説明

気体圧縮機

【課題】気体圧縮機において、高圧バイパス路および圧力調整弁を設けるスペースを確保しやすいものとする。
【解決手段】圧縮機本体60とサイクロンブロック70(油分離器)との組付けによって、圧縮機本体60の外面とサイクロンブロック70の外面とにより、中間圧導油路28に連通する中間圧連通空間79が画成され、サイクロンブロック70に、中間圧連通空間79と吐出室21とを連通する高圧バイパス路72が形成されているとともに、高圧バイパス路72を、吐出室21内の圧力が所定の圧力に達するまでは開き、吐出室21内の圧力が所定の圧力に達した後は閉じる圧力調整弁76を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気体圧縮機に関し、詳細には、圧縮機本体のベーンの突出性能の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気調和システム(以下、空調システムという。)には、冷媒ガスなどの気体を圧縮して、空調システムに気体を循環させるための気体圧縮機(コンプレッサ)が用いられている。
【0003】
この気体圧縮機は、回転駆動されて気体を圧縮する圧縮機本体がハウジングの内部に収容され、圧縮機本体から高圧の気体が吐出される吐出室が画成され、この吐出室からハウジングの外部に高圧に気体を排出するものである。
【0004】
ここで、圧縮機本体の外面には、圧縮機本体から吐出された高圧の気体から油分を分離する油分離器が組み付けられ、油分離器によって分離された油分は、吐出室の底部に溜められる。
【0005】
そして、この吐出室底部に溜められた油分は、吐出室内の圧力(高圧気体の圧力)によって圧縮機本体内に導かれる。
【0006】
圧縮機本体は、与えられた回転駆動力によって回転する回転軸と、この回転軸と一体的に回転する円柱状のロータと、ロータの外周面の外方に配置された、内周面が断面略楕円形状のシリンダと、シリンダおよびロータの両端面を覆う2つのサイドブロックと、回転軸回りの等角度間隔でロータに埋設された板状の複数のベーンとを備え、ベーンは、背圧を受けてロータの外周面から突出可能とされ、その突出側先端が、シリンダの内周面に当接しつつ、ロータの回転にしたがって突出量が変化する。
【0007】
これによって、ロータ、シリンダ、両サイドブロックおよびロータの回転方向に相前後する2枚のベーンで圧縮室が画成され、各圧縮室は、ロータの回転にしたがって容積が変化することで、気体が圧縮室に吸入され、その後圧縮されて、高圧の気体となって吐出室に吐出される。
【0008】
ベーンが受ける背圧は、圧縮機本体内に導かれた油分であるが、高圧のままでは突出力が強すぎて、ベーン先端とシリンダ内周面との当たりが過度に強くなるため、圧縮機本体の内部には、導入された油分の圧力を、吐出室内の圧力よりも低い中間圧に絞る絞り部が設けられ、中間圧に絞られた油分が、中間圧導油路およびベーン背圧室(ベーンに背圧を与える空間)に供給される。
【0009】
なお、ベーンの突出力は、上述したベーン背圧だけでなく、ロータの回転に伴って生じる遠心力も加わったものとなっている。
【0010】
ここで、気体圧縮機の通常の回転動作中は、上述した作用によって、ベーンはシリンダ内周面に追従するが、気体圧縮機の停止状態が続くと、吐出室の内圧が低下するため、ベーン背圧も低下し、いくつかのベーンは自重により、その先端がシリンダの内周面から離れて、画成されない圧縮室も生じる。
【0011】
そのような状態で、気体圧縮機が次に起動したとき、ロータが回転し始めた直後は、背圧が小さいため、ベーンが瞬時には飛び出さず、定常の高圧気体を得るまでの時間が長くかかる場合がある。
【0012】
また、ベーン背圧がある程度まで高められないと、シリンダの内周面に押し付けられるベーン先端に作用する圧縮室の圧力によって、ベーン先端がシリンダ内周面から離されて、チャタリングを発生することもある。
【0013】
そこで、起動直後のベーンの突出性能を向上させるために、吐出室と圧縮機本体内の中間圧導油路とを連通させる高圧バイパス路を圧縮機本体に形成するとともに、高圧バイパス路に吐出室内の圧力が所定の圧力に達するまでは開き、吐出室内の圧力が所定の圧力に達した後は閉じる圧力調整弁を設けることが提案されている(特許文献1)。
【0014】
このように構成された気体圧縮機では、気体圧縮機の起動直後は、圧力調整弁が高圧バイパス路を開放しているため、吐出室の内圧が絞り部を介さずに中間圧導油路に直接作用して、ベーンの背圧は絞り部を介した圧力よりも高くなり、ベーンの突出性能を向上させることができる。
【特許文献1】実公平5−28396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、上記提案技術によれば、圧縮機本体に高圧バイパス路および圧力調整弁を設ける必要があるが、圧縮機本体内では、これらを設けるスペースを確保するのが難しい。
【0016】
しかも、高圧バイパス路は吐出室にも開口させる必要があることから、この高圧バイパス路の経路を確保するのも難しい。また、経路を確保することができても、複数回の機械加工を要する場合には、加工工数が多くなって、製造コストが高くなるという問題がある。
【0017】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、高圧バイパス路および圧力調整弁を設けるスペースを確保しやすい構造の気体圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る気体圧縮機は、圧縮機本体に後付けされる油分離器に高圧バイパス路および圧力調整弁を設けることで、高圧バイパス路および圧力調整弁を設けるスペースを確保しやすく、高圧バイパス路も容易に形成することができるようにしたものである。
【0019】
すなわち、本発明に係る気体圧縮機は、ハウジングの内部に、回転駆動されて気体を圧縮する圧縮機本体が収容されるとともに、圧縮機本体から高圧の気体が吐出される吐出室が画成され、前記圧縮機本体から吐出された前記高圧の気体から油分を分離する油分離器が、前記圧縮機本体の外面に組み付けられ、前記油分離器によって分離され、前記吐出室の底部に溜められた油分を、前記圧縮機本体内に形成された絞り部で前記吐出室内の圧力よりも低い中間圧に絞った上で、圧縮機本体内で圧縮室を画成するベーンを突出させるベーン背圧室に導く中間圧導油路が形成された気体圧縮機において、前記圧縮機本体と前記油分離器との組付けによって、前記圧縮機本体の外面と前記油分離器の外面とにより、前記中間圧導油路に連通する中間圧連通空間が画成され、前記油分離器に、前記中間圧連通空間と前記吐出室とを連通する高圧バイパス路が形成されているとともに、前記高圧バイパス路を、前記吐出室内の圧力が所定の圧力に達するまでは開き、前記吐出室内の圧力が所定の圧力に達した後は閉じる圧力調整弁が設けられていることを特徴とする。
【0020】
このように構成された本発明に係る気体圧縮機によれば、中間圧導油路に連通する中間圧連通空間は、圧縮機本体と油分離器との組付けによって圧縮機本体の外面と油分離器の外面とにより画成されるため、通常の組付け工程の工数が増大することはない。
【0021】
また、中間圧連通空間と吐出室とを連通する高圧バイパス路は、圧縮機本体ではなく、油分離器に形成されているため、圧縮機本体に組み付ける以前の油分離器単体状態で高圧バイパス路を形成することができ、高圧バイパス路の経路を従来の気体圧縮機よりも確保しやすい。
【0022】
同様に、圧力調整弁は、圧縮機本体よりも余裕スペースを多く有する油分離器に設けられているため、設計自由度が高く、製造も容易化することができる。
【0023】
このように、本発明に係る気体圧縮機は、高圧バイパス路および圧力調整弁を設けるスペースを確保しやすく、高圧バイパス路も容易に形成することができる。
【0024】
なお、圧縮機本体のサイドブロックに高圧バイパス路を形成した従来の気体圧縮機では、両サイドブロックの対称性が低下し、圧縮室から吐出する気体の脈動を生じる虞があるが、本発明に係る気体圧縮機では、高圧バイパス路は油分離器に形成されているため、そのような問題を生じる虞もない。
【0025】
本発明に係る気体圧縮機においては、前記圧力調整弁は、バネと前記高圧バイパス路を開閉するボールとを有することが好ましい。
【0026】
このように構成された気体圧縮機によれば、簡単な構造で、起動直後のベーン背圧を向上させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る気体圧縮機によれば、高圧バイパス路および圧力調整弁を設けるスペースを確保しやすく、高圧バイパス路も容易に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の気体圧縮機に係る最良の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0029】
図1は、本発明に係る気体圧縮機の一実施形態であるベーンロータリ式コンプレッサ100を示す縦断面図、図2は図1における矢視Aによるサイクロンブロック70(油分離器)を示す図である。
【0030】
図示のコンプレッサ100は、例えば、冷却媒体の気化熱を利用して冷却を行なう空気調和システム(以下、単に空調システムという。)の一部として構成され、この空調システムの他の構成要素である凝縮器、膨張弁、蒸発器等(いずれも図示を省略する。)とともに、冷却媒体の循環経路上に設けられている。
【0031】
そして、コンプレッサ100は、空調システムの蒸発器から取り入れた気体状の冷却媒体としての冷媒ガスGを圧縮し、この圧縮された冷媒ガスGを空調システムの凝縮器に供給する。凝縮器は、圧縮された冷媒ガスGを液化させ、高圧で液状の冷媒として膨張弁に送出する。
【0032】
高圧で液状の冷媒は、膨張弁で低圧化され、蒸発器に送出される。低圧の液状冷媒は、蒸発器において周囲の空気から吸熱して気化し、この気化熱との熱交換により蒸発器周囲の空気を冷却する。
【0033】
また、コンプレッサ100は、ケース11とフロントヘッド12とからなるハウジング10の内部に収容された圧縮機本体60と、フロントヘッド12に取り付けられ、図示しない駆動源からの駆動力を圧縮機本体に伝える伝達機構80とを備える。
【0034】
ここで、伝達機構80は、ラジアルボールベアリング14により回転自在に支持された、その外周に掛け回された循環ベルト(図示省略)の駆動によって回転するプーリ81と、プーリ81の回転を圧縮機本体60に伝達するのを断接する電磁クラッチ82と、電磁クラッチ82への通電によりプーリ81に吸引されて、後述する回転軸51にプーリ81の回転を伝達するアーマチュア83とを備えた構成である。
【0035】
ケース11は、一端開放の筒状体を呈し、フロントヘッド12は、このケース11の開放された部分を覆うように組み付けられている。また、フロントヘッド12には、蒸発器から低圧の冷媒ガスGが吸入される吸入ポート12aが形成され、一方、ケース11には、圧縮機本体で圧縮された高圧Pdの冷媒ガスGを凝縮器に吐出する吐出ポート11aが形成されている。
【0036】
ハウジング60内に収容された圧縮機本体は、伝達機構80によって軸回りに回転駆動される回転軸51と、この回転軸51と一体的に回転する円柱状のロータ50と、ロータ50の外周面の外方を取り囲む断面輪郭略楕円形状の内周面49aを有するとともに両端が開放されたシリンダ40と、ロータ50の外周に、外方に向けて突出可能に埋設され、その突出側の先端がシリンダ40の内周面49aの輪郭形状に追従するように突出量が可変とされ、回転軸51回りに等角度間隔でロータ50に埋設された5枚の板状のベーン58と、シリンダ40の両側開放端面の外側からそれぞれ開放端面を覆うように固定されたフロントサイドブロック30およびリヤサイドブロック20とからなる。
【0037】
そして、2つのサイドブロック20,30、ロータ50、シリンダ40、および回転軸51の回転方向に相前後する2つのベーン58,58によって画成された各圧縮室48の容積が、回転軸51の回転にしたがって増減を繰り返すことにより、各圧縮室48に吸入された冷媒ガスGを圧縮して吐出するように構成されている。
【0038】
なお、ロータ50の両端面側からそれぞれ突出した回転軸51の部分のうち一方の部分は、フロントサイドブロック30の軸受部32に軸支されるとともに、フロントヘッド12を貫通して外方まで延び、この貫通部分がフロントヘッド12により軸支され、外方に延びた部分がアーマチュア83に連結されている。同様に回転軸51の突出部分のうち他方の側は、リヤサイドブロック20の軸受部22により軸支されている。
【0039】
そして、フロントヘッド12による回転軸51の支持と、両サイドブロック20,30の外周部がOリング等によりケース11,フロントヘッド12の内周面に保持されることとによって、圧縮機本体60はハウジング10内の所定位置に保持されている。
【0040】
また、圧縮機本体60がケース11の内部に収容された状態で、リヤサイドブロック20とケース11とにより吐出室21が形成され、一方、フロントサイドブロック30とフロントヘッド12とにより吸入室34が形成され、吐出室21は吐出ポート11aに連通し、吸入室34は吸入ポート12aに連通している。
【0041】
なお、吸入室34と吐出室21とは、前述したOリング等によって気密に隔絶されている。また、リヤサイドブロック20には、冷凍機油Rを冷媒ガスGから分離するための金網78を備えたサイクロンブロック70が組み付けられており、このサイクロンブロック70は吐出室21内に配置されている。
【0042】
そして、リヤサイドブロック20の外面とサイクロンブロック70の外面との間には、リヤサイドブロック20とサイクロンブロック70との組付けによって、短円柱状の軸背圧空間79(中間圧連通空間)が画成されている。
【0043】
ここで、リヤサイドブロック20には、後述するサライ溝25と軸背圧空間79とを連通する中間圧導油路28が形成されている。
【0044】
また、サイクロンブロック70には、軸背圧空間79と吐出室21とを連通する高圧バイパス路72が形成されているとともに、高圧バイパス路72を、吐出室21内の圧力が所定の圧力未満では開き、吐出室21内の圧力が所定の圧力以上では閉じる圧力調整弁76が設けられている。
【0045】
圧力調整弁76は、バネ75と、高圧バイパス路72を開閉するボール73と、ボール73をサイクロンブロック70内に保持する、通気口を有する蓋73とを有し、バネ73の弾性力が、上記所定の圧力に応じて設定されている。
【0046】
この所定の圧力は、コンプレッサ100の停止状態が続いて、吐出室21の内圧が低下し、後述するベーン背圧と略同一になった状態における圧力よりも高い圧力であって、コンプレッサ100の回転動作が再開して、吐出室21の内圧が定常状態の高圧Pdよりも低い圧力の間で設定されている。
【0047】
吐出室21の下部には、このコンプレッサ100の摺動部等を潤滑・冷却・清浄するとともに、ベーン58をシリンダ40の内周面49aに向けて突出させて、その先端を内周面49aに当接させた状態に付勢するように、ベーン58に背圧を作用させる冷凍機油Rが溜められている。
【0048】
ロータ50には、前述したベーン58を埋設するスリット状のベーン溝(図示省略)が放射状に、かつロータ50の回転中心回りに等角度間隔で5つ形成され、これらのベーン溝にベーン58が挿入され、各ベーン58は、ロータ50の回転によって生じる遠心力と、ベーン溝およびベーン58の底面によって画成された背圧室に加えられる冷凍機油Rによる油圧(背圧)とにより、シリンダ40の内周面49aに向けて突出し、このベーン58の突出した先端がシリンダ40の内周面49aに当接した状態に付勢され、回転軸51の回転に伴って、この先端は内周面49aに追従する。
【0049】
これにより、シリンダ40と、ロータ50と、回転軸51の回転方向について相前後する2つのベーン58,58と、フロントサイドブロック30と、リヤサイドブロック20とにより画成された各圧縮室48は、ロータ50の回転にしたがって容積の変化を繰り返し、容積が大きくなる期間に、吸入室34から冷媒ガスGを吸入し、容積が小さくなる期間に、吸入した冷媒ガスGを圧縮し、圧縮された高圧の冷媒ガスGは、サイクロンブロック70を通じて吐出室21に吐出される。
【0050】
一方、サイクロンブロック70の周壁71および金網78によって、冷媒ガスGから分離された冷凍機油Rは、吐出室21の底部に滴下し、前述したようにこの底部に溜められる。
【0051】
圧縮機本体60のリヤサイドブロック20には、吐出室21の底部に溜められ、高圧Pdの冷凍機油Rを軸受部22に導く高圧導油路23が形成され、軸受部22と回転軸51との間の微小隙間(絞り部)が、高圧Pdの冷凍機油Rを、吐出室21内の圧力よりも低い中間圧Pvに絞った上で、軸背圧空間79およびリヤサイドブロック20のうちロータ50の対向面に形成されたサライ溝25に供給する。
【0052】
このサライ溝25は、ロータ50に配設されたベーン58の背圧室に連通し、べーン58の背圧として、中間圧Pvの冷凍機油Rを供給している。
【0053】
一方、軸背圧空間79に供給された中間圧Pvの冷凍機油Rも、中間圧導油路28を通じてサライ溝25に導かれる。
【0054】
また、シリンダ40の底部には、リヤサイドブロック20の油路23に接続する貫通孔46が設けられ、フロントサイドブロック30に、この貫通孔46のフロントサイドブロック30側の開口と軸受部32とを連通させる高圧導油路33が形成されて、冷凍機油Rは、軸受部32と回転軸51との間の微小隙間を通過し、フロントサイドブロック30の内側端面に形成された凹部であるサライ溝35に導かれる。
【0055】
ここで、フロントサイドブロック30のサライ溝35も、リヤサイドブロック20のサライ溝25と同様、ロータ50に形成されたベーン58の背圧室に連通し、軸受部32と回転軸51との間の微小隙間(絞り部)で中間圧Pvまで絞られた冷凍機油Rが供給されている。
【0056】
このように構成された本実施形態に係るコンプレッサ100によれば、コンプレッサ100が停止状態において、ベーン58の先端がシリンダ40の内周面49aが離れていても、コンプレッサ100の起動直後は、サイクロンブロック70に設けられたバネ75の弾性力が吐出室21の低下した内圧に打ち勝って、ボール73を高圧バイパス路72の開放側に移動させているため、吐出室21の内圧が絞られることなく高圧バイパス路72、中間圧連通空間79および中間圧導油路28を介してサライ溝25に供給される。
【0057】
この結果、ベーン58の背圧室に供給される圧力は、高圧導油路23および絞り部で絞られた冷凍機油Rの圧力よりも高い圧力となり、起動直後におけるベーン58の突出性能が向上する。
【0058】
また、その後の定常運転となるまでの間に、吐出室21の内圧は高められ、この内圧が所定の圧力に到達すると、吐出室21の内圧がバネ75の弾性力に打ち勝って、ボール73を高圧バイパス路72の閉鎖側に移動させ、ベーン58の背圧室に供給される圧力は、リヤサイドブロック20側については高圧導油路23から絞り部を介してサライ溝25に供給された中間圧Pv、フロントサイドブロック30側については高圧導油路23、貫通孔46、高圧導油路33および絞り部を介してサライ溝35に供給された中間圧Pvとなり、定常運転時に、過大なベーン突出力が作用するのを防止することができる。
【0059】
しかも、中間圧導油路28に連通する中間圧連通空間79は、圧縮機本体60とサイクロンブロック70との組付けによって圧縮機本体60の外面とサイクロンブロック70の外面とにより画成されるため、圧縮機本体60にサイクロンブロック70を組み付ける通常の組付け工程の工数が増大することはない。
【0060】
また、中間圧連通空間79と吐出室21とを連通する高圧バイパス路72は、圧縮機本体60ではなく、サイクロンブロック70に形成されているため、圧縮機本体60に組み付ける以前のサイクロンブロック70単体状態で高圧バイパス路72を形成することができ、高圧バイパス路72の経路を従来の気体圧縮機よりも確保しやすい。
【0061】
同様に、圧力調整弁76は、圧縮機本体60よりも余裕スペースを多く有するサイクロンブロック70に設けられているため、設計自由度が高く、製造も容易化することができる。
【0062】
以上のように、本実施形態に係るコンプレッサ100は、高圧バイパス路72および圧力調整弁76を設けるスペースを確保しやすく、高圧バイパス路72も容易に形成することができる。
【0063】
なお、圧縮機本体60のリヤサイドブロック20に高圧バイパス路を形成した従来の気体圧縮機では、リヤサイドブロック20とフロントサイドブロック30との対称性が低下し、圧縮室48から吐出する冷媒ガスGの脈動を生じる虞があるが、本実施形態に係るコンプレッサ100では、高圧バイパス路72はサイクロンブロック70に形成されているため、そのような問題を生じる虞もない。
【0064】
さらに、本実施形態に係るコンプレッサ100によれば、圧力調整弁76が、バネ75と高圧バイパス路72を開閉するボール73と蓋74という簡単な構造で構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る気体圧縮機の一実施形態であるベーンロータリ式コンプレッサを示す縦断面図である。
【図2】図1における矢視Aによるサイクロンブロックを示す図である。
【符号の説明】
【0066】
28 中間圧導油路
60 圧縮機本体
70 サイクロンブロック(油分離器)
72 高圧バイパス路
73 ボール
74 蓋
75 バネ
76 圧力調整弁
79 中間圧連通空間
100 コンプレッサ(気体圧縮機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの内部に、回転駆動されて気体を圧縮する圧縮機本体が収容されるとともに、圧縮機本体から高圧の気体が吐出される吐出室が画成され、前記圧縮機本体から吐出された前記高圧の気体から油分を分離する油分離器が、前記圧縮機本体の外面に組み付けられ、前記油分離器によって分離され、前記吐出室の底部に溜められた油分を、前記圧縮機本体内に形成された絞り部で前記吐出室内の圧力よりも低い中間圧に絞った上で、圧縮機本体内で圧縮室を画成するベーンを突出させるベーン背圧室に導く中間圧導油路が形成された気体圧縮機において、
前記圧縮機本体と前記油分離器との組付けによって、前記圧縮機本体の外面と前記油分離器の外面とにより、前記中間圧導油路に連通する中間圧連通空間が画成され、
前記油分離器に、前記中間圧連通空間と前記吐出室とを連通する高圧バイパス路が形成されているとともに、前記高圧バイパス路を、前記吐出室内の圧力が所定の圧力に達するまでは開き、前記吐出室内の圧力が所定の圧力に達した後は閉じる圧力調整弁が設けられていることを特徴とする気体圧縮機。
【請求項2】
前記圧力調整弁は、バネと前記高圧バイパス路を開閉するボールとを有することを特徴とする請求項1に記載の気体圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−223526(P2008−223526A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59982(P2007−59982)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(504217742)カルソニックコンプレッサー株式会社 (101)
【Fターム(参考)】