説明

歩行型管理機

【課題】前後進変速レバー操作をハンドル振替によっても同一感覚とする構成を廉価に得る。
【解決手段】縦軸芯周りに前後振替固定自在にハンドル38を設け、エンジン14の駆動力を無段変速して車軸4に伝動するHST16を設け、前記ハンドル38に前後方向の操作により機体1の前進および後進操作を司る変速レバー39を設けると共に、前記HST16のトラニオン軸40を連動するトラニオンアーム41を設け、前記変速レバー39の操作に連動し付勢手段に抗して回動動作するリンク機構Sを設け、前記付勢手段に抗する回動動作でトラニオン軸40を正転させる第1係合状態と、トラニオン軸40を逆転させる第2係合状態とに、前記トラニオンアーム41とリンク機構Sとが選択的に係合するよう構成し、前記第1係合状態と第2係合状態とに前記ハンドル38の前後振替操作によって切替える切替機構Tを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、耕耘装置を装着した歩行型管理機に係り、特に静油圧無段変速装置を備えて走行部を変速伝動する管理機に関する。
【背景技術】
【0002】
走行車輪等の走行部を静油圧無段変速装置によって無段変速する歩行型管理機において、該走行部の後方に耕耘装置等の作業部を配置するとともに、操作ハンドルを縦軸周りに前後に振替自在に構成する構成が公知である。またハンドルを前後に振替自在としてこの前後を検出する手段を構成し、走行変速レバーの操作量を検出する手段を構成し、トラニオン軸を連動する変速モーターを制御することによって、ハンドルを前後に振り替えると自動的に前後進方向が切り替えられるようにした構成が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3737222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、電気的に静油圧無段変速装置の油圧ポンプの前後進切替を行なうものとしているので、電源手段、変速モータ、コントローラー等を必要として高価格となり易い。また、電源を必要とするためバッテリーの搭載を要する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
請求項1に記載の発明は、機体1に対し縦軸芯Z周りに前後振替固定自在にハンドル38を設け、
エンジン14の駆動力を無段変速して車軸4に伝動する静油圧無段変速装置(HST)16を設け、
前記ハンドル38に前後方向の操作により機体1の前進および後進操作を司る変速レバー39を設けると共に、前記HST16のトラニオン軸40を連動するトラニオンアーム41を設ける歩行型管理機において、前記変速レバー39の操作に連動し付勢手段に抗して回動動作するリンク機構Sを設け、前記トラニオンアーム41とリンク機構Sとが選択的に係合することにより、前記付勢手段に抗する回動動作でトラニオン軸40を正転させる第1係合状態又はトラニオン軸40を逆転させる第2係合状態に切り替るよう構成し、前記第1係合状態と第2係合状態とは前記ハンドル38の前後振替操作によって切替わるよう前記ハンドル38とトラニオンアーム41又はリンク機構Sとの間に切替機構Tを構成した。
【0006】
上記の構成により、ハンドル38前後振替のうち標準状態において、変速レバー39を前進側に操作すると、トラニオンアーム41を回動しトラニオン軸40を連動する。この標準状態にあっては、トラニオンアーム41とリンク機構Sとは第1係合状態となって、変速レバー39操作によりトラニオンアーム41及びトラニオン軸40を正転方向に回動して、機体を前進させる。
【0007】
また、上記標準状態で変速レバー39を後進側に切替操作すると、リンク機構Sは付勢力によって復帰動作し、トラニオンアーム41は上記とは逆に回動してトラニオン軸40を逆転方向に連動し、機体を後進させる。
【0008】
そして、ハンドル38を前後振替の振替変更状態で、変速レバー39を前進側に操作すると、トラニオンアーム41を回動しトラニオン軸40を連動する。この振替変更状態にあっては、トラニオンアーム41とリンク機構Sとは第2係合状態となって、変速レバー39操作によりトラニオンアーム41及びトラニオン軸40を逆転方向に回動して、機体を前進させる。
【0009】
また、上記振替変更状態で変速レバー39を後進側に切替操作すると、リンク機構Sは付勢力によって復帰動作し、トラニオンアーム41は上記とは逆に回動してトラニオン軸40を逆転方向に連動し、機体を後進させる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、トラニオン軸40に嵌合して該トラニオン軸40を連動するトラニオンアーム41を付勢力に抗してトラニオン軸40長手方向に摺動自在に設け、この摺動によって前記第1係合状態と第2係合状態となるように構成した。
【0011】
従って、切替手段Tはトラニオンアーム41をトラニオン軸40に対して摺動する簡単な構成で実現できる。
請求項3に記載の発明は、請求項2において、リンク機構Sは操作レバー39にワイヤ44で連携されてトラニオン軸40と並行に設けた軸芯回りに回動する第1リンク46と該第1リンク46と一体的に回動する第2リンク48と該第2リンク48に対して回動自在に連結する第3リンク53とからなり、前記第1係合状態はトラニオンアーム41と第1リンク46とを連結状態とし、前記第2係合状態はトラニオンアーム41と第3リンク53とを連結状態とすることによって切替選択する構成とした。従って、第1〜第3リンクによるリンク機構Sをワイヤ44とトラニオンアーム41との間に介在することによって簡単な構成で第1係合状態と第2係合状態との切替が実行できる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3に記載の発明において、ミッションケース2の一側にエンジン14の出力軸21とミッションケース2への入力軸22とを連動するベルト伝動機構を設け、他側に静油圧無段変速装置(HST)16を配置してなる。従って、左右の機体バランスを良好とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜3に記載の発明は、ハンドルが標準状態、あるいは振替変更状態のいずれにおいても、変速レバー39操作に基づき、機体を前進又は後進させることができ、変速レバー39の操作感覚を同じにすることができ、操作性を向上する。
【0014】
また、トラニオン軸40を回転連動するトラニオンアーム41の第1係合状態と第2係合状態との切替構成をリンク機構S、切替機構T等の機械的連動機構によって構成するため、従来技術のように電源、制御モータ、コントローラー等を要さず廉価に構成でき、かつバッテリーのない小型の管理機にも応用できる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3に記載の発明において、ミッションケース2の一側にエンジン14の出力軸21とミッションケース2への入力軸22とを連動するベルト伝動機構を設け、他側に静油圧無段変速装置(HST)16を配置したから、左右の機体バランスを良好とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】全体側面図
【図2】全体平面図
【図3】展開した伝動機構図
【図4】要部の側面図
【図5】要部の平面図
【図6】ハンドル標準状態の作用説明図(A)(B)
【図7】ハンドル振替変更状態の作用説明図(A)(B)
【図8】切替機構Tの作用説明図(A)(B)
【図9】ハンドル把持部の拡大側面図(A)、変速レバーガイド体(B)
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
上記技術思想に基づき具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
図1は歩行型管理機の側面図であり、機体1は、側面視へ字型に形成されたミッションケース2と該ミッションケース2の前側に設ける支持フレーム3等を備える。このうちミッションケース2の前側ケース2a下部には車軸4を突設し左右車輪4L,4Rを支持し、後側ケース2b下部には耕耘軸5を突設して耕耘爪6,6…を設けて耕耘装置7を構成する。
【0018】
耕耘装置7の上面はロータリカバー8で覆う構成であり、後面は後部カバー9で覆う構成としている。耕耘装置7中央フレーム7aの後端側にはホルダ10を備え、支持柱11を介して尾輪12を上下高さ調節自在に設けている。13は尾輪高さ固定用のロックボルトである。
【0019】
前記支持フレーム3にはエンジン14を設け、ベルト伝動機構を介してエンジン出力をミッションケース2内伝動機構に伝達する構成である。15はベルト伝動機構を覆うベルトカバーである。
【0020】
前記ミッションケース2を挟んでベルト伝動機構の反対側には、油圧ポンプ16p及び油圧モータ16mを備えた静油圧無段変速装置(HST)16を装着している。
ついでミッションケース2内伝動構成について説明する。
【0021】
前記エンジン14の出力軸21とミッションケース2内入力軸22とをベルト伝動機構の伝動ベルト23によって連動し、該入力軸22は同軸芯に配設した前記HST16の油圧ポンプ16pのHST入力軸24を連動する構成としている。HST入力軸24の回転は油圧ポンプ16pを駆動する構成であり、油圧モータ16mの出力軸25は、ミッションケース2内の第1走行軸26を連動する構成としている。
【0022】
前記ミッションケース2の前側ケース2a内において、前記第1走行軸26と並行に第2走行軸27を配設し、両走行軸26,27間には減速ギヤ28,29を設けると共に、第2走行軸27と前記車軸4との間にはチェン30を介在させてHST16で変速された駆動力がこれら減速ギヤ28,29やチェン30を介して車軸4に伝達される構成である。なお車軸4には左右一対の車輪4L,4Rを配設し同一回転する構成である。
【0023】
前記入力軸22の駆動力はミッションケース2の後側ケース2bに、前記耕耘軸5に正逆転切替動力を伝達する伝動機構を内装する。即ち、入力軸22と並行な作業中間軸31上にスライドギヤ32を設け、途中にカウンタ軸33とカウンタギヤ34を介在し、入力軸22上の第1ギヤ35の回転が該カウンタギヤ34を経由して上記作業中間軸31のスライドギヤ32に噛み合うようにスライド操作して耕耘軸5を正転連動させ、他方にスライド操作して入力軸22上の第2ギヤ36を直接スライドギヤ32に噛み合わせて逆転連動させる構成である。なお作業中間軸31の回転はチェン37を介して耕耘入力軸5aに伝動される。該耕耘入力軸5aには中空の耕耘軸5,5を着脱自在に設け夫々を連動する構成としている。
【0024】
前記HST16の油圧ポンプ16p側には斜板を設けてトラニオン軸40の正逆回転により油圧モータ16mを正転乃至逆転及びその回転を制御し得る構成である。トラニオン軸40は後記ハンドル38手元の変速レバー39の操作による。該変速レバー39は、右側のハンドル38の内側にあって水平軸芯周りに前後に揺動自在に設けている。
【0025】
次いでトラニオン軸40の回転操作を行なう操作系について説明する。
前記HST16に上下軸周りに回動されるトラニオン軸40を設け、該トラニオン軸40には軸方向に摺動可能にかつ回転方向には一体的となるようにトラニオンアーム41のボス部41aを挿通している。なお該ボス部41aとHST16のハウジング16a部に形成した受部16bとの間には、トラニオン軸40に巻き付く状態にスプリング42を介在させ、トラニオン軸40の上部はナット43を固定してボス部41aの抜け出しを防止している。
【0026】
前記トラニオンアーム41はワイヤ44を介して手元の変速レバー39の操作に基づきトラニオン軸40を正逆に回転連動する構成とするが、ワイヤ44とトラニオンアーム41との間にはリンク機構Sを介在すると共に、同じくワイヤ44の引き方向操作が作用してもトラニオン軸40を正転又は逆転に連動する切替機構Tを介在している。
【0027】
前記リンク機構S及び切替機構Tについて詳述する。ワイヤ44の端部を連結する第1リンク46を適宜に機体側に固着した縦軸47に挿通するボス部47aに固定し、該ボス部47aにく字状の第2リンク48を固定して設け、縦軸47に対して第1リンク46及び第2リンク48が回動すべく構成する。49はこれらリンク46,48を一定方向に付勢するスプリングである。そして第1リンク46にワイヤ44接続部と縦軸47との間に位置して係合ピン50を設け、この係合ピン50はトラニオンアーム41に形成され平面視で前後方向に突出する第1突出部41aの係合孔41bに係脱可能に設けられる。従って、前記変速レバー39を前側に倒すよう操作するほどワイヤ44が引かれトラニオン軸40は反時計方向(CCW)に回動し、変速レバー39を戻して中立位置から更に後方に倒すと第2リンク48に接続する前記スプリング49の付勢力によってワイヤ44は戻されトラニオン軸40は時計方向(CW)に回動する構成である。
【0028】
また、変速レバー39を中立位置に戻した状態で、トラニオンアーム41のボス部41aをスプリング42に抗して下方に押圧すると(図4中仮想線)、該トラニオンアーム41の機体側方に突出する第2突出部41cに設けた係合ピン52が、前記第2リンク48に縦軸47と並行な軸芯を有して回動自在に設けた回動駒部材48aに対して一体的に設けた第3リンク53の係合孔53aに嵌合し、トラニオンアーム41は第3リンク53の動きに追従することとなる。従って、変速レバー39を前側に操作してワイヤ44を引くと第1リンク46、縦軸47、第2リンク48、第3リンク53を介してトラニオン軸40を時計方向(CW)に回動する。変速レバー39を中立位置から後方に操作すると、スプリング49の付勢力によってワイヤ44は戻されトラニオン軸40を反時計方向(CCW)に連動する。
【0029】
以上のように、リンク機構Sは、第1リンク46、縦軸47、第2リンク48、第3リンク53によって構成される。また切替機構Tはトラニオンアーム41と係合ピン50によるリンク機構Sとの第1係合状態又は係合ピン52による第2係合状態へ切替える構成をいうものである。
【0030】
上記切替機構Tについて詳述する。前記のトラニオンアーム41の上下位置の切替作動は、前記ミッションケース2の上部に装着され縦軸芯Z周りに前後に振替変更自在なハンドル38の当該前後振替操作に基づく構成としている。即ち、先端がトラニオンアーム41のボス部41aの上部まで延出され前後軸芯P周りに上下揺動自在に押圧アーム56を設け、ハンドル38を前後に振替操作するとハンドル38の基部カバー57内に構成したカム体58は、該ハンドル38と一体的の回動フレーム39aが前後に振替作動するに伴ないそのカム面58aで押圧アーム56を下方に押してトラニオンアーム41のボス部41aを下方に移動させるよう構成している。このためハンドル38がミッションケース2から耕耘装置7の上方を経て機体後方に延出する標準状態においては、前記スプリング42の付勢力で上位に位置する状態となって前記第1係合状態となし(図4中実線、図8(A))、ハンドル38を前後に振り替えて固定するときは、前記スプリング42の付勢力に抗してトラニオンアーム41のボス部41aが押し下げられ、前記第2係合状態となす(図4中仮想線、図8(B))。
【0031】
59はトラニオンアーム41を時計方向(CW)に付勢するスプリングである。また符号60は、第3リンク53の途中部を支持すべくその下面に設ける保持機構である。該保持機構60は機体側固定部材から上向きに突出しスプリングで上方に付勢した構成とし、前記第2係合状態への切替時において、押圧アーム56の作動によって係合ピン52が下動するとき下方の係合孔53aと一致しない場合であっても第3リンク53は保持機構60のスプリングで退避動でき、従って変速レバー39を中立位置に復帰させないままでハンドル振替操作しても各部の破損を防止できる。
【0032】
前記第3リンク53は、軸方向の長さが調整できるボルト状部材と係合孔53aを形成したプレート部からなり、有効長を調整できる構成としている。このためトラニオンアーム41の中立状態を調整できる。なお、中立状態の調整は前記ワイヤ44の有効長調整と相俟って調整するよう構成している。
【0033】
前記トラニオン軸40の近傍には作業機変速レバー61が設けられている。該作業機変速レバー61は縦軸部の下端に係合プレート62を設け、該係合プレート62をミッションケース2側から突出するシフタステー63の先端部に上向きに突出させたピン部材63aに係合させてなり、作業機変速レバー61の縦軸部61aを縦軸芯Q周りに正逆に回動させることにより、シフタステー63を長手方向に往復スライドさせ、該シフタステー63は前記スライドギヤ32を係合してスライド移動し、シフタステー63がミッションケース2の内側に向けてスライドすると耕耘軸5が正転連動し、該ケース2の外側に向けてスライドさせると該耕耘軸5を逆転する構成である。
【0034】
前記係合プレート62には2箇所にピン部材63aを係合する孔部62a,62bを形成し、L型の作業機変速レバー61の把持部は、孔部62aに係合するときには機体後方(耕耘装置5の方向)に向くよう設定され、縦軸部を長手方向に上動させた後該縦軸Qを中心に回転させて再度該長手方向に押し下げることにより、孔部62bに係合させるときは前後に振替られる構成である。
【0035】
前記作業機変速レバー61の近傍には、ミッションケース2側壁に突出させて設けた支持ブラケット64に縦軸周りに揺動可能な牽制プレート65を設け、作業機変速レバー61の上下途中部に固着したハート状のカムプレート66に該牽制プレート65の一側に固着した丸棒67に該カムプレート66外周を接触可能に設けている。丸棒67がカムプレート66の外周のうち凹部に対応するとき変速位置は中立位置である。この中立位置から作業機変速レバー61を正転側にシフトすると(図5中矢印(X))、カムプレート66が押されて牽制プレート65は支持ブラケット64の縦軸中心に回動するよう構成している。一方前記トラニオンアーム41の作業機変速レバー61に近い側にはストッパ手段としてのストッパボルト68を設け、このストッパボルト68と前記牽制プレート65が干渉することでトラニオンアーム41の回動操作を牽制できる。具体的には、ハンドル38が標準の位置にあって、作業機変速レバー61を中立位置以外の正転又は逆転操作するとカムプレート66の凹部から牽制プレート65の丸棒67が脱して、牽制プレート65を支持ブラケット64の縦軸周りに時計方向に回転し、トラニオンアーム41の逆転側への移行を牽制できる(図5)。
【0036】
なお、トラニオンアーム41は、カムプレート66の凹部に牽制プレート65の丸棒67が嵌合位置する作業機変速中立位置のときのみ後進側への作動が可能な構成となっている(図6(B))。
【0037】
ハンドル38の変速レバー39を略直線状に案内するガイド体70には、中立位置70nを挟んでハンドル基部側(前側)に前進側70f、反対側(後側)に後進側70rのガイド溝71を形成している。なお、前進側には段階状にストッパ部を形成した複数段の規制部を形成して操作性を向上する。
【0038】
前記構成における作用を説明する。
ハンドル38及び作業機変速レバー61を耕耘装置7の上方に位置させた標準状態において、変速レバー39を前進側に操作すると、ワイヤ44が引かれ、トラニオンアーム41を回動しトラニオン軸40を連動する。この標準状態にあっては、トラニオンアーム41を上下切替する切替機構Tは、ボス部41aを下方に押圧する作用力が発生しないため、上位に位置してトラニオンアーム41とリンク機構Sとは係合ピン50による第1係合状態となって、ワイヤ44の引き作動によりトラニオンアーム41を図6(A)のように反時計周りに回動して、機体は矢印SF方向に進む。作業機変速レバー61の把持部を左右に揺動操作して耕耘装置7の変速を正転側(ダウンカット)又は逆転側(アップカット)に入れて作業を行なうものである。
【0039】
また、上記標準状態で変速レバー39を中立位置に戻し、後進側に切替操作しようとすると、作業機変速レバー61が正逆のいずれかに変速状態のときは、トラニオンアーム41のストッパボルト68によりその回動は牽制プレート65によって牽制され変速レバー39中立位置までとなる。さらに後進側に変速しようとするときは、予め作業機変速レバー61を中立位置にして行うことができる。従って、バック耕耘牽制を変速レバー39の操作によって実現でき、牽制操作を簡単化できる。また、牽制手段として、トラニオンアーム41を直接牽制する構成としたから、変速レバー39の操作域に牽制具を出退させる場合に比較して、ワイヤ等の連携手段をなくして牽制具操作連携手段を極めて簡単化できる利点がある。
【0040】
そして、ハンドル38を前後振替の振替変更状態で、かつ作業機変速レバー61を略180度振替えた状態に変更しておき、変速レバー39を前進側に操作すると、ワイヤ44は引かれ、トラニオンアーム41を回動しトラニオン軸40を連動する。この振替変更状態にあっては、トラニオンアーム41を上下切替する切替機構Tはボス部41aを下方に押圧する作用力が働くため、下位に位置変更してトラニオンアーム41とリンク機構Sとは係合ピン52による第2係合状態となって、ワイヤの引き作動によりトラニオンアーム41を図6中時計周りに回動して、機体は矢印CF方向に進む。作業機操作レバー61の把持部を左右に揺動操作して耕耘装置7の変速を逆転側又は正転側に入れて作業を行なう。
【0041】
また、上記振替変更状態で変速レバー39を中立に戻し、後進側に切替操作するときは、作業機変速レバー61の変速位置にかかわらず機体は反矢印CF方向に進む。振替変更状態でオペレータは作業機としての耕耘装置7から離れた位置で操作を行なうこととなるから、例え後進中に耕耘装置7が作動しても危険状態に陥り難くオペレータの意図通りに機体を走行させることができる。
【0042】
以上のように、ハンドルが標準状態、あるいは振替変更状態のいずれにおいても、変速レバー39操作に基づき、機体を前進又は後進させることができ、変速レバー39の操作感覚を同じにすることができ、操作性を向上する。
【0043】
以上の実施例では、トラニオン軸40を縦軸型に構成したが、このトラニオン軸40、トラニオンアーム41、リンク機構等を横向きに配置することもできる。
ワイヤ44によって押し引きされるリンク機構Sの構成は実施例の構成に限らず、操作レバー39に連携する操作具の引き作用でトラニオンアームを正転又は逆転に選択切替できるリンク機構であればよく実施例の構成に限定されない。
【0044】
作業機変速レバー61操作に基づく変速対象として前記の実施例では、正・逆転変速の例としたが、高速・低速の切替としてもよい。また単なる入り・切り操作でもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 機体
4 車軸
14 エンジン
16 圧無段変速装置(HST)
38 ハンドル
39 変速レバー
40 トラニオン軸
41 トラニオンアーム
S リンク機構
T 切替機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体(1)に対し縦軸芯(Z)周りに前後振替固定自在にハンドル(38)を設け、エンジン(14)の駆動力を無段変速して車軸(4)に伝動する静油圧無段変速装置(16)を設け、前記ハンドル(38)に前後方向の操作により機体(1)の前進および後進操作を司る変速レバー(39)を設けると共に、前記静油圧無段変速装置(16)のトラニオン軸(40)を連動するトラニオンアーム(41)を設ける歩行型管理機において、前記変速レバー(39)の操作に連動し付勢手段に抗して回動動作するリンク機構(S)を設け、前記トラニオンアーム(41)とリンク機構(S)とが選択的に係合することにより、前記付勢手段に抗する回動動作でトラニオン軸(40)を正転させる第1係合状態又はこのトラニオン軸(40)を逆転させる第2係合状態に切り替るよう構成し、前記第1係合状態と第2係合状態とは前記ハンドル(38)の前後振替操作によって切替わるよう前記ハンドル(38)とトラニオンアーム(41)又はリンク機構(S)との間に切替機構(T)を構成した歩行型管理機。
【請求項2】
トラニオン軸(40)に嵌合して該トラニオン軸(40)を連動するトラニオンアーム(41)を付勢力に抗してトラニオン軸(40)長手方向に摺動自在に設け、この摺動によって前記第1係合状態と第2係合状態となるように構成した請求項1に記載の歩行型管理機。
【請求項3】
リンク機構(S)は操作レバー(39)にワイヤ(44)で連携されてトラニオン軸(40)と並行に設けた軸芯回りに回動する第1リンク(46)と該第1リンク(46)と一体的に回動する第2リンク(48)と該第2リンク48に対して回動自在に連結する第3リンク(53)とからなり、前記第1係合状態はトラニオンアーム41と第1リンク46とを連結状態とし、前記第2係合状態はトラニオンアーム(41)と第3リンク(53)とを連結状態とすることによって切替選択する構成とした請求項3に記載の歩行型管理機。
【請求項4】
ミッションケース(2)の一側にエンジン(14)の出力軸(21)とミッションケース(2)への入力軸(22)とを連動するベルト伝動機構を設け、他側に静油圧無段変速装置(HST)(16)を配置してなる請求項1〜3に記載の歩行型管理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−254157(P2010−254157A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107200(P2009−107200)
【出願日】平成21年4月25日(2009.4.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】