説明

歯車歯面形状測定機の評価法

【課題】 (1)高精度に製作でき、(2)高精度に値付け測定ができ、(3)トレーサビリティの保証も容易に行える、はすば歯車歯筋測定に対する検査・校正に用いる検査・校正アーティファクト及び検査・校正法を提供する。
【解決手段】 アーティファクト10は、第1の平面に含まれる第1の基準部16と、第1の平面と非直角の所定の角度γをなす第2の平面に含まれる第2の基準部12とを備える。第1の基準部16の位置及び傾きが、歯車歯面形状測定機に設置される測定対象はすば歯車の歯筋測定が行われるときの歯筋測定歯面の位置及び傾きと略一致するように、かつ、第2の基準部12が、測定対象はすば歯車の中心軸と略平行又は略垂直となるように、歯車歯面形状測定機に設置された状態で、第1の基準部16を測定対象はすば歯車の歯筋測定歯面と見立てて、歯筋測定が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車歯面形状測定機の評価方法に関し、詳しくは、歯車歯面形状測定機のはすば歯車歯筋測定の測定精度を評価するための検査・校正アーティファクト及びそれを用いて歯車歯面形状測定機のはすば歯車歯筋測定の測定精度を評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
生産歯車(製品として出荷される歯車)を測定する歯車歯面形状測定機の検査・校正は、測定部分の寸法・形状が既知の検査・校正アーティファクト(標準器)を測定することにより行われている。
【0003】
はすば歯車の歯筋測定精度については、ヘリコイドアーティファクトにより検査・校正がされている。例えば、非特許文献1には、円筒部分にヘリコイド形状の溝を設けたヘリコイドアーティファクトが開示されている。
【非特許文献1】"ISO 18653:2003 Gears−−Evaluation of instruments for the measurement of individual gears",International Organization for Standardization(Figure 4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなアーティファクトは、三次元的に複雑な形状であるため、高精度に製作することは困難である。また、値付け測定を精度よく行うことも難しい。
【0005】
さらに、アーティファクトはトレーサビリティを保証する必要があるが、ヘリコイドアーティファクトのような複雑な面形状に対しては、どの程度詳細に値付け測定すれば、面形状としてトレーサブルと考えられるかが、明らかになっていない。また、現状のアーティファクトは、その高精度形状測定が困難なこともあり、通常、トレーサビリティは保証されていない。
【0006】
本来、アーティファクトは、検査・校正に用いる部分を高精度に製作できなければならない。また、高精度に値付け測定ができなければならない。また、トレーサビリティの保証も望まれる。
【0007】
本発明は、かかる実情に鑑みて、(1)高精度に製作でき、(2)高精度に値付け測定ができ、(3)トレーサビリティの保証も容易に行える、歯車歯面形状測定機のはすば歯車歯筋測定に対する検査・校正に用いる検査・校正アーティファクト、及び該アーティファクトを用いた歯車歯面形状測定機のはすば歯車歯筋測定の測定精度の検査・校正法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した、歯車歯面形状測定機のはすば歯車歯筋測定に対する検査・校正に用いる検査・校正アーティファクトを提供する。
【0009】
歯車歯面形状測定機のはすば歯車歯筋測定に対する検査・校正に用いる検査・校正アーティファクトは、第1の平面に含まれる第1の基準部と、前記第1の平面と非直角の所定の角度をなす第2の平面に含まれる第2の基準部とを備える。前記検査・校正アーティファクトは、歯車歯面形状測定機のはすば歯車歯筋測定に対する検査・校正のために、a)前記第1の基準部の位置及び傾きが、前記歯車歯面形状測定機に設置される測定対象のはすば歯車(以下、「測定対象はすば歯車」という。)の歯筋測定が行われるとき歯筋測定歯面の位置及び傾きと略一致するように、かつ、b)前記第2の基準部が、前記歯車歯面形状測定機に設置されたときの前記測定対象はすば歯車の中心軸と略平行又は略垂直となるように、前記歯車歯面形状測定機に設置された状態で、前記第1の基準部を前記測定対象はすば歯車の前記歯筋測定歯面と見立てて、歯筋測定が行われる。
【0010】
上記構成において、検査・校正アーティファクトは、第1及び第2の基準部が平面であるので、高精度に製作することができる。また、第1及び第2の基準部について、平面度や所定の角度の値付け測定も容易であり、トレーサビリティの保証も容易である。
【0011】
上記構成によれば、第1の基準部を測定対象はすば歯車の歯筋測定歯面と見立てて歯車歯面形状測定機で測定したときの歯筋測定の理論値と実測値とを比較することにより、歯車歯面形状測定機の歯筋測定の測定精度(測定誤差)を評価することができる。
【0012】
上記構成において、検査・校正アーティファクトの第1の基準部と第2の基準部とがなす所定の角度は、第1の基準部を測定対象はすば歯車の歯筋測定歯面と見立てて測定したときの第1の基準部と測定対象歯車の歯筋測定歯面との理論的隙間が測定に適正なように決定し、検査・校正アーティファクトの第1の基準部を歯筋測定歯面と見立てて歯筋測定可能な範囲内に配置することにより、歯車歯面形状測定機で実際に計測する。この場合、測定対象はすば歯車の歯筋測定歯面に近い形状を計測することができる。
【0013】
あるいは、第1の基準部と第2の基準部とが所定の角度をなす検査・校正アーティファクトについて、第1の基準部と測定対象歯車の歯筋測定歯面との理論的隙間が測定に適正となり、歯筋測定も可能となるように、測定対象はすば歯車の歯車諸元(ねじれ角、ピッチ円半径、歯幅を含む。)を適宜に設定して、検査・校正アーティファクトの第1の基準部を測定対象はすば歯車の歯筋測定歯面と見立てて測定してもよい。この場合、一つの検査・校正アーティファクトで種々の歯車諸元の測定対象はすば歯車について、検査・校正を行うことができる。
【0014】
好ましくは、第3ないし第5の基準部のうち、少なくとも一つの基準をさらに備える。前記第3の基準部は、前記第1の平面に直交するとともに前記第2の平面に直交する第3の平面に含まれる。前記第4の基準部は、前記第3の平面と所定の間隔を設けて平行に延在する第4の平面に含まれる。前記第5の基準部は、前記第2の平面に直交するとともに前記第3の平面に直交する第5の平面に含まれる。
【0015】
上記構成において、第3ないし第5の基準部は、平面であるので、高精度に製作することができ、それぞれの平面度や直角度の値付け測定も容易であり、トレーサビリティの保証も容易である。
【0016】
上記構成によれば、検査・校正アーティファクトを歯車歯面形状測定機に設置して、第2の基準部と、第3ないし第5の基準部の中の少なくとも一つとを測定すれば、値付け測定の結果に基づいて、第1の基準部を測定することなく容易に、かつ高精度に、第1の基準部の位置及び傾きを求めることができる。
【0017】
好ましくは、前記第3の基準部及び前記第4の基準部を備える。
【0018】
上記構成によれば、右ねじれ、左ねじれの両方の測定対象はすば歯車を想定して、検査・校正アーティファクトを用いることができる。
【0019】
また、本発明は、上記課題を解決するために、歯車歯面形状測定機のはすば歯車歯筋測定の測定精度の検査・校正法を提供する。
【0020】
歯車歯面形状測定機のはすば歯車歯筋測定の測定精度の検査・校正法は、第1の平面に含まれる第1の基準部と、前記第1の平面と非直角の所定の角度をなす第2の平面に含まれる第2の基準部とを備え、予め値付け測定が行われた検査・校正アーティファクトを用いる。歯車歯面形状測定機のはすば歯車歯筋測定の測定精度の検査・校正法は、第1ないし第5のステップを備える。前記第1のステップにおいて、a)前記検査・校正アーティファクトの前記第1の基準部の位置及び傾きが、前記歯車歯面形状測定機に設置される測定対象のはすば歯車(以下、「測定対象はすば歯車」という。)の歯筋測定が行われるときの歯筋測定歯面の位置及び傾きと略一致するように、かつ、b)前記検査・校正アーティファクトの前記第2の基準部が、前記歯車歯面形状測定機に設置されたときの前記測定対象はすば歯車の中心軸と略平行又は略垂直となるように、前記検査・校正アーティファクトを前記歯車歯面形状測定機に設置する。前記第2のステップにおいて、前記歯車歯面形状測定機に設置された前記検査・校正アーティファクトについて測定を行い、前記検査・校正アーティファクトの前記第1の基準部の位置及び傾きを求める。前記第3のステップにおいて、前記検査・校正アーティファクトの前記第1の基準部を、前記測定対象はすば歯車の前記歯筋測定歯面と見立てて、前記歯車歯面形状測定機で歯筋測定を行い、該歯筋測定の実測値を得る。前記第4のステップにおいて、前記検査・校正アーティファクトの前記値付け測定の結果と、前記第2のステップにより求めた前記検査・校正アーティファクトの前記第1の基準部の前記位置及び前記傾きとに基づいて、前記歯筋測定の理論値を算出する。前記第5のステップにおいて、前記第3のステップで得た前記歯筋測定の前記実測値と、前記第4のステップで算出した前記歯筋測定の前記理論値とを比較する。
【0021】
上記検査・校正方法において、第3のステップは、第2のステップ又は第4のステップとの順序を入れ替えてもよい。また、第3のステップは、第2のステップと第4のステップの少なくとも一方と、平行して実行してもよい。
【0022】
第1のステップにおいて、検査・校正アーティファクトの第1の基準部の位置及び傾きが測定対象はすば歯車の歯筋測定歯面の位置及び傾きと略一致するように調整しながら、検査・校正アーティファクトを歯車歯面形状測定機に設置してもよい。
【0023】
第2のステップにおいて、検査・校正アーティファクトの第1の基準部の位置及び傾きは、第1の基準部を測定することにより、直接、求めてもよい。あるいは、検査・校正アーティファクトの値付け測定の結果と、検査・校正アーティファクトの第2の基準部の測定とから、間接的に求めてもよい。間接的に求める場合には、検査・校正アーティファクトの第1の基準部の測定も行うようにしてもよい。
【0024】
第1のステップにより、検査・校正アーティファクトは、第1の基準部の位置及び傾きが測定対象はすば歯車の歯筋測定歯面の位置及び傾きと略一致するように、歯車歯面形状測定機に設置されるので、第3のステップにおいて、検査・校正アーティファクトの第1の基準部を、測定対象はすば歯車の歯筋測定歯面と見立てて、歯車歯面形状測定機で歯筋測定を行うことができる。
【0025】
第5のステップで、歯筋測定の理論値と実測値とを比較することにより、歯車歯面形状測定機の歯筋測定の測定精度(測定誤差)を評価することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、(1)高精度に製作でき、(2)高精度に値付け測定ができ、(3)トレーサビリティの保証も容易に行える、歯車歯面形状測定機のはすば歯車歯筋測定に対する検査・校正に用いる検査・校正アーティファクト及び該アーティファクトを用いた歯車歯面形状測定機のはすば歯車歯筋測定の測定精度の検査・校正法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図9を参照しながら説明する。
【0028】
まず、本発明の検査・校正アーティファクト(以下、「アーティファクト」という。)の原理とその設計及び使用方法について、図7〜図9を参照しながら説明する。
【0029】
図7に示すように、歯筋測定を行うはすば歯車の1つの歯面にプローブが当接する軌跡、すなわち当該歯面の歯筋方向の形状は、同一半径部分にプローブが当接するので、理想的には、中心軸50まわりの螺旋52となる。実際には、はすば歯車の歯幅は有限であるので、螺旋52のうち、はすば歯車の歯幅に相当する部分54だけが、歯面上に存在する。このような有限部分54の螺旋52に対して、適当な平面を選べば、その平面の近傍に有限部分54の螺旋52が位置するようにすることができる。
【0030】
図8の透視図に示すように、はすば歯車の歯筋測定を行う歯面上においてプローブが当接する歯筋方向の形状に相当する螺旋64は、歯筋測定半径を有する円筒面60上に位置する。図中の楕円62は、ある平面と歯筋測定半径を有する円筒面60との交線である。図8のように、適当な平面を選べば、螺旋64と楕円62の空間的位置は、ある区間66でほぼ重なるようにすることができる。
【0031】
このように、螺旋64の一部とほぼ重なる平面(以下、「歯筋相当平面)という。)を有するアーティファクトを用い、アーティファクトの歯筋相当平面を、螺旋64に相当する歯筋方向の形状を有するはすば歯車の歯面であると想定して、測定誤差のない歯車歯面形状測定機で歯筋測定を行うと、本来の螺旋64の代わりに楕円62近傍の歯筋相当平面上にプローブが接し、計測される。測定誤差のない歯車歯面形状測定機では、螺旋64にプローブが接したときに計測される歯筋誤差はゼロであるので、螺旋64と歯筋相当平面との隔たりの歯車作用線方向成分を、歯筋誤差の測定値として出力する。このような歯筋誤差の測定値は、理論的に求めることができる。なお、はすば歯車のインボリュートヘリコイド面の作用面を、歯車軸に直角な面に投影したものを「歯車作用線」又は「作用線」という。
【0032】
図9中の曲線A(以下、「理論値曲線A」という。)は、このように歯筋相当平面をはすば歯車の歯面であると想定して歯筋測定を行った場合に測定される歯筋誤差を理論的に求めた例である。横軸が歯幅(歯筋方向)、縦軸が歯筋誤差である。
【0033】
実際の歯車歯面形状測定機は測定値に測定誤差を含むため、歯筋相当平面をはすば歯車の歯面であると想定して歯筋測定を行った場合、理論値曲線Aとは異なる曲線B(以下、「実測値曲線B」という。)のような測定結果を出力する。理論値曲線Aと実測値曲線Bとの差は、歯車歯面形状測定機が有する誤差を示すものであるので、理論値曲線Aと実測値曲線Bの差を用いることによって歯車歯面形状測定機のはすば歯車歯筋測定の測定精度の検査・校正が可能となる。
【0034】
なお、実測値曲線Bには、歯筋相当平面の測定部分の平面度の狂いも含まれるが、通常、平面は高精度に製作できるため、平面度の狂いが実測値曲線Bに与える影響は実質上無視できる。
【0035】
また、実測値曲線Bには、実際に測定したときの歯筋相当平面の位置及び傾きと、理論計算上の歯筋相当平面の位置及び傾きとの違いの影響も含まれる。この場合、歯筋相当平面の実際の位置及び傾きを考慮した理論計算を行い、理論値曲線Aを求め、実測値曲線Bとの差をとれば、実際の平面の位置及び傾きと、理論計算上の位置及び傾きとの違いの影響は排除され、理論値曲線Aと実測値曲線Bの差は、歯車歯面形状測定機が有する誤差だけを示すものとなる。
【0036】
歯筋相当平面を有するアーティファクトを、歯車歯面形状測定機の検査・校正に実際に用いることができるようにするためには、歯車歯面形状測定機の検査・校正の対象とするはすば歯車とアーティファクトの歯筋相当平面とが、次の条件(a)および(b)を満たす必要がある。
【0037】
(a)実測値曲線Bが、歯車歯面形状測定機が保証する測定値の範囲内に収まること
歯車歯面形状測定機が保証する測定値の範囲には限界があり、例えば、±200μmの範囲となる。そのため、歯車歯面形状測定機の検査・校正のためには、歯車歯面形状測定機の出力である実測値曲線Bがこの範囲を超えないようにする必要がある。これを実現するように、はすば歯車の歯筋に相当する螺旋と歯筋相当平面との隔たりが大きくなり過ぎないようにする。
【0038】
(b)歯車歯面形状測定機のプローブが、測定中にアーティファクトの歯筋相当平面外に出ないこと
アーティファクトが有する歯筋相当平面は有限であるため、歯車歯面形状測定機のプローブが測定中に歯筋相当平面の端からはみ出さないようにする必要がある。
【0039】
次に、歯筋相当平面を有するアーティファクトの具体的な使用方法について、説明する。
【0040】
(使用方法1) 検査・校正の対象とするはすば歯車の歯車諸元が決まっており、そのはすば歯車に対して設計されたアーティファクトを用いる場合について説明する。
【0041】
アーティファクトの設計において、条件(a)を満たすように、歯筋相当平面の傾きを、計算により決定する。また、条件(b)を満たし、測定中にプローブが歯筋相当平面の端からはみ出さないように、歯筋相当平面を適切な大きさに設計する。
【0042】
このような設計に基づいて製作されたアーティファクトの歯筋相当平面の傾きは、実際には、設計値とは若干異なるものとなる。アーティファクトの歯筋相当平面の傾きの設計値との違いが無視できない場合には、歯筋相当平面の傾きの値付け結果を考慮した計算により理論値を求め、アーティファクトを用いてはすば歯車を想定した歯筋測定を行って得た実測値と比較すればよい。
【0043】
(使用方法2) 歯筋相当平面の傾きが既知のアーティファクトが既にあり、そのアーティファクトを用い、はすば歯車の歯車諸元を想定して、歯車歯面形状測定機を検査・校正する場合の使用方法について説明する。
【0044】
はすば歯車の歯車諸元を適宜に仮定し、アーティファクトの既知の歯筋相当平面の傾きを考慮して計算を行い、条件(a)及び(b)を満たすことを確認し、歯筋計測の理論値を求める。条件(a)又は(b)を満たさない場合には、はすば歯車の歯車諸元の仮定を見直す。
【0045】
つぎに、理論値を求める際に仮定したはすば歯車の歯車諸元を想定した歯筋測定を行い、歯筋測定の実測値を得て、理論値と比較する。
【0046】
この使用方法によれば、1つのアーティファクトで、ねじれ角や基礎円半径の異なる様々な歯車諸元のはすば歯車を対象とすることができる。このため、使用方法1のように、特定の歯車諸元のはすば歯車を対象として製作されたアーティファクトでも、歯車諸元の異なるはすば歯車を想定して、歯車歯面形状測定機の検査・校正に用いることができる。
【0047】
(実施例) アーティファクト10は、図1(a)及び(c)に示すように正面及び背面から見ると長方形、図1(b)及び(d)に示すように側面から見ると略三角形のブロック状の部材である。底面18及び背面12は、互いに略直交する長方形である。右側面14及び左側面15は、互いに平行に延在する左右対称の略直角三角形であり、それぞれ、底面18と略直交し、背面12と直交する。
【0048】
アーティファクト10の正面下部には、底面18、右側面14及び左側面15と略直交する略長方形の前面17が形成されている。アーティファクト10の上部には、背面12、右側面14及び左側面15と略直交する略長方形の上面11が形成されている。
【0049】
アーティファクト10の正面上部には、略長方形の斜面16が形成されている。斜面16は、右側面14及び左側面15と直交し、背面12に対して所定の角度γだけ傾いている。斜面16は、歯面と見立てて歯車歯面形状測定機で歯筋測定される歯筋相当平面である。前述したように、角度γは、歯車歯面形状測定機に計測条件として設定される測定対象のはすば歯車の歯車諸元に対応して決めることができる。
【0050】
アーティファクト10を構成する面のうち、背面12、右側面14、左側面15、斜面16は、測定対象となる。背面12、右側面14、左側面15、斜面16は、平面であるので、高精度に製作することができ、高精度な値付け測定が容易である。
【0051】
すなわち、背面12、右側面14、左側面15、斜面16のそれぞれは、非常に良好な平面度に加工することができ、それぞれの平面度は、例えば光学干渉縞を利用することにより、高精度に(例えば、20nm程度の精度で)測定することができる。また、背面12と右側面14との直角度、背面12と左側面15との直角度、斜面16と右側面14との直角度、及び斜面16と左側面15との直角度、背面12と斜面16との角度も、それぞれ、非常に高精度に加工することができ、高精度に角度を値付け測定することができる。
【0052】
なお、背面12、右側面14、左側面15、斜面16は、測定対象となる部分のみを高精度に加工すればよく、必ずしも、それぞれの面全体を高精度に加工する必要はない。例えば図4に示したように、背面12、右側面14、左側面15(図示せず)には、それぞれ、高精度に加工された垂直方向に延在する部分12a,14a,15a(図示せず)と、高精度に加工された水平方向に延在する部分12b,14b,15b(図示せず)とが含まれていればよく、斜線を付した部分は、必ずしも高精度に加工する必要はない。
【0053】
また、測定に支障がない領域には、アーティファクト10の取り扱いを容易にするための凹部など、例えば右側面14と左側面15との間を貫通する貫通穴13を形成してもよい。
【0054】
アーティファクト10は、製作後、高精度な測定装置(例えば、トレーサブルな三次元座標測定機)を用いて、予め値付け測定を行い、その値付け測定結果を記憶する。すなわち、背面12、右側面14、左側面15、斜面16のそれぞれの平面度を測定する。また、背面12と斜面16とがなす角度γ、背面12と右側面14との直角度、背面12と左側面15との直角度、斜面16と右側面14との直角度、及び斜面16と左側面15との直角度を、それぞれ測定する。
【0055】
図2に示すように、アーティファクト10は、歯車歯面形状測定機2の回転テーブル4上に載置し、歯車歯面形状測定機2で測定を行う。これによって、歯車歯面形状測定機2のはすば歯車歯筋測定の検査・校正を行う。
【0056】
歯車歯面形状測定機2の回転テーブル4は、垂直方向の中心軸Mのまわりを回転可能である。歯車歯面形状測定機2は、水平面内の直交2方向に移動可能なコラム5にセンサ取付部6が設けられている。以下では、垂直方向(中心軸Mと平行な方向)をZ方向、歯車歯面形状測定機2に設置される測定対象のはすば歯車(以下、「測定対象はすば歯車」という。)の歯筋測定が行われるときの歯筋測定歯面の作用線方向をY方向、Y方向及びZ方向の両方に直角な方向をX方向という。測定対象はすば歯車の中心軸は、回転テーブル4の中心軸Mと一致する。
【0057】
センサ取付部6は、コラム5に沿って垂直方向(Z方向)に移動可能である。センサ取付部6からは、プローブ7が、回転テーブル4側に向けて略X方向に延在している。プローブ7は、プローブ7の先端8が歯車の歯面に当接したときに変位し、プローブ7の先端8の変位を検出する。
【0058】
アーティファクト10は、不図示のチルト調節可能な治具を介して歯車歯面形状測定機2の回転テーブル4上に載置し、アーティファクト10の位置及び傾きを調整した後、アーティファクト10の斜面16を、測定対象はすば歯車の歯筋測定歯面と見立てて、歯筋測定を行う。
【0059】
アーティファクト10を歯車歯面形状測定機2の回転テーブル4上に載置し、アーティファクト10の位置及び傾きを調整するとき、アーティファクト10の斜面16の位置及び傾きが、測定対象はすば歯車の歯筋測定歯面の歯筋測定が行われるときの位置及び傾きと略一致するように調整する。これにより、アーティファクト10の斜面16を測定対象はすば歯車の歯筋測定歯面と見立てて歯筋測定を行うときに、アーティファクト10の斜面16が歯筋測定可能な範囲内に収まるようにする。すなわち、前述した条件(b)を満たすようにする。
【0060】
アーティファクト10の寸法・形状、特に背面12と斜面16とがなす角度γは、歯車歯面形状測定機2に載置されたアーティファクト10の位置調整後の斜面16と測定対象歯車の歯筋測定歯面との理論的隙間が測定に適正なように(例えば、斜面16の歯筋測定の測定値が、歯車歯面形状測定機が保証する範囲内に入るように)決定する。すなわち、前述した条件(a)を満たすようにする。これにより、アーティファクト10の斜面16を測定対象はすば歯車の歯筋測定歯面と見立てて歯筋測定したときに、歯車歯面形状測定機2で計測する測定対象はすば歯車の歯筋測定歯面に近い形状を計測することができる。
【0061】
次に、アーティファクト10を用いて検査・校正を行う手順の詳細について説明する。
【0062】
まず、アーティファクト10を回転テーブル4上に載置し、アーティファクト10の背面12と右側面14又は左側面15の傾きを測定する。このとき、アーティファクト10の位置及び傾きは、アーティファクト10の斜面16の位置及び傾きが、測定対象はすば歯車の歯筋測定歯面と見立てて歯筋測定することができる所定の位置及び傾きに概ね一致するようにする。
【0063】
所定の位置及び傾きでは、回転テーブル4の上方からZ方向にアーティファクト10を見た要部拡大図である図3に示すように、アーティファクト10の斜面16の法線がX方向に垂直な平面(Y−Z面)に含まれ、アーティファクト10の斜面16にプローブ7の先端8が当接する接点と中心軸Mとの長さが、測定対象はすば歯車の歯筋測定半径(例えば基準ピッチ円半径)と一致する。また、歯筋測定を行ったときに、プローブ7の先端8は、アーティファクト10の斜面16に沿って移動し、アーティファクト10の斜面16から飛び出すことがない。理想的には、アーティファクト10の背面12の法線方向はY方向と一致し、右側面14又は左側面15の法線方向はX方向と一致する。
【0064】
アーティファクト10の傾きは、アーティファクト10の背面12と右側面14又は左側面15の傾きを測定しながら、前述した不図示のチルト調節可能な治具を用いて調整する。
【0065】
アーティファクト10の背面12と右側面14又は左側面15の傾きは、例えば、コラム5のセンサ取付部6に高精度な測定器(例えば、電気マイクロメーター)を取り付け、アーティファクト10の背面12と右側面14又は左側面15にこの測定器のプローブを当接させた状態で、コラム5をX方向又はY方向に移動させ、あるいはセンサ取付部6をZ方向に移動させ、コラム5又はセンサ取付部6の移動距離と測定器で測定した変位との関係から求める。
【0066】
あるいは、歯車歯面形状測定機2のプローブ7で、アーティファクト10の背面12及び右側面14又は左側面15を移動しながら測定することにより求めてもよい。この場合、例えば回転テーブル4を90度回転させ、アーティファクト10の背面12及び右側面14又は左側面15を、それぞれ、Y方向に垂直な平面(X−Z面)と略平行な状態にして測定する。
【0067】
アーティファクト10の位置及び傾きを調整した後のアーティファクト10の背面12と右側面14又は左側面15の傾きについて、最終的な測定を行い、その結果を記憶する。
【0068】
次いで、アーティファクト10の斜面16に、歯車歯面形状測定機2のプローブ7の先端8を当接させる。この歯筋測定開始状態から、アーティファクト10の斜面16がはすば歯車の歯面であると見立てて、歯車歯面形状測定機2によって、歯筋測定を行い、実測値を得る。すなわち、回転テーブル4を回転させるとともに、回転テーブルの回転角度に比例してセンサ取付部6をZ方向に移動させながら、プローブ7の先端8の変位を測定する。測定結果は、例えば、回転テーブル4の回転角とプローブ7の先端8が斜面16に接している状態での測定値とを対にして記憶する。
【0069】
次いで、アーティファクト10の斜面16が測定対象はすば歯車の歯筋測定歯面であると見立てて歯筋測定を行った場合の歯筋測定の理論値を演算する。
【0070】
まず、位置及び傾きを調整した後のアーティファクト10の背面12と右側面14又は左側面15の傾き測定結果と、アーティファクト10の値付け測定結果とに基づいて、アーティファクト10の斜面16の傾き(斜面16の方向余弦)を求める。また、歯車歯面形状測定機2のプローブ7による歯筋測定開始可能状態において、測定歯筋曲線の基準となる点を、アーティファクト10の斜面16上の点(プローブ7の先端8の接点)の位置として求める。
【0071】
次いで、アーティファクト10の斜面16がはすば歯車の歯面であると見立てて、歯車歯面形状測定機2によって歯筋測定を行った場合について、歯筋測定に対応するよう回転テーブル4を所定方向に回転させるとともに、回転テーブルの回転角度に比例してセンサ取付部6をZ方向に移動させたときの、プローブ7の先端8が斜面16に接している接触位置を算出し、歯車歯面形状測定機が出力すべき理論値を演算し、実測値を評価する際の基礎とする。
【0072】
最後に、アーティファクト10の斜面16の実測値と理論値とを比較する。例えば、図5(a)に示すように、縦軸に歯筋誤差Fβ、横軸に歯幅bをとり、実線で示した実測値(実測値曲線)と、破線で示した理論値(理論値曲線)とを同一のグラフに重ねて表示する。あるいは、図5(b)に示すように、縦軸に実測値と理論値の差ΔFβ、横軸に歯幅bをとって図示したり、偏差δ、δなどの数値を算出したりする。
【0073】
上記手順では、背面12と右側面14又は左側面15の傾きの測定結果から、斜面16の傾きを求め、理論値を算出する。つまり、アーティファクト10の背面12と、右側面14又は左側面15と、斜面16とを基準部として高精度に加工し、それぞれの平面度や直角度、背面12と斜面16とがなす角度γを予め値付け測定を行えばよい。
【0074】
なお、上記以外の他の面、例えば上面11も基準部に含め、高精度に加工し、予め値付け測定を行い、歯車歯面形状測定機2に設置したときの傾きを測定するようにしてもよい。この場合、理論値の精度が高まり、歯車歯面形状測定機2の検査・校正の精度向上が期待できる。
【0075】
(変形例1) 次に、より簡便な手順について説明する。
【0076】
図6(a)に示すように、アーティファクト10を、不図示のチルト調節可能な治具を介して、歯車歯面形状測定機2の回転テーブル4上の略所定位置に載置する。そして、回転テーブル4上のアーティファクト10の右側面14又は左側面15に、歯車歯面形状測定機2のプローブ7の先端8を当接させた状態で、アーティファクト10のセンサ取付部6をZ方向に移動させながら測定を行い、アーティファクト10の右側面14又は左側面15が回転テーブル4の中心軸Mと平行になるように、治具を用いてアーティファクト10の傾きを調整する。
【0077】
次いで、回転テーブル4上のアーティファクト10の右側面14又は左側面15に、歯車歯面形状測定機2のプローブ7の先端8を当接させた状態でコラム5をX方向に移動させながら測定を行い、回転テーブル4上のアーティファクト10の配置角度を求める。
【0078】
次いで、計測した回転テーブル4上のアーティファクト10の配置角度に応じて回転テーブル4を回転し、図6(b)に示すように、アーティファクト10の背面12がY方向と略垂直(X−Z面と略平行)になるようにする。そして、回転テーブル4上のアーティファクト10の背面12に、歯車歯面形状測定機2のプローブ7の先端8を当接させた状態で、歯車歯面形状測定機2のセンサ取付部6をZ方向に移動させながら測定を行い、アーティファクト10の背面12が回転テーブル4の中心軸Mと平行になるように、治具を用いてアーティファクト10の傾きを調整する。
【0079】
次いで、回転テーブル4上のアーティファクト10の背面12に、歯車歯面形状測定機2のプローブ7の先端8を当接させた状態で、歯車歯面形状測定機2のコラム5をX方向に移動させながら測定を行う。これらの測定時になされた回転テーブルの角度は記憶されており、これらの値を用いて回転テーブル4上のアーティファクト10の配置角度を求める。
【0080】
このとき、理想的には、アーティファクト10の背面12が、歯車歯面形状測定機2に設置された場合に想定される測定対象はすば歯車の中心軸、すなわち回転テーブル4の中心軸Mを含む平面と平行、かつ、測定対象歯車の歯筋測定歯面の作用線方向(Y方向)と直角になり、プローブ7の先端8をアーティファクト10の背面12に当接させながらZ方向に移動させても、プローブ7の先端8のY方向変位が生じないようにする。
【0081】
次いで、アーティファクト10の斜面16に、歯車歯面形状測定機2のプローブ7の先端8を当接させ、この状態から、アーティファクト10の斜面16が測定対象はすば歯車の歯筋測定歯面であると見立てて、歯車歯面形状測定機2によって、歯筋測定を行う。
【0082】
上記手順では、歯車歯面形状測定機2以外に、センサなどの測定器を用いないので、歯車歯面形状測定機2の測定精度の評価を簡単に行うことができる。
【0083】
(変形例2) 次に、別の手順について説明する。
【0084】
図6(b)に示すように、アーティファクト10の背面12がY方向と略垂直(X−Z面と略平行)になるように、回転テーブル4上の略所定位置にアーティファクト10を設置し、アーティファクト10の背面12の傾きを測定する。
【0085】
例えば、回転テーブル4上のアーティファクト10の背面12に、歯車歯面形状測定機2のプローブ7の先端8が当接した状態で、センサ取付部6をZ方向に移動させながら測定を行い、背面12のX軸まわりの角度を求める。このとき、測定値を参照し、アーティファクト10の背面12が回転テーブル4の中心軸Mとできるだけ平行になるように、不図示の治具を用いてアーティファクト10の傾きを調整した後、Z方向移動時の最終測定値(すなわち、背面12のX軸まわりの角度)を記憶するようにしてもよい。
【0086】
次いで、回転テーブル4上のアーティファクト10の背面12に歯車歯面形状測定機2のプローブ7の先端8が当接した状態で、コラム5をX方向に移動させながら測定を行い、背面12のZ軸まわりの角度を求める。このとき、測定値を参照し、プローブ7の先端8のY方向変位ができるだけ生じないように、治具を用いてアーティファクト10のZ軸まわりの傾きを調整した後、X方向移動の最終測定値(すなわち、背面12のZ軸まわりの角度)を記憶するようにしてもよい。
【0087】
次いで、アーティファクト10の斜面16に、歯車歯面形状測定機2のプローブ7の先端8を当接させ、コラム5をX方向に移動させながら測定を行い、その測定結果と、背面12の傾きの測定結果と、アーティファクト10の値付け測定結果とにより、斜面16のY軸まわりの角度を求める。このとき、測定値を参照し、プローブ7の先端8のY方向変位ができるだけ生じないように、治具を用いてアーティファクト10のY軸まわりの回転角度を調整した後、X方向移動の最終測定値(すなわち、斜面16のY軸まわりの角度)を記憶するようにしてもよい。なお、アーティファクト10の斜面16のY軸まわりの角度の測定は、後述する歯筋測定の後に行ってもよい。
【0088】
次いで、アーティファクト10の斜面16が測定対象はすば歯車の歯筋測定歯面であると見立てて、歯車歯面形状測定機2によって、歯筋測定を行う。
【0089】
上記手順では、背面12及び斜面16の測定値から、斜面16の傾きを導出し、理論値を算出することができる。つまり、アーティファクト10の背面12及び斜面16のみを基準部として高精度に加工し、背面12及び斜面16の平面度と、背面12と斜面16とがなす角度γを値付け測定するだけでよい。なお、背面12の代わりに、前面17を基準部としてもよい。
【0090】
(変形例3) 次に、さらに別の手順について説明する。
【0091】
図6(b)に示すように、アーティファクト10の背面12がY方向に略垂直(X−Z面と略平行)になるように、回転テーブル4上の略所定位置にアーティファクト10を設置し、上面11の傾きを測定する。
【0092】
次いで、アーティファクト10の斜面16に、歯車歯面形状測定機2のプローブ7の先端8を当接させ、コラム5をX方向に移動させながら測定を行い、その測定結果と、上面11の傾きの測定結果と、アーティファクト10の値付け測定結果とにより、斜面16のZ軸まわりの角度を求める。このとき、測定値を参照し、プローブ7の先端8のY方向変位ができるだけ生じないように、治具を用いてアーティファクト10のZ軸まわりの回転角度を調整した後、X方向移動の最終測定値(すなわち、斜面16のZ軸まわりの角度)を記憶するようにしてもよい。なお、アーティファクト10の斜面16のZ軸まわりの角度の測定は、後述する歯筋測定の後に行ってもよい。
【0093】
次いで、アーティファクト10の斜面16が測定対象はすば歯車の歯筋測定歯面であると見立てて、歯車歯面形状測定機2によって、歯筋測定を行う。
【0094】
上記手順では、上面11及び斜面16の測定値から、斜面16の傾きを導出し、理論値を算出することができる。つまり、アーティファクト10の上面11及び斜面16のみを基準部として高精度に加工し、上面11及び斜面16の平面度と、上面11と斜面16とがなす角度(90°−γ)を値付け測定するだけでよい。
【0095】
(まとめ) 以上に説明したように、アーティファクト10を用い、その斜面16を測定対象はすば歯車の歯筋測定歯面とみなして歯車歯面形状測定機2で歯筋測定を行い、実測値を得るとともに、この歯筋測定の理論値を求めることにより、実測値と理論値との差から、歯車歯面形状測定機2がどの程度の精度で歯筋測定を行うことができるかが分かる。アーティファクト10は、高精度に製作でき、高精度に値付け測定ができ、トレーサビリティの保証も容易である。
【0096】
歯車歯面形状測定機に設置されたアーティファクト10を測定し、その測定値に基づいて、アーティファクト10が設置された状態での歯筋測定の理論値を求めることができる。また、基準部は平面であるため、測定位置のずれを許容することができる。そのため、アーティファクト10が前述した条件(a)及び(b)を満たす略所定位置に配置されていれば、アーティファクトの設置を厳密に行わなくても検査・校正を行うことができる。したがって、検査・校正を容易に行うことが可能である。
【0097】
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施可能である。
【0098】
例えば、アーティファクト10の面11,12,14,15,16,17の位置や傾きを適宜に選択して測定し、アーティファクト10の斜面16の位置及び傾きが所定の位置及び傾きになるように調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】アーティファクトの(a)正面図、(b)右側面図、(c)背面図、(d)左側面図である。(実施例)
【図2】歯車歯面形状測定機での測定の説明図である。(実施例)
【図3】図2の歯車歯面形状測定機を上から見た要部拡大図である。(実施例)
【図4】アーティファクトの斜視図である。(実施例)
【図5】測定結果のグラフである。(実施例)
【図6】評価手順の説明図である。(変形例)
【図7】はすば歯車の歯筋の説明図である。
【図8】はすば歯車の歯筋と歯筋相当平面の説明図である。
【図9】理論値と実測値のグラフである。
【符号の説明】
【0100】
2 歯車歯面形状測定機
4 回転テーブル
5 コラム
6 センサ取付部
7 プローブ
8 先端
10 アーティファクト
11 上面(第2の基準部、第5の基準部)
12 背面(第2の基準部、第5の基準部)
14 右側面(第3の基準部、第4の基準部)
15 左側面(第4の基準部、第3の基準部)
16 斜面(第1の基準部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車歯面形状測定機のはすば歯車歯筋測定に対する検査・校正に用いる検査・校正アーティファクトであって、
第1の平面に含まれる第1の基準部と、
前記第1の平面と非直角の所定の角度をなす第2の平面に含まれる第2の基準部とを備え、
前記検査・校正アーティファクトは、歯車歯面形状測定機のはすば歯車歯筋測定に対する検査・校正のために、
a)前記第1の基準部の位置及び傾きが、前記歯車歯面形状測定機に設置される測定対象のはすば歯車(以下、「測定対象はすば歯車」という。)の歯筋測定が行われるときの歯筋測定歯面の位置及び傾きと略一致するように、かつ、
b)前記第2の基準部が、前記歯車歯面形状測定機に設置されたときの前記測定対象はすば歯車の中心軸と略平行又は略垂直となるように、
前記歯車歯面形状測定機に設置された状態で、前記第1の基準部を前記測定対象はすば歯車の前記歯筋測定歯面と見立てて、歯筋測定が行われることを特徴とする、検査・校正アーティファクト。
【請求項2】
前記第1の平面に直交するとともに前記第2の平面に直交する第3の平面に含まれる第3の基準部と、
前記第3の平面と所定の間隔を設けて平行に延在する第4の平面に含まれる第4の基準部と、
前記第2の平面に直交するとともに前記第3の平面に直交する第5の平面に含まれる第5の基準部とのうち、少なくとも一つの基準部をさらに備えたことを特徴とする、請求項1に記載の検査・校正アーティファクト。
【請求項3】
前記第3の基準部及び前記第4の基準部を備えたことを特徴とする、請求項2に記載の検査・校正アーティファクト。
【請求項4】
第1の平面に含まれる第1の基準部と、前記第1の平面と非直角の所定の角度をなす第2の平面に含まれる第2の基準部とを備え、予め値付け測定が行われた検査・校正アーティファクトを用いる、歯車歯面形状測定機のはすば歯車歯筋測定の測定精度の検査・校正法であって、
a)前記検査・校正アーティファクトの前記第1の基準部の位置及び傾きが、前記歯車歯面形状測定機に設置される測定対象のはすば歯車(以下、「測定対象はすば歯車」という。)の歯筋測定が行われるときの歯筋測定歯面の位置及び傾きと略一致するように、かつ、b)前記検査・校正アーティファクトの前記第2の基準部が、前記歯車歯面形状測定機に設置されたときの前記測定対象はすば歯車の中心軸と略平行又は略垂直となるように、前記検査・校正アーティファクトを前記歯車歯面形状測定機に設置する第1のステップと、
前記歯車歯面形状測定機に設置された前記検査・校正アーティファクトについて測定を行い、前記検査・校正アーティファクトの前記第1の基準部の位置及び傾きを求める第2のステップと、
前記検査・校正アーティファクトの前記第1の基準部を、前記測定対象はすば歯車の前記歯筋測定歯面と見立てて、前記歯車歯面形状測定機で歯筋測定を行い、該歯筋測定の実測値を得る第3のステップと、
前記検査・校正アーティファクトの前記値付け測定の結果と、前記第2のステップにより求めた前記検査・校正アーティファクトの前記第1の基準部の前記位置及び前記傾きとに基づいて、前記歯筋測定の理論値を算出する第4のステップと、
前記第3のステップで得た前記歯筋測定の前記実測値と、前記第4のステップで算出した前記歯筋測定の前記理論値とを比較する第5のステップとを備えたことを特徴とする、歯車歯面形状測定機のはすば歯車歯筋測定の測定精度の検査・校正法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−300882(P2006−300882A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126692(P2005−126692)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、経済産業省委託研究「歯車のナノレベル形状評価のための測定機の校正原器及びその原器に基づく校正方法の研究とその標準化」産業活力特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】