説明

止水栓

【課題】 メンテ性がよく、コンパクトでありながら多くの流量を流すことができ、かつ漏水や止水不良を起こすことのない信頼性の高い止水栓を提供することを可能とする。
【解決手段】 本発明では、水栓本体の前記流入口よりも上流側には、前記開口雌ねじと同軸状に上流雌ねじが形成されており、また、こま部材の流入口よりも上流側には、このこま部材と一体に軸回り方向に回転可能で、かつ、上流側ねじ部と螺合する送りねじ部が外周に形成されたガイド部材が固定されており、こま部材が回転してガイド部材が流入口から離れる軸線方向に移動する際には、止水弁体が流入口を閉塞する軸線方向このこま部材を移動させると共に、ガイド部材が流入口に近づく軸線方向に移動する際には、こま部材を軸線方向に移動させないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐水先と給水源とを繋ぐ給水流路に設けられる止水栓に係り、特に、ストレーナを備えており、止水状態でストレーナを着脱してメンテナンス可能であり、しかも、止水弁体が逆流防止機能も果たすタイプの止水栓に関する発明である。
なお、給水流路としては、便器洗浄フラッシュバルブ、便器洗浄水タンクへの給水路や、洗面器などに固定されて使用される水栓への給水路等が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
従来の止水栓として、ストレーナを備えており、止水状態でストレーナを着脱してメンテナンス可能であり、しかも、止水弁体が逆流防止機能も果たすものが知られている。(例えば、特許文献1参照。)。
この特許文献1に記載された止水栓においては、給水流路の内側に通水筒をねじ込んで固定し、この通水筒の内側に設けられたねじ孔に調節栓が螺着されており、そして、調節栓の挿孔に止水機能も果たす逆止弁が保持されている。そして、調節栓とは別に栓が設けられており、この栓にはストレーナが嵌装されている。そのため、調節栓をねじ込むことにより逆止弁を通水筒に押付けて止水状態とし、その状態で栓を取り外してストレーナを抜き取ることができ、水道の元栓を締めなくても簡単にストレーナの清掃ができる。
【0003】
【特許文献1】実公昭56−26132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、逆止弁をとりつけるために、給水流路の内側に通水筒をねじ込んで固定しており、その通水筒の内面と逆止弁との対向した空間が実際に水の流れる通路となる。このように通水筒によって流路径が絞られてしまい、流量が低下してしまうという不具合がある。また、通水筒が給水流路にねじ込まれて固定されているため、このねじ込みが緩むと水漏れを起こす恐れがあり、ねじ込みが外れると全く止水ができなくなるという恐れもある。
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、止水弁と対向る面が絞られることがなく、コンパクトでありながら多くの流量を流すことのできる止水栓を提供でき、しかも、漏水や止水不良を起こすことのない信頼性の高い止水栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1記載においては、水の流入口と流出口とが設けられた止水栓本体と、この止水栓本体の外面に開口した弁体挿入開口と、この弁体挿入開口から前記流入口に向かって挿入された前記流入口を塞ぐ止水弁体を備えたこま部材と、このこま部材を前記弁体挿入開口から前記流入口を結ぶ軸線方向に進退可能で、且つ、軸回り方向に一体に回転可能に保持するスピンドルと、このスピンドルを軸線方向に挿通すると共に、前記弁体挿入開口の内周面に設けられた開口雌ねじに螺合固定されるスピンドルガイドと、このスピンドルガイドによって保持され、前記流入路と流出路とを繋ぐ通水路に位置するストレーナと、から構成された止水栓において、前記止水栓本体の前記流入口よりも上流側には、前記開口雌ねじと同軸状に上流雌ねじが形成されており、また、前記こま部材の前記流入口よりも上流側には、このこま部材と一体に軸回り方向に回転可能で、かつ、前記上流雌ねじと螺合する送りねじ部が外周に形成されたガイド部材が固定されており、前記こま部材が回転して前記ガイド部材が前記流入口から離れる軸線方向に移動する際には、前記止水弁体が前記流入口を閉塞する軸線方向に前記こま部材を移動させると共に、前記ガイド部材が前記流入口に近づく軸線方向に移動する際には、前記こま部材を軸線方向に移動させないことを特徴とする。
【0006】
このように、止水弁体と対向する流入口よりも上流側の給水流路の内面を利用して、止水弁体を止水位置に移動可能で、且つ、逆流防止もできるように構成したため、止水弁体と対応する面との間が絞られることがなく、コンパクトでありながら多くの流量を流すことのできる止水栓を提供でき、しかも、止水位置に別部材を嵌めこむものではないため、漏水や止水不良を起こすこともない。
【0007】
また、請求項2記載の発明によれば、前記ガイド部材は、前記こま部材を軸回り方向に回転可能に挿通するこま部挿通孔が設けられた円板部と、この円板部の周囲に軸線方向に所定長さ設けられ、外周面に前記送りねじ部が形成された円筒部と、から構成されていることを特徴とする。
従って、ガイド部材における円筒部の周面に送りねじ部が形成されているため、ガイド部材と水栓本体との接触面積が大きく、ガイド部材を安定した状態で保持でき、止水弁体の姿勢を安定させ、漏水や止水不良を起こすことがない。
【0008】
また、請求項3記載の発明によれば、前記こま部材を前記流入口へ向けて付勢するばねを備えており、このばねは、前記スピンドルガイドと前記こま部材との間に架け渡されていることを特徴とする。
従って、ばねにより、水が流れていない状態においては、こま部材に設けた止水弁体が流入口を塞ぐようにすることができ、止水栓の軸栓方法が鉛直方向とならない場合でも逆流性能を高くすることができる。また、ばねの位置がスピンドルではなくその外側に位置するスピンドルガイドとの間に架け渡されていることにより、スピンドルを回転させた場合に動かないスピンドルガイドにより、こま部材の回転によるばねの回転が阻害されてばねには振動が発生し、ばね固着を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コンパクトでありながら多くの流量を流すことのできる止水栓を提供でき、しかも、漏水や止水不良を起こすことのない信頼性の高い止水栓を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の内容をより理解しやすくする為、以下に図示の実施例に基づいて説明する。
【0011】
図1は本発明の実施例である便器洗浄用フラシュバルブの断面図である。この便器洗浄用フラッシュバルブには止水栓1と洗浄弁2とが内蔵されており、小便器3への洗浄水供給をオンオフするものである。具体的には、この便器洗浄用フラッシュバルブの後部(図面における向かって右側)に給水管接続部が設けられており、この給水管接続部4には水道配管に繋がる給水管(図示せず)が接続され、水道水が止水弁1を介して洗浄弁2へ供給されている。小便器3を洗浄するには、前方(図面における向かって左側)に設けられている手押し釦5を押圧操作することにより、洗浄弁2が開弁して小便器3へ洗浄水が供給される。なお、洗浄弁2はダイヤフラムを用いた自閉弁であり、所定量の洗浄水を供給すると閉弁して洗浄水の供給を停止するように構成されている。
【0012】
図2は図1の便器洗浄フラッシュバルブに内蔵された止水栓1の通水停止状態を示す断面図である。
即ち、図2に示すように、通水経路を形成する黄銅鋳物製の止水栓本体101には流入口101aと流出口101bと、前記止水栓本体101の外面に開口した弁体挿入開口102が設けられている。前記弁体挿入開口102の内周に形成された開口雌ねじ101cにスピンドルガイド105が螺合されている。前記スピンドルガイド105にはスピンドル104が軸線方向に挿通されており、スピンドル104は止め輪110によって固定されている。
【0013】
前記スピンドル104のこま部材挿通部104aにはこま部材103のスピンドル側突起部103bが前記流入口101aに向かう軸線方向に進退可能に挿通されている。
【0014】
また、前記こま部材103は前記流入口101aへ向かって進出時にこの流入口101aを塞ぐ止水弁体103aを備えており、前記止水弁体103aとスピンドルガイド105との間に止水弁体103aを前記流入口101a側へ付勢するばね109が弾装されている。
【0015】
こま部材103がスピンドル104の軸回り方向に一体に回転可能に保持されるように、こま部材103のスピンドル側突起103bとスピンドル104のこま突起挿通孔部104aの形状は図3に示すような多角形断面形状で構成されている。なお、スピンドル側突起103bとこま突起挿通孔部104aとの断面形状としては図3に示す多角形に限定されるものではなく、にスプラインを形成しておき、こま部材103がスピンドル104の軸回り方向に一体に回転可能としてもよいものである。
【0016】
こま部材103にはガイド側突起部103cが形成されており、このガイド側突起部103cはガイド部材107に挿通されている。詳細には、止水栓本体101の開口部雌ねじ101cと同心に形成された上流雌ねじ101dに対して、ガイド部材107のガイド送りねじ部107aが螺合している。そして、ガイド部材107の円板部107cに設けられたこま突起挿通孔部107bに対してガイド側突起部103cが軸方向に進退可能に挿入されている。なお、ガイド部材107の円板部107cには通水孔107eが形成されており、上流側から供給された洗浄水を流入口101aへ通水可能としている。また、円板部107cの周囲には円筒部107dが軸方向に所定長さ形成されており、この円筒部107dの外周面にガイド送りねじ部107aが形成されいる。
【0017】
こま部材103がガイド部材107の軸回り方向に一体に回転可能に保持されるように、こま部材103のガイド側突起部103cとガイド部材107のこま突起挿通孔部107bの断面形状は図4に示すような多角形断面形状で構成されている。なお、ガイド側突起103cとこま突起挿通孔部107bとの断面形状としては、図4に示す多角形に限定されるものではなく、にスプラインを形成しておき、こま部材103がガイド部材107の軸回り方向に一体に回転可能としてもよいものである。
こま部材103とガイド部材107はこま部材103のガイド側突起部103cの先端にガイド側突起部103cよりも大きい径の押さえ部材108が逆ねじ等によって螺合され、係り止めされている。
【0018】
ストレーナ106は円筒形に形成され、止水弁体103aの外周を覆う径を有し、このストレーナ106は、スピンドルガイド105の外周部105bに嵌装し、スピンドルガイド105の外周部105bと止水栓本体101のシート部101eとの間で保持されている。
【0019】
次に止水栓1の動作について詳細を述べる。いま、図5に示すように、止水栓流出口101b下流側にある洗浄弁3が小便器2の洗浄のため、使用者によって開かれて止水栓本体101内に水が導水されると、その圧力によって止水弁体103aがばね109の弾性に抗して押し上げられ、止水弁空間101fを通過してストレーナ106の編み目を抜けて、流出口101b側へ抜けていく。洗浄弁3による通水が終わると止水弁103aはばね109の弾性によってシート部101eへ押しつけられ、図2に示される状態になる。
【0020】
通水の際、水に混入している砂やその他の異物はストレーナ106によって捕捉される。通水の回数が増えるにつれて、ストレーナ106の目が詰まって通水量が減少して来た時点で、スピンドル104を締め込み方向に回転操作すると、こま部材103のスピンドル側突起部103bからガイド側突起103c、さらにガイド部材107の円板部107cへトルクが伝達されて回転し、ガイド部材107が流入側101a方向へ進出する。
【0021】
回転を続けると押さえ部材係り部108aがガイド部材107の円板部107cに引っ張られ、図6に示すように止水弁体103aがシート部101eを押圧し止水する。その後にスピンドルガイド105を回転してストレーナ106を抜き取り、このストレーナ106を洗浄して内部の異物を排除する。その後の取り付けは、前述のように組立し、組立が完了すれば、スピンドル104をねじ戻して復帰させて通水することとなる。
【0022】
再び弁が閉じられ通水が停止した状態で、断水等が発生し、給水側からの負圧が発生した場合は、止水弁体103aはばね109によって付勢されているため、小便器側2から汚水等を吸引し逆流することはない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例である便器洗浄フラッシュバルブの断面図である。
【図2】図1の便器洗浄フラッシュバルブに内蔵された止水栓1の通水停止状態を示す断面図である。
【図3】本実施例のスピンドルの断面である。
【図4】本実施例のガイドの断面である。
【図5】図2の止水栓1の通水状態を表す断面図である。
【図6】図2の止水栓1の閉止状態を表す断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1…止水栓
2…洗浄弁
3…小便器
4…給水管接続部
5…手押し釦
101…止水栓本体、
101a…流入口
101b…流出口
101c…開口雌ねじ
101d…上流雌ねじ
101e…本体シート部
101f…逆止弁空間
102…弁体挿入開口
103…こま部材
103a…止水弁体
103b…スピンドル側突起部
103c…ガイド側突起部
104…スピンドル
104a…こま突起挿通孔部
105…スピンドルガイド
105a…スピンドル係り止め部
105b…スピンドルガイド外周部
106…ストレーナ
107…ガイド部材
107a…送りねじ部
107b…こま突起挿通孔部
107c…円板部
107d…円筒部
107e…通水孔
108…押さえ部材
108a…押さえ部材係り部
109…ばね
110…止め輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の流入口と流出口とが設けられた止水栓本体と、この止水栓本体の外面に開口した弁体挿入開口と、この弁体挿入開口から前記流入口に向かって挿入された前記流入口を塞ぐ止水弁体を備えたこま部材と、このこま部材を前記弁体挿入開口から前記流入口を結ぶ軸線方向に進退可能で、且つ、軸回り方向に一体に回転可能に保持するスピンドルと、このスピンドルを軸線方向に挿通すると共に、前記弁体挿入開口の内周面に設けられた開口雌ねじに螺合固定されるスピンドルガイドと、このスピンドルガイドによって保持され、前記流入路と流出路とを繋ぐ通水路に位置するストレーナと、から構成された止水栓において、
前記止水栓本体の前記流入口よりも上流側には、前記開口雌ねじと同軸状に上流雌ねじが形成されており、また、前記こま部材の前記流入口よりも上流側には、このこま部材と一体に軸回り方向に回転可能で、かつ、前記上流雌ねじと螺合する送りねじ部が外周に形成されたガイド部材が固定されており、前記こま部材が回転して前記ガイド部材が前記流入口から離れる軸線方向に移動する際には、前記止水弁体が前記流入口を閉塞する軸線方向に前記こま部材を移動させると共に、前記ガイド部材が前記流入口に近づく軸線方向に移動する際には、前記こま部材を軸線方向に移動させないことを特徴とする止水栓。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記こま部材を軸回り方向に回転可能に挿通するこま部挿通孔が設けられた円板部と、この円板部の周囲に軸線方向に所定長さ設けられ、外周面に前記送りねじ部が形成された円筒部と、から構成されていることを特徴とする請求項1記載の止水栓。
【請求項3】
前記こま部材を前記流入口へ向けて付勢するばねを備えており、このばねは、前記スピンドルガイドと前記こま部材との間に架け渡されていることを特徴とする請求項1又は2何れか記載の止水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−75749(P2008−75749A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255641(P2006−255641)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】