説明

止水試験治具

【課題】目地部を止水する可撓性止水部材の取り付け状態に影響を及ぼすことなく簡単に設置して試験ができ、試験後の試験用加圧流体の残留もなく、しかもアンカーボルトで直接取り付けるボルトタイプの場合だけでなく、固定アーム部材を介して間接的に取り付けるボルトレスタイプにも適用することができる止水試験治具を提供すること。
【解決手段】可撓性止水部材3の側面に当てられて躯体1とで可撓性止水部材3の止水部に流体室21aを形成するとともに、この流体室21aに試験用加圧流体を供給する流体供給孔21bが形成された治具本体21と、治具本体21を可撓性止水部材3の側面に密着させる側面密着機構22と、治具本体21を躯体1に密着させて流体室21aを密封する底部密着機構26とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、止水試験治具に関し、貯水池や水路などのコンクリート構造体の目地部を止水する可撓性止水部材の止水性を確認できるようにしたもので、特に可撓性止水部材の取付部分に影響を及ぼすことなく試験できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
生活用水や工業用水等を貯水する貯水池や浄水池、あるいは上下水道の水路等を構成する大型のコンクリート構造体では、コンクリートの亀裂を避けることが難しくコンクリートのさらなる亀裂を防止するため、目地部を設けることが一般的に行われている。
【0003】
コンクリート構造体の目地構造に関しては各種の提案がなされているが、一般的に、逸水を阻止するために目地部の幅方向にたるみを形成した目地部止水部材を構造体に設けている。
【0004】
従来の目地構造およびその逸水対策は、例えば図11に示すように、コンクリート構造体1の目地部2に対して、ゴム製などの可撓性の目地部止水部材3の中央にある溝状のたるみ部分3aで目地部2を塞ぎ、両側の平板もしくは躯体に接合する2列の平行な突起を配置した係止部3bを躯体に植設した定着具としてのアンカーボルト4aとナット4bとで躯体であるコンクリート構造体1に固定している。
【0005】
そして、ナット4bを締め付けることによって目地部止水部材3の各突起などの係止部3bを押しつぶした状態で躯体であるコンクリート構造体1の表面に圧着して目地部2からの逸水を防止している。
【0006】
このような目地構造では、ナット4bの締め付け力が均等でない場合や突起などの係止部3bが押しつぶされるときに変転する場合などに、十分な止水性能が発揮されなくなることから、施工中や施工後などに止水状態を確認する試験を行うことがある。
【0007】
このような止水性の確認試験には、例えば特許文献1に開示されている試験装置が用いられる。
【0008】
この試験装置10は、図12に示すように、外管11及び中管12を備えて構成され、外管11は上端が閉塞された円筒形で、その上端には、中心部に孔13aが形成され、外周部にネジ13bが形成されて漏洩確認試料供給部からの試料を供給する接続パイプ14を結合する結合部13とされるとともに、下端には、パッキング15用の溝11aを備えたフランジ11bが形成してある。
【0009】
また、中管12は、外管11と類似の形状で、外管11の内部に配置されて四方からの結合部材16で支持されており、その内周に試験装置10をアンカーボルト4aに取り付ける雌ネジ12aが形成してある。
【0010】
このような試験装置10は、外管11の内部に配置されている中管12を、押圧板17を介してアンカーボルト4aと螺合させて装着するとともに、外管11の下端のフランジ11bに装備されたOリング等のパッキン15で外管11内に水等の供給を受けた際に外管11から漏洩しないようにする。
【0011】
そして、外管11の結合部13に、図示しない試料供給部に接続するパイプ14から漏洩確認試料である水等を供給する。
【0012】
これにより、目地部止水部材3の両突起列間の空間Aが、目地部止水部材3のボルト孔,押圧板17のボルト孔を介して試験装置10の外管11内と連通することから目地部止水部材3の止水性に問題があると、供給された水が目地部止水部材3の縁から漏れてくることになり、止水性の欠陥部所が簡単に確認できる。
【特許文献1】特開2000−73581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、このような試験装置10では、外管11内に結合部材16を介して取り付けた中管12をねじ込むことで外管11のフランジ部11bを押し付けてOリング15で密封する必要があるが、試験装置10を取り付けることで、押圧板17を介して目地止水部材3に加わる締付け力が増大し、本来のアンカーボルト4aとナット4bによる締付け力と異なる状態の止水試験になってしまうという問題がある。
【0014】
また、外管11内に供給される試験用の水などを目地部止水部材3による止水空間Aに供給する流路がボルト4aとナット4bのネジの隙間を利用して行うため、試験後に止水空間A内に供給した試験用の水などが抜けずに残ってしまうという問題もある。
【0015】
さらに、目地止水部材の取り付けをアンカーボルトで直接取り付けることなく固定アーム部材を介して取り付けるボルトレスタイプの取り付け方法も提案されているが、このボルトレスタイプの場合には、この試験装置10を固定することができず、止水試験を行うことができないという問題もある。
【0016】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、目地部を止水する可撓性止水部材の取り付け状態に影響を及ぼすことなく簡単に設置して試験ができ、試験後の試験用加圧流体の残留もなく、しかもアンカーボルトで直接取り付けるボルトタイプの場合だけでなく、固定アーム部材を介して間接的に取り付けるボルトレスタイプにも適用することができる止水試験治具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
かかる従来技術の課題を解決するこの発明の請求項1記載の止水試験治具は、躯体に取り付けた可撓性止水部材の止水性を確認する止水試験治具であって、前記可撓性止水部材の側面に当てられて前記躯体とで前記可撓性止水部材の止水部に流体室を形成するとともに、この流体室に試験用加圧流体を供給する流体供給孔が形成された治具本体と、前記可撓性止水部材を前記躯体に締め付ける固定締付け部材に取り付けられ前記治具本体を前記可撓性止水部材の側面に密着させる側面密着機構と、前記固定締付け部材に取り付けられ前記治具本体を前記躯体に密着させて前記流体室を密封する底部密着機構と、を備えてなることを特徴とするものである。
【0018】
この止水試験治具によれば、躯体に取り付けた可撓性止水部材の止水性を確認する止水試験治具で、前記可撓性止水部材の側面に当てられて前記躯体とで前記可撓性止水部材の止水部に流体室を形成するとともに、この流体室に試験用加圧流体を供給する流体供給孔が形成された治具本体と、前記可撓性止水部材を前記躯体に締め付ける固定締付け部材に取り付けられ前記治具本体を前記可撓性止水部材の側面に密着させる側面密着機構と、前記固定締付け部材に取り付けられ前記治具本体を前記躯体に密着させて前記流体室を密封する底部密着機構と、を備えており、治具本体を可撓性止水部材の側面および躯体表面に当てて流体室を形成するようにし、治具本体の取り付けを側面密着機構と底部密着機構とに分けて行うことで、固定締付け部材を介して取り付けても止水性に影響を与えることなく取り付けることができ、治具本体を取り外すことで流体室を開放でき、試験用流体の残留を防止できるようになる。
【0019】
また、この発明の請求項2記載の止水試験治具は、請求項1記載の構成に加え、前記側面密着機構を、前記固定締付け部材を挟んで取り付ける挟持部材と、この挟持部材に取り付けられて前記治具本体を密着させる側面引き寄せ部材とで構成してなることを特徴とするものである。
【0020】
この止水試験治具によれば、前記側面密着機構を、前記固定締付け部材を挟んで取り付ける挟持部材と、この挟持部材に取り付けられて前記治具本体を密着させる側面引き寄せ部材とで構成してあり、挟持部材を固定締付け部材に挟んで取り付け、この挟持部材に取り付けた側面引き寄せ部材で治具本体を引き寄せるようにして可撓性止水部材に密着することができ、可撓性止水部材の本来の取り付けに影響を及ぼすことなく密着状態にすることができるようになる。
【0021】
さらに、この発明の請求項3記載の止水試験治具は、請求項1記載の構成に加え、前記底部密着機構を、前記固定締付け部材のアンカーボルトにねじ止めされる固定部材と、この固定部材に取り付けられて前記治具本体を密着させる押圧部材とで構成してなることを特徴とするものである。
【0022】
この止水試験治具によれば、前記底部密着機構を、前記固定締付け部材のアンカーボルトにねじ止めされる固定部材と、この固定部材に取り付けられて前記治具本体を密着させる押圧部材とで構成してあり、アンカーボルトに固定部材をねじ止めし、この固定部材に押圧部材を取り付けて治具本体を躯体表面に密着するようにすることで、流体室を密封でき、しかも可撓性止水部材の本来の取り付けに影響を及ぼすことなく密着状態にすることができるようになる。
【0023】
また、この発明の請求項4記載の止水試験治具は、請求項1記載の構成に加え、前記側面密着機構と前記底部密着機構を、前記固定締付け部材のアンカーボルトにねじ止めされる固定部材を設け、この固定部材に前記治具本体を密着させる側面押圧部材と前記治具本体を前記躯体に密着させる押圧部材を設けて構成してなることを特徴とするものである。
【0024】
この止水試験治具によれば、前記側面密着機構と前記底部密着機構を、前記固定締付け部材のアンカーボルトにねじ止めされる固定部材を設け、この固定部材に前記治具本体を密着させる側面押圧部材と前記治具本体を前記躯体に密着させる押圧部材を設けて構成してあり、アンカーボルトに1つの固定部材をねじ止めすることで、治具本体を側面押圧部材および押圧部材で密着させることができ、一層構造を簡素化して簡単に試験できるようにしている。
【0025】
さらに、この発明の請求項5記載の止水試験治具は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記可撓性止水部材の躯体への締め付け固定が、アンカーボルトにより直接固定されるボルトタイプ、あるいはアンカーボルトに固定される固定アーム部材を介して固定するボルトレスタイプのいずれかであることを特徴とするものである。
【0026】
この止水試験治具によれば、前記可撓性止水部材の躯体への締め付け固定が、アンカーボルトにより直接固定されるボルトタイプ、あるいはアンカーボルトに固定される固定アーム部材を介して固定するボルトレスタイプのいずれかとしており、アンカーボルトに直接治具本体を取り付けるようにしていないので、ボルトタイプやボルトレスタイプのいずれの場合でも、治具本体を取り付けて止水試験ができ、しかも可撓性止水部材の本来の取り付けに影響を及ぼすことなく試験ができるようになる。
【発明の効果】
【0027】
この発明の請求項1記載の止水試験治具によれば、躯体に取り付けた可撓性止水部材の止水性を確認する止水試験治具で、前記可撓性止水部材の側面に当てられて前記躯体とで前記可撓性止水部材の止水部に流体室を形成するとともに、この流体室に試験用加圧流体を供給する流体供給孔が形成された治具本体と、前記可撓性止水部材を前記躯体に締め付ける固定締付け部材に取り付けられ前記治具本体を前記可撓性止水部材の側面に密着させる側面密着機構と、前記固定締付け部材に取り付けられ前記治具本体を前記躯体に密着させて前記流体室を密封する底部密着機構と、を備えて構成したので、治具本体を可撓性止水部材の側面および躯体表面に当てて流体室を形成することができ、治具本体の取り付けを側面密着機構と底部密着機構とに分けて行うことで、固定締付け部材を介して取り付けても止水性に影響を与えることなく取り付けることができるとともに、治具本体を取り外すことで流体室を開放でき、試験用流体の残留を防止することができる。
【0028】
また、この発明の請求項2記載の止水試験治具によれば、前記側面密着機構を、前記固定締付け部材を挟んで取り付ける挟持部材と、この挟持部材に取り付けられて前記治具本体を密着させる側面引き寄せ部材とで構成したので、挟持部材を固定締付け部材に挟んで取り付け、この挟持部材に取り付けた側面引き寄せ部材で治具本体を引き寄せるようにして可撓性止水部材に密着することができ、可撓性止水部材の本来の取り付けに影響を及ぼすことなく密着状態にすることができる。
【0029】
さらに、この発明の請求項3記載の止水試験治具によれば、前記底部密着機構を、前記固定締付け部材のアンカーボルトにねじ止めされる固定部材と、この固定部材に取り付けられて前記治具本体を密着させる押圧部材とで構成したので、アンカーボルトに固定部材をねじ止めし、この固定部材に押圧部材を取り付けて治具本体を躯体表面に密着することで、流体室を密封することができ、しかも可撓性止水部材の本来の取り付けに影響を及ぼすことなく密着状態にすることができる。
【0030】
また、この発明の請求項4記載の止水試験治具によれば、前記側面密着機構と前記底部密着機構を、前記固定締付け部材のアンカーボルトにねじ止めされる固定部材を設け、この固定部材に前記治具本体を密着させる側面押圧部材と前記治具本体を前記躯体に密着させる押圧部材を設けて構成したので、アンカーボルトに1つの固定部材をねじ止めすることで、治具本体を側面押圧部材および押圧部材で密着させることができ、一層構造を簡素化して簡単に試験することができる。
【0031】
さらに、この発明の請求項5記載の止水試験治具によれば、前記可撓性止水部材の躯体への締め付け固定が、アンカーボルトにより直接固定されるボルトタイプ、あるいはアンカーボルトに固定される固定アーム部材を介して固定するボルトレスタイプのいずれかとしたので、アンカーボルトに直接治具本体を取り付ける必要がなく、ボルトタイプやボルトレスタイプのいずれの場合でも、治具本体を密着させて流体室を形成して止水試験を行うことができ、しかも可撓性止水部材の本来の取り付けに影響を及ぼすことなく試験することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図4は、この発明の止水試験治具をボルトタイプで設置した可撓性止水部材に適用した場合の一実施の形態にかかり、図1は試験状態の概略斜視図、図2は分解して示す概略斜視図、図3は正面図および平面図、図4は、図3中のA−A断面図およびB−B断面図である。
【0033】
この止水試験治具20が設置されて止水試験が行われるボルトタイプで固定される可撓性止水部材は、すでに図8で説明したものと同様に、コンクリート構造体1のU字状の溝を備えた目地部2に対して、ゴム製などの可撓性を有する材料で形成された可撓性止水部材3の中央のたるみ部分3aが目地部2の溝内に配置されてまたがるようにするとともに、両側の平板もしくはコンクリート構造体1である躯体に接合する2列の平行な突起が形成された係止部3bを備えて構成され、躯体であるコンクリート構造体1に植設した固定締め付け部材としてのアンカーボルト4aおよびナット4bと押圧板17とを介して躯体であるコンクリート構造体1に密着させた状態で設置されており、可撓性止水部材3によって目地部2からの逸水を防止する。
【0034】
このような可撓性止水部材3の止水状態を試験する止水試験治具20は、治具本体21を備えており、可撓性止水部材3の側面に当てられるとともに、躯体であるコンクリート構造物1の表面に当てられて密閉される流体室21aを形成できるようにしてあり、この流体室21aに連通して試験用加圧流体を供給する流体供給孔21bおよび流体排出孔21cが形成してある。
【0035】
この治具本体21は、厚い板状で検査すべき範囲に対応した長さとされ、可撓性止水部材3の側面に対向する治具本体21の側面およびコンクリート構造物1の表面と対向する下面との隅部分が開口してその内側が中空状の流体室21aとされ、この流体室21aに連通する試験流体用の流体供給孔21bおよび流体排出孔21cが治具本体21の上面から形成してある。
【0036】
また、この治具本体21には、図3(b)および図4(a)に示すように、可撓性止水部材3の側面と対向する両端部側面の上部にそれぞれ突出部21eが一体に形成してあり、治具本体21の側面と突出部21eの下面とで可撓性止水部材3の上隅縁を押えるように当てられる。
【0037】
この治具本体21を可撓性止水部材3の側面およびコンクリート構造物1の表面に密着状態で取り付けるため、側面密着機構22と底部密着機構26とが備えられ、可撓性止水部材3を躯体であるコンクリート構造物1に固定し、締め付ける固定締付け部材であるアンカーボルト4aおよびナット4bと押圧板17を利用して取り付けるが、その際、可撓性止水部材3の締付け状態に影響が及ばないようにしてある。
【0038】
このため、治具本体21を可撓性止水部材3の側面に密着させる側面密着機構22は、アンカーボルト4aおよびナット4bを介して固定される押圧板17を挟んで取り付けられる挟持部材を構成する内側挟持部材23と外側挟持部材24とを備えており、押圧板17の目地中心側の内側挟持部材23が内側側面に係止される下方への突出部23aと上面に当てられる当て板部23bとこの当て板部23bの外側で上方に突き出す立設部23cとが一体に形成され、立設部23cに直角に締付けボルト23dが取り付けて構成される。また、この内側挟持部材23と対を成す外側挟持部材24は、押圧板17の目地外側に当てられる当て板部24aと締付けボルト23dが相通される取り付け孔24bが形成された締付け部24cとが傾斜部24dを介して一体に形成されて構成されている。
【0039】
したがって、図4(b)に示すように、内側挟持部材23と外側挟持部材24とを押圧板17を挟むようにして締付けボルト23dにナット23eで締め付けることで、締付けボルト23dを水平に突き出した状態で設置することができる。
【0040】
一方、治具本体21には、上面にキー溝21dが長手方向に沿って形成され、このキー溝21dに嵌合される矩形の板状のキー25に締付けボルト23dを挿通するための少なくとも2つ(図示例では2つ)の貫通孔25aが形成してある。
【0041】
これにより、アンカーボルト4aおよびナット4bで固定された押圧板17を挟むようにして固定された内側挟持部材23の締付けボルト23dに治具本体21のキー溝21dに嵌合したキー25の貫通孔25aを挿入してナット25bで締め付けることで、治具本体21を可撓性止水部材3の側面に引き寄せるようにして密着させることができる。
【0042】
この側面密着機構22によれば、可撓性止水部材3を躯体であるコンクリート構造物1に固定し、締め付ける固定締付け部材であるアンカーボルト4aおよびナット4bと押圧板17を利用して取り付けるが、その際、可撓性止水部材3の躯体1への締付け方向には力が加わらず、締付け状態に何ら影響が及ぶことがない。
【0043】
次に、この治具本体21を躯体であるコンクリート構造物1の表面に密着させる底部密着機構26は、可撓性止水部材3を躯体であるコンクリート構造物1に固定し、締め付ける固定締付け部材であるアンカーボルト4aおよびナット4bと押圧板17のうちアンカーボルト4aを利用して取り付けるが、その際、可撓性止水部材3の締付け状態に影響が及ばないようにしてある。
【0044】
このため、底部密着機構26では、アンカーボルト4aにねじ止めされる固定部材27を備え、上下水平部27a,27bが垂直部27cで連結されて上下水平部がそれぞれ逆方向に突き出すようになっており、上水平部27aに固定用ボルト27d用の挿入孔27eが、下水平部27bに押圧部材を構成する押圧ボルト28用のねじ孔27fがそれぞれ形成してある。また、固定部材27を固定用ボルト27dでアンカーボルト4aを利用して固定するため、長ナット27gが用意され、アンカーボルト4aにねじ込まれたナット4bに替えてアンカーボルト4aにねじ込まれたり、ナット4bの上に長ナット27gをねじ込むことで、アンカーボルト4a上に長ナット27gが位置し、固定用ボルト27dをねじ込むことができるようにしてある。
【0045】
この長ナット27gをナット4bに替えてねじ込む場合には、可撓性止水部材3を締め付けるための所定のトルクで締め付けることで、止水部への影響を回避することができ、アンカーボルト4aの上端突き出し長さが十分ある場合には、ナット4b上に長ナット27gをねじ込むことで、止水部にさらなる締付け力を付加することを防止することができる。
【0046】
したがって、この底部密着機構26では、アンカーボルト4aに長ナット27gをナット4b上、あるいはナット4bに替えてねじ込んだ後、固定部材27の上水平部27aを載せて固定用ボルト27dで締め付け、下水平部27bが可撓性止水部材3の側面に密着状態とされた治具本体21の上面上に位置するようにする。そして、下水平部27bのねじ孔27fに押圧ボルト28をねじ込んで治具本体21をコンクリート構造物1の表面に押し付けて密着させる。
【0047】
これにより、治具本体21の流体室21aの開口を可撓性止水部材3と躯体1とで塞ぐことができるとともに、可撓性止水部材3の係止部3bとコンクリート構造物1の表面との間に流体室21aを連通させることができる。
【0048】
この状態で、治具本体21の流体供給孔21bから試験用加圧流体として加圧水を流体室21aに供給し、流体排出孔21cに切換弁を介して圧力計を接続するなどで、加圧状態が保持されること確認することで、止水状態の試験を行うことができる。
【0049】
なお、止水性に問題がある場合には、試験用加圧流体の圧力が保持できず、可撓性止水部材3の止水部からの試験用加圧流体の漏れが生じることになる。
【0050】
そして、試験終了後、治具本体21を取り外すことで、流体室21aが開放され、試験用加圧流体が残存することもない。
【0051】
このような止水試験治具20によれば、可撓性止水部材3の止水状態になんら影響を与えることなく、簡単に設置して止水試験を行うことができる。
【0052】
また、この止水試験治具20によれば、可撓性止水部材3の係止部3bに目地方向と平行な突起だけでなく、一定間隔に直交する突起を設けて区画した状態で取り付けられる場合には、アンカーボルトに装着する従来の試験装置では、区画された内部しか試験することができず、直交する突起の外側部分の試験ができない構造であったが、このような試験不能部分がなく、全ての部分の試験を行うことができる。
【0053】
次に、この発明の他の一実施の形態について、図5および図6により説明する。
図5および図6は、この発明の止水試験治具をボルトタイプで設置した可撓性止水部材に適用した場合の他の一実施の形態にかかり、図5は正面図および平面図、図6は、図5中のA−A断面図およびB−B断面図である。
【0054】
この止水試験治具20Aが設置されて止水試験が行われるボルトタイプで固定される可撓性止水部材は、すでに図1〜図4で説明したものと同一であり、止水試験治具20と同一部分については、同一記号を記し、重複する説明は省略する。
【0055】
この止水試験治具20Aでは、治具本体21は止水試験治具20と同一のものが使用され、側面密着機構22Aでは、押え板17を両側から平板状の内側挟持部材23Aと平板状の外側挟持部材24Aとで挟むようにして内側挟持部材23Aを貫通させた締付ボルト23dを設置し、キーに替えて治具本体21の外側に当てた側面押え板25Aの貫通孔25aを挿通してナット25bで締め付けることで、可撓性止水部材3の側面に治具本体21を密着させる。
【0056】
これにより、止水試験治具20に比べ、側面密着機構22Aの構成部品23A,24A,25Aなどを単純な形状として製作を容易としている。
【0057】
また、治具本体21をコンクリート構造体1の表面に密着させる底部密着機構26Aは、アンカーボルト4aにねじ止めされる平板状の固定部材27Aを備え、固定用ボルト27d用の挿入孔27eと、押圧部材を構成する押圧ボルト28用のねじ孔27fがそれぞれ形成してある。なお、固定部材27Aを固定用ボルト27dでアンカーボルト4aを利用して固定するための構造は、すでに説明した止水試験装置20と同一である。
【0058】
これにより、止水試験治具20に比べ、底面密着機構26Aの構成部品27Aを単純な形状として製作を容易としている。
【0059】
したがって、この底部密着機構26Aでは、アンカーボルト4aに長ナット27gをナット4b上、あるいはナット4bに替えてねじ込んだ後、固定部材27Aを載せて固定用ボルト27dで締め付け、可撓性止水部材3の側面に密着状態とされた治具本体21の上面上にねじ孔27fにねじ込んだ押圧ボルト28を位置させて治具本体21をコンクリート構造物1の表面に押し付けて密着させる。
【0060】
なお、止水試験治具20Aの他の構成は、すでに説明した止水試験治具20と同一であり、止水試験治具20と同様にして流体室21aに止水試験用加圧流体を供給し、その圧力が維持されることを圧力計等で確認することで止水試験を行なうことができる。
【0061】
したがって、この止水試験治具20Aによれば、一層簡単に製造することができるとともに、簡単に設置して止水試験を行うことができる。
【0062】
次に、この発明のさらに他の一実施の形態について、図7により説明する。
図7は、この発明の止水試験治具をボルトタイプで設置した可撓性止水部材に適用した場合のさらに他の一実施の形態にかかる正面図、平面図および側面図である。
【0063】
この止水試験治具20Bが設置されて止水試験が行われるボルトタイプで固定される可撓性止水部材は、すでに図1〜図4および図5,6で説明したものと同一であり、止水試験治具20,20Aと同一部分については、同一記号を記し、重複する説明は省略する。
【0064】
この止水試験治具20Bでは、治具本体21は止水試験治具20と同一のものが使用され、側面密着機構22Bおよび底面密着機構26Bでは、アンカーボルト4aにねじ止めされる1つの固定部材27Bを兼用して使用するようにしてある。
【0065】
この固定部材27Bは、上下水平部27a,27bが垂直部27cで連結されて上下水平部がそれぞれ逆方向に突き出すとともに、下水平部27bの先端に治具本体21の側面と対向する対向垂直部27c′が一体に形成されて構成されている。上水平部27aに固定用ボルト27d用の挿入孔27eが、下水平部27bに押圧部材を構成する押圧ボルト28用のねじ孔27fがそれぞれ形成してあり、対向垂直部27c′には、側面押圧部材を構成する締付ボルト23d用のねじ孔25cが形成してある。
【0066】
この固定部材27Bを固定用ボルト27dでアンカーボルト4aを利用して固定するため、長ナット27gを用意して行う構成は、すでに説明した固定部材27,27Aの場合と同一である。
【0067】
このような固定部材27Bを備えた止水試験治具20Bでは、アンカーボルト4aにねじ込まれたナット4bに替えて長ナット27gをアンカーボルト4aにねじ込んだり、ナット4bの上に長ナット27gをねじ込むことで、アンカーボルト4a上に長ナット27gを位置させ、固定部材27Bを載せて固定用ボルト27dをねじ込んで固定する。この後、対向垂直部27c′のねじ孔25cにねじ込んだ側面押圧部材を構成する締付ボルト23dで治具本体21を可撓性止水部材3の側面に密着させ、さらに、この可撓性止水部材3の側面に密着状態とされた治具本体21の上面上の固定部材27Bのねじ孔27fにねじ込んだ押圧部材を構成する押圧ボルト28で治具本体21をコンクリート構造物1の表面に押し付けて密着させる。
【0068】
なお、止水試験治具20Bの他の構成は、すでに説明した止水試験治具20,20Aと同一であり、止水試験治具20と同様にして流体室21aに止水試験用加圧流体を供給し、その圧力が維持されることを圧力計等で確認することで止水試験を行なうことができる。
【0069】
したがって、この止水試験治具20Bによれば、一層簡単に製造することができるとともに、一層簡単に設置して止水試験を行うことができる。
【0070】
次に、この発明の他の一実施の形態について、図8〜図10により説明する。
この止水試験治具20Cは、可撓性止水部材3Aを躯体であるコンクリート構造物1に設置する場合の取り付けをアンカーボルト4aで直接取り付けることなく、固定アーム部材19を介して取り付ける、いわゆるボルトレスタイプの場合に適用するものである。なお、すでに説明したボルトタイプの止水試験治具20と同一部分については、同一記号を記し、重複する説明は省略する。
【0071】
この止水試験治具20Cが設置されるボルトレスタイプの止水構造は、図8に示すように、躯体としてのコンクリート構造物1,1間の目地部2に跨って可撓性止水部材3Aが配置され、この可撓性止水部材3Aは長尺帯状の幅方向中間部に略Ω字状に折り畳んだ折り畳み部3Aaを備えるとともに、幅方向両端部に平板状の碇着部3Abが設けられてゴムや合成樹脂などの弾性部材で構成される。そして、この可撓性止水部材3Aの碇着部3Abに押え部材18を当て、アンカーボルト4aに基端部19aがコンクリート構造物1上とされ中間部19bが支持固定される固定アーム部材19の先端部19cで押え部材18を押えるようにすることで、アンカーボルト4aの位置に、鉄筋などとの干渉防止のためのズレなどが生じても簡単に対応して所定位置の押え部材18を押えて可撓性止水部材3Aを取り付けるようにする。
【0072】
これにより、アンカーボルト4aの取り付け位置が決まる前でも可撓性止水部材3A、押え部材18、固定アーム部材19を製作でき、施工も容易で、短期間に施工できる。
【0073】
このような可撓性止水部材3Aを、アンカーボルト4aで直接コンクリート構造物1、1に固定することなく、固定アーム部材19を用いて支持固定するボルトレスタイプに適用する止水試験治具20Cでは、治具本体21は止水試験治具20と同一のものが使用されるとともに、側面密着機構22も同一のものが使用され、押え部材18に内側挟持部材23と外側挟持部材24とで挟むようにして締付ボルト23dを設置し、治具本体21のキー溝21dに嵌合されたキー25の貫通孔25aを挿通してナット25bで締め付けることで、可撓性止水部材3aの側面に治具本体21を密着させる。
【0074】
治具本体21をコンクリート構造体1の表面に密着させる底部密着機構29は、アンカーボルト4aの位置が異なることから、例えば図8〜図10に示すように、平板状の固定部材29aを備え、少なくとも2箇所のアンカーボルト4aに対応する固定用ボルト29bの挿入孔29cおよび少なくとも2つの押圧ボルト28用のねじ孔29dが形成してあり、アンカーボルト4aに固定部材29aを固定した状態で、ねじ孔29dが治具本体21の表面と対向するように固定部材29aの大きさおよびねじ孔29dの配置が定められている。そして、アンカーボルト4aに固定するための長ナット29eが用いられ、アンカーボルト4aに長ナット29eをナット4b上、あるいはナット4bに替えてねじ込んだ後、固定部材29aを載せて固定用ボルト29bで締め付けル用にしてある。
【0075】
なお、止水試験治具20Cの他の構成は、すでに説明した止水試験治具20と同一であり、止水試験治具20と同様にして流体室21aに止水試験用加圧流体を供給し、その圧力が維持されることを圧力計等で確認することで止水試験を行なうことができる。
【0076】
したがって、この止水試験治具20Cによれば、アンカーボルト4aを介して試験用加圧流体を供給することができない場合でも、簡単に設置して止水試験を行うことができる。
【0077】
なお、流体排出孔21cに、圧力検知手段として圧力センサを設けるとともに、タイマーにより一定時間経過後の圧力の変化を比較して表示するようにしたり、変化が設定値を越えた場合に警報を発するようにすれば、止水状態の良否を自動的に検知して表示・警報することができ、一層止水試験を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】この発明の止水試験治具をボルトタイプで設置した可撓性止水部材に適用した場合の一実施の形態にかかる試験状態の概略斜視図である。
【図2】この発明の止水試験治具をボルトタイプで設置した可撓性止水部材に適用した場合の一実施の形態にかかる分解して示す概略斜視図である。
【図3】この発明の止水試験治具をボルトタイプで設置した可撓性止水部材に適用した場合の一実施の形態にかかる正面図および平面図である。
【図4】この発明の止水試験治具をボルトタイプで設置した可撓性止水部材に適用した場合の一実施の形態にかかる底部密着機構部分での断面図および側面密着機構部分での断面図である。
【図5】この発明の止水試験治具をボルトタイプで設置した可撓性止水部材に適用した場合の他の一実施の形態にかかる正面図および平面図である。
【図6】この発明の止水試験治具をボルトタイプで設置した可撓性止水部材に適用した場合の他の一実施の形態にかかる図5中のA−A断面図およびB−B断面図である。
【図7】この発明の止水試験治具をボルトタイプで設置した可撓性止水部材に適用した場合のさらに他の一実施の形態にかかる正面図、平面図および側面図である。
【図8】この発明の止水試験治具をボルトレスタイプで設置した可撓性止水部材に適用した場合の一実施の形態にかかる試験状態の概略斜視図である。
【図9】この発明の止水試験治具をボルトレスタイプで設置した可撓性止水部材に適用した場合の一実施の形態にかかる分解して示す概略斜視図である。
【図10】この発明の止水試験治具をボルトレスタイプで設置した可撓性止水部材に適用した場合の一実施の形態にかかる底部密着機構部分での断面図および側面密着機構部分での断面図である。
【図11】この発明の止水試験治具が適用されるボルトタイプの可撓性止水部材の概略遮視図である。
【図12】従来の止水試験装置による試験状態の縦断面図である。
【符号の説明】
【0079】
20 止水試験治具
20A 止水試験治具
20B 止水試験治具
20C 止水試験治具
21 治具本体
21a 流体室
21b 流体供給孔
21c 流体排出孔
21d キー溝
21e 突出部
22 側面密着機構
22A 側面密着機構
22B 側面密着機構
23 内側挟持部材
23A 内側挟持部材
23a 突出部
23b 当て板部
23c 立設部
23d 締付けボルト
23e ナット
24 外側挟持部材
24A 外側挟持部材
24a 当て板部
24b 取り付け孔
24c 締付け部
24d 傾斜部
25 キー
25a 貫通孔
25b ナット
25c ねじ孔
26 底部密着機構
26A 底部密着機構
26B 底部密着機構
27 固定部材
27A 固定部材
27B 固定部材
27a 上水平部
27b 下水平部
27c 垂直部
27c′ 対向垂直部
27d 固定用ボルト
27e 挿入孔
27f ねじ孔
27g 長ナット
28 押圧ボルト
29 底部密着機構
29a 固定部材
29b 固定用ボルト
29c 挿入孔
29d ねじ孔
29e 長ナット
1 コンクリート構造体(躯体)
2 目地部
3 可撓性止水部材
3a たるみ部
3b 突起(係止部)
4a アンカーボルト
4b ナット
3A 可撓性止水部材
3Aa 折り畳み部
3Ab 碇着部
17 押圧板
18 押え部材
19 固定アーム部材
19a 基端部
19b 中間部
19c 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体に取り付けた可撓性止水部材の止水性を確認する止水試験治具であって、
前記可撓性止水部材の側面に当てられて前記躯体とで前記可撓性止水部材の止水部に流体室を形成するとともに、この流体室に試験用加圧流体を供給する流体供給孔が形成された治具本体と、
前記可撓性止水部材を前記躯体に締め付ける固定締付け部材に取り付けられ前記治具本体を前記可撓性止水部材の側面に密着させる側面密着機構と、
前記固定締付け部材に取り付けられ前記治具本体を前記躯体に密着させて前記流体室を密封する底部密着機構と、を備えてなることを特徴とする止水試験治具。
【請求項2】
前記側面密着機構を、前記固定締付け部材を挟んで取り付ける挟持部材と、この挟持部材に取り付けられて前記治具本体を密着させる側面引き寄せ部材とで構成してなることを特徴とする請求項1記載の止水試験治具。
【請求項3】
前記底部密着機構を、前記固定締付け部材のアンカーボルトにねじ止めされる固定部材と、この固定部材に取り付けられて前記治具本体を密着させる押圧部材とで構成してなることを特徴とする請求項1記載の止水試験治具。
【請求項4】
前記側面密着機構と前記底部密着機構を、前記固定締付け部材のアンカーボルトにねじ止めされる固定部材を設け、この固定部材に前記治具本体を密着させる側面押圧部材と前記治具本体を前記躯体に密着させる押圧部材を設けて構成してなることを特徴とする請求項1記載の止水試験治具。
【請求項5】
前記可撓性止水部材の躯体への締め付け固定が、アンカーボルトにより直接固定されるボルトタイプ、あるいはアンカーボルトに固定される固定アーム部材を介して固定するボルトレスタイプのいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の止水試験治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−68905(P2009−68905A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235527(P2007−235527)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000196624)西武ポリマ化成株式会社 (60)
【Fターム(参考)】