説明

歯車式無段変速機構

【課題】既存のものよりさらに動力伝達効率のよい機械ミッションを実現し、環境負荷を低減する。
【解決手段】一のギヤであるピニオンギヤが回転しながら軸方向に暫時移動し、それに合わせて他のギヤである渦巻き列歯車の歯列は、円錐頂点側から見た場合、円錐状側面部にスパイラル状に延設され、歯は略歯すじ方向つまり軸方向に少しずつ変位させて並設され、噛み合い位置がピニオンギヤの移動とともに軸方向に移動することになり、この噛み合い位置が軸方向に移動する機構により、噛み合い位置が移動すると渦巻き列歯車のピッチ円が連続的に変化し、通常のギヤの組み合わせの回転比が一定不変であるのに対し連続的に回転比を変えられることになる。CVTHVEV多段遊星歯車

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的に回転速度比を変化できる、とくに歯車機構による無段変速機構に関する。(歯車の歯ひとつひとつを一段と考えれば厳密には有段変速であり歯車式連続可変変速機G−CVT:Geared Continuously Variable Transmissionとすべきであるが本明細では一般的な用語である歯車式無段変速機構と表記する)
【背景技術】
【0002】
内燃機関には、最も効率の良い回転数域があり、燃費の面ではその回転数を維持することがよいとされる。したがって内燃機関等を動力源として利用する、例えば車両等で回転動力を車輪等に伝達して移動させる場合においても、できるだけ効率の良い回転域を利用することが望ましい。
【0003】
動力源の効率の良い回転域を利用するため、低速から高速走行まで幅広い可変速運転が可能な変速機が用いられ動力伝達を達成している。従来の例えば車両用等の変速機として、ギヤ比の違う複数のギアの噛み合いを替え、段階的に変速比を変更する有段の変速機や、連続的に変速比を変化できる無段変速機あるいは連続可変変速機(Continuously Variable Transmission:CVT)が知られている。有段変速では、例えばエンジン動力の断続装置とそれに対応するギアセットを二組用意しシフト前に予め次変速段をスタンバイさせて短時間でシフトさせ伝達効率をよくするというツインクラッチ式の技術が知られているが、基本的には有段変速では次変速段へシフトするのための加速には回転速度を上げる必要があり、また変速時に動力伝達が中断されたりしてエネルギー効率の点で問題があり、変速ショックも発生するため、無段変速機が望ましいものである。
【0004】
現在の実用的な無段変速機としては、摩擦力による駆動力伝達方式としてスチールベルトと2つの可変径プーリーを組み合わせ無段階に変速を行うベルト式CVTや、ローラーとディスクを組み合わせたトロイダルCVT等が知られている。さらに油圧ポンプと油圧モーターを利用した静油圧式、油圧機械式の無段変速機、さらにHV(ハイブリッド車)、EV(電気自動車)のように電動機を利用したもの等が知られている。
【0005】
歯車機構を用いた無段変速機としては、例えば、特許文献1には、突子付回転体と薄歯付回転体とを咬合させた無段変速装置が開示されている。また特許文献2のように中継歯車を介して二つの円錐ヘリカルギヤを逆向きに配置した円錐二軸式無段変速機のような方法もよく散見される。他にも特許文献3のような複数のクランクの往復揺動を利用するもの、特許文献4のような複数の非円形歯車を利用するもの等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭53−004150公報
【特許文献2】特開平1−303358公報
【特許文献3】特表平4−503991号公報
【特許文献4】特開平2−271143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えばベルト式のCVT等は基本的に摩擦を利用したものであるので、摩擦力維持のためのエネルギー損失があり、大きなトルクを扱うには不向きであり、また高速域等で不利である。またベルトの耐久性の問題もある。
【0008】
HVは内燃機関による駆動装置と電気による駆動装置の両方を一台の車に搭載したものであるが、発電機・モーター・蓄電池などの電気部を搭載するため重量が重くなり、かつそれぞれの電気部の効率は100%でない。内燃機関による発電とそれによる駆動は、根本的には機械動力を一旦電気に変換しその電気を再び機械動力に変換して出力するものなので、直接的な機械的伝達に比べるとロスがあり、したがって、車が常にエンジンの最も効率の良い回転数で長く走れるような条件では、HVより普通の車の燃費のほうが良いとされる。このため、平地高速道路の走行が多いヨーロッパでは、ハイブリッド車よりディーゼル車の販売台数が多いとされる。また近年では環境負荷低減のためダウンサイジング化が求められているが、HVは、居住性、搭載性を悪くする大きな部品を多数搭載しなければならず、その他高コストの問題や、蓄電池容量の経時劣化や資源偏在による資源ナショナリズムの問題も抱えている。
【0009】
油圧を利用したものも、機械動力を一旦油圧に変換しその油圧を再び機械動力に変換して出力するものなので、直接的な機械的伝達に比べると効率が落ちる傾向にある。
【0010】
また、上記の電動機を用いたものやベルト式CVT等は、それ単体で、全速域での加速、減速、定速走行が可能であり、それ故、他の動力機関を付け加えたり、マニュアルモード等を設定することは、効率低下や不要といったような印象や違和感を生じせしめる。
【0011】
2クラッチ技術も前述したように、次変速段へのシフトにエンジン回転速度を上げる必要があり、また変速ショックを低減するにはエンジン回転を下げる必要があり、同期するまでのタイムラグが生ずる。逆にタイムラグをなくそうとすると変速ショックが生じる。
【0012】
特許文献1の無段変速装置では径は変化しても歯数が変わらないので回転は変わらない。また特許文献2の円錐二軸式無段変速機は二つの円錐ヘリカルギヤと噛合する中継歯車の移動速度が各々違ってくるので噛み合わないことになる。
【0013】
またエンジンやトランスミッション等のダウンサイジング化も求められ、トランスミッションでは、軸方向あるいは径方向長さの縮小等が求められているが、他の歯車機構を用いた無段変速機構等についても、装置が複雑、アップサイズになり動力伝達効率の点でも実用性が低いといわざるをえない。また定速走行不可のものでは、それを可とするための手段や方法が示されていない。
【0014】
以上のように、従来の変速機等においては、次変速段へのシフトのためには車速を上げる必要があり、車速を上げるにはエンジン回転速度を上げる必要があり、動力伝達損失が大きく燃費が悪化する等の問題があった。また変速ショックが生じ、変速ショックを低減するにはエンジン回転を上げ下げする必要があった。また無段変速機ではエネルギー損失や、高コスト、居住性、搭載性の悪さ、非効率性等の問題があり、歯車機構を用いた無段変速機等でもエネルギー効率面やサイジング面、具体性あるいは定速走行の手段や方法が示されていない等、実用として成立しないものであった。
【0015】
ところで、音や匂いや振動を有する内燃機関や機械ミッション等は、決して忌避されてきたものではなく、むしろそれ故の、一つの生命、愛玩の対象と捉えられてきた部分も多くあり、人と癒しなどの情を介するパートナーであり、例えるなら有機質愛玩物が無機質のそれに駆逐されるようなことがあってはならないのと同じ次元で捉えられるべきものであるとも考えられる。鉄塊を高速で移動させる輸送機関の中で、とくに私的輸送機関としては、放射性エネルギー等のような目に見えない類の無音・無臭、無味・異様な動力機関と違い、有機的な適度な音と匂いの、極められた技術による内燃機関や機械ミッションこそ、鉄塊移動手段にふさわしいものであると言え、またそれ以上のものであるとも言える。 最終形ミッションでありエコカーの最適解のひとつであるといえるような機械ミッションは、内燃機関等とともに、単純な価値基準で捉えるものとは違った、長い時間により培われてきた存続されるべき"文化"であるといえる。
【0016】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、伝統的機械ミッションによる、とくに、より動力伝達損失の少ない動力伝達装置である歯車式無段変速機構を提供し、同時に産業伝統文化継承を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、第1の回転軸を有するとともに、円錐状または円盤状の、外周面に、略均等な歯が等ピッチをもって並設された歯列がスパイラル状に延設されてなる渦巻き列歯車と、該渦巻き列歯車の、円錐面(ピッチ円錐面)上での母線または円盤状の係方向と、平行に配置される第2の回転軸を有し、前記渦巻き列歯車に噛み合うとともに前記第2の回転軸の方向に沿って移動自在に設けられた第2の歯車と、を備え、前記渦巻き列歯車に対して、前記第2の回転軸の回転に起因して従回転する前記第2の歯車が噛み合い位置を連続的に変更しながら移動するとき、 または前記渦巻き列歯車の回転に起因して従回転する前記第2の歯車が噛み合い位置を連続的に変更しながら移動するとき、前記渦巻き列歯車のピッチ円の半径が連続的に変化する、歯車式連続可変変速機構と、前記渦巻き列歯車と前記第2の歯車の少なくとも一つ、を駆動させる駆動手段と、前記渦巻き列歯車と前記第2の歯車の少なくとも一つ、を制動させる制動手段と、前記駆動手段と前記制動手段と、を切り替える切り替え手段と、動力を段階的に変速して出力する変速段機構と、動力源から駆動輪に至る動力伝達経路において、前記歯車式連続可変変速機構を含む経路と含まない経路とを切り替える動力伝達経路切り替え手段と、を備え、車両に搭載される、ことを特徴とする。略均等な歯とは、各歯は歯幅等は同じだが歯低円の径が違ってくるという意味である。歯列がスパイラル状に延設とは、既存の歯車では噛合位置が移動するともとの位置に戻る、一列の繋がった歯列であるが、当該トルネードギヤでは、歯が円錐外周上を等ピッチをもってスパイラル状に並設されていくので噛合位置は軸方向に移動していきもとに戻ることはなく、歯列は連続した一つの列であるがスパイラル状に伸びている、という意味である。また前記第2の回転軸は軸自体が駆動側の伝動要素となることを特徴とするものであり、また好適には複段減速歯車列の軸である。
【0018】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の構成に加えて、動力源の動力を分配する動力分配機構と、分配された動力を利用する前記歯車式連続可変変速機構から出力される動力を合成する動力合成機構と、をさらに備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の構成に加えて、前記歯車式連続可変変速機構は、前記渦巻き列歯車が、正回転での動力伝達と逆回転での動力伝達と、の二つの動力伝達方法を有する、ことを特徴とする
【0020】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3いずれかに記載の構成に加えて、前記渦巻き列歯車は、正回転での動力伝達と逆回転での動力伝達とが交互に行われる、ことを特徴とする。
【0021】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4いずれかに記載の構成に加えて、前記渦巻き列歯車は、正回転での動力伝達と逆回転での動力伝達とが連続して行われる、ことを特徴とする。
【0022】
請求項6に係る発明は、請求項2に記載の構成に加えて、前記動力分配機構と前記動力合成機構の少なくとも一つは、差動機構である、ことを特徴とする。差動機構とは、複数の回転体等がそれぞれ相互に相対回転可能となし差動作用が働く機構のことである。
【0023】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の構成に加えて、前記差動機構は、遊星歯車機構または差動歯車機構である、ことを特徴とする。遊星歯車機構は、例えば相対回転可能な第1と第2と第3の3つの回転要素を有し、前記動力合成機構は、3要素のうちの第1要素を入力軸に、第2要素を出力軸にそれぞれ結合するとともに、第3要素を前記歯車式連続可変変速機構に結合する、ことを特徴とする。
【0024】
請求項8に係る発明は、請求項1乃至7いずれかに記載の構成に加えて、複数の差動機構を備え、一の差動機構が前記動力分配機構の構成要素として用いられたとき、他の差動機構は前記動力合成機構として用いられ、他の差動機構が前記動力分配機構の構成要素として用いられたとき、一の差動機構は前記動力合成機構として用いられる、ことを特徴とする。
【0025】
請求項9に係る発明は、請求項1乃至8いずれかに記載の構成に加えて、前記第2の歯車に働く軸方向への力により、該第2の歯車が前記第2の回転軸を移動自在となす移動手段をさらに備えた、ことを特徴とする。
【0026】
請求項10に係る発明は、請求項1乃至9いずれかに記載の構成に加えて、前記第2の歯車に働く軸方向への力を、該第2の歯車の回転駆動と回転制動の少なくとも一つに利用する、ことを特徴とする。
【0027】
請求項11に係る発明は、請求項1乃至10いずれかに記載の構成に加えて、前記移動手段は、油圧とワイヤ機構、またはボールねじ機構、を用いる、ことを特徴とする。
【0028】
請求項12に係る発明は、請求項1乃至11いずれかに記載の構成に加えて、前記第2の歯車の位置を検知する第2歯車位置検知手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0029】
請求項13に係る発明は、請求項1乃至12いずれかに記載の構成に加えて、前記円錐状渦巻き列歯車の内部は中空空間を有する、または軽量物質により充填されている、ことを特徴とする。
【0030】
請求項14に係る発明は、請求項13に記載の構成に加えて、さらに、前記内部中空空間には前記動力分配機構と前記動力合成機構の少なくとも一つを内設した、ことを特徴とする。
【0031】
請求項15に係る発明は、請求項1乃至14いずれかに記載の構成に加えて、動力源の動力を断接自在となすクラッチ機構であって前記変速段機構は、複数の前記クラッチ機構に連結される、ことを特徴とする。
【0032】
請求項16に係る発明は、請求項1乃至15いずれかに記載の構成に加えて、電動機をさらに備えたことを特徴とする。
【0033】
請求項17に係る発明は、請求項1乃至16いずれかに記載の構成に加えて、前記第2の回転軸と前記渦巻き列歯車の少なくとも一つ、の回転駆動に電動機を用いる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
高い加速性能と省燃費を両立でき夢のトランスミッションと謳われてきた歯車式による無段変速機は、ベルト式CVTや通常変速段ミッションに比べ、著しい省エネ効果があり、高い加速性能により優れたドライバビリティを実現でき、産業上、実用に供される事自体が大きな進歩性を有するものである。
【0035】
請求項1、15の発明によれば、一つには、動力の増幅の技術の範囲外の問題であって、動力を段階的に変速して出力する変速段機構と動力伝達経路切り替え手段を備えることにより、定速走行が可能となり、さらに前記渦巻き列歯車と前記第2の歯車の少なくとも一つを制動させたり駆動させることにより、前記歯車式連続可変変速機構を使い回すことが可能となり、歯車式による無段変速機構を実用に供するものとすることができる。また本発明は単一動力機関であって、かつ本来的に有段変速要素と無段変速要素を包含した機構であり、省エネとともにドライビングプレジャーも違和感無く追及することができ、本渦巻き列歯車の分かり易い外観とインパクトとともに、ユーザーに対して大きな商品アピール性を有するものである。
【0036】
請求項2、6、7、13、14の発明によれば、例えば、動力源の動力と歯車式連続可変変速機構から出力される動力を合成し出力することにより、歯車式連続可変変速機構が取りうる最大の変速比幅を変速段機構の各変速段(あるいは隔変速段)に重畳させることができる。つまり、例えば単に減速と増速でそのまま変速段に出力する場合は、前記渦巻きギヤ列は全速域の場合少なくとも60列以上になるし、一段毎繰り返し出力する場合も大径(トルネードギヤ底面側)は小径のせいぜい1、5倍(例えば出力2000→3000回転)ほどでつまり軸方向長さを長くしなければならない。分配・合成すれば、例えば本実施例の遊星歯車のリングギヤ(キャリア)の回転数は大径を小径の4倍とすることができるため大径を大きくでき軸方向長さを短くできる。
【0037】
請求項3、4、8の発明によれば、渦巻き列歯車と第2の歯車を常時噛み合いとすることができる。
【0038】
請求項5、8の発明によれば、低速段から高速段まで、加速走行を維持することができる。
【0039】
請求項9、11、12の発明によれば、例えば定速走行時等において、加速に移行する場合に備えて第2の歯車と渦巻き列歯車の噛み合い位置を任意の位置に移動させ、待機させることができる。
【0040】
請求項10、11の発明によれば、加速時にトルク抜けのないようにしたり、例えば摩擦プレート等を用いたブレーキ装置の代用や補助として利用でき、摩擦プレート等の負担を低減できる。
【0041】
請求項16、17の発明によれば、例えば登坂路等での走行等で走行制御が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用自動変速機の概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る歯車式無段変速機構を示すスケルトン図である。
【図3】歯車式連続可変変速機構のピニオンギヤPgとトルネードギヤTgとピニオンギヤ軸の概略的な正面図と側面図である。
【図4】ピニオンギヤPgを介したトルネードギヤTgとピニオンギヤ軸のスラスト荷重を示す図である。
【図5】ワイヤと滑車装置と油圧装置を用いたトルネードアクチュエータの概略図である。
【図6】電動モーターとボールねじ機構を用いたトルネードアクチュエータの概略図である。
【図7】省エネモードの3速ギヤ段G3での加速走行時の動力伝達経路図である。
【図8】省エネモードの1速ギヤ段G1での加速走行時の動力伝達経路図である。
【図9】発進・微速用ギヤ段Gcの動力伝達経路図である。
【図10】1速ギヤ段G1での定速走行時の動力伝達経路図である。
【図11】2速ギヤ段G2での定速走行時の動力伝達経路図である。
【図12】動力が第1及び第2のクラッチC1、C2から出力される場合の、加速→定速→加速工程においての、トルネードギヤ部での各装置の時系列の動作を示す作動工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明をとくに車両に応用した場合の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0044】
図1は、本発明の実施形態に係る、第1実施例としての車両用自動変速機の概略構成図で、内燃機関を構成するエンジン(動力源)と、変速機と、変速操作装置と、電子制御装置ECUとを備えて構成され変速機から出力される回転トルクは、ディファレンシャルギアを介して駆動輪に伝達されるようになっている。
【0045】
前記電子制御装置ECUは、CPU、ROM、RAM及びバックアップRAMなどを備え、ROMは、各種制御プログラムや、それら各種制御プログ ラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。 CPUは、ROMに記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。RAMは、CPUでの演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAMは、エンジンの停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。これらは、バスを介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース及び出力インターフェースと接続されている。ECUの入力インターフェースには、本円錐渦巻き列歯車(以下、トルネードギヤとする)上での前記第2の歯車(以下、ピニオンギヤとする)の位置を検出するピニオンギヤ位置センサ、エンジン回転数センサ、スロットル開度センサ、入力軸回転数センサ、出力軸回転数センサ、アクセルペダルの開度を検出するアクセル開度センサ、シフト装置のシフト位置を検出するシフトポジションセンサ、ブレーキペダルセンサ、車両の速度を検出する車速センサ、車両の加速度を検出する加速度センサ、などが接続されており、これらの各センサからの信号がECUに入力される。ECUの出力インターフェースには、変速機の変速操作装置やスロットルバルブを開閉するスロットルモータ(図示せず)などが接続されている。ECUは、上記した各種センサの出力信号に基づいて、エンジンのスロットルバルブの開度制御を含むエンジンの各種制御を実行したり、変速機の変速操作装置に制御信号(油圧指令値等)を出力して、後記変速機のギヤ段を切り換える変速制御やピニオンギヤの移動制御等を行う。(尚、変速機の変速操作装置の各センサは図上部に改めて並記されている。)
【0046】
変速機は、図2の骨子図で示すように、エンジンの出力軸の回転動力を連続的に変速し出力する、前記請求項記載の歯車式連続可変変速機構と、前記差動機構たる遊星歯車装置とを含むトルネードギヤ部と、該トルネードギヤ部から出力される回転動力を段階的に変速してディファレンシャルギア及び駆動輪へ出力する前記変速段機構と、これらを制御する前記変速操作装置を備えている。
【0047】
前記変速操作装置には、変速段機構のシフト操作を行うシフトアクチュエータや前記ピニオンギヤの移動(駆動)や制動等の操作を行うトルネードアクチュエータ、該アクチュエータやトルネードギヤ部の各摩擦断続装置等に供給する作動油の油圧を制御する油圧回路、などを備え、該油圧回路にはECUからの制御信号が供給され、その制御信号に基づいて各アクチュエータ等が駆動制御されて、変速機シフト操作やピニオンギヤ操作、各摩擦断続装置の制御等が自動的に実行される構成となっている。
【0048】
トルネードギヤ部は、エンジンにより駆動される駆同軸1と、その外周側にトルネードギヤTgが配置され、後方(エンジン側を前方とする、以下同じ)には駆同軸1と同軸的に配置され後方に突出する第2入力軸3、その外周に第2入力軸3と相対回転可能に支承されハウジングに固定された中空軸状の筒ケース7、さらにその外周に筒ケース7と相対回転可能に支承された中空軸状のヘリカルギヤ軸6、さらにその外周にヘリカルギヤ軸6と相対回転可能に支承された中空軸状の第1入力軸2が配置され三重の駆動軸を形成している。またトルネードギヤTgの内部空間には、差動機構であって、第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素を互いに差動回転可能な差動装置である第1〜第3の3つのシングルピニオン型遊星歯車装置10、20、30が駆動軸1と同心に配置されている。
【0049】
又、前記トルネードギヤTg内には、係合機構として、第1〜第3の3つのクラッチC1〜C3と、第1〜第4の4つのブレーキB1〜B4と、二つのツーウェイクラッチF1、F2が備えられている。
【0050】
第1遊星歯車装置10は、駆同軸1に固定されたサンギヤ10s(20s)と、該サンギヤ10s(20s)に噛合する複数のプラネタリギヤ10pと、各プラネタリギヤを回転可能に支持するキャリア10cと、プラネタリギヤ10pに噛合する内歯を有したリングギヤ10rとからなる。第1遊星歯車装置10の後方には前記サンギヤ10s(20s)を共有し、該サンギヤ10s(20s)に噛合する複数のプラネタリギヤ20pと、各プラネタリギヤを回転可能に支持するキャリア20cと、プラネタリギヤ20pに噛合する内歯を有したリングギヤ20rとからなる第2遊星歯車装置20が配置され、エンジンの駆動力はこの第1、第2の遊星歯車装置に分配される。さらにリングギヤ10rはサンギヤ10s(20s)の前方、駆同軸1の外周側に配置されたサンギヤ30sに連結され、該サンギヤ30sと、該サンギヤ30sに噛合する複数のプラネタリギヤ30pと、各プラネタリギヤを回転可能に支持するキャリア30cと、プラネタリギヤ30pに噛合する内歯を有しハウジングに固定されて回転不能と成すリングギヤ30rとからなる第3遊星歯車装置30が配置される。
【0051】
キャリア10cは、同心円状に近設された摩擦係合要素たる第1クラッチC1の係合・開放により第1入力軸2と連結・分離可能と成し、回転動力は第1入力軸2の後端部に固定された入力軸ギヤ13及び入力軸ギヤ13と噛合する中間軸ギヤ14を介して変速段機構に出力される。さらにキャリア10cは第2ブレーキB2によって選択的にハウジングに連結されて回転停止させられる。リングギヤ20rは、同心円状に近設された摩擦係合要素たる第2クラッチC2の係合・開放により第2入力軸3と連結・分離可能と成し、回転動力が変速段機構に出力される。さらにリングギヤ20rは第3ブレーキB3によって選択的にハウジングに連結されて回転停止させられる。キャリア20cは、摩擦係合要素たる第3クラッチC3の係合・開放によりヘリカルギヤ軸6と連結・分離可能と成し、回転動力がピニオンギヤPg、トルネードギヤTgに出力される。さらにキャリア20cは第4ブレーキB4によって選択的にハウジングに連結されて回転停止させられる。リングギヤ10rは、トルネードギヤTgの正回転(駆同軸1と同じ回転方向)を阻止しつつ逆回転を許容する一方向クラッチF2を介してトルネードギヤTgに連結される。キャリア30cは、トルネードギヤTgの正回転を許容しつつ逆回転を阻止する一方向クラッチF1を介してトルネードギヤTgに連結され、さらに第1ブレーキB1によって選択的にハウジングに連結されて回転停止させられ、したがって同時にキャリア30c、サンギヤ30s、リングギヤ10rが回転停止させられる。
【0052】
サンギヤ10s(20s)の後方には、アクチュエータや各摩擦断続装置等を制御したり、各部に潤滑油を供給したりする為の元圧となる油圧を発生させて油圧回路へ供給するために、前記駆同軸によって回転駆動される機械式のオイルポンプPが配置されている。
【0053】
上記の第1〜第3の3つのクラッチC1〜C3や第1〜第4の4つのブレーキB1〜B4は、多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置であり、油圧回路のリニアソレノイドバルブの励磁、非励磁や電流制御により、係合、開放状態が切り替えられると共に係合、開放時の過渡油圧などが制御される。
【0054】
本実施例は、エンジン動力を前記第1クラッチC1と第2クラッチC2を交互に切り替えて出力するツインクラッチ式自動変速装置に本発明を適用したもので、変速段機構は図2に示すように、駆同軸1と同軸的に配置され第2クラッチC2と連結・分離可能と成す第2入力軸3と、該第2入力軸3と平行にかつ互いに周方向で角度を異ならせ離間して中間軸4、出力軸5及びが配置され、三軸式のギヤトレーンとして構成されている。
【0055】
第2入力軸3は、第2クラッチC2と連結・分離可能と成し、ギヤ列G1、G4、G5の駆動ギヤG1a、G4a、G5a及び後進用の駆動ギヤRaに回転動力を伝達するための回転軸であり、前方から4速駆動ギヤG4a、後進用駆動ギヤGca、1速駆動ギヤG1a、5速駆動ギヤG5aが空転可能に装着されている。これらのうちG1a、G4a、G5aは、対応する従動ギヤG1b、G4b、G5bと噛合連結されている。また後進用駆動ギヤRaは中間軸4の後進用アイドラギヤRiと噛合連結され、該後進用アイドラギヤRiと噛合連結された出力軸5の後進用従動ギヤRbに回転動力を逆転させて伝達される。尚、図2において細線の点線は噛合連結されていることを示す(トルネードギヤ部の点線は除く)。
【0056】
中間軸4は、前記第1入力軸2の後部端に一体的に設けられた入力軸ギヤ13及び第1中間軸4の前端部に一体的に設けられ入力軸ギヤ13と噛合する中間軸ギヤ14を介して第1クラッチC1と連結・分離可能と成し、ギヤ列G2、G3、G6、G7の駆動ギヤG2a、G3a、G6a、G7a及び発進・微速用駆動ギヤGcaに回転動力を伝達するための回転軸であり、前方から発進・微速用駆動ギヤGca、2速駆動ギヤG2a、6速駆動ギヤG6a、7速駆動ギヤG7a、及び3速駆動ギヤG3aが空転可能に装着されている。また後進用駆動ギヤRaと従動ギヤRbとに噛合連結された後進用アイドラギヤRiが空転可能に装着されている。これらの駆動ギヤG2a、G3a、G6a、G7a、Gcaは、対応する従動ギヤG2b、G3b、G6b、G7b、Gcbと噛合連結されている。
【0057】
出力軸5は、前方から発進・微速用従動ギヤGcb、2速従動ギヤG2b、4速従動ギヤG4b、6速従動ギヤG6b、後進用従動ギヤRb、7速従動ギヤG7b、1速従動ギヤG1b、3速従動ギヤG3b、5速従動ギヤG5bが一体的に設けられている。これら従動ギヤG1b〜G7b、Rb、Gcbは、対応する第2入力軸3の駆動ギヤG1a、G4a、G5a、及び中間軸4の駆動ギヤG2a、G3a、G6a、G7a、発進・微速用駆動ギヤGca、後進用アイドラギヤRiと噛合連結されディファレンシャルギアを介して駆動輪に伝達される。
【0058】
第1同期装置S1は、、動力を伝達しない空転状態と発進・微速用ギヤGcを切り換えるための装置であり、空転状態と、回転速度を同期させて発進・微速用駆動ギヤGcaを中間軸4に選択的に連結、一体回転させる。
【0059】
第2同期装置S2は、2速と6速を切り換えるための装置であり、回転速度を同期させて、2速駆動ギヤG2aと6速駆動ギヤG6aとを中間軸4に選択的に連結、一体回転させる。
【0060】
第3同期装置S3は、7速と3速を切り換えるための装置であり、回転速度を同期させて、7速駆動ギヤG7aと3速駆動ギヤG3aとを中間軸4に選択的に連結、一体回転させる。
【0061】
第4同期装置S4は、4速と後進用ギヤRを切り換えるための装置であり、回転速度を同期させて、4速駆動ギヤG4aと後進用駆動ギヤRaとを第2入力軸3に選択的に連結、一体回転させる。
【0062】
第5同期装置S5は、1速と5速を切り換えるための装置であり、回転速度を同期させて、1速駆動ギヤG1aと5速駆動ギヤG5aとを第2入力軸3に選択的に連結、一体回転させる。
【0063】
これら各同期装置Sは、前記各駆動軸に連結(スプライン勘合)され軸方向に移動自在な同期スリーブを備え、図示しない前記シフトアクチュエータにより、同期スリーブを中立位置から軸方向前後に移動させることで、前記各駆動ギヤに連結させ、G1〜G7等の各ギヤ列を選択的に確立させるものである。ギヤ列が確立されるとは、駆動力が(前記第1クラッチC1と第2クラッチC2と、)前記G1〜G7、Gc、Rの各ギヤ列を介して出力軸5に動力伝達可能の状態になることをいい、トルネードギヤ部からの駆動がありかつギヤ列が確立された際には、夫々のギヤ比で設定する所定の変速段により車両を駆動可能となる。
【0064】
尚これら軸数や変速段数、ギヤ比、変速段の配置等は本発明を適用した一実施例であり他の設計や構成等も可能である。
【0065】
[渦巻き列歯車(トルネードギヤTg)と第2歯車(ピニオンギヤPg)の動作]
さて、前記したように動力源の効率の良い回転域を利用するため、車両等の動力伝達を行う場合、変速段機構により段階的に動力伝達を達成しているが、これは一つのギヤをエンジン回転数を上げて'引っ張る'よりも複数のギヤを用いた方が引っ張り(牽引力)が少なくなり効率が良くなるわけで、さらに段数を増やしていき最終的に連続的に変速させることができれば、さらに効率は良くなるわけである。
【0066】
トルネードギヤTgは、図3にあるように内部に中空空間を有した円錐状外周面に、略均等な歯が等ピッチをもって並設された歯列が、スパイラル状に延設されている。そして該トルネードギヤTgの円錐面(ピッチ円錐面)上での母線と平行に配置された回転軸であるピニオンギヤ軸Psの方向に沿って移動自在に設けられた前記ピニオンギヤPgが噛合され、従ってトルネードギヤTgの歯はピニオンギヤPgが移動可能に形成されている(軸に対してかつピニオンギヤPgに対して常に一定の角度を保つように形成されている)。
【0067】
ピニオンギヤPgは、内周面に凸条歯(螺旋溝)が形成され、外周面に複数の螺旋溝を有するねじ軸たるピニオンギヤ軸Psに螺合(勘合)するナットNと一体と成し、ピニオンギヤ軸Psとの相対回転を阻止し、かつ軸方向移動自在と成している。ピニオンギヤ軸Psは、図2にあるようにハウジングに固定されたアーム15に回転自在に軸支され、軸後端部には軸ギヤ12が一体的に設けられベベルギヤ11と噛合連結され、エンジンからの回転動力は、例えばベベルギヤ11→軸ギヤ12→ピニオンギヤ軸Ps→ピニオンギヤPg→トルネードギヤTgへと動力伝達される。尚、このベベルギヤ11からトルネードギヤTgまでの連結を歯車式連続可変変速機構とされるが、他の連結態様としてもよい。
【0068】
トルネードギヤTgとピニオンギヤPgの動作は、例えばピニオンギヤPgを一定回転させると噛み合い位置は例えばトルネードギアTgの径の大きい底面側から径の小さい頂点側に移動し、それとともにトルネードギヤの回転速度を低回転から高速回転へと連続的に変移させることができる。前記したように通常のギヤが例えば円筒外周部に、歯が並設されているのに対し、本実施例であるトルネードギヤの組み合わせでは、一方のギヤであるピニオンギヤが軸(Ps)方向に(回転しながら)暫時移動し、それに合わせて他方のギヤであるトルネードギヤの歯列は、円錐頂点側から見た場合、円錐状側面部にスパイラル状に延設され、歯は略歯すじ方向つまり軸方向に少しずつ変位させて並設され、噛み合い位置がピニオンギヤの移動とともに軸方向に移動することになる。この場合、ギヤの組み合わせはトルネードギヤとピニオンギヤ双方の軸が交差する交差軸となるが、その交差点(頂点)は噛み合い位置が変わるたびに変化することになる。また夫々の歯の中心距離も変化することになる。
【0069】
そしてこの噛み合い位置が軸方向に移動する機構により、噛み合い位置が移動するとトルネードギヤのピッチ円が連続的に変化し、通常のギヤの組み合わせの回転比が一定不変であるのに対し連続的に回転比を変えられることになる。
【0070】
本トルネードギヤTgとピニオンギヤPgはベベルギヤ(傘歯車)のギヤセットであり、ピニオンギヤPgの歯の円すい角はもちろんピニオンギヤ軸Psと平行ではなく、かつ図3のようにピニオンギヤPgは常に一定の角度(円すい角)を保ちながらトルネードギヤTgと噛合しピニオンギヤ軸方向に移動する。したがって噛み合いが軸方向にずれることはないが、低側(トルネードギヤTの径の大側)にスラストがやや出るようにし、図の円内に示されるように、歯の低側側面の当接面に噛み合いのリードのためのテーパをつけてもよい。
【0071】
また、本トルネードギヤTgとピニオンギヤPgのギヤセットの歯はヘリカルギヤ(歯すじは直線、曲線どちらでもよい)であり、図4のようにトルネードギヤTgとの噛合でのスラストとピニオンギヤ軸Psとの噛合でのスラストとが打ち消し合うようになしている(図はピニオンギヤ側に掛かるスラスト荷重を示す)。したがって伝達効率を損なうことなく歯すじ角度を大きくでき噛み合い効率や静粛性を高められる。
【0072】
ピニオンギヤの移動は、例えばピニオンギヤの位置を第2歯車位置検知手段たるピニオンギヤ位置センサ16で検出し、この検出出力に基づき、トルネードアクチュエータをフィードバック制御することにより、例えばピニオンギヤ側面をフォーク17等で押圧させる等の方法によりピニオンギヤ位置を調整する。ワイヤと滑車装置と油圧装置を用いた移動手段たるアクチュエータの例を概略図5に、電動モーターとボールねじ機構を用いた例を概略図6に示すが、該トルネードアクチュエータは、油圧手段や電動手段等と、ギヤ機構、リンク機構、カム機構、ボールねじ機構、滑車機構やワイヤ機構等の手段を組み合わせて実現される。
【0073】
ところで、前述したようにヘリカルギヤのように軸方向に対して斜めの歯を有したギヤは、径方向荷重(ラジアル荷重)が歯を介して軸方向荷重(スラスト荷重)を分力せしめるのだが、逆にいうとスラスト荷重を歯を介してラジアル荷重に分力させることも可能である。つまり、ピニオンギヤPgとピニオンギヤ軸Psは直線運動を回転運動に、回転運動を直線運動に変換可能とするねじ運動機構であり、ピニオンギヤPgに対して軸方向に力を加えることにより、ピニオンギヤPgやトルネードギヤTgの制動と駆動に利用することが可能である。つまり軸方向逆スラストを利用して回転制御する「スラスト(ブレーキ)制御」である。この時、例えば制動のために作用する力は駆動の場合(ラジアル荷重→スラスト荷重)と同じく歯であり、例えば摩擦プレート等を用いたブレーキ装置の代用や補助として利用でき、摩擦プレート等の負担を低減できるものである。
【0074】
尚、ピニオンギヤPgの移動は、動力源の動力が前記渦巻き列歯車を経由して駆動輪に伝達されていないときには、移動手段としてピニオンギヤPgやトルネードギヤTgに回転を与えて、例えば動力源の動力を別経由で利用したり、電動モーターを連結することによりピニオンギヤを移動させることも可能である。
【0075】
また、以上の上記中のトルネードギヤは本実施例では円錐状として説明されてきたが、円盤状のものも同様であり、例えば、トルネードギヤTgとピニオンギヤPgとの噛み合い位置はピニオンギヤの移動とともに円盤径方向に移動する、等、若干の表現の違いはあるが、円錐状と同様のものとして含まれる。
【0076】
また、前記歯車式連続可変変速機構は、第1の回転軸を有するとともに、該回転軸の方向に沿って連続的に変化する断面形状を有する第1の歯車と、移動可能な第2の回転軸を有し、前記第1の歯車に噛み合うとともに前記第2の回転軸の方向に沿って摺動自在に設けられた第2の歯車と、を備え、前記第1の歯車に対して、前記第2の回転軸の回転に起因して従回転する前記第2の歯車が噛み合い位置を連続的に変更しながら移動するとき、または前記第1の歯車の回転に起因して従回転する前記第2の歯車が噛み合い位置を連続的に変更しながら移動するとき、前記第1の歯車のピッチ円の半径が連続的に変化することを特徴とするものでもよい。
【0077】
[歯車式連続可変変速機構]
さて、摩擦等を利用したものと比べ格段に効率の良いギヤ機構である本歯車式連続可変変速機構を用いた動力伝達を具現化するその一つの方策として、本実施例では変速段機構と組み合わせて、隔段毎(スキップシフト)に該ギヤ式連続可変変速機構を重畳させるような方式とされる。隔段毎とは、詳細は後述するが例えば、加速時には1速、3速、5速、7速の各ギヤ段に連続可変変速された動力を重畳(合成)させ、定速走行時は、前記動力伝達経路切り替え手段により連続可変変速させずに全段各段をそのギヤ比を保持したまま走行させるというものである。こうすることにより、加速走行あるいは定速走行の各段の工程を繋ぐことにより全速域の無段変速と同等の効果を生じせしめるものである。
【0078】
具体的には、動力源の動力を動力分配機構(あるいは動力合成機構)であり差動機構たる第1、第2遊星歯車装置10、20により分配(分割)出力し、分配された一の動力は、一の遊星歯車機構に連結された本ギヤ式連続可変変速機構であるトルネードギヤ(渦巻き列歯車)とピニオンギヤのギヤセットに出力され、前述したように該ギヤセットにより連続的に回転比を変えられ、さらに該ギヤセットから出力された連続可変変速動力は、他の遊星歯車機構に出力された他の分配動力と、動力合成機構たる他の遊星歯車機構により再び合成されて変速段機構に出力されるものである。
【0079】
より具体的に動力伝達経路を図7に示すが、動力源(エンジン)の回転動力はサンギヤ10s(20s)から第1遊星歯車装置10のプラネタリギヤ10pと第2遊星歯車装置20のプラネタリギヤ20pに分配される。第2遊星歯車装置20はリングギヤ20rが固定され、分配された一の回転動力はプラネタリギヤ20pを介してキャリア20cからクラッチC3→ヘリカルギヤ軸6→ベベルギヤ11→軸ギヤ12→ピニオンギヤ軸Ps→ピニオンギヤPg→トルネードギヤTgへと伝達され、前記したようにピニオンギヤPgとトルネードギヤTgとの噛み合い位置がトルネードギアTgの径の大きい底面側から径の小さい頂点側に移動し(以下、ピニオンギヤPgが降るという)、それとともにトルネードギヤの回転速度は低回転から高速回転へと連続的に変移される。この時、本実施例ではサンギヤ10s(20s)→キャリア20cの変速比(=入力回転速度/出力回転速度 )は略3、ピニオンギヤPg→トルネードギヤTgの変速比が最大(径の大の位置)略4として設定され、噛み合い位置の径の小さい側での最終位置のトルネードギアTgの径は、該径(位置)での回転数がベベルギヤ11の回転数、つまりキャリア20cの回転数と略同じとなるように設定され、したがってトルネードギアTg回転数(回転速度)はキャリア20c回転数に向けて漸増されるということで、例えばエンジン回転数1800回転/rpmとするとキャリア20c回転数は約600回転/rpm、したがってトルネードギアTg回転数は略150回転/rpm→600回転/rpmへと漸増される、ということになる。
【0080】
この時トルネードギヤTgは正回転であり、二方向クラッチF1は空転、二方向クラッチF2はトルネードギヤTgの正回転を阻止するように制御され、該二方向クラッチF2を介して第1遊星歯車装置10のリングギヤ10rに伝達され(トルネードギヤTgと同回転)、前記サンギヤ10s(20s)から分配されたうちの他の回転動力と合成されてキャリア10cから第1クラッチC1を介して変速段機構に出力される。より詳しくは、サンギヤ10s(20s)→キャリア10cの変速比はリングギヤ10rを固定した場合(0とした場合)略4で設定されキャリア10cの回転数は450回転/rpmから開始され、後述するように時間をおいてトルネードギヤTgから伝達されたリングギヤ10rの動力(150回転/rpm→600回転/rpm)が合成されて450回転/rpm→900回転/rpmへと漸増出力される。入力軸ギヤ13から中間軸ギヤ14へはギヤ比0.5とされ2倍に増速されて900回転/rpm→1800回転/rpmの回転動力が中間軸4へ出力される。
【0081】
尚、トルネードギアTgの回転数が略150回転/rpm→600回転/rpmであるので、これは噛み合いの最終位置であるトルネードギアTgの径の小さい側での径の回転を1分間続けるのに450回転分の距離が必要ということであり、加速時間(本実施例の場合2段分)を例えば5秒とすると、要する回転数は 450÷(60÷5) で約37回転であり、つまりトルネードギヤとピニオンギヤの噛合移動距離は、エンジン出力にもよるが、前記トルネードギアTgの最終位置での周×37回転分の距離ということになり、トルネードギアTgのテーパ角や軸方向長さはこれを基に設定される。
【0082】
さらにトルネードギヤとピニオンギヤを常時噛み合いとするため正転・逆転両方の回転を利用するとされ、図8に示す動力伝動経路のように、エンジンの回転動力はサンギヤ10s(20s)から第1遊星歯車装置10のプラネタリギヤ10pと第2遊星歯車装置20のプラネタリギヤ20pに分配され、第1遊星歯車装置10はキャリア10cが固定され、分配された一の回転動力は逆回転となってリングギヤ10rから第3遊星歯車装置30のサンギヤ30sに伝達され、リングギヤ30rは固定されておりそのまま逆回転でキャリア30cから二方向クラッチF1に伝達される。二方向クラッチF2は空転、二方向クラッチF1はトルネードギヤTgの正回転を阻止するように制御され、該二方向クラッチF1を介してトルネードギヤTgに伝達され、前記工程とは逆に本工程ではトルネードギヤTg→ピニオンギヤPgへと動力伝達されることになる。前記工程の後ではピニオンギヤPgとトルネードギヤTgとの噛み合い位置はトルネードギアTgの径の小さい頂点側にあり、したがって本工程では噛み合い位置は径の小さい頂点側から径の大きい底面側に移動し(以下、ピニオンギヤPgが昇る、という)、それとともにピニオンギヤの回転速度は低回転から高速回転へと連続的に変移される。そしてトルネードギヤTg→ピニオンギヤPg→ピニオン軸Ps→軸ギヤ12→ベベルギヤ11→ヘリカルギヤ軸6→クラッチC3→キャリア20cと前記工程と逆の経路でキャリア20cに至る。この時キャリア20cの回転は逆回転である。そしてサンギヤ10s(20s)からの他の分配動力(正回転)と合成されリングギヤ20rから逆回転で変速段機構へ出力される。詳しくは、サンギヤ10s(20s)→リングギヤ10rの変速比は略3、サンギヤ30s→キャリア30cの変速比(リングギヤ30r固定)は略4とされエンジン回転数1800回転/rpmとするとリングギヤ10rは600回転/rpm、したがってサンギヤ30sも600回転/rpmで、キャリア30cは150回転/rpmとなり、したがってトルネードギヤTgは150回転/rpmの一定回転でピニオンギヤPgに伝達される。ピニオンギヤPgのトルネードギヤTgとのギヤ比は1→0.25と変移し、ピニオンギヤPgの回転数は150回転/rpm→600回転/rpmとなる。
【0083】
サンギヤ10s(20s)→リングギヤ20rの変速比はキャリア20cを固定した場合(0とした場合)略2で設定されリングギヤ20rの回転数は900回転/rpmから開始されピニオンギヤPgから伝達されたキャリア20cの動力(150回転/rpm→600回転/rpm)が合成されて900回転/rpm→略1800回転/rpmへと漸増出力される。
【0084】
尚、本実施例では前記の動力源(エンジン)→サンギヤ10s(20s)→第2遊星歯車装置20→クラッチC3→ヘリカルギヤ軸6→ベベルギヤ11まで、またはエンジン→サンギヤ10s(20s)→リングギヤ10r→第3遊星歯車装置30→二方向クラッチF1→トルネードギヤTgまで、が前記請求項1に記載の駆動手段となる。
【0085】
このように、本実施例では両工程とも900回転/rpm(エンジン出力時1800回転/rpm)→略1800回転/rpmへと2倍の回転数(回転速度)となってトルネードギヤ部から変速段機構へ増出力される。本実施例では、トルネードギヤTgの片道で可能な最大出力回転変位数であるこの2倍の回転数(1800回転/rpm)を次変速段での900回転/rpm、つまりギヤ比1/2となるように次変速段のギヤ比が設定され、エンジン回転数を一定となすように設定される。例えば歯保護のため次変速段の変速比を調整することによりトルネードギヤTgの(次変速段の)初動位置を微調整することも可能であるが、基本的にはトルネードギヤTgの立ち上がりのギヤ比はできるだけ大きいほうがよいので、トルネードギヤTgの次変速段の初動位置(現変速段の最終位置)は、好適には最端部とされるのが望ましい。さて、段間比が0.5となり例えば1速3.6とすると次は1.8であり、2速では回転数の開きが大きいので3速とされ、走行抵抗を考慮しないギヤ比数値は1速3.6、3速1.8、5速0.9、7速0.45とされ、2速、4速、6速は任意のギヤ比とされる。高速域ではさらにギヤを加える等の態様としてもよい。
【0086】
尚、トルネードギヤTg経路各部位はトルクに耐える高い強度剛性と大きさを確保するものとされるが、第3遊星歯車装置30やピニオンギヤPgは空間的に余裕のある場所にあるので大きくすることが可能であり、またこれらの部位のトルクは分配(半減)されたものであるので然程の問題は無い。
【0087】
次に、図7〜12を参照して、車両の走行状態による制御工程を説明する。
【0088】
[ 発進と微速走行 ]
本実施形態においては、車両停止時、エンジン停止状態からブレーキペダル踏み込み、エンジン始動、アイドリングに至る工程中、変速段機構では、第2入力軸3で1速ギヤ列G1が、中間軸4で発進・微速用ギヤ列Gcが確立された状態となっており、一方トルネードギヤ部では、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3が開放されニュートラル状態となってアイドリング回転可能と成している。
【0089】
発進・微速用ギヤ列Gcのギヤ比は、微速走行や坂道発進等のための大きなトルクが出るように1速ギヤ比より大きく設定されており、前記の状態から、ブレーキペダル踏み込みが解かれ、運転者の足がブレーキペダルから離れると、第1クラッチC1が半クラッチ等により緩除に係合されかつブレーキB1が係合され(リングギヤ10rが固定され)、図9に示すようにエンジン動力は発進・微速用ギヤ列Gc経路で駆動輪に伝達されて車両が発進始動される。微速走行においてはトルネードギヤTgによる動力の合成は行われない。そして本実施例では、運転者の足がアクセルペダルに掛けられたときに、図10に示すように第1クラッチC1が開放され、第2クラッチC2が係合されかつブレーキB4も係合され(キャリア20cが固定され)て1速ギヤ段での走行に移行する。したがって例えば運転者の足がブレーキペダルから離れ、間を置かずにアクセルペダルに足が掛けられた場合等のために、第1クラッチC1と第2クラッチC2の両方を半クラッチとして両ギヤによる半クラッチ駆動とし、緩除に発進・微速用ギヤ段から1速ギヤ段での走行に移行する、という構成にしてもよい。
【0090】
[省エネモードでの加速とシフトチェンジ]
本実施例での省エネモードにおいては、アクセルペダルに足がかけられ踏み込み量が略0の状態をa0とし、所定の踏み込み量をa1として、0〜a1を定速走行領域、a1以上を加速領域とされる。前記ECUは、アクセルペダル踏み込み量がa1を超えると加速走行と判断し、加速動作を行う。図8を参考に、例えば1速ギヤ列による加速(1速〜2速)では、前記の第2クラッチC2と第4ブレーキB4が係合された1速定速走行の状態から、第2ブレーキB2が係合され、第4ブレーキB4が開放され、第3クラッチC3が係合される。これにより前記したように、エンジンの回転動力はサンギヤ10s(20s)から第1遊星歯車装置10のプラネタリギヤ10pと第2遊星歯車装置20のプラネタリギヤ20pに分配され、分配された一の回転動力は逆回転となってトルネードギヤTgに伝達されてピニオンギヤPgが昇っていき、低回転から高速回転へと連続的に変移されたピニオンギヤの回転動力がキャリア20cに至り、サンギヤ10s(20s)の他の分配動力(正回転)と合成されてリングギヤ20rから逆回転で変速段機構へ出力され1速ギヤ列による加速が実行される。以上のように本実施例での 省エネモード加速時の動力伝達経路は、動力源(エンジン)→(円錐渦巻き列)歯車式連続可変変速機構→変速段機構→出力部材という経路になる。
【0091】
1速ギヤ列による加速から続けて加速状態が保持される場合は、3速ギヤ列による加速(3速〜4速)となる。プレシフトとして3速ギヤ列が確立されており、一時的に第1ブレーキB1を係合しエンジン動力をキャリア10c→第1クラッチC1に出力させるため、まず第2ブレーキB2が開放され、第1ブレーキB1が係合される。キャリア30cから二方向クラッチF1を介してトルネードギヤTgに伝達されていた動力は、第1ブレーキB1の係合により動力伝達は遮断されトルネードギヤTgはイナーシャ回転となる。また第2ブレーキB2の開放により(かつ第1クラッチC1が開放されているため)第1遊星歯車装置10の分配動力は空転状態となり、エンジン動力は第2遊星歯車装置20のみに伝達されイナーシャトルクによる駆動となる。ここでトルネードアクチュエータに高油圧P1がかけられ、前記したようにトルネードアクチュエータの軸方向への力によりピニオンギヤPgが駆動回転させられ(以上は、シフトチェンジされるまでの、第1ブレーキB1が係合完了するまでの間である)加速は途切れることなく続行されるが、好適には加速を緩除に落としシフトチェンジされるのが望ましい。続けて、第1ブレーキB1が係合完了すると同時に第2クラッチC2が開放され、第1クラッチC1が係合されて、3速にシフトチェンジされる。前記したように、1速ギヤ比で2倍に増速されて駆動輪に出力されているがエンジン回転数は変わらないので、その(一定)エンジン回転数の3速ギヤ比の回転速度と駆動輪からの回転速度は同じであり、変速ショックなくかつ瞬時にシフトチェンジされ、ツインクラッチ式等通常のミッションのようなエンジン回転数を下げる動作が不要である。続けて油圧P1が排出され、トルネードギヤTg(ピニオンギヤPg)制動のための油圧P2がかけられる(したがって本実施例では、油圧等により操作される前記トルネードアクチュエータが前記請求項1に記載の制動手段となる。また第4ブレーキB4を係合して制動し、制動手段としてもよい)。制動が完了したら油圧P2が排出される。続いて図7のように第1ブレーキB1が開放され、第3ブレーキB3が係合されて、第2遊星歯車装置20からの分配動力がピニオンギヤPgに伝達され、ピニオンギヤPgが降って低回転から高速回転へと連続的に変移されたトルネードギヤTgの回転動力が二方向クラッチF2を経て第1遊星歯車装置10に伝達されるが、このトルネードギヤTg(ピニオンギヤPg)が制動されて、(150回転/rpmで)始動するまでの間、エンジン回転数は加速が途切れないようにイナーシャトルクを含めて電子制御される。そして第3ブレーキB3が係合されるとともに、エンジン回転数は元の一定回転に戻されて第1遊星歯車装置10と第2遊星歯車装置20に分配され、トルネードギアTg回転がリングギヤ10rに漸増出力されて、合成された動力が第1遊星歯車装置10から3速ギヤ列を経由して駆動輪に伝達され、3速ギヤ列による加速の状態となる。
【0092】
3速ギヤ列による加速から続けて加速状態が保持される場合は、5速ギヤ列による加速(5速〜6速)となる。プレシフトとして5速ギヤ列が確立されており、一時的にエンジン動力をリングギヤ20r→第2クラッチC2に出力させるため、第3ブレーキB3が開放され、第4ブレーキB4が係合される。そして第3クラッチC3が開放され、トルネードギヤTgに伝達されていた動力が遮断されトルネードギヤTgはイナーシャ回転となる。また第3ブレーキB3の開放により(かつ第2クラッチC2が開放されているため)第2遊星歯車装置20の分配動力は空転状態となり、エンジン動力は第2遊星歯車装置10のみに伝達されイナーシャトルクによる駆動となる。ここでトルネードアクチュエータに高油圧P2がかけられ、前記したようにトルネードアクチュエータの軸方向への力によりピニオンギヤPgが駆動回転させられ(以上は、シフトチェンジされるまでの、第4ブレーキB4が係合完了するまでの時間である)加速は途切れることなく続行されるが、好適には加速を緩除に落としシフトチェンジされるのが望ましい。続けて、第4ブレーキB4が係合完了すると同時に第1クラッチC1が開放され、第2クラッチC2が係合されて、5速にシフトチェンジされる。3速ギヤ比で2倍に増速されて駆動輪に出力されていたがエンジン回転数は変わらないので、その(一定)エンジン回転数の5速ギヤ比の回転速度と駆動輪からの回転速度は同じであり、変速ショックなくかつ瞬時にシフトチェンジされる。続けて油圧P2が排出され、トルネードギヤTg(ピニオンギヤPg)制動のための油圧P1がかけられる(第1ブレーキB1を係合して制動し、制動手段としてもよい)。第3クラッチC3が係合され、トルネードギヤTgの制動が完了したら油圧P1が排出される。続いて第4ブレーキB4が開放され、第2ブレーキB2が係合されて、第1遊星歯車装置10からの分配動力がトルネードギヤTgを経て第1遊星歯車装置20に伝達されるが、このトルネードギヤTg(ピニオンギヤPg)が制動されて、(150回転/rpmで)始動するまでの間、加速が途切れないようにエンジン回転数はイナーシャトルクを含めて電子制御される。そして第2ブレーキB2が係合されるとともに、エンジン回転数は元の一定回転に戻されて第1遊星歯車装置10と第2遊星歯車装置20に分配され、トルネードギアTg回転がキャリア20cに漸増出力されて、合成された動力が第2遊星歯車装置20から5速ギヤ列を経由して駆動輪に伝達され、5速ギヤ列による加速の状態となる。
【0093】
5速ギヤ列による加速から続けて加速状態が保持される場合は、7速ギヤ列による加速となる。プレシフトとして7速ギヤ列が確立されており、3速ギヤ列による加速と同じ工程により7速にシフトチェンジされ、エンジン動力は第1遊星歯車装置10と第2遊星歯車装置20に分配され、トルネードギアTg回転がリングギヤ10rに漸増出力されて、合成された動力が第1遊星歯車装置10から7速ギヤ列を経由して駆動輪に伝達され、7速ギヤ列による加速の状態となる。
【0094】
以上の、トルネードギヤTg(ピニオンギヤPg)の駆動や制動等は、前記ECU(切り替え手段)の制御により実行される。
【0095】
このように、変速前に次の変速段のドグクラッチを締結するプレシフトにより変速時の動作を2つのクラッチの掛け換え制御のみとするツインクラッチの特徴をそのままに、本実施例ではさらにエンジン回転を略一定とし、かつ変速ショックなくシフトチェンジが可能となる。
【0096】
尚、省エネモードの加速走行時のアクセルペダル踏み込み、つまりa1以上のアクセルペダル踏み込みにおいては、エンジン回転数は概ね略一定に保たれるが、そのエンジン回転数は、a1以上の加速領域でのアクセルペダル踏み込み量に応じて決定される。
【0097】
また登坂路での加速、あるいは加速途中の登坂路進入等では、エンジン出力を上げて連続可変変速機構での加速を維持するか、下記のような連続可変変速機構を用いない通常変速段機構に切り替えるかの判断等は、アクセル踏み込み量等の情報により制御される。
【0098】
本実施例は、動力伝達経路切り替え手段(ECU)により、歯車式連続可変変速機構を変速段機構の伝達経路から切り離すことができ、通常の変速段ミッションと同じようにエンジン→変速段機構→駆動輪の伝達経路を独立して作動させることができる。したがって万一トルネードギヤTgやピニオンギヤPgに不具合が生じてもツインクラッチミッションとして走行が可能である。
【0099】
[ 定速走行 ]
定速走行では上記のように歯車式連続可変変速機構を用いない通常変速段機構での走行とされる。つまり、第1遊星歯車装置10のリングギヤ10rが固定され(第1ブレーキB1係合)てエンジン動力→サンギヤ10s→キャリア10c→第1クラッチC1に連結されたギヤ列、という伝達経路により、あるいは第2遊星歯車装置20のキャリア20cが固定され(第4ブレーキB4係合)てエンジン動力→サンギヤ20s→リングギヤ20r→第2クラッチC2に連結されたギヤ列、という伝達経路により駆動輪に動力伝達される。
【0100】
例えば省エネモードにおいて、前記加速状態からアクセルペダルが戻され、アクセル踏み込み量がa0〜a1になったら定速走行状態とされ、ECU(動力伝達経路切り替え手段)は、定速走行への移行と判断し、前記加速の動作状態から前記定速走行の動作に移行する。本実施例での加速から定速への移行は、1速加速→1速と2速、3速加速→3速と4速、5速加速→5速と6速、7速加速→7速となり、一つの(加速用)ギヤ段に対して二つの定速用ギヤ段が低速側、高速側に割り当てられている。例えば1速(加速用)ギヤ段が受け持つ車速範囲のうち、低速側は1速、高速側は2速への移行となり、3速(加速用)ギヤ段が受け持つ車速範囲のうち、低速側は3速、高速側は4速への移行となる。ところで本実施例では、2速と3速、4速と5速、6速と7速が夫々同軸に配置されており、例えは゛、1速加速時において高速側車速に入ったとき、加速が続行されると判断され、スムーズに加速時シフトチェンジを行うための3速ギヤ列確立動作が始まる直前まで2速ギヤ列で待機される、また3速加速時において高速側車速に入ったとき、加速が続行されると判断され、スムーズに加速時シフトチェンジを行うための5速ギヤ列確立動作が始まる直前まで4速ギヤ列で待機される、というような制御が行われる。あるいは、他の態様として、例えば2速、4速、6速を第4の軸に配置し4軸方式としてもよい。また、前記高速側ギヤ段での定速走行から加速走行に移行する場合は、例えばピニオンギヤPgをトルネードギヤTgの中間位置に待機させておき、2速→1速加速、4速→3速加速、6速→5速加速というように1段落としたギヤ段加速を行う。
【0101】
また、省エネモードでの加速走行から定速走行へ移行されたとき、エンジン回転をその時の車速での現変速段の回転数に合わせるように構成してもよいが、定速走行移行時に現変速段での車速の範囲の中で、高速領域であった場合には、スロットル開度は大きくなって燃費も悪くなり、また急激なエンジン回転変動が運転者に違和感を与えることにもなる。ところで従来、車両の燃費性能向上を目的としてコースティング走行(アクセルペダルを開放した状態での惰性走行)が知られているが、本実施例では省エネ走行として、加速走行から定速走行へ移行した時、現ギヤ段での略最低車速になるまでニュートラルコースティング走行とされ、第1クラッチC1や第2クラッチC2等駆動経路の動力断続装置を開放してエンジン動力を遮断しエンジンブレーキ効果を排除した走行とし(エンジンはアイドリング回転)、現ギヤ段での最低車速になった時点で動力断続装置を係合してクルーズコントロールを行うとされる。この場合、運転者の判断でアクセルペダルの踏み込みを上下させれば、直ちに加速あるいは減速にシフトして駆動を確保することができるわけで、特殊な走行環境を除けば、こういったニュートラル走行併用も可能であり認可されてしかるべきである。
【0102】
また、ステアリングホイールに省エネモードとマニュアルモードを切り替えるためのパドル式の手動操作装置等を設け、簡便にマニュアルモード走行に切り替えて交通の流れに対応したクルーズ走行とすることも可能である。
【0103】
[ 減速 走行 ]
アクセルペダルが戻され、アクセル踏み込み量が前記a0になった場合、あるいは足がアクセルペダルから離れブレーキペダルが踏まれた場合、ECUは、減速と判断し、減速走行の動作を行う。減速時の各装置の状態は定速走行時と同じであり、駆動輪から、第1クラッチC1に連結されたギヤ列の減速動作は、第1遊星歯車装置10のリングギヤ10rが固定され(第1ブレーキB1係合)てキャリア10c→サンギヤ10sの伝達経路によりエンジンブレーキが作動する。第2クラッチC2に連結されたギヤ列の減速動作は、第2遊星歯車装置20のキャリア20cが固定され(第4ブレーキB4係合)てリングギヤ20r→プラネタリギヤ20p→サンギヤ20sの伝達経路によりエンジンブレーキが作動する。現変速段での減速からさらにそのまま減速が続行される場合は、減速時シフトチェンジ(シフトダウン)となり、通常変速段と同じようにダブルクラッチ、ブリッピング等の制御が行われダウンシフトされる。また、各ギヤ段(列)での減速走行から加速走行への移行は、定速走行から加速走行への移行と同じとされる。
【0104】
以上のトルネードギヤとピニオンギヤの制御、シフト操作やシフトタイミングの制御、エンジン回転等の制御等は図示しないアクセルペダルの踏込み量や車速等の車両の情報と各種制御プログラムやマップに基づいて実現される。
【0105】
2つめの実施例として、変速段機構とトルネードギヤ部が同軸的に配置され、変速段機構は複数組の遊星歯車装置の回転要素が、油圧アクチュエータによって係合させられる多板式、単板式のクラッチやブレーキ等の油圧式の摩擦係合装置等により選択的に連結されることにより複数のギヤ段(変速段)が択一的に達成される公知の遊星歯車式の多段変速機構とし、トルネードギヤ部の二つの軸から出力される動力を公知の方法により変速して出力部材に伝達される。この場合、トルクコンバーターを備えた構成としてもよい。トルクコンバーターは、他の実施例においてもトルクコンバーターを備えた構成とすることができる。
【0106】
また他の実施例として、全速域を網羅する歯車式連続可変変速機構と変速段機構とにより構成することもできる。また動力の分配・合成を行わず、直接、歯車式連続可変変速機構での加速と歯車式連続可変変速機構を用いない定速を切り替えて、変速段機構に動力伝達されるという構成にすることもできる。
【0107】
以上、本発明の動力伝達機構及びギヤ式連続可変変速機構を実施形態に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。例えば、上記したように、請求項1において動力分配機構と、動力合成機構とを有しないで、単に円錐渦巻き列歯車式連続可変変速機構と、段階的にギヤ比を変える変速段機構と、を有することを特徴とする歯車式無段変速機構としてもよい。動力伝達経路は、動力源(エンジン)→変速段機構→円錐渦巻き列歯車式連続可変変速機構→出力部材という連結にしてもよいし、他の伝達経路にしてもよい。。また本実施形態では差動機構として、三つの回転要素からなる遊星歯車機構を用い、例えば第1遊星歯車機構10では三回転要素のうち、動力の入力軸をサンギヤに、トルネードギヤTgをリングギヤ10rに、変速段機構への出力にキャリア10cを連結したが、該入出力軸やトルネードギヤTgは他の回転要素にも連結可能であり、いろいろな組み合わせが可能である。また歯車式連続可変変速機構は、複数使用することも可能であり、直列に複数、また動力を分配する形で並列に少なくとも一つ配設するという構成も可能である。また動力発生源にはガソリンやディーゼル等の内燃機関、電動機を用いるが、水素エンジン、LPGエンジン、メタノールエンジン等を用いることもできる。その他、本発明では様々な機構、装置等による配設・構成が可能である。
【符号の説明】
【0108】
1駆動軸
2第1入力軸
3第2入力軸
4中間軸
5出力軸
6ヘリカルギヤ軸
7筒ケース
10第1遊星歯車装置
20第2遊星歯車装置
30第3遊星歯車装置
11ベベルギヤ
12軸ギヤ
13入力軸ギヤ
14中間軸ギヤ
15アーム
16ピニオンギヤ位置センサ
17シフトフォーク
Tgトルネードギヤ
Pgピニオンギヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回転軸を有するとともに、
円錐状または円盤状の、外周面に、略均等な歯が等ピッチをもって並設された歯列がスパイラル状に延設されてなる渦巻き列歯車と、
該渦巻き列歯車の、円錐面(ピッチ円錐面)上での母線または円盤状の係方向と、平行に配置される第2の回転軸を有し、
前記渦巻き列歯車に噛み合うとともに前記第2の回転軸の方向に沿って移動自在に設けられた第2の歯車と、を備え、
前記渦巻き列歯車に対して、
前記第2の回転軸の回転に起因して従回転する前記第2の歯車が噛み合い位置を連続的に変更しながら移動するとき、
または前記渦巻き列歯車の回転に起因して従回転する前記第2の歯車が噛み合い位置を連続的に変更しながら移動するとき、
前記渦巻き列歯車のピッチ円の半径が連続的に変化する、
歯車式連続可変変速機構と、
前記渦巻き列歯車と前記第2の歯車の少なくとも一つ、を駆動させる駆動手段と、
前記渦巻き列歯車と前記第2の歯車の少なくとも一つ、を制動させる制動手段と、
前記駆動手段と前記制動手段と、を切り替える切り替え手段と、
動力を段階的に変速して出力する変速段機構と、
動力源から駆動輪に至る動力伝達経路において、前記歯車式連続可変変速機構を含む経路と含まない経路とを切り替える動力伝達経路切り替え手段と、
を備え、車両に搭載される、
ことを特徴とする歯車式無段変速機構。
【請求項2】
動力源の動力を分配する動力分配機構と、
分配された動力を利用する前記歯車式連続可変変速機構から出力される動力を合成する動力合成機構と、
をさらに備えたことを特徴とする前記請求項1に記載の歯車式無段変速機構。
【請求項3】
前記歯車式連続可変変速機構は、
前記渦巻き列歯車が、正回転での動力伝達と逆回転での動力伝達と、の二つの動力伝達方法を有する、
ことを特徴とする前記請求項1または2いずれかに記載の歯車式無段変速機構。
【請求項4】
前記渦巻き列歯車は、正回転での動力伝達と逆回転での動力伝達とが交互に行われる、
ことを特徴とする前記請求項1乃至3いずれかに記載の歯車式無段変速機構。
【請求項5】
前記渦巻き列歯車は、正回転での動力伝達と逆回転での動力伝達とが連続して行われる、
ことを特徴とする前記請求項1乃至4いずれかに記載の歯車式無段変速機構。
【請求項6】
前記動力分配機構と前記動力合成機構の少なくとも一つは、差動機構である、
ことを特徴とする前記請求項2に記載の歯車式無段変速機構。
【請求項7】
前記差動機構は、遊星歯車機構または差動歯車機構である、ことを特徴とする前記請求項6に記載の歯車式無段変速機構。
【請求項8】
複数の差動機構を備え、
一の差動機構が前記動力分配機構の構成要素として用いられたとき、他の差動機構は前記動力合成機構として用いられ、
他の差動機構が前記動力分配機構の構成要素として用いられたとき、一の差動機構は前記動力合成機構として用いられる、
ことを特徴とする前記請求項1乃至7いずれかに記載の歯車式無段変速機構。
【請求項9】
前記第2の歯車に働く軸方向への力により、該第2の歯車が前記第2の回転軸を移動自在となす移動手段をさらに備えた、
ことを特徴とする前記請求項1乃至8いずれかに記載の歯車式無段変速機構。
【請求項10】
前記第2の歯車に働く軸方向への力を、該第2の歯車の回転駆動と回転制動の少なくとも一つに利用する、
ことを特徴とする前記請求項1乃至9いずれかに記載の歯車式無段変速機構。
【請求項11】
前記移動手段は、
油圧とワイヤ機構、またはボールねじ機構、を用いる、
ことを特徴とする前記請求項1乃至10いずれかに記載の歯車式無段変速機構。
【請求項12】
前記第2の歯車の位置を検知する第2歯車位置検知手段をさらに備えたことを特徴とする前記請求項1乃至11いずれかに記載の歯車式無段変速機構。
【請求項13】
前記円錐状渦巻き列歯車の内部は中空空間を有する、または軽量物質により充填されている、ことを特徴とする前記請求項1乃至12いずれかに記載の歯車式無段変速機構。
【請求項14】
さらに、前記内部中空空間には前記動力分配機構と前記動力合成機構の少なくとも一つを内設した、ことを特徴とする前記請求項13に記載の歯車式無段変速機構。
【請求項15】
動力源の動力を断接自在となすクラッチ機構であって
前記変速段機構は、
複数の前記クラッチ機構に連結される、
ことを特徴とする前記請求項1乃至14いずれかに記載の歯車式無段変速機構。
【請求項16】
電動機をさらに備えたことを特徴とする前記請求項1乃至15いずれかに記載の歯車式無段変速機構。
【請求項17】
前記第2の回転軸と前記渦巻き列歯車の少なくとも一つ、の回転駆動に電動機を用いる、
ことを特徴とする前記請求項1乃至16いずれかに記載の歯車式無段変速機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−64511(P2013−64511A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2013−279(P2013−279)
【出願日】平成25年1月6日(2013.1.6)
【出願人】(310000129)
【Fターム(参考)】