説明

正帯電性液体現像剤、および画像形成装置

【課題】 本発明は、植物油等の不揮発性キャリア液とする正帯電性液体現像剤にあって、保存性と定着性の両立を可能とする正帯電性液体現像剤および画像形成装置の提供を課題とする。
【解決手段】 本発明の正帯電性液体現像剤は、少なくともオレイン酸、酸性高分子系分散剤及び亜リン酸有機エステル系酸化防止剤を含有した不揮発性キャリア中に少なくとも塩基性高分子系分散剤とバインダー樹脂により被覆処理した塩基性処理顔料を分散させたものであり、また、画像形成装置は、前記液体現像剤における不揮発性キャリアに対する接触角が60°〜90°の撥油性表面を有すると共に静電潜像を有する潜像坦持体の表面に液体現像剤を供給し、静電潜像を現像した後、形成された液体トナー像を被転写媒体に転写し、熱的に定着するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録、静電印刷等に使用される正帯電性液体現像剤および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体現像剤を用いた電子写真方式は、粉体トナーを用いた電子写真方式では実現できない利点として、サブミクロンサイズでの微細なトナーを用いることができ、高精細な画質を実現できること、少量のトナーで充分な画像濃度が得られること等が挙げられる。
【0003】
このような液体現像剤としては、古くからアイソパー等の揮発性キャリアからなる液体現像剤が知られ、記録媒体上に転写または記録される際に、揮発性キャリア液が揮発ないし蒸発させられる必要があったが、揮発性キャリアの排出は環境汚染を引き起こすため、揮発性キャリアの回収手段が定着装置近傍に設けられる必要があるが、回収手段は画像形成装置を大型化させるという問題が生じる。
【0004】
そこで、揮発性キャリア液に代えて、植物油等の不揮発性キャリア液とし、環境にやさしい液体現像剤とすることが知られ(特許文献1、2)、荷電制御剤(CCA)を含有させて正帯電用液体現像剤とすることが知られているが、使用するCCAの量が多くなると分散液の保存性が不安定となり、特に、液体状金属石鹸をCCAとして使用すると、長期保存において粘度が上昇し、液体現像剤としての機能を果たすことが困難となるという問題がある。また、保存性の改良の観点からは、通常、植物油の酸化重合を防止の観点から酸化防止剤を含有させることも考えられるが、紙への液体現像剤の定着に際しては植物油の酸化重合を利用して定着が行われることからすると、酸化防止剤を含有させることにより紙への定着が阻害されることが想定され、また、植物油が紙に対する離型作用を示すことにより定着性を悪化させることが想定され、液体現像剤の保存性と液体現像剤を使用して画像形成するに際しての定着性は相反する要請である。
【特許文献1】特開2000−19787号公報
【特許文献2】特開2005−10528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、植物油等の不揮発性キャリア液とする正帯電性液体現像剤にあって、保存性と定着性の両立を可能とする正帯電性液体現像剤および画像形成装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の正帯電性液体現像剤は、少なくともオレイン酸、酸性高分子系分散剤及び亜リン酸有機エステル系酸化防止剤を含有した不揮発性キャリア中に、少なくとも塩基性高分子系分散剤とバインダー樹脂により被覆処理した塩基性処理顔料を分散させたことを特徴とする。
【0007】
不揮発性キャリアが、植物油、シリコンオイル、流動パラフィンから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする。
【0008】
オレイン酸を液体現像剤中5〜60質量%の割合で含有すると共に、亜リン酸有機エステル系酸化防止剤を液体現像剤に対して0.1〜5質量%の割合で添加することを特徴とする。
【0009】
本発明の画像形成装置は、撥油性表面を有すると共に静電潜像を有する潜像坦持体の表面に、少なくともオレイン酸、酸性高分子系分散剤及び亜リン酸有機エステル系酸化防止剤を含有した不揮発性キャリア中に少なくとも塩基性高分子系分散剤とバインダー樹脂により被覆処理された塩基性処理顔料を分散させた正帯電性液体現像剤を供給し、前記静電潜像を現像した後、形成された液体トナー像を直接或いは中間転写媒体を経由してシート状の被転写媒体に接触状態で電圧を印加しつつ転写し、該転写された液体トナー像を熱的に定着する画像形成装置であり、前記潜像坦持体表面が、前記液体現像剤における不揮発性キャリアに対する接触角が60°〜90°の撥油性表面とされることを特徴とする。
【0010】
撥油性表面を有する潜像坦持体表面の帯電手段が、非接触式のスコロトロン帯電装置であることを特徴とする。
【0011】
潜像坦持体が有機感光体またはアモルファスシリコン感光体であって、該潜像坦持体表面には表面保護層としてフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートと光重合開始剤とを含有した含フッ素光硬化性組成物硬化層を設けたものてあることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の正帯電性液体現像剤は、少なくともオレイン酸、酸性高分子系分散剤及び亜リン酸有機エステル系酸化防止剤を含有した不揮発性キャリア中に、少なくとも塩基性高分子系分散剤とバインダー樹脂により被覆処理した塩基性処理顔料を、酸−塩基相互作用により分散させたものである。
【0013】
不揮発性キャリアとしては、植物油、シリコンオイル、流動パラフィンから選ばれる少なくとも1種である。植物油としては、大豆油、サフラワー油、MOヒマワリ油、綿実油、菜種油、紅花油、アマニ油、デバイダーオイル、HOLLキャノーラ、オリーブ油、落花生油、ゴマ油、コーン油等の1種または複数種の混合油である。オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸等の不飽和結合の割合が多い脂肪酸組成からなるトリグリセライドは、酸化重合性に優れるので好ましく、また、このトリグリセライドをキャリア液とする液体現像剤が使用される画像形成装置は、定着手段を簡素化できるので好ましい。植物油中のトリグリセライドの組成の一例を下記の表1に示す。尚、表中における(%)は、各脂肪酸の全脂肪酸に対する割合(質量%)である。
【0014】
【表1】

【0015】
シリコンオイルとしては、信越シリコン社製のKF−995、KF−994、KF−96 20〜1000cst、東レシリコン社製のSH344、東芝シリコン社製のTSF451シリーズ、TSF404(環状ジメチルポリシロキサン)、TSF4704(アミノ変性シリコン)等が例示される。また、流動パラフィンとしては、和光純薬社製、また、エッソ石油社製のクリストールJ52、J72、J352等が例示される。
【0016】
不揮発性キャリアとしては、定着性の観点からは好ましくは植物油とするとよい。植物油やオレイン酸はその不飽和基により酸化重合性を有し、また、後述するように撥油性表面を有する感光体との組合せにより、紙等への定着性に優れるものとできる。シリコンオイル、流動パラフィンを不揮発性キャリアとする場合、後述するように撥油性表面を有する感光体との組合せにより、不活性なシリコンオイルや流動パラフィンを画像部、非画像部に付着しないようにすると共に液体現像剤中に酸化重合性を有するオレイン酸を含有させることにより紙等への定着性を確保することができる。不揮発性キャリアとしては、液体現像剤中50〜85質量%の割合で含有されるとよい。
【0017】
オレイン酸は、室温で唯一、液状を示す高級不飽和脂肪酸であり、液体現像剤の粘度調整や電荷制御、また、酸化重合性を目的として添加され、液体現像剤中5〜60質量%、好ましくは10〜50質量%の割合で含有されるとよい。
【0018】
次に、本発明における塩基性処理顔料は、顔料をバインダー樹脂と塩基性高分子分散剤との混合物により被覆処理したものである。顔料としては無機顔料、有機顔料が例示される。無機顔料としては、カーボンブラックであるファーネスブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、市販品であるプリンテックスG、プリンテックスV、スペシャルブラック4、スペシャルブラック4−B(デグサ社製)、三菱#44、#30、MA−11、MA−100(三菱カーボン社製)、ラーベン30、ラーベン40、コンダクテックスSC(コロンビアカーボン社製)、リーガル400、660、800、ブラックパールL(キャボット社製)などが挙げられる。また、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ケイ素等の無機白色顔料を用いてもよい。
【0019】
有機顔料としては、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ローダミンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、メチルバイオレットレーキ、ピーコックブルーレーキ、ナフトールグリーンB、パーマネントレッド4R、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、チオインジゴレッド等が例示される。
【0020】
塩基性高分子分散剤としては、味の素ファインテクノ(株)製、アジスパーPB−822、川研ファインケミカル(株)製、ヒノアクト7000、AVECIA(株)製、SOLSPER32000等が例示される。
【0021】
また、バインダー樹脂としては、ポリエステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、スチレン・アクリル樹脂、ロジン変性樹脂、ポリエチレン、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、エチレン・メタクリル酸共重合体またはエチレン・アクリル酸エステル共重合体から選ばれる1種もしくは2種以上の樹脂が例示される。
【0022】
バインダー樹脂と塩基性高分子分散剤との混合比は、バインダー樹脂:塩基性高分子分散剤(重量比)=9:1〜7:3とするとよく、また、顔料に対するバインダー樹脂と塩基性高分子分散剤の混合物との混合比は、顔料:バインダー樹脂と塩基性高分子分散剤の混合物(重量比)=15:85〜45:55とするとよい。塩基性処理顔料は、顔料、塩基性高分子分散剤、バインダー樹脂をメチルエチルケトン中でビーズミルを使用して分散混合した後、水中に投入して析出させ、析出物を脱溶剤、乾燥処理、微粉化工程を経て調製するとよい。塩基性処理顔料は液体現像剤中、8〜50質量%、好ましくは10〜40質量%の割合で含有されるとよい。
【0023】
酸性高分子分散剤は、酸−塩基相互作用を利用して液体現像剤中での塩基性顔料の分散性を高めるものである。酸性高分子分散剤としては、味の素ファインテクノ(株)製、アジスパーPA111、川研ファインケミカル(株)製、KF−10000、アルファ化研(株)アルファレジンSA−300等が例示される。酸性高分子分散剤は、液体現像剤中0.01〜1質量%の割合で含有されるとよい。
【0024】
次に、本発明の液体現像剤には、酸化防止剤として亜リン酸有機エステル系酸化防止剤が添加される。亜リン酸有機エステル系酸化防止剤は、植物油等の酸化を防止することができ、液体現像剤の保存性に有効であるが、熱定着時にあっては、転写紙中に含有される水分と加熱状態で接触して加水分解され、酸化防止機能を無くすことができる。その結果、転写紙上の液体トナーに含有されるオレイン酸や植物油は酸化重合が促進され、離型剤作用を消失すると共に、定着に際しては酸化防止剤を添加しないものと比較しても遜色のない定着率とできることが見いだされた。また、ベンゼン骨格を有する亜リン酸有機エステル系酸化防止剤とすると、加水分解によりフェノール化合物が副生して植物油の腐敗や変性を防止するものと考えられ、臭いや着色をも防止しうるものと考えられる。なお、他の構造の酸化防止剤は、後述するように、保存性には優れるものの、酸化防止剤を添加しないものに比しても画像濃度が低く、また、定着性においても劣るものとなる。
【0025】
亜リン酸有機エステル系酸化防止剤は、亜リン酸の酸クロライドである三塩化リンまたはアルキル置換三塩化リンに、メチル基を3個以上有するアルコールを反応させ、脱塩酸することによって合成されるものである。メチル基を3個以上有するアルコールとしては、例えばt−ブタノール、ネオペンチルアルコール、ネオヘプチルアルコール、ネオノニルアルコール、ネオデシルアルコール、2−エチル−2,3,3−トリメチルブタノール、2,2,4,4−テトラメチルペンタノール、2,2,3,4−テトラメチルペンタノール、2,2,3,3−テトラメチルペンタノール、2−イソプロピル−2,3,5,5−テトラメチルヘキサノール、2,3,4−トリメチル−2−ネオペンチルペンタノール、2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルヘプタノール、2,4,4−トリメチル−2−t−ペンチルペンタノール、2−エチル−2,3,3,5,5−ペンタメチルヘキサノール等が挙げられる。
【0026】
亜リン酸有機エステル系酸化防止剤の具体例としては、例えばトリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリ−n−ブチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリストリデシルホスファイト、トリセチルホスファイト、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、トリラウリルチオホスファイト、ジエチルハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラフォスファイト、テトラ(C12〜C15アルキル)−4,4′−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)等が挙げられ、室温で液状の亜リン酸有機エステル系酸化防止剤が好ましい。これらのものは城北化学工業(株)製として入手可能である。
【0027】
亜リン酸有機エステル系酸化防止剤は、液体現像剤に対して0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜3質量%の割合で添加するとよい。0.1質量%より少ないと液体現像剤の保存性が悪化し、5質量%より多いと、定着性が悪化するので好ましくない。
【0028】
本発明の液体現像剤は、顔料として塩基性処理顔料を使用することにより、電荷制御剤を含有させなくとも優れた正帯電性液体現像剤とできるが、必要ならば下記のごとき電荷制御剤を配合することができる。具体的にはテトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−tert−ブチルチタネート、テトラ−2−エチルヘキシルチタネート、テトラオクチルチタネート、テトラメトキシチタン等や、チタニルアセチルアセテート等のチタンキレート等を挙げることができ、さらにその他の例としては、チタネートカップリング剤、例えばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシジルメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネートが挙げられる。
【0029】
本発明の液体現像剤には、他に老化防止剤、紫外線吸収剤等を含有させてもよい。
【0030】
本発明の液体現像剤は、ステンレス容器に不揮発性キャリア、オレイン酸、塩基性処理顔料と酸性高分子分散剤、亜リン酸有機エステル系酸化防止剤を投入し、アトライター、サンドミル、ボールミル、振動ミル等で分散することによって、着色微粒子の一次粒子径(個数平均粒径)が1μm以下のものとされる。
【0031】
また、本発明の液体現像剤は、粘度(25℃)としては50mPa・s〜1000mPa・s、また、電気抵抗としては25℃で1×1010Ω・cm〜5×1014Ω・cmとできる。
【0032】
次に、本発明で使用する液体現像用感光体の基本構造の断面図を図1に示す。図1中、1は導電性支持体、2は感光層、3は表面保護層である。
【0033】
導電性支持体1は、図では筒状のものを図示するが、シート状であってもよく、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス、鉄、真鍮などの金属単体材料、またはこの金属もしくは金属酸化物等の導電性材料を蒸着等によりポリエステル、ポリイミド、ポリカーボネート、ガラス等の絶縁性基板上に薄膜形成したものなどが用いられる。
【0034】
感光層2としては、正帯電性の有機感光層や無機感光層である。有機感光層として、以下、単層型の有機感光層について説明するが、電荷発生層と電荷輸送層とを順次積層した、所謂、機能分離型の積層感光体であってよい。
【0035】
単層型の有機感光層は、導電性支持体上に電荷発生剤、電荷輸送剤、増感剤等とバインダーからなる塗布液を塗工することにより設けられる。電荷発生剤としてはフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、キノン系顔料、ペリレン系顔料、キノシアトン系顔料、インジゴ系顔料、ビスベンゾイミダゾール系顔料、キナクリドン系顔料が挙げられ、好ましくはフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料である。電荷輸送剤としてはヒドラゾン系、スチルベン系、フェニルアミン系、アリールアミン系、ジフェニルブタジエン系、オキサゾール系等の有機正孔輸送化合物が例示され、また、共に添加される増感剤としては各種の電子吸引性有機化合物があり、電子輸送剤としても知られているパラジフェキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、クロラニル等が例示される。また、バインダーとしてはポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂が例示されるが、ポリカーボネート樹脂が好ましい。各成分の組成比は、バインダー40〜75質量%、電荷発生剤0.5〜25質量%、電荷輸送剤10〜50質量%、増感剤0.5〜30質量%であり、好ましくはバインダー45〜65質量%、電荷発生剤1〜20質量%、電荷輸送剤20〜40質量%、増感剤2〜25質量%である。各成分はトルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤と共にホモミキサー、ボールミル、サンドミル、アトライター、ペイントコンディショナー等の攪拌装置で粉砕・分散混合され塗布液とされる。塗布液は、導電性支持体上にディップコート、リングコート、スプレーコート等により乾燥後の膜厚15〜40μm、好ましくは20〜35μmで塗布・乾燥される。
【0036】
また、無機感光層としてはアモルファスシリコン(a−Si)系光導電層が例示される。a−Si系光導電層を構成する材料には、a−Si系もしくはa−Si合金系の光導電材料があり、a−Si、a−SiC、a−SiN、a−SiO、a−SiGe、a−SiCN、a−SiNO、a−SiCO、a−SiCNOなどが挙げられる。これらは、例えば、グロー放電分解法、各種スパッタリング法、各種蒸着法、ECR法、光CVD法、触媒CVD法、反応性蒸着法などにより成膜形成し、その成膜形成にあたって、ダングリンドボンド終端用に水素(H)、ハロゲン元素(F、Cl)を膜中に1〜40原子%含有させる。また、この光導電層の暗導電率や光導電率などの電気的特性あるいは光学的バンドギャップなどについて所望の特性を得るために、周期律表第III a族元素(以下、III a族元素)や第Va族元素(以下、Va族元素)を含有させたり、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)等の元素を含有させて上記諸特性を調整することができる。
【0037】
III a族元素及びVa族元素としては、それぞれホウ素(B)およびリン(P)が、共有結合性に優れて半導体特性を敏感に変え得る点で望ましく、その上優れた光感度が得られるという点で望ましい。その含有量としては、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)等の元素と共に含有させる場合は、III a族元素であれば0.1〜20,000ppmがよく、Va族元素であれば0.1〜10,000ppmがよい。また、C、N、O等の元素を含有させないかまたは微量含有させる場合は、III a族元素であれば0.01〜200ppm、Va族元素であれば0.01〜100ppm含有させるのがよい。これらの元素は層厚方向にわたって含有量に勾配を設けてもよく、その場合には層全体の平均含有量が上記範囲内であればよい。
【0038】
また、a−Si系光導電層には、微結晶シリコン(μc−Si)を含んでいてもよい。μc−Siを含むことにより光導電層の暗及び光導電率を高めることができ、この層の設計自由度が増す。μc−Siは上記と同様の形成法で、成膜条件を変えることによって形成することができる。例えばグロー放電分解法では、基体温度および高周波電力を高めに設定し、希釈ガスとしての水素流量を増すことによって形成できる。また、μc−Siを含む場合にも上記と同様の不純物元素を添加させることも可能である。
【0039】
さらに、a−Si系光導電層には、より優れた電子写真特性を得るために、基体の間にキャリア注入阻止層を形成したり光導電層の表面に表面層を形成するとよい。これらの層もa−Si系光導電材料により形成することが、a−Si系光導電層とのマッチングがよく、また同一の成膜装置によって連続して成膜形成することができるので好ましい。
【0040】
このようなキャリア注入阻止層には、上記のa−Si系光導電材料に光導電層より多くのIII a族元素やVa族元素を含有させて導電型を調整したり、より多くのC、N、Oを含有させて高抵抗としたものが用いられる。また、表面層には、上記のa−Si系光導電材料により多くのC、N、Oを含有させて高抵抗としたものが用いられる。これらの層を積層することにより、帯電能や光感度特性を高めたり耐久性、耐磨耗性、耐環境性を高めたりすることができ、a−Si系光導電層の優れた電子写真特性をさらに向上させることができる。
【0041】
a−Si系光導電層の厚みは通常5〜100μm、好適には15〜80μmとするとよい。また、キャリア注入阻止層の厚みは0.1〜10μm、好適には0.3〜5μmがよく、表面層の厚みは0.05〜5μm、好適には0.1〜2μmがよい。
【0042】
次に、有機感光層、無機感光層表面を撥油性とするための表面保護層3が設けられる。本発明における表面保護層としては、特開2005−171238に記載のフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートと光重合開始剤とを含有した含フッ素光硬化性組成物の硬化層からなり、表面保護層表面に対する植物油の接触角が、大豆油換算で60°〜90°とされるものであり、これにより、植物油をキャリア液とする液体現像剤に対する撥油性に優れることから、塗膜強度が強く、かつ耐傷性および防汚性に優れ、長寿命の液体現像用感光体とできる。
【0043】
フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートは、下記一般式(1)
【0044】
【化1】

【0045】
〔一般式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Xはヘテロ原子を有していても良いアルキレン鎖、又は下記一般式(2)
【0046】
【化2】

【0047】
{一般式(2)中、Yは酸素原子又は硫黄原子であり、mとnは同一でも異なっていても良い1〜4の整数であり、Rf1はフッ素化アルキル基である。}で表される連結基であり、Rfはフッ素化アルキル基である。〕
で表される末端にフッ素化アルキル基を有する官能基と、2個以上の(メタ)アクリロイル基とを有し、且つ、1分子中のフッ素原子含有率が25質量%以上で分子量が500〜4000の(メタ)アクリレートである。
【0048】
以下、本発明で使用するフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート〔(A−1)〜(A−4)〕について説明する。
【0049】
合成例1(A−1)
水分離管を具備した500ml四つ口フラスコに、トリメチロールプロパン33.5g、3−パーフルオロオクチルプロピオン酸(東ソー・エフテック株式会社製)123.0g、トルエン50g、シクロヘキサン50gを投入し、濃硫酸2.5gを加え、12時間共沸脱水を行った。4.5gの水生成を確認した後、一旦25℃に冷却し、アクリル酸45.0g、ハイドロキノン0.4gを加え、空気を吹き込みながら更に共沸脱水を行った。9.0gの水生成を確認した後、25℃に冷却した。反応液にトルエンを150g加え、25%水酸化ナトリウム水溶液30gで中和洗浄、さらに20%の食塩水40gで3回洗浄を行った。減圧下、トルエン及びシクロヘキサンを留去して微黄色液体170gを得た。このものをトルエン150mlに溶解し、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製を行った。次いで減圧下、酸素を吹き込みながらウォータバス温度50℃以下でトルエンを留去することで、構造式
【0050】
【化3】

【0051】
で示されるフッ素化アルキル基含有アクリレート(A−1)を得た。
【0052】
合成例2(A−2)
200ml反応フラスコにジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート15.7g(0.03モル)、トリエチルアミン2g、酢酸エチル10gを投入し、撹拌下パーフルオロオクチルエチルメルカプタン28.8g(0.06モル)を徐々に加えた。反応温度は35℃まで上昇した。加え終わった後、さらに50℃で3時間撹拌した。撹拌終了後、酢酸エチル60gを加え均一とした後、1規定塩酸100mlで有機層を洗浄した。更に水100mlで2回洗浄した後、有機層を分取した。50℃以下の条件で反応溶媒を、エバポレーターを用いて減圧留去した後、さらに真空ポンプで乾燥することで、構造式
【0053】
【化4】

【0054】
で示されるフッ素化アルキル基含有アクリレート(A−2)を得た。
【0055】
合成例3(A−3)
200ml反応フラスコにトリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(東亜合成株式会社製アロニックスM−315)21.2g(0.05モル)、トリエチルアミン1.0g、酢酸エチル15g溶液に、室温でパーフルオロヘキシルエチルメルカプタン19.0g(0.05モル)を、撹拌しながら滴下した(反応温度は35℃まで上昇した)。投入後、さらに50℃で3時間撹拌し、50℃以下で減圧下、酢酸エチル、トリエチルアミンを留去することで、構造式
【0056】
【化5】

【0057】
で示されるフッ素化アルキル基含有アクリレート(A−3)を得た。
【0058】
合成例4(A−4)
合成例3においてトリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(東亜合成株式会社製アロニックスM−315)21.2g(0.05モル)の代わりにEO変性リン酸トリアクリレート15.1g(0.05モル)を、パーフルオロヘキシルエチルメルカプタン19.0g(0.05モル)の代わりにパーフルオロオクチルエチルメルカプタン24.0g(0.05モル)を用いた以外は合成例3と同様にして、構造式
【0059】
【化6】

【0060】
で示されるフッ素化アルキル基含有アクリレート(A−4)を得た。
【0061】
合成したフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート〔(A−1)〜(A−4)〕の性状を下記表2に示す。
【0062】
【表2】

【0063】
このようにして得たフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートと光重合開始剤とからなる含フッ素光硬化性組成物層を感光層表面に設けた後、100mJ/cm2 〜500mJ/cm2 の紫外線を照射して硬化させることにより、その表面に対する植物油の接触角が大豆油換算で60°〜90°で、膜厚が0.1〜3μmである表面保護層を形成することができる。
【0064】
また、表面保護層の膜厚は、有機感光層の場合には、0.1μm〜3μm、好ましくは0.15μm〜2.5μmであり、0.1μmより薄いと撥油性機能維持が低下するという問題が生じ、3μmを越えると光減衰残留電位が高くなり、感光体の表面保護層としては好ましくない。また、無機感光層の場合には、0.1μm〜1.5μm、好ましくは0.2μm〜1.5μmであれば正帯電感光体として実用範囲にある。
【0065】
本発明における含フッ素光硬化性組成物は、光成形硬化させることによりその硬化物を得ることができ、低屈折率、透明性等の光学特性と寸法安定性・強度などの力学特性、更にフッ素原子由来の表面特性を兼備しながら、加水分解といった化学的劣化を受け難く、耐湿熱性も良好であり、長期での前記性能を安定維持できるものである。
【0066】
また、表面保護層におけるフッ素原子含有率として8質量%以上、好ましくは 8.5〜60質量%となるようには調整するとよい。光硬化性組成物(硬化物)中におけるフッ素含有率が8.5質量%未満であると、強度が不足すると共に植物油に対する接触角を高くすることができない。
【0067】
本発明の表面保護層においては、そのフッ素原子含有率として8.5質量%以上とするものであり、これにより、表面強度に優れるものとできると共にキャリア液である植物油に対する耐久後の接触角を60°〜90°とすることができ、非画像部へのキャリア液の付着の少ない表面保護層とできるものである。また、この感光体からなる画像形成装置においては、クリーニングトナー量を減少させることができる。
【0068】
また、表面保護層における表面抵抗率は25℃で1×1013Ω・cm〜5.0×1015Ω・cmとするとよい。
【0069】
本発明における接触角は、表面保護層表面に、大豆油(日清オイリオ(株)製、トリグリセライドにおけるオレイン酸成分が23.3質量%)を1μL滴下した状態で、接触角測定装置(協和界面科学(株)製、DropMasterDM700)を使用し、滴下後100ms後の接触角(100ms値)と5900ms後の接触角(5900ms値)を求めるものである。また、耐久性は、上記の如くにして接触角を求めた後、その表面を油被膜が残らないようにベンコット(旭化成(株)製、BEMCOT)で清掃する方法を5回繰り返し、その5回目の接触角をもって耐久性の評価を行うものである。
【0070】
以下、本発明で使用する有機感光体、無機感光体の作製例を示す。
(正帯電用有機感光体ドラムの作製)
(感光層形成用塗布液の調製) ・ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製、TS−2020) ・・ 21質量部
・無金属フタロシアニン(大日本インキ化学工業(株)製) ・・ 2質量部
・ヒドラゾン化合物(アナン(株)製) ・・ 10質量部
・3,5−ジメチル−3′,5′−ジ(t)ブチル−4,4′−ジフェノキノン
・・ 5質量部
・トルエン ・・180質量部
からなる組成を、ペイントコンディショナー中で10時間分散混合し、塗布液とした。
得られた感光層形成用塗布液をΦ40mmのアルミ素管にリングコート法で塗工、乾燥して、膜厚20μmの感光層を形成した。
【0071】
(撥油性表面層を有する正帯電用有機感光体(あ)の作製)
上記で得た感光体ドラムを120rpmで回転させながら、感光層上に、組成
・ フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート(A−1)
・・・ 70質量部
・ ネオペンチルグリコールジアクリレート ・・・ 30質量部
・ 2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン
・・・ 0.4質量部
からなる組成物のメチルセルソルブ溶液(固形分濃度9%)を塗布液とし、旭サナック(株)製のスプレー塗布装置を使用して、1回塗布した。塗布後は、円筒チューブ回転乾燥用紫外線照射装置(日本文化精工(株)製「NPT453」)を用い、120rpmで回転させながら、照射量160mJ/cm2 で20秒間乾燥させ、膜厚0.8μmの表面保護層を形成し、有機感光体(あ)を得た。
【0072】
(撥油性表面層を有する正帯電用有機感光体(い)の作製)
正帯電用有機感光体(あ)と同様に、感光体ドラムを120rpmで回転させながら、感光層上に、組成
・ フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート(A−2)
・・・ 60質量部
・ ペンタエリスリトールテトラアクリレート ・・・ 40質量部
・ 2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン
・・・ 4質量部
からなる組成物のメチルセルソルブ溶液(固形分濃度を5%)とした塗布液を、旭サナック(株)製のスプレー塗布装置を使用して、2回塗布した。塗布後は、円筒チューブ回転乾燥用紫外線照射装置(日本文化精工(株)製「NPT453」)を用い、120rpmで回転させながら、照射量160mJ/cm2 で20秒間乾燥させ、膜厚1μmの表面保護層を形成し、有機感光体(い)を得た。
【0073】
(撥油性表面層を有する正帯電用有機感光体(う)の作製)
正帯電用有機感光体(あ)と同様に、感光体ドラムを120rpmで回転させながら、感光層上に、組成
・ フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート(A−3)
・・・ 50質量部
・ トリメチロールプロパントリアクリレート ・・・ 50質量部
・ 2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン
・・・ 4質量部
からなる組成物のメチルセルソルブ溶液(固形分濃度を5%)とした塗布液を、旭サナック(株)製のスプレー塗布装置を使用して、2回塗布した。塗布後は、円筒チューブ回転乾燥用紫外線照射装置(日本文化精工(株)製「NPT453」)を用い、120rpmで回転させながら、照射量160mJ/cm2 で20秒間乾燥させ、膜厚1μmの表面保護層を形成し、有機感光体(う)を得た。
【0074】
(撥油性表面層を有する正帯電用有機感光体(え)の作製)
正帯電用有機感光体(あ)と同様に、感光体ドラムを120rpmで回転させながら、感光層上に、組成
・ フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート(A−4)
・・・ 50質量部
・ トリメチロールプロパントリアクリレート ・・・ 50質量部
・ 2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン
・・・ 4質量部
からなる組成物のメチルセルソルブ溶液(固形分濃度を10%)とした塗布液を、旭サナック(株)製のスプレー塗布装置を使用して、1回塗布した。塗布後は、円筒チューブ回転乾燥用紫外線照射装置(日本文化精工(株)製「NPT453」)を用い、120rpmで回転させながら、照射量160mJ/cm2 で20秒間乾燥させ、膜厚0.8μmの表面保護層を形成し、有機感光体(え)を得た。
【0075】
以下、本発明で使用するアモルファスシリコン感光体の作製例を示す。
(撥油性表面層を有する正帯電用アモルファスシリコン感光体(か)の作製)
正帯電用アモルファスシリコン感光体{京セラ(株)製(Φ40)}を120rpmで回転させながら、感光層上に、組成
・ フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート(A−1)
・・・ 70質量部
・ ネオペンチルグリコールジアクリレート ・・・ 30質量部
・ 2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン
・・・ 0.4質量部
からなる組成物のイソプロピルアルコール溶液(固形分濃度5%)を塗布液とし、旭サナック(株)製のスプレー塗布装置を使用して、1回塗布した。塗布後は、円筒チューブ回転乾燥用紫外線照射装置(日本文化精工(株)製「NPT453」)を用い、感光体ドラムを120rpmで回転させながら、照射量160mJ/cm2 とし20秒間乾燥させ、膜厚0.1μmの表面保護層を形成し、アモルファスシリコン感光体(か)を得た。
【0076】
(撥油性表面層を有する正帯電用アモルファスシリコン感光体(き)の作製)
アモルファスシリコン感光体(か)と同様に、感光体ドラムを120rpmで回転させながら、感光層上に、組成
・ フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート(A−2)
・・・ 60質量部
・ ペンタエリスリトールテトラアクリレート ・・・ 40質量部
・ 2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン
・・・ 4質量部
からなる組成物のイソプロピルアルコール溶液(固形分濃度5%)を塗布液とし、旭サナック(株)製のスプレー塗布装置を使用して、2回塗布した。塗布後は、円筒チューブ回転乾燥用紫外線照射装置(日本文化精工(株)製「NPT453」)を用い、感光体ドラムを120rpmで回転させながら、照射量160mJ/cm2 とし20秒間乾燥させ、膜厚1μmの表面保護層を形成し、アモルファスシリコン感光体(き)を得た。
【0077】
(撥油性表面層を有する正帯電用アモルファスシリコン感光体(く)の作製)
アモルファスシリコン感光体(か)と同様に、感光体ドラムを120rpmで回転させながら、感光層上に、組成
・ フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート(A−3)
・・・ 50質量部
・ トリメチロールプロパントリアクリレート ・・・ 50質量部
・ 2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン
・・・ 4質量部
からなる組成物のイソプロピルアルコール溶液(固形分濃度6%)を塗布液とし、旭サナック(株)製のスプレー塗布装置を使用して、2回塗布した。塗布後は、円筒チューブ回転乾燥用紫外線照射装置(日本文化精工(株)製「NPT453」)を用い、感光体ドラムを120rpmで回転させながら、照射量160mJ/cm2 とし20秒間乾燥させ、膜厚1.5μmの表面保護層を形成し、アモルファスシリコン感光体(く)を得た。
【0078】
(撥油性表面層を有する正帯電用アモルファスシリコン感光体(け)の作製)
アモルファスシリコン感光体(か)と同様に、感光体ドラムを120rpmで回転させながら、感光層上に、組成
・ フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート(A−4)
・・・ 50質量部
・ トリメチロールプロパントリアクリレート ・・・ 50質量部
・ 2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン
・・・ 4質量部
からなる組成物のイソプロピルアルコール溶液(固形分濃度8%)を塗布液とし、旭サナック(株)製のスプレー塗布装置を使用して、1回塗布した。塗布後は、円筒チューブ回転乾燥用紫外線照射装置(日本文化精工(株)製「NPT453」)を用い、感光体ドラムを120rpmで回転させながら、照射量160mJ/cm2 とし20秒間乾燥させ、膜厚0.2μmの表面保護層を形成し、アモルファスシリコン感光体(け)を得た。
【0079】
次に、本発明の画像形成方法について説明する。
【0080】
図1は中間転写ベルト使用のタンデム式カラー電子写真画像形成装置を説明するこめの図であり、図2はその感光体周りの説明図である。
図中1は撥油性潜像坦持体(感光体)、2は供給ローラ、3はアニロックスローラ、4は現像ローラ、5は現像ローラクリーニングユニット、6は書き込み用LEDヘッド、7はスコロトロン帯電器、8は除電用LED、9は感光体クリーニングユニット、10Yはイエロー液体トナー貯蔵供給制御ユニット、10Cはシアン液体トナー貯蔵供給制御ユニット、10Mはマゼンタ液体トナー貯蔵供給制御ユニット、10Bはブラック液体トナー貯蔵供給制御ユニット、11はクリーニング液体トナー循環パス、12は中間転写ベルト、13は中間転写ベルトクリーニングユニット、14は1次転写ローラ、15は駆動ローラ、16は従動ローラ、17は2次転写ローラ、18は2次転写ローラクリーニングユニット、19は定着ローラ、20は搬送パス、21は両面印字給紙パス、22は給紙ピックアップコロ、23は給紙カセット、24はゲートローラ、25は排紙ローラ対、Pは記録媒体である。
【0081】
図1のカラー電子写真画像形成装置は、図2に示す画像形成部及び現像装置を4つ並べ、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(B)からなる各色の液体トナー貯蔵供給制御ユニット(10Y、10C、10M、10B)を現像装置下部に設けた構成からなる。
【0082】
図2の画像形成部は、撥油性潜像坦持体(感光体ドラム)1を帯電装置のスコロトロン帯電器7で一様に帯電させ、書き込み用LEDヘッドにより入力された画像信号に基づき露光され、帯電された撥油性感光体ドラム1Y上に静電潜像を形成する。これは、1色の例えばイエロー液体現像を行う画像形成部を説明するものであり、他のシアン、マゼンタ、ブラックの液体現像を行う為には同様の構成が並設して設けられる。
【0083】
なお、帯電装置として非接触の正帯電装置(スコロトロン帯電器)を使用するとオゾンの発生量が負帯電に比して1/10になるので有利であり、また、陽極酸化で潜像坦持体(感光体)上の微量に存在する植物油が酸化重合するのを防止するために、液体現像剤中の亜リン酸有機エステル系酸化防止剤が機能するので、長期に渡って潜像坦持体上の静電潜像形成を阻害することがない。
【0084】
現像装置は、イエロー液体トナー貯蔵供給制御ユニット10Y上に、供給ローラ2、アニロックスローラ3、現像ローラ4及び現像ローラクリーニングユニットで構成されており、撥油性感光体ドラム1Y上に形成された静電潜像を現像する。同じようにして、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(B)からなる各色の液体現像装置により各色に対応している撥油性感光体ドラム1C、1M、1B上に形成された静電潜像を現像する。
【0085】
現像を行うには、供給ローラ2を図示しない駆動手段によって回転駆動させることで液体現像剤を汲み上げて、図示しない駆動手段によって回転駆動させられたアニロックスローラ3に液体現像剤を塗布する。アニロックスローラ3は現像ローラとは逆方向に回転しており、接触部においてアニロックスローラ3の複数の凹部の容量に応じて計量された液体トナーが現像ローラ4に移送され、現像ローラ4表面に液体トナー層を形成する。この層厚は液体トナーの固形分により異なり、固形分濃度が15〜45質量%において、12μm〜5μmの範囲に調整されることが良好な画像を得る範囲となる。
【0086】
現像ローラ4は、撥油性感光体ドラム1Yと等速に回転しながらこれに接触して現像ニップ(本発明では6.5mm)を形成している。この現像ニップは、図示しない電源からトナーの帯電極性と同極性の現像バイアスが印加されている現像ローラ4と撥油性感光体ドラム1Yとの電位差によって現像電界が形成される。具体的には、現像ニップ、現像ローラ4、撥油性感光体ドラム1Yの非画像部及び静電潜像がそれぞれトナーと同極性の電位を帯び、その値が撥油性感光体ドラム1Yの非画像部、現像ローラ4、静電潜像の順に低くなっている。このため、撥油性感光体ドラム1Yの非画像部と現像ローラ4の間では、トナーを電位のより低い現像ローラ4に向けて静電的に移動させるような電界が形成される。また、現像ローラ4と撥油性感光体ドラム1Yの静電潜像の間では、トナーを電位のより低い撥油性感光体ドラム1Yの静電潜像に向けて移動させるような電界が形成される。
【0087】
このような現像電界が形成される現像ニップでは、上記現像剤薄層中のトナーが、現像ローラ4と撥油性感光体ドラム1Yの非画像部との間で現像ローラ4の表面に向けて電気泳動して集結するとともに、現像ローラ4と撥油性感光体ドラム1Yの静電潜像との間では、撥油性感光体ドラム1Yの静電潜像に向けて電気泳動して付着する。この付着により、撥油性感光体ドラム1Yの静電潜像が現像されたトナー像(この場合はイエロートナー像)となる。
【0088】
現像ニップを通過した後の現像ローラ4の残留液体トナーは、現像ローラクリーニングユニット5でブレードの表面に当接することで掻き取り除去される。この除去により、現像ローラ4の表面は初期化される。除去された残留液体トナーは、クリーニング液体トナー循環パスを経由してイエロー液体トナー貯蔵供給制御ユニット10Yに戻る。同様にして、シアン液体トナー、マゼンタ液体トナー及びブラック液体トナーを用いて撥油性感光体ドラム上の静電潜像を現像する。
【0089】
次に、撥油性感光体ドラム1Y、1C、1M、1Bと一次転写ローラ14とが中間転写ベルト12を挟んで対向配置される一次転写部において、撥油性感光体ドラム1Y、1C、1M、1Bが、中間転写ベルト12を挟んで一次転写ローラ14とのニップ部を通過し、撥油性感光体ドラム1Y、1C、1M、1Bと一次転写ローラ14との当接位置を転写位置として、一次転写ローラ14にトナー粒子の帯電特性と逆極性の電圧が印加されることにより、トナーは、撥油性感光体ドラム1Y、1C、1M、1B上から中間転写ベルト12に一次転写される。そして、各色の顕像トナー像が中間転写ベルト12へ一次転写され、順次重ねられることによりフルカラーのトナー像が形成される。撥油性感光体ドラム1Y、1C、1M、1B上少量ではあるがキャリア液がのこる。一次転写部より撥油性感光体ドラム1Y、1C、1M、1Bの回転方向の下流側において、一次転写後の、撥油性感光体ドラム1Y、1C、1M、1B上のキャリア液は、感光体クリーニングユニット9により掻き取られる。
【0090】
一次転写部で中間転写ベルト12上に一次転写されたトナー画像は、2次転写部へと進み、中間転写ベルト12を介した従動ローラ16と2次転写ローラ17とのニップ部に進入する。2次転写行う場合、2次転写ローラ17と駆動ローラ15とは、逆極性に印加されており、これにより中間転写ベルト12上に形成された単色のトナー像やフルカラーのトナー像は給紙カセット23より給紙ピックアップコロ22で給紙され、搬送パス20を経由して搬送される用紙、フィルム、布等の記録媒体P上に転写する。
【0091】
2次転写部では、中間転写ベルト12上に色重ねしたトナー画像が2次転写部位に到達するタイミングに合わせて記録媒体Pを供給し、該トナー画像を記録媒体Pに2次転写するが、ジャムなどの記録媒体Pの供給トラブルが発生した場合には、記録媒体Pが介在しない状態でトナー画像が2次転写ローラ17に接して転写され、記録媒体Pの裏面汚れ等を引き起こす。そこで、2次転写ローラに2次転写ローラクリーニングユニット18を当接し、裏面汚れを防止している。
【0092】
本実施形態の2次転写ローラ17は、表面が繊維質などによって平滑でない記録媒体Pであっても、この非平滑な記録媒体P表面に倣って2次転写特性を向上させる手段として、複数の撥油性感光体ドラム1上に形成したトナー像を順次1次転写して重ね合わせて坦持し、一括して記録媒体Pに2次転写する中間転写ベルト12に採用した弾性ベルトと同様の目的で表面に弾性体を被覆した弾性ローラで構成している。2次転写ローラクリーニングユニット18中のブレードは、2次転写ローラ17に転写された液体トナー(キャリア液中に分散したトナー)を除去する手段として備え、2次転写ローラ17から液体トナーを回収する。尚、この回収された液体トナーは混色状態のものであり、紙粉等の異物も含んでいる場合があるので廃棄される。
【0093】
2次転写部を通過後、中間転写ベルト12は駆動ローラ15へと進む。ジャムなどの記録媒体Pの供給トラブルが発生した場合には、全てのトナー画像が2次転写ローラ17に転写されて回収されるものではなく、一部は中間転写ベルト12上に残る。
【0094】
また、通常の2次転写行程においても中間転写ベルト12上のトナー像は100%二次転写されて記録媒体Pに移行するものではなく、数パーセントの2次転写残りが発生する。この二種の不要トナー像は次の画像形成のために中間転写ベルト12に当接するように配置された中間転写体クリーニング装置の一例としての中間転写ベルトクリーニングユニット13によりクリーニングされる。その後、中間転写ベルト12は、再び、1次転写部へと向かう。
【0095】
なお、中間転写部は、中間転写ベルト12、駆動ローラ15、従動ローラ16及び中間転写ベルトクリーニングユニット13からなり、2次転写部は、2次転写ローラ17及び2次転写ローラクリーニングユニット18からなる。記録媒体搬送部は、給紙カセット23内に積層された紙等の記録媒体Pが給紙ピックアップコロ22で一枚分離され、記録媒体Pの斜行と給送タイミングを補正するゲートローラ24等を経て2次転写部に給送される。2次転写部では記録媒体Pはフルカラー画像が2次転写される。2次転写された記録媒体Pは、内部から加熱する加熱ローラ19と外部にゴム等の弾性部材を備えた加圧ローラで構成された定着装置を通過し、フルカラー画像中の熱可塑性樹脂が溶融しながら記録媒体Pへ加圧定着され、所望の画像を得て、排紙ローラ25によりプリンタ本体から排紙される。
【0096】
次に、図3は直接転写紙に転写する紙搬送ベルト方式の電子写真画像形成装置を説明するための図であり、図4はその感光体周りの説明図である。
図中1は撥油性潜像坦持体(感光体)、2′は現像ローラ、3はアニロックスローラ、4′は供給ローラ、5は現像ローラクリーニングユニット、6は書き込み用LEDヘッド、7はスコロトロン帯電器、8は除電用LED、9は感光体クリーニングユニット、10Yはイエロー液体トナー貯蔵供給制御ユニット、10Cはシアン液体トナー貯蔵供給制御ユニット、10Mはマゼンタ液体トナー貯蔵供給制御ユニット、10Bはブラック液体トナー貯蔵供給制御ユニット、11はクリーニング液体トナー循環パス、12′は紙搬送ベルト、13′は紙搬送ベルトクリーニングユニット、14′は転写ローラ、15′は定着ローラ対、16′は搬送パス、17′は排紙ローラ対、18′は両面印字切替装置、19′は両面印字給紙パス、20′は給紙ピックアップコロ、21′は給紙カセット、Pは記録媒体である。
【0097】
図3のカラー電子写真画像形成装置は、図4に示す画像形成部及び現像装置を4つ並べ、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(B)からなる各色の液体トナー貯蔵供給制御ユニット(10Y、10C、10M、10B)を現像装置下部に設けた構成からなる。
【0098】
図4の画像形成部は、撥油性潜像坦持体(感光体ドラム)1Yを帯電装置のスコロトロン帯電器7で一様に帯電させ、書き込み用LEDヘッドにより入力された画像信号に基づき露光され、帯電された撥油性感光体ドラム1上に静電潜像を形成する。これは、1色の例えばイエロー液体現像を行う画像形成部を説明するものであり、他のシアン、マゼンタ、ブラックの液体現像を行う為には同様の構成が並設して設けられる。
【0099】
なお、帯電装置として非接触の正帯電装置(スコロトロン帯電器)を使用するとオゾンの発生量が負帯電に比して1/10になるので有利であり、また、陽極酸化で潜像坦持体(感光体)上の微量に存在する植物油が酸化重合するのを防止するために、液体現像剤中の亜リン酸有機エステル系酸化防止剤が機能するので、長期に渡って潜像坦持体上の静電潜像形成を阻害することがない。
【0100】
現像装置は、イエロー液体トナー貯蔵供給制御ユニット10Y上に供給ローラ4′、アニロックスローラ3、現像ローラ2′及び現像ローラクリーニングユニット5で構成されており、撥油性感光体ドラム1Y上に形成された静電潜像を現像する。同じようにして、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(B)からなる各色の液体現像装置により各色に対応している撥油性感光体ドラム1C、1M、1B上に形成された静電潜像を現像する。
【0101】
現像を行うには、供給ローラ4′を図示しない駆動手段によって回転駆動させることで液体現像剤を汲み上げて、図示しない駆動手段によって回転駆動させられたアニロックスローラ3に液体現像剤を塗布する。アニロックスローラ3は現像ローラ2′に対し逆方向に回転しており、接触部においてアニロックスローラ3の複数の凹部の容量に応じて計量された液体トナーが現像ローラ2′に移送され、現像ローラ2′表面に液体トナー層を形成する。この層厚は液体トナーの固形分により異なり、固形分濃度が15〜45質量%において、12μm〜5μmの範囲に調整されることが良好な画像を得る範囲となる。
【0102】
現像ローラ2′は、撥油性感光体ドラム1Yと等速に回転しながらこれに接触して現像ニップ(本発明では6.5mm)を形成している。この現像ニップは、図示しない電源からトナーの帯電極性と同極性の現像バイアスが印加されている現像ローラ2′と撥油性感光体ドラム1Yとの電位差によって現像電界が形成される。具体的には、現像ニップ、現像ローラ2′、撥油性感光体ドラム1Yの非画像部及び静電潜像がそれぞれトナーと同極性の電位を帯び、その値が撥油性感光体ドラム1Yの非画像部、現像ローラ2′、静電潜像の順に低くなっている。このため、撥油性感光体ドラム1Yの非画像部と現像ローラ2′の間では、トナーを電位のより低い現像ローラ2′に向けて静電的に移動させるような電界が形成される。また、現像ローラ2′と撥油性感光体ドラム1Yの静電潜像の間では、トナーを電位のより低い撥油性感光体ドラム1Yの静電潜像に向けて移動させるような電界が形成される。
【0103】
このような現像電界が形成される現像ニップでは、上記現像剤薄層中のトナーが、現像ローラ2′と撥油性感光体ドラム1Yの非画像部との間で現像ローラ2′の表面に向けて電気泳動して集結するとともに、現像ローラ2′と撥油性感光体ドラム1Yの静電潜像との間では、撥油性感光体ドラム1Yの静電潜像に向けて電気泳動して付着する。この付着により、撥油性感光体ドラム1Yの静電潜像が現像されたトナー像(この場合はイエロートナー像)となる。
【0104】
現像ニップを通過した後の現像ローラ2′の残留液体トナーは、現像ローラクリーニングユニット5でブレードの表面に当接することで、掻き取り除去される。この除去により、現像ローラ2′の表面は初期化せしめられる。除去された残留液体トナーは、クリーニング液体トナー循環パス11を経由してイエロー液体トナー貯蔵供給制御ユニット10Yに戻る。同様にして、シアン液体トナー、マゼンタ液体トナー及びブラック液体トナーを用いて撥油性感光体ドラム上の静電潜像を現像する。
【0105】
次に、撥油性感光体ドラム1Y、1C、1M、1Bと転写ローラ14′とが紙搬送ベルト12′を挟んで対向配置される転写部において、撥油性感光体ドラム1Y、1C、1M、1Bが、紙搬送ベルト12′上の記録媒体Pを挟んで転写ローラ14′とのニップ部を通過し、撥油性感光体ドラム1Y、1C、1M、1Bと転写ローラ14′との当接位置を転写位置として、転写ローラ14′にトナー粒子の帯電特性と逆極性の電圧が印加されることにより、トナーは、撥油性感光体ドラム1Y、1C、1M、1B上から紙搬送ベルト12′上の記録媒体Pに転写される。そして、各色の顕像トナー像が紙搬送ベルト12′上の記録媒体Pへ転写され、順次重ねられることにより、フルカラーのトナー像が形成される。撥油性感光体ドラム1Y、1C、1M、1B上に少量ではあるがキャリア液が残る。転写部より撥油性感光体ドラム1Y、1C、1M、1Bの回転方向の下流側において、転写後の、撥油性感光体ドラム1Y、1C、1M、1B上のキャリア液は、感光体クリーニングユニット9により掻き取られる。
【0106】
記録媒体Pは給紙カセット21′より給紙ピックアップコロ20′で給紙され、搬送パス16′を経由して紙搬送ベルト12′上に静電吸着されることで転写部に搬送され、搬送された記録媒体P上に各転写部において各色トナー画像が転写される。
【0107】
転写されたトナー画像は、定着ローラ対17′へと進み、加熱定着後に排紙ローラ対17′で排出され、印字が終了する。ジャムなどの記録媒体Pの供給トラブルが発生した場合には、記録媒体Pが介在しない状態でトナー画像が紙搬送ベルト12′に接して転写され、記録媒体Pの裏面汚れ等を引き起こす。そこで、紙搬送ベルト12′に紙搬送ベルトクリーニングユニット13′を当接させ、裏面汚れを防止している。尚、この回収された液体トナーは、混色状態のものであり、紙粉等の異物も含んでいる場合があるので廃棄される。
【0108】
なお、両面印字する場合には、定着ローラ対15′により記録媒体P上のトナー画像を一旦定着させ、次いで、両面印字切替装置18′を作動させ、排紙パスを両面印字給紙パス19′に切替わることで、反転させてから給紙カセット21′上に再給紙し、再び給紙ピックアップコロを作動させることにより、裏面に印字できるようにする。
【0109】
以下、実施例により本発明を説明する。
【実施例】
【0110】
後述する各実施例で使用する液体現像剤について説明する。
【0111】
(1) 不揮発性キャリアが植物油の場合
(a) シアン液体現像剤(a)の調製
(塩基性処理シアン顔料の調製)
シアン顔料(フタロシニン系顔料、Pigment Blue 15:3)を、ポリエステル樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、プラスディックDL−90、酸価10mgKOH/g)と塩基性高分子分散剤(味の素ファインテクノ(株)製、アジスパーPB−822)との8対2(重量比)の割合の混合物を使用してシアン顔料:混合物(重量比)=25:75の割合の混合物をメチルエチルケトン400重量部中でビーズミル分散混合し、この分散液を水中に高速攪拌のもとに滴下し、析出させた後、30℃で20時間の減圧乾燥を行った。その後、アズワン製のオートセルマスターを用いて微粉砕し、目開き100μmのふるいを通過させることで塩基性処理シアン顔料とした。
【0112】
容量500mlのステンレス容器に
・MOヒマワリ油(日清オイリオ社製、トリグリセライドのオレイン酸成分量60.5%) ・・・ 180g
・オレイン酸(関東化学(株)製) ・・・ 75g
・酸性分散剤(味の素ファインテクノ(株)製、アジスパーPA111)
・・・ 0.17g
・上記で調製した塩基性処理顔料 ・・・ 52.5g
の組成と共に、直径3ミリのジルコニアボールを550g投入して、攪拌機(トルネードSM型プロペラ攪拌羽根)を用い、回転数504ppmで24時間分散混合して着色剤分散液であるシアン液体現像剤(a)を作製した。
【0113】
(b) マゼンタ液体現像剤(a)の調製
上記のシアン液体現像剤(a)の調製におけるシアン顔料に代わりに、同様に塩基性処理したPigment Red 57:1を使用した以外は、同様にしてマゼンタ液体現像剤(a)を調製した。
【0114】
(c) イエロー液体現像剤(a)の調製
上記のシアン液体現像剤(a)の調製におけるシアン顔料に代わりに、同様に塩基性処理したPigment Yellow 74を使用した以外は、同様にしてイエロー液体現像剤(a)を調製した。
【0115】
(d) ブラック液体現像剤(a)の調製
上記のシアン液体現像剤(a)の調製におけるシアン顔料に代わりに、同様に塩基性処理したカーボンブラック(粒子径40nm、窒素吸着比表面積55m2 /g)を用いた以外は、同様にしてブラック液体現像剤(a)を調製した。各液体現像剤の作製直後の粘度と電気抵抗を下記表3に示す。
【0116】
【表3】

【0117】
(2) 不揮発性キャリアがシリコンオイルの場合
上記のシアン液体現像剤(a)の調製において、MOヒマワリ油の代わりにシリコンオイル(信越シリコン社製「KF−96−20」)を使用して、シアン液体現像剤(b)、マゼンタ液体現像剤(b)、イエロー液体現像剤(b)及びブラック液体現像剤(b)の各色の液体現像剤を調製した。各液体現像剤の作製直後の粘度と電気抵抗を下記表4に示す。
【0118】
【表4】

【0119】
(3) 不揮発性キャリアが流動パラフィンの場合
上記のシアン液体現像剤(a)の調製において、MOヒマワリ油の代わりに流動パラフィン(和光純薬社製)を使用して、シアン液体現像剤(c)、マゼンタ液体現像剤(c)、イエロー液体現像剤(c)及びブラック液体現像剤(c)の各色の液体現像剤を調製した。各液体現像剤の作製直後の粘度と電気抵抗を下記表5に示す。
【0120】
【表5】

【0121】
(実施例1)
(定着試験用シアン液体トナーの調製)
上記のシアン液体現像剤(a)の作製工程において、その分散混合終了2時間前の分散処理中の液体現像剤中に、亜リン酸有機エステル系酸化防止剤であるトリフェニルホスファイト(酸化防止剤A)、同トリデシルホスファイト(酸化防止剤B)、比較のためのフェーノル系酸化防止剤であるジブチルヒドロキシトルエン(酸化防止剤C)を液体現像剤の全量に対してそれぞれ0.4質量%の割合で添加し分散させ、次いで、目開き2mmのメッシュを通過させ、ジルコニアボールを取り除き、定着試験用であって、本発明および比較例のシアン液体現像剤とした。
【0122】
(液体現像方式のタンデムプリンタによる印字試験)
図1に示す液体現像方式のタンデムプリンタに、上記で作製したΦ40の撥油性有機感光体ドラム(あ)をイエロー液体現像用の感光体として、また、撥油性有機感光体ドラム(い)をシアン液体現像用の感光体として、また、撥油性有機感光体ドラム(う)をマゼンタ液体現像用の感光体として、また、撥油性有機感光体ドラム(え)をブラック液体現像用の感光体としてそれぞれ装着した。
【0123】
そして、タンデムプリンタのシアン液体貯蔵供給制御ユニットに、上記で作製した定着試験用シアン液体現像剤をセットした。そして、5%の色画像を含む印字パターンを用い、A4サイズで1000枚の連続印字を行った。作像条件は、撥油性の有機感光体と現像ローラ間に500VのDCバイアスを印加して、プロセス速度206m/min.、スコロトロンの印加電圧5.5kV、メッシュ電極電位600V、現像ローラ上のシアン液体現像剤の付着量を0.75mg/cm2 になるようにアニロックスローラ(現像ローラに対して逆回転してしいる)と現像ローラの各ローラ回転速度を調節した。現像ローラのアニロックスローラへの食い込みは0.2mmである。
【0124】
なお、カラー画像原稿の中には1.5cm角のベタ部も6箇所設けており、ベタ濃度を測定できるようにしている。この時作像時の1次転写電圧は650V、2次転写電圧1.5kVに設定しており、液体現像用転写紙(三菱製紙社製、EP−L微塗工81.4gsm)を使用し、転写及び定着を行った。この時の定着ローラと加圧ローラのニップ幅は7.5mm(荷重:10N)とし、定着ローラの温度を70℃から180℃まで変化させて、各定着温度における印字画像を得た。また、定着試験用シアン液体現像剤の交換時、液体現像剤と接触部分はエタノールをしみ込ませたベンコット(旭化成せんい製)を用いて清掃を行い、汚れがないことを確認してから次の評価試験用シアン液体現像剤をセットした。
【0125】
{定着評価方法(テープ剥離試験)}
定着率の評価は、転写紙(三菱製紙社製、EP−L微塗工81.4gsm)上に形成された1.5cm角のベタ部の上に住友スリーエム(株)製のメンディングテープ(18mm幅)を張り付け、1.5kgの荷重で2往復、テープ上を押圧した後、テープを剥離し、転写紙上に残った印字物濃度を剥離前の濃度に対する割合を定着率(%)とした。
【0126】
上記の印字試験で、印字後10枚目の印字物を用い、ベタ初期画像濃度と定着率を求めて、酸化防止剤無添加のシアン液体現像剤(a)の場合を含めて下記表6に示した。なお、ベタ濃度は1.5cm角の画像部の反射濃度を反射濃度計(X−Rite社製、530)を用いて測定した値であり、定着率は表6記載の各定着温度にて定着した1.5cm角の画像部を上記のテープ剥離試験で求めた値である。
【0127】
【表6】

【0128】
表中、酸化防止剤Aはトリフェニルホスファイト、酸化防止剤Bはトリデシルホスファイト、酸化防止剤Cはジブチルヒドロキシトルエン、無添加は酸化防止剤の未添加物である。
【0129】
表から、本発明の亜リン酸有機エステル系酸化防止剤を添加したシアン液体現像剤の画像濃度および定着率は、無添加のシアン液体現像剤と同様であり、定着に際して亜リン酸有機エステル系酸化防止剤による影響はないものと考えられる。一方、フェノール系酸化防止剤の場合には、画像濃度が低く、また、定着率において無添加のシアン液体現像剤より低く、酸化防止剤が定着性を阻害しているものと考えられる。
【0130】
次に、保存性を調べるための加速試験を実施した。上記で得たシアン液体現像剤(a)100gをビーカーに取り、加熱する前の粘度(25℃、mPa・s)と80℃で7日間保存した後の粘度(mPa・s)を測定し、その結果を下記表7に示す。また、加熱前後のシアン液体現像剤(a)の臭いを測定装置((株)カルモア製KALMOR−Σ)で測定し、その結果も下記表7に示す。
【0131】
【表7】

【0132】
表によれば、酸化防止剤を液体現像剤全体に対して0.4質量%添加しただけでも、粘度及び臭いの変化が防止されることがわかる。しかし、酸化防止剤を添加しないと、粘度、臭い共に上昇し、変性が進んでいることがわかる。
【0133】
(実施例2)
実施例1において、図1に示すタンデムプリンタの各液体貯蔵供給制御ユニットに、上記で作製し、下記表8に示す亜リン酸有機エステル系酸化防止剤をそれぞれ添加したイエロー液体現像剤(a)、シアン液体現像剤(a)、マゼンタ液体現像剤(a)、ブラック液体現像剤(a)の各液体現像剤をセットした。そして、各色液体現像剤の現像ローラ上における付着量が0.75mg/cm2 となるようにアニロックスローラと現像ローラの回転数を調節した。印字試験は各色5%の色画像を含む印字パターンを用い、1000枚の連続印字を行った。カラー画像原稿の中には1.5cm角のベタ部も6箇所設けており、ベタ濃度を測定できるようにしている。この時作像時の1次転写電圧は650V、2次転写電圧は1.5kVに設定しており、液体現像用転写紙(三菱製紙社製、EP−L微塗工81.4gsm)を使用し、転写及び定着(定着ローラ温度130℃)を行った。なお今回使用した各色の液体現像剤には、下記表に示す亜リン酸有機エステル系酸化防止剤を液体現像剤全量に対してそれぞれ0.4質量%ずつ、実施例と同様に添加した。
【0134】
(液体現像方式のタンデムプリンタによる感光体上のクリーニングされた液体現像剤量の測定)
図1に示す液体現像方式のタンデムプリンタの感光体クリーニングユニットに接続しているクリーニング液体トナー循環パスを取り外して、クリーニング容器内に留まるように設定し、各色5%の色画像を含む印字パターンを用い、実施例1と同様にして1000枚の連続印字を行った。作像条件は同様である。そして、紫外線硬化型フッ素樹脂を表面層に設けた正帯電用有機感光体(あ)〜(え)からクリーニングされた液体現像剤の量を、クリーニングユニットを取り外して求めた。その結果を下記表9に示す。
【0135】
また、下記表8には正帯電用有機感光体(あ)〜(え)のMOヒマワリ油に対する接触角(液滴法で滴下後、5900ms値)を共に示す。また、表9には印字後10枚目の印字物を用いて測定した定着率結果も示す。また、比較用感光体として、表面保護層を設けていない場合(MOヒマワリ油に対する接触角は34°)の結果において、保護層なしの感光体上のクリーニング液体現像剤量は4色合計値であり、また、定着率はシアン液体現像剤(a)の場合の値を代表して記載した。
【0136】
【表8】

【0137】
【表9】

【0138】
表8中、酸化防止剤Dはトリクレジルホスファイト、酸化防止剤Eはテトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、酸化防止剤Fはジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、酸化防止剤Gはテトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイトで、いずれも亜リン酸有機エステル系酸化防止剤である。
【0139】
表9から、亜リン酸有機エステル系酸化防止剤を添加した各色液体現像剤の定着率は、酸化防止剤を添加しない場合と同様の定着率を示すものであり、酸化防止剤による液体現像剤の酸化重合性への影響は殆ど認められないことがわかる。また、保護層無しの感光体の4色が合計のクリーニング量323.1gに対して、保護層を設けたシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色合計量は17.9gであり、クリーニング減量は94.5%にも達することがわかる。これは容量的には18分の1にできることを示しており、カラープリンタの感光体周りをコンパクトに設計できることがわかる。
【0140】
(実施例3)
(液体現像方式のタンデムプリンタによる印字試験)
図1に示す液体現像方式のタンデムプリンタに、上記で作製したΦ40の撥油性のアモルファスシリコン感光体(か)をイエロー液体現像用として、また、アモルファスシリコン感光体(き)をシアン液体現像用として、また、アモルファスシリコン感光体(く)をマゼンタ液体現像用として、また、アモルファスシリコン感光体(け)をブラック液体現像用として装着した。そして、上述したシリコンオイルをキャリア液として作製したイエロー液体現像剤(b)、シアン液体現像剤(b)、マゼンタ液体現像剤(b)、ブラック液体現像剤(b)の各色の液体現像剤に、下記表10に示す亜リン酸有機エステル系酸化防止剤をそれぞれ0.4質量%、同様に添加分散させ、それぞれを各色の液体トナー貯蔵供給ユニットにセットした。
【0141】
次に、5%の色画像を含む印字パターンを用い、A4サイズで1000枚の連続印字を行った。作像条件は、撥油性のアモルファスシリコン感光体ドラムと現像ローラ間に450VのDCバイアスを印加して、プロセス速度206m/min.、スコロトロンの印加電圧4.8kV、メッシュ電極電位600V、現像ローラ上のシアン液体現像剤の付着量を0.75mg/cm2 となるように、アニロックスローラ(現像ローラに対し逆回転している)と現像ローラの各ローラ回転速度を調節した。現像ローラに対するアニロックスローラへの食い込みは0.2mmである。
【0142】
なお、カラー画像原稿の中には1.5cm角のベタ部も6箇所設けており、ベタ濃度を測定できるようにしている。この時作像時の1次転写電圧は650V、2次転写電圧は1.5kVに設定しており、液体現像用転写紙(三菱製紙社製、EP−L微塗工81.4gsm)を使用し、転写及び定着を行った。この時の定着ローラと加圧ローラのニップ幅は7.5mm(荷重:10N)とし、定着ローラの温度は150℃に設定した。
【0143】
測定した項目は、1000枚印字した時の感光体上のクリーニング量と10枚目のベタ部の150℃における定着率である。その結果を下記表11に示す。表には、正帯電用アモルファスシリコン感光体(か)〜(け)のシリコンオイルに対する接触角(5900ms値)を共に示す。また、比較用感光体として、表面保護層を設けていない場合(シリコンオイルに対する接触角は25°)の結果において、保護層なしの感光体上のクリーニング液体現像剤量は4色合計値であり、また、定着率はシアン液体現像剤(b)の場合の値を代表して記載した。
【0144】
【表10】

【0145】
【表11】

【0146】
表10中、酸化防止剤Hはトリラウリルトリチオホスファイト、酸化防止剤Iはジラウリルハイドロゲンホスファイト、酸化防止剤Jはジフェニルハイドロゲンホスファイト、酸化防止剤Kはテトラ(C12〜C15アルキル)−4,4′−イソプロピリデンジフェニルジホスファイトで、いずれも亜リン酸有機エステル系酸化防止剤である。
【0147】
表11から、亜リン酸有機エステル系酸化防止剤を添加した各色液体現像剤の定着率は、酸化防止剤を添加しない場合に比較し、37%以上高い値を示した。これは感光体表面が撥油性であるために、キャリア液であるシリコンオイルがはじかれる結果、現像された液体現像剤中に含まれるキャリア液の量が減り、定着性が向上するものと考えられる。それは保護層無しの感光体の4色合計クリーニング量343gに対し、紫外線硬化型フッ素樹脂を表面保護層とした撥油性感光体を使用した場合は4色合計量は28.3gであり、クリーニング減量は91.7%にも達することがわかる。これは容量的には12分の1にできることを示しており、カラープリンタの感光体周りをコンパクトに設計できることがわかる。
【0148】
(実施例4)
(液体現像方式のタンデムプリンタによる印字試験)
実施例3において、不揮発性キャリアに流動パラフィンを用いた前述のイエロー液体現像剤(c)、シアン液体現像剤(c)、マゼンタ液体現像剤(c)、ブラック液体現像剤(c)の各色の液体現像剤に、下記表12に示す亜リン酸有機エステル系酸化防止剤をそれぞれ0.4質量%、同様に添加分散させ、それぞれを各色の液体トナー貯蔵供給ユニットにセットした。
【0149】
次に、実施例3と同様にして、A4サイズで1000枚の連続印字を行ったときの感光体上のクリーニング量と10枚目のベタ部の150℃における定着率を求め、その結果を下記表13に示す。表には、正帯電用アモルファスシリコン感光体(か)〜(け)の流動パラフィンに対する接触角(5900ms値)を共に示す。また、比較用感光体として、表面保護層を設けていない場合(流動パラフィンに対する接触角は28°)の結果において、保護層なしの感光体上のクリーニング液体現像剤量は4色合計値であり、また、定着率はシアン液体現像剤(c)の場合の値を代表して記載した。
【0150】
【表12】

【0151】
【表13】

【0152】
表12中、酸化防止剤H〜酸化防止剤Kは実施例3と同じである。
【0153】
表13から、亜リン酸有機エステル系酸化防止剤を添加した各色液体現像剤の定着率は、酸化防止剤を添加しない場合に比較して34%以上高い値を示した。これは感光体表面が撥油性であるために、キャリア液である流動パラフィンがはじかれる結果、現像された液体現像剤中に含まれるキャリア液の量が減り、定着性が向上するものと考えられる。それは、保護層無しの感光体の4色合計クリーニング量330gに対し、紫外線硬化型フッ素樹脂を表面保護層とした撥油性感光体を使用した場合は4色合計量は25.6gであり、クリーニング減量は92.2%にも達することがわかる。これは容量的には13分の1にできることを示しており、カラープリンタの感光体周りをコンパクトに設計できることがわかる。
【0154】
(実施例5)
(液体現像方式のタンデムプリンタによる印字試験)
図3に示す紙搬送方式のタンデム電子写真装置の液体トナー貯蔵供給制御ユニットに、不揮発性キャリアとして前述のMOヒマワリ油を用い、下記表14に示す亜リン酸有機エステル系酸化防止剤を0.4質量%含有する各色の液体現像剤を同様に作製して、セットした。
【0155】
印字試験と評価項目は、実施例4に準じて行った。ただし、作像条件は各色5%の色画像を含む印字パターンを用い、1000枚の連続印字を行い、撥油性感光体には、撥油性の有機感光体(あ)〜(え)を用い、作製した液体現像剤との組合せは下記表14に示すものとした。そして、撥油性の有機感光体ドラムと現像ローラ間に450VのDCバイアスを印加して、プロセス速度200m/min.、スコロトロンの印加電圧5.5kV、メッシュ電極電位600V、現像ローラ上のシアン液体現像剤の付着量を0.60mg/cm2 になるようにアニロックスローラ(現像ローラに対して逆回転してしいる)と現像ローラの各ローラ回転速度を調節した。現像ローラのアニロックスローラへの食い込みは0.2mmである。
【0156】
転写紙には、液体現像用転写紙(三菱製紙社製、EP−L微塗工81.4gsm)を使用し、紙搬送ベルトはPI製で厚み150μm、体積電気抵抗は2.1×1010Ω・cmである。カラー画像原稿の中には1.5cm角のベタ部も6箇所設けており、ベタ濃度と定着率を測定できるようにしている。この時作像時の1次転写電圧は850Vに設定しており、液体現像用転写紙(三菱製紙社製、EP−L微塗工81.4gsm)を使用し、転写及び定着(定着ローラの温度130℃)を行った。定着率の測定は、印字した10枚目の画像品質を実施例1と同じようにして評価し、撥油性有機感光体上のクリーニングトナー量は、クリーニング液体トナー循環パスを取り外して、クリーニング容器内に溜まるようにして設定してクリーニング前後のユニットの重量を測定して求めた。その評価結果を表15に示す。また、比較用感光体として、表面保護層を設けていない場合(MOヒマワリ油に対する接触角は34°)の結果において、保護層なしの感光体上のクリーニング液体現像剤量は4色合計値であり、また、定着率はシアン液体現像剤(a)の場合の値を代表して記載した。
【0157】
【表14】

【0158】
【表15】

【0159】
表14中、酸化防止剤Lはジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、酸化防止剤Mはビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、酸化防止剤Nはビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、酸化防止剤Oは4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジ−トリデシルホスファイト)で、いずれも亜リン酸有機エステル系酸化防止剤である。
【0160】
表15から、亜リン酸有機エステル系酸化防止剤を添加した各色液体現像剤の定着率は、酸化防止剤の無添加と同等であり、問題がなかった。そして、保護層無しの感光体の4色合計クリーニング量298gに対し、紫外線硬化型フッ素樹脂を表面保護層とした撥油性感光体を使用した場合は4色合計量は15.6gであり、クリーニング減量は94.8%にも達することがわかる。これは容量的には19分の1にできることを示しており、カラープリンタの感光体周りをコンパクトに設計できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】図1は、中間転写ベルト使用のタンデム式カラー電子写真画像形成装置を説明するこめの図である。
【図2】図2は、図1の画像形成装置における感光体周りの説明図である。
【図3】図3は、直接転写紙に転写する紙搬送ベルト方式の電子写真画像形成装置を説明するための図である。
【図4】図4は、図3の画像形成装置における感光体周りの説明図である。
【符号の説明】
【0162】
1は撥油性潜像坦持体(感光体)、2は供給ローラ、3はアニロックスローラ、4は現像ローラまたは供給ローラ、5は現像ローラクリーニングユニット、6は書き込み用LEDヘッド、7はスコロトロン帯電器、8は除電用LED、9は感光体クリーニングユニット、10Yはイエロー液体トナー貯蔵供給制御ユニット、10Cはシアン液体トナー貯蔵供給制御ユニット、10Mはマゼンタ液体トナー貯蔵供給制御ユニット、10Bはブラック液体トナー貯蔵供給制御ユニット、11はクリーニング液体トナー循環パス、12は中間転写ベルト、13は中間転写ベルトクリーニングユニット、14は1次転写ローラ、15は駆動ローラ、16は従動ローラ、17は2次転写ローラ、18は2次転写ローラクリーニングユニット、19は定着ローラ、20は搬送パス、21は両面印字給紙パス、22は給紙ピックアップコロ、23は給紙カセット、24はゲートローラ、25は排紙ローラ対、Pは記録媒体、2′は現像ローラ、4′は供給ローラ、12′は紙搬送ベルト、13′は紙搬送ベルトクリーニングユニット、14′は転写ローラ、15′は定着ローラ対、16′は搬送パス、17′は排紙ローラ対、18′は両面印字切替装置、19′は両面印字給紙パス、20′は給紙ピックアップコロ、21′は給紙カセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともオレイン酸、酸性高分子系分散剤及び亜リン酸有機エステル系酸化防止剤を含有した不揮発性キャリア中に、少なくとも塩基性高分子系分散剤とバインダー樹脂により被覆処理した塩基性処理顔料を分散させたことを特徴とする正帯電性液体現像剤。
【請求項2】
不揮発性キャリアが、植物油、シリコンオイル、流動パラフィンから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1記載の正帯電性液体現像剤。
【請求項3】
オレイン酸を液体現像剤中5〜60質量%の割合で含有すると共に、亜リン酸有機エステル系酸化防止剤を液体現像剤に対して0.1〜5質量%の割合で添加することを特徴とする請求項1記載の正帯電性液体現像剤。
【請求項4】
撥油性表面を有すると共に静電潜像を有する潜像坦持体の表面に、少なくともオレイン酸、酸性高分子系分散剤及び亜リン酸有機エステル系酸化防止剤を含有した不揮発性キャリア中に少なくとも塩基性高分子系分散剤とバインダー樹脂により被覆処理された塩基性処理顔料を分散させた正帯電性液体現像剤を供給し、前記静電潜像を現像した後、形成された液体トナー像を直接或いは中間転写媒体を経由してシート状の被転写媒体に接触状態で電圧を印加しつつ転写し、該転写された液体トナー像を熱的に定着する画像形成装置であり、前記潜像坦持体表面が、前記液体現像剤における不揮発性キャリアに対する接触角が60°〜90°の撥油性表面とされることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
撥油性表面を有する潜像坦持体表面の帯電手段が、非接触式のスコロトロン帯電装置であることを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
潜像坦持体が有機感光体またはアモルファスシリコン感光体であって、該潜像坦持体表面には表面保護層としてフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートと光重合開始剤とを含有した含フッ素光硬化性組成物硬化層を設けたものてあることを特徴とする請求項4または請求項5記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−242039(P2008−242039A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81873(P2007−81873)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】