説明

歯科用画像処理システム

【課題】輪郭の抽出等で困難となる口腔内画像から歯の形状等を正確に検出する。
【解決手段】光点を検出する光点検出手段、光点を4連結または8連結によってひとまとまりの固まりとして、各固まりと、光点の固まりでない部分に識別するためのラベルづけをしておき、そのラベルに基づいて各光点の連結されたかたまりの面積を計算し、その面積を所定の閾値と比較して、閾値より小さいものは雑音光点と判断することにより雑音の光点を判定する手段、雑音の光点と判定された固まりについては、その周囲の固まりのラベルと置き換えることによって雑音光点を除去する手段を備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用画像処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラの光分解能化、小型により、口腔内などの限られた空間を鮮明に撮影することができるようになり、口腔内画像は、インフォームドコンセント等で利用されたり、患者情報として電子カルテへ記録使用されるなど、歯科医業における利用はますます盛んとなっている。
【0003】
特開2008-228818では、コンピュータによる口腔内の画像処理が提案され、各画素の色情報に基づく特徴量を歯牙画像のデータとして取得することがしめされている。
【0004】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−228818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
口腔内は、唾液の影響や、狭く深い空間であるため、撮影する際の照明光等による乱反射や、強い光の点が散在する状態となり、エッジ検出の際、写り込みによる光の点が雑音となって誤認識を生じさせたり、歯肉が薄かったり歯の汚れがあったりして色の判定においても困難性があった。

【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑み本発明は、撮影した口腔内画像を入力する画像入力手段、前記画像入力手段で入力された画像から、
(1)光点を検出する光点検出手段、光点を4連結または8連結によってひとまとまりの固まりとして、各固まりと、光点の固まりでない部分に識別するためのラベルづけをしておき、そのラベルに基づいて各光点の連結されたかたまりの面積を計算し、その面積を所定の閾値と比較して、閾値より小さいものは雑音光点と判断することにより雑音の光点を判定する手段、雑音の光点と判定された固まりについては、その周囲の固まりのラベルと置き換えることによって雑音光点を除去する手段、雑音光点を除去した情報を利用し、歯肉と歯の境界検出において、光点の影響による誤検出を除去し、歯肉、歯の正確な認識を可能とする。
【0008】
(2)検出する光点検出手段、光点を膨張フィルタによって光点の部分をある程度の固まりにし、その固まりの周囲のある一定の範囲色の平均値を算出し、膨張させた光点の固まりの領域の色を算出した平均の色で置き換えることにより、光点雑音を除去する手段、雑音光点を除去した情報を利用し、色情報を利用した歯肉と歯の境界検出において、光点の影響による誤検出を除去し、歯肉、歯の正確な認識を可能とする。
【0009】
さらに本発明は、撮影した口腔内画像を入力する画像入力手段、前記画像入力手段で入力された画像から、歯肉に対応し、色情報がある閾値以上か以下かによって歯と歯肉の境界値を検出する第1境界部検出手段、前記画像入力手段で入力された画像から、第1境界部検出手段と異なる色情報の判定方法を用い、色情報がある閾値以上か以下かによって境界を検出する第2境界部検出手段、第1境界部検出手段で得られた境界値と第2境界部検出手段で得られた境界値の一致度を演算によって算出し、より一致している割合が高くなるように、第1境界部検出手段の閾値、第2境界部検出手段の閾値を決定し、第1境界部検出手段、第2境界部検出手段には上の(1)または(2)の光点雑音除去を前処理としてほどこすことによって歯の汚れや歯肉が薄く認識が困難な歯肉と歯の臨界を検出可能とした。
本発明における色情報とは、例えば元の画像の各ドットのR、G、B情報のいずれかを用いる場合や、元の画像の各ドットのR、G、B情報からHLSまたはHSV色空間に変換し、H、L、Sのいずれかの情報、あるいは、それらを組み合わせた情報、H、S、Vのいずれかの情報、あるいは、それらを組み合わせた情報などが利用できる。
これに限らず、他の色空間、LabやXYZ、CMYKなどでも利用可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、撮影によって生じる光点の中で画像処理上で誤認識となる光点を検出して前処理として光点の影響を除去してから歯と歯肉の境界を検出することによって、薄い歯肉や、汚れによって、検出が困難な歯肉と歯の境界を正確に検出できることで、口腔内画像における口腔内認識の精度を向上させることを可能とする。

【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明の実施例を示す図である。
【図2】図2は本発明の実施例を示す図である。
【図3】図1の動作を説明する図である。
【図4】図2の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、唾液や、狭い口腔内空間によって生じる撮影時の照明光の乱反射によって生じる、局所的高い輝度値、色がより白色に近い範囲を雑音的光点を除去すべく、光点を検出する光点検出手段、光点を4連結または8連結によってひとまとまりの固まりとして、各固まりと、光点の固まりでない部分に識別するためのラベルづけをしておき、そのラベルに基づいて各光点の連結されたかたまりの面積を計算し、その面積を所定の閾値と比較して、閾値より小さいものは雑音光点と判断することにより雑音の光点を判定する手段、雑音の光点と判定された固まりについては、その周囲の固まりのラベルと置き換えることによって雑音光点を除去する手段を備える。
他の雑音光点を除去する手段として、検出する光点検出手段、光点を膨張フィルタによって光点の部分をある程度の固まりにし、その固まりの周囲のある一定の範囲色の平均値を算出し、膨張させた光点の固まりの領域の色を算出した平均の色で置き換えることにより、光点雑音を除去する手段を備えてなる。
【0013】
更に本発明は、撮影した口腔内画像を入力する画像入力手段、前記画像入力手段で入力された画像から、歯肉に対応し、色情報がある閾値以上か以下かによって歯と歯肉の境界値を検出する第1境界部検出手段、前記画像入力手段で入力された画像から、第1境界部検出手段と異なる色情報の判定方法を用い、色情報がある閾値以上か以下かによって境界を検出する第2境界部検出手段、第1境界部検出手段で得られた境界値と第2境界部検出手段で得られた境界値の一致度を演算によって算出し、より一致している割合が高くなるように、第1境界部検出手段の閾値、第2境界部検出手段の閾値を決定する手段を備えている。
【0014】
そして本発明は、上記雑音点除去手段と、歯と歯肉の境界部検出手段を組み合わせることで、より正確な歯と歯肉の境界部分を備えた画像の形成を可能とする。
以上の2つの発明は各構成をゲートアレイ等の電子回路で形成しても良いが、コンピュータソフトウエアにより実行されるものであってもよく、例えば、口腔内データの鮮明化でよるインフォームドコンセント用画像としての利用、歯、歯肉の自動認識による口腔内自動診断装置としての利用に供される。
【実施例1】
【0015】
以下本発明の実施例を図1(a)を参照して詳細に説明する。
図1において、101は、画像入力手段であり、デジタルカメラで撮影されたデジタル画像、イメージスキャナで取り込まれたデジタル画像等、様々な光学的認識可能な機器から得られた画像をデジタル処理可能な状態で入力する手段である。
102は、光点検出手段であって、デジタルデータ値から、輝度値、色情報等を検出して、所定の輝度値、色情報である場合この部分を範囲として検出する手段である。
103は、光点範囲設定手段であり、画素ごとに輝度値が高いもの等を光る点として検出して、その範囲を設定する手段である。またその4近傍、8近傍を同じ光点の画素値で連結して設定するものであってもよい。
104は、ラベル付加手段であり、前記光点範囲設定手段103で設定された光点範囲に対して、それぞれ個々に異なる値のラベルを付加する手段である。
また、更にこの背景であって、好ましくは、歯と歯肉のそれぞれに異なるラベルを付加する手段である。ラベルは、光点の色情報とそれに対応する識別符号が一連携した状態となっている。
105は、比較手段であり、前記光点範囲設定手段103で設定した個々の光点範囲の面積を測定し、所定値以下を雑音光点として判定し出力する手段である。
106は、置換手段であり、前記比較手段105で、雑音光点として判断された部位をその周囲の背景に付したラベルに対応する色で置き換える手段である。
【0016】
次に図1でしめす動作を図3を参照して説明する。
画像入力手段101で入力された歯32および歯肉31のデジタル画像はそれぞれの画素、一定間隔の画素、または、単位集団化された画素ごとの輝度値、色が検出された後、光点検出手段102に入力され、輝度値、色に基づいて、光点33が検出される。
光点範囲設定手段103は、4近傍、8近傍を同じ光点の画素値で連結して固まりを形成する(34)(35)。次にラベル付加手段104によって、それぞれの光点の固まりごとに識別符号を付加していく(図3(C)のr1からr8)、さらに背景も、異なる色情報ごとにラベルra,rbを付加する。次にそれぞれの光点の固まりの面積を算出し、所定の閾値よりも小さい場合(34)を雑音光点として検出し、置換手段106でこれをその周辺の背景のラベルに対応する色情報に置き換える。この置き換えにより雑音光点は削除される。
【0017】
他の実施例を図1(b)に示し説明する。
図1(b)において図1(a)と同じ構成となる部分は、説明を省略する。
107は、光点範囲拡張手段であり、膨張フィルタ等で形成され、前記光点検出手段で得られた光点範囲を面積的に均等または、一方向に拡張して、拡張光点を形成する手段である。さらに拡張光点同士が重なった場合は、重なり合った光点の全体を輪郭とした拡張光点を形成する手段である。ここで重なるとは、光点輪郭が接触するか、接触せず、距離がより接近した状態も含まれる場合もある。画素ごとに光る点を検出し、その周囲に対し、4近傍、8近傍を同じ光点の画素値で連結して拡張するものであってもよい。
108は、周囲色情報検出手段であり、前記拡張された光点範囲の周囲の色情報を検出する為の手段である。
【0018】
109は、置換手段であり、前記周囲の色情報を、例えば光点範囲拡張手段でえられた拡張光点範囲が、雑音光点など消去されるべきものである場合は、前記周囲色情報検出手段108で得られた色情報に置き換えて除去する手段である。図3(d)にその状態を示した。35は、拡張光点であり、36が周囲の色情報検出部位を示す。図3は、曲線で、光点範囲が記載されているが、実際は、方形状の画素が集まった状態を示す。
図1(b)でしめした実施例は、図1(a)で示した背景の色情報により置き換える
手段を周囲の色情報で置き換えたものある。また、光点検出手段102で光点が検出されたあと、光点範囲拡張手段107で、それぞれの範囲を一定づつ拡張していき、隣接する位置に光点がない状態を設定する。拡張された状態とすることで、光点が隣接しなくなり、周囲の色情報36を検出して、この色情報を光点範囲35に置換適用して、光点範囲を削除する。
図1で示す実施例は、ブロック図で示し、装置構成でも実現可能であるが、好ましくはコンピュータによるソフトウエアによって実現されてもよい。
【0019】
次に他の実施例として、図2を示し詳細に説明する。
図2において、201は、画像入力手段であり、101と同様の構成をとるものであって、デジタル画像をデジタル処理可能に入力する為の手段である。
202は、第1境界部検出手段であって、歯肉と歯の境界であって、歯肉が備える色であって、歯か歯肉かの検出が困難な臨界色閾値を設定し、その臨界色閾値と、個々の画素データを比較し、一致、略一致した部分を連結していき臨界輪郭データとして出力する手段である。
203は、第2境界部検出手段であって、例えば歯肉色彩データに対応する輝度値等、その他所定の調整閾値を設定してこの閾値に一致、略一致した部位を検出していきこれを連結して、調整用の境界データを形成する手段である。
【0020】
204は、差分値検出手段であり、前記臨界輪郭データと前記演算調整用境界データの差分をとり、差分境界データとして、出力する為のものである。
205は、比較検出手段であり、差分境界データが所定値以下である場合は、これを境界値として設定し、もし所定の値、または範囲よりも大きい場合は、閾値設定手段206、207に閾値の値を変更する信号を出力する。
207は、臨界色閾値を変更調整する閾値設置手段であり、208は、調整閾値を変更調整する閾値設定手段である。
【0021】
次に図2の動作を図4を参照して詳細に説明する。
画像入力手段201で入力された歯肉および歯のデジタル画像は、第1境界部検出手段202において、歯肉の臨界色閾値に基づいて、図4(a)で示すように歯40と歯肉の臨界境界データ41を形成する。42は、実際の歯と歯肉の境界データを示す。
さらに第2境界部検出手段203は、画像入力手段201から入力されたデータに対し、所定の調整閾値に基づいて図4(b)で示すように調整用境界データ43を検出する。
【0022】
第2境界部検出手段203で形成された調整用境界データと第1境界部検出手段202で形成された臨界境界データは差分値検出手段204入力され、差分値データが形成され、比較検出手段205に入力される。
比較検出手段205は、この差分値データが所定の値より小さいか一致する場合は、境界データ44として出力し、もし、所定の値より大きい場合は、閾値設定手段206および閾値設定手段207へ、閾値変更信号を出力して、第1境界部検出手段202で使用されている境界色閾値を変更し、第1境界部検出手段207では、第2境界部検出手段203の調整閾値の値を変更する。また、このように、境界色閾値と調整閾値の両方を調整しなくても、その一方を調整するものであってもよい。
閾値を変更した後、同様に差分値検出手段204で、新たな前記臨界輪郭データと前記演算調整用境界データとが差分され、その値が比較検出手段205で、所定値と比較検出され、この動作を、差分データが所定値と同じかそれよりも下回るまで繰り返し行う。
以上の様に本実施例では、識別が困難な歯肉と歯の境界データを正確に検出できる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、口腔内データの画像処理上、検出が困難な歯の輪郭、歯肉と歯の境界を正確に画像処理が可能となることから、鮮明な口腔内画像が得られ、歯科分野でのデジタル画像利用が図られる。
【符号の説明】
【0024】
101 画像入力手段
102 光点検出手段
103 光点範囲設定手段
104 ラベル付加手段
105 比較手段
106 置換手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光点を検出する光点検出手段、光点を4連結または8連結によってひとまとまりの固まりとして設定する光点範囲設定手段、前記光点の各固まりと、光点の固まりでない部分に識別するためのラベルづけをするラベル付加手段、そのラベルに基づいて各光点の連結されたかたまりの面積を計算し、その面積を所定の閾値と比較して、閾値より小さいものは雑音光点と判断することにより雑音の光点を比較判定する比較手段、雑音の光点と判定された固まりについては、その周囲の固まりのラベルと置き換えることによって雑音光点を除去する置換手段を備えた歯科用画像処理システム。
【請求項2】
検出する光点検出手段、光点を膨張フィルタによって光点の部分をある程度の固まりに
し、その固まりの周囲のある一定の範囲色の平均値を算出し、膨張させた光点の固まりの領域の色を算出した平均の色で置き換えることにより、光点雑音を除去する手段を備えた歯科用画像処理システム。
【請求項3】
撮影した口腔内画像を入力する画像入力手段、前記画像入力手段で入力された画像から、歯肉に対応し、臨界色閾値に基づき歯と歯肉の臨界境界値を検出する第1境界部検出手段、前記画像入力手段で入力された画像から、歯肉の色彩であって、所定の基準色の値に基づいた調整閾値に基づいて調整境界値を検出する第2境界部検出手段、前記第2境界部検出手段で得られた輪郭値に所定値を演算して演算境界値を形成する演算手段、前記演算境界値と前記臨界境界値を比較して値の一致度を比較し、一致度が十分でない場合は、前記臨界色閾値と前記調整閾値の一方または両方を調整する比較検出手段よりなる歯科用画像情報処理システム。
【請求項4】
前記所定の基準色がRGB、CYMK等の原色から選ばれた一つである請求項3に記載の歯科用画像情報システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−78395(P2013−78395A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218653(P2011−218653)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000126757)株式会社アドバンス (60)
【Fターム(参考)】