説明

残留応力分布予測方法、転位密度予測方法、残留応力分布予測装置、転位密度予測装置、プログラム及び記録媒体

【課題】微小領域の歪みを簡単に測定できるようにする。
【解決手段】立方晶の金属組織に15nm〜100μm間隔で電子線を照射して、後方散乱電子回折像法より測定点毎に結晶方位を決定し、決定した結晶方位分布および隣接する前記測定点間の方位角度差より、格子歪を決定し、前記格子歪に基づいて金属組織上における残留応力分布を求める。また、求めた残留応力分布および測定対象の金属材料の降伏応力に基づいて塑性域と判定された領域において、前記方位角度差と前記金属材料の弾性限とに基づいて、塑性変形により生じた角度差を算出し、前記算出した角度差に基づいて、幾何学的に必要な転位の転位密度を予測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は残留応力分布予測方法、転位密度予測方法、残留応力分布予測装置、転位密度予測装置、プログラム及び記録媒体に関し、例えば、EBSP装置の解析データより対象組織の残留応力および塑性ひずみを予測するために用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
連続体有限要素変形理論では、スラブを多数要素に分割し局所的な力の釣合いを全領域で行うことにより、例えば金属の変形中における応力分布を予測することが可能であり、金属塑性加工及び成形シミュレーションは有限要素解析により行われている。また、近年では、結晶学的因子を含む有限要素解析を用いて応力分布を計算することにより、広範囲におけるスケールでの金属物理学的な挙動を明らかにしていくためのツールとしても広く用いられており、例えば、非特許文献1に開示されている。ここで金属結晶学的因子とは結晶粒径、結晶方位あるいは対象結晶の相である。
【0003】
現在、結晶や格子スケールでの数値解析において実金属材料に近い仮想組織の作成あるいはパラメータ決定が重要である。例えば、弾性域での結晶粒内の格子歪みによる弾性応力分布は残留応力という観点からも求められている。
【0004】
残留応力の測定は、例えば、非特許文献2に開示されているX線回折法によるものが主流である。また、非特許文献3に開示されているように、後方散乱電子回折像法(以後、EBSP:Electolon Backscattered PatternあるいはEBSD:Electolon Backscattered Diffracton)が実格子に対応していることを用いて、菊池パターンの歪みより微小領域の応力場を測定する方法があるが、同一パターン上で異なる4つ以上の領域に局所的なパターンの移動を測定する必要があり、測定条件精度に大きく左右される可能性がある。
【0005】
また、特許文献1、非特許文献4で開示されているように、KAM(Kernel Average Misorientation)、GAM(Grain Average Misorientation)およびGOS(Grain Orientation Spread)という方位差パラメータを用いて、微小領域での塑性ひずみを求めることが試みられたが、残留応力は求められていない。なお、特許文献1に記載の発明は結晶方位情報と硬さとの関係を利用した発明であるが結晶方位情報と硬さとの相関が既知である必要がある。
【0006】
【特許文献1】特開2005−249681号公報
【非特許文献1】Journal of the JSTP vol.43 no.495、299−309頁 2002年4月25日発行
【非特許文献2】新版カリティX線回折要論第412頁、9刷1991年4月10日 アグネ社発行
【非特許文献3】顕微鏡 vol.42 No.2 2007年7月31日 日本顕微鏡学会発行、p89−93
【非特許文献4】日本機械学会論文集A編71巻712号、2005年12月25日発行、p1722−1728
【非特許文献5】Acta metall vol.26 p1435、1978年9月9日発行
【非特許文献6】Misorientations and geometrically necessary dislocations in defomed copper crytals:A microstructual analysis of X−ray rocking curves. MUGHRABI Hael、 Z Metallkd vol.96 No.7 p688−697、2005年7月1日発行
【非特許文献7】Material Characterization vol.57 No.4−5 p259−273、2006年1月19日発行
【非特許文献8】有限要素法−応力解析への応用第34頁、2刷 1974年6月15日 朝倉書店発行
【非特許文献9】鉄鋼便覧第295頁 3刷 1998年6月20日 丸善発行
【非特許文献10】材料強度学第144頁 1刷 1999年3月10日 朝倉書店発行
【非特許文献11】DISLOCATIONS p257 1964年(月日記載なし) Solid State Physics発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
結晶や格子スケールでの数値解析において実金属材料に近い仮想組織の作成にあたり、格子歪みによる弾性応力分布の実データが必要となる。しかしながら、前述したX線回折法ではX線ビーム径が30μm程度であることから、μmオーダーでの残留応力分布の測定は困難であること、測定領域の組織との対応付けが困難であること、多量の塑性ひずみが導入された場合、θ−sin2φ曲線のずれが大きく(ラウエ法におけるデバイ弧の発現およびラウエ斑点の拡大に対応)弾性応力は正確に読み取れないこと、結晶粒内での残留応力分布の測定が困難であること、という欠点が指摘される。また、一般的に菊池パターンと呼ばれる歪みより格子歪みを測定する方法では磁場、電場の影響の考慮が必要なる。そこでより簡易的にnmオーダーのより微小領域での歪みの測定方法、応力分布測定方法が求められている。
【0008】
本発明は前述の問題点に鑑み、微小領域の歪みを簡単に測定できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、本発明の特徴は以下の通りである。
(1)立方晶の金属組織に15nm〜100μm間隔で電子線が照射された測定点の結晶方位分布を取得する結晶方位取得工程と、前記結晶方位取得工程において取得した結晶方位分布および隣接する前記測定点間の方位角度差より、格子歪を決定する格子歪決定工程と、前記格子歪決定工程において決定した格子歪に基づいて前記金属組織上における残留応力分布を求める残留応力分布決定工程とを有することを特徴とする残留応力分布予測方法。
(2)立方晶の金属組織に15nm〜100μm間隔で電子線が照射された測定点の結晶方位分布を取得する結晶方位取得工程と、前記結晶方位取得工程において取得した結晶方位分布および隣接する前記測定点間の方位角度差より、格子歪を決定する格子歪決定工程と、前記格子歪決定工程において決定した格子歪に基づいて前記金属組織上における残留応力分布を求める残留応力分布決定工程と、前記残留応力分布決定工程において求めた残留応力分布および測定対象の金属材料の降伏応力に基づいて塑性域を判定する塑性域判定工程と、前記塑性域判定工程において塑性域と判定された領域において、前記方位角度差と前記金属材料の弾性限とに基づいて、塑性変形により生じた角度差を算出する角度差算出工程と、前記角度差算出工程において算出した角度差に基づいて、幾何学的に必要な転位の転位密度を予測する転位密度予測工程とを有することを特徴とする転位密度予測方法。
(3)立方晶の金属組織に15nm〜100μm間隔で電子線が照射された測定点の結晶方位分布を取得する結晶方位取得手段と、前記結晶方位取得手段によって取得されたた結晶方位分布および隣接する前記測定点間の方位角度差より、格子歪を決定する格子歪決定手段と、前記格子歪決定手段によって決定された格子歪に基づいて前記金属組織上における残留応力分布を求める残留応力分布決定手段とを有することを特徴とする残留応力分布予測装置。
(4)立方晶の金属組織に15nm〜100μm間隔で電子線が照射された測定点の結晶方位分布を取得する結晶方位取得手段と、前記結晶方位取得手段によって取得された結晶方位分布および隣接する前記測定点間の方位角度差より、格子歪を決定する格子歪決定手段と、前記格子歪決定手段によって決定された格子歪に基づいて金属組織上における残留応力分布を求める残留応力分布決定手段と、前記残留応力分布決定手段によって決定された残留応力分布および測定対象の金属材料の降伏応力に基づいて塑性域を判定する塑性域判定手段と、前記塑性域判定手段によって塑性域と判定された領域において、前記方位角度差と前記金属材料の弾性限とに基づいて、塑性変形により生じた角度差を算出する角度差算出手段と、前記角度差算出手段によって算出された角度差に基づいて、幾何学的に必要な転位の転位密度を予測する転位密度予測手段とを有することを特徴とする転位密度予測装置。
(5)立方晶の金属組織に15nm〜100μm間隔で電子線が照射された測定点の結晶方位分布を取得する結晶方位決定工程と、前記結晶方位決定工程において取得した結晶方位分布および隣接する前記測定点間の方位角度差より、格子歪を決定する格子歪決定工程と、前記格子歪決定工程において決定した格子歪に基づいて金属組織上における残留応力分布を求める残留応力分布決定工程とをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
(6)立方晶の金属組織に15nm〜100μm間隔で電子線が照射された測定点の結晶方位分布を取得する結晶方位決定工程と、前記結晶方位決定工程において取得した結晶方位分布および隣接する前記測定点間の方位角度差より、格子歪を決定する格子歪決定工程と、前記格子歪決定工程において決定した格子歪に基づいて金属組織上における残留応力分布を求める残留応力分布決定工程と、前記残留応力分布決定工程において決定した残留応力分布および測定対象金属材料の降伏応力に基づいて塑性域を判定する塑性域判定工程と、前記塑性域判定工程において塑性域と判定された領域において、前記方位角度差と前記金属材料の弾性限に基づいて、塑性変形により生じた角度差を算出する角度差算出工程と、前記角度差算出工程において算出した角度差に基づいて、幾何学的に必要な転位の転位密度を予測する転位密度予測工程とをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
(7)前記(5)または(6)に記載のプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より微小領域で歪みを簡単に測定することができるので残留応力の予測および転位密度の把握が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態の残留応力分布予測方法は、測定した結晶方位分布および隣接点間の方位角度差より、格子に生じたせん断、曲げおよびねじりによるひずみより計算される弾性応力を、各測定点において計算することにより実金属組織上において残留応力分布を求めるものであるが、予測対象点及びその隣接予測点の間を連続体として取り扱うと、隣接予測点における結晶方位をもつ母晶中に、別の方位をもつ予測対象点が存在することになる。
【0012】
ここで残留応力分布とは、拘束や局所的な膨張により結晶格子が弾性ひずみを生ずることによる内部応力分布と定義する。この内部応力は全ひずみテンソルをεij、弾性ひずみテンソルをeijとした時に以下の数1に示す式(1)で定義されるeigenひずみテンソル(ε*ijと印す)をもとに、以下の数2に示す式(2)から計算されることが、例えば、非特許文献5に開示されている。
【0013】
【数1】

【0014】
【数2】

【0015】
なお、数2に示す式(2)のσijは応力テンソルを表し、Cijklは弾性コンプライアンスを表している。
【0016】
連続体力学では、回転による全ひずみテンソルは0となる。このことから予測対象点が隣接予測点に対して結晶方位差を生じた場合、方位差を持つことにより、隣接予測点が受ける拘束の弾性ひずみがeigenひずみと等しく、この弾性ひずみより内部応力(この場合、一般的名称として残留応力とよばれる)が求められる。なお、実組織の結晶方位は、非特許文献3に記載されているよう15kV〜30kV程度の加速電圧の電子ビームを照射した際に反射されるkikuchi線より同定される。
【0017】
図13は、本実施形態に係る予測装置の構成例を示すブロック図である。
図13において、1300は予測装置であり、予測装置1300は、CPU1301を備え、ROM1302またはハードディスク(HD)1311に記憶された、あるいはフレキシブルディスク(FD)1312より供給されるソフトウェアを実行し、システムバス1304に接続される各構成を総括的に制御する。
【0018】
また、予測装置1300のCPU1301、ROM1302またはハードディスク(HD)1311に記憶されたプログラムにより、本実施形態における結晶方位の決定、格子歪の決定、残留応力分布の決定、塑性域の判定、塑性変形により生じた角度差の算出、転位密度の予測等の各手段が構成される。
【0019】
1303はRAMで、CPU1301の主メモリ、ワークエリア等として機能する。1305はキーボードコントローラ(KBC)で、キーボード(KB)1309からの指示入力を制御する。
【0020】
1306はCRTコントローラ(CRTC)で、CRTディスプレイ(CRT)1310の表示を制御する。1307はディスクコントローラ(DKC)で、ブートプログラム(起動プログラム:パソコンのハードやソフトの実行(動作)を開始するプログラム)、複数のアプリケーション、編集ファイル、ユーザファイルそしてネットワーク管理プログラム等を記憶するハードディスク(HD)1311、及びフレキシブルディスク(FD)1312とのアクセスを制御する。
【0021】
1308はネットワークインタフェースカード(NIC)で、LAN1313を介して、他のネットワーク機器、あるいは他のコンピュータと双方向のデータのやり取りを行う。また、電子線照射部1314は、予測対象の材料に対して電子線を照射するためのものである。
【0022】
次に、残留応力および後述する幾何学的に必要な転位(以後、GND:Geometrically Necessary Dislocationとする)密度の予測プログラムの構成概念を図4に示す。図4に示す構成概念によれば、予測プログラムは電子顕微鏡等を用いて測定した結晶方位分布を基に計算を可能とするが、基本原理および構成式については後述する。
【0023】
図5は、本実施形態に係る予測装置1300及び電子線照射部1314の詳細な構成例を示す図である。
図5に示すように、予測装置1300は、電子顕微鏡および後方散乱電子回折像カメラで撮影された菊池パターンより結晶方位を算出するパーソナルコンピュータ(PC)を含む電子線照射部1314と接続されている。電子線照射部1314において予測対象の材料に電子銃501から電子線が照射され、検出器502において、反射した後方散乱電子回折像を得る。そして、電子線照射部1314のパーソナルコンピュータ(PC)において後方散乱電子回折像から測定点毎に結晶方位が決定され、後述する結晶方位分布データが予測装置1300に入力される。そして、予測装置1300のCRT1310に予測結果を表示する。
【0024】
なお、残留応力およびGND密度を予測する場合において、結晶方位分布データのインプット側は電子線照射部1314でなくてもよい。予め測定された結晶方位分布データを予測装置1300が取得できればよい。
【0025】
すなわち、結晶方位分布データは、例えば、非特許文献3に示したようにカラーマップ情報であれば、その色自体が方位情報であり、その色より各測定点における(ωmn、θmn、φmn)を得ることが可能な情報、部位で構成されていてもよい。
【0026】
本実施形態の残留応力分布予測方法は、前述した方法で測定された結晶方位分布および隣接点間の方位角度差より、格子に生じたeigenひずみ(以下、弾性ひずみと呼ぶ)を計算する工程から始まる。以下にその詳細を説明する。
【0027】
図14は、本実施形態における残留応力分布及び転位密度を予測する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0028】
まず、ステップS1において、電子線照射部1314から電子線が照射されて、後方散乱電子回折像法により測定点毎に結晶方位を決定して得られた結晶方位分布データを入力する。ここで結晶方位分布とは、方位が観察座標空間において立方晶の{001}面の方位線方位のミラー指数、あるいはそれを表すことができる数値あるいは色、情報が実組織上において正方形格子状に並んだ分布のことであり、照射される電子ビームの間隔は15nm〜100μmとした。これらの結晶方位分布は、透過電子顕微鏡により測定されたディフラクションパターンあるいは高電圧の電子線より反射した後方散乱電子回折像より得られるものである。このため、結晶方位分布の間隔の最小値を下回る15nm未満とした場合、前述した方法で結晶方位分布を得る際、照射される電子ビーム径が十数nm〜数十nmであることから、観測点間で結晶方位の干渉が生じる恐れがあり、不正確な情報を得る可能性があるため、分布の間隔の最小値を15nmと定義した。
【0029】
また、測定間隔の上限値を100μmとした。100μm超では、応力分布の予測対象の材料が多結晶材の場合、複数の結晶粒をまたぐ可能性が高く連続体として取り扱えない可能性がある。また、X線ビーム径では10μm程度にまで絞ることができるので従来のX線回折法により測定したほうがより正確な結果が得られる。このことから上限値を100μmと定義した。
【0030】
なお、結晶方位分布とは点群から形成されるが、それぞれの点を立方体の重心の位置とし、長さが測定間隔dの立方体で囲われた領域ではその点での結晶方位に等しいと仮定する。測定点間の結晶方位は両端の方位になるように連続的に変化すると予測されるが、測定間隔をdとした際に、その間の方位は未知である。また、測定間隔を電子ビーム径とした際にはビーム内の平均方位をその測定点の結晶方位と同定する。そのため、真の意味で連続的な結晶方位分布を測定することは不可能であるため、このような仮定をおいた。本実施形態においては、このように囲われた領域を単に立方体と呼ぶこととする。また、後述するが、本実施形態ではこの結晶方位分布で釣り合う格子ひずみを連続的に算出してその結果を表示させるが、この連続的な格子ひずみ分布を仮想組織と呼ぶことにする。
【0031】
なお、本実施形態では、予測装置1300に結晶方位分布データを入力する構成としたが、電子線照射部1314において得られた後方散乱電子回折像を入力して、予測装置1300において測定点毎に結晶方位を決定し、結晶方位分布を得るような構成としてもよい。
【0032】
次に、図14のステップS2において、ステップS1の処理により得られた正方形の格子状に並んだ結晶方位測定点群(すなわち、結晶方位分布)より、弾性ひずみ(格子歪)を求める。以下に弾性ひずみの算出方法について説明する。
【0033】
予測対象点の隣接点は2次元平面で4点、3次元では6点存在する。図1は、予測対象点とその隣接予測点との位置関係を示す図である。予測対象点はそれぞれの隣接予測点と弾性相互作用を受ける。例えば、残留応力予測を2次元の釣合いで求める際には、測定面x−y座標系の、x方向の釣合いを考える。予測対象点(n、m)と隣接予測点(n+1、m)の変位は(n、m)点と(n+1、m)点との結晶方位差ベクトルとなり、(n、m)点での結晶方位を(hnmnmnm)、(n+1、m)点での結晶方位を(hn+1mn+1mn+1m)とすれば(hnm−hn+1m、knm−kn+1mnm−ln+1m)となる。立方格子の場合、同様に他の隣接予測点についても結晶方位差ベクトルを求める。このとき、同じミラー指数の面では(n、m)および(n+1、m)の隣接面は正負同じ応力を作用し合うと考えられ、結晶方位差ベクトルをv、釣合いを求めている結晶面(2次元の場合は線)をMとした際に、(n、m)における+x方向の面は、以下の数3に示す式(3)で表される面へ移る。
【0034】
【数3】

【0035】
同様に(n+1、m)での−x方向の面は以下の数4に示す式(4)へと移る。
【0036】
【数4】

【0037】
結晶は連続であることから、測定座標系において、数3に示した式(3)及び数4に示した式(4)の座標は等しい。すなわち、測定間隔をd、ある測定点での結晶方位マトリックスをMとすれば以下の数5に示す式(5)において釣合いが得られ、予測対象点の各x方向面の釣合いを隣接測定点の結晶方位情報のみから求めることができる。
【0038】
【数5】

【0039】
ここで予測対象点は各隣接予測点に対して、拘束による弾性応力を受けるので予測対象点でeigenひずみが生じており、8点の釣合いをとる。まず、立方晶の<111>の8方位を観察座標系に変換し、立方晶頂点座標を求める。(n+i、m+j)(i>0、j=0→1part、i<0、j=0→2part、 i=0、j>0→3part、 i=0、 j<0→4part)として各頂点の移動を求める。
【0040】
また、予測対象点の結晶方位が(hkl)であるとき、予測対象点の(111)結晶面は回転行列Rhklを用いて表すと、{111}Rhklとなる。この回転行列は、観察面法線方向を(001)方位として以下の数6に示す式(6)を満たす(ωφθ)である。
【0041】
【数6】

【0042】
例えば、図1に示すように、格子状に並んだ方位分布から9点(3点×3点)を抜き出し、中心に位置する点を予測対象点として取り扱う。結晶方位差により生じる弾性応力が釣り合うような格子変形を導入する。測定座標が(100)−(010)−(001)を基底とし、観察方位を(001)とした場合、予測対象点が(hkl)方位であるとは予測対象点の結晶の(001)が観察座標系において(hkl)であることを意味する。
【0043】
上述した予測対象点周りの立方体頂点の方位は、結晶方位(hkl)および(001)→(hkl)への回転行列Rhklを用いて表すと、{111}Rhklとなる。なお、{HKL}はH、K、L、−H、−K、−Lの全ての組み合わせを示したミラー指数を表した総称である。立方体のある頂点では測定を2次元平面で行っているため、4方位の情報をもつこととなり、頂点において各予測対象点での方位差より生じる格子の歪みがもたらす弾性応力を緩和する内部応力を持つとみなせる。ここで、各立方体頂点での測定点間方位差が釣り合うような変位ベクトルを求め、各立方体の各頂点にそれぞれの変位ベクトルを足すことにより得られた、歪んだ立方体群のことを仮想組織と定義することとする。(001)方位を有する結晶が(011)方向へせん断を受けた際の仮想組織を図2に示す。また、この仮想組織情報は、例えば、有限要素法における要素分割の際への応用も可能とする。
【0044】
次に、図14のステップS3において、前述した仮想組織を基に残留応力分布の予測を行う。この仮想組織(すなわち、歪んだ立方体群)は実格子の歪みに対応しており、格子頂点の変位をもたらすのに相当する静的な釣合いより内部応力が求まる。すなわち、予測対象点での歪んだ格子の応力は内挿関数を用いる方法に加え、実格子に対応していることから面間隔より求めることが可能であり、残留応力を予測する時にこれらの値は算出可能である。等方弾性体において、面間隔変化とそれに伴い生ずる応力との関係は以下の数7に示す式(7)で示される。
【0045】
【数7】

【0046】
ここでdは面間隔[M]、νはポアソン比、Eはヤング率[MPa]を表しており、添え字のiは測定座標系での方向を表している。前述した実格子の歪みより変位を求め、内挿関数より求まったひずみマトリックスより応力分布(Cauchy応力分布)を予測する(上記した基本原理および式に基づく)が、予測面法線方向(z方向)の釣合いを考慮する必要がある。例えば、非特許文献7に開示されているようにFIB法により3次元結晶方位分布を得ることが可能であり、この3次元結晶方位を得ることによって、数1に示した式(1)より応力テンソルが求められる。
【0047】
以上説明した方法により残留応力を算出したが、本実施形態ではさらに、降伏した領域での転位密度を予測する。これは降伏した領域では塑性ひずみが導入されており、その領域で塑性ひずみは転位によるものであることから、幾何学的に必要な転位(GND)密度を求めることができる。
【0048】
そこで、次のステップS4において、まず、塑性域の判定を行う。塑性域の判定方法としては、まず、引張−圧縮変形を加えた予測対象の金属材料の降伏応力が求められ、ステップS3で得られた残留応力分布から、その降伏応力以上の値となる領域を判定し、その領域を降伏領域(塑性域)とする。なお、降伏領域には塑性ひずみが導入されているとみなす。
【0049】
次に、ステップS5において、塑性域と判定された領域において、結晶格子を描いた際の測定点間の結晶方位差(ミスオリエンテーション)と、測定対象の金属材料の弾性限とに基づいて、塑性変形により生じた角度差を算出する。結晶方位差は単純な幾何学より以下の数8に示す式(8)で示される。
【0050】
【数8】

【0051】
ここでhkはk方向の転位間隔を表しており、1/hは転位密度ρの2乗となっている。したがって、式(8)より転位密度ρを求めることができる。なお、bはバーガースベクトルであり、予測対象の金属材料の弾性限である材料定数となる。図3に示す例では、結晶をポリゴンとして取り扱い、方位差を生ずる界面での転位密度テンソルは、塑性ひずみをβ*とすると式(9)となる。
【0052】
【数9】

【0053】
次に、ステップS6において、算出したθに基づいて、幾何学的に必要な転位の転位密度を予測する。転位密度の定義は単位体積あたりの転位線の長さ、すなわち、切断面における単位面積当たりの転位線の本数であることから、降伏領域での結晶方位差と転位密度との関係は式(10)となる。
【0054】
【数10】

【0055】
また、塑性ひずみβ*はeigenひずみであることを考えれば、残留応力分布を予測する時に算出された歪分布に対応することから式(9)中のb/hが直接、求められることとなる。以上のように幾何学的に必要な転位の転位密度(GND密度)を予測することができる。
【0056】
以上のように本実施形態における残留応力およびGND密度の予測方法は前述した原理に基づいて求められる。なお、転位は波状および螺旋の区別は不可能であり、また、GND密度の予測は式(8)を介して、残留応力分布を予測した時と同様に測定点の周りの立方体間で行う。したがって、測定点間の隣接面内での密度をスカラー値として算出可能であるが、その面内分布まで予測しないものとする。また、金属結晶内には初期状態において転位が導入されており、初期転位密度と相関は無いものとする。
【0057】
(実施例)
次に、引張−圧縮変形を受けた440MPa級鋼板の板厚方向の残留応力分布およびGND密度を予測した例について説明する。本実施形態の一例として、質量%で、Cが0.1%、Siが0.7%、Mnが2.00% Pが0.01% Sが0.001%、残部鉄および不可避的不純物からなり、フェライト単相組織を有する590MPa級の鋼板を用いた。なお、この鋼板は転炉で溶製し、連続鋳造後、粗圧延および仕上げ圧延を施し、板厚を3.0mmとしたものである。そして、得られた熱延板を図6に示す試験片に加工した。引張−圧縮試験はインストロン社引張試験機を用いて真ひずみで10%となるように引張変形を加えた後、図7に示す座屈防止冶具を用いて10%の圧縮変形を加えた。
【0058】
変形後の残留応力は表層から板厚方向へ25μm、49μm、113μm、198μmの位置を、X線回折法で測定し、その条件はCuK−α線、管電圧および電流を40kV−30mAとした。また、ヤング率は205940MPa、ポアソン比には0.28の値を採用した。これらの値は日本材料学会応力測定標準に記載されている材料定数である。なお、GND密度の測定は、それが可動転位か否かを観察して判定することは極めて困難であるため行えなかった。
【0059】
結晶方位分布の測定にはタングステンフィラメントより電流62μA、加速電圧25kVで生じた収束電子線を試料表面に照射し、試料面に対して70°の方向に反射した菊池パターンより結晶方位を同定し、測定間隔を0.25μmステップとして結晶方位分布を得た。また、X線ビーム径を想定して測定領域は21.25μm×21.00μmとした。
【0060】
測定点の結晶方位(ω、φ、θ)[ラジアン]を図8に示す。測定された結晶方位分布を基に、数6に示した式(6)を用いて、立方晶頂点の座標を求めた。なお、立方晶頂点の座標は測定点を原点としたときに(111)Rhklとなる。x−y測定座標系において予測対象点の周りには8つの測定点が存在する。本実施形態で定義した予測対象点の四角形頂点の変位を式(5)より求めれば、予測対象点の結晶は四角形頂点1、2、3、4のx方向およびy方向の変位(ux1、ux2、ux3、ux4、uy1、uy2、uy3、uy4)をもつことと成る。なお、本実施例では、x−y平面について求めたため、四角形の4頂点となり、以後、四角形は立方体頂点と同意と定義する。今、予測対象点を原点とし、x−y座標を用いると、格子歪は以下の数11に示す式(11)で求められる。
【0061】
【数11】

【0062】
ここで、変位に作用させた8×3行列は歪んだ四角形のひずみを求める形状関数であり、単純な幾何学問題で求められ、例えば、非特許文献8にその算出方法が開示されている。本実施例では、予測対象点と測定点を一致させているため、x=y=0として格子歪を求めた。求めた格子歪分布を図9に示す。
【0063】
また、数2の式(2)を用いて、ひずみ及び弾性コンプライアンスより応力を求めた。なお、用いた材料定数については、ヤング率が205940MPa、ポアソン比が0.28であり、X線回折法と同様の値を採用している。また、応力分布を図10に示す。
【0064】
なお、図10に示すコンターはそれぞれ数6の式(6)で示した結晶方位(ωφθ)に対応しており、その隣接点同士で色の変化が大きな箇所が、方位差が大きな領域である。すなわち、図8に示した結晶方位差が大きな領域(色の異なる境界付近)は、図10では応力が最も高い場所であるため、結晶方位差が大きな領域で残留応力が大きく生じている。また、各予測対象点について相当応力を以下の数12に示す式(12)を用いて求め、その平均値として101.1MPaの結果を得た。
【0065】
【数12】

【0066】
次に、X線回折法による引張−圧縮変形を受けた440MPa級の鋼板の板厚方向の残留応力の測定結果を図11に示す。残留応力は最表層では60MPaであり、最大で119MPaの値を示した。非特許文献2(p428)に開示されているように、最表層ではX線反射が散乱するため、表層より25μm以上での測定結果が信頼できるといえる。したがって、表層より25μm以上200μmまでの残留応力は110MPa程度であり、測定結果に対して予測結果は近い値を示した。
【0067】
また、ミーゼスの降伏条件式を適応して、降伏領域を判定した。すなわち、降伏応力として前述の引張−圧縮変形を加えた際に得られた410MPaの値を採用し、図11より求められた応力より数12の式(12)で表される相当応力を求め、410MPa以上の領域を降伏領域とした。
【0068】
本実施例ではz方向の応力は算出していないため、z方向を含む値は0となる。また、降伏領域には塑性ひずみが導入されているとみなす。外部応力が作用してない場合、eigenひずみと塑性ひずみとは釣り合う。したがって、降伏応力及び予測応力の差分の予測応力に対する比率と測定された隣接方位差との積が塑性ひずみにより生じた角度差となるため、数9の式(9)を用いてGND分布を予測した。
【0069】
なお、bの値には非特許文献9に記載されている0.248nmを用いた。図12にGND密度の予測結果を示す。図12に示すように、図8に示した結晶方位差が大きな領域(色の異なる境界付近)は、図12ではGND密度が高いことがわかる。これは変形に伴い生じたサブバウンダリーあるいは結晶粒界に対応する。非特許文献10あるいは非特許文献11には転位下部組織の転位密度あるいは転位ネットワークにおける転位密度は10-15-2程度の測定結果が得られたことが記載されており、本実施例とよい対応を示した。
【0070】
以上のように本実施形態によれば、15nm〜100μm間隔で電子線が照射された測定点の結晶方位分布を用いることにより微小領域の歪みを簡単に測定することができる。また、結晶方位差の釣合いを考慮することにより、結晶方位分布データのみで残留応力及びGND密度を簡単に予測することが可能である。
【0071】
(本発明に係る他の実施形態)
前述した本発明の実施形態における残留応力分布予測装置及び転位密度予測装置を構成する各手段、並びに残留応力分布予測方法及び転位密度予測方法の各工程は、コンピュータのRAMやROMなどに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。このプログラム及び前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体(記憶媒体)は本発明に含まれる。
【0072】
また、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記録媒体等としての実施形態も可能であり、具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用してもよいし、また、一つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0073】
なお、本発明は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラム(実施形態では図14に示すフローチャートに対応したプログラム)を、システムまたは装置に直接、または遠隔から供給する場合も含む。そして、そのシステムまたは装置のコンピュータが前記供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される場合を含む。
【0074】
したがって、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、前記コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。
【0075】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等の形態であってもよい。
【0076】
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスクなどがある。さらに、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD−ROM、DVD−R)などもある。
【0077】
その他、プログラムの供給方法としては、クライアントコンピュータのブラウザを用いてインターネットのホームページに接続する方法がある。そして、前記ホームページから本発明のコンピュータプログラムそのもの、もしくは圧縮され自動インストール機能を含むファイルをハードディスク等の記録媒体にダウンロードすることによっても供給できる。
【0078】
また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明に含まれるものである。
【0079】
また、その他の方法として、本発明のプログラムを暗号化してCD−ROM等の記録媒体に格納してユーザに配布し、所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせる。そして、その鍵情報を使用することにより暗号化されたプログラムを実行してコンピュータにインストールさせて実現することも可能である。
【0080】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施形態の機能が実現される。さらに、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0081】
さらに、その他の方法として、まず記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。そして、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】結晶方位分布にある領域における予測点とその周りの予測点との位置関係および相互作用を示す概念図である。
【図2】(001)方位を有する結晶が(011)方向へせん断を受けた際の仮想組織を示す図である。
【図3】h及びθの関係を示す図である。
【図4】残留応力およびGND密度予測プログラムの構成例を示す概念図である。
【図5】本発明の実施形態に係る予測装置及び電子線照射部の詳細な構成例を示す図である。
【図6】引張−圧縮試験の試験片形状を示す図である。
【図7】座屈防止冶具の形状を示す図である。
【図8】x軸−y軸を測定座標系の距離とした結晶方位分布を示す図である。
【図9】x軸−y軸を測定座標系の距離とした格子歪分布を示す図である。
【図10】x軸−y軸を測定座標系の距離とした残留応力分布を示す図である。
【図11】X線回折法により測定された10%引張−圧縮変形を加えた鋼板表層から板内方向への残留応力の値を示す図である。
【図12】x軸−y軸を測定座標系の距離としたGND密度分布を示す図である。
【図13】本発明の実施形態に係る予測装置の構成例を示すブロック図である。
【図14】本発明の実施形態における残留応力分布及び転位密度を予測する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0083】
1300 予測装置
1301 CPU
1302 ROM
1303 RAM
1304 システムバス
1305 キーボードコントローラ
1306 CRTコントローラ
1307 ディスクコントローラ
1308 ネットワークインタフェースカード
1309 キーボード
1310 CRT
1311 ハードディスク
1312 フレキシブルディスク
1313 LAN
1314 電子線照射部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立方晶の金属組織に15nm〜100μm間隔で電子線が照射された測定点の結晶方位分布を取得する結晶方位取得工程と、
前記結晶方位取得工程において取得した結晶方位分布および隣接する前記測定点間の方位角度差より、格子歪を決定する格子歪決定工程と、
前記格子歪決定工程において決定した格子歪に基づいて前記金属組織上における残留応力分布を求める残留応力分布決定工程とを有することを特徴とする残留応力分布予測方法。
【請求項2】
立方晶の金属組織に15nm〜100μm間隔で電子線が照射された測定点の結晶方位分布を取得する結晶方位取得工程と、
前記結晶方位取得工程において取得した結晶方位分布および隣接する前記測定点間の方位角度差より、格子歪を決定する格子歪決定工程と、
前記格子歪決定工程において決定した格子歪に基づいて前記金属組織上における残留応力分布を求める残留応力分布決定工程と、
前記残留応力分布決定工程において求めた残留応力分布および測定対象の金属材料の降伏応力に基づいて塑性域を判定する塑性域判定工程と、
前記塑性域判定工程において塑性域と判定された領域において、前記方位角度差と前記金属材料の弾性限とに基づいて、塑性変形により生じた角度差を算出する角度差算出工程と、
前記角度差算出工程において算出した角度差に基づいて、幾何学的に必要な転位の転位密度を予測する転位密度予測工程とを有することを特徴とする転位密度予測方法。
【請求項3】
立方晶の金属組織に15nm〜100μm間隔で電子線が照射された測定点の結晶方位分布を取得する結晶方位取得手段と、
前記結晶方位取得手段によって取得されたた結晶方位分布および隣接する前記測定点間の方位角度差より、格子歪を決定する格子歪決定手段と、
前記格子歪決定手段によって決定された格子歪に基づいて前記金属組織上における残留応力分布を求める残留応力分布決定手段とを有することを特徴とする残留応力分布予測装置。
【請求項4】
立方晶の金属組織に15nm〜100μm間隔で電子線が照射された測定点の結晶方位分布を取得する結晶方位取得手段と、
前記結晶方位取得手段によって取得された結晶方位分布および隣接する前記測定点間の方位角度差より、格子歪を決定する格子歪決定手段と、
前記格子歪決定手段によって決定された格子歪に基づいて金属組織上における残留応力分布を求める残留応力分布決定手段と、
前記残留応力分布決定手段によって決定された残留応力分布および測定対象の金属材料の降伏応力に基づいて塑性域を判定する塑性域判定手段と、
前記塑性域判定手段によって塑性域と判定された領域において、前記方位角度差と前記金属材料の弾性限とに基づいて、塑性変形により生じた角度差を算出する角度差算出手段と、
前記角度差算出手段によって算出された角度差に基づいて、幾何学的に必要な転位の転位密度を予測する転位密度予測手段とを有することを特徴とする転位密度予測装置。
【請求項5】
立方晶の金属組織に15nm〜100μm間隔で電子線が照射された測定点の結晶方位分布を取得する結晶方位決定工程と、
前記結晶方位決定工程において取得した結晶方位分布および隣接する前記測定点間の方位角度差より、格子歪を決定する格子歪決定工程と、
前記格子歪決定工程において決定した格子歪に基づいて金属組織上における残留応力分布を求める残留応力分布決定工程とをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
立方晶の金属組織に15nm〜100μm間隔で電子線が照射された測定点の結晶方位分布を取得する結晶方位決定工程と、
前記結晶方位決定工程において取得した結晶方位分布および隣接する前記測定点間の方位角度差より、格子歪を決定する格子歪決定工程と、
前記格子歪決定工程において決定した格子歪に基づいて金属組織上における残留応力分布を求める残留応力分布決定工程と、
前記残留応力分布決定工程において決定した残留応力分布および測定対象金属材料の降伏応力に基づいて塑性域を判定する塑性域判定工程と、
前記塑性域判定工程において塑性域と判定された領域において、前記方位角度差と前記金属材料の弾性限に基づいて、塑性変形により生じた角度差を算出する角度差算出工程と、
前記角度差算出工程において算出した角度差に基づいて、幾何学的に必要な転位の転位密度を予測する転位密度予測工程とをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項7】
請求項5または6に記載のプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−281782(P2009−281782A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132272(P2008−132272)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】