説明

機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法および吐出検査装置

【課題】検査後のヘッド内流路の洗浄を簡略化および高品位な機能液滴吐出ヘッドのみを確実に選別することができる機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法等を提供する。
【解決手段】機能部品の金属配線をインクジェット方式で描画する機能液滴吐出ヘッド1の飛行曲がりを検査する機能液滴吐出ヘッド1の吐出検査方法であって、描画処理のための機能液に比して、密度の低い検査溶液を導入して機能液滴吐出ヘッド1から検査溶液を検査吐出させる検査吐出工程S41と、検査吐出における各吐出ノズル18の飛行曲がりの有無を検査する飛行検査工程S42と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドの飛行曲がりを検査する機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法および吐出検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液滴吐出ヘッド(機能液滴吐出ヘッド)から被検査物上に吐出されたインク(機能液)の位置ズレを検査するドットずれ検出方法(吐出検査方法)が知られている(特許文献1参照)。この吐出検査方法では、機能液滴吐出ヘッドから、ワークへの描画処理に用いる機能液を吐出し、被検査物上に着弾した機能液の着弾結果をカメラにて撮像し、撮像された画像を画像処理することで機能液の飛行曲がりや着弾位置等を画像認識している。そして、画像処理の結果から機能液滴吐出ヘッドの良否判断を行っている。
【特許文献1】特開2005−014216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この吐出検査方法では、実際にワークに対しての描画に用いる機能液を用いて検査を行っているため、特殊な脂溶性の機能液等を用いている場合、検査後の機能液滴吐出ヘッドのヘッド内流路の洗浄(保管液に置換するための洗浄)に手間がかかると共に、洗浄しきれずに残存した機能液が変質し、吐出ノズル詰りの原因になるという問題があった。
また、検査時には「良品」と判断された機能液滴吐出ヘッドであっても、実際の描画処理で用いる機能液の密度が僅かに変化した場合や描画処理環境の変化等で、飛行曲がりを生じることもあった。
【0004】
本発明は、検査後のヘッド内流路の洗浄を簡略化することができ、高品位な機能液滴吐出ヘッドのみを確実に選別することができる機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法および吐出検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法は、ワークに対し、機能液を吐出して描画処理を行うインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドの飛行曲がりを検査する機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法であって、描画処理のための機能液に比して、密度の低い検査溶液を導入して機能液滴吐出ヘッドから検査溶液を検査吐出させる検査吐出工程と、検査吐出における各吐出ノズルの飛行曲がりの有無を検査する飛行検査工程と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
この場合、描画処理は、ワークである機能部品の金属配線を描画するために行われるものであり、機能液は、金属配線を成膜するためのものであることが好ましい。
【0007】
また、本発明の機能液滴吐出ヘッドの吐出検査装置は、機能部品の金属配線をインクジェット方式で描画する機能液滴吐出ヘッドの飛行曲がりを検査する機能液滴吐出ヘッドの吐出検査装置であって、金属配線を成膜するための機能液に比して、密度の低い検査溶液を導入して機能液滴吐出ヘッドから検査溶液を検査吐出させる検査吐出手段と、検査吐出における各吐出ノズルの飛行曲がりの有無を検査する飛行検査手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
これらの構成によれば、ワークに対する描画処理、特に機能部品の金属配線の描画処理に用いられる特殊(脂溶性等)で高価な機能液を機能液滴吐出ヘッドに導入して検査を行う必要がないため、保管液を充填する際の検査後のヘッド内流路の洗浄を簡単に行うことができる。
また、検査溶液は、機能液に比して軽量であるため、飛行曲がりが顕在化しやすい条件で吐出検査を行うことができ、吐出ノズルの僅かな不良(飛行曲がり)も検出することができる。これにより、高品位な機能液滴吐出ヘッドのみを確実に選別することができる。
【0009】
これらの場合、検査溶液として、水溶性の染料インクを用いることが好ましい。
【0010】
これらの構成によれば、検査後のヘッド内流路の水洗いが可能となり、簡単に且つ確実にヘッド内流路の洗浄を行うことができる。これにより、洗浄しきれずに残存した機能液が、ヘッド内流路で変質(固形化)し、吐出ノズル詰りを引き起こす等のトラブルを防止することができる。
【0011】
また、この場合、検査吐出工程では、検査吐出を受けるターゲットメディアに対し、描画処理におけるワークギャップより大きいギャップを存して検査吐出を行い、飛行検査工程では、ターゲットメディアに検査吐出した着弾結果に基づき、各吐出ノズルの飛行曲がりの有無を検査することが好ましい。
【0012】
また、この場合、検査吐出手段は、検査吐出を受けるためのターゲットメディアを有し、ターゲットメディアに対し、描画処理におけるワークギャップより大きいギャップを存して検査吐出を行い、飛行検査手段は、ターゲットメディアに検査吐出した着弾結果を撮像する撮像手段を有し、撮像結果に基づき各吐出ノズルの飛行曲がりの有無を検査することが好ましい。
【0013】
これらの構成によれば、ターゲットメディアと各吐出ノズルとの間隔が大きく、ターゲットメディアへの着弾位置のばらつきが顕在化しやすいため、通常の吐出(描画処理時の実吐出)では、かろうじて「不良」とならない程度の僅かな飛行曲がりをも検出することができる。これにより、さらに高品位な機能液滴吐出ヘッドのみを選別することができる。
【0014】
この場合、検査吐出工程の前工程として、機能液滴吐出ヘッドの各吐出ノズルから検査溶液を吐出させ、吐出された液滴の飛行状態を撮像して吐出の有無を検査する飛行観測工程を、更に備えたことが好ましい。
【0015】
また、この場合、飛行観測工程で吐出した検査溶液の吐出重量および吐出時の電圧から適正電圧を算出する適正電圧算出工程と、飛行観測工程での撮像結果から検査溶液の液滴の飛行速度を算出する飛行速度算出工程と、を更に備えたことが好ましい。
【0016】
これらの構成によれば、飛行曲がりを検査する以前に、ノズル詰りが生じている吐出ノズルを認識することができるため、ノズル詰りのない機能液滴吐出ヘッドにのみ後工程の処理を行える。これにより、効率良く吐出検査を実施することができる。また、飛行観測工程で吐出した結果を基に、後工程で行われる検査吐出に適した電圧の測定や、吐出した液滴の飛行速度を算出することができるため、正確な飛行曲がり検査を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付した図面を参照して、本発明の機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法を適用した吐出検査装置について説明する。この吐出検査装置は、単体としての機能液滴吐出ヘッドに対し、吐出確認検査(飛行観測工程)、吐出重量検査(適正電圧算出工程)、飛行速度検査(飛行速度算出工程)および着弾位置検査(検査吐出工程および飛行検査工程)等の吐出性能検査を行うものである。そこで、吐出検査装置の説明に先立ち、検査対象となる機能液滴吐出ヘッドについて説明する。
【0018】
図1に示すように、機能液滴吐出ヘッド1は、いわゆる2連のインクジェットヘッドであり、2連の接続針14を有する機能液導入部11と、機能液導入部11に連なる2連のヘッド基板12と、ヘッド基板12の下方に連なり液滴を吐出するヘッド本体13と、を備えている(図1(a)参照)。
【0019】
機能液導入部11は、一対の接続針14を有しており、図外の配管アダプタを介して検査溶液供給ユニット33(図2参照)から、機能液の供給を受けるようになっている。また、ヘッド本体13は、ピエゾ素子等で構成される2連のポンプ部16と、複数の吐出ノズル18が形成されたノズル面NFを有するノズルプレート17と、を有している。
【0020】
図1(b)に示すように、ノズルプレート17のノズル面NFに形成された多数の吐出ノズル18は、相互に平行、且つ半ピッチ位置ズレして列設された2列のノズル列NLを構成しており、各ノズル列NLは、等ピッチで並べた180個の吐出ノズル18で構成されている。
【0021】
ヘッド基板12には、2連のコネクタ15が設けられており、各コネクタ15はフレキシブルフラットケーブル(図示省略)を介して、後述するヘッド特性検査装置21の制御装置38に接続されている。そして、この制御装置38から出力された駆動波形が各コネクタ15を介して各ポンプ部16(圧電素子)に印加されることで、各吐出ノズル18から液滴が吐出される。このようにして、制御装置38により機能液滴吐出ヘッド1の駆動が制御されている。
【0022】
このような機能液滴吐出ヘッド1は、特殊で高価な機能液(例えば、Ag(銀)インク,密度:1.8g/cm^3)が導入され、機能部品の金属配線の描画処理に使用される。このような、機能液を用いて吐出検査を行うと、吐出検査後の機能液滴吐出ヘッド1のヘッド内流路の洗浄(保管液に置換するための洗浄)に手間がかかると共に、洗浄しきれずに残存した機能液が変質し、吐出ノズル18詰りの原因になるという問題があると共に、密度の高い機能液での吐出検査では、飛行曲がりが顕在化しにくいため、吐出ノズル18の僅かな不良が検出できないという問題もあった。
そこで、本実施形態では、機能液に比して密度の低い水溶性の染料インク(密度:1.0g/cm^3)を検査溶液として用いて、吐出検査を行っている。
【0023】
図2および図3を参照して、上記した機能液滴吐出ヘッド1の吐出性能を検査する吐出検査装置2について説明する。吐出検査装置2は、機能液滴吐出ヘッド1内への検査溶液の導入および吐出性能を検査するヘッド特性検査装置21と、飛行曲がりの有無を検査する着弾位置測定装置22(飛行検査手段)と、から構成されている。
【0024】
ヘッド特性検査装置21は、単体の機能液滴吐出ヘッド1が工具レスでセットされるヘッドホルダ31を有し、機能液滴吐出ヘッド1をY軸方向に移動させるYテーブル32と、供給チューブ40(図3(a)参照)を介して機能液滴吐出ヘッド1に検査溶液を供給する検査溶液供給ユニット33と、機能液滴吐出ヘッド1内の流路に検査溶液を導入するための吸引装置34と、機能液滴吐出ヘッド1から吐出された液滴の飛行状態を撮影する飛行観測ユニット35と、が備えられており、これらの装置等は、機台36上に配設され、チャンバ37内に収容されている。また、チャンバ37の外には、ヘッド特性検査装置21を統括的に制御する制御装置38が備えられている。さらに、このヘッド特性検査装置21では、詳しくは後述するが、機能液滴吐出ヘッド1からの検査吐出を受けるガラス基板47(ターゲットメディア)を有する検査吐出ユニット39(検査吐出手段)と飛行観測ユニット35とは、構成部品の一部を兼用するようになっている。
【0025】
上記した吸引装置34および飛行観測ユニット35(または検査吐出ユニット39)は、Yテーブル32によりY軸方向に移動する機能液滴吐出ヘッド1の移動軌跡の下方に臨むよう、機台36上に並べて配設されている。そして、吐出検査装置2は、ノズルプレート17の外観検査および機能液滴吐出ヘッド1の駆動用のICチェックを行った後、単体(1つ)の機能液滴吐出ヘッド1をヘッドホルダ31にセットして検査すべく、吸引装置34により検査溶液を機能液滴吐出ヘッド1内に導入し、ヘッド特性検査装置21および着弾位置測定装置22により検査溶液を吐出して、機能液滴吐出ヘッド1の吐出性能を検査する。
【0026】
検査溶液供給ユニット33は、Yテーブル32に付設され、検査溶液を貯留する検査溶液タンク41を有しており、検査溶液タンク41は、機能液滴吐出ヘッド1より上方に配設される。検査溶液は、セットした機能液滴吐出ヘッド1に対し、自然水頭により検査溶液タンク41から供給チューブ40を介して供給される。また、検査溶液タンク41は、それぞれ電子天秤42に載置されており(図3(a)参照)、使用された検査溶液の吐出重量の測定をすることができるようになっている。
【0027】
吸引装置34は、機能液滴吐出ヘッド1のノズル面NFに密接するキャップ43と、吸引チューブ(図示省略)を介してキャップ43に接続されたエジェクタ(図示省略)と、を有している。作業者は、キャップ43を機能液滴吐出ヘッド1のノズル面NFに密接させ、エジェクタにより吸引を行なうことで、機能液滴吐出ヘッド1内の流路に検査溶液を導入したり、吐出ノズル18の目詰まり等による吐出不良を解消することができる。そして、吸引処理の後に作業者は、ノズル面NFに付着した検査溶液を、ワイピング材等で拭き取る。なお、本実施形態では、ノズル面NFへのキャップ43の密接作業(キャッピング)を手動で行っているが、自動で行ってもよい。この場合、キャップ43または機能液滴吐出ヘッド1を昇降自在に構成し、Yテーブル32による移動との協働によりキャッピングを行う。同様に、ワイピング処理を自動化してもよい。この場合、ワイピング材をノズル面NFに押し当ててYテーブル32により移動させることで、吸引処理後のノズル面NFを払拭する。
【0028】
飛行観測ユニット35は、パルス光源であるパルスレーザを有する照明部44と、照明部44に対向して配置され、パルスレーザによるパルス光を受光する顕微鏡カメラ45と、機能液滴吐出ヘッド1から吐出された検査溶液を受ける機能液受け部46と、を備えている。機能液受け部46は、箱状に形成されており、機台36上に配設された架台23(図3(a)参照)上に、取り外し可能に固定されている。この機能液受け部46を取り外して、後述する検査吐出治具48を固定することで、検査吐出が着弾するガラス基板47のセット可能となり、飛行曲がりの検査を行うことができる。
【0029】
この飛行観測ユニット35では、照明部44と顕微鏡カメラ45を駆動させた状態で検査溶液を吐出させると、検査溶液の液滴が、照明部44と顕微鏡カメラ45との間のパルスレーザを遮って、機能液受け部46に着弾する。そして、詳細は後述するが、制御装置38は、顕微鏡カメラ45により高速度撮影された撮影結果に基づく画像解析を行うことで、吐出抜け(吐出不良)があるか否かを検査すると共に、飛行速度を計測する。また、上記した電子天秤42により測定された検査溶液の吐出重量から、吐出に最適な適正電圧Vが測定される。
【0030】
検査吐出ユニット39は、機能液滴吐出ヘッド1からの検査吐出を受けるガラス基板47(ターゲットメディア)と、ガラス基板47をセットするための検査吐出治具48と、を備えている。検査吐出治具48は、上記したように、機能液受け部46を取り外した架台23(図3(a)参照)の上に、取り外し可能に固定されている。すなわち、吐出不良の検査を行うときには、架台23上に機能液受け部46を取り付け、飛行曲がりの検査を行うときには、架台23上に検査吐出治具48を取りつける。
【0031】
そして、この検査吐出ユニット39では、ガラス基板47に対して検査吐出を行う。その後、液滴が着弾したガラス基板47を、上記したチャンバ37外の着弾位置測定装置22に移送し、着弾した液滴(着弾ドットD)の飛行曲がりを測定する。なお、本実施形態では、飛行観測ユニット35(機能液受け部46)と検査吐出ユニット39(検査吐出治具48)とは、架台23を兼用しているが、これらの装置を別個に設けてもよいし、これらの装置を1台の装置に集約してもよい。
【0032】
図4に示すように、制御装置38は、各種ドライバを有する駆動部50と、各部に接続され、ヘッド特性検査装置21全体の制御を行う制御部51と、を備えている。駆動部50には、機能液滴吐出ヘッド1を制御するヘッドドライバ52と、Yテーブル32を駆動させるヘッド移動ドライバ53と、が備えられている。
【0033】
制御部51には、各装置等を接続するためのインタフェース54と、一時的に記憶可能な記憶領域を有し、制御処理のための作業領域として使用されるRAM55と、各種記憶領域を有し、制御プログラムや制御データを記憶するROM56と、各手段からの各種データ等を記憶すると共に、各種データを処理するためのプログラム等を記憶するHDD57と、ROM56やHDD57に記憶されたプログラム等に従い、各種データを演算処理するCPU58と、これらを互いに接続するバス59と、が備えられている。
【0034】
制御部51は、各部からの各種データを、インタフェース54を介して各装置等に入力すると共に、HDD57に記憶されたプログラムに従ってCPU58に演算処理させ、その処理結果を、駆動部50(各種ドライバ)を介して各部に出力する。これにより、ヘッド特性検査装置21が制御され、各種処理が行われる。
【0035】
図2および図3(b)に示すように、着弾位置測定装置22は、チャンバ37外、つまり、ヘッド特性検査装置21とは別個独立の装置であり、移送されてきたガラス基板47を水平にセットする撮像ステージ60と、撮像ステージ60にセットされたガラス基板47上の着弾ドットDを撮像する撮像カメラ61と、撮像カメラ61を支持するカメラフレーム62と、撮像カメラ61による撮像結果から着弾ドットDの位置ずれを測定する測定コントローラ63と、を備えている。なお、本実施形態では、着弾位置測定装置22を、ヘッド特性検査装置21とは別個独立の装置として構成しているが、ヘッド特性検査装置21の機台36上に配設し、制御装置38により制御するように構成してもよい。
【0036】
図3(c)に示すように、測定コントローラ63は、撮像カメラ61等を接続するための測定用インタフェース64と、一時的な作業領域として使用される測定用RAM65と、制御プログラム等を記憶する測定用ROM66と、各種データを処理するためのプログラム等を記憶する測定用HDD67と、測定用ROM66や測定用HDD67に記憶されたプログラム等に従い、各種データを演算処理する測定用CPU68と、これらを互いに接続する測定用バス69と、が備えられており、制御装置38の制御部51と同様に、着弾位置測定装置22が制御され、各種処理が行われる。
【0037】
次に、図5および図6を参照して、機能液滴吐出ヘッド1の吐出検査方法について説明する。本実施形態における吐出検査方法は、機能液滴吐出ヘッド1の吐出ノズル18からの吐出確認検査を行う飛行観測工程S1と、吐出重量と駆動電圧の関係から吐出に適した電圧を求める適正電圧算出工程S2と、吐出ノズル18から吐出された液滴の飛行速度検査を行う飛行速度算出工程S3と、ガラス基板47に検査吐出された着弾結果から飛行曲がりの有無の検査をする飛行曲がり検査工程S4と、に大別される。また、飛行曲がり検査工程S4は、ガラス基板47に対し検査吐出を行う検査吐出工程S41と、ガラス基板47上の着弾結果から飛行曲がりの有無を判定する飛行検査工程S42と、から成る。
【0038】
上記、飛行検査工程S42以外の工程は、ヘッド特性検査装置21の制御装置38により制御され、これらの工程で用いる、各プログラムは、作業領域であるRAM55に展開され、CPU58により各種処理が行わる。他方、飛行検査工程S42は、着弾位置測定装置22の測定コントローラ63により制御される。
【0039】
この吐出検査方法により検査を実施する場合は、検査溶液供給ユニット33から機能液滴吐出ヘッド1に検査溶液を供給しつつ、Yテーブル32により機能液滴吐出ヘッド1をY軸方向に適宜移動させて、飛行観測ユニット35または検査吐出ユニット39にそれぞれ臨ませて、各検査を行う。以下の説明では、ヘッドホルダ31に機能液滴吐出ヘッド1がセットされ、吸引装置34により、機能液滴吐出ヘッド1内に検査溶液が、既に導入されているものとする。
【0040】
飛行観測工程S1は、飛行観測ユニット35の機能液受け部46に対して、機能液滴吐出ヘッド1の各吐出ノズル18から検査溶液を吐出させ、吐出された液滴の飛行状態を高速度撮影する吐出・撮影工程S11と、その撮影結果に基づいて吐出の有無を検査する吐出判定工程S12と、から成る。
【0041】
飛行観測工程S1では、先ず、照明部44と顕微鏡カメラ45を駆動させた状態で検査溶液を吐出させる。吐出された検査溶液は、照明部44と顕微鏡カメラ45との間のパルスレーザを遮って、機能液受け部46に着弾し、その様子が顕微鏡カメラ45により撮影されて制御装置38のHDD57に記憶される(吐出・撮影工程S11)。この吐出は、適正電圧算出工程S2で用いる駆動電圧および吐出重量を測定するため、想定される適正電圧Vに比して十分に高い駆動電圧と十分に低い駆動電圧とを、それぞれ機能液滴吐出ヘッド1のノズル列NL毎に印加して吐出を行わせる。そして、制御装置38は、顕微鏡カメラ45により高速度撮影された撮影結果に基づき、画像解析(2値化処理等)を行うことで、吐出抜けがあるか否かを判断する(吐出判定工程S12)。ここで、吐出抜けがない場合は、次の適正電圧算出工程S2に移行するが、吐出抜けが存在する場合は、再び吸引装置34により吸引を実施する。
【0042】
適正電圧算出工程S2は、高低2通りの駆動電圧により、それぞれ吐出された液滴の吐出重量を測定する第1吐出重量測定工程S21および第2吐出重量測定工程S22と、各吐出重量測定工程S21,S22から求めた駆動電圧および吐出重量から特性線図Gを生成する特性取得工程S23と、特性線図Gから適正電圧Vを決定する電圧決定工程S24と、から成る。
【0043】
適正電圧算出工程S2では、先ず、制御装置38により、想定される適正電圧より十分に高い第1駆動電圧VHおよび十分に低い第2駆動電圧VLを、機能液滴吐出ヘッド1のノズル列NL毎に印加して液滴吐出を行わせ、それぞれの駆動電圧時の液滴の吐出重量を、検査溶液供給ユニット33の電子天秤42から読み取り第1吐出重量MHおよび第2吐出重量MLとする(第1吐出重量測定工程S21および第2吐出重量測定工程S22)。測定の後、制御装置38は、各駆動電圧に応じた各吐出重量を座標上にプロットし、これを直線で結んで駆動電圧と吐出重量との関係を表す特性線図Gを、ノズル列NL毎に作成する(特性取得工程S23)(図6参照)。その後、生成した各特性線図Gに基づいて、所望の適正吐出重量Mに応じた適正電圧Vを、ノズル列NL毎に決定する(電圧決定工程S24)(図6参照)。
【0044】
飛行速度算出工程S3では、制御装置38により、機能液滴吐出ヘッド1のノズル面NFと機能液受け部46とのギャップ(距離)、および顕微鏡カメラ45による撮影結果のフレームレート(時間)から、飛行速度を算出する。
【0045】
続いて、図5を参照して、飛行曲がり検査工程S4について説明する。上記のように、飛行曲がり検査工程S4は、検査吐出工程S41と、飛行検査工程S42と、から成り、検査吐出工程S41は、制御装置38により制御され、他方、飛行検査工程S42は、測定コントローラ63により制御される。
【0046】
検査吐出工程S41では、先ず、飛行観測ユニット35の機能液受け部46に代えて、検査吐出ユニット39の検査吐出治具48をセットし、検査吐出治具48上にガラス基板47をセットする。そして、ガラス基板47上に機能液滴吐出ヘッド1を臨ませて検査溶液を検査吐出する。この際、機能液滴吐出ヘッド1のノズル面NFとガラス基板47とのギャップは、実際に金属配線を描画処理する際の機能部品(ワーク)とノズル面NFとのワークギャップよりも大きく設けた状態で検査吐出を行う。このように、ガラス基板47と各吐出ノズル18とのギャップ(間隔)を大きくすることで、ガラス基板47への着弾位置のばらつきが顕在化するため、描画処理時では、かろうじて「不良」とならない程度の僅かな飛行曲がりの検出が可能となる、これにより、非常に高品位な機能液滴吐出ヘッド1のみを選別することができる。
【0047】
検査吐出が終了した後、作業者は、液滴が着弾したガラス基板47を検査吐出治具48から取り外し、チャンバ37外に存する着弾位置測定装置22へと移送する。そして、ガラス基板47を着弾位置測定装置22の撮像ステージ60にセットする。その後に着弾位置測定装置22において行われる、飛行検査工程S42は、セットしたガラス基板47を撮像カメラ61で撮像する撮像工程S43と、撮像結果から飛行曲がりを判定する判定工程S44と、から成る。
【0048】
先ず、作業者は、撮像カメラ61を用いて、セットしたガラス基板47上に着弾した複数の液滴(着弾ドットD)を撮像する(撮像工程S43)。撮像された画像は、測定用HDD67に記憶される。次に、撮像された画像および飛行曲がり判定用のプログラムは、作業領域である測定用RAM65に展開され、測定用CPU68により各種処理が行われ、飛行曲がりの有無を判定する(判定工程S44)。
【0049】
具体的には、図7(a)に示すように、本実施形態では、各ノズル列NLの両端に位置する吐出ノズル18による一対の着弾ドットDを結んだ直線上に配置されるように複数(178個)の着弾基準点Pをデータとしてノズル列NL毎に規定し、この着弾基準点Pと着弾ドットDとのズレ量を測定することで飛行曲がりが生じているか否かを判定する。このズレ量が許容範囲内である場合、検査溶液を吐出した吐出ノズル18は、着弾予定位置に正常に吐出している(飛行曲がり「無」)と判定される。一方、ズレ量が許容範囲から外れている場合には飛行曲がり「有」と判定される。なお、各着弾基準点Pおよびズレ量の許容量(許容範囲)は、予め実験等により求めておき、測定コントローラ63にデータとして保存されている。また、着弾ドットDが小さい場合や円形でない場合(図7(b)参照)には不良吐出と判定し、さらに、着弾ドットDが無い場合には不吐出と判定するようにしてもよい。
【0050】
飛行曲がり検査工程S4が終了した後、機能液滴吐出ヘッド1内の流路(ヘッド内流路)に、純水、エタノールの順に導入して、ヘッド内流路に残存する検査溶液を洗い流す。検査溶液は、水溶性であるため、水洗いが可能であり、簡単に且つ確実にヘッド内流路の洗浄を行うことができる。エタノールによるヘッド内流路の洗浄の後、保存液をヘッド内流路に充填する。この保存液は、ヘッド内流路の乾燥を防止するものであり、本実施形態では、ジエチレングリコールを用いている。
【0051】
以上の構成によれば、機能部品の金属配線の描画処理に用いられる特殊(脂溶性等)で高価な機能液を機能液滴吐出ヘッド1に導入して検査を行う必要がないため、保管液を充填する際の検査後のヘッド内流路の洗浄を簡単に行うことができると共に、洗浄しきれずに残存した機能液が、ヘッド内流路で変質(固形化)し、吐出ノズル18詰りを引き起こす等のトラブルを防止することができる。また、検査溶液は、機能液に比して軽量であるため、飛行曲がりが顕在化しやすい条件で吐出検査を行うことができ、吐出ノズル18の僅かな不良(飛行曲がり)も検出することができる。これにより、高品位な機能液滴吐出ヘッド1のみを確実に選別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】機能液滴吐出ヘッドの表裏外観斜視図である。
【図2】本実施形態に係る吐出検査装置を模式的に示した平面図である。
【図3】ヘッド特性検査装置を模式的に示した側面図(a)、着弾位置測定装置を模式的に示した側面図(b)および測定コントローラのブロック図(c)である。
【図4】ヘッド特性検査装置の主制御系のブロック図である。
【図5】本実施形態に係る吐出検査方法のフローチャートである。
【図6】駆動電圧と吐出重量との特性を説明するための図である。
【図7】判定工程を説明するための図である。
【符号の説明】
【0053】
1:機能液滴吐出ヘッド、2:吐出検査装置、18:吐出ノズル、22:着弾位置測定装置、35:飛行観測ユニット、38:制御装置、39:検査吐出ユニット、42:電子天秤、44:照明部、45:顕微鏡カメラ、46:機能液受け部、47:ガラス基板、61:撮像カメラ、63:測定コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対し、機能液を吐出して描画処理を行うインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドの飛行曲がりを検査する機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法であって、
前記描画処理のための前記機能液に比して、密度の低い検査溶液を導入して前記機能液滴吐出ヘッドから前記検査溶液を検査吐出させる検査吐出工程と、
前記検査吐出における各吐出ノズルの飛行曲がりの有無を検査する飛行検査工程と、を備えたことを特徴とする機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法。
【請求項2】
前記描画処理は、前記ワークである機能部品の金属配線を描画するために行われるものであり、
前記機能液は、前記金属配線を成膜するためのものであることを特徴とする請求項1に記載の機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法。
【請求項3】
前記検査溶液として、水溶性の染料インクを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法。
【請求項4】
前記検査吐出工程では、前記検査吐出を受けるターゲットメディアに対し、前記描画処理におけるワークギャップより大きいギャップを存して前記検査吐出を行い、
前記飛行検査工程では、前記ターゲットメディアに前記検査吐出した着弾結果に基づき、前記各吐出ノズルの前記飛行曲がりの有無を検査することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法。
【請求項5】
前記検査吐出工程の前工程として、前記機能液滴吐出ヘッドの前記各吐出ノズルから前記検査溶液を吐出させ、吐出された液滴の飛行状態を撮像して吐出の有無を検査する飛行観測工程を、更に備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法。
【請求項6】
前記飛行観測工程で吐出した前記検査溶液の吐出重量および吐出時の電圧から適正電圧を算出する適正電圧算出工程と、
前記飛行観測工程での前記撮像結果から前記検査溶液の液滴の飛行速度を算出する飛行速度算出工程と、を更に備えたことを特徴とする請求項5に記載の機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法。
【請求項7】
機能部品の金属配線をインクジェット方式で描画する機能液滴吐出ヘッドの飛行曲がりを検査する機能液滴吐出ヘッドの吐出検査装置であって、
前記金属配線を成膜するための機能液に比して、密度の低い検査溶液を導入して前記機能液滴吐出ヘッドから前記検査溶液を検査吐出させる検査吐出手段と、
前記検査吐出における各吐出ノズルの飛行曲がりの有無を検査する飛行検査手段と、を備えたことを特徴とする機能液滴吐出ヘッドの吐出検査装置。
【請求項8】
前記検査溶液として、水溶性の染料インクを用いることを特徴とする請求項7に記載の機能液滴吐出ヘッドの吐出検査装置。
【請求項9】
前記検査吐出手段は、前記検査吐出を受けるためのターゲットメディアを有し、前記ターゲットメディアに対し、前記描画処理におけるワークギャップより大きいギャップを存して前記検査吐出を行い、
前記飛行検査手段は、前記ターゲットメディアに前記検査吐出した着弾結果を撮像する撮像手段を有し、前記撮像結果に基づき前記各吐出ノズルの前記飛行曲がりの有無を検査することを特徴とする請求項7または8に記載の機能液滴吐出ヘッドの吐出検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−140923(P2010−140923A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312852(P2008−312852)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】