説明

機能性無機ボード及びその製造方法

本発明は、マグネシウム系無機質及び相変化物質を含有するベース層を含む無機ボード及びその製造方法に関するものであって、既存に使用されてきた石膏の代わりにマグネシウム系無機質を使用するので、既存の石膏ボードの脆弱な強度及び耐水性を補完することができる。その結果、薄い厚さで形成できるとともに、マグネシウム系無機質と相変化物質の優れた混合率によってベース層内に相変化物質の含量を増加させることができ、快適な室内温度を維持することができる。したがって、本発明に係る無機ボードは、耐水強度が要求される室内建築内装材などに有用に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性無機ボード及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、石膏ボード又はセラミックボードなどの建築用内装板材は、石膏を板状に製造し、その前後面に紙を付着することによって剪断強度に耐えられる構造体を維持するように製造してある。
【0003】
このような石膏ボードは、断熱性及び難燃性に優れるが、水分によって結合部分が容易に弛緩することによって、構造体が砕けたり、強度が弱くなるため、釘などを打つ場合に容易に破損するという問題があった。
【0004】
すなわち、既存にボード資材として主に使用されてきた石膏は、密度が0.7g/cmに過ぎないので、相対的に比重の高い他の添加物との混合が難しく、特性上、強度が脆弱であるので容易に破壊するおそれがあり、ボードの厚さを一定以上に厚く形成しなければならないという問題があった。
【0005】
上述したように、従来使用されてきた石膏ボードは、水分に脆弱であり、強度が弱いので、耐水強度が要求される建築内装材などとして使用される場合、その効用性が大きく低下した。
【0006】
従って、従来使用された石膏ボードの劣悪な強度及び耐水性の問題を解決すると同時に、建築内装材としての使用に適した物性を有するボードの開発必要性が高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記のような技術開発の必要性を充足させるために創出されたものであって、その目的は、強度及び耐水性に優れると同時に、室内温度を調節する蓄熱効果を有する機能性無機ボード及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、マグネシウム系無機質及び相変化物質を含有するベース層を含む無機ボードを提供する。
【0009】
また、本発明は、前記課題を解決するための他の手段として、マグネシウム系無機質及び相変化物質を混合する第1の段階と、前記第1の段階で得られた混合物を成形する第2の段階とを含む本発明に係る無機ボードの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、既存に使用されてきた石膏の代わりにマグネシウム系無機質を使用するので、既存の石膏ボードの脆弱な強度及び耐水性を補完することができる。そして、比重が類似したマグネシウム系無機質と相変化物質を含有するので、相変化物質の含量をより増加させることができ、相変化物質による潜蓄熱効果をより向上させることができる。
【0011】
また、本発明に係る無機ボードは、強度に優れるので薄く構成することができ、相変化物質によって蓄熱効果が向上するので、快適な室内温度を維持できる室内温度調節効果を有することができ、建築内装材などに有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一例に係る無機ボードを示した概略図である。
【図2】本発明の他の一例に係る無機ボードを示した概略図である。
【図3】本発明の他の一例に係る無機ボードの製造方法を示した工程概略図である。
【図4】実施例1で使用されたMePCMを示したSEM写真である。
【図5】実施例1で使用されたMePCMとマグネシウム系無機質とを混合したベース層原材料を示したSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、マグネシウム系無機質及び相変化物質を含有するベース層を含む無機ボードに関するものである。
【0014】
以下、本発明に係る無機ボードについて具体的に説明する。
【0015】
上述したように、本発明に係る無機ボードは、マグネシウム系無機質及び相変化物質を含有するベース層を含む。
【0016】
本発明で、「マグネシウム系無機質」とは、マグネシウムを含有する無機物質を意味するもので、このようなマグネシウム系無機質は強度及び耐水性に優れるので、これを含有するボードは、耐水強度が要求される建築内装材などにより有用に使用することができる。
【0017】
前記マグネシウム系無機質は、マグネシウムを含有し、優れた強度及び耐水性を示すことができるものであって、この分野で公知となった物質を全て含むことができる。その種類が特別に制限されることはないが、例えば、前記マグネシウム系無機質は、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム又はこれらの混合物を含むことができ、具体的には、酸化マグネシウム及び塩化マグネシウムの混合物を使用することができる。
【0018】
また、マグネシウム系無機質は、特別に制限されることはないが、例えば、ベース層100体積部に対して40体積部〜90体積部の量で含有することができる。前記マグネシウム系無機質が40体積部未満の量で含有される場合、強度及び耐水性が低下するおそれがあり、前記マグネシウム系無機質が90体積部を超える量で含有される場合、相対的に相変化物質の含量が減少し、潜蓄熱機能が低下するおそれがある。
【0019】
さらに、前記マグネシウム系無機質は、一定の強度などの物性向上のために木粉、膨張真珠岩、発泡剤及び硬化調節剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0020】
この場合、前記添加剤も、特別に制限されることはないが、例えば、マグネシウム系無機質の機能に影響を及ぼさない範囲内で、全体のマグネシウム系無機質100重量部に対して15重量部以下の量で含有することができ、その下限が特別に制限されることはない。
【0021】
一方、本発明で、「相変化物質(phase change material;PCM)」とは、潜熱吸収及び放出効果を用いてエネルギーを貯蔵したり、温度を一定に維持させる機能を示す物質を意味する。このような機能を示す物質として、有機相変化物質及び無機相変化物質を全て含むことができ、その種類が特別に制限されることはない。例えば、相変化物質はパラフィンであってもよく、より具体的には、下記の化学式1で表示されるパラフィンであってもよい。
【0022】
[化1]
2n+2
【0023】
前記式で、nは10〜30である。
【0024】
また、本発明で使用される相変化物質が前記化学式1で表示されるパラフィンである場合、nは、具体的に14〜24であってもよく、より具体的には16〜18であってもよい。
【0025】
前記相変化物質のより具体的な例を挙げると、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサン、ヘンエイコサン、ドコサン、トリコサン及びテトラコサンからなる群より選ばれた一つ以上を含むことができる。
【0026】
さらに、前記相変化物質は、高分子物質によってマイクロカプセル化されたものであってもよい。
【0027】
本発明で、「マイクロカプセル化されたもの」とは、特定物質がコア部を構成する物質の外部表面を取り囲むことによって、マイクロ単位の大きさを有するコア―シェル構造のカプセル型で構成されたものを称するものであって、前記のように、相変化物質の外部表面を高分子物質がカプセル化することによってマイクロ単位の大きさを有する形態で構成されたマイクロカプセル化相変化物質(Micro encapsulated phase change material;MePCM)を意味する。
【0028】
前記高分子物質の種類は、特別に制限されるものではなく、相変化物質の外部表面を取り囲みながら保護して固定させるシェルを形成可能なものであればいずれも含むことができる。例えば、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリオキシメチレンウレア樹脂、テフロン、ナイロン及びゼラチンからなる群より選ばれた一つ以上を含むことができる。
【0029】
このように高分子物質によってマイクロカプセル化された相変化物質を使用する場合、相変化物質を安全に固定させて保護できるという長所がある。
【0030】
一方、相変化物質の大きさも、特別に制限されることはないが、例えば、1μm〜100μmの粒径を有する相変化物質粒子が90%以上分布されたものであってもよい。具体的に、本発明では、平均粒径が1μm〜100μmである相変化物質を使用することができ、より具体的には、平均粒径が2μm〜50μmである相変化物質を使用することができる。
【0031】
前記相変化物質の平均粒径が1μm未満である場合、相変化物質の大きさが過度に小さく、潜蓄熱効果を発揮するために要求される相変化物質の含量が大きく増加するので、製造費用を大きく増加させるおそれがあり、前記相変化物質の平均粒径が100μmを超える場合、相変化物質間の物理的衝突によって破壊するおそれがある。
【0032】
また、前記相変化物質の潜蓄熱量は、特別に制限されるものではないが、より優れた蓄熱効果を得るために、例えば、潜蓄熱量が50〜500kJ/kgであるものを使用することができ、具体的には、潜蓄熱量が50〜200kJ/kgであるものを使用することができる。
【0033】
前記相変化物質の潜蓄熱量が50kJ/kg未満である場合、潜蓄熱効果が微々たるものになるおそれがあり、潜蓄熱量が500kJ/kgを超える相変化物質は実質的に具現しにくい。
【0034】
また、相変化物質の相変化温度も、特別に制限されるものではないが、例えば、常温以内であってもよく、より具体的には10℃〜40℃であってもよい。
【0035】
前記相変化物質の相変化温度が常温下で存在しない場合、常温下で相変化による潜蓄熱効果を具現しにくく、特定の温度条件下のみで潜蓄熱効果を具現することができ、効率性が大きく低下するおそれがある。
【0036】
一方、本発明で使用されるマグネシウム系無機質の密度は、相変化物質の密度と類似してもよい。マグネシウム系無機質及び相変化物質の密度は、特別に制限されるものではないが、例えば、約0.8〜1.0g/cmであってもよく、具体的には約0.9g/cmであってもよい。ベース層に含有される前記マグネシウム系無機質及び相変化物質は、その比重が前記のように互いに類似するので、優れた相溶性によって容易に混合することができる。
【0037】
従って、相変化物質は、ベース層内により多量で含有することができ、その結果、相変化物質が有する潜蓄熱機能によって無機ボードの蓄熱効果を大きく向上させることができる。
【0038】
一方、相変化物質も、特別に制限されるものではないが、例えば、ベース層全体の100体積部に対して10体積部〜60体積部の量で含有することができ、具体的には20体積部〜60体積部の量で含有することができ、より具体的には30体積部〜60体積部の量で含有することができる。
【0039】
前記相変化物質がベース層全体の100体積部に対して10体積部未満の量で含有される場合、相変化物質が占める体積が大きくないので、蓄熱効果が微々たるものになるおそれがある。そして、前記相変化物質が60体積部を超える量で含有される場合、ボード成形自体が難しくなるおそれがあり、母材の結合力低下によってボードの強度及び耐久性が低下するおそれがある。
【0040】
さらに、前記ベース層は、前記マグネシウム系無機質及び相変化物質の他に補強繊維を含むことができる。前記補強繊維を追加することによって、無機ボードの靱性、屈曲性、柔軟性及び曲げ強度などをさらに向上させることができる。
【0041】
また、前記補強繊維の種類は、特別に制限されるものではないが、例えば、パルプ繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ガラス繊維、ロックウール、セピオライト及び鉱物繊維などの有機系又は無機系繊維であってもよい。本発明に係る無機ボードの強度、耐水性及び潜蓄熱効果に影響を及ぼさない範囲内で、この分野で公知となった補強繊維を含むことができる。前記補強繊維も、特別に制限されるものではなく、目的とする物性によって適切な量で含有することができる。
【0042】
一方、本発明に係る無機ボードの蓄熱量は、特別に制限されるものではないが、例えば、50kJ/m〜500kJ/mであってもよい。これによって、本発明に係る無機ボードは、優れた強度及び耐水性と共に優れた潜蓄熱機能を有することができる。
【0043】
本発明で「蓄熱量」とは、無機ボード内に含有される相変化物質の含量及び無機ボードの厚さによって決定される無機ボードの面積当たりの潜蓄熱量を意味する。
【0044】
このような無機ボードは、強度及び耐水性に優れるだけでなく、潜蓄熱効果に優れるので、特に室内温度を調節する建築内装材などに有用に使用することができる。
【0045】
本発明に係る無機ボードも、使用される用途によって適切な厚さで形成することができ、特別に限定されることはないが、例えば、その厚さは3mm〜20mmであってもよい。
【0046】
一方、本発明に係る無機ボードは、ベース層の一面又は両面に形成され、パルプ繊維、ガラス繊維、セルロース及びポリエステル繊維からなる群より選ばれた一つ以上を含む表面層をさらに含むことができる。
【0047】
前記表面層は、織物、不織布及びこれらの組み合わせ形態で構成することができ、具体的には、上述した繊維の不織布で構成することができる。前記不織布は、この分野で公知となった方法によって抗菌又は抗カビ処理が施された機能性不織布であってもよい。
【0048】
本発明では、前記のような表面層をベース層の一面又は両面に形成することによって、無機ボードが水分に露出する場合にも強度や寸法変化を減少させることができ、その結果、耐水強度を向上させることができる。前記無機ボードを用いて製造された建築内装材は、他の内装材との結合性が向上するだけでなく、優れた強度及び装飾効果を示すことができる。
【0049】
さらに、本発明に係る無機ボードは、前記ベース層と表面層との間に、強度補強のためにガラス繊維メッシュを含むガラス繊維強化層をさらに含むことができる。
【0050】
前記のようなガラス繊維強化層を含むことによって、表面層による強度補強効果に付加的に強度を向上させることができ、その結果、より優れた耐水強度を有する無機ボードを提供することができる。
【0051】
一方、本発明に係る無機ボードは、より美麗な外観を形成するために前記表面層上に形成された印刷層をさらに含むことができる。すなわち、本発明に係る無機ボードは、この分野で公知となった印刷方法(例えば、転写印刷、グラビア印刷など)を用いて表面層上に精密印刷を行うことができ、その結果、より華麗でかつ高級な外観を具現することができる。
【0052】
以下、図1及び図2を参考にして本発明の一例に係る無機ボードを説明する。
【0053】
図1を参考にすると、本発明の一例に係る無機ボード1は、マグネシウム系無機質11及び相変化物質13を混合した混合物からなるベース層10を含むことができる。
【0054】
すなわち、本発明の一例に係る無機ボード1は、強度及び耐水性に優れたマグネシウム系無機質11に蓄熱効果を有する相変化物質13を混合し、これを成形することによって形成されたベース層10を含むので、耐水強度に優れるだけでなく、潜蓄熱効果を通した室内温度調節機能を同時に有することができる。
【0055】
また、図2を参考にすると、本発明の他の一例に係る無機ボード3は、前記のような優れた耐水強度及び蓄熱効果を有するベース層10の両面に織物、不織布及びこれらの組み合わせのうちいずれか一つの形態で表面層30が形成されており、優れた防水効果を有することができる。
【0056】
前記のような本発明に係る無機ボードは、建築内装材として天井、壁、床などに施工され、室内温度の上昇時に熱を吸収することによって暑くならないように維持し、室内温度が低くなると、貯蔵されていた熱を放出することによって適正な温度に維持させることができる。特に、本発明に係る無機ボードは、快適な室内温度を維持できるように調節すると同時に、耐水強度が要求される室内建築内装材に有用に使用することができる。
【0057】
さらに、本発明は、マグネシウム系無機原料及び相変化物質を混合する第1の段階と、前記第1の段階で得られた混合物を成形する第2の段階とを含む本発明に係る無機ボードの製造方法に関するものである。
【0058】
第1の段階は、マグネシウム系無機質及び相変化物質を含む混合物を製造する段階である。
【0059】
第1の段階で、マグネシウム系無機質は、相変化物質と容易に混合できるように、上述したマグネシウム系無機質に水などの溶媒を混合した形態で使用することができる。
【0060】
例えば、前記マグネシウム系無機質が酸化マグネシウム、塩化マグネシウム及び水を含む場合、マグネシウム系無機質内に含有される各成分は、それらの含量が特別に制限されることなく、例えば、酸化マグネシウム30〜50重量部、塩化マグネシウム20〜35重量部及び水15〜30重量部を含むことができる。
【0061】
本発明で、前記マグネシウム系無機質に含有された各成分が前記含量範囲を逸脱する場合、後述する成形工程で適切な粘度を示すことができなく、無機物の養生反応時に未反応物を発生させるおそれがあり、その結果、製造されたボードの強度及び耐久性を低下させるおそれがある。
【0062】
ただし、本発明に係るマグネシウム系無機質内に含有される各成分は、それらの含量が前記例示したものに制限されることはなく、本発明で目的とする無機ボードの優れた強度及び耐水性に影響を及ぼさない範囲内で多様な組成で混合することができる。
【0063】
一方、第1の段階で、相変化物質も、その形態が特別に制限されることはなく、例えば、粉末状、顆粒状又はスラリー状から選択された一つの形態からなってもよく、相変化物質の形態によって固形分の含量が変わり得る。
【0064】
すなわち、本発明で「固形分」とは、水分が含有されていない純粋な相変化物質を100重量%としたとき、水分が含有されていない固形化された部分を意味するものである。各形態による固形分の含量は、特別に制限されるものではないが、例えば、粉末状の場合は95重量%以上であってもよく、顆粒状の場合は60重量%〜80重量%であってもよく、スラリー状の場合は30重量%〜55重量%であってもよい。
【0065】
一例を挙げると、相変化物質は、水中で高分子の架橋反応によってマイクロカプセル化され、前記のマイクロカプセル化された相変化物質はスラリー状であってもよい。また、前記スラリー状の相変化物質を洗浄及び乾燥させ、料粒状又は粉末状の相変化物質を製造することができる。
【0066】
具体的に、価格が低廉で、かつ、マグネシウム系無機質との混合が容易になるようにスラリー状の相変化物質を使用することができる。
【0067】
また、第2の段階は、第1の段階で得られた混合物を成形して無機ボードを製造する段階である。
【0068】
上述したように、第1の段階で混合物を製造した後、前記混合物を成形することによって無機ボードを製造することができ、このときに使用される成形方法は、この分野でボードを成形するために使用可能な方法であればいずれも含むことができる。成形方法は、特別に制限されることはないが、例えば、圧縮成形、押出成形、射出成形、注入成形及びテープ注入成形などを使用することができ、具体的には、加圧ローラーなどを用いた圧縮成形を使用することができる。
【0069】
より具体的な例を挙げると、第1の段階で製造した混合物を平板上に塗布し、これを加圧ローラーなどを用いて圧縮成形した後、乾燥及び養生することによって本発明に係る無機ボードを製造することができる。
【0070】
さらに、本発明に係る無機ボードの製造方法は、上述した表面層、印刷層及びガラス繊維強化層から選ばれた一つ以上の層を積層する段階をさらに含むことができる。その結果、より優れた耐水強度及び華麗な装飾効果を有する無機ボードを製造することができる。
【0071】
以下、図3を参考にして本発明に係る無機ボードの製造方法をより具体的に説明すると、図3に示したように、マグネシウム系無機質及び相変化物質を混合した混合物をベース層原材料として用いてベース層原料供給部110から平板上に塗布することができる。
【0072】
続いて、前記平板上に塗布された混合物を移動させながら、上部供給ローラー131及び下部供給ローラー133からなる表面層原料供給ローラー130を用いて前記混合物の両面に不織布を積層し、加圧ローラー150で加圧成形することによって、ベース層10の両面に表面層30が形成された無機ボードを製造することができる。
【0073】
また、本発明に係る無機ボードの製造方法は、前記第2の段階以後、過度の養生による亀裂を防止し、有害成分を排出するための浸水養生工程を付加することができる。使用目的及び効率性を考慮し、連続式工程又は回分式工程などのように、この分野で公知となった工程方式を適宜採用して本発明に係る無機ボードを製造することができる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明に係る実施例及び比較例を通して本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲が下記に提示された例によって制限されることはない。
【0075】
〔製造例1〕
酸化マグネシウム24kg、塩化マグネシウム12kg、水6kg及び膨張真珠岩2.5kgを混合した混合物に商用化された発泡剤及びリン酸を少量添加し、密度が0.9g/cmになるように調節し、20分間均一に混合してマグネシウム系無機質を製造した。
【0076】
〔実施例1〕
前記製造例1で製造されたマグネシウム系無機質に固形分含量65重量%のスラリー状からなるマイクロカプセル化相変化物質(メラミンホルムアルデヒド樹脂でマイクロカプセル化されたn―オクタデカン、MePCM)を27kg添加し、さらに20分間混合することによってベース層原材料を準備した。
【0077】
前記ベース層原材料をプラスチック平板上に9mmの厚さで塗布し、加圧ローラーを用いてベース層を形成した。その後、前記ベース層の上面及び下面にポリエステル及びガラス繊維からなる第1の不織布を積層し、加圧ローラーを用いて圧着させることによって9mmの一定の厚さを有するボードを成形した。
【0078】
前記の使用された第1の不織布の構成は、下記の表1に示した。
【0079】
前記ボードを40℃で24時間養生させ、50℃で3日間乾燥させた後、再び大気中で3日間養生させ、450cm×450cmの大きさに切断して実施例1に係る無機ボードを製造した。
【0080】
ここで、図4は、前記MePCMのSEM写真で、図5は、前記MePCMとマグネシウム系無機質とを混合したベース層原材料を示したSEM写真である。
【0081】
【表1】

【0082】
〔実施例2〕
表面層上に一般の転写フィルムを用いて175℃の温度及び5気圧下で5分間熱圧着を加える転写印刷を行うことによって印刷層をさらに形成したことを除いては、実施例1と同一の方法で実施例2に係る無機ボードを製造した。
【0083】
〔実施例3〕
実施例1で製造したベース層原材料をプラスチック平板上に塗布し、ガラス繊維メッシュをベース層の上面及び下面に塗布した後、上部供給ローラー及び下部供給ローラーを用いて前記表1に示した第2の不織布を積層したことを除いては、実施例1と同一の方法で実施例3に係る無機ボードを製造した。
【0084】
〔比較例1〕
製造例1によって製造されたマグネシウム系無機質をベース層原材料として用いて無機ボードを製造したことを除いては、実施例1と同一の方法で比較例1に係る無機ボードを製造した。
【0085】
〔比較例2〕
(株)金剛高麗化学から購入した一般の石膏ボードを実施例1と同一の大きさに裁断し、比較例2に係るボードを準備した。
【0086】
〔実験例〕
1.ねじ支持力テスト
KS F 2214試験方法を用いて実施例1〜実施例3と比較例1及び比較例2に係るボードのねじ支持力をテストし、その結果を下記の表2に示した。
【0087】
2.曲げ強度テスト
KS F 2263方法を用いて実施例1〜実施例3と比較例1及び比較例2に係るボードの曲げ強度及び浸水後の曲げ強度をテストし、その結果を下記の表2に示した。
【0088】
3.密度測定
KS F 2518方法を用いて実施例1〜実施例3と比較例1及び比較例2に係るボードの密度をテストし、その結果を下記の表2に示した。
【0089】
4.その他機能性の測定
実施例1〜実施例3と比較例1及び比較例2に係るボードに対する潜蓄熱量、表面印刷可否及び裁断性を測定し、その結果を下記の表2に示した。
【0090】
(1)潜蓄熱量の測定
DSC(TA instrument社製、DSC Q10)を用いて3℃の昇温速度で0℃から50℃まで温度を上昇させた後、吸熱量を測定した。
【0091】
(2)表面印刷可否のテスト
実施例2に係る印刷層が実施例1、実施例3、比較例1及び比較例2に係るボードの表面にも形成可能であるか否かを確認できるように、実施例2で行われた転写印刷を実施例1、実施例3、比較例1及び比較例2に係るボードの表面に行うことによって、表面印刷が可能なものと表面印刷が不可能なものに分類した。
【0092】
(3)裁断性テスト
実施例1〜実施例3、比較例1及び2を一般のカッターで1回裁断したとき、裁断可否によって裁断性に優れたものと不良なものを分類した。
【0093】
【表2】

【0094】
前記表2に示したように、実施例1〜3と比較例1に係る無機ボードは、比較例2に係る石膏ボードに比べて2倍以上の曲げ強度及び5倍以上のねじ支持力を有し、浸水時の強度の減少量も大きくなかった。
【0095】
また、MePCMを含有する実施例1〜3は、前記のような優れた強度及び耐水性と共に約340kJ/mの潜蓄熱効果が発生した一方、比較例1及び2の場合、潜蓄熱効果が全く示されておらず、比較例2の場合、強度及びねじ支持力も他のサンプルに比べて著しく低く示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム系無機質及び相変化物質を含有するベース層を含む無機ボード。
【請求項2】
前記マグネシウム系無機質は、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム及びこれらの混合物からなる群より選ばれた請求項1に記載の無機ボード。
【請求項3】
前記相変化物質は下記の化学式1で表示されるパラフィンである請求項1に記載の無機ボード。
[化1]
2n+2
(前記化学式1で、nは10〜30である。)
【請求項4】
前記相変化物質は、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサン、ヘンエイコサン、ドコサン、トリコサン及びテトラコサンからなる群より選ばれた一つ以上を含む請求項1に記載の無機ボード。
【請求項5】
前記相変化物質は高分子物質によってマイクロカプセル化された請求項1に記載の無機ボード。
【請求項6】
前記高分子物質は、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリオキシメチレンウレア樹脂、テフロン、ナイロン及びゼラチンからなる群より選ばれた一つ以上を含む請求項5に記載の無機ボード。
【請求項7】
前記相変化物質は平均粒径が1μm〜100μmである請求項1に記載の無機ボード。
【請求項8】
前記相変化物質は潜蓄熱量が50〜500kJ/kgである請求項1に記載の無機ボード。
【請求項9】
前記相変化物質は相変化温度が10℃〜40℃であることを特徴とする請求項1に記載の無機ボード。
【請求項10】
前記相変化物質はベース層全体の100体積部に対して10体積部〜60体積部の量で含有される請求項1に記載の無機ボード。
【請求項11】
蓄熱量が50kJ/m〜500kJ/mである請求項1に記載の無機ボード。
【請求項12】
前記ベース層の一面又は両面に形成され、紙、ガラス繊維、セルロース及びポリエステル繊維からなる群より選ばれた一つ以上を含む表面層をさらに含む請求項1に記載の無機ボード。
【請求項13】
前記表面層上に形成された印刷層をさらに含む請求項12に記載の無機ボード。
【請求項14】
マグネシウム系無機質及び相変化物質を混合する第1の段階と、前記第1の段階で得られた混合物を成形する第2の段階と、を含む請求項1〜13のうちいずれか1項に記載の無機ボードの製造方法。
【請求項15】
前記第1の段階で、前記マグネシウム系無機質は、酸化マグネシウム30〜50重量部、塩化マグネシウム20〜35重量部及び水15〜30重量部を含む請求項14に記載の無機ボードの製造方法。
【請求項16】
前記第1の段階で、前記相変化物質は粉末状、顆粒状又はスラリー状から選ばれた一つである請求項14に記載の無機ボードの製造方法。
【請求項17】
前記第2の段階の成形は、圧縮成形、押出成形、射出成形、注入成形及びテープ注入成形からなる群より選ばれたいずれか一つを用いて行う請求項14に記載の無機ボードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−504511(P2013−504511A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529653(P2012−529653)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【国際出願番号】PCT/KR2010/005620
【国際公開番号】WO2011/034292
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(509286787)エルジー・ハウシス・リミテッド (49)
【氏名又は名称原語表記】LG HAUSYS,LTD.
【住所又は居所原語表記】One IFC Building,10 Gukjegeumyung−ro,Yeongdeungpo−gu,Seoul,Republic of Korea
【Fターム(参考)】