説明

比重監視制御装置及びそれを備える燃料供給装置

【課題】 燃料油に水を添加して水エマルジョン燃料を作るときに、実際に使用される燃料油の比重を計測して監視することができ、この計測して得られた燃料油の比重を使用して燃料油に添加する水の量を調整することによって、正確な目標水添加重量率の水エマルジョン燃料を作ることができるようにする比重監視制御装置を提供すること。
【解決手段】 燃料油に水を添加して燃料油をエマルジョン化する際に、燃料油の比重を第1比重計測部21で計測し、この第1比重計測部21で計測して得られた第1計測比重goを使用して演算し、この演算結果に基づいて燃料油に添加する水の量を調整することによって、所望の正確な目標水添加重量率Tγの水エマルジョン燃料を作ることができるようにする構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料油に水を添加して水エマルジョン燃料を作るときにおいて、実際に使用される燃料油の比重を計測して、この計測して得られた燃料油の比重を使用して燃料油に添加する水の量を調整することによって、所望の目標水添加重量率の水エマルジョン燃料を作ることができるようにする比重監視制御装置、及びそれを備える燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気中のNOX削減技術として、燃料油に水を混ぜて撹拌して得られる水エマルジョン燃料がある。この水エマルジョン燃料は、内燃機関の燃料として使用することによって、排気中のNOX成分を低減できることは一般に確認されており、舶用ディーゼル機関にも適用が可能である。
【0003】
ただし、この水エマルジョン燃料の使用による排気中のNOX削減技術においては、燃料油に添加される水の添加率によって、NOX削減効果及び燃焼効率(燃料消費率)が変化することが知られている。また、内燃機関に供給する燃料油(純燃料)と、これに添加される水との合計流量が、例えば燃料供給装置及びこれに付随する装置類の定格供給流量を超えてはならないという制約が課せられている。
【0004】
ところで、このような水エマルジョン燃料の供給装置の一例として、図には示さないが、自動車用ディーゼル機関へ水エマルジョン燃料を供給するための燃料供給装置が特許文献1に開示されている。この燃料供給装置は、燃料噴射弁からドレインされた戻り水エマルジョン燃料をリターンリザーバに貯留して、しかる後に、燃料噴射弁に戻して再利用するものである。
【0005】
また、この燃料供給装置は、戻り水エマルジョン燃料がリターンリザーバに貯留されたときに、そのリターンリザーバ内の水エマルジョン燃料の水比率を演算して求め、この演算で求めた水比率に基づき、ミキサへ供給する燃料油の量、及び供給水の量をエマルジョン・コントローラで決定して、運転負荷等に応じて最適な水比率に常時変更制御しようとするものである。
【0006】
ここで、リターンリザーバ内の水エマルジョン燃料の水比率を演算して求めるためには、少なくとも燃料油の比重が必要であるにも拘わらず、この燃料油の比重の求め方については何ら言及されてはいない。ただし、この燃料供給装置が自動車用ディーゼル機関に使用されるものであることに鑑みると、燃料油は、品質が一定したものが使用されるので、燃料油の比重として規格値を使用していると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−250736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の燃料供給装置では、燃料油の比重として規格値を使用している場合は、燃料油の比重が規格値から大きくずれたときは、不正確な水比率が算出されてしまい、運転負荷等に応じて最適な水比率に変更制御することができない。
【0009】
そして、このような燃料供給装置を例えば舶用の内燃機関に適用した場合は、この船舶に対して様々な地域で性状の異なる燃料油が搭載されて、これら様々な比重の燃料油を使用する場合や、このような様々な比重の燃料油を混合して使用する場合には、所望の正確な水比率の水エマルジョン燃料を作ることができない。
【0010】
よって、上記従来の燃料供給装置では、水エマルジョン燃料が使用される内燃機関等を、適切で安定した燃焼効率で運転することができないし、排気中のNOX成分を効果的に低減させることもできない。
【0011】
更に、上記従来の燃料供給装置では、所定の水比率の水エマルジョン燃料を作るときに、燃料油の比重が大きい場合は、供給水の流量が大きくなり、この燃料油と供給水の合計流量が、この燃料供給装置の定格供給流量を超えることがある。このようなことが起こると、この燃料供給装置及びこれに付随する装置類を適切な状態で作動させることができなくなり、上記と同様に、水エマルジョン燃料が使用される内燃機関等を、適切で安定した燃焼効率で運転することができないことがあるし、排気中のNOX成分を効果的に低減させることができないこともある。
【0012】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、燃料油に水を添加して水エマルジョン燃料を作るときに、実際に使用される燃料油の比重を計測して監視することができ、この計測して得られた燃料油の比重を使用して燃料油に添加する水の量を調整することによって、所望の正確な水添加重量率(燃料油の重量に対する水の重量の比率)の水エマルジョン燃料を作ることができるようにする比重監視制御装置、及びそれを備える燃料供給装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る比重監視制御装置は、燃料油に水を添加して燃料油をエマルジョン化する際に、燃料油の比重を計測する第1比重計測手段を備え、この第1比重計測手段で計測して得られた第1計測比重を使用して燃料油に添加する水の量を調整し、又は燃料油及び水の両方の量を調整することによって、所望の目標水添加重量率の水エマルジョン燃料を作ることができるようにするものである。
【0014】
本発明に係る比重監視制御装置によると、燃料油に水を添加して燃料油をエマルジョン化する際に、実際に使用する燃料油の比重を第1比重計測手段で実際に計測してリアルタイムで、常時又は随時、監視することができ、この第1比重計測手段で実際に計測して得られた第1計測比重を使用して燃料油に添加する水の量を調整し、又は燃料油及び水の両方の量を調整することができる。
【0015】
つまり、例えば燃料油の比重が未知であったり、規格値としてしか認識していない場合や、燃料油に水を添加して水エマルジョン燃料を作っているときに、比重の異なる燃料油を使用する状況となった場合、更に、燃料油の性状の変化によって比重が変化した場合でも、実際に使用する燃料油の比重を第1比重計測手段で計測して、これによって得られた第1計測比重を使用して当該燃料油に添加する水の量を調整しているので、所望の正確な目標水添加重量率の水エマルジョン燃料を作ることが可能となる。
【0016】
この発明に係る比重監視制御装置において、燃料油に水を添加して作られた水エマルジョン燃料の比重を計測する第2比重計測手段と、この第2比重計測手段で計測して得られた第2計測比重と前記第1計測比重とを使用して水エマルジョン燃料の計測水添加重量率を演算する水添加率調整部と、前記計測水添加重量率を出力する出力手段とを備えるものとすることができる。
【0017】
このようにすると、燃料油に水を添加して作られた実際の水エマルジョン燃料の比重を第2比重計測手段で計測してリアルタイムで、常時又は随時、監視することができ、この第2比重計測手段で計測して得られた実際に作られている水エマルジョン燃料の第2計測比重と、実際に使用された燃料油の第1計測比重とを使用して、実際に作られている水エマルジョン燃料の計測水添加重量率を水添加率調整部で演算することができる。そして、この計測水添加重量率を出力手段で出力することができる。
【0018】
これによって、実際に作られている水エマルジョン燃料の計測水添加重量率が、許容水添加重量率の範囲内に入っているか否かを、常時又は随時、作業者や装置によって監視できるようにすることができる。
【0019】
この発明に係る比重監視制御装置において、水の比重を第3比重計測手段で計測し、この第3比重計測手段で計測して得られた第3計測比重と前記第1及び第2計測比重とを使用して水エマルジョン燃料の計測水添加重量率を前記水添加率調整部で演算し、前記計測水添加重量率を出力手段で出力するものとすることができる。
【0020】
このようにすると、燃料油に添加される実際の水の比重を第3比重計測手段で計測してリアルタイムで、常時又は随時、監視することができ、この第3比重計測手段で計測して得られた実際に使用されている水の第3計測比重と、実際に使用された燃料油の第1計測比重と、実際に作られた水エマルジョン燃料の第2計測比重とを使用して、実際に作られている水エマルジョン燃料の計測水添加重量率を水添加率調整部で演算することができる。そして、この計測水添加重量率を出力手段で出力することができる。
【0021】
これによって、実際に作られている水エマルジョン燃料の計測水添加重量率が、許容水添加重量率の範囲内に入っているか否かを、常時又は随時、作業者や装置によって監視できるようにすることができる。
【0022】
この発明に係る比重監視制御装置において、前記水添加率調整部は、演算して得られた前記計測水添加重量率に基づいて、所望の目標水添加重量率の水エマルジョン燃料を作ることができるように、燃料油に添加される水の量を調整し、又は燃料油及び水の両方の量を調整するものとすることができる。
【0023】
このように構成された水添加率調整部によると、実際に作られた水エマルジョン燃料の計測水添加重量率に基づいて、所望の目標水添加重量率の水エマルジョン燃料を作ることができるように、燃料油に添加される水の量を調整し、又は燃料油及び水の両方の量を調整することができる。
【0024】
これによって、実際に作られる水エマルジョン燃料の水添加重量率が、目標水添加重量率に一致するように、又は許容水添加重量率の範囲内に入るようにすることができる。その結果、予期していない水添加重量率の水エマルジョン燃料が作られて、例えば内燃機関やボイラ等に供給されて長時間運転されることを防止することができる。
【0025】
従って、この水エマルジョン燃料が使用される内燃機関やボイラ等を、適切で安定した燃焼効率で運転することができるし、排気中のNOX成分を効果的に低減させることができる。
【0026】
この発明に係る比重監視制御装置において、前記比重計測手段は、質量流量計測機能と体積流量計測機能とを備えているものとすることができる。
【0027】
この比重計測手段によると、燃料油、水エマルジョン燃料、又は水の計測質量流量を、その計測体積流量で除算することによって、これら燃料油、水エマルジョン燃料、又は水の比重を求めることができる。
【0028】
この発明に係る比重監視制御装置において、前記水添加率調整部は、前記計測比重を温度補正して得られた温度補正済み計測比重を使用して燃料油に添加する水の量を調整し、又は燃料油及び水の両方の量を調整することによって、所望の目標水添加重量率の水エマルジョン燃料を作ることができるようにするものとすることができる。
【0029】
このように、燃料油、水エマルジョン燃料、又は水の計測比重を温度補正して得られた温度補正済み計測比重を使用して燃料油に添加する水の量を調整し、又は燃料油及び水の両方の量を調整することによって、温度の影響を受けずに正確に所望の目標水添加重量率の水エマルジョン燃料を作ることができるようにすることができる。
【0030】
この発明に係る比重監視制御装置において、前記水添加率調整部は、所望の水添加重量率の水エマルジョン燃料を作るために使用される燃料油及び水の合計流量が、所定の上限合計流量以上となるときは、水の供給流量を制限して、前記合計流量が所定の上限合計流量未満となるようにするものとすることができる。
【0031】
このように、燃料油及び水の合計流量が、所定の上限合計流量以上となる場合として、所望の目標水添加重量率の水エマルジョン燃料を作る際に、例えば燃料油の比重が大きいときに、水の供給流量が大きくなるために起こる可能性がある。このような場合に、水の供給流量を制限することによって、この水エマルジョン燃料を内燃機関又はボイラに供給するための燃料供給装置及びこれに付随する装置類が、例えば定格供給流量を超える状態で運転されることを防止することができる。これによって、この燃料供給装置類を適切な状態で作動させることができ、水エマルジョン燃料が使用される内燃機関等を、適切で安定した燃焼効率で運転することができるし、排気中のNOX成分を効果的に低減させることもできる。そして、水の供給流量を制限しているが、燃料油の供給流量を制限していないので、内燃機関やボイラを設定された出力で運転することができる。
【0032】
本発明に係る燃料供給装置は、本発明の比重監視制御装置を備え、この比重監視制御装置を使用して燃料油に添加する水の量、又は燃料油及び水の両方の量が調整されて作られた水エマルジョン燃料を、燃料供給ポンプを使用して内燃機関又はボイラに供給することができるものである。
【0033】
本発明に係る燃料供給装置によると、本発明の比重監視制御装置を使用して作られた水エマルジョン燃料を、燃料供給ポンプを使用して内燃機関又はボイラに供給することができる。
【0034】
これによって上記したように、この水エマルジョン燃料が使用される内燃機関やボイラ等を、確実に適切で安定した燃焼効率で運転することができるし、排気中のNOX成分を効果的に低減させることができる。
【発明の効果】
【0035】
この発明に係る比重監視制御装置及び燃料供給装置によると、実際に使用する燃料油の比重を第1比重計測手段で計測して、これによって得られた第1計測比重を使用して当該燃料油に添加する水の量を調整し、又は燃料油及び水の両方の量を調整することができるようにした構成であるので、例えばこの比重監視制御装置を舶用の内燃機関に適用した場合は、この船舶に搭載されている燃料油の性状の変化によって比重が変化した場合や、この船舶に対して様々な地域で性状の異なる燃料油が搭載されて、これら様々な比重の燃料油を使用する場合、更に、このような様々な比重の燃料油を混合して使用する場合でも、所望の正確な目標水添加重量率の水エマルジョン燃料を作ることができる。
【0036】
これによって、この水エマルジョン燃料が使用される内燃機関やボイラ等を、適切で安定した燃焼効率で運転することができるし、排気中のNOX成分を効果的に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の第1実施形態に係る比重監視制御装置を備える燃料供給装置を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明に係る比重監視制御装置を備える燃料供給装置(以下、単に「燃料供給装置」と言うこともある。)の一実施形態を、図1を参照して説明する。この比重監視制御装置11を備える燃料供給装置12は、図1に示すように、燃料タンク13に貯留されている燃料油(例えばC重油)に対して、水タンク14に貯留されている水を添加して水エマルジョン燃料を作り、この水エマルジョン燃料をこの燃料供給装置12に接続されているディーゼル機関15に供給することができるものである。
【0039】
そして、この燃料供給装置12は、実際に作られてディーゼル機関15に供給される水エマルジョン燃料の水添加重量率Sγが、例えば予め設定されている目標水添加重量率Tγに一致するように、又は許容水添加重量率Kγ1〜Kγ2の範囲内に入るようにすることができ、その結果、予期していない水添加重量率の水エマルジョン燃料が作られて、例えばディーゼル機関15に供給されて長時間運転されることを防止することができるものである。
【0040】
図1に示すように、燃料供給装置12は、燃料供給ライン16、水供給ライン17、並びに、これら燃料供給ライン16及び水供給ライン17が接続する循環ライン18、更に、制御部19を備えている。
【0041】
燃料供給ライン16には、図1に示すように、燃料タンク13、第1燃料供給ポンプ20、第1比重計測部21、及び第1温度計測部22が設けられている。
【0042】
燃料タンク13は、燃料油を貯留することができるものである。この燃料油は、例えばC重油である。
【0043】
第1燃料供給ポンプ20は、燃料タンク13内の燃料油を、循環ライン18に設けられているミキサ23に供給することができるものである。そして、この第1燃料供給ポンプ20は、燃料タンク13の出口と、ミキサ23の入口とを接続する燃料供給ライン16(配管)の途中に設けられている。また、この第1燃料供給ポンプ20は、図示しない電気式モータで駆動される構成と成っている。
【0044】
第1比重計測部21は、第1燃料供給ポンプ20によって循環ライン18に供給される燃料油の第1計測比重goを計測することができるものであって、この計測して得られた第1計測比重goを制御部19に出力できるようになっている。そして、この第1比重計測部21は、質量流量計測機能と体積流量計測機能とを備えており、例えばコリオリ式質量流量計を有している。
【0045】
この第1比重計測部21によると、燃料供給ライン16を通って循環ライン18に供給される燃料油の質量流量及び体積流量を計測することができ、この計測によって計測質量流量及び計測体積流量を取得することができるものである。そして、この取得した計測質量流量を、その計測体積流量で除算することによって、燃料油の第1計測比重goを求めてこの第1計測比重goを制御部19に出力できるようになっている。
【0046】
第1温度計測部22は、第1燃料供給ポンプ20によって循環ライン18に供給される燃料油の第1計測温度toを計測することができるものであって、この計測して得られた第1計測温度toを制御部19に出力できるようになっている。
【0047】
水供給ライン17には、図1に示すように、水タンク14、水供給ポンプ24、第3比重計測部25、及び第3温度計測部26が設けられている。
【0048】
水タンク14は、水を貯留することができるものであり、この水タンク14の出口に水供給ポンプ24が接続されている。
【0049】
水供給ポンプ24は、水タンク14内の水をミキサ23に供給することができるものであり、水タンク14の出口と、ミキサ23の入口とを接続する水供給ライン17(配管)の途中に設けられている。そして、この水供給ポンプ24は、図示しない電気式モータで駆動される構成と成っている。
【0050】
第3比重計測部25は、水供給ポンプ24によって循環ライン18に供給される水の第3計測比重gwを計測することができるものであって、この計測して得られた第3計測比重gwを制御部19に出力できるようになっている。そして、この第3比重計測部25は、第1比重計測部21と同様に、質量流量計測機能と体積流量計測機能とを備えており、例えばコリオリ式質量流量計を有している。
【0051】
この第3比重計測部25によると、水供給ライン17を通って循環ライン18に供給される水の質量流量及び体積流量を計測することができ、この計測によって計測質量流量及び計測体積流量を取得することができるものである。そして、この取得した計測質量流量を、その計測体積流量で除算することによって、水の第3計測比重gwを求めてこの第3計測比重gwを制御部19に出力できるようになっている。
【0052】
第3温度計測部26は、水供給ポンプ24によって循環ライン18に供給される水の第3計測温度twを計測することができるものであって、この計測して得られた第3計測温度twを制御部19に出力できるようになっている。
【0053】
循環ライン18には、図1に示すように、ミキサ23、第2比重計測部27、第2温度計測部28、第2燃料循環ポンプ29、ヒータ30、ディーゼル機関15、及びリターンチャンバ31が設けられている。
【0054】
なお、図1に示すように、燃料供給ライン16と循環ライン18との合流部32は、リターンチャンバ31とミキサ23との間に設けられている。
【0055】
ミキサ23は、第1燃料供給ポンプ20によって供給されてくる燃料油と、水供給ポンプ24によって供給されてくる水とを混合して撹拌することによって、水エマルジョン燃料を作ることができるものである。このミキサ23で作られた水エマルジョン燃料は、ミキサ23の下流に設けられている第2比重計測部27に供給される。
【0056】
第2比重計測部27は、第2燃料循環ポンプ29による吐出力によって、循環ライン18を矢印の方向に循環する水エマルジョン燃料の第2計測比重geを計測することができるものであって、この計測して得られた第2計測比重geを制御部19に出力できるようになっている。そして、この第2比重計測部27は、第1比重計測部21と同様に、質量流量計測機能と体積流量計測機能とを備えており、例えばコリオリ式質量流量計を有している。
【0057】
この第2比重計測部27によると、第2燃料循環ポンプ29による吐出力によって、循環ライン18を図1に示す矢印の方向に循環する水エマルジョン燃料の質量流量及び体積流量を計測することができ、この計測によって計測質量流量及び計測体積流量を取得することができるものである。そして、この取得した計測質量流量を、その計測体積流量で除算することによって、水エマルジョン燃料の第2計測比重geを求めてこの第2計測比重geを制御部19に出力できるようになっている。
【0058】
第2温度計測部28は、この循環ライン18を循環する水エマルジョン燃料の第2計測温度teを計測することができるものであって、この計測して得られた第2計測温度teを制御部19に出力できるようになっている。
【0059】
第2燃料循環ポンプ29は、循環ライン18(配管)内の水エマルジョン燃料又は燃料油(燃料)を所定の圧力に昇圧して、この昇圧した燃料をディーゼル機関15に供給することができるものであり、この第2燃料循環ポンプ29は、図示しない電気式モータで駆動される構成と成っている。
【0060】
ヒータ30は、第2燃料循環ポンプ29から吐出されてディーゼル機関15に供給される水エマルジョン燃料や燃料油を所定の温度に加熱して、この加熱した燃料がディーゼル機関15に供給されるようにすることができるものである。
【0061】
このヒータ30によると、水エマルジョン燃料等の燃料を、所定の温度に加熱することによって燃料の粘度を小さくして、ディーゼル機関15にとって適切とされる粘度となるようにすることができる。
【0062】
リターンチャンバ31は、ディーゼル機関15で消費されなかった水エマルジョン燃料を、循環ライン18を通じてミキサ23に戻すために設けられた部屋である。
【0063】
このように、図1に示す循環ライン18は、燃料を所定の矢印方向(反時計方向)に流して循環させることができる環状ラインとなっている。つまり、ディーゼル機関15で水エマルジョン燃料等の燃料が消費されると、この循環ライン18を循環する水エマルジョン燃料等の燃料がディーゼル機関15に供給されるようになっている。そして、ディーゼル機関15で消費された燃料を補うように、この循環ライン18に燃料油が第1燃料供給ポンプ20によって、そして水が水供給ポンプ24によって、それぞれミキサ23を介してこの循環ライン18に供給される。
【0064】
ディーゼル機関15(内燃機関)は、陸上で固定して用いられるディーゼル機関、又は輸送機器に用いられるディーゼル機関であり、この実施形態では、舶用のディーゼル機関である。そして、この舶用のディーゼル機関は、発電用又は推進駆動用として使用することができる。
【0065】
上記のように構成された図1に示す比重監視制御装置11を備える燃料供給装置12によると、燃料タンク13内の燃料油(例えばC重油)と、水タンク14内の水とをミキサ23で混合及び撹拌して得られた水エマルジョン燃料を、循環ライン18を介してディーゼル機関15に供給することができる。
【0066】
次に、図1に示す制御部19について説明する。この制御部19は、中央演算処理装置(CPU)で構成され、予め図示しない記憶部に記憶されたプログラムによって種々の演算処理を行うようになっている。この制御部19は、水添加率調整部33を備えている。
【0067】
そして、本発明の比重監視制御装置11は、図1に示すこの制御部19、並びに、この制御部19と接続する第1燃料供給ポンプ20、第1比重計測部21、第1温度計測部22、第2比重計測部27、第2温度計測部28、水供給ポンプ24、第3比重計測部25、及び第3温度計測部26によって構成されている。
【0068】
水添加率調整部33は、図1に示す燃料供給装置12を使用して、燃料油に水を添加して燃料油をエマルジョン化する際に、第1比重計測部21で計測して得られた燃料油の第1計測比重goと、第3比重計測部25で計測して得られた水の第3計測比重gwとを使用して、設定された所望の目標水添加重量率Tγの水エマルジョン燃料を作ることができるように、水供給ポンプ24の水の吐出流量を制御することができるように構成されている。
【0069】
上記のように構成された燃料供給装置12によると、燃料油に水を添加して燃料油をエマルジョン化する際に、実際に使用する燃料油の比重を第1比重計測部21で実際に計測してリアルタイムで表示部(図示せず)に表示したり、音声出力部(図示せず)で出力することができる。これによって、常時又は随時、実際に使用されている燃料油の第1計測比重goを作業者や装置によって監視することができる。
【0070】
そして、この第1比重計測部21で実際に計測して得られた燃料油の第1計測比重goを使用して、燃料油に添加する水の量を、水供給ポンプ24の水の吐出流量を制御することによって調整することができる。
【0071】
つまり、例えば燃料油の比重が未知であったり、規格値としてしか認識していない場合や、燃料油に水を添加して水エマルジョン燃料を作っているときに、比重の異なる燃料油を使用する状況となった場合、更に、燃料油の性状の変化によって比重が変化した場合でも、実際に使用する燃料油の比重を第1比重計測部21で計測して、これによって得られた燃料油の第1計測比重goを使用して当該燃料油に添加する水の量を調整しているので、所望の正確な目標水添加重量率Tγの水エマルジョン燃料を作ることができ、この目標水添加重量率Tγの水エマルジョン燃料をディーゼル機関15に供給することができる。
【0072】
そして、この燃料供給装置12によると、目標水添加重量率Tγの水エマルジョン燃料を作ることができるようにするために、燃料油に添加する水の量を、水供給ポンプ24の水の吐出流量を制御することによって調整しているが、燃料油の供給流量を調整していないので、ディーゼル機関15を設定された出力で運転することができる。
【0073】
また、この燃料供給装置12によると、燃料油に添加される実際の水の比重を第3比重計測部25で計測して、上記と同様に、この計測して得られた第3計測比重gwをリアルタイムで表示部(図示せず)に表示したり、音声出力部(図示せず)で出力することができる。これによって、常時又は随時、実際に使用されている水の第3計測比重gwを作業者や装置によって監視することができる。
【0074】
そして、この第3比重計測部25で実際に計測して得られた水の第3計測比重gwを使用して、燃料油に添加する水の量を、水供給ポンプ24の水の吐出流量を制御することによって調整することができる。よって、所望の正確な目標水添加重量率Tγの水エマルジョン燃料を作ることができ、この目標水添加重量率Tγの水エマルジョン燃料をディーゼル機関15に供給することができる。
【0075】
そして、この燃料供給装置12を例えば舶用のディーゼル機関15に適用した場合は、この船舶に対して様々な地域で性状の異なる燃料油が搭載されて、これら様々な比重の燃料油を使用する場合や、このような様々な比重の燃料油を混合して使用する場合でも、所望の正確な目標水添加重量率Tγの水エマルジョン燃料を作ることができる。
【0076】
これによって、この水エマルジョン燃料が使用されるディーゼル機関15を、適切で安定した燃焼効率で運転することができるし、排気中のNOX成分を効果的に低減させることができる。
【0077】
そして、水添加率調整部33は、図1に示す燃料供給装置12を使用して、水エマルジョン燃料を作っているときに、第1比重計測部21で計測して得られた燃料油の第1計測比重goと、第2比重計測部27で計測して得られた水エマルジョン燃料の第2計測比重geと、第3比重計測部25で計測して得られた水の第3計測比重gwとを使用して、水エマルジョン燃料の計測水添加重量率Sγを水添加率調整部33で演算し、この計測水添加重量率Sγを出力部で出力するように構成されている。この出力部は、例えば表示部や音声出力部である。
【0078】
この燃料供給装置12によると、燃料油に水を添加して作られた実際の水エマルジョン燃料の比重を第2比重計測部27で計測してリアルタイムで表示部(図示せず)に表示したり、音声出力部(図示せず)で出力することができる。これによって、常時又は随時、実際に作られている水エマルジョン燃料の第2計測比重geを作業者や装置によって監視することができる。
【0079】
そして、この第2比重計測部27で計測して得られた実際に作られている水エマルジョン燃料の第2計測比重geと、実際に使用された燃料油の第1計測比重goと、実際に使用された水の第3計測比重gwとを使用して、実際に作られている水エマルジョン燃料の計測水添加重量率Sγを水添加率調整部33で演算することができる。そして、この計測水添加重量率Sγを出力手段(表示部、音声出力部)で出力することができる。
【0080】
これによって、実際に作られている水エマルジョン燃料の計測水添加重量率Sγが、許容水添加重量率Kγ1〜Kγ2の範囲内に入っているか否かを、常時又は随時、作業者や装置によって監視できるようにすることができる。
【0081】
また、水添加率調整部33は、演算して得られた計測水添加重量率Sγに基づいて、設定された目標水添加重量率Tγの水エマルジョン燃料を作ることができるように、水供給ポンプ24の水の吐出流量を制御することができるように構成されている。
【0082】
なお、この計測水添加重量率Sγは、燃料油の第1計測比重goと、水エマルジョン燃料の第2計測比重geと、水の第3計測比重gwとを使用して、水添加率調整部33が演算して求めたものである。
【0083】
このように構成された燃料供給装置12によると、実際に作られた水エマルジョン燃料の計測水添加重量率Sγに基づいて、所望の目標水添加重量率Tγの水エマルジョン燃料を作ることができるように、燃料油に添加される水の量を、水供給ポンプ24の水の吐出流量を制御して調整することができる。
【0084】
これによって、実際に作られる水エマルジョン燃料の水添加重量率Sγが、目標水添加重量率Tγに一致するように、又は許容水添加重量率Kγ1〜Kγ2の範囲内に入るように、フィードバック制御することができ、設定された目標水添加重量率Tγの水エマルジョン燃料を正確に作ることができる。
【0085】
その結果、予期していない水添加重量率γの水エマルジョン燃料が作られて、例えばディーゼル機関15に供給されて長時間運転されることを防止することができる。従って、この水エマルジョン燃料が使用されるディーゼル機関15を、適切で安定した燃焼効率で運転することができるし、排気中のNOX成分を効果的に低減させることができる。
【0086】
更に、水添加率調整部33は、燃料油の第1計測比重goと、水エマルジョン燃料の第2計測比重geと、水の第3計測比重gwとを温度補正し、この温度補正によって得られた燃料油の第1温度補正済み計測比重と、水エマルジョン燃料の第2温度補正済み計測比重と、水の第3温度補正済み計測比重とを使用して、目標水添加重量率Tγの水エマルジョン燃料を作ることができるように、水供給ポンプ24の水の吐出流量を制御して調整できるように構成されている。
【0087】
この燃料供給装置12によると、燃料油の第1計測比重go、水エマルジョン燃料の第2計測比重ge、及び水の第3計測比重gwを温度補正し、これによって得られた第1〜第3温度補正済み計測比重を使用して燃料油に添加する水の量を調整することができる。その結果、温度の影響を受けずに正確に目標水添加重量率Tγの水エマルジョン燃料を作ることができ、この目標水添加重量率Tγの水エマルジョン燃料をディーゼル機関15に供給することができる。
【0088】
次に、水添加率調整部33が、第1比重計測部21で計測して得られた燃料油の第1計測比重goと、第2比重計測部27で計測して得られた水エマルジョン燃料の第2計測比重geと、第3比重計測部25で計測して得られた水の第3計測比重gwとを使用して、水エマルジョン燃料の計測水添加重量率Sγを演算する方法の一例を説明する。
【0089】
ここで、水エマルジョン燃料の水濃度(重量ベース)をx(%)とし、水エマルジョン燃料の重量をQとし、重量Qの水エマルジョン燃料に含まれる水の体積をS1、燃料油の体積をS2、水エマルジョン燃料の体積をS3とする。
【0090】
水の体積S1=(x/100)×Q×(1/gw) (1)式
燃料油の体積S2=〔(100−x)/100〕×Q×(1/go) (2)式
水エマルジョン燃料の体積S3=Q×(1/ge) (3)式
S1+S2=S3 (4)式
(1)式〜(4)式より、水エマルジョン燃料の水濃度(重量ベース)x(%)は、
x(%)=〔gw(go−ge)〕/〔ge(go−gw)〕×100(%)(5)式
よって、計測水添加重量率Sγ(%)は、
Sγ(%)=〔x/(100−x)〕×100(%) (6)式
で表せるので、この(6)式に(5)式を代入すると、
Sγ(%)=〔gw(go−ge)〕/〔go(ge−gw)〕×100(%)(7)式
によって計測水添加重量率Sγ(%)を求めることができる。
【0091】
以上のように、(7)式にgo、ge、gwを代入することによって、計測水添加重量率Sγを求めることができる。
【0092】
次に、この求められた計測水添加重量率Sγを、目標水添加重量率Tγに近づけるために、水の添加質量流量を制御するための制御手順の具体例を挙げて説明する。
【0093】
ここで、目標水添加重量率がTγ、計測水添加重量率がSγ、燃料油の計測質量流量(Kg/h)がSf(このSfは、第1比重計測部21で得られる。)、水の計測質量流量(Kg/h)がSw(このSwは、第3比重計測部25で得られる。)、水の目標質量流量(Kg/h)がTwとする。そして、この水の目標質量流量Twは、
Tw=Tγ×Sf(Kg/h) (8)式
として求めることができる。このTγは、設定値であり、Sfは、燃料油の比重及び消費量の変化に対応して変化する値である。よって、Twは、Sfに対応して変化する値である。
【0094】
故に、水の計測質量流量Swが、水の目標質量流量Twと一致するように、水供給ポンプ24による水の供給量を制御することによって、計測水添加重量率Sγを、目標水添加重量率Tγに近づけることができる。その結果、適切な水エマルジョン燃料をディーゼル機関15に供給することができる。
【0095】
ここで、水の計測質量流量Swとして、Sγ×Sf=Swで得られる水の計測質量流量Swを使用することが好ましい。このSγは、循環ライン18の第2比重計測部27で計測される計測水添加重量率である。
【0096】
このようにすると、実際に循環ライン18に流れている水エマルジョン燃料の計測水添加重量率Sγを使用して、水の計測質量流量Swを求めることができ、この求められた水の計測質量流量Swが、水の目標質量流量Twと一致するように、水供給ポンプ24による水の供給量を制御することによって、実際に、目標水添加重量率Tγに極めて近い水エマルジョン燃料をディーゼル機関15に供給することができる。
【0097】
勿論、これ以外の方法によって水エマルジョン燃料の計測水添加重量率Sγを求めるようにしてもよい。そして、上記以外の方法によって、この求められた計測水添加重量率Sγを、目標水添加重量率Tγに近づけるために調整すべき水の量を求めるようにしてもよい。
【0098】
ただし、上記実施形態では、燃料油に添加する水の量を調整することによって、所望の目標水添加重量率Tγの水エマルジョン燃料を作るようにしたが、これに代えて、燃料油及び水の両方の量を調整することによって、目標水添加重量率Tγの水エマルジョン燃料を作るようにしてもよい。
【0099】
そして、上記実施形態では、水の比重を第3比重計測部25で計測し、この第3比重計測部25で計測して得られた水の第3計測比重gw、並びに、燃料油及び水エマルジョン燃料の第1及び第2計測比重go、geを使用して、目標水添加重量率Tγの水エマルジョン燃料を作るようにしたり、水エマルジョン燃料の計測水添加重量率Sγを水添加率調整部33で演算して求めるようにしたが、これに代えて、既知又は標準値としての水の比重、並びに、燃料油及び水エマルジョン燃料の第1及び第2計測比重go、geを使用して目標水添加重量率Tγの水エマルジョン燃料を作るようにしたり、水エマルジョン燃料の計測水添加重量率Sγを水添加率調整部33で演算して求めるようにしてもよい。
【0100】
このようにする場合として、例えばこの燃料供給装置12内で実際に流れる水の温度が所定の温度となるように温度制御が行なわれている場合がある。また、水については、様々な地域で船に搭載されて使用する場合であっても、燃料油と違って、水の比重は、略一定値であり、水の比重の誤差を許容できる場合がある。
【0101】
また、上記実施形態の第1〜第3比重計測部21、27、25は、体積流量計測機能と質量流量計測機能とを備えるものとして説明したが、これ以外の方法によって、燃料油、水エマルジョン燃料、及び水の比重を計測できる比重計測装置を使用してもよい。
【0102】
更に、上記実施形態では、第1〜第3温度計測部22、28、26を設けて、第1〜第3計測比重go、ge、gwを温度補正して得られた第1〜第3温度補正済み計測比重を使用して燃料油に添加する水の量を調整し、これによって所望の目標水添加重量率Tγの水エマルジョン燃料を作るようにしたが、これに代えて、第1〜第3温度計測部22、28、26を設けずに、温度補正していない第1〜第3計測比重go、ge、gwを使用して燃料油に添加する水の量を調整し、これによって所望の目標水添加重量率Tγの水エマルジョン燃料を作るようにしてもよい。
【0103】
このように、第1〜第3計測比重go、ge、gwに対して温度補正を行なわない場合として、例えばこの燃料供給装置12内で実際に流れる燃料油、水エマルジョン燃料、水のそれぞれの温度が、それぞれ所定の温度となるように温度制御が行なわれており、これら実際に流れる燃料油、水エマルジョン燃料、水のそれぞれの温度及び比重が既知の場合である。
【0104】
そして、上記実施形態では、水添加率調整部33は、所望の目標水添加重量率Tγの水エマルジョン燃料を作ることができるように、燃料油に添加する水の量を調整したが、これに加えて、水添加率調整部33は、所望の目標水添加重量率Tγの水エマルジョン燃料を作るために使用される燃料油及び水の合計流量(燃料供給ライン16の燃料油の供給流量と、水供給ライン17の水の供給流量との合計流量)が、所定の上限合計流量以上となるときは、水供給ライン17の水の供給流量を上限供給流量未満となるように制限して、燃料油及び水の合計流量が上限合計流量未満となるようにすることが好ましい。
【0105】
このように、燃料油及び水の合計流量が、所定の上限合計流量以上となる場合として、所望の目標水添加重量率Tγの水エマルジョン燃料を作る際に、例えば燃料油の比重が大きいときに、水の供給流量が大きくなるために起こる可能性がある。このような場合に、水の供給流量を制限することによって、この水エマルジョン燃料をディーゼル機関15等の内燃機関に供給するための燃料供給装置12及びこれに付随する装置類が、例えば定格供給流量を超える状態で運転されることを防止することができる。
【0106】
これによって、この燃料供給装置12及びこれに付随する装置類を適切な状態で作動させることができ、水エマルジョン燃料が使用されるディーゼル機関15を、適切で安定した燃焼効率で運転することができるし、排気中のNOX成分を効果的に低減させることもできる。そして、水の供給流量を制限しているが、燃料油の供給流量を制限していないので、ディーゼル機関15を設定された出力で運転することができる。
【0107】
また、上記実施形態では、図1に示すように、本発明に係る比重監視制御装置11、及び燃料供給装置12を、燃料油に水を添加して所望の目標水添加重量率Tγの水エマルジョン燃料を作り、この水エマルジョン燃料をディーゼル機関15に供給する燃料供給装置12に適用したが、これ以外にも、燃料油に水及び添加剤(例えば界面活性剤)を添加して、所望の目標水添加重量率Tγの水エマルジョン燃料を作り、この水エマルジョン燃料をディーゼル機関15に供給する燃料供給装置に適用することができる。
【0108】
更に、上記実施形態では、本発明を舶用のディーゼル機関15に適用した例を示したが、これ以外に、例えば地上で使用する内燃機関やボイラにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
以上のように、本発明に係る比重監視制御装置、及びそれを備える燃料供給装置は、燃料油に水を添加して水エマルジョン燃料を作るときに、実際に使用される燃料油の比重を計測して監視することができ、この計測して得られた燃料油の比重を使用して燃料油に添加する水の量を調整することによって、正確な目標水添加重量率の水エマルジョン燃料を作ることができるようにする優れた効果を有し、このような比重監視制御装置、及びそれを備える燃料供給装置に適用するのに適している。
【符号の説明】
【0110】
11 比重監視制御装置
12 燃料供給装置
13 燃料タンク
14 水タンク
15 ディーゼル機関
16 燃料供給ライン
17 水供給ライン
18 循環ライン
19 制御部
20 第1燃料供給ポンプ
21 第1比重計測部
22 第1温度計測部
23 ミキサ
24 水供給ポンプ
25 第3比重計測部
26 第3温度計測部
27 第2比重計測部
28 第2温度計測部
29 第2燃料循環ポンプ
30 ヒータ
31 リターンチャンバ
32 合流部
33 水添加率調整部
go 燃料油の第1計測比重
ge 水エマルジョン燃料の第2計測比重
gw 水の第3計測比重
to 燃料油の第1計測温度
te 水エマルジョン燃料の第2計測温度
tw 水の第3計測温度
Sγ 計測水添加重量率
Tγ 目標水添加重量率
Kγ1〜Kγ2 許容水添加重量率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料油に水を添加して燃料油をエマルジョン化する際に、燃料油の比重を計測する第1比重計測手段を備え、
この第1比重計測手段で計測して得られた第1計測比重を使用して燃料油に添加する水の量を調整し、又は燃料油及び水の両方の量を調整することによって、所望の目標水添加重量率の水エマルジョン燃料を作ることができるようにする比重監視制御装置。
【請求項2】
燃料油に水を添加して作られた水エマルジョン燃料の比重を計測する第2比重計測手段と、
この第2比重計測手段で計測して得られた第2計測比重と前記第1計測比重とを使用して水エマルジョン燃料の計測水添加重量率を演算する水添加率調整部と、
前記計測水添加重量率を出力する出力手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の比重監視制御装置。
【請求項3】
水の比重を第3比重計測手段で計測し、この第3比重計測手段で計測して得られた第3計測比重と前記第1及び第2計測比重とを使用して水エマルジョン燃料の計測水添加重量率を前記水添加率調整部で演算し、前記計測水添加重量率を前記出力手段で出力することを特徴とする請求項2記載の比重監視制御装置。
【請求項4】
前記水添加率調整部は、演算して得られた前記計測水添加重量率に基づいて、所望の目標水添加重量率の水エマルジョン燃料を作ることができるように、燃料油に添加される水の量を調整し、又は燃料油及び水の両方の量を調整することを特徴とする請求項2又は3記載の比重監視制御装置。
【請求項5】
前記比重計測手段は、質量流量計測機能と体積流量計測機能とを備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の比重監視制御装置。
【請求項6】
前記水添加率調整部は、前記計測比重を温度補正して得られた温度補正済み計測比重を使用して燃料油に添加する水の量を調整し、又は燃料油及び水の両方の量を調整することによって、所望の目標水添加重量率の水エマルジョン燃料を作ることができるようにする請求項2乃至5のいずれかに記載の比重監視制御装置。
【請求項7】
前記水添加率調整部は、所望の水添加重量率の水エマルジョン燃料を作るために使用される燃料油及び水の合計流量が、所定の上限合計流量以上となるときは、水の供給流量を制限して、前記合計流量が所定の上限合計流量未満となるようにすることを特徴とする請求項2乃至6のいずれかに記載の比重監視制御装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の比重監視制御装置を備え、この比重監視制御装置を使用して燃料油に添加する水の量、又は燃料油及び水の両方の量が調整されて作られた水エマルジョン燃料を、燃料供給ポンプを使用して内燃機関又はボイラに供給することができる燃料供給装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−37121(P2012−37121A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176564(P2010−176564)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】