説明

気体サンプル室及びこの気体サンプル室を備えた濃度測定装置

【課題】雰囲気中の測定対象の気体の濃度を速やかに測定することを可能とするとともに侵入した異物が測定対象の気体の濃度の測定に妨げになることを防止できる気体サンプル室及びこの気体サンプル室を備えた濃度測定装置を提供する。
【解決手段】濃度測定装置1は気体サンプル室2とμcomとを備えている。気体サンプル室2は測定セル6と光源7と受光ユニット8を備えている。測定セル6には複数の貫通孔10を備えた雰囲気移動許容部9が設けられている。貫通孔10は上部に位置する外壁6aと下部に位置する外壁6aとに設けられて鉛直方向に相対している。光源7は測定セル6の赤外線を出射する。受光ユニット8は複数の受光器12と集光部材13を備えている。受光器12は光源7からの赤外線を受光する。集光部材13は赤外線を受光器12に集光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、二酸化炭素、水蒸気、一酸化炭素などの所定の気体の濃度を測定する濃度測定装置に用いられる気体サンプル室及びこの気体サンプル室を備えた濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、二酸化炭素、水蒸気、一酸化炭素などの所定の気体の濃度を測定する濃度測定装置には、従来から種々の気体サンプル室が用いられてきた。従来の気体サンプル室は、内部が密閉された筒状の本体部と、本体部の一端部に設けられた光源と、本体部の他端部に設けられた受光器と、前記本体部内に外部の雰囲気を強制的に供給する気体供給部と、を備えている。
【0003】
本体部の内面は、鏡面に形成されている。光源は、例えば、赤外線を放射する。受光器は、赤外線センサと、前記赤外線センサと光源との間に配置されて所定の波長の赤外線のみを透過するフィルタとを備えている。フィルタを透過する赤外線の波長は、測定対象の気体の濃度により定められる。たとえば、測定対象の気体の濃度が0ppmから数千ppmの範囲内であれば、フィルタを透過する赤外線の波長は、最も減衰し易い赤外線波長を選択するなどして、測定対象の気体の濃度に応じて適切に選択される。気体供給部は、ポンプと配管などを備えており、本体部内に雰囲気を強制的に供給し、該本体部内の気体を強制的に排出する。
【0004】
前述した従来の気体サンプル室即ち濃度測定装置は、気体供給部が雰囲気を強制的に本体部内に供給し、フィルタを介して赤外線センサが受光した光源からの赤外線の強さを測定することで、前記雰囲気中の前述した測定対象の気体の濃度を測定する。
【0005】
しかしながら、前述した従来の気体サンプル室は、本体部内に強制的に雰囲気を供給する気体供給部を備えているので、装置自体が大型化する傾向であるとともに、気体供給部内に粉塵などの異物が蓄積されると、雰囲気を本体部内にスムーズに供給できなくなり、雰囲気中の測定対象の気体の濃度を正確に測定することが困難となる。
【0006】
この種の問題を解決するために、例えば、特許文献1に示された気体サンプル室が提案されている。特許文献1に示された気体サンプル室は、内部が密閉された筒状の本体部としての中空チューブと、中空チューブの一端部に設けられた光源と、中空チューブの他端部に設けられた受光器とを備えている。
【0007】
中空チューブは、その内面が鏡面状に形成されており、その外壁に複数の開口部を設けている。また、中空チューブは、前述した開口部を塞いだ半透膜シートが取り付けられている。この半透膜シートは、所定の寸法よりも小さな気体浮遊粒子が通過して中空チューブ内外を移動することを許容し、所定の寸法よりも大きな気体浮遊粒子が通過することを規制して中空チューブ内外を移動することを規制する。このように、半透膜シートを設けることで、特許文献1に示された気体サンプル室は、気体供給部を設けることなく、中空チューブに雰囲気を出入り自在としている。
【特許文献1】特許第3606866号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述した特許文献1に示された気体サンプル室は、中空チューブに取り付けられた半透膜シートが粉塵やごみ(気体浮遊粒子)によって目詰まりしやすく、速やかに雰囲気を中空チューブ内に導くことが困難となる傾向であった。このため、特許文献1に示された気体サンプル室は、雰囲気中の測定対象の気体の濃度を速やかに測定することが困難となる傾向であった。
【0009】
このため、雰囲気中の測定対象の気体の濃度を速やかに測定することを可能とするために、前記開口部を塞ぐ半透膜シートを設けないことが考えられるが、この場合、中空チューブ内に異物が侵入しやすく、当該異物が測定対象の気体の濃度の測定に妨げになることが考えられる。
【0010】
したがって、本発明の目的は、雰囲気中の測定対象の気体の濃度を速やかに測定することを可能とするとともに、侵入した異物が測定対象の気体の濃度の測定に妨げになることを防止できる気体サンプル室及びこの気体サンプル室を備えた濃度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の気体サンプル室は、光源からの光を受光器に導く気体サンプル室において、筒状に形成された本体部と、前記本体部の一端部に配置された前記光源と、前記本体部の他端部に配置されかつ前記光源からの光を受光する前記受光器と、雰囲気を前記本体部の内外に移動自在とする雰囲気移動許容部と、を備え、前記雰囲気移動許容部は、前記本体部の上部に位置する外壁と下部に位置する外壁との双方に設けられて、互いに鉛直方向に相対する位置に設けられた貫通孔を備えていることを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の本発明の気体サンプル室は、請求項1に記載の気体サンプル室において、前記光源から出射された光を平行光にするリフレクタを備えたことを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の本発明の気体サンプル室は、請求項1又は請求項2に記載の気体サンプル室において、前記受光器は、前記光を受光するセンサと、前記センサと前記光源との間に配置されかつ予め定められた波長の光のみを透過する透過部材とを備え、前記透過部材と前記光源との間に配置されかつ前記光を前記透過部材に集光する集光部材を更に備えたことを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の本発明の気体サンプル室は、請求項3に記載の気体サンプル室において、前記受光器を複数備え、これら複数の受光器の前記透過部材が透過する光の波長が互いに異なることを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載の本発明の濃度測定装置は、一端部に光源を設けかつ他端部に前記光源からの光を受光する受光器を設けた気体サンプル室と、前記受光器が受光した前記光源からの光の強さに基づいて、前記気体サンプル室内の予め定められた気体の濃度を算出する濃度算出部と、を備えた濃度測定装置において、前記気体サンプル室として、請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載の気体サンプル室を備えたことを特徴としている。
【0016】
請求項1に記載された本発明によれば、雰囲気移動許容部が、本体部の外壁を貫通した貫通孔を備えているので、この貫通孔が目詰まりせずに、本体部に雰囲気を出し入れ自在にできる。
【0017】
また、貫通孔が本体部の上部と下部との双方に設けられて、これらの貫通孔が鉛直方向に相対する位置に設けられているので、本体部内に侵入した異物を、下部に設けられた孔を通して、速やかに本体部外に導くことができる。
【0018】
請求項2に記載された本発明によれば、リフレクタを備えているので、光源からの光を本体部の内面で反射させなくても、受光器に導くことができる。
【0019】
請求項3に記載された本発明によれば、集光部材を備えているので、光源からの光が貫通孔を通して本体部外に漏れても、本体部の外壁で反射された光を受光器に導くことができ、十分な強さの光を透過部材即ちセンサに導くことができる。
【0020】
請求項4に記載された本発明によれば、透過部材が透過する波長の異なる受光器を複数備えているので、複数の種類の気体の濃度を測定するために用いることができる。
【0021】
請求項5に記載された本発明によれば、前述した気体サンプル室を備えているので、気体サンプル室の本体部に雰囲気を出し入れ自在となる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように請求項1に記載の本発明は、雰囲気移動許容部が本体部に雰囲気を出し入れ自在とするので、雰囲気が速やかに本体部内に導かれて、当該雰囲気中の測定対象の気体の濃度を速やかに測定することが可能となる。
【0023】
また、本体部内に侵入した異物を速やかに本体部外に導くことができるため、貫通孔が異物によってふさがれて、雰囲気が出入りしにくくなることを防止できるとともに、本体部内に侵入した異物が光源からの光を遮ることを防止できる。したがって、雰囲気中の測定対象の気体の濃度を速やかでかつ確実に測定することを可能とできる。
【0024】
請求項2に記載の本発明は、光源からの光を本体部の内面で反射させなくても、受光器に導くことができるので、本体部の外壁を貫通した貫通孔を設けても、受光器に導くことができて、雰囲気中の測定対象の気体の濃度を確実に測定することが可能となる。
【0025】
請求項3に記載の本発明は、光源からの光が貫通孔を通して本体部外に漏れても、十分な強さの光を透過部材即ちセンサに導くことができるので、貫通孔を設けても、雰囲気中の測定対象の気体の濃度を確実に測定することができる。
【0026】
請求項4に記載の本発明は、複数の種類の気体の濃度を測定するために用いることができる。
【0027】
請求項5に記載の本発明は、前述した気体サンプル室を備えているので、雰囲気中の測定対象の気体の濃度を速やかに測定することを可能とできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態に係る濃度測定装置を、図1乃至図6を参照して説明する。
【0029】
濃度測定装置1は、図2に示すように、濃度の測定対象の気体を含んだ雰囲気が充填される気体サンプル室2と、制御回路部3と、受光回路部4と、濃度算出部としてのマイクロコンピュータ(以下、μcomと記載する)5と、を備えている。
【0030】
気体サンプル室2は、図1に示すように、本体部としての測定セル6と、光源7と、受光ユニット8とを備えている。測定セル6は、筒状に形成されている。図示例では、測定セル6は、四角筒状に形成されている。測定セル6には、雰囲気移動許容部9が設けられている。即ち、気体サンプル室2は、雰囲気移動許容部9を備えている。
【0031】
雰囲気移動許容部9は、複数の貫通孔10を備えている。貫通孔10は、測定セル6の外壁6aを貫通して、気体サンプル室2の内外を連通している。貫通孔10は、気体サンプル室2の上部に位置する外壁6aと、下部に位置する外壁6aとの双方に設けられている。各々の外壁6aでは、貫通孔10は、複数(図示例では、4つ)設けられている。Kこれらの貫通孔10は、光源7から受光ユニット8に向かう光の光軸に沿って等間隔に並べられている。気体サンプル室2の上部に位置する外壁6aに設けられた貫通孔10と、下部に位置する外壁6aに設けられた貫通孔10とは、鉛直方向に相対する位置に設けられている。各貫通孔10は、内径Rが等しい丸形に形成されている。なお、本発明では、貫通孔10の内径Rは、2mm程度に形成されるのが望ましく、複数の貫通孔10のうち最も受光ユニット6寄りの貫通孔10と受光ユニット6との間隔dが8mm程度となる位置に設けられるのが望ましい。貫通孔10は、雰囲気中の粉塵などの気体浮遊粒子よりも遥かに大きく形成されて、その内側を雰囲気が通ることを許容して、測定セル6即ち気体サンプル室2の内外を、雰囲気を移動自在としている。さらに、貫通孔10は、上部に位置する外壁6aに設けられた貫通孔10を通して気体サンプル室2内に侵入した異物を、速やかに下部に位置する外壁6aに設けられた貫通孔10を通して気体サンプル室2外に排出する。
【0032】
本発明でいう、雰囲気移動許容部9は、雰囲気中の粉塵などの気体浮遊粒子よりも遥かに大きい貫通孔10を設け、かつ、この貫通孔10をフィルタなどで塞ぐことなく開放して、雰囲気を測定セル6の内外に移動自在とするものである。即ち、本発明の雰囲気移動許容部9は、送風機やポンプなどを設けることなく、測定セル6内に雰囲気を速やかに導いて、当該測定セル6内の気体を速やかに雰囲気と等しくするものである。
【0033】
光源7は、測定セル6内でかつ当該測定セル6の一端部に設けられている。光源7は、電圧が印加されることで、光としての赤外線を測定セル6の他端部に向かって放射する。光源として、例えば黒体炉、電球等が用いられる。また、光源7には、リフレクタ30が取り付けられている。すなわち、濃度測定装置1は、リフレクタ30を備えている。リフレクタ7は、光源7から出射された光を反射して、受光ユニット8に向かう平行光にする。
【0034】
受光ユニット8は、図3及び図4に示すように、ユニット本体11と、複数の受光器12と、集光部材13と、を備えている。ユニット本体11即ち受光ユニット8は、測定セル6内でかつ当該測定セル6の他端部に設けられている。ユニット本体11は、箱状に形成されている。
【0035】
受光器12は、図示例では、四つ設けられている。受光器12は、それぞれ、センサとしての赤外線センサ14と、透過部材15とを備えている。赤外線センサ14は、ユニット本体11に取り付けられている。複数の受光器12の赤外線センサ14は、同一平面上に配置されている。赤外線センサ14は、光源7が発しかつ透過部材15を透過した赤外線を受光し、この赤外線の熱を電気エネルギーに変換する。赤外線センサ14は、赤外線の熱を電気エネルギーに変換して、センサ出力としてμcom5に出力する。赤外線センサ14として、例えば、焦電型、サーモパイル型のものが用いられる。
【0036】
透過部材15は、ユニット本体11に取り付けられて、赤外線センサ14と光源7との間に配置されている。複数の受光器12の透過部材15は、同一平面上に配置されている。透過部材15は、それぞれ、光源7からの赤外線のうち予め定められた波長の赤外線のみを透過して、当該透過した波長の赤外線を赤外線センサ14まで導く。複数の受光器12の透過部材15は、互いに透過する赤外線の波長が異なる。
【0037】
透過部材15は、その透過する赤外線の波長は、濃度測定装置1が濃度の測定対象とする気体に応じて定められる。図示例では、測定対象の気体の測定の濃度範囲が0ppmから数千ppmの範囲内の低濃度の検出を可能としたものであり、透過部材15の透過する赤外線の波長は、濃度の測定対象の気体に対する透過率が小さな赤外線の波長にされる。なお、受光器12は、二酸化炭素以外にも水蒸気、一酸化炭素を測定対象の気体とする。図示例では、例えば、一つの受光器12は、基準として用いられ、その透過部材15が大気中で全く減衰しない波長が1.5μm又は4.0μmの赤外線のみを透過する。図示例では、例えば、他の一つの受光器12は、二酸化炭素の濃度を測定するために用いられ、その透過部材15が前述した二酸化炭素中で減衰しやすい波長が4.27μmの赤外線のみを透過する。図示例では、例えば、更に他の受光器12は、水蒸気の濃度を測定するために用いられ、その透過部材15が前述した水蒸気中で減衰しやすい波長が1.9μmの赤外線のみを透過する。図示例では、例えば、更に別の受光器12は、一酸化炭素の濃度を測定するために用いられ、その透過部材15が前述した一酸化炭素中で減衰しやすい波長が4.64μmの赤外線のみを透過する。
【0038】
なお、図6は、二酸化炭素に対する赤外線の透過率を示しており、図6中の横軸は赤外線の波長(μm)を示し、図6中の縦軸は赤外線の透過率(%)を示している。図6によれば、波長が4.27μmの赤外線の二酸化炭素中の透過率が、略零であることが示されており、波長が4.27μmの赤外線は、二酸化炭素中を殆ど透過しない(殆ど吸収されてしまう)ことが示されている。
【0039】
集光部材13は、例えば300度などの所定の角度の範囲の赤外線を集光して、透過部材15つまり赤外線センサ4に集中させる。すると、光源7から直接入射する赤外線以外にも、測定セル6の外壁6aの内面で反射す赤外線も赤外線センサ5に集めることができるので、赤外線の受光効率を良くすることができる。なお、集光部材13として、フレーネルレンズ等を用いることができる。
【0040】
制御回路部3は、図2に示すように、発振器16、クロック分周回路17、定電圧回路18などを備えており、μcom5の命令とおりに、所定の周波数で光源7を点滅させる。
【0041】
受光回路部4は、図5に示すように、複数のアンプ19と、切り換え器20と、A/D変換器21とを備えている、アンプ19は、それぞれ、受光器12と1対1に対応して設けられている。アンプ19は、対応する受光器12の赤外線センサ14からの信号を増幅して、切り換え器20を介してA/D変換器21に向かって出力する。A/D変換器21は、赤外線センサ14からの信号をデジタル信号に変換して、μcom5に向かって出力する。
【0042】
μcom5は、制御回路部3及び受光回路部4と接続して、これらの動作を制御することで、濃度測定装置1全体の動作をつかさどる。μcom5は、予め定められたプログラムに従って動作するコンピュータである。このμcom5は、周知のように、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)、CPUのためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM、各種のデータを格納するとともにCPUの処理作業に必要なエリアを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM等を有して構成している。
【0043】
また、μcom5には、濃度測定装置1自体がオフ状態の間も記憶内容の保持が可能な電気的消去/書き換え可能な読み出し専用のメモリが接続している。そして、このメモリには、濃度の算出に必要な後述する吸光係数、測定距離、濃度変換係数等の各種情報を記憶するとともに、算出した濃度を外部から読出可能に時系列的に記憶する。
【0044】
前述した構成の濃度測定装置1は、雰囲気移動許容部9の複数の貫通孔10によって、雰囲気が測定セル6の内外を移動自在となって、この測定セル6即ち気体サンプル室2内の気体を雰囲気と等しくする。そして、濃度測定装置1は、光源7を点滅させて、この光源7からの赤外線を各受光器12の赤外線センサ14で受光する。そして、濃度測定装置1のμcom5は、赤外線センサ14に受光した赤外線の強さなどに基づいて、予め定められた気体の雰囲気中の濃度を測定する。具体的には、濃度測定装置1のμcom5は、基準として用いられる受光器12の赤外線センサ14で受光した赤外線の強さと、二酸化炭素、水蒸気及び一酸化炭素を測定するための受光器12の赤外線センサ14で受光した赤外線の強さとを比較して、測定対象の二酸化炭素、水蒸気及び一酸化炭素の濃度を測定する。このように、濃度測定装置1の気体サンプル室2は、光源7からの赤外線を受光器12に導くように形成されている。
【0045】
本実施形態によれば、雰囲気移動許容部9が、測定セル6の外壁6aを貫通しかつフィルタなどで塞がれずに開放された貫通孔10を備えているので、この貫通孔10が目詰まりせずに、測定セル6に雰囲気を出し入れ自在となる。このため、雰囲気が速やかに測定セル6内に導かれて、当該雰囲気中の測定対象の気体の濃度を速やかに測定することが可能となる。
【0046】
また、貫通孔10が測定セル6の上部と下部との双方に設けられて鉛直方向に相対しているので、測定セル6内に侵入した異物を、下部の外壁6aに設けられた貫通孔10を通して、速やかに測定セル6外に導くことができる。このため、貫通孔10が異物によってふさがれて、雰囲気が出入りしにくくなることを防止できるとともに、測定セル6内に侵入した異物が光源7からの光を遮ることを防止できる。したがって、雰囲気中の測定対象の気体の濃度を速やかでかつ確実に測定することを可能とできる。
【0047】
さらに、リフレクタ30を備えているので、光源7からの光を測定セル6の内面で反射させなくても、受光器12に導くことができる。したがって、測定セル6の外壁6aを貫通した貫通孔10を設けても、受光器12に光を導くことができて、雰囲気中の測定対象の気体の濃度を確実に測定することが可能となる。
【0048】
集光部材13を備えているので、光源7からの光としての赤外線が貫通孔10を通して測定セル6外に漏れても、外壁6aの内面で反射された赤外線を受光器12に導くことができ、十分な強さの赤外線を透過部材15即ち赤外線センサ14に導くことができる。このため、貫通孔10を設けても、雰囲気中の測定対象の気体の濃度を確実に測定することができる。
【0049】
互いに透過部材15が透過する赤外線の波長の異なる受光器12を複数備えているので、複数の種類の気体の濃度を測定するために用いることができる。
【0050】
前述した実施形態では、光としての赤外線を用いている。しかしながら、本発明では、赤外線以外の種々の光を用いても良い。また、前述した実施形態では、測定対象の気体の濃度が低濃度である場合の透過部材15の透過する赤外線の波長を示しているが、本発明では、測定対象の気体が低濃度から高濃度(0ppmから数%)の範囲内にある場合には、測定セル6の長さを変更したり、透過部材15が測定対象の気体中での赤外線の吸収量が少ない波長の赤外線のみを透過するようにしても良い。
【0051】
さらに、実施形態では、濃度測定装置1が二酸化炭素、水蒸気、一酸化炭素の濃度を測定している。しかしながら、本発明では、濃度測定装置1がNOx、SOx、H2S、O3、CH4、NOなどの二酸化炭素、水蒸気、一酸化炭素以外の種々の気体の濃度を測定しても良い。また、本発明では、測定セル6は、四角筒状以外の種々の筒状に形成されても良い。
【0052】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態にかかる濃度測定装置の気体サンプル室の構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1に示された濃度測定装置の構成を示す説明図である。
【図3】図1に示された気体サンプル室の受光ユニットの正面を模式的に示す説明図である。
【図4】図3中のIV−IV線の断面を模式的に示す説明図である。
【図5】図2に示された濃度測定装置の受光回路の構成を示す説明図である。
【図6】二酸化炭素の吸収スペクトラムを示したグラフである。
【符号の説明】
【0054】
1 濃度測定装置
2 気体サンプル室
5 マイクロコンピュータ(濃度算出部)
6 測定セル
7 光源
9 雰囲気移動許容部
10 貫通孔
12 受光器
13 集光部材
14 赤外線センサ
15 透過部材
30 リフレクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を受光器に導く気体サンプル室において、
筒状に形成された本体部と、
前記本体部の一端部に配置された前記光源と、
前記本体部の他端部に配置されかつ前記光源からの光を受光する前記受光器と、
雰囲気を前記本体部の内外に移動自在とする雰囲気移動許容部と、
を備え、
前記雰囲気移動許容部は、前記本体部の上部に位置する外壁と下部に位置する外壁との双方に設けられて、互いに鉛直方向に相対する位置に設けられた貫通孔を備えていることを特徴とする気体サンプル室。
【請求項2】
前記光源から出射された光を平行光にするリフレクタを備えたことを特徴とする請求項1記載の気体サンプル室。
【請求項3】
前記受光器は、前記光を受光するセンサと、前記センサと前記光源との間に配置されかつ予め定められた波長の光のみを透過する透過部材とを備え、
前記透過部材と前記光源との間に配置されかつ前記光を前記透過部材に集光する集光部材を更に備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の気体サンプル室。
【請求項4】
前記受光器を複数備え、これら複数の受光器の前記透過部材が透過する光の波長が互いに異なることを特徴とする請求項3記載の気体サンプル室。
【請求項5】
一端部に光源を設けかつ他端部に前記光源からの光を受光する受光器を設けた気体サンプル室と、
前記受光器が受光した前記光源からの光の強さに基づいて、前記気体サンプル室内の予め定められた気体の濃度を算出する濃度算出部と、を備えた濃度測定装置において、
前記気体サンプル室として、請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載の気体サンプル室を備えたことを特徴とする濃度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−145125(P2009−145125A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321134(P2007−321134)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】