説明

機関のメンテナンス診断システム

【課題】機関のメンテナンスにおける部品の寸法情報が簡単に得られると共に寸法情報に基づいて部品の点検,交換が必要か否かを正確に判断できる機関のメンテナンス診断システムを提供する。
【解決手段】この機関のメンテナンス診断システムでは、計測寸法値入力装置1により、クランクピンメタル52の厚みT1,クランクピン51の外径D1,コネクティングロッド大端部53の内径D2のそれぞれを計測した計測寸法値を入力し、この計測寸法値を表す計測値信号MS1〜MS3を送受信装置2,3で送受信する。メンテナンス診断装置4は受信装置2で受信した上記計測値信号が表す上記計測寸法値からクランクピン51とクランクピンメタル52との間の間隙寸法G1を自動計算して、この間隙寸法G1が予め定められた閾値寸法で特定された範囲内であるか否かを判断してクランクピンメタル52のメンテナンスが必要か否かを判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、船舶等に搭載したエンジンを通信手段などを介して遠隔管理するシステムにおいて、定期点検結果が正常か否かを診断して、部品の点検・整備を促す機関のメンテナンス診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶等ではエンジンの主要部品のうち、特に摩耗を伴う部品は、定期点検の期間毎に乗組員が部品寸法などを計測して、この計測した値を取扱説明書に基づく交換限度と照らし合わせて、部品交換が必要か否かを判断する必要があった。しかし、乗組員による照合,判断には間違いが生じる可能性も少なくない。特に、最近、船員は様々な国籍,レベルを有して取扱説明書に基づく判断に信頼性が少ないという問題がある。
【0003】
ところで、特許文献1(特開2002−316692号公報)には、船舶と船舶管理会社との間で船舶の運転情報を通信手段を介して通信可能な遠隔管理システムが提案されている。
【0004】
しかし、この遠隔管理システムでは、エンジンの運転情報を表す各種計測データ等を遠隔管理できるものの、機関のメンテナンスにおける部品の寸法情報が得られるものではなかった。
【特許文献1】特開2002−316692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明の課題は、機関のメンテナンスにおける部品の寸法情報が簡単に得られると共に寸法情報に基づいて部品の点検,交換が必要か否かを正確に判断できる機関のメンテナンス診断システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、この発明の機関のメンテナンス診断システムは、クランクピンメタルの厚み,クランクピンの外径,コネクティングロッド大端部の内径のそれぞれに係る所定箇所の寸法を計測した計測寸法値を入力する計測寸法値入力装置と、
上記計測寸法値入力装置に入力された上記計測寸法値を表す計測値信号を送信する送信装置と、
上記送信装置で送信された上記計測値信号を受信する受信装置と、
上記受信装置で受信した上記計測値信号が表す上記計測寸法値から上記クランクピンとクランクピンメタルとの間の間隙寸法を自動計算して、上記間隙寸法が予め定められた閾値寸法で特定された範囲内であるか否かを判断して、上記クランクピンメタルのメンテナンスが必要か否かを判断するメンテナンス診断装置とを備えることを特徴としている。
【0007】
この発明の機関のメンテナンス診断システムでは、計測寸法値入力装置により、クランクピンメタルの厚み,クランクピンの外径,コネクティングロッド大端部の内径のそれぞれに係る所定箇所の寸法を計測した計測寸法値を入力し、この計測寸法値を表す計測値信号を送受信装置で送受信する。そして、上記メンテナンス判断装置は、上記受信装置で受信した上記計測値信号が表す上記計測寸法値から上記クランクピンとクランクピンメタルとの間の間隙寸法を自動計算して、上記間隙寸法が予め定められた閾値寸法で特定された範囲内であるか否かを判断して、上記クランクピンメタルのメンテナンスが必要か否かを判断する。
【0008】
よって、この発明のメンテナンス診断システムによれば、機関のメンテナンスにおけるクランクピンとクランクピンメタルとの間の間隙寸法を自動計算して、寸法情報が簡単に得られると共に寸法情報に基づいてクランクピンメタルの点検,交換が必要か否かを正確に判断できる。
【0009】
また、一実施形態の機関のメンテナンス診断システムでは、上記メンテナンス診断装置は、上記機関の上記クランクピンメタルを使用しての稼動時間と上記計測寸法値とに基づいて、上記クランクピンメタルの残存寿命を予測する寿命予測部を有する。
【0010】
この実施形態の機関のメンテナンス診断システムによれば、上記メンテナンス判断装置が有する寿命予測部により、上記機関の稼動時間と上記計測寸法値とに基づいて、上記クランクピンメタルの残存寿命を予測できる。
【0011】
また、一実施形態の機関のメンテナンス診断システムでは、上記メンテナンス診断装置は、
上記間隙寸法が、許容範囲の限界値を表す第1の閾値で特定された第1の範囲を超えたか否かを判断する第1の判断部と、
上記第1の判断部が、上記間隙寸法が上記第1の範囲を超えたと判断したときに、第1のアラーム信号を出力する第1の警報部と、
上記第1の判断部が、上記間隙寸法が上記第1の範囲を超えていないと判断したときに、上記間隙寸法が正常範囲の限界値を表す第2の閾値で特定された第2の範囲を超えたか否かを判断する第2の判断部と、
上記第2の判断部が、上記間隙寸法が上記第2の範囲を超えたと判断したときに第2のアラーム信号を出力する第2の警報部とを有する。
【0012】
この実施形態の機関のメンテナンス診断システムによれば、上記間隙寸法が上記第1の範囲(許容範囲)を超えたときに上記第1の警報部が第1のアラーム信号を出力して、上記間隙寸法が上記クランクピンメタルを交換する必要があるレベルに達したことを報知できる。また、上記間隙寸法が上記第2の範囲(正常範囲)を超えたときに、上記第2の警報部が第2のアラーム信号を出力して、上記間隙寸法が正常範囲を超えたため上記クランクピンメタルの交換時期が近づいていることを報知できる。
【発明の効果】
【0013】
この発明の機関のメンテナンス診断システムでは、計測寸法値入力装置により、クランクピンメタルの厚み,クランクピンの外径,コネクティングロッド大端部の内径のそれぞれに係る所定箇所の寸法を計測した計測寸法値を入力し、この計測寸法値を表す計測値信号を送受信装置で送受信する。そして、上記メンテナンス判断装置は、上記受信装置で受信した上記計測値信号が表す上記計測寸法値から上記クランクピンとクランクピンメタルとの間の間隙寸法を自動計算して、この間隙寸法が予め定められた閾値寸法で特定された範囲内であるか否かを判断して、上記クランクピンメタルのメンテナンスが必要か否かを判断する。よって、この発明のメンテナンス診断システムによれば、機関のメンテナンスにおけるクランクピン,クランクピンメタル,コネクティングロッド大端部に係る寸法情報が簡単に得られると共に寸法情報に基づいてクランクピンメタルの点検,交換が必要か否かを正確に判断できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0015】
図1に、この発明の機関のメンテナンス診断システムの実施形態を示す。この実施形態は、計測寸法値入力装置1と、送信装置2と、受信装置3と、メンテナンス診断装置4および表示器5とを備える。なお、上記計測寸法値入力装置1と送信装置2は、例えば船舶(図示せず)に搭載され、上記受信装置3とメンテナンス診断装置4および表示器5は一例として船舶管理会社(図示せず)に設置される。
【0016】
上記計測寸法値入力装置1は、上記機関のクランクピンメタルの厚み,クランクピンの外径,コネクティングロッド大端部の内径の各部品に係る所定箇所の寸法を計測した計測寸法値を入力するものである。また、上記送信装置2は、計測寸法値入力装置1から入力される上記計測寸法値を表す計測値信号を通信回線6を経由して、受信装置3へ送信する。受信装置3は、送信装置2が送信した上記計測値信号を受信し、この計測値信号は上記メンテナンス診断装置4に入力される。
【0017】
次に、図5Aを参照して、上記クランクピンメタルに係る所定箇所の寸法の計測の一例を説明する。図5Aに示すように、クランクピン51の径D1とクランクピンメタル52の厚さT1とコネクティングロッド大端部53の穴径D2とを計測する。なお、この一例では、上記クランクピン51の径D1は、図5Cに示すように、鉛直方向Yにおける直径D1(Y)と上記鉛直方向Yに直交する方向Xにおける直径D1(X)とした。また、この一例では、クランクピンメタル52の厚さT1は、図5Bに示すように、鉛直方向Yにおける上メタル52−1の厚さT1(Y1)および下メタル52−2の厚さT1(Y2)と鉛直方向Yに直交する方向から幾らか(数°程度)傾斜した方向Xにおける上メタル52−1の厚さT1(X1)および下メタル52−2の厚さT1(X2)とした。また、この一例では、コネクティングロッド大端部53の穴径D2は、鉛直方向Yにおける穴径D2(Y)および鉛直方向Yに直交する方向か幾らか(数°程度)傾斜した方向Xにおける穴径D2(X)とした。よって、上記クランクピン51の直径D1(Y),D1(X)、上記クランクピンメタル52の厚さT1(Y1),T1(Y2),T1(X1),T1(X2)、コネクティングロッド大端部53の穴径D2(Y),穴径D2(X)が計測寸法値となる。
【0018】
また、上記計測寸法値入力装置1に入力される計測寸法値の他の例としては、図示しないが、上記コネクティングロッド小端部の内径寸法、ピストンピンの外径寸法が挙げられる。
【0019】
次に、図2を参照して、上記メンテナンス診断装置4の構成を説明する。このメンテナンス診断装置4は、受信装置3から、上記計測寸法値を表す計測値信号が入力される計測寸法受信部11を有する。この計測値信号としては、図2に例示するように、上記計測寸法値としてのクランクピンメタル52における上メタル52−1の厚さT1(Y1),T1(X1)と下メタル52−2の厚さT1(Y2),T1(X2)を表す信号MS1、上記クランクピン51の直径D1(Y)とD1(X)を表す信号MS2、コネクティングロッド大端部53の穴径D2(Y)とD2(X)を表す信号MS3、である。
【0020】
この計測寸法受信部11は上記計測値信号MS1,MS2,MS3を計測寸法診断部12に入力する。一方、基準データベース13には、各計測値信号が表す計測寸法値に対する複数の閾値が記憶されている。この閾値は、正常範囲の上限を表す最大標準しきい値と、正常範囲の下限を表す最小標準しきい値とを含んでいる。また、上記閾値は、許容範囲の上限を表す最大許容しきい値と、許容範囲の下限を表す最小許容しきい値とを含んでいる。
【0021】
次に、図3,図4のフローチャートを参照して、上記メンテナンス診断装置4の計測寸法診断部12の動作の一例を説明する。この動作の一例では、クランクピン51とクランクピンメタル52との間の間隙寸法を自動計算して、上記間隙寸法が、正常範囲か否か,許容範囲か否かを診断している。
【0022】
まず、ステップS1では、計測寸法診断部12は、クランクピン51とクランクピンメタル52との間の間隙寸法を算出する。このステップS1での処理工程を、図4のフローチャートに示している。すなわち、この実施形態では、図4のフローチャートに示すように、上記クランクピンとクランクピンメタルとの間の間隙寸法G1を計測寸法診断部12で自動計算させている。この動作を、図4を参照して以下に説明する。
【0023】
まず、計測寸法診断部12は、ステップS21,S22で、計測寸法受信部11から入力される計測値信号MS2からクランクピン51の直径D1(Y)とD1(X)を得て、ステップS23で直径D1(Y)とD1(X)の平均値D1(=(D1(Y)+D1(X))/2)を算出する。また、ステップS24,S25で、計測寸法受信部11から入力される計測値信号MS3からコネクティングロッド大端部穴径D2(Y)とD2(X)を得て、ステップS26で穴径D2(Y)とD2(X)の平均値D2=(D2(Y)+D2(X))/2を算出する。また、ステップS27,S28で、計測寸法受信部11から入力される計測値信号MS1からクランクピンメタル52における上メタル52−1の厚さT1(X1),T1(Y1)を得ると共に、ステップS29,S30では、上記計測値信号MS1からクランクピンメタル52における下メタル52−2の厚さT1(X2),T1(Y2)を得る。そして、ステップS31では、上記厚さT1(X1),T1(Y1),T1(X2),T1(Y2)の平均値T1={T1(X1)+T1(Y1)+T1(X2)+T1(Y2)}/4を算出する。
【0024】
次に、ステップS32に進み、上記クランクピン51の直径の平均値D1と、
上記コネクティングロッド大端部穴径の平均値D2と、上記クランクピンメタル52の厚さの平均値T1とから、次式(1)によって、クランクピン51とクランクピンメタル52との間の間隙寸法G1を算出する。
G1=D2−(T1×2)−D1 … (1)
【0025】
こうして、図3のフローチャートのステップS1では、計測寸法受信部11から入力される計測値信号MS1〜MS3から計測寸法値としてのクランクピン51とクランクピンメタル52との間の間隙寸法G1を得る。また、ステップS2では、この計測寸法診断部12には、上記間隙寸法G1に対する最大標準しきい値,最小標準しきい値,最大許容しきい値,最小許容しきい値が基準データベース13から入力される。上記最大許容しきい値と最小許容しきい値とが許容範囲(第1の範囲)を規定し、上記最大標準しきい値と最小標準しきい値とが正常範囲(第2の範囲)を規定している。
【0026】
次に、ステップS3では、上記間隙寸法G1が最小許容しきい値よりも大きいか否かを判断し、大きいと判断したときには、ステップS5に進み、大きくないと判断したときには、ステップS4に進む。このステップS4では、計測寸法診断部12は、上記計測寸法値から自動算出したクランクピン51とクランクピンメタル52との間の間隙寸法G1が許容範囲外であることを表すアラームデータ(第1のアラーム信号)を診断データ送信部14に出力する。すると、この診断データ送信部14は、このアラームデータを表示部5に出力し、表示部5は上記計測寸法値から自動算出した上記間隙寸法G1が許容範囲外であることを表示する。
【0027】
ステップS5では、上記間隙寸法G1が最小標準しきい値よりも大きいか否かを判断し、大きいと判断したときには、ステップS7に進み、大きくないと判断したときには、ステップS6に進む。ステップS6では、計測寸法診断部12は、上記計測寸法値から自動算出した上記間隙寸法G1が正常範囲外であることを表すアラームデータを診断データ送信部14に出力する。すると、この診断データ送信部14は、このアラームデータを表示部5に出力し、表示部5は上記計測寸法値から自動算出した上記間隙寸法G1が正常範囲外であることを表示する。
【0028】
ステップS7では、上記間隙寸法G1が最大許容しきい値よりも小さいか否かを判断し、小さいと判断したときには、ステップS9に進み、小さくないと判断したときには、ステップS8に進む。
【0029】
上記ステップS7とS3が、第1の判断部を構成している。また、このステップS8および上記ステップS4が第1の警報部を構成している。
【0030】
ステップS8では、計測寸法診断部12は、上記計測寸法値から自動算出した上記間隙寸法G1が許容範囲外であることを表すアラームデータ(第1のアラーム信号)を診断データ送信部14に出力する。すると、この診断データ送信部14は、このアラームデータを表示部5に出力し、表示部5は上記計測寸法値から自動算出した上記間隙寸法G1が許容範囲外であることを表示する。
【0031】
ステップS9では、上記間隙寸法G1が最大標準しきい値よりも小さいか否かを判断し、小さいと判断したときには、ステップS11に進み、小さくないと判断したときには、ステップS10に進む。
【0032】
上記ステップS9とS5が、第2の判断部を構成している。また、上記ステップS10とS6が第2の警報部を構成している。
【0033】
ステップS10では、計測寸法診断部12は、上記計測寸法値から自動算出した上記間隙寸法G1が正常範囲外であることを表すアラームデータを診断データ送信部14に出力する。すると、この診断データ送信部14は、このアラームデータを表示部5に出力し、表示部5は上記間隙寸法G1が正常範囲外であることを表示する。一方、ステップS11では、上記間隙寸法G1が標準範囲内であると判断して、上記間隙寸法G1の診断結果が正常であることを表す正常診断データをデータ送信部14に出力する。すると、データ送信部14は、上記正常診断データを表示部5に出力し、表示部5は上記間隙寸法G1が正常範囲内にあることを表示する。
【0034】
このように、この実施形態の機関のメンテナンス診断システムによれば、上記計測寸法値から自動計算して得たクランクピン51とクランクピンメタル52との間の間隙寸法G1が許容範囲(第1の範囲)を超えたときに第1のアラーム信号を出力して、上記間隙寸法Gが上記クランクピンメタル52を交換する必要があるレベルに達したことを報知する。また、上記間隙寸法Gが上記正常範囲(第2の範囲)を超えたときに、第2のアラーム信号を出力して、上記間隙寸法Gが正常範囲を超えたため上記クランクピンメタル52の交換時期が近づいていることを報知する。
【0035】
尚、上記各アラームデータは、上記計測寸法値,上記間隙寸法Gと共に計測寸法診断結果データベース15にも蓄えられる。
【0036】
したがって、この実施形態の機関のメンテナンス診断システムによれば、機関のメンテナンスにおけるクランクピンメタルの厚み,クランクピンの外径,コネクティングロッド大端部の内径に係る寸法情報が上記受信装置3から簡単に得られると共にこの寸法情報に基づいて機関の部品(クランクピンメタル)の点検,交換が必要か否かを正確に判断できる。
【0037】
また、この実施形態では、上記メンテナンス診断装置4は、図2に示す計測寸法診断結果データベース15および寿命予測部16を有する。このデータベース15には、例えば、定期点検毎に、図2に示されるような各計測値信号MS1〜MS3から算出した上記間隙寸法Gが記憶される。そして、寿命予測部16は、上記クランクピンメタル52を使用しての上記機関の運転時間(時)と上記計測値信号MS1〜MS3から算出した上記間隙寸法Gとから、図10に例示されるような、運転時間(時)に対するクランクピンメタル52の摩耗量(mm)の推移を表す摩耗量推移特性M1,M2,M3を作成する。なお、この摩耗量推移特性M1,M2,M3はそれぞれ異なるクランクピンメタル52に対応する摩耗量推移特性である。そして、上記寿命予測部16は、各特性M1,M2,M3における前回計測時T1(運転時間24000時間)の摩耗量SQ1と今回計測時T2(運転時間32000時間)の摩耗量SQ2とから時間当たりの摩耗量dSQ/dT=(SQ2−SQ1)/8000を算出して、摩耗量予測特性K1,K2,K3を作成する。上記寿命予測部16は、この摩耗量予測特性K1,K2,K3に基づいて、各クランクピンメタル52の摩耗量が、予め設定されている摩耗量の正常範囲の上限値CLに達する時間T3および許容範囲の上限値ALに達する時間T4を予測する。そして、この寿命予測部16は、上記今回計測時T2から上記許容範囲の上限値ALに達するまでの時間(T4−T2)を残存寿命として予測し、この残存寿命を表示器5に表示する。
【0038】
したがって、この実施形態の機関のメンテナンス診断システムによれば、上記メンテナンス判断装置4が有する寿命予測部16により、上記機関の稼動時間と上記計測寸法値とに基づいて、上記部品としてのクランクピンメタルの残存寿命を予測できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の機関のメンテナンス診断システムの実施形態を示すブロック図である。
【図2】上記実施形態のメンテナンス診断装置の構成を示すブロック図である。
【図3】上記メンテナンス診断装置の計測寸法診断部の動作の一例を説明するフローチャートである。
【図4】計測寸法診断部がクランクピンとクランクピンメタルとの間の間隙寸法を自動計算する動作を説明するフローチャートである。
【図5A】クランクピンメタルに係る計測箇所の寸法の一例を模式的に示す図である。
【図5B】クランクピンメタルに係る上記計測箇所の寸法としてのクランクピンメタルの厚さとコネクティングロッド大端部の穴径を模式的に示す図である。
【図5C】クランクピンメタルに係る上記計測箇所の寸法としてのクランクピンの直径を模式的に示す図である。
【図6】上記メンテナンス診断装置の寿命予測部により作成される摩耗量推移特性M1〜M3,摩耗量予測特性K1〜K3を示す特性図である。
【符号の説明】
【0040】
1 計測寸法入力装置
2 送信装置
3 受信装置
4 メンテナンス診断装置
5 表示器
6 通信回線
11 計測寸法受信部
12 計測寸法診断部
13 基準データベース
14 診断データ送信部
15 計測寸法診断結果データベース
16 寿命予測部
51 クランクピン
52 クランクピンメタル
53 コネクティングロッド大端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクピンメタルの厚み,クランクピンの外径,コネクティングロッド大端部の内径のそれぞれに係る所定箇所の寸法を計測した計測寸法値を入力する計測寸法値入力装置と、
上記計測寸法値入力装置に入力された上記計測寸法値を表す計測値信号を送信する送信装置と、
上記送信装置で送信された上記計測値信号を受信する受信装置と、
上記受信装置で受信した上記計測値信号が表す上記計測寸法値から上記クランクピンとクランクピンメタルとの間の間隙寸法を自動計算して、上記間隙寸法が予め定められた閾値寸法で特定された範囲内であるか否かを判断して、上記クランクピンメタルのメンテナンスが必要か否かを判断するメンテナンス診断装置と
を備えることを特徴とする機関のメンテナンス診断システム。
【請求項2】
請求項1に記載の機関のメンテナンス診断システムにおいて、
上記メンテナンス診断装置は、
上記機関の上記クランクピンメタルを使用しての稼動時間と上記計測寸法値とに基づいて、上記クランクピンメタルの残存寿命を予測する寿命予測部を有することを特徴とするメンテナンス診断システム。
【請求項3】
請求項1に記載の機関のメンテナンス診断システムにおいて、
上記メンテナンス診断装置は、
上記間隙寸法が、許容範囲の限界値を表す第1の閾値で特定された第1の範囲を超えたか否かを判断する第1の判断部と、
上記第1の判断部が、上記間隙寸法が上記第1の範囲を超えたと判断したときに、第1のアラーム信号を出力する第1の警報部と、
上記第1の判断部が、上記間隙寸法が上記第1の範囲を超えていないと判断したときに、上記間隙寸法が正常範囲の限界値を表す第2の閾値で特定された第2の範囲を超えたか否かを判断する第2の判断部と、
上記第2の判断部が、上記間隙寸法が上記第2の範囲を超えたと判断したときに第2のアラーム信号を出力する第2の警報部とを有することを特徴とする機関のメンテナンス診断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−41466(P2009−41466A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207905(P2007−207905)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(390033042)ダイハツディーゼル株式会社 (43)
【Fターム(参考)】