ASD)試験を用いて試験される。この試験は、高速クラッチ連結(engagement)、低速エイジングおよびトルクスイープ(sweep)、さらには静止分離(static breakaway)測定を通じて、流体の摩擦特性および耐シャダー耐久性を求める。トルクの滑り速度に関する微分係数vs.試験時間が報告される。結果は図1に示されている。
【0091】
配合CおよびDは、フォード30K摩擦耐久性試験を用いて試験される。この試験は、30,000回のクラッチ連結サイクルに渡る流体の摩擦特性および摩擦耐久性を求め、試験継続時間に渡る、試験流体の動的および静的トルク測定、さらには静止分離トルク測定を報告する。静的トルク/動的トルクの比vs.試験サイクルが報告される。結果は図2に示されている。
【0092】
配合CおよびDは、GM低速クラッチおよびトルク容量試験を用い、試験される。この試験は、電子制御コンバータクラッチ、炭素繊維摩擦材料での自動変速機流体の、低回転速度での、トルク容量、シャダー性向およびギアハンチング特性を求める。結果は、3つの温度での様々なクラッチクランプ圧力について、滑り速度に対する摩擦係数のグラフとして報告される。低圧(273kPa)での配合CおよびDについての結果が、それぞれ、図3および4に示される。中圧(683kPa)での配合CおよびDについての結果が、それぞれ、図5および6に示される。高圧(1044kPa)での配合CおよびDについての結果が、それぞれ、図7および8に示される。
【0093】
配合EおよびFは、日本自動車工業規格協会(Japanease Automotive Standards Organization)(JASO)試験手順JASO M349:2001に定められるJASO低速摩擦装置(LVFA)を用い、試験される。この手順は、1つの摩擦プレートおよびスチール反力(reaction)プレートを用いる。摩擦プレートは、Dynax D−0512タイプの複合材料である。摩擦係数は、様々な滑り速度および温度で求められる。試験サイクルは、24時間の一連の耐久サイクルの後、一連の速度で、一連の逐次摩擦測定(μ−v特性試験)を用いる。40℃、0.9m/sの滑り時点で、負の勾配またはdμ/dvを生じる時間の長さがオイルの性能を比較するのに有用である。試験手順は、80℃で30分間の慣らし時間を用いる。この後、1.0MPaの接触圧力を用い、40℃、80℃、および120℃で、μ−v(摩擦係数vs.滑り速度)特性の測定が行われる。速度は、ゼロから1.5m/sまで上昇させられ、1.5m/sで1秒間保持され、次いで、ゼロまで下げられる。加速および減速の時間は3秒である。
【0094】
μ−v特性試験の後、24時間実施される耐久試験が続けられる。24時間の終わりに、μ−v特性試験は再び行われ、0.3および0.9m/sでの勾配が記録される。耐久サイクルの条件は、120℃、0.9m/sの滑り速度、および1.0MPaの接触圧力である。耐久試験は、加圧、高温下に繰り返される30分間隔の滑り、その後の負荷なしで高温での1.0分の静止時間を用いて実施される。このサイクルが、24時間繰り返され、その後、μ−v特性測定が行われる。
【0095】
24時間耐久サイクルおよびμ−v特性は、0.9m/sでの勾配またはdμ/dvが負になるまで続けられ、この時点で試験は終了する。負のμ−v勾配までの全時間が、流体の耐シャダー耐久性能の尺度である。
【0096】
結果は、表2〜5に与えられている。数値(試験時間および温度以外)は、勾配またはdμ/dvについてのものである。合格/不合格の規準は、40℃で数値が負になる時の時間に関連する。より大きな時間が、より良好であり、表5におけるようなより大きな正の数が許容される。
【0097】
0.9m/sでの配合Eについての結果は表2に示されている。
【0098】
【表2】

0.3m/sでの配合Eについての結果は表3に示されている。
【0099】
【表3】

0.9m/sでの配合Fについての結果は表4に示されている。
【0100】
【表4】

0.3m/sでの配合Fについての結果は表5に示されている。
【0101】
【表5】

開示の技術が様々な実施形態に関連させて説明されたが、それらの様々な修正が、明細書を読むことで、当業者には明らかになり得ることが理解されるべきである。したがって、本明細書に開示された本発明は、添付の特許請求の範囲内に含まれる、このような修正を包含すると想定されていることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の潤滑粘度のオイル;
少なくとも1種の清浄剤であって、該清浄剤は、機能性流体の約0.015から約1重量%の範囲の濃度に等しい量の金属を、該機能性流体にもたらし、該清浄剤は、約0.3から約2の範囲の全塩基価に等しい量の塩基性を、該機能性流体にもたらす、清浄剤;ならびに
少なくとも1種の摩擦調整剤
を含む、機能性流体であって、該摩擦調整剤が、極性基または原子に結び付いた少なくとも2つのヒドロカルビル基を含み、該摩擦調整剤が、(a)少なくとも1種のカルボン酸または等価物と少なくとも1種のアミノアルコールとの反応生成物、(b)少なくとも1種のカルボン酸または等価物と少なくとも1種のポリアミンとの反応生成物、(c)次式
N−C(X)R
によって表されるアミドまたはチオアミド(式中、XはOまたはSであり、RおよびRはそれぞれ独立にヒドロカルビル基であり、Rは、ヒドロキシアルキル基、またはアシル化剤と該ヒドロキシアルキル基の、そのヒドロキシル基を通じての縮合によって生成する基である)、(d)2つのヒドロカルビル基と、ポリヒドロキシル含有アルキル基またはポリヒドロキシル含有アルコキシアルキル基とを含む少なくとも1種の第3級アミン、あるいは(e)(a)、(b)、(c)および(d)の2つ以上の混合物である、機能性流体。
【請求項2】
前記潤滑粘度のオイルが、少なくとも1種の天然油、少なくとも1種の合成油、またはこれらの2種以上の混合物を含む、請求項1に記載の機能性流体。
【請求項3】
前記潤滑粘度のオイルが少なくとも1種の鉱油を含む、請求項1または請求項2に記載の機能性流体。
【請求項4】
前記清浄剤が、少なくとも1種のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属の少なくとも1種の中性または過塩基性の塩を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の機能性流体。
【請求項5】
前記塩が、1つまたは複数の、スルホナート、カルボキシラート、フェナート、サリシラート、またはこれらの2種以上の混合物である、請求項4に記載の機能性流体。
【請求項6】
前記清浄剤が少なくとも1種の過塩基性カルシウムスルホナートを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の機能性流体。
【請求項7】
前記極性基または原子が窒素原子を含み、前記2つのヒドロカルビル基が合計で少なくとも約8個の炭素原子を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の機能性流体。
【請求項8】
前記摩擦調整剤が、イソステアリン酸とトリスヒドロキシメチルアミノメタンの縮合生成物を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の機能性流体。
【請求項9】
前記摩擦調整剤が、ヒドロキシ酸とジ−ココアルキルアミンの縮合生成物を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の機能性流体。
【請求項10】
前記摩擦調整剤が、3−クロロプロパン−1,2−ジオールとジ−ココアルキルアミンの反応生成物を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の機能性流体。
【請求項11】
少なくとも1種のカルボン酸分散剤、アミン分散剤、マンニッヒ分散剤、後処理された分散剤、またはこれらの2種以上の混合物をさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の機能性流体。
【請求項12】
前記カルボン酸分散剤が、少なくとも1種のスクシンイミド分散剤を含む、請求項11に記載の機能性流体。
【請求項13】
前記スクシンイミド分散剤がホウ素を含む、請求項12に記載の機能性流体。
【請求項14】
1種または複数の粘度調整剤および/または分散剤粘度調整剤をさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の機能性流体。
【請求項15】
前記分散剤粘度調整剤が窒素含有メタクリラートポリマーを含む、請求項14に記載の機能性流体。
【請求項16】
窒素含有メタクリラートポリマーが、少なくとも1種のアルキルメタクリラートおよびジメチルアミノプロピルメタクリルアミドから誘導される、請求項15に記載の機能性流体。
【請求項17】
少なくとも1種の補助摩擦調整剤をさらに含み、該補助摩擦調整剤が、1つまたは複数の、(i)脂肪ホスファイト、(ii)脂肪酸アミド、(iii)脂肪エポキシド、(iv)ボラート化脂肪エポキシド、(v)脂肪アミン、(vi)グリセロールエステル、(vii)ボラート化グリセロールエステル、(viii)アルコキシ化脂肪アミン、(ix)ボラート化アルコキシ化脂肪アミン、(x)脂肪酸の金属塩、(xi)硫化オレフィン、(xii)脂肪イミダゾリン、(xiii)カルボン酸とポリアルキレン−ポリアミンの縮合生成物、(xiv)アルキルサリシラートの金属塩、(xv)アルキルリン酸のアミン塩、またはこれらの2種以上の混合物を含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の機能性流体。
【請求項18】
1つまたは複数の、亜リン酸、亜リン酸塩、亜リン酸エステル、これらの1つまたは複数の誘導体、またはこれらの2種以上の混合物をさらに含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の機能性流体。
【請求項19】
少なくとも1種の分散剤、粘度調整剤、分散剤粘度調整剤、摩擦安定化剤、リン調節剤、耐摩耗剤、補助摩擦調整剤、酸化防止剤、腐食抑制剤、シール膨潤剤、流動点降下剤、染料、流動化剤、臭気マスキング剤、起泡抑制剤および/または希釈油をさらに含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の機能性流体。
【請求項20】
少なくとも1種の潤滑粘度のオイル;
少なくとも1種の過塩基性カルシウムスルホナート清浄剤であって、該清浄剤は、自動変速機流体の約0.015から約1重量%の範囲の濃度に等しい量のカルシウムを、該自動変速機流体にもたらし、該清浄剤は、約0.3から約2の範囲の全塩基価に等しい量の塩基性を、該自動変速機流体にもたらす、清浄剤;ならびに
少なくとも1種の摩擦調整剤
を含む、自動変速機流体であって、該摩擦調整剤が、(a)イソステアリン酸とトリスヒドロキシメチルアミノメタンの縮合生成物、(b)少なくとも1種のアルキルもしくはアルケニルコハク酸または無水物と、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、またはこれらの2種以上の混合物との反応生成物、(c)ヒドロキシ酸とジ−ココアルキルアミンの縮合生成物、(d)3−クロロプロパン−1,2−ジオールとジ−ココアルキルアミンの反応生成物、あるいは(e)(a)、(b)、(c)および(d)の2つ以上の混合物を含む、自動変速機流体。
【請求項21】
機能性流体の製造に使用される濃縮物であって、該濃縮物は、
少なくとも1種の潤滑粘度のオイル;
少なくとも1種の清浄剤であって、該清浄剤は、該機能性流体の約0.015から約1重量%の範囲の濃度に等しい量の金属を、該機能性流体にもたらすのに十分な濃度で該濃縮物中に存在し、該清浄剤は、約0.3から約2の範囲の全塩基価に等しい量の塩基性を、該機能性流体にもたらすのに十分な濃度で該濃縮物中に存在する、清浄剤;ならびに
少なくとも1種の摩擦調整剤
を含み、該摩擦調整剤は、極性基または原子に結び付いた少なくとも2つのヒドロカルビル基を含み、摩擦調整剤が、(a)少なくとも1種のカルボン酸または等価物と少なくとも1種のアミノアルコールとの反応生成物、(b)少なくとも1種のカルボン酸または等価物と少なくとも1種のポリアミンとの反応生成物、(c)次式
N−C(X)R
によって表されるアミドまたはチオアミド(式中、XはOまたはSであり、RおよびRはそれぞれ独立にヒドロカルビル基であり、Rは、ヒドロキシアルキル基、またはアシル化剤と該ヒドロキシアルキル基の、そのヒドロキシル基を通じての縮合によって生成する基である)、(d)2つのヒドロカルビル基と、ポリヒドロキシル含有アルキル基またはポリヒドロキシル含有アルコキシアルキル基とを含む少なくとも1種の第3級アミン、あるいは(e)(a)、(b)、(c)および(d)の2つ以上の混合物である、濃縮物。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−513695(P2010−513695A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543090(P2009−543090)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/087426
【国際公開番号】WO2008/076825
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】