説明

欠陥検査装置および欠陥検査方法

【課題】
欠陥信号を低下させて欠陥を見逃してしまうことのない欠陥検査装置および欠陥検査方法と提供する。
【解決手段】
表面にパターンが形成された検査対象物に光を照射し、この光が照射された検査対象物から発生する反射、回折、散乱光を集光して第1の遮光パターンを備えた第1の空間フィルタを透過した光による第1の光学像を第1の検出器で受光して第1の画像を取得し、光が照射された検査対象物から発生する反射、回折、散乱光を集光して第2の遮光パターンを備えた第2の空間フィルタを透過した光による第2の光学像を第2の検出器で受光して第2の画像を取得し、取得した第1の画像と第2の画像を統合的に処理して欠陥候補を判定する欠陥検査方法及びその装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハや液晶基板を検査する欠陥検査装置および欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIや液晶基板を製造する際に、被加工対象物(例えば半導体ウエハ)上に形成される繰り返しパターンがある。このようなLSIや液晶基板の製造において、被加工対象物の表面に異物が付着したり、または欠陥が発生すると、例えば、配線の絶縁不良や短絡などの不良原因となる。ここで、回路パターンの微細化に伴い、被加工対象物上に形成されるパターン(非欠陥部)と、微細な異物や欠陥を弁別することが困難になってきている。
ここで欠陥とは、被検査対象物である試料上に付着するパーティクルや結晶欠陥COP(Crystal Originated Particle)、研磨により生じるスクラッチなどである。
【0003】
特許文献1(特開2007−273513号公報)においては、検査試料に斜方より光を入射し、試料の繰り返しパターンからの回折パターンを遮光する空間フィルタを備えた暗視野欠陥検査システム及び方法であって、前記空間フィルタの設定状態を欠陥検査に先立ち、検査体の一部の繰り返しパターンからの回折光を補正試験対象として、空間フィルタにより減光した回折光の光量を計測するステップと、回折光の光量をしきい値と比較するステップと、回折光の光量がしきい値以下となるように空間フィルタを再設定するステップを備えた方法が開示されている。
【0004】
特許文献2(特開2008−116405号公報)においては、検査試料に斜方より光を入射し、試料の繰り返しパターンからの回折パターンを遮光する空間フィルタを備えた暗視野欠陥検査システム及び方法であって、前記回折パターンを観察するステップと、観察した回折パターンを画像処理により認識するステップと、認識した回折パターンを遮光する空間フィルタ形状を生成するステップとを備えた方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−273513号公報
【特許文献2】特開2008−116405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている発明及び特許文献2に記載されている発明では、繰り返しパターンからの回折光を遮光し、欠陥検出感度の向上を図っているが、回折光を遮光する空間フィルタを挿入することで、欠陥散乱光をも遮光してしまうことについては配慮されておらず、欠陥信号の低下を招き、欠陥の見逃しが生じてしまう可能性があった。
【0007】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決して、欠陥信号を低下させて欠陥を見逃してしまうことのない欠陥検査装置および欠陥検査方法と提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明では、できるだけ少ない遮光面積の空間フィルタにて繰り返しパターンからの回折光を遮光し、欠陥信号の光量を確保しつつ、回折光の漏れにより生じたノイズ成分を画像処理にて除去することを目的とする。ここで回折光により生じるノイズ成分は空間フィルタの形状、位置に依存するため、繰り返しパターンからの回折光の一部を異なる空間フィルタで遮光した2枚の画像を統合的に処理することでノイズ成分を除去し、欠陥検出感度向上を狙う。
【0009】
即ち、上記した目的を達成するために、本発明では、欠陥検査装置を、表面にパターンが形成された検査対象物に光を照射する照明手段と、この照明手段により光が照射された検査対象物から発生した反射、回折、散乱光を集光する集光手段と、この集光手段により集光された検査対象物からの反射、回折、散乱光を第1の検出光路と第2の検出光路に分岐する光路分岐手段と、この光路分岐手段により分岐された反射、回折、散乱光のうち第1の検出光路に進んだ反射、回折、散乱光に対して特定の反射、回折、散乱光を遮光する第1の遮光パターンを備えた第1の空間フィルタと、この第1の空間フィルタを透過した光による像を形成する第1の結像手段と、この第1の結像手段で形成された像を検出して第1の画像を取得する第1の画像取得手段と、光路分岐手段により分岐されて第2の検出光路に進んだ反射、回折、散乱光に対して第1の空間フィルタとは異なる第2の遮光パターンを備えた第2の空間フィルタと、この第2の空間フィルタを透過した光による像を形成する第2の結像手段と、この第2の結像手段で形成された像を検出して第2の画像を取得する第2の画像取得手段と、第1の画像取得手段で取得した第1の画像と第2の画像取得手段で取得した第2の画像を統合的に処理して欠陥候補を判定する画像処理を行う画像処理手段とを備えて構成した。
【0010】
また、上記した目的を達成するために、本発明では、欠陥検査方法を、表面にパターンが形成された検査対象物に光を照射し、この光が照射された前記検査対象物から発生する反射、回折、散乱光を集光し、この集光された検査対象物からの反射、回折、散乱光を第1の検出光路と第2の検出光路に分岐し、この分岐により第1の検出光路に進んだ反射、回折、散乱光のうち特定の反射、回折、散乱光を第1の遮光パターンを備えた第1の空間フィルタにて遮光し、
この第1の空間フィルタを透過した光による第1の光学像を形成し、この形成した第1の光学像を第1の検出器で受光して第1の画像を取得し、分岐により第2の検出光路に進んだ反射、回折、散乱光のうち特定の反射、回折、散乱光を第1の空間フィルタとは異なる第2の遮光パターンを備えた第2の空間フィルタにて遮光し、この第2の空間フィルタを透過した光による第2の光学像を形成し、この形成した第2の光学像を第2の検出器で受光して第2の画像を取得し、取得した第1の画像と第2の画像を統合的に処理して欠陥候補を判定するようにした。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、できるだけ少ない遮光面積の空間フィルタにて繰り返しパターンからの回折光を遮光し、欠陥信号の光量を確保しつつ、回折光の漏れにより生じたノイズ成分を画像処理により除去することで、欠陥検出感度向上の効果を得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本発明の実施例1及び2に係る光学式検査装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図1B】本発明の実施例1乃至4に係る光学式検査装置の照明光学系の平面図である。
【図1C】本発明の実施例1乃至4に係る光学式検査装置の照明光学系の側面図である。
【図2】本発明の実施例1及び2に係る光学式検査装置の画像処理部の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例1及び2に係る光学式検査装置の画像処理部の第1の変形例を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例1及び2に係る光学式検査装置の画像処理部の第2の変形例を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施例1及び2に係る光学式検査装置における処理の流れを示すフロー図である。
【図6】本発明の実施例1に係る光学式検査装置の空間フィルタ設定方法を示すフロー図である。
【図7】(a)は本発明の実施例1に係る光学式検査装置において2つの画像の相関度が高い状態を示すグラフ、(b)は2つの画像の相関度が低い状態を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例1に係る光学式検査方法の空間フィルタ形状と検出画像の関係を示す図である。
【図9】本発明の実施例2に係る光学式検査装置の空間フィルタ設定方法を示すフロー図である。
【図10】本発明の実施例3に係る光学式検査装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の実施例3に係る光学式検査装置の画像処理部の概略構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の実施例4に係る光学式検査装置の概略の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施例を、以下に図を用いて説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明に係る光学式検査装置の第1の実施例を、図1乃至図6を用いて説明する。以下では、半導体ウエハの暗視野検査装置による検査を例にとって説明する。
【0015】
図1Aは、本発明に係る光学式検査装置の第1の実施例を示す図である。
実施例1に係る光学式検査装置は、照明光学系110、ステージ部170、撮像光学系(検出光学系)120a、120b及び信号処理・制御系250とを備えて構成されている。照明光学系110は、ステージ部170に載置された被検査対象物である試料(半導体ウエハ)100に照明光を半導体ウェハ100の表面の法線方向に対して傾いた方向から照射し(斜方照明)、照射された半導体ウエハ100から散乱する散乱光を検出光学系120a及び120bにより検出する。その際、ステージ部170を平面内で駆動することによりステージ部170に載置された半導体ウエハ100上を照明光学系110からの照明光で走査する。信号処理・制御系250は、検出光学系120a及び120bにより検出された半導体ウエハ100からの散乱光を処理して半導体ウエハ100上に存在する欠陥を検出する。
【0016】
〔照明光学系110〕
照明光学系110は、レーザ光源111、ND(Neutral Density)フィルタ112、ビームエキスパンダ113、偏光板や波長板を備えてなる偏光生成部114、検査対象(半導体ウエハ)100に線状のビームを照射するための線状ビーム生成部115を備えて構成される。
レーザ光源111は、レーザビームを出射する。このとき、光源111には、気体レーザ、半導体レーザ、固体レーザや、面発光レーザなどが利用可能である。波長は赤外、可視域、紫外を用いることができるが、波長が短くなるほど光学的な分解能が向上するため、微細欠陥を見る際にはUV(Ultra Violet:紫外線)、DUV(Deep Ultra Violet:深紫外線)、VUV(Vacuum Ultra Violet:真空紫外線)、EUV(Extreme Ultra Violet:極端紫外線)などの紫外域の光を用いるとよい。
ビーム整形手段113は、レーザ光源111から出射されたレーザビームを整形する。本実施例では、ビーム成形手段113を、図1B及び図1Cに示すようにレーザ光源111から出射されたレーザビームの径を拡大するビームエキスパンダ1131と拡大されたレーザを平行光に成形するコリメートレンズ1132で構成する。
偏光生成部114は、偏光板1141や波長板1142を備えて構成され、ビーム成形手段113のビームエキスパンダ1131でビーム径を拡大された光の偏光特性を調整する。線状ビーム生成部115はシリンドリカルレンズ1151を備えている。
【0017】
図1Bは照明光学系110の平面図、図1Cはその正面図である。
【0018】
上記した構成において、レーザ光源111から出射されたレーザビームは、NDフィルタ112で光量が調整され、ビーム成形手段113でビームエキスパンダ1131によりビーム径が拡大されてコリメ−トレンズ1132で平行光に成形され、偏向制御部114で偏光の状態が制御され、線状ビーム生成部115のシリンドリカルレンズ1151により一方向に集光され、y軸と平行な線状ビーム101となって半導体ウェハ100の表面の線状の領域に照射される。このとき、図1Bに示す照明光学系のy軸からの照明方位βは、y軸方向を含む任意の方向から照射することができる。また、図1Cに示す照明光学系のz軸からの角度である極角γについては、0から90度の範囲内にて選択する。
このとき、偏光生成部114は線状ビーム生成部115の後におかれていても良い。この場合は偏光生成部114で偏光調整されたビームはレンズを通過することがないのでレンズの収差によるずれが生じることなく半導体ウエハ100に照射することが可能となる。
このようにして形成された線状ビーム101は、ステージy方向が線状ビーム101の長手方向となるように半導体ウエハ100の表面に照射される。
【0019】
〔検出光学系120a及び120b〕
図1Aに示した構成では、2つの検出光学系120a及び120bを備えている。検出光学系120a及び120bの機能は同様のため、ここでは検出光学系120aについて詳細に説明する。
検出光学系120aは、対物レンズ121、空間フィルタ123a、偏光解析器124a、結像レンズ125、ラインセンサ126aとを備えて構成される。また光路中の対物レンズ121と空間フィルタ123a間のビームスプリッタ122にて光路が分離され、ビームスプリッタ122透過光が検出光学系120aに、反射光が検出光学系120bの光路となる。また、光学系120a及び120bの対物レンズ121の出射側の瞳を観察する瞳観察光学系128a及び128bを持つ。瞳観察系128a及び128bへは検出光学系120aの光路中に出し入れ可能なビームサンプラー127a及び検出光学系120bの光路中に出し入れ可能なビームサンプラー127bを用いて光学系120a及び120bから瞳観察系へ光を導く。なお、瞳観察光学系128a及び128bの代わりに空間フィルタ123a及び123bの位置および形状と、ラインセンサにて取得される画像の強度の関係をあらかじめ求めておいて、その関係から瞳位置での強度分布を把握することが出来れば、瞳面を直接観察する瞳観察光学系128a及び128bを省略することができる。
対物レンズ121は、半導体ウエハ100の表面から散乱した反射、散乱、回折光を集光する。
空間フィルタ123aは、対物レンズ121にて集光された半導体ウエハ100の表面からの反射、散乱、回折光の一部を遮光する。ここで、空間フィルタ123aは、対物レンズ121の出射側の瞳位置又は瞳位置と等価(共役)な位置に配置される。空間フィルタ123aは縦横の方向に複数の本数、太さにて配置できる棒状の遮光フィルタ、瞳面にて2次元に所望の箇所を透過、遮光させることができるフィルタなどを利用される。特に2次元フィルタには、液晶などの電気光学効果を利用したものや、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などを用いる。なお、本実施例では、照明光をy方向が長手となる線状にするため、線状ビーム生成部115にてy方向に集光している。したがって、瞳面の回折パターンは集光NAに依存したy方向に広がりを持つ回折パターンとなる。この場合には、一方向に配置した棒状のフィルタにより適切に回折光を除去することができる。
【0020】
偏光解析器124aは、空間フィルタ123aで遮光されなかった散乱光の偏光特性を調整する。偏光生成部124aは、例えば1/4波長板や1/2波長板、偏光板を備えて構成され、これらはそれぞれが個別に回転制御し、任意の偏光を透過させることが可能となる。
【0021】
結像レンズ125は、空間フィルタ124aで遮光されなかった散乱光を透過させてその光学像を結像させる。ここで、空間フィルタ124aと結像レンズ125aとの位置は逆であっても良い。
【0022】
ラインセンサ126aは、結像レンズ125により結像された散乱光の像がラインセンサ124の検出面上に結像されるような位置に配置されており、散乱光の光学像を検出する。ラインセンサ126aとしては、例えば、TDI(Time Delay Integration)イメージセンサ:時間遅延積分型イメージセンサ,CCD(Charge Coupled Device)センサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの何れかを用いればよい。
このようにして検出された散乱光に基づく信号は、A/D変換部129aでラインセンサ126aから出力されたアナログ信号が増幅された後にデジタル信号に変換されて信号処理・制御部250に送られて処理される。
【0023】
検出光学系120bについても同様にして半導体ウェハ100からの散乱光の光学像が検出され信号処理・制御部250に送られて処理が行われるが、空間フィルタ123bにより遮光する箇所を検出光学系120aと異なる形状、位置に設定し、異なる光学条件の2画像を一度に取得する。ここで、空間フィルタ124a及び124bの形状、位置によりラインセンサ126a又は126bで検出される画像に含まれるノイズ成分が異なるため、2画像を統合的に処理することでノイズが抑制された画像を得ることが可能になり、欠陥検出性能の向上が可能となる。なお、空間フィルタ123a及び123bの設定方法については後述する。
【0024】
〔ステージ部170〕
ステージ部170は、xステージ170a、yステージ170b、zステージ170c、θステージ170dを備えて構成される。
xステージ170aは、検査対象試料である表面に微細なパターンが形成された半導体ウエハ100を載置してx方向に移動可能なステージである。
yステージ170b、zステージ170c、θステージ170dもそれぞれ同様に、検査対象試料である表面に微細なパターンが形成された半導体ウエハ100を載置してy方向、z方向、θ方向に移動可能なステージである。
【0025】
〔信号処理・制御部250〕
信号処理・制御部250は、画像処理部200、操作部210、制御部220、表示部230、高さ検出部160とを備えて構成される。
【0026】
画像処理部200は、ラインセンサ126a及び126bで検出されてA/D変換器129a及び129bで増幅されてデジタル化された信号から散乱光の像の画像1261および1262を作成し、この作成した半導体ウエハ100からの散乱光による画像1261及び1262を処理し、欠陥を抽出する。
【0027】
図2は、本発明に係る光学式検査装置の第1の実施例における画像処理部200の概略構成を示すブロック図である。はじめに検出光学系120aにおいて取得した散乱光に基づく画像1261と、検出光学系120bにおいて取得した散乱光に基づく画像1262とをyステージ170bの位置情報を用いて生成し、この生成した画像1261と1262とを画像位置合せ処理部2001で画素単位以下の精度で位置合わせし、明るさ補正部2002でビームスプリッタ122透過光と反射光の効率の違い、偏光解析部124a及び124bの透過率の違い、検出レンズ125の透過率の違い、ラインセンサ126a及び126bの効率の違いなどによって発生した画像1261及び1262の明るさの違いを補正し、統合処理部2003でこの明るさの違いを補正した2枚の画像1261と1262とを統合処理して1枚の新たな画像1268を構築する。例えば、明るさの違いを補正した2枚の画像1261と1262とを重み付け加算、掛け算等により統合して画像1268を構築する。ここで、画像1261と画像1262は空間フィルタ123aと123bとで半導体ウェハ100からの散乱光を遮光するためのフィルタの条件(フィルタのパターン)を異なる条件に設定して得られた画像であり、それぞれの条件で取得された画像中の欠陥信号321は共通に光るけれども、ノイズ成分322は光る箇所が異なるため、統合処理により得られた画像1268では、ノイズ成分322が低減され欠陥信号321が顕在化される。
【0028】
次に、欠陥判定部2004でこの新しく構築した画像1268より欠陥を抽出する。欠陥判定部2004では、本来同一の形状に形成された隣接パターン又は隣接ダイの同じ位置のパターンをラインセンサ126a及び126bにて撮像して得た画像を画像1261及び1262と同様に統合して得られた画像(参照画像:図示せず)と、画像1268を比較処理し欠陥候補を抽出する。比較処理には画像1268と参照画像の減算処理等が用いられる。このとき、欠陥からの散乱光は、正常部からの散乱光と異なることから、欠陥からの散乱光が強調された画像が得られる。正常部は暗く、欠陥部は明るい画像が取得されるため、求めた差画像にしきい値処理を施し欠陥を判定することができる。なお、しきい値画像は、たとえば、複数の正常部の統計的な明るさから決定する。次に、欠陥分類サイジング部2005でこの抽出した欠陥候補の散乱光分布や強度などの特徴から、欠陥判定、分類・サイジングが行われる。
【0029】
画像処理部200の第1の変形例を図3に示す。第1の変形例における画像処理部200’では、検出光学系120aにおいて取得した散乱光に基づく画像1261と、隣接するダイやセルなどにおいて画像1261の取得箇所と同形状の部位にて取得した参照画像1261rとを生成し、画像位置合せ処理部2011aで、この生成した画像1261と参照画像1261rとをセンサの画素単位以下の精度で位置合わせし、明るさ補正部2012aで試料表面及び表層の薄膜の厚さなどの試料起因もしくは検査時のレンズとウエハとの高さの違いなどの光学系起因による検査画像1261と参照画像1261rの明るさを補正し、差分処理部2013aで検査画像1261と参照画像1261rの対応する画素同士を引き算する差分処理を施して差分画像1261dを得る。この場合、隣接するダイやセルなどにおいて画像1261の取得箇所と同形状の部位にて検出光学系120aにおいて取得した散乱光に基づいて生成した参照画像1261rは、図示していない画像メモリに一旦記憶され、画像メモリから画像位置合わせ処理部2011aに呼び出されて画像1261との画素単位以下の精度で位置合わせ処理が行われる。また、検出光学系120bより取得した信号から欠陥を含む画像1263と参照画像1263rを生成し、この画像1263と参照画像1263rについても同様の構成により処理が施されて差分画像1263dが得られる。
【0030】
次に、欠陥判定部2014において、差分画像1261dの輝度値を横軸x1とし、差分画像1263dの輝度値を縦軸x2とする直交座標系を構成して2つの差分画像1261d及び1263dの対応する画素の輝度をこの直交座標系にプロットする。直交座標系のx1、x2空間にて、ノイズは欠陥画像と参照画像の引き残しであるためx1、x2成分共に小さく、原点付近に分布する。一方、欠陥画像は輝度がノイズと比較し大きく、x1、x2空間において原点より離れた位置にプロットされる。そこで、直交座標系の原点付近に境界350を設けることでノイズ322と欠陥321を分離し、欠陥判定する。境界350には円や直線の組み合わせ等を使用することができる。例えば、円を用いる場合には、半径をAとし、境界線は次式(数1)を満たす領域に引けばよい。
【0031】
【数1】

【0032】
本実施例では2枚の画像についての例を示したが、3枚以上を用いても同様の処理を用いることができる。この抽出した欠陥候補の散乱光分布や強度などの特徴から、分類・サイジング処理部2015において欠陥判定、分類・サイジングが行われる。
【0033】
画像処理部200の第2の変形例を図4に示す。第2の変形例における画像処理部200”では、検出光学系120aにおいて取得した散乱光に基づく画像1261と隣接するダイやセルなどにおいて画像1261の取得箇所と同形状の部位にて取得した参照画像1261rとを生成し、画像位置合せ処理部2021aで、この生成した画像1261と参照画像1261rとをセンサの画素単位以下の精度で位置合わせし、明るさ補正部2022aで試料表面及び表層の薄膜の厚さなどの試料起因もしくは検査時のレンズとウエハとの高さの違いなどの光学系起因による検査画像1261と参照画像1261rの明るさを補正し、差分処理部2023aで検査画像1261と参照画像1261rの対応する画素同士を引き算する差分処理を施して差分画像1261dを得る。この、差分画像1261dを得るまでの処理は、図3で説明した第1の変形例と同じである。
【0034】
次に、閾値処理部2027aで差分画像1261dに対し、閾値を設け、閾値以上の輝点を欠陥候補として抽出する閾値処理を施す。閾値は、たとえば、複数の正常部の統計的な明るさから決定する。また、検出光学系120bより取得した散乱光に基づいて生成した欠陥を含む画像1263と参照画像1263rについても、2021aから2023aまでと同様の処理2021bから2023bまでを施し差分画像1263dを取得し、閾値処理2027bにより、欠陥候補を抽出する。次に欠陥判定結果統合処理部2028で閾値処理2027a及び2027bにより差分画像1261d及び1263dより抽出した欠陥候補を統合する。統合方法は例えば、差分画像1261d及び1263dより抽出した欠陥候補の共通部分を用いる。最後に、分類サイジング処理部2029で上記方法により抽出した欠陥候補の散乱光分布や強度などの特徴から、欠陥判定、分類・サイジングが行われる。
操作部210は、人が検査装置をオペレーションする部分であり、GUI(Graphical User Interface)を介して、検査レシピの作成、作成したレシピによる検査の指示、及び検査結果のマップ表示や検出した欠陥の特徴量表示などが行われる。
制御部220は、装置の各部位を制御する。例えば、後述の高さ検出器160からの検出結果を受信し、ステージ部170のxステージ170a、yステージ170b、zステージ170c、θステージ170dの位置を制御したり、空間フィルタ123a及び123b、偏光解析部124a及び124bに制御信号を送ったりする。
高さ検出部160は、半導体レーザ等の光発信機161から検査対象である半導体ウェハ100の表面に照射されたビームの直接反射光を検出して検出面上におけるこの反射光の位置情報を得、この得た反射光の位置情報より、検査中のステージ部170のステージ高さを検出し、検出結果を制御部220に送る。ステージ高さにずれが生じている場合は、この高さ検出部での検出結果に基づき制御部220からの制御信号を用いてzステージ170cを駆動してステージの高さずれを補正し、検査対象のデフォーカスを防ぐ。
【0035】
図5は、本発明に係る光学式検査方法の第1の実施例を示すフロー図である。
照明光学系110によりレーザ光源111から発射されたレーザビームをNDフィルタ112で光量を調整し、ビーム成形部113でビーム径を拡大して平行ビームを形成し、偏光生成部114で所望の偏光状態とし、さらに線状ビーム生成部115で線状に整形し、この線状に成形した照明光をxステージ170aによりx方向に連続的に移動している半導体ウエハ100に斜め方向から照射する(S100)。この線状に成形した照明光の照射により半導体ウエハ100から発生した反射、散乱、回折光で対物レンズ121に入射した光のうち半導体ウェハ100に形成された繰り返しパターンからの反射、散乱、回折光を対物レンズ121の出射側の瞳位置に設置された空間フィルタ123a又は123bで遮光し(S101)、空間フィルタ123a又は123bで遮光されなかった半導体ウェハ100からの反射、散乱、回折光による光学像を検出光学系120a及び120bにて検出して2枚の画像を同時に取得し(S102)、画像処理部200で2枚の画像を統合して1枚の画像を生成し(S103)、この統合した画像をあらかじめ生成しておいた参照画像と比較して欠陥候補を抽出し(S104)、検出した画像による欠陥候補の分布の違い、明るさの違いなどの情報から欠陥種の分類およびサイジングなどを行う(S105)。
【0036】
次に各ステップの詳細な動作内容を説明する。
(S100)
S100では、照明光学系110の光源111から出射されたレーザビームをビーム整形手段113にて整形し、偏光生成部114によって偏光状態を調整する。その後、線状ビーム生成部115にて線状ビームに成型し、半導体ウエハ100に照射する。 このとき、光学式の暗視野検査装置では、制御部220でyステージ170bを制御してy方向(又は−y方向)に一定の速度で移動させることにより半導体ウエハ100を照明光学系110及び検出光学系(120a及び120b)に対して一方向に連続的に移動させながら照明光を半導体ウエハ100上に照射して走査する。
(S101)
半導体ウエハ100上の線状ビームが照射された領域から発生した反射、散乱、回折光の一部は検出光学系120a及び120bの対物レンズ121に入射して集光され、ビームスプリッタ122で光路が分岐される。このうち、ビームスプリッタ122を透過した光は、検出光学系120aの光路を進んで空間フィルタ123aに到達し、空間フィルタ123aに形成された遮光パターンにより半導体ウエハ100の表面からの反射、散乱、回折光のうち半導体ウェハ100上に形成された繰り返しパターンからの反射・散乱・回折光により発生した光パターンが遮光される。空間フィルタ123aで遮光されずに空間フィルタ123aを通過した光は偏光制御部124aに入射し、偏光の状態が制御されて偏光制御部124aから出射し、結像レンズ125により空間フィルタ123aで遮光されなかった散乱光の像が形成される。この散乱光の像の結像位置に検出面が位置するように設置されたラインセンサ126aにより散乱光の像が検出される。一方、ビームスプリッタ122で分岐された光のうちビームスプリッタ122で反射された光は、検出光学系120bの光路を進んで空間フィルタ123bに到達し、空間フィルタ123bに形成された遮光パターンにより半導体ウエハ100の表面からの反射、散乱、回折光のうち半導体ウェハ100上に形成された繰り返しパターンからの反射・散乱・回折光により発生した光パターンが遮光される。空間フィルタ123aで遮光されずに空間フィルタ123aを通過した光は偏光制御部124bに入射し、偏光の状態が制御されて偏光制御部124aから出射し、結像レンズ125により空間フィルタ123bで遮光されなかった散乱光の像が形成される。この散乱光の像の結像位置に検出面が位置するように設置されたラインセンサ126aにより散乱光の像が検出される。ここで、空間フィルタの設定方法については後述する。
【0037】
(S102)
S101で偏光特性が調整された散乱光の像をラインセンサ126a及び126bにより検出した信号は、それぞれA/D変換器129a及び129bでA/D変換された後画像処理部200に入り、半導体ウエハ100の表面に関する画像が生成される。
(S103)
S102にて生成された2枚の画像について位置合せ部2001でラインセンサ126a及び126bの画素単位以下の精度で位置合せをし、明るさ補正部2002で位置を合わせた2枚の画像の明るさの補正を行った後に統合処理部2003で明るさを補正した2枚の画像を統合し、新たな画像を生成する(詳細は上記の画像処理部200の説明を参照)。
【0038】
(S104)
S103にて生成した統合画像を欠陥判定部2004において図示していない記憶部に記憶させておいた参照画像(詳細は上記の画像処理部200の説明を参照)との比較を行い、その差より欠陥候補を抽出する。
【0039】
(S105)
S104にて抽出した欠陥候補を欠陥分類サイジング部2005において、ラインセンサ126a及び126bでの分布の違いや、欠陥の輝度などの情報より、欠陥種の分類やサイジングを行う。
【0040】
一般に、回折光はパターン構造に垂直に生じる。検査対象である半導体ウエハ100の構造は、図1の主軸x,y方向のライン状パターンが多い。回折光は、ライン状パターンの並びの方向に対して垂直に生じるため、y, x方向に多く回折光がある。照明光学系110による照明の仰角と、検出光学系120a又は120bの対物レンズ121のNAを適切に設定することで、検出光学系120a又は120bに、半導体ウエハ100のライン状パターンからの回折光がなるべく入らないよう装置を構成することができる。対物レンズ121内に入ってきた回折光に関しては、前述の空間フィルタ123a及び123bにて除去する。
【0041】
本発明では、空間フィルタ123a及び123bの設定の違いによる画像のノイズ特性の違いを利用し、ノイズを抑制し欠陥信号を顕在化する。図6に空間フィルタ設定のフローを示す。ウエハ上の検査対象部位からの回折光を空間フィルタで全て遮光し(S200)、空間フィルタを設定している状態での検査対象部位の平均強度Tをラインセンサにて取得した画像より特定し(S201)、平均強度T以上の任意の値をしきい値Tthと設定し、検査対象部位がTth以下となるような空間フィルタ設定にて複数の画像を取得し(S202)、取得した画像数nより2枚選択しnC2通りの組合せについて検査対象部位の強度の相関を計算し(S203)、2枚の画像間にて最も相関の低い組合せとなる2画像を取得できる空間フィルタ設定を空間フィルタ123a及び123bに設定し検査する(S204)。
【0042】
次に各ステップの詳細を説明する。
(S200)
S200では、従来の空間フィルタの設定方法(特許文献1、2)と同様に、検査対象パターンからの回折光を対物レンズの出射側の瞳面上で全て遮光するよう空間フィルタを設定する。従来の検査方法ではこの回折光を全て遮光する空間フィルタ設定にて検査を実施するが、この条件ではパターン回折光のみならず欠陥信号をも遮光してしまっている。
【0043】
(S201)
S200で設定した空間フィルタを用いてラインセンサで画像を取得し、空間フィルタにて回折光が除去された検査対象部位の平均強度Tを算出する。このとき、検査対象部位の強度を算出できるラインセンサ以外の観察用カメラ等を用いてもよい。
【0044】
(S202)
S201にて算出した検査対象部位の平均強度Tに係数αを掛け、Tth=T×αで表すTthをしきい値と設定し、しきい値以下の強度となる空間フィルタ設定のn条件にて検査対象部位を測定する。αは回折光の漏れをある程度許容し、欠陥検出信号の確保を狙う目的で設定する。このとき、αを大きくとってしまうと、欠陥信号がノイズ成分に埋もれてしまうため、平均強度Tと同等な微小欠陥を検出する際には、例えばα=1.1程度に設定する。
【0045】
(S203)
S202にて、求めたn通りの空間フィルタ設定の中から2つを選択し、計nC2通りの場合について相関計算を行う。図7(a)及び(b)のように選択した2画像の各対応画素について、それぞれの明るさを2軸にプロットし、相関係数を計算する。図7(a)に示すように2画像の相関が高い場合には、各画素のノイズの輝度レベルが類似しており、その2枚の画像を統合しても、同様の画像となるため、SNR向上への効果は少ない。一方、図7(b)に示すように相関が低い場合には、各画素にてノイズの輝度レベルが異なるため、2画像を統合することでノイズの輝度レベルを抑制することができ、SNR向上(欠陥顕在化)の効果が見込まれる。図8に異なる空間フィルタを適用したときに得られる画像の例を模式的に示す。瞳面800にはウエハ上のパターン起因の輝点810が複数存在する。検出系120aでは、全ての輝点810を遮光するよう空間フィルタ123aを設定する。このとき得られる画像1261は、ノイズの輝度も低いが、欠陥信号の一部も空間フィルタ123aの遮光により低下する。一方、検出系120bでは、瞳面800での輝点810の一部のみを空間フィルタ123bにて遮光しているので、ここで得られる画像1262のノイズの輝度は画像1261と比較し、高くなるが、欠陥信号も高くなる。ここで、ノイズの起因となる瞳面800上の輝点810の遮光位置が異なるため画像1261及び1262におけるノイズの相関は低くなる傾向が強い。したがって、画像1261及び1262を統合処理部2003で統合処理850することにより、画像1268のようなノイズ成分が抑制され、欠陥信号が顕在化する。
【0046】
(S204)
S203にて求めた最も相関の低くなる2つの空間フィルタ設定を空間フィルタ123a及び123bに適用し、検査を実施する。
【実施例2】
【0047】
本発明に係る光学式検査装置の第2の実施例を、図9を用いて説明する。本実施例における装置の構成は実施例1で説明した図1に示した構成と同じである。
本実施例は実施例1と、空間フィルタの設定条件を求めるところに光学シミュレーションを用いるところが異なる。ここでは実施例1との違いのみ説明する。
【0048】
図9に光学シミュレーションを用いた空間フィルタ設定のフローを示す。ウエハ上の検査対象部位をモデル化し、対象部位からの回折パターンを除去する空間フィルタを適用し得られる像を求め(S300)、検査対象部位の平均強度Tを算出し(S301)、平均強度T以上の任意の値をしきい値Tthと設定し、検査対象部位がTth以下となるような空間フィルタ設定にて複数の画像を取得し(S302)、取得した画像数nより2枚選択しnC2通りの組合せについて統合処理計算を施し(S303)、検査部位のノイズが最も低い組み合わせを選択し(S304)、S304にて決定した画像組み合わせを算出した際の空間フィルタ形状を空間フィルタ123a及び123bに設定し実検査する(S305)。
【0049】
次に各ステップの詳細を説明する。
(S300)
S300では、検査対象部位をモデル化し、光学シミュレーションにより瞳免状での検査対象部位からの反射、屈折、散乱光を計算し、空間フィルタを適用し、ラインセンサにて取得される像を算出する。ここで、空間フィルタは、従来の設定方法(特許文献1、2)と同様に、検査対象パターンからの回折光を全て遮光するよう空間フィルタを設定する。なお、従来の検査方法ではこの回折光を全て遮光する空間フィルタ設定にて検査を実施するが、この条件ではパターン回折光のみならず欠陥信号をも遮光してしまっている。
【0050】
(S301)
S300で設定した空間フィルタの条件下で計算されたラインセンサで取得されるべき画像について、空間フィルタにて回折光が除去された検査対象部位の平均強度Tを算出する。
【0051】
(S302)
S301にて求めた空間フィルタ適用後の検査対象部位の平均強度Tに係数αを掛け、Tth=T×αで表すTthをしきい値と設定し、しきい値以下の強度となる空間フィルタ設定のn個の条件にて検査対象部位の計算を行う。αは回折光の漏れをある程度許容し、欠陥検出信号の確保を狙う目的で設定する。このとき、αを大きくとってしまうと、欠陥信号がノイズ成分に埋もれてしまうため、平均強度Tと同等な微小欠陥を検出する際には、例えばα=1.1程度に設定する。
【0052】
(S303)
S302にて、求めたn通りの空間フィルタ設定の中から2つを選択し、統合処理を行う。ここで、統合処理には、例えば、重み付け加算、掛け算等により画像を用いる。
【0053】
(S304)
S302にて計算されたnC2通りの統合された画像の検査対象部位の平均強度を算出し、最も低い値となるものを選択する。
【0054】
(S305)
S304にて決定した画像組み合わせを算出した際の空間フィルタ形状を空間フィルタ123a及び123bに設定し実検査する。
【実施例3】
【0055】
本発明に係る光学式検査装置の第3の実施例を、図10乃至図11を用いて説明する。
図10は、本発明に係る光学式検査装置の第3の実施例の光学系の概略の構成を示す図、図11は、本発明に係る光学式検査装置の第3の実施例における画像処理部の概略構成を示すブロック図である。
【0056】
本実施例の構成は、実施例1の図1に示した構成に斜方検出光学系(120c及び120d)を加えたものである。即ち、図10に示した照明光学系110、検出光学系120a及び120b、高さ検出部160、ステージ部170の構成は、それぞれ実施例1で説明した図1に示した構成と同じである。本実施例においては、斜方検出光学系120c及び120dを加えることで、上方への反射、散乱、回折光を検出する検出光学系(上方検出光学系)120a及び120bでは捕らえられなかった欠陥信号を捕捉することができるため、検出できる欠陥種が増加し、欠陥検出感度も向上する。
斜方検出光学系(120c及び120d)は実施例1で図1を用いて説明した上方検出光学系(120a及び120b)と同様に、対物レンズ121c、空間フィルタ123c及び123d、偏光解析器124c及び124d、結像レンズ125c、ラインセンサ126c及び126dとを備えて構成される。また光路中の対物レンズ121cと空間フィルタ123c間のビームスプリッタ122cにて光路が分離され、ビームスプリッタ122c透過光が斜方検出光学系120cに、反射光が斜方検出光学系120dの光路となる。ここで空間フィルタ123c及び123dの形状と位置も上方検出系の空間フィルタ120a及び120bと同様に、形状及び位置が異なる。また、図10に示した構成では省略しているが、上方検出光学系120a及び120bの光路中には実施例1で説明したように瞳観察光学系128a及び128bが設けられており、斜方検出光学系120c及び120dの光路中にも瞳観察光学系128a及び128bに相当する瞳観察光学系が設けられている。
信号処理・制御部1250は、画像処理部1200、操作部1210、制御部1220、表示部1230、高さ検出部160とを備えて構成される。
【0057】
画像処理部1200は、ラインセンサ126a及び126bで検出されてA/D変換器129a及び129bで増幅されてデジタル化された信号、及びラインセンサ126c及び126dで検出されてA/D変換器129c及び129dで増幅されてデジタル化された信号から散乱光の像の画像1261および1262を作成し、この作成した半導体ウエハ100からの散乱光による画像1261及び1262を処理し、欠陥を抽出する。
【0058】
図11は、実施例3における画像処理部1200の概略構成を示すブロック図である。画像処理部1200は実施例1で図2を用いて説明した画像処理部200とほぼ同じ構成をしており、検出光学系120a及び120bで検出した信号から生成した画像を処理する位置合せ部2001、明るさ補正部2002、統合処理部2003、欠陥判定部2004を備えている。画像処理部1200は、更に、検出光学系120cにおいて検出した散乱光に基づいて生成した画像1263と、検出光学系120dにおいて検出した散乱光に基づいて生成した画像1264を処理する位置合せ部2001c、明るさ補正部2002c、統合処理部2003c、欠陥判定部2004cを備えている。そして、画像処理部1200は、欠陥判定部2004と2004cとでそれぞれ判定した結果を統合する欠陥判定結果統合部2006を備え、この統合した結果を用いて欠陥分類サイジング部2005で欠陥の分類及び欠陥のサイジングを行なう構成となっている。微小欠陥の散乱方向は一様ではないため、上方検出光学系120aおよび120bと斜方検出光学系120cと120dの2方位の検出系を備えることで、欠陥補足率の向上の他に、上方検出光学系120aおよび120bで検出した欠陥の強度信号と斜方検出光学系120cおよび120dで検出した欠陥の信号強度を比較することにより欠陥分類、サイジング精度の向上が可能となる。
【0059】
なお、上記に説明した実施例3においては、画像処理部1200の構成を実施例1の図2で説明した構成に準じて説明したが、実施例1で説明した図3又は図4に示した構成に準じた構成とすることもできる。
【実施例4】
【0060】
本発明に係る光学式検査装置の第4の実施例を、図12を用いて説明する。
実施例3の光学系との違いは上方検出系及び斜方検出系中の光路分岐がないところである。本発明では空間フィルタ123a及び123cの設定方法の違いによりウエハ上のパターン起因のノイズを抑制するのが狙いであるため、本実施例の構成においては、レシピ作製および検査の際は、検出系120a及び検出系120cにおいてそれぞれ2通りの空間フィルタを設定し、2回検査を実施することで、実施例3と同様の画像を取得する。画像取得後の処理方法については実施例3と同様のため説明を省略する。
【0061】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
100・・・半導体ウエハ 101・・・線状ビーム 110・・・照明光学系
111・・・レーザ光源 112・・・NDフィルタ 113・・・ビームエキスパンダ
114・・・偏光発生器 115・・・線状ビーム生成部 120a、120b、120c、120d・・・検出光学系 121、121c・・・対物レンズ 122、122c・・・ビームスプリッタ 123a、123b、123c、123d・・・空間フィルタ 124a、124b、124c、124d・・・偏光解析器 125a、125b、125c、125d・・・ラインセンサ 127a、127b・・・ビームサンプラー
128a、128b・・・瞳面観察光学系 1261、1262、1264、1265・・・撮像画像 1268、1269・・・統合画像 160・・・高さ検出部 161・・・光発信機 170・・・ステージ部 170a・・・xステージ 170b・・・yステージ 170c・・・zステージ 170d・・・θステージ 200、1200・・・画像処理部 210、1210・・・操作部 220、1220・・・制御部 230,1230・・・表示部 250,1250・・・信号処理・制御系 2001,2011a、2011b、2021a、2021b、2001c・・・位置合わせ部 2002,2012a、2012b、2022a、2022b、2002c・・・明るさ補正部 2003,2003a、2003c・・・統合処理部 2013a、2013b、2023a、2023b・・・差分処理部 2004,2014、2004a、2004c・・・欠陥判定部 2028、2006・・・欠陥判定結果統合部 2005,2005c、2029・・・欠陥分類・サイジング部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にパターンが形成された検査対象物に光を照射する照明手段と、
該照明手段により光が照射された前記検査対象物から発生した反射、回折、散乱光を集光する集光手段と、
該集光手段により集光された前記検査対象物からの反射、回折、散乱光を第1の検出光路と第2の検出光路に分岐する光路分岐手段と、
該光路分岐手段により分岐された反射、回折、散乱光のうち前記第1の検出光路に進んだ反射、回折、散乱光に対して特定の反射、回折、散乱光を遮光する第1の遮光パターンを備えた第1の空間フィルタと、
該第1の空間フィルタを透過した光による像を形成する第1の結像手段と、
該第1の結像手段で形成された像を検出して第1の画像を取得する第1の画像取得手段と、
前記光路分岐手段により分岐されて第2の検出光路に進んだ反射、回折、散乱光に対して前記第1の空間フィルタとは異なる第2の遮光パターンを備えた第2の空間フィルタと、
該第2の空間フィルタを透過した光による像を形成する第2の結像手段と、
該第2の結像手段で形成された像を検出して第2の画像を取得する第2の画像取得手段と、
前記第1の画像取得手段で取得した第1の画像と前記第2の画像取得手段で取得した第2の画像を統合的に処理して欠陥を抽出する画像処理を行う画像処理手段と
を備えることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
前記照明手段は、線状に成形した光を前記検査対象物に該検査対象物の法線方向に対して傾斜した方向から照射することを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記集光手段は、照明手段により光が照射された前記検査対象物から発生した反射、回折、散乱光のうち前記検査対象物の法線の方向に反射、回折、散乱した光を集光することを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記第1の検出光路及び前記第2の検出光路に、偏光状態を制御可能な偏光素子を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
表面にパターンが形成された検査対象物に光を照射し、
該光が照射された前記検査対象物から発生する反射、回折、散乱光を集光し、
該集光された前記検査対象物からの反射、回折、散乱光を第1の検出光路と第2の検出光路に分岐し、
該分岐により前記第1の検出光路に進んだ前記反射、回折、散乱光のうち特定の反射、回折、散乱光を第1の遮光パターンを備えた第1の空間フィルタにて遮光し、
該第1の空間フィルタを透過した光による第1の光学像を形成し、
該形成した第1の光学像を第1の検出器で受光して第1の画像を取得し、
前記分岐により第2の検出光路に進んだ前記反射、回折、散乱光のうち特定の反射、回折、散乱光を前記第1の空間フィルタとは異なる第1の遮光パターンを備えた第2の空間フィルタにて遮光し、
該第2の空間フィルタを透過した光による第2の光学像を形成し、
該形成した第2の光学像を第2の検出器で受光して第2の画像を取得し、
前記取得した第1の画像と第2の画像を統合的に処理して、欠陥候補を判定することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項6】
前記光を照射する工程において、線状に成形した光を前記検査対象物に該検査対象物の法線方向に対して傾斜した方向から照射することを特徴とする請求項5に記載の欠陥検査方法。
【請求項7】
前記光が照射された検査対象物から発生した反射、回折、散乱光のうち前記検査対象物の法線の方向に反射、回折、散乱した光を集光することを特徴とする請求項5に記載の欠陥検査方法。
【請求項8】
前記第1の検出光路又は前記第2の検出光路に進んだ前記反射、回折、散乱光の偏光状態をすることを特徴とする請求項5に記載の欠陥検査方法。
【請求項9】
表面にパターンが形成された検査対象物に光を照射し、
該光が照射された前記検査対象物から発生する反射、回折、散乱光を集光して第1の遮光パターンを備えた第1の空間フィルタを透過した光による第1の光学像を第1の検出器で受光して第1の画像を取得し、
該光が照射された前記検査対象物から発生する反射、回折、散乱光を集光して第2の遮光パターンを備えた第2の空間フィルタを透過した光による第2の光学像を第2の検出器で受光して第2の画像を取得し、
前記取得した第1の画像と第2の画像を統合的に処理して欠陥候補を判定することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項10】
前記第1の画像は、前記反射、回折、散乱光を集光して光路分岐手段により第1の光路に導いた光による前記第1の光学像を前記第1の検出器で受光して得た画像であり、前記第2の画像は、前記反射、回折、散乱光を集光して光路分岐手段により第2の光路に導いた光による前記第2の光学像を前記第2の検出器で受光して得た画像であることを特徴とする請求項9記載の欠陥検査方法。
【請求項11】
前記第1の画像は、前記検査対象物から発生した前記反射、回折、散乱光のうち前記検査対象物に対して垂直な方向及びその近傍に向かった反射、回折、散乱光を集光した光による前記第1の光学像を前記第1の検出器で受光して得た画像であり、前記第2の画像は、前記検査対象物から発生した前記反射、回折、散乱光のうち前記検査対象物に対して斜めの方向に向かった反射、回折、散乱光を集光した光による前記第2の光学像を前記第2の検出器で受光して得た画像であることを特徴とする請求項9記載の欠陥検査方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−117814(P2012−117814A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264802(P2010−264802)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】