説明

気体サンプル室及びこの気体サンプル室を備えた濃度測定装置

【課題】雰囲気中の気体の濃度を十分な精度で測定することを可能とする気体サンプル室及びこの気体サンプル室を備えた濃度測定装置を提供する。
【解決手段】光源7からの光を受光器12に導く気体サンプル室2において、筒状に形成された本体部6と、本体部の一端部に配置された光源と、本体部に収容され、かつ、本体部の他端部に配置されかつ光源からの光を受光する受光器と、本体部の周壁6aを貫通しかつ雰囲気を本体部の内外に移動自在とする貫通孔10と、を備え、貫通孔は、本体部の光の光軸に対し直交する断面において、貫通孔の一方の端部10aと本体部の中心Mを結ぶ線分Naと、受光器の中心12Rと本体部の中心を結ぶ直線Lとのなす角度θ1が、20度以上で、かつ貫通孔の他方の端部10bと本体部の中心を結ぶ線分Nbと、受光器の中心1と本体部の中心を結ぶ直線とのなす角度θ2が、160度以下となる範囲に設けられている気体サンプル室。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、二酸化炭素、水蒸気、一酸化炭素などの所定の気体の濃度を測定する濃度測定装置に用いられる気体サンプル室及びこの気体サンプル室を備えた濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、二酸化炭素、水蒸気、一酸化炭素などの所定の気体の濃度を測定する濃度測定装置には、従来から種々の気体サンプル室が用いられてきた。従来の気体サンプル室は、内部が密閉された筒状の本体部と、本体部の一端部に設けられた光源と、本体部の他端部に設けられた受光器と、前記本体部内に外部の雰囲気を強制的に供給する気体供給部と、を備えている。
【0003】
本体部の内面は、鏡面に形成されている。光源は、例えば、赤外線を放射する。受光器は、赤外線センサと、前記赤外線センサと光源との間に配置されて所定の波長の赤外線のみを透過するフィルタとを備えている。フィルタを透過する赤外線の波長は、測定対象の気体の種類により定められる。フィルタを透過する赤外線の波長は、最も減衰し易い赤外線波長を選択するなどして、測定対象の気体の種類に応じて適切に選択される。気体供給部は、ポンプと配管などを備えており、本体部内に雰囲気を強制的に供給し、該本体部内の気体を強制的に排出する。
【0004】
前述した従来の気体サンプル室即ち濃度測定装置は、気体供給部が雰囲気を強制的に本体部内に供給し、フィルタを介して赤外線センサが受光した光源からの赤外線の強さを測定することで前記雰囲気中の前述した測定対象の気体の濃度を測定する。
【0005】
しかしながら、前述した従来の気体サンプル室は、本体部内に強制的に雰囲気を供給する気体供給部を備えているので、装置自体が大型化する傾向であった。この種の問題を解決するために、例えば、特許文献1に示された気体サンプル室が提案されている。特許文献1に示された気体サンプル室は、内部が密閉された筒状の本体部としての中空チューブと、中空チューブの一端部に設けられた光源と、中空チューブの他端部に設けられた受光部とを備えている。中空チューブは、その内面が鏡面状に形成されており、その外壁に複数の開口部を設けている。
【0006】
このように、特許文献1に示された気体サンプル室は、その外壁に複数の開口部を設けることにより、気体供給部を設けることなく、雰囲気を出入り自在としている。
【特許文献1】特開2008−82862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した気体サンプル室は、中空チューブの外壁に複数の開口部が設けられているため、開口部から赤外線が漏れて、受光部に赤外線の一部が到達しないため、雰囲気中の気体の濃度を十分な精度で測定することが困難であった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、雰囲気中の気体の濃度を十分な精度で測定することを可能とする気体サンプル室及びこの気体サンプル室を備えた濃度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明の気体サンプル室は、光源からの光を受光器に導く気体サンプル室において、筒状に形成された本体部と、前記本体部の一端部に配置された前記光源と、前記本体部に収容されかつこの本体部の他端部に配置されかつ前記光源からの光を受光する前記受光器と、前記本体部の周壁を貫通しかつ雰囲気を前記本体部の内外に移動自在とする貫通孔と、を備え、前記貫通孔は、前記本体部の光の光軸に対し直交する断面において、当該貫通孔の一方の端部と前記本体部の中心を結ぶ線分と、前記受光器の中心と前記本体部の中心を結ぶ直線とのなす角度が、20度以上で、かつ当該貫通孔の他方の端部と前記本体部の中心を結ぶ線分と、前記受光器の中心と前記本体部の中心を結ぶ直線とのなす角度が、160度以下となる範囲に設けられていることを特徴としている。
【0010】
請求項2記載の本発明の気体サンプル室は、請求項1に記載の気体サンプル室において、前記貫通孔は、前記本体部の光の光軸に対し直交する断面において、当該貫通孔の一方の端部と前記本体部の中心を結ぶ線分と、前記受光器の中心と前記本体部の中心を結ぶ直線とのなす角度が、30度以上で、かつ当該貫通孔の他方の端部と前記本体部の中心を結ぶ線分と、前記受光器の中心と前記本体部の中心を結ぶ直線とのなす角度が、150度以下となる範囲に設けられていることを特徴としている。
【0011】
請求項3記載の本発明の気体サンプル室は、請求項2に記載の気体サンプル室において、前記貫通孔は、前記本体部の光の光軸に対し直交する断面において、当該貫通孔の一方の端部と前記本体部の中心を結ぶ線分と、前記受光器の中心と前記本体部の中心を結ぶ直線とのなす角度が、70度以上で、かつ当該貫通孔の他方の端部と前記本体部の中心を結ぶ線分と、前記受光器の中心と前記本体部の中心を結ぶ直線とのなす角度が、110度以下となる範囲に設けられていることを特徴としている。
【0012】
請求項4記載の本発明の気体サンプル室は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の気体サンプル室において、光源からの光を受光器に導く気体サンプル室において、筒状に形成された本体部と、前記本体部の一端部に配置された前記光源と、前記本体部に収容されかつこの本体部の他端部に配置されかつ前記光源からの光を受光する受光器と、前記本体部の周壁を貫通しかつ雰囲気を前記本体部の内外に移動自在とする貫通孔と、を備え、前記貫通孔は、前記本体部の前記一端部に位置する前記周壁の部分に配置されていることを特徴としている。
【0013】
請求項5記載の本発明の濃度測定装置は、一端部に光源を設けかつ他端部に前記光源からの光を受光する受光器を設けた気体サンプル室と、前記受光器が受光した前記光源からの光の強さに基づいて、前記気体サンプル室内の予め定められた気体の濃度を算出する濃度算出部と、を備えた濃度測定装置において、前記気体サンプル室として、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の気体サンプル室を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、貫通孔は、本体部の光の光軸に対し直交する断面において、当該貫通孔の一方の端部と本体部の中心を結ぶ線分と、受光器の中心と本体部の中心を結ぶ直線とのなす角度が、20度以上で、かつ当該貫通孔の他方の端部と本体部の中心を結ぶ線分と、受光器の中心と本体部の中心を結ぶ直線とのなす角度が、160度以下となる範囲に設けられている。この角度の範囲内の光は、貫通孔が設けられていなくても、受光器にほとんど感知されない。よって、光源からの光が貫通孔を通して本体部の外に漏れても、受光器が感知する光源からの光は、貫通孔が設けられていない場合と殆ど同じとなり、当該貫通孔が、雰囲気中の気体の濃度を測定するのにほとんど影響を与えない。このため、雰囲気が本体部の内外に出入り自在する十分な大きさの貫通孔を設けることが可能であり、当該雰囲気中の測定対象の気体の濃度を速やかでかつ確実に測定することを可能とできる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、貫通孔は、本体部の光の光軸に対し直交する断面において、当該貫通孔の一方の端部と本体部の中心を結ぶ線分と、受光器の中心と本体部の中心を結ぶ直線とのなす角度が、30度以上で、かつ当該貫通孔の他方の端部と本体部の中心を結ぶ線分と、受光器の中心と本体部の中心を結ぶ直線とのなす角度が、150度以下となる範囲に設けられている。この角度の範囲内の光は、貫通孔が設けられていなくても、受光器に感知されない。よって、光源からの光が貫通孔を通して本体部の外に漏れても、受光器が感知する光源からの光は、貫通孔が設けられていない場合と殆ど同じとなり、当該貫通孔が、雰囲気中の気体の濃度を測定するのに影響を与えない。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、貫通孔は、本体部の光の光軸に対し直交する断面において、当該貫通孔の一方の端部と本体部の中心を結ぶ線分と、受光器の中心と本体部の中心を結ぶ直線とのなす角度が、70度以上で、かつ当該貫通孔の他方の端部と本体部の中心を結ぶ線分と、受光器の中心と本体部の中心を結ぶ直線とのなす角度が、110度以下となる範囲に設けられている。この角度の範囲内の光は、貫通孔が設けられていなくても、受光器に全く感知されない。よって、光源からの光が貫通孔を通して本体部の外に漏れても、受光器が感知する光源からの光は、貫通孔が設けられていない場合と殆ど同じとなり、当該貫通孔が、雰囲気中の気体の濃度を測定するのに影響を全く与えない。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、貫通孔は、本体部の一端部に位置する周壁の部分に設けられている。本体部の一端部に位置する周壁の部分に届く光源からの光は、貫通孔が設けられていなくても、受光器に感知されない。よって、光源からの光が貫通孔を通して本体部の外に漏れても、受光器が感知する光源からの光は、貫通孔が設けられていない場合と殆ど同じとなり、当該貫通孔が、雰囲気中の気体の濃度を測定するのに影響を与えない。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、前述した気体サンプル室を備えているので、雰囲気中の測定対象の気体の濃度を速やかに測定することを可能とできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の第1の実施形態にかかる濃度測定装置を図1乃至図7を参照して説明する。
【0020】
濃度測定装置1は、図3に示すように、濃度の測定対象の気体を含んだ雰囲気が充填される気体サンプル室2と、制御回路部3と、受光回路部4と、濃度算出部としてのマイクロコンピュータ(以下、μcomと記載する)5と、を備えている。
【0021】
気体サンプル室2は、図1及び図2に示すように本体部としての測定セル6と、光源7と受光ユニット8とを備えている。測定セル6は、外観が四角筒状に形成されている。図示例では、測定セル6の内側に、円筒形状の空間が形成されている。
【0022】
測定セル6は、互いに間隔をあけて相対する一対の平板部6bと平板部6b同士を連結する複数の周壁6aとを備えている。また、測定セル6には、貫通孔10が設けられている。即ち、気体サンプル室2は、貫通孔10を備えている。
【0023】
貫通孔10は、測定セル6の周壁6aを貫通している。貫通孔10は、前記周壁6aのうちの互いに相対する一対の周壁6aに設けられている。貫通孔10は、各々の周壁6aでは、光源7から受光ユニット8に向かう光の光軸に沿って間隔をあけて3つ並べられている。即ち、貫通孔10は、合計6つ設けられている。
【0024】
また、貫通孔10は、光源7からの光の光軸に対して直交する断面において、図4に示すように、当該貫通孔10の一方の端部10aと測定セル6の中心Mを結ぶ線分Naと、受光器12の中心12Rと測定セル6の中心Mを結ぶ直線Lとのなす角度θ1が、20度以上で、かつ当該貫通孔10の他方の端部10bと測定セル6の中心Mを結ぶ線分Nbと、受光器12の中心12Rと測定セル6の中心Mを結ぶ直線Lとのなす角度θ2が、160度以下となる範囲に設けられている。さらに、貫通孔10の平面形は、略矩形状である。このように構成された貫通孔10は、測定セル6即ち気体サンプル室2の内外を、雰囲気を移動自在としている。
【0025】
本発明でいう測定セル6の貫通孔10は、雰囲気が測定セル6の内外に移動自在することができる十分な大きさに形成されている。即ち、本発明の測定セル6は、送風機やポンプなどを設けることなく、測定セル6内に雰囲気を速やかに導いて、当該測定セル6内の気体を速やかに雰囲気と等しくするものである。
【0026】
光源7は、一方の平板部6b上、即ち、測定セル6内でかつ当該測定セル6の一端部に設けられている。光源7は、電圧が印加されることで、光としての赤外線を測定セル6の他端部に向かって放射する。光源として、例えば、黒体炉、電球等が用いられる。
【0027】
受光ユニット8は、図4及び図5に示すように、ユニット本体11と、複数の受光器12と、を備えている。ユニット本体11即ち受光ユニット8は、測定セル6内でかつ当該測定セル6の他方の平板部6b上、即ち、測定セル6内でかつ当該測定セル6の他端部に設けられている。ユニット本体11は箱状に形成されている。
【0028】
受光器12は、図示例では、2つ設けられている。各々の受光器12は、平板部6b上の前述した測定セル6の中心Mから間隔をあけた位置に配置されている。受光器12は、それぞれ、センサとしての赤外線センサ14と、透過部材15とを備えている。赤外線センサ14は、ユニット本体11に取り付けられている。複数の赤外線センサ14は、同一平面上に、測定セル6の上部と下部に設けられている。赤外線センサ14は、光源7が発しかつ透過部材15を透過した赤外線を受光し、この赤外線の熱を電気エネルギーに変換する。赤外線センサ14は、赤外線の熱を電気エネルギーに変換して、センサ出力してμcom5に出力する。赤外線センサ14として、例えば、焦電型、サーモパイル型のものが用いられる。
【0029】
透過部材15は、ユニット本体11に取り付けられて、赤外線センサ14と光源7との間に配置されている。複数の受光器12の透過部材15は、同一平面上に配置されている。透過部材15は、それぞれ、光源7からの赤外線のうち予め定められた波長の赤外線のみを透過して、当該透過した波長の赤外線を赤外線センサ14まで導く。複数の受光器12の透過部材15は、互いに透過する赤外線の波長が異なる。
【0030】
透過部材15は、その透過する赤外線の波長は、濃度測定装置1が濃度測定対象とする気体に応じて定められる。図示例では、透過部材15の透過する赤外線の波長は、濃度の測定対象の気体に対する透過率が小さな赤外線の波長にされる。なお、受光器12は、二酸化炭素以外にも水蒸気、一酸化炭素を測定対象の気体とする。図示例では、例えば、一つの受光器12は、基準として用いられ、その透過部材15が大気中ではまったく減衰しない波長が1.5μmまたは4.0μmの赤外線のみを透過する。図示例では、例えば、他の一つの受光器12は、二酸化炭素の濃度を測定するために用いられ、その透過部材15が前述した二酸化炭素中で減衰しやすい波長が4.27μmの赤外線のみを透過する。図示例では、例えば、更に他の受光器12は、水蒸気の濃度を測定するために用いられ、その透過部材15が前述した水蒸気中で減衰しやすい波長が1.9μmの赤外線のみを透過する。図示例では、例えば、更に別の受光器12は、一酸化炭素の濃度を測定するために用いられ、その透過部材15が前述した一酸化炭素中で減衰しやすい波長が4.64μmの赤外線のみを透過する。
【0031】
なお、図7は、二酸化炭素に対する赤外線の透過率を示しており、図7中の横軸は赤外線の波長(μm)を示し、図6中の縦軸は赤外線の透過率(%)を示している。図7によれば、波長が4.27μmの赤外線の二酸化炭素中の透過率が、略零であることがしめされており、波長が、4.27μmの赤外線は、二酸化炭素中をほとんど透過しない(殆ど吸収されてしまう)ことが示されている。
【0032】
制御回路部3は、図3に示すように、発振器16、クロック分周回路17、定電圧回路18などを備えており、μcom5の命令どおりに、所定の周波数で光源7を点滅させる。
【0033】
受光回路部4は、図6に示すように、複数のアンプ19と、切り替え器20と、A/D変換器21とを備えている、アンプ19は、それぞれ、受光器12と1対1に対応して設けられている。アンプ19は、対応する受光器12の赤外線センサ14からの信号を増幅して、切り替え器20を介してA/D変換器21に向かって出力する。A/D変換器21は、赤外線センサ14からの信号をデジタル信号に変換して、μcom5に向かって出力する。
【0034】
μcom5は、制御回路部3及び受光回路部4と接続して、これらの動作を制御することで、濃度測定装置1全体の動作をつかさどる。μcom5は、予め定められたプログラムに従って動作するコンピュータである。このμcom5は、周知のように、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)CPUのためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM、各種データを格納するとともにCPUの処理作業に必要なエリアを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM等を有して構成している。
【0035】
また、μcom5には、濃度測定装置1自体がオフ状態の間も記憶内容の保持が可能な電気的消去/書き換え可能な読み出し専用のメモリが接続してる。そして、このメモリには、濃度の算出に必要な吸光係数、測定距離、濃度変換係数等の各種情報を記憶するとともに、算出した濃度を外部から読出可能に時系列的に記憶する。
【0036】
前述した構成の濃度測定装置1は、複数の貫通孔10によって、雰囲気が測定セル6の内外を移動自在となって、この測定セル6即ち気体サンプル室2内の気体を雰囲気と等しくする。そして、濃度測定装置1は、光源7を点滅させて、この光源7からの赤外線を各受光器12の赤外線センサ14で受光する。そして濃度測定装置1のμcom5は、赤外線センサ14に受光した赤外線の強さなどに基づいて、予め定められた気体の雰囲気中の濃度を測定する。具体的には、濃度測定装置1のμcom5は、基準として用いられる受光器12の赤外線センサ14で受光した赤外線の強さと比較して、測定対象の二酸化炭素、水蒸気、及び一酸化炭素の濃度を測定する。このように、測定濃度装置1の気体サンプル室2は、光源7からの赤外線を受光器12に導くように形成されている。
【0037】
本実施形態によれば、貫通孔10は、光源7からの光の光軸に対して直交する断面において、当該貫通孔10の一方の端部10aと測定セル6の中心Mを結ぶ線分Naと、受光器12の中心12Rと測定セル6の中心Mを結ぶ直線Lとのなす角度θ1が、20度以上で、かつ当該貫通孔10の他方の端部10bと測定セル6の中心Mを結ぶ線分Nbと、受光器12の中心12Rと測定セル6の中心Mを結ぶ直線Lとのなす角度θ2が、160度以下となる範囲に設けられている。この角度θ1及び角度θ2の範囲内の光は、貫通孔10が設けられていなくても、受光器12にほとんど感知されない。よって、光源からの光が貫通孔10を通して測定セル6の外に漏れても、受光器12が感知する光源7からの光は、貫通孔10が設けられていない場合と殆ど同じとなり、当該貫通孔10が、雰囲気中の気体の濃度を測定するのにほとんど影響を与えない。このため、雰囲気が測定セル6の内外に出入り自在する十分な大きさの貫通孔10を設けることが可能であり、当該雰囲気中の測定対象の気体の濃度を速やかでかつ確実に測定することを可能とできる。
【0038】
また、貫通孔10は、測定セル6の光の光軸に対し直交する断面において、当該貫通孔10の一方の端部10aと測定セル6の中心Mを結ぶ線分Naと、受光器12の中心12Rと測定セル6の中心Mを結ぶ直線Lとのなす角度θ1が、30度以上で、かつ当該貫通孔10の他方の端部10bと測定セル6の中心Mを結ぶ線分Nbと、受光器12の中心12Rと測定セル6の中心Mを結ぶ直線Lとのなす角度θ2が、150度以下となる範囲に設けられている。この角度θ1及び角度θ2の範囲内の光は、貫通孔10が設けられていなくても、受光器12に感知されない。よって、光源からの光が貫通孔10を通して測定セル6の外に漏れても、受光器12が感知する光源7からの光は、貫通孔10が設けられていない場合と殆ど同じとなり、当該貫通孔10が、雰囲気中の気体の濃度を測定するのに影響を与えない。
【0039】
また、貫通孔10は、測定セル6の光の光軸に対し直交する断面において、当該貫通孔10の一方の端部10aと測定セル6の中心Mを結ぶ線分Naと、受光器12の中心12Rと測定セル6の中心Mを結ぶ直線Lとのなす角度θ1が、70度以上で、かつ当該貫通孔10の他方の端部10bと測定セル6の中心Mを結ぶ線分Nbと、受光器12の中心12Rと測定セル6の中心Mを結ぶ直線Lとのなす角度θ2が、110度以下となる範囲に設けられている。この角度θ1及び角度θ2の範囲内の光は、貫通孔10が設けられていなくても、受光器12に全く感知されない。よって、光源からの光が貫通孔10を通して測定セル6の外に漏れても、受光器12が感知する光源7からの光は、貫通孔10が設けられていない場合と殆ど同じとなり、当該貫通孔10が、雰囲気中の気体の濃度を測定するのに全く影響を与えない。
【0040】
また、複数の貫通孔10により、雰囲気が測定セル6の内外に出入り自在とすることが可能であり、当該雰囲気中の測定対象の気体の濃度を速やかでかつ確実に測定することを可能とできる。
【0041】
前述した実施形態では、貫通孔10を、前記角度θ1が20度以上でかつ角度θ2が160度以下となる範囲に設けている。しかしながら、本発明では、貫通孔10を、前記角度θ1が30度以上でかつ角度θ2が150度以下となる範囲に設けるのが望ましい。この場合、角度θ1及び角度θ2の範囲内の光は、貫通孔10が設けられていなくても、受光器12に感知されない。よって、光源からの光が貫通孔10を通して測定セル6の外に漏れても、受光器12が感知する光源7からの光は、貫通孔10が設けられていない場合と殆ど同じとなり、当該貫通孔10が、雰囲気中の気体の濃度を測定するのに影響を与えない。さらに、本発明では、貫通孔10を、前記角度θ1が70度以上でかつ角度θ2が110度以下となる範囲に設けるのが更に望ましい。この場合、角度θ1及び角度θ2の範囲内の光は、貫通孔10が設けられていなくても、受光器12に全く感知されない。よって、光源からの光が貫通孔10を通して測定セル6の外に漏れても、受光器12が感知する光源7からの光は、貫通孔10が設けられていない場合と殆ど同じとなり、当該貫通孔10が、雰囲気中の気体の濃度を測定するのに全く影響を与えない。
【0042】
上述した第1の実施形態では、貫通孔10を測定セル6の互いに相対する周壁6aに設けられている。貫通孔10は、平面形は略矩形状である。これらの貫通孔10は、光源7から受光ユニット8に向かう光の光軸に沿って間隔をあけて3つ並べられている。即ち、貫通孔10は、合計6つ設けられている。しかしながら、本発明では、図8乃至図10に示すように、貫通孔10を種々変更して、設けても良い。なお、図8乃至図10に示す場合において、前述した第1の実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
次に、本発明の第2の実施形態を、図8の(a)及び(b)に基づいて説明する。本実施形態では、図8(b)に示すように、貫通孔10を測定セル6の互いに相対する周壁6aに設けられている。また、図8(a)では、貫通孔10を、光源7から受光ユニット8に向かう光の光軸に沿って直線状に形成して、測定セル6の全長に亘って途中で区切ることなく設けている。
【0044】
次に、本発明の第3の実施形態を、図9の(a)及び(b)に基づいて説明する。本実施形態では、図9(b)に示すように、貫通孔10を測定セル6の1つの周壁6aのみに設けられている。図9(a)では、貫通孔10を、光源7から受光ユニット8に向かう光の光軸に沿って直線状に3つ並べて形成している。前述した3つ並べた貫通孔10の列を周方向に2つ、即ち、2列設けている。つまり貫通孔10は、合計6つ設けられている。
【0045】
次に、本発明の第4の実施形態を、図10の(a)及び(b)に基づいて説明する。本実施形態では、図10(b)に示すように、貫通孔10を測定セル6の互いに相対する周壁6aに設けられている。また、図10(a)では、貫通孔10を、光源7から受光ユニット8に向かう光の光軸に沿って直線状に形成して、測定セル6の全長に亘って途中で区切ることなく設けている。さらに貫通孔10は、測定セル6の一端部に位置する周壁6aの部分にも設けられている。なお、測定セル6の一端部に位置する周壁6aの部分に設けられた貫通孔10は、周壁6aの全周に亘り形成されていても、周壁6aの一部に形成されていても、いくつ設けられていてもよい。
【0046】
これら第2乃至第4の実施形態に示された場合でも、前述した第1の実施形態と同様に、雰囲気中の測定対象の気体の濃度を速やかでかつ確実に測定するという効果を奏でる。
【0047】
次に、本発明の発明者らは、貫通孔10の角度を種々変更したときの赤外線センサ14の出力比をシミュレーションにより推定した。この出力比とは、貫通孔10を設けなかった場合の出力に対する、貫通孔10の角度θ1及び角度θ2を種々変更した場合の出力の比である。貫通孔10を、前述した角度(θ1、θ2)が(0度、180度)、(10度、170度)、(20度、160度)・・・・(90度、90度)の組み合わせとなる位置に配置した場合をシミュレーションした。2つの赤外線センサ14は、平板部6b上の測定セル6の中心Mから間隔をあけた位置に配置されている。前述した角度θ1が0度、角度θ2が180度の場合は、貫通孔10を測定セル6の周壁6aの全周に設けた場合を示す。また、前述した角度θ1及び角度θ2が90度の場合は、測定セル6の中心Mと貫通孔10の一方の端部10aを結ぶ線分Na、及び、測定セル6の中心Mと貫通孔10の他方の端部10bを結ぶ線分Nbは重なっている。つまり、貫通孔10は、設けられていない場合を示す。シミュレーション結果を図11及び、表1に示す。なお、シミュレーションを実施するにあたり、シミュレーションソフトは、「Optical Research Associates」の「照明解析ソフトウエア Light Tools」を使用した。
【0048】
図11及び表1によれば、貫通孔10を前述した角度θ1が20度以上でかつ角度θ2が160度以下となる範囲に配置することで、出力比を0.8以上とできることが明らかとなった。このことから、前述した角度θ1が20度以上でかつ角度θ2が160度以下となる範囲に貫通孔10を設けることにより、貫通孔10を設けても光源7からの光を赤外線センサ14が十分に受光できることが明らかとなった。
【0049】
また、図11及び表1によれば、貫通孔10を前述した角度θ1が30度以上でかつ角度θ2が150度以下となる範囲に配置することで、出力比を0.9以上とできることが明らかとなった。このことから、前述した角度θ1が30度以上でかつ角度θ2が150度以下となる範囲に貫通孔 10を設けることにより、貫通孔10を設けても光源7からの光を赤外線センサ14が十分に受光できることが明らかとなった。
【0050】
さらに、図11及び表1によれば、貫通孔10を前述した角度θ1が70度以上でかつ角度θ2が110度以下となる範囲に配置することで、出力比を略1.0とすることができることが明らかとなった。このことから、前述した角度θ1が70度以上でかつ角度θ2が110度以下となる範囲に貫通孔10を設けることにより、貫通孔10を設けても光源7からの光を赤外線センサ14が十分に受光できることが明らかとなった。なお、図11中の黒ダイヤは、貫通孔10が互いに相対する周壁6aの各々に設けられた場合の結果を示す。また、黒四角は、貫通孔10が互いに相対する周壁6aのうちの一方の周壁6aのみに設けられた場合の結果を示す。
【0051】
【表1】

【0052】
次に、本発明の発明者らは、本発明の効果を以下のシミュレーションを実施して確認した。結果を図12及び表2に示す。図12及び表2では、同じ濃度の雰囲気中において、貫通孔10が設けられていない濃度測定装置(以下、比較例とする)と、前述した図1に示された実施形態の濃度測定装置1(以下、本発明品1とする)と、前述した図8(a)に示された濃度測定装置1(以下、本発明品2とする)と、前述した図9(a)に示された濃度測定装置1(以下、本発明品3とする)と、前述した図10(a)に示された濃度測定装置1(以下、本発明品4とする)との赤外線センサ14の出力を、前記比較例の出力を1.0として、示したものである。
【0053】
図12及び表2によれば、本発明品1乃至4のすべての赤外線センサの出力は、比較例の赤外線センサの出力の0.9以上を確保していることが明らかとなった。よって、本発明品1乃至4は、貫通孔10が設けられていない濃度測定装置1の赤外線センサ14の出力とほぼ同じことが明らかとなった。
【0054】
【表2】

【0055】
前述した実施例では、光としての赤外線を用いている。しかしながら、本発明では、赤外線以外の種々の光を用いても良い。また、測定濃度に応じて測定セル6の長さを変更しても良い。また、前述した実施例では、受光器12は、2つ設けられているが、受光器12は、1つでもよい。
【0056】
さらに、実施例では、濃度測定装置1が二酸化炭素、水蒸気、一酸化炭素の濃度を測定している。しかしながら、本発明では、濃度測定装置1がNOx、SOx、H2S、O3、CH4、NOなどの二酸化炭素、水蒸気、一酸化炭素以外の種々の気体の濃度を測定しても良い。また、本発明では、測定セル6は、四角筒状以外の種々の筒状に形成されても良い。また、本発明では、貫通孔10は、略矩形であるが、種々の形状に形成されても良い。
【0057】
なお、前述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる濃度測定装置の気体サンプル室の構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1中のK−K線に沿う断面を模式的に示す断面図である。
【図3】図1に示された濃度測定装置の構成を示す説明図である。
【図4】図1中のH−H線に沿う断面を模式的に示す断面図である。
【図5】図4中のI−I線に沿う断面を模式的に示す断面図である。
【図6】図2に示された濃度測定装置の受光回路の構成を示す説明図である。
【図7】二酸化炭素の吸収スペクトラムを示したグラフである。
【図8】(a)は第2の実施形態にかかる濃度測定装置の気体サンプル室の構成を模式的に示す側面図である。(b)は図8(a)中のA−A線に沿う断面を模式的に示す断面図である。
【図9】(a)は第3の実施形態にかかる濃度測定装置の気体サンプル室の構成を模式的に示す側面図である。(b)は図9(a)中のB−B線に沿う断面を模式的に示す断面図である。
【図10】(a)は第4の実施形態にかかる濃度測定装置の気体サンプル室の構成を模式的に示す側面図である。(b)は図10(a)中のC−C線に沿う断面を模式的に示す断面図である。
【図11】貫通孔を設けなかった場合の赤外線センサの出力に対する、貫通孔の角度を種々変更したときの赤外線センサの出力比を示したグラフである。
【図12】同じ濃度の雰囲気中における受光器の、貫通孔がない濃度測定装置と、第1乃至第4の実施形態の濃度測定装置のセンサ出力結果を示したグラフである。
【符号の説明】
【0059】
1 濃度測定装置
2 気体サンプル室
5 マイクロコンピュータ(濃度演出部)
6 測定セル(本体部)
6a 周壁
7 光源
10 貫通孔
10a 一方の端部
10b 他方の端部
12 受光器
L 直線
Na 線分
Nb 線分
θ1 角度
θ2 角度
M 測定セル(本体部)の中心
12R 受光器の中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を受光器に導く気体サンプル室において、
筒状に形成された本体部と、
前記本体部の一端部に配置された前記光源と、
前記本体部に収容され、かつ、この本体部の他端部に配置されかつ前記光源からの光を受光する前記受光器と、
前記本体部の周壁を貫通し、かつ、雰囲気を前記本体部の内外に移動自在とする貫通孔と、を備え、
前記貫通孔は、前記本体部の光の光軸に対し直交する断面において、当該貫通孔の一方の端部と前記本体部の中心を結ぶ線分と、前記受光器の中心と前記本体部の中心を結ぶ直線とのなす角度が、20度以上で、かつ、当該貫通孔の他方の端部と前記本体部の中心を結ぶ線分と、前記受光器の中心と前記本体部の中心を結ぶ直線とのなす角度が、160度以下となる範囲に設けられていることを特徴とする気体サンプル室。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記本体部の光の光軸に対し直交する断面において、当該貫通孔の一方の端部と前記本体部の中心を結ぶ線分と、前記受光器の中心と前記本体部の中心を結ぶ直線とのなす角度が、30度以上で、かつ、当該貫通孔の他方の端部と前記本体部の中心を結ぶ線分と、前記受光器の中心と前記本体部の中心を結ぶ直線とのなす角度が、150度以下となる範囲に設けられていることを特徴とする請求項1記載の気体サンプル室。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記本体部の光の光軸に対し直交する断面において、当該貫通孔の一方の端部と前記本体部の中心を結ぶ線分と、前記受光器の中心と前記本体部の中心を結ぶ直線とのなす角度が、70度以上で、かつ、当該貫通孔の他方の端部と前記本体部の中心を結ぶ線分と、前記受光器の中心と前記本体部の中心を結ぶ直線とのなす角度が、110度以下となる範囲に設けられていることを特徴とする請求項2記載の気体サンプル室。
【請求項4】
光源からの光を受光器に導く気体サンプル室において、
筒状に形成された本体部と、
前記本体部の一端部に配置された前記光源と、
前記本体部に収容されかつこの本体部の他端部に配置されかつ前記光源からの光を受光する前記受光器と、
前記本体部の周壁を貫通しかつ雰囲気を前記本体部の内外に移動自在とする貫通孔と、を備え、
前記貫通孔は、前記本体部の前記一端部に位置する前記周壁の部分に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の気体サンプル室。
【請求項5】
一端部に光源を設けかつ他端部に前記光源からの光を受光する受光器を設けた気体サンプル室と、
前記受光器が受光した前記光源からの光の強さに基づいて、前記気体サンプル室内の予め定められた気体の濃度を算出する濃度算出部と、を備えた濃度測定装置において、
前記気体サンプル室として、請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載の気体サンプル室を備えたことを特徴とする濃度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−48653(P2010−48653A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212750(P2008−212750)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】