説明

機能素子パッケージ

【課題】 機能素子の外周にメタライズを設けたSi基板と、メタライズを設けたSi基
板とを、メタライズ間に設けたはんだを熔融・接合して、気密封止する機能素子パッケー
ジにおいて、Si基板どうしをはんだ接合しても、メタライズがSi基板から剥離するこ
となく、封止気密性に優れた機能素子パッケージ構造を提供する。
【解決手段】 Si基板とメタライズとの間にアルミナ層を設けることで、メタライズと
Si基板との間の密着力が改善し、封止気密性に優れた機能素子パッケージを得ることが
できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS(Micro Electro Mechanical Syst
ems)技術等により、Si基板(ここで、Si基板とは、Siウェハ、SiO、ある
いは内部にSiO絶縁層を有するSi/SiO/Siのサンドイッチ構造のウェハも
含む)を加工し製造される、各種のセンサ、アクチュエータ等の機能素子パッケージに関
する。
【背景技術】
【0002】
MEMS技術を用いた各種のセンサや高周波フィルタ、ミラー機能素子などの機能素子
が製造されている。例えば加速度のセンサでは、一般的に、錘を含む構造体をエッチング
技術で形成し、錘に連結した電極における静電容量変化や、錘に連結した薄い梁上に形成
した歪み検出素子の抵抗変化などを読み取ることで、錘に加わった加速度を読み取ること
ができる。高周波フィルタでは、例えばFBAR(Film Bulk Acousti
c Resonator)と呼ばれる構造では、Si基板上に空洞が形成され、この空洞
をまたぐように、電極に挟まれたAlN圧電膜が形成される。ミラーデバイスでは、Si
のミラー部が駆動され、光路を調整することで画像を発生させる。いずれのMEMS機能
素子においても、錘、圧電膜、あるいはミラーなどの可動部を含む。このような可動部の
動作特性は、当然のことながら、可動部を取り巻く雰囲気の影響を受ける。したがって可
動部の存在する空間の気圧は一定に保つ必要があり、気密封止が必要となる。
【0003】
これまでは、気密封止を行いつつ、機能素子からの電気信号を外に取り出すために、セ
ラミック製のパッケージと蓋が用いられていた。このセラミックパッケージには、内部に
ワイヤーボンディングを接続するための電極パッドが形成され、この電極と連結し、かつ
リークを起こさないように、セラミックパッケージ内から外へ配線が取り出されている。
セラミックパッケージの外側では、この内部から出てきた配線と連結した電極パッドが形
成されている。
【0004】
しかし近年、小形化、低価格化への要求は強く、それを実現する手段として、ウェハレ
ベルでのパッケージングが必要とされている。ウェハレベルでのパッケージングとは、各
種の機能素子を形成したウェハに、封止のための別のウェハを接合してパッケージングを
完了する方法である。ウェハの接合により、何千、何万という機能素子の封止を一括して
行うことができるので、低コスト化に有利である。また、フォトリソグラフィー技術によ
り、精密な封止部の設計ができるので、パッケージの小形化にも有利である。
【0005】
ウェハを接合する手段としては、Si−Siの直接接合、ガラスウェハとSiの陽極接
合など、いくつかの新しい方法も発表されているが、従来、半導体部品のパッケージング
で用いられ、実績のある接合方法としては、はんだ接合を挙げることができる。
【0006】
本出願人は、特許文献1において、Si基板とSi基板とをはんだ接合することにより
、機能素子をウェハレベルで気密封止する機能素子パッケージ構造を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−218811号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された方法によれば、メタライズをSi基板に設けた凹部に施し、S
i基板とSi基板がはんだ接合される際に、熔融したはんだが凹部に濡れ広がることで、
はんだ濡れ性に優れ接合性の高い機能素子パッケージ構造が得られるとしている。
【0009】
本願発明者らは、特許文献1に示された構造の機能素子パッケージを作製し、高温高湿
試験に供したところ、試験後のパッケージ内部に水分が浸入してしまい、パッケージの気
密性に問題があることがわかった。はんだ接合断面を観察したところ、はんだの濡れ性お
よび接合性には問題が無いものの、一部メタライズがSi基板から剥離してしまうことが
確認された。この剥離部分から水分が浸入したものと考えられる。
【0010】
メタライズがSi基板からの剥離する現象は、メタライズとSi基板との熱膨張差で発
生した応力に起因するものと考えられる。応力の影響を小さくするためには、メタライズ
またははんだを薄く形成すればよいが、メタライズとはんだとの反応を考えた場合、はん
だの反応を抑制する層(例えば、Ni,Cu,Pt,Pdなど)を薄くすることは困難で
あり、また、接合性を確保するためには、はんだ自体を薄くすることも困難である。
【0011】
本願発明は上記の問題を解決するために行われたものであり、はんだ接合してもメタラ
イズがSi基板から剥離しない、気密性に優れた機能素子パッケージ構造を提供するもの
である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の機能素子パッケージは、機能素子の外周に第1のメタライズが表面に施された
第1のSi基板と、前記第1のメタライズに対向する位置に第2のメタライズが表面に施
された第2のSi基板とを備え、前記第1のSi基板と前記第2のSi基板とが前記第1
のメタライズと前記第2のメタライズとの間ではんだ接合され、前記機能素子が気密封止
されていることを特徴とする機能素子パッケージにおいて、前記第1のSi基板と第1の
メタライズおよび前記第2のSi基板と第2のメタライズとの間に、アルミナ層を設ける
ことを特徴としている。
【0013】
また、本願発明の機能素子パッケージは、前記第1のメタライズおよび前記第2のメタ
ライズが、Ti,Cr,W,Vなどの金属の少なくとも一つを含む薄膜表面に、Ni,C
u,Pt,Pdなどの金属の少なくとも一つを含む薄膜が形成され、さらにその表面にA
u膜が形成された層構造であることを特徴としている。
【0014】
また、本願発明の機能素子パッケージは、前記第1のSi基板が、Siウェハまたは内
部にSiO絶縁層を有するSi/SiO/Siのサンドイッチ構造を有するウェハで
あることを特徴としている。
【0015】
また、本願発明の機能素子パッケージは、前記はんだが、Au−Sn、Sn−Ag、S
n−Cu、Sn−Ag−Cu、Sn−Zn、Sn−Pb、Sn−Biなどの合金を主成分
とすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本願発明によれば、Si基板とSi基板とをはんだ接合して、機能素子を気密封止する
機能素子パッケージにおいて、はんだ接合部のメタライズとSi基板との間にアルミナ層
を設けることで、はんだ接合してもメタライズがSi基板から剥離せず、気密性に優れた
機能素子パッケージ構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例におけるウェハ状態での接合の模式図である。
【図2】実施例1における接合プロセスを示す詳細な断面構造図である。
【図3】実施例におけるアルミナ層とメタライズの層構造を示す図である。
【図4】従来技術におけるアルミナ層とメタライズの層構造を示す図である。
【図5】実施例1における密着性と剥離強度の評価結果を示す図である。
【図6】実施例2における加速度センサの断面図である。
【図7】実施例2における気密封止試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本願発明について図面を参照しながら実施例に基づいて詳細に説明する。説明を
判り易くするため、同一の部品、部位には同じ符号を用いている。
【0019】
(実施例1)
まず、本願発明の第1の実施例を図1と図2を用いて説明する。図1は、ウェハレベル
で気密封止を行う様子を示す、ウェハ状態での接合の模式図である。図2は気密封止部の
接合プロセスを示す、詳細な断面構造図である。
【0020】
図1において、6は機能素子パッケージ1個分のパターンを表す。まず、第1のSi基
板1に設けられた機能素子3の外周に第1のメタライズ2を形成した。一方、第2のSi
基板4には、第1のメタライズ2と対向する位置に第2のメタライズ5を形成した。次に
、第1のSi基板1と第2のSi基板4を第1のメタライズ2と第2のメタライズ5が重
なるように位置合わせを行い、これをクランプ、あるいは螺子止めなどで治具に仮固定し
た。この治具を接合装置のチャンバ内にセットし、基板全体に数1000N〜10000
N(数100kgf〜1020kgf)程度の荷重を負荷し、気密封止部に形成されたは
んだの融点以上に加熱することで、はんだを溶融させて接合を行い、ウェハレベルで気密
封止を行った。このウェハレベルで気密封止した後、個々に切断・分離し、1個毎の製品
として、機能素子3をパッケージングした構造を有する機能素子パッケージを製造した。
【0021】
ここで機能素子3を含む第1のSi基板1は、機能素子3に要求される構造もしくは特
性によって、Siウェハ、あるいは内部にSiO絶縁層を有しSi/SiO/Siの
サンドイッチ構造のウェハ、いずれを用いても良い。
【0022】
次に、気密封止部の詳細構造を、その接続プロセスもあわせて、図2(a)〜(d)に
基づき詳細に説明する。まず接合前の状態を図2(a)により説明する。まず、機能素子
3を含む第1のSi基板1には、フォトリソグラフィー技術によるレジストパターン形成
と、ドライエッチングやウェットエッチングの技法を用いて、凹部9と凸部10を形成し
た。単結晶のSiウェハの場合は、凹部下面が曲面になることも考えられるが、凹部下面
の細かい形状は、本実施例の効果には大きな影響を及ぼさないので、曲面形状の凹部も本
実施例に含まれる。また、凹部は垂直な側面を有するが、エッチング工程におけるサイド
エッチの影響などにより、多少斜めになることもあるが、これらも本実施例に含まれる。
【0023】
本実施例では、二列の凹部9を機能素子の外周に形成しており、図2(a)はその一部
の断面を示す。本実施例では凹部9の深さを7μmとしたが、凹部9の深さははんだ8の
厚さ、体積に依存して設計する必要があり、概ね、数μm〜20μm程度の深さが好まし
い。
【0024】
次に、第1のSi基板1との間にアルミナ層7Aを設けた第1のメタライズ2を形成し
た。アルミナ層7Aと第1のメタライズ2のパターン形成は、主に二つの方法を用いるこ
とができる。一つは、フォトリソグラフィー技術によりレジストパターンを形成し、その
上からアルミナ膜とメタライズ膜を成膜して、レジスト上の余分なメタライズを除去する
リフトオフ法であり、もう一つは、最初にアルミナ膜とメタライズ膜を成膜して、その上
からレジストを塗布し、フォトリソグラフィー技術によりレジストパターンを形成し、レ
ジストパターンの開口部のアルミナ膜とメタライズ膜をミリングにより除去する方法であ
る。二つ目の方法では、ミリングの代わりに、ウェットエッチングでレジスト開口部のメ
タライズを除去しても良い。
【0025】
アルミナ層7Aと第1のメタライズ2のパターン形成は、リフトオフ法の場合でも、ミ
リングもしくはウェットエッチングの場合でも、アルミナ層7Aと第1のメタライズ2を
一括のパターニング形成を行っても良いし、アルミナ層7Aと第1のメタライズ2を別々
にパターニング形成を行っても良い。また、別々にパターニング形成を行う場合、アルミ
ナ層7Aと第1のメタライズ2を、例えば、アルミナ層7Aをミリングでパターニング形
成し、第1のメタライズ2をリフトオフ法で形成するなど、異なる方法でパターニング形
成しても良い。さらに、アルミナ層7Aと第1のメタライズ2を別々にパターニング形成
する場合、アルミナ層7Aのパターンに対して第1のメタライズ2のパターンを若干小さ
くするほうが、確実にアルミナ層7Aの上に第1のメタライズ2を形成できるので好まし
い。本実施例では、アルミナ層7Aと第1のメタライズ2は一括のリフトオフ法でパター
ン形成した。
【0026】
アルミナ層7Aは、第1のメタライズ2と第1のSi基板1の密着を強固にするために
、スパッタあるいはCVDで成膜される。アルミナ層7Aの厚さは、10nm以上が好ま
しく、これより薄いと、アルミナ層7Aが第1のメタライズ2と第1のSi基板1の密着
を強固にする効果は小さい。アルミナ層7Aの厚さは10nm以上であれば、第1のメタ
ライズ2と第1のSi基板1の密着を強固にする効果は得られるが、厚くしすぎると、ア
ルミナ層7Aの内部応力が機能素子の特性に影響を与えると共に、成膜時間も長くなるの
で工業的に好ましくない。これらから、アルミナ層7Aの好ましい厚さ範囲は、20nm
から100nm。さらに好ましい厚さ範囲は、20nm〜50nmである。本実施例では
、スパッタを用いて、異なる膜厚のアルミナ層7Aを形成した。
【0027】
第1のメタライズ2は、アルミナ層7Aとの接着層として、Ti、Cr、W、Vなどの
金属の少なくとも一つを含む薄膜が、スパッタあるいは蒸着で成膜される。それらの厚さ
は、0.1μm〜0.3μm程度が好ましい。その上に、これら接着層の保護膜として、
Ni、Cu、Pt、Pdなどの金属が成膜される。これらの厚さは、0.2〜5μmなど
の厚さが好ましい。このプロセスでもスパッタや蒸着を使用することができるが、Niや
Cuのメタライズの場合は、めっき法を適用することもできる。スパッタや蒸着の場合は
保護膜の厚さは薄くなり、めっきの場合は比較的厚くなる傾向がある。最後に、表面にA
uが成膜される。Auメタライズもスパッタや蒸着法により成膜することができるが、そ
れ以外には電界、または無電解のめっきでも良い。Auの厚さは、スパッタや蒸着の場合
は0.2〜0.5μm、めっきの場合は0.1〜3μmなどが好ましい。
【0028】
これらの工程は、全てスパッタや蒸着で行う場合は、成膜装置に投入した後は、大気中
に取り出すことなく、連続して成膜を行うのが一般的である。めっき法を用いる場合は、
始めに接着層のTi、Cr、W、Vなどの金属をスパッタあるいは蒸着で形成し、その後
の保護膜および表面のAu膜は、めっき法で形成されるのが一般的である。本実施例では
、スパッタを用いて、異なる膜厚の組合せで第1のメタライズ2を形成した。
【0029】
次に、第2のSi基板4も第1のSi基板1と同様に、アルミナ層7B上に第2のメタ
ライズ5を形成した。本実施例では、第1のSi基板1と第2のSi基板4とで、アルミ
ナ層とメタライズの層構造は同じとしたが、特性上問題が無ければ、異なる層構造として
も良い。さらに、第2のメタライズ5上には、Au−90Snの組成からなるはんだ8を
はんだめっき法により形成した。
【0030】
はんだ8の形成方法には、フォトリソグラフィー技術によりレジストパターンを形成し
、蒸着、スパッタなどの方法ではんだを成膜後、リフトオフ法によりはんだパターンを形
成することができる。この他には、スクリーンマスクやメタルマスクを使用して、はんだ
ペーストを印刷し、第2のSi基板4全体をリフローしてはんだ8を形成しても良い。あ
るいは、第2のメタライズ5上に、はんだめっきを施すことで形成しても良い。また、溶
融吐出法と呼ばれる方法で、溶融したはんだの微粒を直接メタライズに吹き付けてはんだ
膜を形成しても良い。
【0031】
はんだとして用いることのできる金属は、例えば、Au−20〜37.6Sn(wt%
)、Au−90Sn、Sn−9Zn、Sn−3.5Ag、Sn−3Ag−0.5Cu、P
b−5Sn、Pb−10Sn、Sn−37Pb、Sn−57Biなど、電子部品実装に広
く用いられるはんだ材を適用することができる。はんだの組成はこれらに限定されるもの
ではなく、微量な合金元素を含むものや、多少組成がずれたものでも良い。
【0032】
上記はんだ組成について説明する。Au−Snの二元系のはんだでは、一般的にAu−
20Sn共晶が使用される。しかし、本実施例のような微量のはんだを使用する接合では
、はんだとメタライズとの反応を考慮したはんだ組成の設計が必要となる。すなわち、第
1のメタライズ2、あるいは第2のメタライズ5の表面にはAuが存在するため、このA
uがはんだ中に溶解することで、はんだの濡れ性が変化することがある。一般的には、は
んだの組成がAu−20SnよりもAuリッチなレベルになると濡れ性が低下する。した
がって、その分、組成をSn側にずらしておくことが有効であり、それはAu−20Sn
での共晶反応が含まれる範囲では、Au−37.6Snまで可能である。これらのはんだ
での接続温度は、一般的には280℃(共晶温度)から350℃程度までの範囲が選択さ
れる。
【0033】
これ以外の組成、すなわち、Au−90Sn、Sn−9Zn、Sn−3.5Ag、Sn
−3Ag−0.5Cuなどは、概ね、接続温度が220℃から260℃程度の範囲のもの
である。これらのはんだは、元々はんだ中にSnが多いので、Au−20Sn近傍の組成
のはんだのような、Auの溶解に対する詳細な組成の設計は、一般的には不要である。
【0034】
Pb−5Sn、Pb−10Snは、高Pbで300℃付近で接続を行う高融点のはんだ
である。このようなはんだ材を適用することも可能であるが、環境への影響を考慮してP
bフリー化を考えた場合、Pb含有はんだを使用するのは好ましくない。
【0035】
Sn−37Pbは、220℃程度で接続でき、かつては最も一般的なはんだであった。
したがって、このはんだを適用することも可能ではあるが、やはりPbフリー化の観点か
らは好ましいくない。
【0036】
Sn−57Biは、融点が138℃近傍の低融点はんだである。接続温度を160〜1
80℃程度に下げることができる。機能素子への熱影響を低減できることが利点であるが
、パッケージされた機能素子を電子機器に実装する際に、はんだ接合部の耐熱性を考慮し
た実装設計にしなければならない。
【0037】
本実施例では、まず第1のSi基板1と第2のSi基板4を正確に位置を合わせ、仮固
定後にチャンバ内のヒータ上にセットし、チャンバ内をN2ガスで満たした雰囲気とした
。雰囲気の種類、気圧は、MEMS機能素子の特性から決定されるものであり、少なくと
も、接続時にはんだの酸化を起こさない雰囲気であれば良いので、真空雰囲気でも良い。
この状態が図2(a)である。
【0038】
次に、凹部9により形成されたエッジ、本実施例の場合は凸部10の角の部分を含む上
面となるが、これをはんだ8に押し付けた。まずはんだ溶融前に、5000Nの荷重を基
板厚さ方向に負荷し、凸部10をはんだ8にめり込ませた。これが図2(b)である。
【0039】
更に、荷重を負荷したまま加熱し、はんだの融点以上まで加熱した。はんだは溶融し、
溶融したはんだ8が第1のメタライズ2および第2のメタライズ5へ濡れ広がる。この状
態が図2(c)である。
【0040】
そして、凹部およびその間の凸部は、MEMS機能素子の外周を取り囲むように形成さ
れているので、凹部(凸部)の側面にはんだが濡れ広がることにより、MEMS機能素子
の外周に連続したはんだによる気密封止構造が形成される。この状態が図2(d)である

【0041】
本実施例では、メタライズとSi基板との密着状態を確認するために、
1)メタライズとSi基板との密着性。
2)第1のSi基板1と第2のSi基板4をはんだ接合したときの剥離強度。
を評価した。図3は、本実施例に用いたアルミナ層とメタライズの層構造を示す模式図で
あり、図3(a)は、Si基板とメタライズとの間に、アルミナ層を設けたもの。図3(
b)は、表面にSiNもしくはSiO2を設けたSi基板とメタライズとの間に、アルミ
ナ層を設けたものである。密着性の評価にはテープ剥離試験を行い、剥離強度の評価には
シェア試験を行った。
【0042】
テープ剥離試験は、平坦なSi基板上にアルミナ層とメタライズを形成したものに、ル
ーターを使って6本のクロスカットを5mm間隔で入れ、密着力2.8N/cmの粘着
テープをクロスカット面に密着させて、できるだけ60°に近い角度でテープの端部を引
き剥がす、JIS規格(JISK5600−5−6)のクロスカット法に準じて行い、ク
ロスカット部の膜剥面積比率からメタライズの密着性を評価した。膜の密着性は、同条件
で10回の評価を行った結果の平均で判断を行った。
【0043】
シェア試験は、図2で示した凹部9と凸部10の接合断面を有する評価チップを作成し
、接合部をせん断するのに必要な力を測定することで評価を行った。シェア試験結果は、
同条件で10回の評価を行った結果の平均で評価を行った。
【0044】
シェア試験に供した評価チップは、第1のメタライズ2上にAu−Snはんだ8を形成
した第1のSi基板1と、第2のメタライズ5を形成した第2のSi基板4とを、治具に
仮固定してから接合装置のチャンバ内にセットし、基板厚さ方向に3000Nの荷重を負
荷しながらAu−Snはんだの融点以上に加熱して、第1のSi基板1と第2のSi基板
4を接合したものをダイシングにより、チップに個片化したものである。個々の評価チッ
プのサイズは、1.18mm×1.32mmとし、評価チップのメタライズ面積は、0.
0078mmとした。
【0045】
本実施例では、比較例として、図4に示されるようなアルミナ層とメタライズの層構造
についても、密着性と剥離強度を実施例と同じ方法で評価した。図4(a)は、特許文献
1で開示されている、Si基板上に直接メタライズを形成したもの。図4(b)は、表面
にSiNもしくはSiOを設けたSi基板にメタライズを形成したものである。
【0046】
図5に、テープ剥離試験による密着性評価と、シェア試験による剥離強度評価結果を示
す。
【0047】
実施例の条件番号1〜5は、図3(a)の層構造についての評価結果である。いずれの
テープ剥離試験結果も剥離面積が10%以下と良好であり、特に、アルミナ層の厚さが2
0nm以上の条件では、剥離面積が5%以下と非常に良好であった。シェア試験結果は、
アルミナ層の厚さが10nmの条件では、シェア強度が1.5kgfとやや劣るものの、
アルミナ層の厚さが20nm以上の条件では、シェア強度が2.5kgfとなった。シェ
ア強度2.5kgfの評価チップはSi基板自体が破壊しており、Si基板接合面からの
剥離は生じなかった。従って、メタライズの下層にアルミナ層を設けたSi基板どうしは
、はんだを介して強固に接合されていることが確認できた。
【0048】
実施例の条件番号6、7は、図3(b)の層構造についての評価結果である。いずれの
テープ剥離試験結果も剥離面積が5%以下と非常に良好であった。シェア試験結果も、シ
ェア強度が2.5kgfとなり、評価チップはSi基板自体が破壊してSi基板接合面か
らの剥離は生じなかった。従って、メタライズの下層にアルミナ層を設け、表面にSiN
もしくはSiOを設けたSi基板どうしは、はんだを介して強固に接合されることが確
認できた。
【0049】
比較例の条件番号1、2は、図4(a)の特許文献1に開示された層構造の評価結果で
ある。Cr膜厚が50nmのメタライズでは、テープ剥離試験で35%以上の広い面でメ
タライズの剥離が確認できた。剥離界面を調べたところ、Si基板とメタライズのCr膜
間であった。Cr膜厚を450nmに厚くしたところ、テープ剥離試験結果は若干改善し
たものの、25%の広い面積が剥離した。シェア強度はいずれの条件も1kgf未満と非
常に小さいものであり、Si基板とメタライズのCr膜との間で剥離を生じた。実施例の
条件番号1〜5の結果と、比較例の条件番号1、2の結果を比較して、メタライズの下層
にアルミナ層を設けることで、メタライズはSi基板と強固に密着し、Si基板どうしは
強固に接合されることが確認できた。
【0050】
比較例の条件番号3は、図4(b)のメタライズ構成についての評価結果である。テー
プ剥離試験、シェア試験ともに、表面にSiNもしくはSiOを設けたSi基板とメタ
ライズとの密着性が劣る結果になった。実施例の条件番号6、7の結果と、比較例の条件
番号3の結果を比較して、メタライズの下層にアルミナ層を設けることで、メタライズは
表面にSiNもしくはSiOを設けたSi基板と強固に密着し、Si基板どうしは強固
に接合されることが確認できた。
【0051】
(実施例2)
次に、本発明の第2の実施例を図1、図6、図7を用いて説明する。本実施例は、実施
例1のアルミナ層とメタライズの層構造を適用したMEMS機能素子パッケージについて
、気密封止性を評価したものである。
【0052】
本実施例のMEMS機能素子パッケージでは、図1の第1のSi基板1として下面にガ
ラス基板を接合したSOI基板を使用し、機能素子3としてピエゾ抵抗型の加速度センサ
を形成した。ピエゾ抵抗型の加速度センサの動作原理や従来の実装構造については多くの
文献で説明されているので、ここでは省略する。
【0053】
図6に、本実施例で形成したピエゾ抵抗型の加速度センサの断面図を示す。図6(a)
は、Siキャップ基板19とSOI基板11が接合される前の状態であり、図6(b)は
接合後の状態である。
【0054】
Siキャップ基板19には、アルミナ層15Bを下層に設けたメタライズ14B上に、
Au−Snはんだ20を形成し、同時にキャビティ21を形成した。
【0055】
SOI基板11には、凹部12が二列形成し、その上にメタライズ14Aを形成した。
そして、凹部12の内側には、ピエゾ素子16、配線17を形成した。SOI基板11の
下面には、ガラス基板18を接合し、ピエゾ抵抗型加速度センサの可動部として錘24を
形成した。
【0056】
また、SOI基板11には、凹部12より内側(ピエゾ素子16側)に電極メタライズ
13を設けた。この電極メタライズ13の下には、貫通電極22を形成し、電極23に繋
げた。
【0057】
Siキャップ基板19とSOI基板11は、正確に位置を合わせて仮固定した後、接合
装置のチャンバ内のヒータ上にセットし、Nガスで満たした雰囲気中で接合処理を行っ
た。接合は、5000Nの荷重を基板厚さ方向に負荷し、はんだの熔融点以上まで加熱し
て行った。接合後のSi基板は、評価チップとしてダイシングにより個片化した。個々の
評価チップサイズは、1.18mm×1.32mmで、評価チップのメタライズ面積は、
0.0078mmとした。
【0058】
次に、評価チップを高温高湿試験に供して、パッケージの気密封止が十分であるか否か
を評価した。評価は、各条件100個の評価チップを、85℃×85%RHの高温高湿槽
中に1000時間放置し、放置後の評価チップの加速度センサ特性を評価した。
【0059】
図7に、評価チップの高温高湿試験結果を示す。本実施例では、メタライズ14A、1
4Bとして、実施例1で評価に供した層構造を用いて評価を行った。
【0060】
実施例の条件番号1〜5は、図3(a)のメタライズ構成についての評価結果である。
条件番号1のアルミナ層の厚さが10nmの条件では、100素子中5素子のNGが見ら
れたものの、条件番号2〜5においてはいずれもNGチップの発生が見られず、気密封止
性は良好であることがわかった。
【0061】
実施例の条件番号6,7は、図3(b)のメタライズ構成についての評価結果である。
いずれの高温高湿信頼性試験結果もNGチップの発生は見られず、気密封止性は良好であ
ることがわかった。従って、メタライズの下層にアルミナ層を設け、表面にSiNもしく
はSiOを設けたSi基板を用いて接合を行ったパッケージの気密封止性は良好である
ことが確認できた。
【0062】
比較例の条件番号1、2は、図4(a)の特許文献1に開示されたメタライズ構成の評
価結果である。Cr膜厚保が50nmのメタライズでは、高温高湿信頼性試験で100素
子中、感度異常のNG素子が10素子見られた。Cr膜厚450nmに厚くしたところ、
高温高湿試験で100素子中、感度異常のNG素子が5素子見られた。NG素子のSiキ
ャップ基板19とSOI基板11を接合部から剥離して顕微鏡観察したところ、SOI基
板11表面に水分の侵入と見られる痕跡が観察された。以上から、実施例2の条件番号1
〜5の結果と、比較例の条件番号1、2の結果を比較して、メタライズ下層にアルミナ層
を設けたパッケージの気密封止性は良好であることが確認できた。
【0063】
比較例の条件番号3は、図4(b)のメタライズ構成についての評価結果である。高温
高湿試験の結果、100素子中NG素子が10素子見られた。NG素子のSiキャップ基
板19とSOI基板11を接合部から剥離して顕微鏡観察したところ、SOI基板11表
面に水分の侵入と見られる痕跡が観察された。以上から。実施例2の条件番号6、7の結
果と、比較例の条件番号3の結果を比較して、下層にアルミナ層を設けたパッケージの気
密封止性は良好であることが確認できた。
【符号の説明】
【0064】
1 第1のSi基板、
2 第1のメタライズ、
3 機能素子、
4 第2のSi基板、
5 第2のメタライズ、
6 機能素子1個分のパターン、
7A,7B アルミナ層、
8 はんだ、
9 凹部、
10 凸部、
11 SOI基板、
12 凹部、
13 電極メタライズ、
14A,14B メタライズ、
15 アルミナ層
16 ピエゾ素子、
17 配線、
18 ガラス基板、
19 Siキャップ基板、
20 はんだ、
21 キャビティ、
22 貫通電極、
23 電極、
24 錘。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能素子の外周に第1のメタライズが表面に施された第1のSi基板と、前記第1のメ
タライズに対向する位置に第2のメタライズが表面に施された第2のSi基板とを備え、
前記第1のSi基板と前記第2のSi基板とが前記第1のメタライズと前記第2のメタラ
イズとの間ではんだ接合され、前記機能素子が気密封止されていることを特徴とする機能
素子パッケージにおいて、
前記第1のSi基板と第1のメタライズおよび前記第2のSi基板と第2のメタライズと
の間に、アルミナ層が設けられていることを特徴とする機能素子パッケージ。
【請求項2】
前記第1のメタライズおよび前記第2のメタライズが、Ti,Cr,W,Vなどの金属
の少なくとも一つを含む薄膜表面に、Ni,Cu,Pt,Pdなどの金属の少なくとも一
つを含む薄膜が形成され、さらにその表面にAu膜が形成された層構造であることを特徴
とする請求項1に記載の機能パッケージ。
【請求項3】
前記第1のSi基板が、Siウェハまたは内部にSiO絶縁層を有するSi/SiO
/Siのサンドイッチ構造を有するウェハであることを特徴とする請求項1に記載の機
能素子パッケージ。
【請求項4】
前記はんだが、Au−Sn、Sn−Ag、Sn−Cu、Sn−Ag−Cu、Sn−Zn
、Sn−Pb、Sn−Biなどの合金を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の
機能素子パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−165731(P2010−165731A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4791(P2009−4791)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(506334171)トレックス・セミコンダクター株式会社 (19)
【Fターム(参考)】