説明

毛髪処理用組成物

【課題】柔軟性、ツヤ、まとまりを同時に付与して、寝癖を防止し、スタイルを付けやすく、しかもそのスタイルが持続する毛髪処理用組成物を提供する。
【解決手段】成分(a)及び(b)を含有する毛髪処理用組成物。(a)アミノ酸残基の数が2又は3である、一般式(1)で表される化合物又はその塩:


〔式中、Xは炭化水素基、アルギニン、アラニン等、Yはアルギニン残基、アラニン残基、グリシン残基、グルタミン残基、グルタミン酸残基、セリン残基、プロリン残基、4−ヒドロキシプロリン残基から選ばれるアミノ酸残基等、Rは水素原子、又は水酸基が置換していてもよい炭素数1〜4の一価の炭化水素基を示し、m及びnは0又は1を示す。但し、m及びnが同時に1となる場合、Xはアミノ酸残基となることはない。〕;および(b)炭素数が8以下の脂肪族カルボン酸又はその塩

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪処理用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
寝癖は、就寝時に寝具等から頭髪に加わる外力によって毛髪が望ましくない形状に形づけられる現象であって、多くの人が日常生活で感じる煩わしい現象である。
寝癖を直す際には、ひとたび加湿して毛髪内部に存在する水素結合を切断した後に、ドライヤーなどで乾燥しながらより好ましい形状で水素結合を再形成するとともに、その形状を維持させるために毛髪表面に種々のセット用ポリマーを適用して毛髪間を固定するという操作を行う。このような操作は煩雑であり、セット用ポリマーによる毛髪間の固定を行わないと、スタイルの持続性の点で満足できるものではなかった。
【0003】
これに対して、寝癖の発生を防止する技術として、コンキオリンと呼ばれるタンパク質加水分解物などと、トリメチルグリシンとを配合してなる頭髪用化粧品(特許文献1参照)が提案されている。しかしながら、この技術は毛髪内の保湿性を高めて毛髪内の水素結合切断を促進するとともに、就寝中に毛髪の乾燥が進行して望ましくない形状に固定されるのを防ぐ技術であって、スタイルを仕上げた後でも毛髪内の水素結合交換が継続するため、仕上げたスタイルを維持しづらいという問題が逆に生じてしまう。
【0004】
寝癖がついてしまった頭髪を容易に元の形状に戻す、即ちスタイルを付けやすくするために、毛髪内部構造を改質する技術もいくつか提案されている。これらの技術はいずれも毛髪内部に存在する水素結合を切断して、スタイルを付けやすくしており、形状の付与や修復は容易になるが、スタイル付け終了後でも望ましくない水素結合の切断・再形成が継続して起こっており、仕上がったスタイルが持続しづらいという問題の発生が避けられない。例えば、2種以上のα−ヒロドキシカルボン酸、蛋白分解物及び高重合ジメチルポリシロキサンを含有する、ツヤ、滑らかさに優れた毛髪処理用組成物(特許文献2参照)や、α−ヒドロキシカルボン酸又はその塩と、特定の植物から得られる抽出物とを含有する、ツヤと柔軟性を付与する毛髪処理用組成物(特許文献3参照)が提案されているが、いずれの技術提案でもスタイルを持続させることは十分とはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-198725号公報
【特許文献2】特開平10-81614号公報
【特許文献3】特開平11-5719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、寝癖を防止すること或いはスタイルを付けやすくすることに対して、スタイルを持続させることは相反する要請であり、従来同時に達成できる技術は存在しなかった。
【0007】
本発明は、柔軟性、ツヤ、まとまりを同時に付与して、寝癖を防止し、スタイルを付けやすく、しかもそのスタイルが持続する毛髪処理用組成物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、水素結合ネットワークを広げるように働く物質である水を毛髪内に保持させる保湿剤、グリシルグリシンと、水素結合ネットワークを乱すように働く特定の脂肪族カルボン酸(b)を同時に配合した毛髪用組成物を用いれば、相反する要請を同時に達成することが可能となり、毛髪に発生する寝癖を防止しつつ毛髪にスタイルを付けやすくし、しかもそのスタイルを維持させ得ることを見出した。
(a)アミノ酸残基の数が2又は3である、一般式(1)で表される化合物又はその塩:
【0009】
【化1】

【0010】
〔式中、Xは水酸基が置換していてもよい炭素数1〜4の二価の炭化水素基又は、アルギニン残基、アラニン残基、フェニルアラニン残基、グリシン残基、グルタミン残基、グルタミン酸残基、セリン残基、プロリン残基、N−メチルプロリン残基、4−ヒドロキシプロリン残基から選ばれるアミノ酸残基を示し、
Yはアルギニン残基、アラニン残基、グリシン残基、グルタミン残基、グルタミン酸残基、セリン残基、プロリン残基、4−ヒドロキシプロリン残基から選ばれるアミノ酸残基又は化学式(2);
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、−*は隣接するカルボニル基又は酸素原子と結合する結合手を示す。)
で表される二価の基を示し、
Rは水素原子、又は水酸基が置換していてもよい炭素数1〜4の一価の炭化水素基を示し、m及びnは0又は1を示す。但し、m及びnが同時に1となる場合、Xはアミノ酸残基となることはない。〕;および
(b)炭素数が8以下の脂肪族カルボン酸又はその塩
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、処理後、乾いた髪に柔軟性、ツヤ、まとまりを同時に付与して、寝癖を防止し、スタイルを付けやすく、しかもそのスタイルが持続する毛髪処理用組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】毛髪の寝癖の付き易さを評価するための毛束の曲がり角度θを模式的に示す図である。
【図2】スタイルの付けやすさ、スタイルの持続性を評価するための毛束のカール径を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について説明する。
本発明の毛髪処理用組成物は、以下の成分(a)および成分(b)を含有する。
(a)アミノ酸残基の数が2又は3である、一般式(1)で表される化合物又はその塩;および
(b)炭素数が8以下の脂肪族カルボン酸又はその塩
【0016】
【化3】

【0017】
成分(a)は、一般式(1)で表される化合物又はその塩であり、遊離形態であってもよく、塩又は分子内塩(両性イオン)であってもよい。
化合物(a)の塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩等の無機酸塩;アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
【0018】
一般式(1)中、Xは水酸基が置換していてもよい炭素数1〜4の二価の炭化水素基又はアルギニン残基、アラニン残基、フェニルアラニン残基、グリシン残基、グルタミン残基、グルタミン酸残基、セリン残基、プロリン残基、N−メチルプロリン残基、4−ヒドロキシプロリン残基から選ばれるアミノ酸残基を示し、nは0又は1である。
水酸基が置換していてもよい炭素数1〜4の二価の炭化水素基は、飽和又は不飽和でも、直鎖又は分岐鎖であってもよい。このうち二価の飽和炭化水素基又は水酸基で置換された二価の飽和炭化水素基が好ましい。
【0019】
二価の飽和炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、ビニレン基、トリメチレン基、イソプロピリデン基、1−プロペニレン基、テトラメチレン基、2−メチルトリメチレン基、1−メチルトリメチレン基、1−ブテニレン基等が挙げられる。
水酸基で置換された二価の飽和炭化水素基としては、例えば、1−ヒドロキシエチレン基、1−ヒドロキシトリメチレン基、1,2−ジヒドロキシトリメチレン基、1−ヒドロキシテトラメチレン基、1,2−ジヒドロキシテトラメチレン基、1,3−ジヒドロキシテトラメチレン基、1,2,3−トリヒドロキシテトラメチレン基等が挙げられる。
【0020】
一般式(1)中、Yはアルギニン残基、アラニン残基、グリシン残基、グルタミン残基、グルタミン酸残基、セリン残基、プロリン残基、4−ヒドロキシプロリン残基から選ばれるアミノ酸残基又は下記化学式(2)で表される二価の基を示し、mは0又は1である。
【0021】
【化4】

【0022】
(式中、−*は隣接するカルボニル基又は酸素原子と結合する結合手を示す。)
また、一般式(1)中、m及びnは0又は1を示す。但し、m及びnが同時に1となる場合、Xはアミノ酸残基となることはない。即ち、m=n=1の場合、Xは水酸基が置換していてもよい炭素数1〜4の二価の炭化水素基である。
【0023】
一般式(1)中、Rは水素原子、又は水酸基が置換していてもよい炭素数1〜4の一価の炭化水素基を示す。
水酸基が置換してもよい炭素数1〜4の一価の炭化水素基は、飽和又は不飽和でも、直鎖又は分岐鎖であってもよい。
炭素数1〜4の一価の炭化水素基としてはアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
水酸基で置換された炭素数1〜4の一価の炭化水素基としてはヒドロキシアルキル基が好ましく、例えば2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、2,3,4−トリヒドロキシブチル基、2,4−ジヒドロキシブチル基等が挙げられる。
【0024】
成分(a)に好適な化合物の例としては、以下の式(G1)〜(G9)で表される化合物を挙げることができ、(G2)〜(G9)がより好ましく、グリシルグリシルグリシン(G8)、グリシルグリシン(G9)が特に好ましい。これらの化合物は遊離形態であっても、両性イオンであってもよく、塩を形成していてもよい。また、これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
【化5】

【0026】
成分(a)の含有量は、組成物の黄変防止の観点から、組成物中の0.01〜10質量%が好ましく、更には0.03〜5質量%、特に0.05〜3質量%が好ましい。
【0027】
成分(b)は、炭素数が8以下の脂肪族カルボン酸又はその塩である。化合物(b)の塩としては、例えば、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられ、特にアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。成分(b)の好適な例としては、例えばリンゴ酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、ピロリドンカルボン酸、マロン酸、マレイン酸、ニコチン酸、安息香酸、グリセリン酸若しくは酒石酸、又はそれらの塩等が挙げられる。好ましくはリンゴ酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、グリセリン酸若しくは酒石酸、又はそれらの塩が挙げられる。
また、成分(a)の対イオンとしても配合されていても構わない。
成分(b)の含有量は、組成物の黄変防止の観点から、組成物中の0.01〜10質量%が好ましく、更には0.03〜5質量%、特に0.05〜3質量%が好ましい。また、これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明の毛髪処理剤組成物は、成分(b')として炭素数が10以下の芳香族スルホン酸又はその塩を含有することができる。化合物(b')の塩としては、例えば、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられ、特にアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。成分(b')の好適な例として、例えばベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸若しくはサッカリン、又はそれらの塩等が挙げられるが、中でも、p−トルエンスルホン酸若しくはナフタレンスルホン酸、又はそれらの塩が特に好ましい。
成分(b')の含有量は、組成物の黄変防止の観点から、組成物中の0.01〜10質量%が好ましく、更には0.03〜5質量%、特に0.05〜3質量%が好ましい。また、これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の毛髪処理用組成物は、さらに成分(c)として有機溶剤を含有することができる。有機溶剤としては、例えば、エタノール、2−プロパノール等の低級アルカノール類;ベンジルアルコール、2−ベンジルオキシエタノール等の芳香族アルコール類;プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン等のポリオール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類が挙げられる。
【0029】
また、本発明の毛髪処理用組成物は、さらに成分(d)として界面活性剤を含有することができる。このような界面活性剤としては、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン界面活性剤のいずれも使用することができ、特にカチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤を好適に使用することができる。
【0030】
カチオン界面活性剤としては、例えば、モノ長鎖アルキル四級アンモニウム塩、ジ長鎖アルキル四級アンモニウム塩、長鎖アルコキシアルキル四級アンモニウム塩、長鎖アルキルアミド四級アンモニウム塩、長鎖アルキル三級アミン及びその塩、長鎖アルコキシアルキル三級アミン及びその塩、長鎖アルキルアミド三級アミン及びその塩等が挙げられる。
特に、長鎖アルコキシアルキル三級アミン及びその塩としては、一般式(F1)で表される長鎖アルキルエーテル三級アミン及びその塩、一般式(F2)で表される長鎖アルキルヒドロキシエーテル三級アミン及びその塩が挙げられる。
【0031】
【化6】

【0032】
式中、Rは炭素数6〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、又は基−(AO)H(Aは炭素数2〜4のアルキレン基、mは1〜6の数を示し、m個のAOは同一でも異なってもよく、その配列は任意である)を示す。
【0033】
【化7】

【0034】
式中、Rは、炭素数6〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、又は基−(AO)H(Aは炭素数2〜4のアルキレン基、bは1〜6の数を示し、b個のAOは同一でも異なってもよく、その配列は任意である)を示す。iは1〜5の数を示す。
【0035】
具体的には、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、N,N−ジメチル−3−ヘキサデシルオキシプロピルアミン及びその塩、N,N−ジメチル−3−オクタデシルオキシプロピルアミン及びその塩、等が挙げられる。特に塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、N,N−ジメチル−3−オクタデシルオキシプロピルアミン及びその塩が好ましい。
【0036】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、N−アシルアミノ酸塩、リン酸モノ又はジエステル塩、スルホコハク酸エステル塩等が挙げられる。特に、アルキルエーテル硫酸塩が好ましく、具体的には、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が挙げられる。これらアニオン界面活性剤のアニオン性基の対イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;炭素数2又は3のアルカノール基を1〜3個有するアルカノールアミン(例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)を挙げることができる。
【0037】
非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、高級脂肪酸ショ糖エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸モノ又はジエタノールアミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、アルキルサッカライド、アルキルアミンオキサイド、アルキルアミドアミンオキサイド、アルキルグリセリルエーテル、アルケニルグリセリルエーテル等が挙げられる。これらのうち、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、高級脂肪酸モノ又はジエタノールアミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルグリセリルエーテルが好ましく、ポリオキシエチレンアルキル(平均炭素数12〜14)エーテル、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、イソデシルグリセリルエーテルが特に好ましい。
【0038】
両性界面活性剤としては、例えば、イミダゾリン型、カルボベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン、ヒドロキシスルホベタイン、アミドスルホベタイン等が挙げられる。
【0039】
界面活性剤の含有量は、目的とする毛髪処理剤の用途、各界面活性剤の機能(感触向上、乳化能、洗浄能等)によって異なる。例えば、組成物中の0.01〜20質量%が好ましく、更には0.1〜15質量%、特に0.5〜10質量%が好ましい。
【0040】
また、本発明の毛髪処理用組成物は、さらに成分(e)としてコンディショニング成分を含有することができる。このコンディショニング成分とは、カチオン性ポリマー、シリコーン類及び油剤から選ばれるものである。
【0041】
カチオン性ポリマーは、使用時の毛髪の感触を向上させる目的で用いられる。カチオン性ポリマーとは、カチオン基又はカチオンにイオン化され得る基を有するポリマーをいい、全体としてカチオン性となる両性ポリマーも含まれる。すなわち、カチオン性ポリマーとしては、ポリマー鎖の側鎖にアミノ基若しくはアンモニウム基を含むか、又はジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含む水溶性のものが挙げられる。具体的には、カチオン化セルロース、カチオン化澱粉、カチオン化グアーガム、カチオン化タラガム、カチオン化フェヌグリークガム、カチオン化ローカストビーンガム、ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体、4級化ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらのうち、特にすすぎ時及び乾燥時の柔らかさ、滑らかさ及び指の通り易さ、乾燥時のまとまり易さ及び保湿性という効果、並びに剤の安定性の点から、ジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含むポリマー、4級化ポリビニルピロリドン、カチオン化セルロースが好ましく、ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体、カチオン化セルロースがより好ましい。
【0042】
カチオン性ポリマーの具体例としては、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド重合体(ポリクオタニウム−6,例えばマーコート100;Nalco社)、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド/アクリル酸共重合体(ポリクオタニウム−22,例えばマーコート280,同295;Nalco社)、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド/アクリルアミド共重合体(ポリクオタニウム−7,例えばマーコート550;Nalco社)、4級化ポリビニルピロリドン(ガフコート734、同755、同755N;アイエスピー・ジャパン社)、カチオン化セルロース(レオガードG、同GP;ライオン社、ポリマーJR−125、同JR−400、同JR−30M、同LR−400、同LR−30M;以上、ユニオンカーバイド社)、カチオン化ガム類(カチナールCTR−100、同CF−100、同CLB−100;東邦化学工業社)等が挙げられる。
【0043】
これらカチオン性ポリマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。カチオン性ポリマーの含有量は、感触向上効果と組成物の分離に対する安定性の観点から、組成物中の0.01〜20質量%が好ましく、特に0.5〜10質量%が好ましい。
【0044】
シリコーン類としては、例えば、ポリジメチルシロキサン類、変性シリコーン類(例えば、アミノ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等)、環状ポリジメチルシロキサン、アミノポリエーテル変性シリコーン、高重合メチルポリシロキサンエマルジョンが挙げられ、特にポリジメチルシロキサン類、ポリエーテル変性シリコーン類、アミノ変性シリコーン、環状ポリジメチルシロキサン、アミノポリエーテル変性シリコーン、高重合メチルポリシロキサンエマルジョンが好ましい。
【0045】
これらシリコーン類は商業的に入手することができ、例えば、BY11−026、BY22−19、FZ−3125、SH200−1,000,000cs(東レ・ダウコーニング社)、TSF451−100MA(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社)、KM−9716(信越化学工業社)〔以上ポリジメチルシロキサン類〕、TSF4440(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社)、KF−6005、KF−6011、KF−353A(信越化学工業社)〔以上ポリエーテル変性シリコーン類〕、SF8451C、SF8452C、SF8457C、DC929、DC8500、SS−3551、SM8704C、SM8904(東レ・ダウコーニング社)、KF−867(信越化学工業社)、KT1989(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社)〔以上アミノ変性シリコーン〕、SH244、SH245(東レ・ダウコーニング社)〔以上環状ポリジメチルシロキサン〕、SS−3588(東レ・ダウコーニング社)〔以上アミノポリエーテル変性シリコーン〕、BY22−060(東レ・ダウコーニング社)〔以上高重合メチルポリシロキサンエマルジョン〕等が挙げられる。
【0046】
上記シリコーン類の含有量は、十分な効果とベタツキの抑制の観点から、組成物中の0.1〜20質量%が好ましく、特に0.5〜15質量%が好ましい。
【0047】
油剤としては、スクワレン、スクワラン、ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、シクロパラフィン等の炭化水素;、ヒマシ油、カカオ油、ミンク油、アボガド油、オリーブ油、シア脂等のグリセリド;ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ等のロウ;パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミルスチン酸オクチルドデシル、ラウリン酸ヘキシル、乳酸セチル、モノステアリン酸プロピレングリコール、オレイン酸オレイル、2−エチルヘキサン酸ヘキサデシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸トリデシル等のエステル油;カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ラノリン脂肪酸、イソ脂肪酸、アンテイソ脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、18−メチルエイコサン酸、16−メチルオクタデカン酸およびこれら脂肪酸/分岐脂肪酸の混合物等の高級脂肪酸;ミリスチルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、2−オクチルドデカノール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール;その他イソステアリルグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル等が挙げられる。これらのうち高級アルコールが好ましい。
これらの油剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その含有量は、感触改善効果と組成物の分離に対する安定性の観点から、組成物中の0.1〜20質量%、特に0.5〜15質量%であることが好ましい。
【0048】
このようなコンディショニング成分(e)が適度に毛髪に残留するため、良好なコンディショニング効果を付与することができる。
【0049】
本発明の毛髪処理用組成物には、上記成分のほかに通常化粧料原料として用いられる他の成分を加えることができる。このような任意成分としては、増粘剤、防腐剤、キレート剤、安定化剤、酸化防止剤、植物性抽出物、生薬抽出物、タンパク質加水分解物、ビタミン類、染料等の着色剤、香料、紫外線吸収剤、エチレングリコールジ脂肪酸エステル等のパール化剤、セット用ポリマー、両親媒性アミド脂質等が挙げられる。両親媒性アミド脂質として、具体的には、一般式(F3)で表されるジアミド化合物、一般式(F4)で表されるセラミド類等が挙げられる。
【0050】
【化8】

【0051】
式中、Rは水酸基及び/又はアルコキシ基が置換してもよい炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖の二価の炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖の二価の炭化水素基を示す。
【0052】
【化9】

【0053】
式中、R10はヒドロキシ基、オキソ基又はアミノ基が置換してもよい炭素数4〜30の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、Wはメチレン基、メチン基又は酸素原子を示し、破線はπ結合の存在又は不存在を示し、Xは水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示すか、又は隣接する酸素原子とともにオキソ基を形成し、X、X及びXは各々独立して水素原子、ヒドロキシ基又はアセトキシ基を示し(但し、Wがメチン基であるとき、XとXは一方が水素原子で他方は存在せず、−O−Xがオキソ基であるとき、Xは存在しない)、R11及びR12は各々独立して水素原子、ヒドロキシ基又はアセトキシメチル基を示し、R13はヒドロキシ基又はアミノ基が置換してもよい炭素数5〜35の直鎖、分岐鎖若しくは環状の飽和炭化水素基、又は該炭化水素基のω位にヒドロキシ基が置換してもよい炭素数8〜22の直鎖、分岐鎖若しくは環状の飽和若しくは不飽和の脂肪酸がエステル結合した基を示し、R14は水素原子を示すか、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有してもよい総炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示す。
【0054】
上記、セット用ポリマーとしては、ポリシリコーン−9;ポリビニルピロリドン系ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、ビニルピロリドン/酢酸ビニル/プロピオン酸ビニル三元共重合体、ビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート(四級塩化)共重合体、ビニルピロリドン/アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体等);メチルビニルエーテル/無水マレイン酸アルキルハーフエステル共重合体;酸性ポリ酢酸ビニル系ポリマー(例えば、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/ネオデカン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/プロピオン酸ビニル共重合体等);酸性(メタ)アクリル系ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸/アクリル酸アルキルエステル/アルキルアクリルアミド共重合体等);両性アクリル系ポリマー(例えば、N−メタクリロイルエチル−N,N−ジメチルアンモニウム・α−N−メチルカルボキシベタイン/メタクリル酸ブチル共重合体、アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル/アクリル酸オクチルアミド共重合体等);アクリルアミド・アクリル酸エステル系共重合体;キチン・キトサン化合物(例えば、ヒドロキシプロピルキトサン、カルボキシメチルキチン、カルボキシメチルキトサン等)などが挙げられる。
【0055】
本発明の毛髪処理用組成物は、組成物の刺激性と成分(a)の組成物中での加水分解安定性の観点から使用時(適用時)の25℃におけるpHは2〜7であり、好ましくは2.5〜5.5、より好ましくは3〜5である。この調整のために、さらにpH調整剤を使用することができる。
pH調整剤としては、アルカリ剤として、アンモニア及びその塩;モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、2−アミノブタノール等のアルカノールアミン及びその塩;1,3−プロパンジアミン等のアルカンジアミン及びその塩;炭酸グアニジン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物等を使用することができる。
また、酸剤として、塩酸、リン酸等の無機酸、塩酸モノエタノールアミン等の塩酸塩;リン酸二水素一カリウム、リン酸一水素二ナトリウム等のリン酸塩等を使用することができる。
【0056】
これらのpH調整剤は、酸剤単独あるいはアルカリ剤単独でも、両者を併用してもよく、またその含有量は、毛髪損傷や頭皮刺激の低減の観点から、組成物中の0.01〜20質量%が好ましく、特に0.1〜15質量%が好ましい。
【0057】
本発明の毛髪処理用組成物の剤型は、例えば、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、ムース状、エアゾールなどの形態にすることができる。
【0058】
本発明の毛髪処理用組成物は、シャンプー、リンス、コンディショナー若しくはトリートメント等のインバス剤又はヘアムース、ヘアミスト、ヘアローション、ヘアオイル若しくはスタイリング剤等のアウトバス剤などに好適に用いることができる。
【0059】
本発明の毛髪処理方法とは、上記で説明された毛髪処理剤を毛髪に直接もしくは道具を用いて接触させることにより行われる。接触の方法は、適用される毛髪処理用組成物にて一般に広く用いられている方法を適用でき、例えばシャンプー組成物の場合、適量を毛髪に接触させ、泡立てながら数分間マッサージした後に流水で洗い流す方法、リンス、コンディショナー若しくはトリートメント等の場合、適量を毛髪に接触させ、数秒〜数10分放置後に流水で洗い流す方法、ヘアムース、ヘアオイル若しくはスタイリング剤の場合、適量を毛髪に接触させ、そのまま放置する方法などが挙げられる。ここで、適量とは毛髪の重量に対する浴比で1:0.005〜1:10程度になる量である。処理の対象となる毛髪は、全部又はその一部でも構わない。毛髪に適用する際の温度は室温から体温程度が好ましいが、浸透促進のために50度程度まで加熱しても構わない。
【実施例】
【0060】
(実施例EA1〜EA8、比較例CA1〜CA10)
表1(実施例EA1〜EA8)、表2(比較例CA1〜CA10)に示す処方にて、シャンプーを調製した。長さ10cm、幅2cmの毛束を各シャンプーで洗浄し、30秒間流水ですすいだ後、タオルドライし、毛束の上端を固定し、自然乾燥させた。毛髪乾燥後の髪の柔らかさ、まとまり、ツヤについて、下記の基準に従い、専門パネラー10名が官能試験を行った。結果を10名の平均点でランク分けを行い、表3と表4に示す。
【0061】
<髪の柔らかさ>
4 非常に柔らかい
3 柔らかい
2 どちらともいえない
1 ハリコシがある
0 非常にハリコシがある
【0062】
<髪のまとまり>
4 まとまりが非常に良い
3 まとまりが良い
2 どちらともいえない
1 まとまりが悪い
0 まとまりが非常に悪い
【0063】
<髪のツヤ>
4 顕著なツヤの改善が見られる
3 ツヤの改善が見られる
2 ややツヤの改善が見られる
1 ツヤの改善がない
0 ツヤが無くなった
【0064】
<評価>
◎ 平均評価点が3.5以上
○ 平均評価点が2.5以上3.5未満
△ 平均評価点が1.5以上2.5未満
× 平均評価点が1.5未満
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
表3、4から明らかなように、成分(a)および成分(b)の少なくともいずれか一方を含有しないシャンプーでは、毛髪乾燥後の髪の柔らかさ、まとまり、ツヤの改善のいずれにおいても、実施例のシャンプーに比べて、低スコアであった。
【0070】
(実施例EB1〜EB8、比較例CB1〜CB10)
表5(実施例EB1〜EB8)、表6(比較例CB1〜CB10)に示す処方にて、コンディショニング剤を調製した。長さ10cm、幅2cmの毛束を市販のシャンプーにて洗浄し、30秒間流水ですすいだ後、タオルドライした。その後に各コンディショニング剤を適量塗布し、30秒間流水ですすぎ、タオルドライを行い、毛束の上端を固定し、自然乾燥させた。毛髪乾燥後の柔らかさ、まとまり、ツヤについて、下記の基準に従い、専門パネラー10名が官能試験を行った。結果を10名の平均点でランク分けを行い、表7と表8に示す。
【0071】
<髪の柔らかさ>
4 非常に柔らかい
3 柔らかい
2 どちらともいえない
1 ハリコシがある
0 非常にハリコシがある
【0072】
<髪のまとまり>
4 まとまりが非常に良い
3 まとまりが良い
2 どちらともいえない
1 まとまりが悪い
0 まとまりが非常に悪い
【0073】
<髪のツヤ>
4 顕著なツヤの改善が見られる
3 ツヤの改善が見られる
2 ややツヤの改善が見られる
1 ツヤの改善がない
0 ツヤが無くなった
【0074】
<評価>
◎ 平均評価点が3.5以上
○ 平均評価点が2.5以上3.5未満
△ 平均評価点が1.5以上2.5未満
× 平均評価点が1.5未満
【0075】
【表5】

【0076】
【表6】

【0077】
【表7】

【0078】
【表8】

【0079】
表7、8から明らかなように、成分(a)および成分(b)の少なくともいずれか一方を含有しないコンディショニング剤では、前記シャンプーの場合と同様に、毛髪乾燥後の髪の柔らかさ、まとまり、ツヤの改善のいずれにおいても、実施例のコンディショニング剤に比べて、低スコアであった。
【0080】
以上のことから、本発明の毛髪処理用組成物を適用した実施例のシャンプー剤およびコンディショニング剤によれば、柔軟性、ツヤ、まとまりを同時に付与することができる。
【0081】
(実施例EC1〜EC7、比較例CC1〜CC4)
表9に示す実施例EC1〜EC7の毛髪処理用組成物と、比較例CC1〜CC4の毛髪処理用組成物をそれぞれ調整した。根元を揃えて結束した長さ20cm、幅5mm、0.1gの毛束を作成した。毛束に各毛髪処理用組成物0.2gを塗布し、10分間放置後、約40℃の水で30秒間すすぎ、タオルドライして、結束部を上にして固定し、自然乾燥させた。自然乾燥後、以下の方法で、寝癖の付き易さ、スタイルの付けやすさ、スタイル持続性を評価した。
【0082】
<寝癖の付き易さ>
枕を想定したタオルの土台の上に、毛束を半分に折った状態で静置し、ウィッグ(株式会社ビューラックス製 No.662DXLH)に錘を取り付け人頭の平均的な重さである6kgに調整し、ウィッグが寝た状態で毛束の上に載せ、8時間放置した。放置後、結束部を上にして固定し、図1に示すように毛束を真横から見た時の毛束の曲がり角度θを測定した。角度が大きいほど寝癖は付き易く、角度が小さいほど寝癖は付き難いことを意味する。結果を表9に併せて記した。表9に示したように実施例EC1〜EC7のθは、比較例CC1〜CC4のθに比べて明らかに小さく、寝癖が付き難いことが分かる。
【0083】
<スタイルの付けやすさ>
寝癖の付き易さを評価した毛束を、ミストにてイオン交換水を0.05g塗布した後、直径2.5cmのロッドに巻いて、60℃で乾燥させた。ロッドから毛束を外し、カールのかかりについて、図2に示すように毛束のカール径Rを測定し、スタイル付与率S(%)=(2.5/R)*100を求め、スタイルの付けやすさを評価した。スタイル付与率Sが大きいほどカールがよくかかっていることからスタイルが付けやすいことを意味する。結果を表9に併せて記した。表9に示したように実施例EC1〜EC7のSは、比較例CC1〜CC4のRに比べて明らかに大きく、スタイルが付けやすいことがわかる。
【0084】
<スタイル持続性>
上記方法によりスタイルの付けやすさを評価した毛束を20℃、65%RH下にて8時間放置した後、毛束のカール径を再度測定した。放置後のカール径をRとして、スタイル持続率Δ(%)=[{S−(2.5/R)*100}/S]*100を算出し、スタイルの持続性を評価した。Δが小さいほどスタイルの持続性が高いことを意味する。結果を表1に併せて記す。表9に示したように実施例EC1〜EC7のΔは、比較例CC1〜CC4のΔに比べて明らかに小さく、スタイル持続性にも優れることがわかる。
【0085】
【表9】

【0086】
表10に示す実施例E1の毛髪処理用組成物と、比較例E1の毛髪処理用組成物をそれぞれ調整した。パネリスト5人が、毛髪処理用組成物を普段使用しているコンディショナーに置き換えて、左側頭に実施例ED1の毛髪処理用組成物を、右側頭に比較例CD1の毛髪処理用組成物を1週間使用する。その後、左側頭に比較例CD1の毛髪処理用組成物を、右側頭に実施例ED1の毛髪処理用組成物を1週間使用する。後に、翌朝の寝癖の付き難さとスライリングのし易さ、翌日のスタイルの持続性を以下の基準に従い、アンケート調査を行った。結果を表10に併せて示す。
【0087】
<寝癖の付き易さ>
2点: 実施例ED1品が比較例CD1品より寝癖が付き難い
1点: 実施例ED1品が比較例CD1品よりやや寝癖が付き難い
0点: どちらともいえない
−1点: 比較例CD1品が実施例ED1品よりやや寝癖がやや付き難い
−2点: 比較例CD1品が実施例ED1品より寝癖が付き難い
【0088】
<スタイルの付けやすさ>
2点: 実施例ED1品が比較例CD1品よりスタイルが付けやすい
1点: 実施例ED1品が比較例CD1品よりややスタイルが付けやすい
0点: どちらともいえない
−1点: 比較例CD1品が実施例ED1品よりややスタイルが付けやすい
−2点: 比較例CD1品が実施例ED1品よりスタイルが付けやすい
【0089】
<スタイル持続性>
2点: 実施例ED1品が比較例CD1品よりスタイルが持続する
1点: 実施例ED1品が比較例CD1品よりややスタイルが持続する
0点: どちらともいえない
−1点: 比較例CD1品が実施例ED1品よりややスタイルが持続する
−2点: 比較例CD1品が実施例ED1品よりスタイルが持続する
【0090】
表10に示したように実施例ED1の毛髪処理用組成物は、比較例CD1の毛髪処理用組成物に比べて寝癖が付き難く、同時にスタイルが付けやすく、さらにそのスタイルが持続することが分かる。
【0091】
【表10】

【0092】
処方例EE1(ヘアミスト)
(質量%)
グリシルグリシン 0.1
リンゴ酸 4.0
ステアルトリモニウムクロリド
(塩化ステアリルトリメチルアンモニウム) 0.25
グリセリン 1.0
ベンジルアルコール 1.0
エタノール 4.5
PEG−10ジメチコン*1(ポリエーテル変性シリコーン)
1.1
デシルピリジニウムブロミド 1.5
香料 0.02
水酸化Na pH3.7に調整
水 残量
*1:KF−353A 信越化学工業(株)
【0093】
処方例EE2(ヘアミスト)
(質量%)
グリシルグリシン 0.2
グリコール酸 2.5
マロン酸 1.0
2−ベンジルオキシエタノール 2.5
PVP*2(ポリビニルピロリドン) 3.0
エタノール 10.0
ポリシリコーン−9*3 1.0
(ビスイソブチルPEG-15/アモジメチコン)コポリマー*4
(アミノポリエーテル変性シリコーン) 0.5
香料 0.05
水酸化Na pH3.7に調整
水 残量
*2:PVP K-30 アイエスピー・ジャパン(株)
*3:OS-88E−E 花王(株)
*4:SS−3588 東レ・ダウコーニング(株)
【0094】
処方例EE3(ヘアローション)
(質量%)
グリシルグリシン 0.5
乳酸 2.0
トルエンスルホン酸 0.5
グリセリン 2.0
ベンジルアルコール 1.0
ヒドロキシエチルセルロース*5 2.0
エタノール 10.0
ジメチコン*6(ポリジメチルシロキサン) 1.3
香料 0.05
水酸化Na pH3.7に調整
水 残量
*5:HECダイセル SE-850K ダイセル化学工業(株)
*6:KM−9716 信越化学工業(株)
【0095】
処方例EE4(ヘアローション)
(質量%)
グリシルグリシルグリシン 0.3
リンゴ酸 2.5
ナフタレンスルホン酸 0.1
グリセリン 1.0
ベンジルアルコール 1.0
エタノール 10.0
ポリシリコーン−9*7 1.0
香料 0.02
水酸化Na pH5.0に調整
水 残量
* 7:OS-88E−E 花王(株)
【0096】
処方例EE5(ヘアムース)
(質量%)
グリシルグリシン 0.1
グリシルグリシルグリシン 0.1
リンゴ酸 2.0
乳酸 2.0
ラウレス−16
(ポリオキシエチレン(16EO)ラウリルエーテル) 1.0
ステアルトリモニウムクロリド
(塩化ステアリルトリメチルアンモニウム) 0.1
グリセリン 1.0
ベンジルオキシエタノール 2.5
エタノール 4.5
ポリシリコーン−9*8 1.2
ジメチコン*9(高重合メチルポリシロキサンエマルジョン)
0.3
ジメチコンコポリオール*10
(ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体)0.2
香料 0.02
水酸化Na pH4.0に調整
水 残量
*8:OS-96E−E 花王(株)
*9:BY22−060 東レ・ダウコーニング(株)
*10:KF-353A 信越化学工業(株)
【0097】
処方例EE6(シャンプー)
(質量%)
グリシルグリシン 0.1
乳酸 0.5
リンゴ酸 0.5
トルエンスルホン酸 0.3
ラウレス−1硫酸アンモニウム
(ポリオキシエチレン(1EO)ラウリルエーテル硫酸アンモニウム) 15.0
ラウラミドプロピルベタイン(ラウリン酸アミドプロピルベタイン) 0.5
コカミドMEA(ココイルモノエタノールアミド) 0.3
脂肪酸(C14-28)/分岐脂肪酸(C14-28)混合物*11 0.5
ジステアリン酸PEG−250(エチレングリコールジステアレート) 3.0
イソデシルグリセリルエーテル 0.5
カエサルピニアスピノサヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド*12
(カチオン化タラガム) 0.1
コロハヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド*13
(カチオン化フェヌグリークガム) 0.1
ローカストビーンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド*14
(カチオン化ローカストビーンガム) 0.1
水酸化Na pH3.5に調整
水 残量
*11:クロダシッド18−MEA クローダジャパン(株)
*12:カチナールCTR-100 東邦化学工業(株)
*13:カチナールCF−100 東邦化学工業(株)
*14:カチナールCLB−100 東邦化学工業(株)
【0098】
処方例EE7(コンディショナー)
(質量%)
グリシルグリシン 0.1
乳酸 0.7
グリコール酸 0.7
ステアロキシプロピルジメチルアミン
(N,N−ジメチル−3−オクタデシルオキシプロピルアミン) 1.0
ベンジルアルコール 0.5
イソステアリン酸 0.25
シア脂 0.25
脂肪酸(C14-28)/分岐脂肪酸(C14-28)混合物*15 0.25
ビスメトキシプロピルアミドイソドコサン*16
(両親媒性アミド脂質A) 0.5
ステアリルアルコール 3.0
ジメチコン*17(ポリジメチルシロキサン) 2.0
水酸化Na pH3.7に調整
水 残量
*15:クロダシッド18−MEA クローダジャパン(株)
*16:BRS−661C 花王(株)
*17:SH200C 東レ・ダウコーニング(株)
【0099】
処方例EE8(スタイリング剤)
以下に示す組成に従い、まず原液を調整し、次いで原液及び噴射剤を耐圧密閉容器に充填してエアゾールヘアスプレーとする。
「原液」 (質量%)
グリシルグリシン 0.1
乳酸 0.2
アクリレーツコポリマー*18 5.0
エタノール 33.5
PEG−10ジメチコン*19
(ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体) 0.2
水酸化Na pH6.5に調整
水 原液を80%に調整する残量
*18:BALANCE CR National Starch & Chemical Company
*19:KF-353A 信越化学工業(株)
「噴射剤」
DME(ジメチルエーテル) 20.0
【0100】
処方例EE9(ヘアムース)
以下に示す組成に従い、まず原液を調整し、次いで原液及び噴射剤を耐圧密閉容器に充填してエアゾールフォームとする。
「原液」 (質量%)
グリシルグリシン 0.2
リンゴ酸 0.2
アクリレーツコポリマー*20 5.0
エタノール 33.3
(C12-14)パレス−9*21
(ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル) 1.0
水酸化Na pH6.5に調整
水 原液を80%に調整する残量
*20:BALANCE CR National Starch & Chemical Company
*21:ソフタノール90 日本触媒化学社製
「噴射剤」
DME(ジメチルエーテル) 20.0
【0101】
処方例EE10(スタイリング剤)
「原液」 (質量%)
グリシルグリシン 0.1
リンゴ酸 0.1
トルエンスルホン酸 0.2
セテアリルアルコール(セトステアリルアルコール) 4.0
パラフィン 16.5
ワセリン 10.0
ミネラルオイル(流動パラフィン) 3.0
セテス−20(ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 5.0
ステアリン酸グリセリル(モノステアリン酸グリセリン) 3.0
ラウレス−4リン酸Na
(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム) 0.5
プロピルパラベン(パラオキシ安息香酸プロピル) 0.1
ミリスチン酸オクチルドデシル 3.0
カルボマー*22(カルボキシビニルポリマー) 0.1
PEG−32(ポリエチレングリコール1540) 5.0
ステアロイルメチルタウリンNa
(N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム) 1.0
メチルパラベン(パラオキシ安息香酸メチル) 0.2
BG(ブチレングリコール) 5.0
EDTA−2Na(エデト酸二ナトリウム) 0.1
PVP*23(ポリビニルピロリドン) 0.8
安息香酸Na 0.2
フェノキシエタノール 0.2
水酸化Na pH6.5に調整
水 残量
*22:カーボポール 980 Lubizol Advanced Materials, Inc.
*23:PVP K-30 アイエスピー・ジャパン(株)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(a)及び(b)を含有する毛髪処理用組成物。
(a)アミノ酸残基の数が2又は3である、一般式(1)で表される化合物又はその塩:
【化1】

〔式中、Xは水酸基が置換していてもよい炭素数1〜4の二価の炭化水素基又は、アルギニン残基、アラニン残基、フェニルアラニン残基、グリシン残基、グルタミン残基、グルタミン酸残基、セリン残基、プロリン残基、N−メチルプロリン残基、4−ヒドロキシプロリン残基から選ばれるアミノ酸残基を示し、
Yはアルギニン残基、アラニン残基、グリシン残基、グルタミン残基、グルタミン酸残基、セリン残基、プロリン残基、4−ヒドロキシプロリン残基から選ばれるアミノ酸残基又は化学式(2);
【化2】

(式中、−*は隣接するカルボニル基又は酸素原子と結合する結合手を示す。)
で表される二価の基を示し、
Rは水素原子、又は水酸基が置換していてもよい炭素数1〜4の一価の炭化水素基を示し、m及びnは0又は1を示す。但し、m及びnが同時に1となる場合、Xはアミノ酸残基となることはない。〕;および
(b)炭素数が8以下の脂肪族カルボン酸又はその塩
【請求項2】
更に(b')炭素数が10以下の芳香族スルホン酸又はその塩を含有する請求項1記載の毛髪処理用組成物
【請求項3】
成分(a)の化合物がグリシルグリシン又はグリシルグリシルグリシンである請求項1又は2記載の毛髪処理用組成物。
【請求項4】
成分(b)の炭素数が8以下の脂肪族カルボン酸又はその塩が、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、グリセリン酸、若しくは酒石酸である請求項1〜3のいずれか一項に記載の毛髪処理用組成物。
【請求項5】
成分(b')の炭素数が10以下の芳香族スルホン酸又はその塩が、p−トルエンスルホン酸又はナフタレンスルホン酸である請求項1〜4のいずれか一項に記載の毛髪処理用組成物。
【請求項6】
25℃におけるpHが2〜7である請求項1〜5のいずれか一項に記載の毛髪処理用組成物。
【請求項7】
請求項1〜6に記載の毛髪処理用組成物を用いて毛髪を処理する方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−65022(P2010−65022A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150150(P2009−150150)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】