説明

歯牙用美白機能性物質伝達システム

本発明は歯牙用美白機能性物質伝達システムに係り、さらに詳しくは、粘着性を有する高分子、歯牙美白活性物質、歯牙美白活性物質の透過促進物質、疎水性界面活性剤、安定化剤、酸化防止剤、知覚過敏予防剤、ピロホスファート類及びSiOを含む歯牙美白用組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯牙用美白機能性物質伝達システムに係り、さらに詳しくは、粘着性を有する高分子、歯牙美白活性物質、歯牙美白活性物質の透過促進物質、疎水性界面活性剤、安定化剤、酸化防止剤、知覚過敏予防剤、ピロホスファート類及びSiOを含む歯牙美白用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯牙は、内部の象牙質層と歯牙の保護壁となる外部のエナメル質層とから構成されている。歯牙のエナメル質層の色は、そもそも不透明白色または淡い黄色である。前記エナメル質は自然に空間や穴があり、ここに着色物質や変色剤が浸透して歯牙を変色させる。
【0003】
個人が毎日のように接触する多くの物質が歯牙を着色させたり歯牙の美白を減少させたりする。特に、食べ物及びタバコなどは歯牙のエナメル質層に蓄積されて歯牙に薄い膜を形成し、これらの着色変質物質がエナメル質層を通過することがある。このような現象が長期間に亘って繰り返し発生することにより、個人歯牙のエナメル質を大幅に変色させる恐れがある。また、疾病や環境的な要因が歯牙の変色に影響する場合もある。もちろん、変色された歯牙も健康上の問題を発生しないこともあるが、透明な白色の歯牙に対する欲求が高まり続く傾向にある。
【0004】
現在使用されている歯牙美白剤のうち、フッ素含有歯磨きは、食べ物かすやニコチン、コーヒー及び紅茶などが歯牙表面に吸着したり、歯面上の歯石または沈殿物などが色素成分により着色されることにより発生された歯牙の染みを化学的に除去するものであり、口腔内に爽やかな感じを与えたり口臭を減らすなどの用途に一般的に使用されている。しかしながら、歯磨きを用いてブラッシングすることにより歯牙美白効果を達成することは困難である。
【0005】
この理由から、歯科医者による専門的な歯牙美白プログラムである診療室内美白処理と診療室外美白処理方法が提供されている。診療室内処理は、通常、過酸化水素である美白薬品が口腔軟組織と接触することを防止するために口腔内に特別に嵌め込まれるゴム材料を製造することから始まる。
【0006】
診療室外美白プログラムは、患者が長期間、通常数週に亘って1日につき数時間ずつ低強度の美白薬品を用いて患者の歯牙に美白剤を接触させるという点で相違点がある。診療室外プログラムにおいては、通常、特定の患者に特定の器具を歯科診療所において初期に嵌め込む必要がある。前記器具は、患者の歯牙にぴったり嵌め込まれるように製造されて患者の歯牙に美白ゲルを行き渡らせる装置である。しかしながら、これらの方法は高コストがかかるだけではなく、日常生活を営む上で難点があった。
【0007】
上記の問題を解消するために、歯牙美白用液状ポリマー組成物が提案されている(例えば、下記の特許文献1参照)。この液状ポリマー組成物は、歯牙に適用前には液状であり、歯牙に適用後に固形フィルム状に変わるようなシステムを用いてゲル状製品の欠点を改善しようとするものであり、歯牙に適用後にフィルムが生成される所定の時間中にベタツキがあり、有機溶媒を使用するため人体に有害であるという欠点がある。
【0008】
また、曲げ剛性の低いストリップ材質を用いて美白物質を歯牙に行き渡らせるシステムが提案されている(例えば、下記の特許文献2参照)。同文献に記載の技術を用いた歯牙美白物質伝達システムは、日常生活が容易であるとはいえ、ストリップ材質、すなわち、防水性ストリップ材質は歯牙に適用してから所定の時間が経過後に引き剥がさなければならないという不都合があり、曲げ剛性の調節による歯牙の付着時における便利さはあるが、防水性フィルムそのものの異物感が存在し、且つ、既存の美白ゲルをフィルムに塗布したものに過ぎないため、美白ゲルが手についたりベタツキが激しくて美白活性物質の伝達が容易ではないという欠点がある。
【0009】
このため、当業界においては、既存の美白剤の使用感をそのまま維持しながらも、歯牙美白透過率が高く、しかも、歯牙を美白させるのに十分な時間中に侵食されないことから、美白効果を長期に亘って維持可能な歯牙美白用組成物の開発が望まれている。
【0010】
そこで、本発明者らは、従来の歯牙美白剤に比べて歯牙表面透過率及び美白効果に優れた歯牙美白組成物を開発するために鋭意努力した結果、粘着性を有する高分子、歯牙美白活性物質、歯牙美白活性物質の透過促進物質、疎水性界面活性剤、安定化剤、ピロホスファート類及びSiOを含む歯牙美白用組成物が既存の美白剤の使用感はそのまま維持しつつも美白効果が迅速に発現されて長期的に維持されるということを確認し、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許5,425,953号明細書
【特許文献2】米国特許5,891,453号明細書
【発明の詳細な説明】
【0012】
要するに、本発明の目的は、歯牙表面透過率及び美白効果に優れ、しかも、美白効果が迅速に発現されて長期的に維持される歯牙美白用組成物を提供することにある。
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は、粘着性を有する高分子、歯牙美白活性物質、歯牙美白活性物質の透過促進物質、疎水性界面活性剤、安定化剤、酸化防止剤、知覚過敏予防剤、ピロホスファート類及びSiOを含む歯牙美白用組成物を提供する。
【0014】
本発明の他の特徴及び実施態様は、下記の詳細な説明及び特許請求の範囲から一層明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による歯牙美白剤の界面活性剤の種類による過酸化水素放出量を分析した結果を示すグラフである。
【図2】歯牙美白透過促進物質の含量による失活歯の色相変化を示す写真であり、歯牙美白透過促進物質を含有しないゲル処理群の場合を示す。
【図3】歯牙美白透過促進物質の含量による失活歯の色相変化を示す写真であり、歯牙美白透過促進物質0.5%含有ゲル処理群の場合を示す。
【図4】歯牙美白透過促進物質の含量による失活歯の色相変化を示す写真であり、歯牙美白透過促進物質1%含有ゲル処理群の場合を示す。
【図5】歯牙美白透過促進物質の含量による失活歯の色相変化を示す写真であり、歯牙美白透過促進物質2%含有ゲル処理群の場合を示す。
【図6】歯牙美白透過促進物質の含量による失活歯の色相変化を示す写真であり、歯牙美白透過促進物質5%含有ゲル処理群の場合を示す。
【図7】歯牙用美白機能性物質伝達システムに含まれている歯牙美白透過促進物質の含量差による歯牙の色相変化の度合いを数値化したグラフである。
【図8】歯牙美白透過促進物質とSiO含量による失活歯の色相変化を示す写真であり、歯牙美白透過促進物質とSiOを含有しないゲル処理群の場合を示す。
【図9】歯牙美白透過促進物質とSiO含量による失活歯の色相変化を示す写真であり、歯牙美白透過促進物質0.5%及びSiO0.5%含有ゲル処理群の場合を示す。
【図10】歯牙美白透過促進物質とSiO含量による失活歯の色相変化を示す写真であり、歯牙美白透過促進物質0.8%及びSiO0.8%含有ゲル処理群の場合を示す。
【図11】歯牙美白透過促進物質とSiO含量による失活歯の色相変化を示す写真であり、SiO0.5%含有ゲル処理群の場合を示す。
【図12】歯牙美白透過促進物質とSiO含量による失活歯の色相変化を示す写真であり、SiO0.8%含有ゲル処理群の場合を示す。
【図13】歯牙美白透過促進物質とSiOの含量による歯牙の色相変化を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、粘着性を有する高分子、歯牙美白活性物質、歯牙美白活性物質の透過促進物質、疎水性界面活性剤、安定化剤、酸化防止剤、知覚過敏予防剤、ピロホスファート類及びSiOを含む、歯牙表面透過率及び美白効果に優れて美白効果が迅速に発現されて長期的に維持される歯牙美白用組成物に関する。
【0017】
本発明において、前記粘着性を有する高分子は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸誘導体としてのカルボマー、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸の共重合体及びポリエチレンオキシドよりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であることが好ましい。
【0018】
前記粘着性を示す高分子は本発明による歯牙美白用組成物において歯牙粘着性を有する役割を果たし、水和時に歯牙全体組成物100重量部に対して、5〜80重量部であることが好ましく、5〜60重量部であることがさらに好ましい。その含量が5重量部未満であれば、美白成分層の粘度が低すぎて美白成分層が流下してしまう結果、施術時に適用し難いという問題があり、80重量部を超えると粘度が高すぎて作業が困難になる。
【0019】
前記水和時に歯牙粘着性を示す高分子としては、重量平均分子量が100,000〜4,000,000であるポリエチレンオキシドを使用することが好ましく、100,000〜2,000,000であるものを使用することがさらに好ましい。ポリエチレンオキシドの分子量が1,000,000未満であれば、通常の使用量では塗布に適した粘度に達し難く、4,000,000を超えると、低濃度でも粘度が高くて適用が困難である。
【0020】
本発明において、前記歯牙美白活性物質は、過酸化物、亜塩素酸金属、過ホウ酸塩、過炭酸塩及び過酸化酸よりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であることが好ましい。前記過酸化物は過酸化水素、過酸化カルシウム及び過酸化カルバミドよりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であることを特徴とし、前記亜塩素酸金属は、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸バリウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸リチウム、亜塩素酸ナトリウム及び亜塩素酸カリウムよりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であることが好ましい。
【0021】
前記歯牙美白活性物質は、全体の組成物100重量部に対して、0.1〜50重量部であることが好ましく、0.5〜30重量部であることがさらに好ましい。その含量が0.1重量部未満であれば、所望の美白効果が得られず、50重量部を超えると、歯牙表面の腐食、口腔粘膜損傷などの安全性に問題が発生する。
【0022】
本発明において、前記歯牙美白活性物質の透過促進物質は、アルギニンの含有量が80%以上のペプチドであることを特徴とし、前記アルギニンの含有量が80%以上のペプチドはTAT、ペネトラチン、ポリリジン、ポリアルギニン及びプロタミンのフラグメントよりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であることが好ましい。前記歯牙美白活性物質の透過促進物質であるアルギニンの含有量が80%以上のペプチドは、全体の組成物100重量部に対して、0.1〜50重量部含有することが好ましく、0.5〜20重量部含有することがさらに好ましい。その含量が0.1重量部未満であれば、所望の透過効果が得られず、50重量部を超えるとむしろ透過を妨げて粘膜を刺激する危険性があるなど安定性に問題がある。
【0023】
本発明において、前記疎水性界面活性剤は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリエチルシトレート、ポリソルベート及びスパンよりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であることが好ましい。前記疎水性界面活性剤は歯牙美白用組成物の高分子の曲げ剛性を高めるために使用され、全体の組成物100重量部に対して5.0〜50重量部を含有することが好ましい。その含量が5.0重量部未満であれば、柔軟性が低下して使用時に異物感を与え、50重量部を超えると製造された美白剤の安定性が低下してしまうという不都合がある。
【0024】
本発明において、前記安定化剤はエチレンジアミンテトラ酢酸とその塩、スズ酸ナトリウム及びスズ酸カリウムよりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上のキレート化剤またはブチル化ヒドロキシトルエン、ノルジヒドログアヤレト酸、プロピルガレート、トリヒドロキシブチロフェノン及びブチル化ヒドロキシアニソールよりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上の酸化防止剤であることが好ましい。
【0025】
前記安定化剤は歯牙美白活性物質の安定性を高めるために使用され、全体の組成物100重量部に対して、0.01〜5.0重量部含有することが好ましい。
【0026】
本発明において、前記ピロホスファート類は、Na、K、Na及びKよりなる群から選ばれることを特徴とする。
【0027】
前記ピロホスファート類は、タール除去効果と金属物質のキレート効果を併せ持つものであり、本発明の歯牙美白物質伝達システムにおいて歯石防止のために使用され、全体の組成物100重量部に対して、1.0〜10.0重量部含有することが好ましい。
【0028】
また、前記SiOは歯牙に付着した歯垢、歯石などを除去し、歯牙面に本来の艶を与える作用をして研磨剤として多用される物質であり、ナノ粒子を使用することにより美白増進効果を得ることができる。前記SiOの含量は全体の組成物100重量部に対して、0.1〜2.0重量部であることが好ましく、0.3〜1.0重量部であることがさらに好ましい。その含量が0.1重量部未満であれば、その効果が低下し、2.0重量部を超えると添加量対比効果が顕著に低下してしまう。
【0029】
本発明による組成物には、上記の成分の他に、pH調節剤、甘味剤、香料、知覚過敏予防剤などの歯牙美白物質伝達システムに使用される通常の添加剤をさらに添加することができる。
【0030】
本発明において、前記pH調節剤は、第2リン酸ナトリウム、第3リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、クエン酸、クエン酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムよりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であることを特徴とする。前記pH調節剤は、本発明による歯牙美白用組成物の長期保管安定性のためにpHを4.0〜11.0に調節する役割を果たす。
【0031】
前記甘味剤は、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ステビオシド及びサッカリンよりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であることを特徴とし、前記香料は、メントール、ペパーミント油、L−メントール及び桂皮酸よりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であることを特徴とし、前記知覚過敏予防剤は、硝酸カリウム、フルオロ化スズ(SnF)、モノフルオロリン酸ナトリウム(MFP)、塩化フッ素(NaF)、珪フッ化ソーダ(NaSiF)及び水酸化カルシウム(Ca(OH))よりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であることを特徴とする。
【0032】
また、前記成分を溶解させるための溶媒として、エタノール、水及びこれらの混合液(9:1〜6:4%(v/v))を使用することができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例により詳述する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないことは当業界において通常の知識を持った者にとって自明である。
【0034】
《実施例1:歯牙美白用組成物製造》
1−1:歯牙粘着性高分子の選択と歯牙美白活性物質の添加
粘着性を有する高分子であるカルボマー高分子(カルボマー934、カルボマー504、カルボマー505、カルボマー501、カルボマー940及びカルボマー941)(SIMITOMO SEIKA, Japan)(Noveon, USA)0.4gを1N NaOH4mLにそれぞれ溶解させた後、24時間放置し、安定化剤としてのグリセリン3mLと疎水性界面活性剤としてのスパン80(Sigma chemical, USA)を0.1mLを添加した。
【0035】
歯牙美白活性物質としては、過酸化カルバミドを総重量の8.05%添加して美白剤ゲルを作成した。前記ゲルに知覚過敏防止効果のある硝酸カリウム0.1g及びpH調節目的と美白効果のためのクエン酸ナトリウムを添加した。そして、不安定な過酸化水素の分解を防止するために安定化剤としてスズ酸ナトリウムと酸性ピロリン酸ナトリウムを添加した。そして、酸化防止剤としてエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)を0.1g添加し、酸化防止効果と美白効果を発現する過ホウ酸ナトリウムを0.1g添加した。ここに香料としてのL−メントール(TIEN YUAN CHEMICAL, singapore)を総重量の0.1%添加した後、万遍なく混合して基本美白剤ゲルを製造した。
【0036】
1−2:歯牙美白活性物質の透過促進物質の添加
前記1−1に従い製造された組成物に、歯牙美白活性物質の歯牙表面透過率を顕著に増大可能な歯牙美白活性物質伝達促進物として、アルギニンの含有量が80%以上の歯牙美白透過促進物質であるペプチドを全体の美白剤ゲル重量の0.5%、1%、2%、及び5%の量で添加した。
【0037】
1−3:SiO添加
前記1−2に従い製造された組成物に、歯牙に付着した歯垢、歯石などを除去し、歯牙面に本来の艶を与える作用をして研磨剤として使用される10nmのサイズのSiOを添加して、本発明の歯牙美白用組成物を製造した。
【0038】
《実施例2:歯牙美白剤に適した界面活性剤の選択》
水界との接触を回避し、且つ、口腔内においてゲルが唾により侵食されることを保護して美白効果を長期的に維持するために、疎水性界面活性剤を美白剤ゲルに添加した。
【0039】
粘着性を有する高分子であるカルボマー高分子カルボマー940を0.4gずつ用い、実施例1の方法と同様にして、疎水性界面活性剤を除く残りの成分は同様に添加して美白剤ゲルを作成した。ここに種々の疎水性界面活性剤ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、プロピレングリコール及びスパン80をそれぞれ添加して美白剤ゲルを作成し、それらのゲルを用いて過酸化水素放出量テストを行った。
【0040】
すなわち、前記それぞれのサンプルをガラスバイアルに2mLずつ入れ、ここに1mLの蒸留水を添加し、次いで、1時間後に前記ガラスバイアルに0.5mLの蒸留水をさらに添加し且つ混合した後、0.5mLを新たなチューブにそれぞれ移した。過酸化水素放出量テストのための検量線を得るために、900μMHを段階別に希釈して0μM、150μM、300μM、450μM、600μM及び900μMの濃度にて標準溶液を作成した。
【0041】
そして、2.5M硝酸カリウム100μL及び10mM硫酸第一鉄アンモニウム200μLを添加した。このとき、溶液の色相が無色から赤色に変わるが、このとき、標準溶液と各サンプルから200μLを取って96ウェルに入れた後、吸光度を467nmにおいて測定した。上記の方法と同様にして3時間、5時間、7時間及び1日においても測定した(図1)。図1は、本発明により製造された美白剤ゲルの過酸化水素放出量テスト結果を示すものであり、スパン80を入れた美白剤ゲルの過酸化水素放出量が最も多いことが分かる。
【0042】
《実施例3:歯牙美白活性物質の透過促進物質添加量による失活歯テスト》
歯牙美白活性物質の透過促進物質の効果を調べるために、実施例1−1に従い製造された基本美白剤ゲルに歯牙美白透過促進物質を全体の美白剤ゲル重量の0.5%、1%、2%及び5%になるように添加した。
【0043】
実験に使用された失活歯は、ソウル大学歯科病院から、治療過程中に抜歯されてそれ以上使用できない歯牙を供給されて使用した。失活歯は、洗浄のためにビーカーに入れて蒸留水を満たし、超音波破砕機により5回洗浄した後、乾燥させて使用した。
【0044】
歯牙美白活性物質の透過促進物質の効果を調べるために、歯牙美白透過促進物質を全体の美白剤ゲル重量の0.5%、1%、2%及び5%になるように添加してゲルを製造した。
【0045】
それぞれのゲルを2mLずつそれぞれのウェルに取り、ここに歯牙のエナメル部分を浸した後、それぞれNT、30分、1時間及び2時間かけて実験を行った。歯牙のシェード変化の度合いは、VITAPAN 3D-MASTER Shade Guide(VITA Zahnfabrik H.Rauter GmbH & Co. KG, Germany)を用いた実験により測定した。
【0046】
図2から図6は、歯牙美白透過促進物質の含量による失活歯の色相変化を示す写真である(図2:歯牙美白透過促進物質無添加ゲルで処理した群、図3:歯牙美白透過促進物質0.5%含有ゲルで処理した群、図4:歯牙美白透過促進物質1%含有ゲルで処理した群、図5:歯牙美白透過促進物質2%含有ゲルで処理した群、図6:歯牙美白透過促進物質5%含有ゲルで処理した群)。そして、図7は、歯牙美白透過促進物質の含量による歯牙色相変化を示すグラフである。
【0047】
その結果、図2から図6及び図7に示すように、歯牙美白透過促進物質を0.5%入れたゲルで処理した群が最も優れた効果を示すことが分かる。
【0048】
《実施例4:SiO添加量による失活歯テスト》
歯牙に付着した歯垢、歯石などを除去し、歯牙面に本来の艶を与える作用をして研磨剤として多用されるSiOの美白増進効果を測定するために、実施例1−1に従い製造された基本美白剤ゲルに歯牙美白透過促進物質をそれぞれ0.5%及び0.8%添加し、これと同量の10nmナノ粒子SiOを添加して美白剤ゲルを作成した。そして、歯牙美白透過促進物質とSiOを両方とも含まないゲルと、SiO0.5%及びSiO0.8%を含む美白剤ゲルを作成した後、各ゲルを用いて失活歯にテストを行った。失活歯は、実施例3と同様に、きれいに洗浄して乾燥した後に実験に使用した。
【0049】
図8から図12は、歯牙美白透過促進物質とSiO含量による失活歯の色相変化を示す写真である(図8:歯牙美白透過促進物質及びSiO無添加ゲルで処理した群、図9:歯牙美白透過促進物質0.5%及びSiO0.5%含有ゲルで処理した群、図10:歯牙美白透過促進物質0.8%及びSiO0.8%含有ゲルで処理した群、図11:SiO0.5%含有ゲルで処理した群、図12:SiO0.8%含有ゲルで処理した群)。なお、図13は、歯牙美白透過促進物質とSiOの含量による歯牙の色相変化を示すグラフである。
【0050】
その結果、図8から図12及び図13に示すように、歯牙美白透過促進物質0.5%とSiO0.5%を含むゲルで処理した群が最も優れた効果を示すことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上、詳述したように、本発明によれば、従来の歯牙美白剤に比べて美白成分の透過率が増加し、しかも、美白効果に優れた歯牙美白用組成物を提供する効果が奏される。本発明による歯牙美白用組成物は、既存の美白剤の使用感はそのま維持しながらも、美白効果が迅速に発現されて長期的に維持されるというメリットがある。
【0052】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳述したが、当業界における通常の知識を持った者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施態様に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることはないという点は明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は特許請求の範囲とこれらの等価物により定義されると言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着性高分子、歯牙美白活性物質、歯牙美白活性物質の透過促進物質、疎水性界面活性剤、安定化剤、酸化防止剤、知覚過敏予防剤、ピロホスファート類及びSiOを含む、歯牙美白用組成物。
【請求項2】
前記粘着性を有する高分子は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸誘導体としてのカルボマー、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸の共重合体及びポリエチレンオキシドよりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の歯牙美白用組成物。
【請求項3】
前記粘着性を有する高分子は、重量平均分子量が100,000〜4,000,000であるポリエチレンオキシドであることを特徴とする請求項1に記載の歯牙美白用組成物。
【請求項4】
前記歯牙美白活性物質は、過酸化物、亜塩素酸金属、過ホウ酸塩、過炭酸塩及び過酸化酸よりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の歯牙美白用組成物。
【請求項5】
前記過酸化物は過酸化水素、過酸化カルシウム及び過酸化カルバミドよりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であることを特徴とする請求項4に記載の歯牙美白用組成物。
【請求項6】
前記亜塩素酸金属は、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸バリウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸リチウム、亜塩素酸ナトリウム及び亜塩素酸カリウムよりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であることを特徴とする請求項4に記載の歯牙美白用組成物。
【請求項7】
前記歯牙美白活性物質の透過促進物質は、アルギニンの含有量が80%以上のペプチドであることを特徴とする請求項1に記載の歯牙美白用組成物。
【請求項8】
前記アルギニンの含有量が80%以上のペプチドはTAT、ペネトラチン、ポリリジン、ポリアルギニン及びプロタミンのフラグメントよりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であることを特徴とする請求項7に記載の歯牙美白用組成物。
【請求項9】
前記疎水性界面活性剤は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリエチルシトレート、ポリソルベート及びスパンよりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の歯牙美白用組成物。
【請求項10】
前記安定化剤はエチレンジアミンテトラ酢酸とその塩、スズ酸ナトリウム及びスズ酸カリウムよりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上のキレート化剤またはブチル化ヒドロキシトルエン、ノルジヒドログアヤレト酸、プロピルガレート、トリヒドロキシブチロフェノン及びブチル化ヒドロキシアニソールよりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上の酸化防止剤であることを特徴とする請求項1に記載の歯牙美白用組成物。
【請求項11】
前記ピロホスファート類は、Na、K、Na及びKよりなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の歯牙美白用組成物。
【請求項12】
全体組成物100重量部に対して、粘着性を有する高分子5〜80重量部、歯牙美白活性物質0.1〜50重量部、歯牙美白活性物質の透過促進物質0.1〜50重量部、疎水性界面活性剤5.0〜50重量部、安定化剤0.01〜5.0重量部、ピロホスファート類1.0〜10.0重量部及びSiO0.1〜2.0重量部であることを特徴とする請求項1に記載の歯牙美白用組成物。
【請求項13】
pH調節剤、甘味剤、香料及び知覚過敏予防剤よりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の歯牙美白用組成物。
【請求項14】
前記pH調節剤は、第2リン酸ナトリウム、第3リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、クエン酸、クエン酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムよりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であることを特徴とする請求項13に記載の歯牙美白用組成物。
【請求項15】
前記歯牙美白用組成物のpHは4.0〜11.0であることを特徴とする請求項13に記載の歯牙美白用組成物。
【請求項16】
前記甘味剤は、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ステビオシド及びサッカリンよりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であることを特徴とする請求項13に記載の歯牙美白用組成物。
【請求項17】
前記香料は、メントール、ペパーミント油、L−メントール及び桂皮酸よりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であることを特徴とする請求項13に記載の歯牙美白用組成物。
【請求項18】
前記知覚過敏予防剤は、硝酸カリウム、フルオロ化スズ(SnF)、モノフルオロリン酸ナトリウム(MFP)、塩化フッ素(NaF)、珪フッ化ソーダ(NaSiF)及び水酸化カルシウム(Ca(OH))よりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であることを特徴とする請求項13に記載の歯牙美白用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2010−511697(P2010−511697A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540171(P2009−540171)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【国際出願番号】PCT/KR2007/006369
【国際公開番号】WO2008/069622
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(505326520)ソウル ナショナル ユニバーシティ インダストリー ファウンデーション (10)
【出願人】(507370493)ナノ インテリジェント バイオメディカル エンジニアリング コーポレーション カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】