説明

毛髪成長の増進方法

本発明は、毛嚢刺激有効量のクレアチン化合物を含有する組成物を適用することを含む、毛嚢成長の刺激方法を提供する。本方法を用いることにより、男性型禿頭症、加齢に起因する脱毛、または化学療法もしくは薬剤暴露に起因する脱毛のような症状を治療および予防することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はパーソナルケアの分野に関する。より特定的には、本発明は、毛髪成長の増進および脱毛の予防を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
禿頭症を治療および予防する安全で信頼性のある方法を見いだす探究は、長年にわたり進められてきた。確かに命にかかわるものではないが、脱毛は、男性および女性のいずれにおいても、罹患者にかなりの苦痛を引き起こし、個人の自尊心に重大な影響を及ぼす可能性がある。安全かつ有効な治療法を見いだすうえで問題となる点は多い。第1に、脱毛の根本的な原因は、個人差があって必ずしも同じであるとは限らない。また、毛髪が成長する過程にはいくつかの時期が含まれ、正常な盛んな毛髪の成長を変化させる可能性のある寄与因子は多数存在する。毛髪成長周期は、3つの時期:成長期(毛嚢できわめて高レベルの細胞増殖が起こって毛髪が活発に成長する);退行期(発毛を可能にする毛嚢の増殖活性が一時的に低下する);および休止期(毛が抜け落ちて新しい成長期が開始されるまで、毛嚢は単純に成長を停止して退行する)に分けられる。
【0003】
もちろん、平均的な人が日常的に多くの毛髪を失うことはまったく正常なことであるので、この周期は、通常、失われた毛髪を補充すべく生涯を通じて継続的に反復される。しかしながら、周期は、何人たりとも加齢に伴って遅くなり、正常な毛髪は、次第に細くなる毛髪(うぶ毛)と徐々に入れ替わり、そして周期数は、不足するようになる。異常な脱毛を患う人の場合、過程の異常な加速であろうと他の変化であろうと、正常な周期過程が何らかの形で破壊されることは明らかであり;この結果、いずれは、休止期への移行が一段と速まって、さらには、次第により多くのうぶ毛が生えるようになり、最終的には、禿頭症になる可能性がある。
【0004】
長続きしなくなる周期へのこの移行の原因は、依然として完全には解明されていない。多数の因子が毛髪成長様式に寄与しており、こうした因子としては、たとえば、食事制限、薬剤暴露、およびホルモンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。脱毛を治療するための多種多様な方式が、長年にわたり提案されてきており;これらの治療法では、ホルモンのような有害因子の作用を相殺しようと試みることもあれば、休眠状態の毛嚢の活性を直接再刺激しようと試みることもある。毛髪成長の復活に奏効することが明らかにされている薬剤の多くは、ミノキシジルまたはプロカインのような合成医薬剤である。これらの物質は有効ではあるが、いくつかの欠点を有している。これらの欠点としては、薬剤として、望ましくない全身的作用を有する可能性があることおよび/または経口投与しなければならない可能性があること;多くの場合、治療法は、主にアンドロゲン性脱毛症もしくは男性型禿頭症を対象にしているので、脱毛を患う女性候補者に使用すると安全でなく効果もない可能性があることが挙げられる。したがって、毛髪成長促進剤のゴールドスタンダードは、化学的性質も標的もホルモン性でなく、脱毛を患う男性および女性の両方に心配なく局所投与することができ、しかも好ましくは毛嚢自体の刺激に直接的効果を有する天然物である。ソーパルメットのようないくつかの天然に存在する物質を毛髪成長の促進に使用することが推奨されてきたが、男性および女性の両方の脱毛に対する自然療法として、広に商業的成功を収めているわけでもなければ、なんら容認されているわけでもない。したがって、非ホルモン性の天然に存在する物質を活性成分として利用する脱毛の治療方法の必要性が依然として存在する。本発明は、このたび、そのような方法を提供する。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
本発明は、毛嚢刺激有効量のクレアチンまたはクレアチン誘導体を毛嚢に適用することを含む、毛嚢の増殖活性を刺激する方法に関する。本発明はまた、毛嚢刺激有効量のクレアチンまたはクレアチン誘導体を毛髪および/または頭皮に局所適用することを含む、脱毛を治療または予防する方法に関する。したがって、本発明の方法では、天然に存在する物質であるクレアチン(通常、ヒト細胞中に存在する)を利用して、毛嚢の毛髪成長レベルを増大させる。
【0006】
発明の詳細な説明
本発明者らは、予想外なことに、クレアチンが、真皮乳頭細胞に適用されたときに、それらの細胞のDNA合成レベルの著しい増大を引き起こしうることを観測した(実施例1参照)。真皮乳頭細胞は、毛嚢中に存在し、ケラチノサイト(マトリックス細胞)の増殖および分化の活性をモジュレートすることにより毛髪成長に関与することが示唆された(Shimaoka et al., J. Dermatol. Sci.7(Suppl): S79-S83, 1994)。したがって、DNA合成の増進が毛髪成長の実際の増進をもたらしうるかを調べようと試みた。この場合にも、予想外なことに、1mM程度の少量でクレアチンを適用することにより、未処置の対照に対して統計的に有為なレベルで毛栓において実際の毛髪の長さを増大させることが可能であり(実施例2参照)、したがって、脱毛の治療および予防におけるその有効性が確認される。
【0007】
クレアチンは、通常は心臓、骨格筋、脳、および網膜のような種々の哺乳動物組織中に存在する天然の物質である。これまでに、たとえば、グルコース代謝障害の治療(米国特許第6,075,031号);肥満症の治療(米国特許第5,998,457号);および皮膚損傷の治療(米国特許第6,242,491号)において、多くの治療的用法が見いだされてきた。出願人の知るかぎり、毛髪成長の促進に使用することはこれまで知られていなかった。本発明に利用されるクレアチンは、天然に由来しうるか(すなわち、生体物質から直接単離しうるか)または合成的もしくは半合成的に取得しうる。クレアチンそれ自体を用いる以外に、クレアチンの誘導体または類似体を用いて、本方法を利用することもできる。そのような物質の例としては、クレアチンリン酸およびシクロクレアチンが挙げられるが、これらに限定されるものではなく;他のクレアチン類似体も知られており、たとえば、米国特許第6,075,031号(その内容は参照により本明細書に組み入れられるものとする)に開示されている。本発明に関連して使用する場合、「クレアチン化合物(複数可)」という用語は、クレアチンおよび同一タイプの刺激活性を呈するクレアチン類似体の両方を意味する。本方法で利用される毛嚢刺激有効量とは、毛嚢の毛髪成長を未処置の毛嚢で観測される成長よりも少なくとも20%増進させることのできる量、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも80%増進させることのできる量である。
【0008】
クレアチン化合物は、毛髪および頭皮に適用するために局所製剤の形態で使用される。製剤の組成は、決定的に重要であるわけではなく、媒体は、局所適用が許容できるものであればなんでもよいが、特定的には、組成は、毛髪または頭皮への適用に適合する。製剤は、シャンプー、ヘアリンス、コンディショナー、ポマード、ジェル、または毛髪のトリートメントに通常使用される任意の他の処方物として適用しうる。好ましい実施形態では、組成物は、シャンプー、コンディショナー、またはリンスとして適用される。実用上、製剤に使用される「有効量」は、全組成物の重量を基準にして、一般的には約0.0001〜約20%、好ましくは約0.001〜約10%、より好ましくは約0.01〜約10%であろう。
【0009】
前記組成物は、1種以上のクレアチン化合物だけを活性薬剤として含有するものであってもよいし、毛髪および頭皮に対して同様に有益な作用を呈する他の活性薬剤と併用されたものであってもよい。毛髪成長にとくに有益な効果は、少なくとも1種の追加のエネルギー増強活性成分、たとえば、アデノシン、ATP、ADP、AMP、オキサロ酢酸(オキサロアセテート)、NADH、NADPH、またはカルニチンもしくはその誘導体(アセチルカルニチンやパルミトイルカルニチンなど)との併用により達成しうる。これらの各活性成分は、毛髪の成長に対して同様に有益な作用を有しうる。クレアチンを含めて組成物に使用されるエネルギー誘導化合物の全量は、約0.0001〜約10重量%、好ましくは約0.01〜約5%であろう。とくに好ましいのは、クレアチンと、5'-AMP、NADH、およびカルニチンのうちの少なくとも1種と、の併用であり、きわめて有効な併用は、組成物中で4種の成分すべてを用いたときに得られる。
【0010】
本発明に係る毛髪成長組成物はまた、場合により、毛髪成長に対して有益な作用を有する他の活性成分を含んでいてもよい。1つのタイプの追加の活性成分は、5-アルファレダクターゼ阻害剤である。そのような化合物は、毛髪成長の促進を支援することが知られており、例としては、ソーパルメット(Serenoa)抽出物、Emblica officianalis抽出物、ベータ-グリシルレチン酸、エストラジオール、エストロン、プロゲステロン、またはアザステロイド類(たとえば、フィナステリドもしくはズタステリド)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。レダクターゼ阻害剤は天然由来であることがとくに好ましい。とりわけ好ましい天然由来の阻害剤は、Actives International, Ramsey, New JerseyからViapure Sabalとして市販されている精製ソーパルメットベリー抽出物である。レダクターゼ阻害剤の使用量は、物質のアイデンティティーおよび効力に依存してさまざまであろうが、物質に対する公知の有効範囲に一致するであろう。量は、一般的には約.0001〜10%の範囲内であろうが、好ましい物質であるソーパルメット抽出物の場合、この量は、好ましくは約.001〜約2%であろう。
【0011】
本発明に係る組成物はまた、1種以上の抗炎症剤を組み込むことにより改良することもできる。有用な抗炎症物質の例としては、ルテオリン、アメントフラボン、茯苓キノコ抽出物(Poria cocos)、グリチルレチン酸ステアリルおよび他の抗炎症グリチルリチン酸誘導体、マヌカ油、エミュー油、エキナセア、カモミール(マトリカリア油)、黄岑(scuttelaria)抽出物、ヨモギ抽出物、ゲンチアナ抽出物、ダイズタンパク質、キンセンカ、カイエン、ウコン、セイヨウシロヤナギ、シアリル糖質(たとえば、3'シアリルラクトース)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。製剤中の抗炎症剤の全量は、通常は約.0001〜約10%の範囲内であろう。
【0012】
毛髪成長に直接寄与するものではないが、うぶ毛のようなより明色のあまり目立たない毛髪を暗色化することにより製品の全体的有益性を向上させる色素沈着増強剤を製剤中に組み込むことが望ましいこともある。有用な色素沈着増強剤の例は、N-アセチル-L-チロシン、チロシン、フォルスコリン、フェニルアラニン、L-DOPA、メチルキサンチン、またはα-メラニン細胞刺激ホルモンである。色素沈着増強剤は、約0.0001〜約10%の量で使用されるであろう。
【0013】
血管拡張増強剤もまた、製剤の任意成分である。血管拡張は、長い間、頭皮だけでなく毛髪が成長する皮膚の他のすべての領域における毛髪成長の増進に関連付けられてきた。したがって、1種以上の血管拡張剤を使用することにより、エネルギー増大化合物の活性を補完し、製剤の全体的有効性を向上させることができる。有用な血管拡張剤の例としては、アルギニン、チョウセンニンジン抽出物、イチョウ抽出物、センブリ抽出物、塩化カルプロニウム(calpronium chloride)、塩酸ジフェンヒドラミン、ガンマ-オリザノール、プロスタグランジン類、ビタミンE誘導体(たとえばビタミンEニコチネート)、ピナシジル、ミノキシジル、フタリド類、キナ抽出物、トウガラシ抽出物、橙皮抽出物、およびシトロン抽出物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。この成分は、存在する場合、通常、約0.0001〜約10%の量で使用されるであろう。
【0014】
前記組成物はまた、脱毛の一因となる可能性のあるフリーラジカルを抑制したり太陽の乾燥作用や他の光損傷から毛髪を保護したりする1種以上の抗酸化剤の存在により、有益な効果が付与されうる。有用な抗酸化剤の例としては、イチョウ葉、ベータカロテン、緑茶、アスコルビン酸およびその誘導体(たとえば、ナトリウムアスコルビルホスフェートやマグネシウムアスコルビルホスフェートなど)、カルノシン酸(ローズマリー)、レスベラトロールおよびその誘導体、N-アセチルシステイン、ならびにBHTおよびBHAが挙げられるが、これらに限定されるものではない。緑茶は、他の抗酸化剤の場合と同様に、抽出物の活性成分(たとえば、緑茶から得られるEGCG(エピガロカテキン(epigallcatechin)ガレート)のようなカテキン系フラボノイド類、ローズマリー抽出物から得られる活性成分など)の形態だけでなく、抽出物の形態または抗酸化剤の任意の他の公知の形態で存在しうる。抗酸化剤は、使用する場合、約0.0001〜約10%の量で存在するであろう。
【0015】
前記組成物は、1種以上の細胞分化活性化剤をさらに含みうる。とりわけ好ましいのは、クラリーセージなどのセージの抽出物および/またはそれから取得可能なスクラレオリドのような任意の分化活性化合物である。有用な分化活性化合物の他の例は、フォルスコリン、7-デヒドロコレステロール、およびビタミンD3類似体である。この目的にとりわけ好ましい成分は、Avoca/RJ Reynoldsから市販されているクラリーセージ発酵抽出物である。使用量は、存在する場合、約0.001〜約10%、好ましくは約.01〜約1%であろう。
【0016】
毛髪成長製剤はまた、毛髪構造を形成および支持する基底膜および真皮において支持を促進するファーミング成分をも含みうる。ファーミング成分の例は、皮膚中のコラーゲンおよび/またはエラスチンの量を増大させる化合物、たとえば、コラゲナーゼおよびもしくはエラスターゼ阻害剤またはコラーゲンもしくはエラスチン合成増強剤である。そのような化合物としては、トリテルペノイド含有抽出物および精製化合物、たとえば、シラカバ樹皮抽出物、シダレカンバ樹皮抽出物、Boswellia抽出物、ベアベリー抽出物、Centella asiatica抽出物、Mimosa tenuiflora樹皮抽出物、またはPygeum (Prunus) africanum抽出物、ならびにこれらの抽出物中に存在しうる個別活性化合物、たとえば、ベツリノール(ベツリン)、ベツリン酸、ボスウェル酸、ウルソール酸、オレアノール酸、オレアノール、アシアチコシド、アシアト酸、およびマダガシン酸(madagassic acid);フェノール類含有抽出物、たとえば、緑茶抽出物およびリンゴ抽出物、ならびにその中に含まれる化合物、たとえば、EGCG、ECG、カテキン類、フェニルプロパノイド類およびフロレチン;さらにはコラーゲン合成を増大させるためのビタミンCおよびその誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましいコラゲナーゼ阻害剤は、テペズコヒテとして知られるMimosa tenuiflora抽出物であり、好ましいビタミンC誘導体は、BV-OSVである。ファーミング剤は、組成物の約.001〜約10重量%の量で使用される。
【0017】
前記組成物はまた、毛髪または頭皮の状態を改善するのに有用である他の非活性物質、たとえば、保湿剤、ヘアコンディショナーおよびデタングラー、増粘剤、ゲル化剤、皮膜形成剤、芳香剤などを含有しうる。活性成分が添加されて適用される媒体は、毛髪に適用するために典型的に使用される任意の形態、たとえば、クリーム、ジェル、スプレー、ムースなどの形態をとりうる。しかしながら、一般的には、製剤は完全には水性でないことが好ましい。
【0018】
クレアチン化合物含有組成物は、さまざまな用途で使用することができる。たとえば、一実施形態では、本発明は、毛髪の生えかわりの通常の周期を保持し、加齢に伴って生じる通常の菲薄化を減少または予防すべく、健康な毛髪および頭皮にクレアチン化合物を適用することを包含する。本発明に係る組成物はまた、頭皮上にすでに存在する毛髪を保持したり、すでに存在する毛髪の直径を増大させたりするうえにも役立つであろう。他の実施形態では、脱毛の初期段階にある人または禿頭症の遺伝的危険性はあるがまだ禿げていない人の毛髪および頭皮に組成物を適用することにより、脱毛を予防または遅延して、健康な毛嚢における毛髪成長を保持したり、すでに実質的に不活性になっている可能性のある毛嚢の成長を回復させたりする。過度に引き抜かれたかまたは薄くなった眉毛(本明細書中では、「毛髪」という用語に包含されると解釈されるものとする)の回復もまた、可能である。最後に、脱毛症を患っている人に本方法を適用することにより、脱毛を逆転させたり、既存の毛嚢において通常の毛髪成長を再開させたりする。すでに述べたように、この方法は、男性および女性の両方に効果的に適用することが可能であり、しかも脱毛の究極的原因に関係なく、すなわち、男性型禿頭症、加齢に伴って自然に生じる菲薄化、または化学療法もしくは他の薬剤暴露に起因する脱毛のいずれであるかにかかわらず、使用可能である。成果を得るうえで必須というわけではないが、最適な毛髪成長は、一週間に少なくとも3〜5回の適用頻度のときに得られるであろう。また、治療期間中、クレアチン含有組成物を毎日使用することがとくに推奨される。その使用の時期は、脱毛の原因に基づいて決定されるであろう。たとえば、薬剤暴露に起因する一時的な脱毛では、有害な刺激が除去された後、続いて毛髪が満足すべきレベルに再成長するまで、一時的に定期的使用が必要になるにすぎないであろう。しかしながら、原因因子が常に存在するパターン性または加齢性の禿頭症または毛髪菲薄化では、長期間の適用が好ましい。すなわち、使用者の生涯にわたり、定期的に適用が行われることになろう。この場合、本明細書中では、局所適用の期間は、使用者の生涯にわたりうるが、好ましくは少なくとも約1ヶ月間、より好ましくは約3ヶ月間〜約20年間、より好ましくは約6ヶ月間〜約10年間、さらにより好ましくは約1年間〜約5年間、または使用者が自分の毛髪成長を保持することに関心を有するかぎり長い期間、を意味する。製剤の適用量は、製剤の形態によって異なるであろうが、通常は、同一タイプの製剤に使用される業界公認の方法に準拠するであろう。代表的な適用方法は、治療を必要とする領域に製剤を1日1回または2回適用してから数時間にわたり製剤を所定の位置に静置することを含むであろう。以下の実施例により本発明についてさらに具体的に説明するが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0019】
実施例1. この実施例では、クレアチンに暴露されたときの真皮乳頭の増殖の増進について具体的に説明する。
方法: Cell Applications Incorporated (San Diego, CA)から正常ヒト真皮乳頭細胞を入手した。これは、毛栓に由来する真皮乳頭細胞を単離したものである。乳頭細胞を24ウェルプレート中で70%まで増殖させた。0.25〜1mMクレアチン(Sigma)の範囲内のクレアチン(Sigma)および0.25〜0.5mMオキサロアセテート(Sigma)の投与量で、これらの細胞を処置した。[H]3-チミジン標識(1μCi/ml)を各ウェルに添加する前の24時間にわたり、これらの処置を行った。24時間後、細胞増殖の指標であるDNA合成を[H]3-チミジン取込みの関数として測定した。
【0020】
結果: クレアチンは乳頭細胞においてDNA合成を有意に増加させることが判明した(表1および2参照)。0.25mMでは、クレアチンは、DNA合成の36%増加を引き起こした。0.5mMでは、クレアチンは、DNA合成の25%増加を引き起こした。1mMでは、クレアチンは、DNA合成の6%増加を引き起こした。オキサロアセテートもまた、乳頭細胞においてDNA合成を用量依存的に有意に増加させることが判明した。0.25mMでは、オキサロアセテートは、DNA合成の22%増加を引き起こした。0.5mMでは、オキサロアセテートは、DNA合成の33%増加を引き起こした。1mMでは、オキサロアセテートは、DNA合成の38%増加を引き起こした。等価濃度のAMP(.25mMで1493%増加、0.5mMで1930%増加、1mMで1449%増加)およびATP(.25mMで1411%増加、.5mMで1201%増加)を用いたときにも、肯定的な結果が観測された。
【0021】
考察: エネルギー増強基質であるクレアチン、AMP、オキサロアセテート、およびATPは、それぞれ、真皮乳頭細胞においてDNA合成を増加させることが判明した。この増加は、統計的に有意であった。
【表1】

【表2】

【0022】
実施例2. この実施例では、クレアチンに暴露された毛栓において観測された毛髪成長の増進について具体的に説明する。
方法: East Wood Medical Hair Transplant Surgery (Garden City, NY)から毛栓を入手した。これらの毛栓を、文献に記載されている毛栓培地(DMEM, 10% FBS, 1% PS, 25mgインスリン, 25μgフンギゾン)中で平衡化させた。これらの毛栓を到着初日に顕微鏡下で観察し、1mMのクレアチンで処置した(対照群およびクレアチン群に対して、それぞれn=6)。次に、これらの毛栓を37℃、5% CO2でインキュベーター内に保持した。3、7、および10日目に、再処置を行い、測定も行った。
【0023】
結果: 毛栓は一定の速度で成長することが判明した。未処置の群では、0日目と比較して3日目では0.48mmの平均成長であった。7日目では0.73mmの平均成長および10日目では0.82mmの平均成長であった。クレアチンは未処置の毛栓と比較してこれらの毛栓の成長速度を有意に増加させることが判明した。3日目では0.95mm、7日目では1.32mm、および10日目では1.43mmの平均成長であった(表3、4、および5参照)。これらの増加はすべて、統計的に有意であった。
【0024】
考察: クレアチンは毛栓における毛髪成長を有意に増進させることが判明した。この増進は、未処置の毛栓と比較してほぼ2倍であった。我々は、先に、クレアチンが真皮乳頭細胞においてDNA合成を増加させることを観測した。真皮乳頭細胞は毛髪の成長に作用しモジュレートするので、我々は、クレアチンが真皮乳頭細胞の活性を増大させることにより毛栓成長を増進させているのではないかと仮定する。
【表3】

【表4】

【表5】

【0025】
実施例3: この実施例では、エネルギー増強化合物のブレンドの毛髪成長促進活性について具体的に説明する。
方法: East Wood Medical Hair Transplant Surgery (Garden City, NY)から毛栓を入手した。これらの毛栓を、文献に記載されている毛栓培地(DMEM, 10% BCS, 1% PS, 25μgフンギゾン)中で平衡化させた。初日(0日目)に毛栓の測定を行った。0、0.01、0.1、および1×のエネルギーブレンドで毛栓を処置した。1×のエネルギーブレンドは、0.25mMのAMP、2.5mMのクレアチン、2mMのL-カルニチン、および2mMのNADHに対応する。4日後、再び測定を行った後、それらのそれぞれの濃度を有する新たな培地で再処置を行った(対照群および処置群に対して、それぞれ、n=12)。これらの毛栓を37℃、5% CO2でインキュベーター内に保持した。3日後、再び、測定および再処置を行った。0日目に対して、4日目、7日目、12日目、および14日目の長さを比較することにより、毛栓成長を測定した。14日目、異なる処置群からの代表的な毛栓をBRDUで標識化した。次に、これらの毛栓をParagon Biotechnologyに送って組織切片を調べた。活性増殖細胞のBRDU標識化を評価した。
【0026】
結果: 毛栓は一定の速度で成長することが判明した。未処置の毛栓では、0日目と比較して、4、6、10、および14日目における毛髪の長さの平均増加は、0.11、0.16、0.2、0.26mmであった 1)。0.01×のエネルギーブレンドで処置された毛栓では、0日目と比較して、4、6、10、および14日目における毛髪の長さの平均増加は、0.24、0.33、0.41、0.47mmであった。0.1×のエネルギーブレンドで処置された毛栓では、0日目と比較して、4、6、10、および14日目における毛髪の長さの平均増加は、0.41、0.54、0.54、0.64mmであった。1×のエネルギーブレンドで処置された毛栓では、0日目と比較して、4、6、10、および14日目における毛髪の長さの平均増加は、0.21、0.28、0.35、0.49mmであった。毛栓成長は、エネルギーブレンドの0.1×処置で268%、エネルギーブレンドの0.01×処置で116%、およびエネルギーブレンドの1×処置で87%程度増進された。さらに、毛球の免疫組織学的検査から、未処置の対照よりもエネルギーブレンドで処置された毛栓のほうが、より活発に増殖する細胞が存在することが判明した。
【0027】
考察: AMP、クレアチン、L-カルニチン、およびNADHを含有するエネルギーブレンド処置剤は、毛栓成長を増進させることが判明した。この処置ブレンドは、0.025mMのAMP、0.25mMのクレアチン、0.2mMのL-カルニチン、および0.2mMのNADHを用いたとき、最適であることが判明した。4日後、未処置の対照と比較して、268%までの毛栓成長が観測された。さらに、BRDU標識化からも、エネルギーブレンドで処置された毛栓の毛球においてより活発に増殖する細胞が明らかにされた。先述の濃度よりも高い10×の濃度の処置ブレンドでは、毛髪成長の増進は、それほど効果的ではなかった(87%)。これは、過飽和またはカルニチンおよびNADHによるpH低下が原因であろう。毛髪成長の観測された増進は部分的には真皮乳頭細胞活性および増殖因子放出の増大によるものと仮定される。先に、我々は、エネルギー技術を用いて処置された真皮乳頭細胞においてDNA合成の増加を観測した。
【表6】

【0028】

実施例4: この実施例では、本発明に係る組成物について具体的に説明する。量はすべて、全組成物に対する重量パーセントである。
【表7】

【0029】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛嚢において真皮乳頭細胞の増殖を増進させる方法であって、毛嚢刺激有効量のクレアチン化合物を含有する組成物を該細胞に適用することを含む、上記方法。
【請求項2】
前記クレアチン化合物が、クレアチン、クレアチンリン酸、およびシクロクレアチンよりなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物はクレアチンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記クレアチン化合物が約0.25mM〜約1mMの量で適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
脱毛を患う危険性のある個人において脱毛を減少または予防する方法であって、毛嚢刺激有効量のクレアチン化合物を含む組成物を該個人の毛髪および/または頭皮に局所適用することを含む、上記方法。
【請求項6】
前記クレアチン化合物が、クレアチン、クレアチンリン酸、またはシクロクレアチンよりなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記クレアチン化合物がクレアチンである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記クレアチン化合物の量が約0.0001〜約20%である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記クレアチン化合物の量が約0.001〜約10%である、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記クレアチン化合物の量が約0.01〜約10%である、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が1週間に約1回〜1週間に約7回に適用される、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物が長期間適用される、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
脱毛を患っている個人において毛髪成長を刺激する方法であって、毛嚢刺激有効量のクレアチン化合物を該個人の毛髪および/または頭皮に局所適用することを含む、上記方法。
【請求項14】
前記脱毛が男性型禿頭症によるものである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記脱毛が加齢に起因するものである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記脱毛が化学療法または薬剤暴露に起因するものである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
クレアチン化合物の量が組成物の約0.0001〜約20重量%である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
クレアチン化合物の量が組成物の約0.001〜約10重量%である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記クレアチン化合物がクレアチンである、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
毛嚢刺激有効量のクレアチン化合物および/またはNADHを、アデノシン、AMP、ADP、ATP、オキサロ酢酸、およびカルニチン、ならびにそれらの誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種のエネルギー増大化合物と組み合わせて含む、毛髪または頭皮に適用するための局所組成物。
【請求項21】
クレアチンが少なくとも2種のエネルギー増大化合物と組み合わされる、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
毛嚢刺激有効量のAMP、カルニチン、およびNADHを含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
脱毛を患っている個人において毛髪成長を刺激する方法であって、請求項20に記載の組成物を該個人の毛髪および/または頭皮に局所適用することを含む、上記方法。
【請求項24】
脱毛を患う危険性のある個人において脱毛を予防する方法であって、請求項20に記載の組成物を該個人の毛髪および/または頭皮に局所適用することを含む、上記方法。

【公表番号】特表2006−519181(P2006−519181A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501201(P2006−501201)
【出願日】平成16年2月25日(2004.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/005765
【国際公開番号】WO2004/078117
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(598100128)イーエルシー マネージメント エルエルシー (112)
【Fターム(参考)】