説明

水に対する溶解度の低い活性薬剤を含む組成物

本発明は、少なくとも1種の、水に対する低い溶解度を持つ活性成分を含む組成物に係り、該活性成分は、該組成物中に、一般式(I)で表される少なくとも1種のPOMポリマーにより作成されたナノ粒子と、非-共有結合的に会合した状態で存在しており、しかも該活性成分は、POMの少なくとも5μM/gなる割合で存在する。
同様に、本発明は、活性成分と非-共有結合的に会合している、上記の如きナノ粒子の、該活性成分の水に対する溶解度を高めるための使用をも意図する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「AI」なる略号で表される活性成分、特に水に対する溶解度の低い活性成分を含む処方物に対して適した組成物を提案するものである。本発明は、また一般的に任意の活性成分の水溶性を高めるのに効果的な処方の方法を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
以下に記載するように、治療薬であれ、予防薬であれ、又は化粧料であれ、多数の活性成分が、不十分であると思われる水に対する溶解度の観点から、処方に関して問題を生じるおそれがある。
特に、低い水溶性を持つ活性成分を、経口投与に適した形状で処方することは、極めて困難であることが分かっており、ここで該経口投与は、特に患者の快適さ及び広範囲に渡る処方との適合性という観点から、該活性成分の投与のために好まれる投与経路である。
従って、生物薬剤学的分類の第2群又は第4群の活性成分の経口生物学的利用性は、大体において、該成分の低い溶解度によって制限される。特に、腫瘍の治療のために広く利用されている、天然タキソイドであるパクリタキセルは、これら比較的水に対して不溶性の活性成分の代表である。この化合物の、1μg/mL未満という極めて低い水に対する溶解度は、該化合物の処方を困難にしている。
【0003】
この点に関連して、該活性成分の水に対する溶解度を高めるための添加剤の開発が、高い関心事となっている。
理想的には、可溶化添加剤は、幾つかの基本的な特性を持つべきである。
第一に、明確な理由のために、高い可溶化能を持つべきである。即ち、該ポリマーは、十分に多量のAIを可溶化する必要がある。これは2つの利点を持つ。この能力は、該添加物の量を最少化することを可能とし、このことは、腸管外投与剤形の場合における許容性にとっては必須であり得る。さらに、高い溶解度は、経口投与であれ、腸管外投与であれ、患者に対する単位用量の投与を容易にする。
その上、該可溶化添加剤自体並びにこれと考察中の活性成分とを組み合わせるために選択された処方は、該活性成分を劣化させるものであってはならない。従って、該活性成分及び該可溶化添加剤を処方する様々な段階は、該活性成分の部分的な分解をもたらすものであってはならない。分解は、例えば温度が増大した際、界面活性剤の使用により、該活性成分を有機溶媒と接触させることにより、あるいは高い剪断応力を印加した際に起り得る。ところで、幾つかの活性成分、特にペプチド及びタンパク質は、これら分解の態様に対してとりわけ敏感である。従って、該可溶化添加剤は、過度の温度、あらゆる界面活性剤、又はあらゆる有機溶媒の使用を必要としない、水を用いる方法で使用することが、特に重要である。
【0004】
さらに、可溶化添加剤を含む、該活性成分の処方が、低い粘度を持つことが有利である。即ち、腸管外投与のための活性成分にとって、該活性成分及び該可溶化添加剤を含む懸濁液の粘度は、径の小さな針、例えばゲージ27〜31の針を介する注入を容易にするのに十分低い値とすべきである。事実、錠剤中に含まれるAIを経口投与する場合においてさえ、該活性成分を可溶化する該懸濁液の低粘度は、マイクロ粒子、錠剤又はあらゆる他の当業者にとって公知の医薬剤形の製造段階にとって、依然として決定的な利点である。この低粘度要件は、利用可能な可溶化添加剤の量を制限し、また高度に水溶性であるが、高い粘度を持つ、高分子量のポリマー型添加剤の使用を排除することから、特に制限的な要件である。
最後に、腸管外投与の視点から、該可溶化添加剤は、完全に耐性であり、かつ迅速に、即ち数日乃至数週間なる期間で分解するものであることが望ましい。また、この添加剤の量が、できる限り制限されることが好ましい。
十分に高い濃度にて活性成分の可溶化を可能とし、かつ同時に上で概説した如き要件全てを満足する可溶化添加剤を開発することは、難しいことであり、本発明者等の知る限りにおいて、現在まで達成されてはいない。
【0005】
幾つかの変法が、既に提案されており、それは、僅かに水溶性の活性成分の生体利用性における不足分を補償しようとの試みである。その中で、特に有利な変法は、ミセル溶液を使用している。即ち、両親媒性ポリマー、例えばPLGA-PEGジブロックコポリマーから生成された高分子ミセルが知られている。この調剤法において、該活性成分は、該ミセルの疎水性PLGAコア内に可溶化される。
しかし、この方法は、特に2つの制限を持つ。即ち、第一に中程度に溶解性のAI、例えば中程度の溶解度を持つペプチドは、該疎水性コアに可溶化することが困難である可能性があり、第二にナノ粒子の製法は、該PLGAを疎水性溶媒に可溶化する段階を含み、該段階は、幾つかの不安定なAIに対しては回避すべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、正確には、前記要件の全てを満たすことができる限りにおいて、特に低い水に対する溶解度を持つ活性成分に対して特に有利な、新規な組成物を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明の第一の局面によれば、本発明は、低い水に対する溶解度、特に純水に対して1g/L未満の溶解度を持つ少なくとも1種の活性成分を含む組成物に係り、該活性成分は、以下に定義される式(I)で表される少なくとも1種のPOMポリマー又は製薬的に許容されるその塩で形成されたナノ粒子と非-共有結合的に会合した状態で、該組成物中に存在し、また該活性成分は、該POMポリマーの少なくとも5μM/gなる割合で存在する。
本発明のもう一つの局面によれば、本発明は、中程度の水に対する溶解度、特に純粋に対して1g/L〜30g/Lなる範囲の溶解度を持つ、少なくとも1種の活性成分を含む組成物に係り、該活性成分は、以下に定義される式(I)で表される少なくとも1種のPOMポリマー又は製薬的に許容されるその塩で形成されたナノ粒子と非-共有結合的に会合した状態で、該組成物中に存在し、また該活性成分は、該POMポリマーの少なくとも5μM/gなる割合で存在する。
本発明のもう一つの局面によれば、本発明は、活性成分と非-共有結合的に会合している少なくとも1種のPOMポリマー製の、上で定義したナノ粒子の、該活性成分の水に対する溶解度を高めるための使用にも係る。
【発明を実施するための形態】
【0008】
有利なことに、本発明の組成物は、容易に扱うことができ及び/又は径の小さな針を介して注入することができる、安定な、低粘度液体形状で、考察中の該活性成分を可溶化することを可能とする。該組成物は、また生体適合性であり、しかも使用するために変性処方段階の利用、又は有機溶媒又は界面活性剤の使用を必要としないという利点をも持つ。
確かに、ポリマーナノ粒子は、様々な活性成分の腸管外投与のための態様として、提案されている。即ち、疎水性の基及び親水性の基を含むコポリアミノ酸のナノ粒子は、フラメルテクノロジーズ(Flamel Technologies)社による文献WO 96/29991及びWO 03/104303に提案されている。文献WO 03/104303は、より具体的には、アスパラギン酸残基及び/又はグルタミン酸残基を含むポリアミノ酸型のポリマーを開示しており、これら残基の少なくとも一部は、少なくとも一つのα-トコフェロール単位を含んでいる。これらの「疎水性へと変性された」ホモポリアミノ酸は、水中で自発的にナノ粒子のコロイド懸濁液を生成し、pH 7.4の水性懸濁液中で、少なくとも1種の活性タンパク質と容易に会合することができる。特許出願WO 2005/051416に関連して、これは、生分解性のポリアミノ酸を提案しており、該ポリアミノ酸は、活性成分と可逆的に会合し、また該活性成分の持続放出性をもたらし得る、ベクター(vectorization)型のコロイド状ナノ粒子又はマイクロ粒子に転化することができる。
【0009】
しかし、これらの文献は、幾つかの活性成分によってもたらされる、水に対する溶解度の欠如の問題には全く関連していない。さらに、該文献における教示は、この問題を解決するために、当業者を、特定の構造を持つポリマーの選択へと導くことはできない。
即ち、本発明は、特に本発明者等による以下のような発見の結果である。即ち、疎水性の基を持つ特定の両親媒性ポリマーの可溶化能、特にペンダントビタミンE単位を持つポリグルタメート群の可溶化能が、特異な様式で疎水性基による置換度に依存しているという発見の結果である。より具体的には、本発明者等は、該可溶化能が、該ポリマーの持つ疎水性の基の量に比例しないことに気付いた。該可溶化能は、最初は疎水性の基の量に伴って迅速に増大し、次いでプラトー状態に達し、あるいはさらに最大値にまで達し、次に徐々に減少する。何ら理論に拘泥するものではないが、該可溶化能は、第一に疎水性の基の豊富さと、第二にその利用性との間の折衷の結果であると考えることができる。
【0010】
上に示した如く、該可溶化能は、最適の投与を可能とするために、考慮すべき唯一のパラメータではない。従って、本発明者等は、また該懸濁液の粘度を下げるためには、疎水性基の割合を高め、また重合度(DP)を低くすることが推奨されることにも気付いた。ここでもまた、何ら理論に拘泥するものではないが、疎水性基で高度に置換された小さなポリマーが、自己会合してより密度の高い粒子となるものと考えることができる。
このようにして、本発明者等は、活性成分、特に低い又は中程度の水に対する溶解度を持つ活性成分の、水に対する溶解性を大幅に改善して、可溶化された活性成分の十分な濃度を達成し、特に患者に対して許容されるサイズを持つ単位用量でのその投与を可能とすることができることを見出した。これは、後に定義される式(I)で表される少なくとも1種のPOMポリマー、特に25〜250なる範囲、より特定的には40〜100なる範囲の重合度及び4〜25モル%なる範囲、さらには5〜22モル%なる範囲の疎水性基によるグラフト化率を持つ、少なくとも1種のPOMポリマー製のナノ粒子を使用することにより可能となる。
有利には、本発明に従って考察する該処方物は、時間の関数として調節される、該活性成分に関する放出プロフィールを与えることをも可能とする。
【0011】
本発明の好ましい一態様において、本発明者等は、有利には、該ポリマーの重合度が、25〜100なる範囲にあり、また疎水性基によるグラフト化率が、5〜25%なる範囲になければならないことをも見出した。
何ら理論に拘泥するものではないが、重合度が低過ぎると、連鎖当たりの疎水性基のグラフト数が容易に制御できないものと思われる。
逆に、重合度が高過ぎると、特に厳密には100を越えると、限られた濃度に対してさえも、コロイド懸濁液における粘度を、高いものとしてしまい、このような高い粘度は、該製品の腸管外投与に対しては回避されねばならない。
該グラフト率に関連して、誉れなことに、本発明者等は、このようなグラフト率は、これが5〜25%なる範囲にある場合、該対応するPOMポリマーの最適の可溶化能を達成することを可能とする。
即ち、本発明者等は、高過ぎるグラフト率、特に厳密には25%を越える、あるいはさらには22%を越えるグラフト率が、6.0〜7.2なるpH範囲における制限されたコロイド安定性を持つ、該POMポリマーのナノ粒子をもたらすことに気付いたが、該pH範囲は、医薬形状にある活性成分に対して、極めて頻繁に利用されるpH範囲である。
【0012】
(活性成分)
上記の如く、本発明は、低い又は中程度の水に対する溶解度を持つ活性成分を、十分に高い濃度にて可溶化し、及び/又は一般的には該活性成分の水溶性を高めることを目的とする。
従って、本発明は、僅かに水溶性の活性成分に対して極めて有利であることが分かっている。
本発明の目的にとって、低い水に対する溶解度を持つ活性成分とは、周囲温度、即ち約25℃にて測定した値として、1g/L未満、特に0.1g/L未満の純水に対する溶解度を持つ化合物である。
本発明の目的にとって、純水とは、中性に近いpH(5〜8なるpH範囲)を持ち、かつ当業者にとって公知の任意の他の可溶化剤、例えば界面活性剤又はポリマー(PVP、PEG)を含まない水である。
本発明に従って考察している該活性成分は、有利には、動物又はヒトの器官に投与することのできる生物学的に活性な化合物である。
一変形態様によれば、これらの活性成分は、ペプチド以外の活性成分である。
【0013】
一般に、本発明による活性成分は、治療薬、化粧料、予防薬又は造影剤として有益である任意の分子であり得る。
有利には、本発明による該活性成分は、小さなサイズの活性成分である。
「小さなサイズの活性成分」なる用語は、質量が2,000 Da未満、特に1,000 Da未満の有機分子を意味するものとする。
即ち、医薬の分野では、本発明による低い水に対する溶解度を持つ該活性成分は、特に抗癌剤、抗-真菌剤、ステロイド、抗炎症剤、性ホルモン、免疫抑制剤、抗ウイルス剤、麻酔薬、制吐薬及び抗-ヒスタミン薬から選択することができる。
より具体的には、低い水に対する溶解度を持つ特定の活性成分の例としては、タキサン誘導体、例えばパクリタキセル、ニフェジピン、カルベジロール、カンプトテシン、ドキソルビシン、シスプラチン、5-フルオロウラシル、シクロスポリンA、PSC 833、アンホテリシンB、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ベタメタゾン、インドメタシン、テストステロン、エストラジオール、デキサメタゾン、プレドニソロン、トリアムシノロンアセトニド、ナイスタチン、ジアゼパム、アミオダロン、ベラパミル、シンバスタチン、ラパマイシン、及びエトポシドを挙げることができる。
特定の一態様によれば、本発明に従って考察される該活性成分は、治療上有益である活性成分である。
【0014】
もう一つの特定の態様によれば、該活性成分は、パクリタキセル、カルベジロール塩基、シンバスタチン、ニフェジピン、ケトコナゾール及びシクロスポリンAから選択することができる。
本発明の一態様によれば、該活性成分は、中程度の水に対する溶解度を持つ分子であり得、該溶解度は、本発明の組成物によって高めることができる。
「中程度の水に対する溶解度を持つ分子」なる表現は、上記の如く周囲温度下で測定した、純水に対する溶解度が、1〜30g/Lなる範囲、特に純水に対して2〜20g/Lなる範囲にある、分子を意味するものとする。
溶解度を高めることのできる、本発明による活性成分の非-限定的な例示として、特に以下に列挙するものを挙げることができる:
・タンパク質又は糖タンパク質、特にインターロイキン、エリスロポエチン、又はサイトカイン;
・1又はそれ以上のポリアルキレングリコール鎖と結合したタンパク質(好ましくはポリエチレングリコール(PEG):PEG化タンパク質);
・ペプチド;
・多糖類;
・リポ糖;
・オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド;及び
・これらの混合物。
本発明によれば、該活性成分は、本発明の組成物中に、POMポリマーの少なくとも5μM/gなる割合で、より特定的にはPOMの少なくとも10μM/gなる割合で、より特定的にはPOMの少なくとも20μM/gなる割合で、及びより一層特定的にはPOMの少なくとも100μM/gなる割合で存在する。
【0015】
(ナノ粒子)
上記活性成分は、本発明の組成物中に、少なくとも一部では、以下の一般式(I)で表される少なくとも1種のPOMポリマー、又はその製薬的に許容される塩によって形成されたナノ粒子と非-共有結合的に会合した状態で存在する:
【0016】
【化1】

(I)
【0017】
ここで、
・Aは以下を表し
− RNH(式中Rは、H、直鎖C2-C10アルキル基、分岐C3-C10アルキル基、又はベンジル基を表す)又は
− 以下の式で表される末端アミノ酸残基
【0018】
【化2】

【0019】
(式中、
− R7は、-OH、-OR9又はNHR10であり、かつ
− R8、-R9及び-R10は、夫々独立にH、直鎖C2-C10アルキル基、分岐C3-C10アルキル基、又はベンジル基を表す)
・Bは、直接結合、又は二価、三価又は四価の結合基であり、好ましくは以下に列挙する基から選択され:
-O-、-NH-、-N(C1-5アルキル)-、又は1〜6個の炭素原子を含むヒドロキシ酸残基、アミノ酸残基、ジオール残基、トリオール残基、ジアミン残基、トリアミン残基、又はアミノアルコール残基;
・Dは、H、直鎖C2-C10アシル基、分岐C3-C10アシル基、又はピログルタメート基を表し;
・前記疎水性の基Gの各々は、夫々独立に、以下に列挙するものから選択される基を表し:
・場合により少なくとも一つの不飽和及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはO及び/又はN及び/又はS)を含むことのできる、直鎖又は分岐C8-C30アルキル基;又は
【0020】
・場合により少なくとも一つの不飽和及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはO及び/又はN及び/又はS)を含むことのできる、C8-C30アルキルアリール基又はアリールアルキル基;又は
・場合により少なくとも一つの不飽和及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはO及び/又はN及び/又はS)を含むことのできる、C8-C30(多)環式基;及び
好ましくは、以下に列挙する基:オクチルオキシ-、ドデシルオキシ-、テトラデシルオキシ-、ヘキサデシルオキシ-、オクタデシルオキシ-、9-オクタデセニルオキシ-、トコフェリルオキシ-、又はコレステリルオキシ-から選択される基であり、従ってBは直接結合であり;
・R1は以下の式を持つ基から選択される基を表し:
− -NH-(CH2)w-NH3+Z- (ここで、wは2〜6なる範囲にあり、及び好ましくはwは、4に等しい);
− -NH-(CH2)4-NH-C(=NH)-NH3+Z-
− -O-(CH2)2-NH3+Z-
− -O-(CH2)2-N+(CH3)3Z-
− アミノ酸残基;又は
− 以下の式で表される化合物の残基:
【0021】
【化3】

【0022】
(式中、
Xは酸素原子又は-NH-であり;
R12は-H、直鎖C2-C10アルキル基、分岐C3-C10アルキル基、又はベンジル基であり;
R13は-(CH2)4-NH3+Z-、-(CH2)3-NH-C(=NH)-NH3+Z-、又は-(CH2)3-NH3+Z-を表し、ここで対イオンZは;塩素、硫酸根、リン酸根、又は酢酸根、好ましくは塩素である);
・R3は、ヒドロキシエチルアミノ-、ジヒドロキシプロピルアミノ-、アルキレングリコール残基、ポリオキシアルキレングリコール又は以下の式で表される基を表し:
【0023】
【化4】

【0024】
(式中、-R10は-H、-CO2H、アルキルエステル(好ましくは、-COOMe又はCOOEt)、-CH2OH、-C(=O)-NH2、-C(=O)-NH-CH3、又は-C(=O)-N(CH3)2を表す);
・nは1又は2であり;
・p、q、r及びsは、正の整数であり、q、r及びsは、付随的にゼロであってもよく;
・(p+q+r+s)は、25〜250なる範囲、特に40〜250なる範囲、より特定的には40〜150なる範囲、及び好ましくは50〜100なる範囲にあり;
・疎水性の基Gのモルグラフト化率:(p)/(p+q+r+s)は、4〜25モル%なる範囲、特に5〜22モル%なる範囲、好ましくは10〜21モル%なる範囲にあり;
・該連鎖の全体としての帯電度:Q=(q-s)/(p+q+r+s)は、正又は負であり得;
前記一般式Iで表されるモノマーの連続は、ランダム、モノブロック又はマルチブロック型であり得る。
【0025】
特定の好ましい一態様によれば、本発明に従って考察している該POMポリマーは、上記一般式(I)で表されるPOMポリマーであり、ここで(p+q+r+s)は、25〜100なる範囲にあり、また疎水性の基Gのモルグラフト化率:(p)/(p+q+r+s)は、5〜25モル%なる範囲内にある。
このようなポリマーは、特に文献WO 2008/135563に記載されている。この文献の内容を参考としてここに組入れる。該ポリマーの合成に関する更なる詳細に関しては、文献FR 2 840 614及びFR 2 855 521を参照することが有用であろう。
好ましくは、該疎水性の基は、以下に列挙する基:オクチルオキシ-、ドデシルオキシ-、テトラデシルオキシ-、ヘキサデシルオキシ-、オクタデシルオキシ-、9-オクタデセニルオキシ-、トコフェリルオキシ-、又はコレステリルオキシ-から選択される基によって表され、従ってBは直接結合である。
さらに、本発明にとって特に適したものは、上記一般式Iにおいて、各置換基が以下のものである化合物に対応する一般式(I')で表される化合物である:
【0026】
・Aは、-NH2を表し;
・Bは直接結合であり;
・Dは水素原子又はピログルタメート基であり;
・前記疎水性基の各々は、夫々独立に、オクチルオキシ-、ドデシルオキシ-、テトラデシルオキシ-、ヘキサデシルオキシ-、オクタデシルオキシ-、9-オクタデセニルオキシ-、トコフェリルオキシ-又はコレステリルオキシ-を表し;及び
・R3は、ヒドロキシエチルアミノ-又はジヒドロキシプロピルアミノ-を表す。
好ましくは、該疎水性の基G及び存在する場合には該アニオン性の基及び該カチオン性の基は、ペンダント基としてランダムに配列されている。
本発明の一態様によれば、該疎水性の基の少なくとも一つ及び好ましくはその全てが、トコフェリルオキシ基を表す。
前記一般式Iの化合物は、特に該化合物各々が持つ該疎水性基の化学的特性に従って、さらにはまたこれら疎水性基によるグラフト化率の関数として区別することができる。
その上、カチオン性及び/又はアニオン性の基によるグラフト化の割合に関連して、該一般式Iの化合物は、中性pHにおいてアニオン性、中性又はカチオン性であり得る。
【0027】
一変形態様によれば、該化合物は、前記一般式Iによって表されるが、以下の要件を満たすことを条件とする:
・(q)/(p+q+r+s)が1%未満であり;かつ
・(r)/(p+q+r+s)が1%未満である。
特定の有利な一態様によれば、本発明による該POMポリマーは、以下の一般式(II)で表されるポリマー又は製薬的に許容されるその塩である:
【0028】
【化5】

【0029】
ここで、
− R1は水素原子、直鎖C2-C10アシル基、分岐C3-C10アシル基、ピログルタメート基又は疎水性基Gを表し;
− R2は-NHR5基又は窒素で結合し、かつカルボキシル基が場合によりアルキルアミノ基:NHR5基又はアルコキシ基:-OR6で置換されている末端アミノ酸残基を表し;
− R5は水素原子、直鎖C1-C10アルキル基、分岐C3-C10アルキル基、又はベンジル基を表し;
− R6は水素原子、直鎖C1-C10アルキル基、分岐C3-C10アルキル基、ベンジル基又は基Gを表し;
− Gはトコフェリルオキシ基を表し;
− m及びnは、正のゼロでない整数であり;
− (m+n)は、25〜250なる範囲、特に40〜250なる範囲、より特定的には40〜150なる範囲、好ましくは50〜100なる範囲にあり;
− 該疎水性基Gのモルグラフト化率:(n)/(n+m)は、4〜25モル%なる範囲、特に5〜22モル%なる範囲、好ましくは10〜21モル%なる範囲にあり;
前記一般式IIのモノマーの連続は、ランダム、モノブロック又はマルチブロック型、好ましくはランダム型であり得る。
【0030】
本発明の一変法によれば、上記グラフト化率が10〜21モル%なる範囲にあり、かつDPが50〜150なる範囲内にある、上記一般式I又はIIで表されるポリマーが、本発明にとってPOMポリマーとして特に好ましいものである。
特定の好ましい態様によれば、本発明による該POMポリマーは、該グラフト化率が5〜25モル%なる範囲、さらにはまた5〜22モル%なる範囲にあり、かつ該DPが25〜100なる範囲内にある、該一般式I又はIIで表されるポリマーである。
該ポリマーは、特に約100なる重合度を有し、かつビタミンEにより15%〜20%グラフト化されているポリグルタメートであり得る。
上記一般式(I)及び(II)は、順番に配列したコポリマー(sequenced copolymer)又はブロックコポリマーばかりでなく、ランダムコポリマー又はマルチブロックコポリマーをも表すものと理解すべきである。
本発明による該ポリマーの「製薬的に許容される塩」なる用語は、該ポリマーのイオン化した官能基と会合している対イオンを含む全てのポリマーを意味するものとする。正及び負の電荷両者が共存する幾つかの構造に対して、該電荷の完全な又は部分的な中和であるとすることも可能である。
【0031】
1種又はそれ以上の活性成分と本発明による該POMポリマーとの間の関係を記載するのに使用する用語「会合」又は「会合した」とは、該活性成分(1又は複数)が、非-共有結合的な物理的相互作用により、特に疎水性の相互作用により、及び/又は静電的な相互作用及び/又は水素結合及び/又は該POMポリマーによる立体的な封入を介して、該POMポリマーと会合していることを意味する。
この会合は、一般的に、この型の相互作用を発生することのできる、該POMポリマーの単位、特に疎水性又はイオン化された単位により生成される、疎水性の及び/又は静電的な相互作用の結果である。
本発明により考察される該POMポリマーは、特に該ポリマーが水性媒体、特に水に分散された際に、自発的にナノ粒子を形成することができる。
一般に、該ナノ粒子のサイズは、1〜1,000nmなる範囲、特に5〜500nmなる範囲、とりわけ10〜300nmなる範囲、及びより特定的には10〜100nmなる範囲にある。
該POMナノ粒子のサイズは、これら粒子の平均の流体力学的な径により評価される。その測定は、ALV CGS-3装置を用いた、準弾性光散乱法によって行われる。この目的のために、該POM懸濁液は、平衡に達するのに十分な時間静置された後、生理食塩水媒体、例えば0.15M NaCl中で、0.5mg/mLなる濃度に濃縮される。
有利には、該POMポリマーは生分解性のものである。
一特定の態様によれば、本発明にとって適したPOMポリマーは、該ポリマーを構成するグルタメート単位に結合した、1又はそれ以上のポリアルキレングリコール型のグラフトを持つことができる。好ましくは、該ポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコールであり、またより具体的には、1〜30%なる範囲の、ポリエチレングリコールのグラフト化のモル百分率を持つものが使用される。
【0032】
本発明による該変性ポリグルタメートの残留カルボン酸基は、pH及び組成により、中性(COOH型)又はイオン化(COO-アニオン)の何れであってもよいことに注意すべきである。従って、i) グルタメート残基であるかグルタミン酸残基であるか、ii) ポリグルタミン酸又はポリグルタメートであるかを識別せずに、言及する。
カチオン性及び場合により中性の基と、上記一般式(I)又は(II)の該POMポリマーの酸官能基とのカップリングは、カップリング剤としてのクロロ-フォルメートの存在下で、適当な溶媒、例えばジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン(NMP)又はジメチルスルホキシド(DMSO)中で、第二段階において同時に行われる。
該カチオン性の基が、化学的に区別されない2つのアミノ官能基(例えば、直鎖ジアミン)を含む場合、該カチオン性の基は、該2つの官能基の一方が、保護されている状態で導入することができる。次いで、該保護基を開裂する最終段階が追加される。
該重合化学及び該基のカップリング反応は、従来通りであり、当業者には周知である(例えば、上記した本出願人による特許又は特許出願を参照のこと)。
【0033】
(該POMと活性成分との会合)
1又はそれ以上の活性成分と本発明による該POMポリマーとを会合させる技術は、特に米国特許第6,630,171号に記載されている技術と同様である。
該活性成分は、上記の如く該POMポリマーと自発的に会合し得る。
この会合は、純粋に物理的なものであり、また該活性成分と該ポリマーとの間の共有結合の生成を含むことはない。
【0034】
得られる該粒子の化学的な架橋のための段階を含むことを意図していない。この化学的な架橋がないことは、該活性成分を含む該粒子を架橋するための架橋段階中の、該活性成分の化学的な分解を回避することを可能とする。このような化学的な架橋は、実際には、一般に重合性成分の活性化により行われ、また可能な変性剤、例えばUV輻射又はグルタルアルデヒドの使用を含む。
本発明による該活性成分と該POMポリマーとの会合は、特に以下の方法で行うことができる:
第一の方法においては、該活性成分を水性溶液中に溶解し、該POMポリマーの水性懸濁液と混合する。
第二の方法では、粉末形状にある該活性成分を、該POMポリマーの水性懸濁液中に分散させ、その全体を、均一な透明懸濁液が得られるまで攪拌する。
第三の方法では、該POMポリマーを、粉末状態で、該活性成分の水性分散液又は溶液に導入する。
【0035】
第四の方法では、該活性成分及び/又は該ポリマーを、水-混和性の有機溶媒、例えばエタノール又はイソプロパノールを含む溶液に溶解する。次いで手順は、上記方法1〜3に従って実施する。場合により、この溶媒は、透析又は当業者には周知の任意の他の技術によって除去することができる。
これらすべての方法に関連して、該活性成分と該POMポリマーとの間の相互作用を、超音波を使用し、又は温度を高めることにより容易にすることが有利であり得る。
明確な理由のために、該活性成分/該POMポリマーの質量比は、考察中の活性成分の用量の関数として、大幅に変えることができる。
より詳しくは、この比は、0.1%〜300質量%なる範囲、1%〜100質量%なる範囲、又は5%〜80質量%なる範囲内であり得る。
【0036】
(マイクロ粒子)
特定の一態様によれば、前記活性成分と非-共有結合的に会合している該ナノ粒子は、マイクロ粒子形状にある本発明の組成物中で使用することができる。
第一の態様によれば、これらマイクロ粒子は、当業者には公知の方法、例えば非-限定的な例としての凝集、霧化、凍結乾燥、又はコアセルベーション等に従って、本発明のナノ粒子を凝集させることにより、得ることができる。
もう一つの態様によれば、該マイクロ粒子は、該ナノ粒子と、pHの関数として調節される、該活性成分に関する放出プロフィールを調節する少なくとも一つの被覆層を含む、コアを有する。ここで、該被覆層は、5〜7なる範囲の可溶化pH値を持ち、少なくとも1種の疎水性化合物Bと会合している少なくとも1種のポリマーAを含む材料により形成し得る。
該マイクロ粒子からの該ナノ粒子の、pHの関数としての制御放出は、各貯蔵粒子を含む該コアを包囲する被膜によって与えられる。この被膜は、例えば胃腸管における該活性成分を吸収する窓に相当する、該胃腸管の極めて特殊な部位において、該活性成分及び該POMポリマーを放出するように設計されている。
【0037】
かくして、この被膜の特性のために、本発明に従って考察される該マイクロ粒子は、時間及びpHの関数として二重の放出メカニズムを持つことができる。
この表現は、以下に述べる2つの特異性を持つことを意味する。これらマイクロ粒子の該被膜を形成する該ポリマーAの可溶化pH値以下では、該マイクロ粒子は、極めて限定された量のナノ粒子のみを放出する。他方、これらが腸内又はそれに匹敵する環境内に存在する場合には、これらは該ナノ粒子の効果的な放出をもたらす。次いで、この放出は、有利には24時間未満、特に12時間未満、とりわけ6時間未満、特に2時間未満、あるいはさらに1時間未満で行うことができる。
極めて狭い吸収窓を持つ、例えば十二指腸又はパイエル斑に制限されている該窓を持つ活性成分の場合には、該ナノ粒子の放出期間は、2時間未満であり、また好ましくは1時間未満である。
従って、本発明の組成物は、第一段階において該POMポリマー製のナノ粒子と会合している該活性成分を放出し、次いで第二段階において該ナノ粒子から該活性成分を解離するのに適している。
【0038】
本発明のこの変法に従って考察している該マイクロ粒子のサイズは、有利には2,000μm未満、特に100〜1,000μmなる範囲、とりわけ100〜800μmなる範囲、及び特に100〜500μmなる範囲にある。
本発明の目的にとって、該粒子径は、シロッコ(Sirocco) 2000ドライプロセスモジュールを備えたマルバーンインスツルメント(Malvern Instrument)社から入手できる、マスターサイザー(Mastersizer)を用いた、レーザー粒子サイズ測定法によって測定した、体積-平均径(D4,3)として表される。
この変形態様によれば、該ナノ粒子の被膜は、以下の成分を混合することによって得られる複合材料で製造することができる:
− 5〜7なる範囲の可溶化pH値を持つ、少なくとも1種の化合物A;
− 少なくとも1種の疎水性化合物B;及び
− 場合により少なくとも1種の可塑剤及び/又は他の公知の賦形剤。
【0039】
(ポリマーA)
本発明の目的にとって、該ポリマーAの可溶化pH値は、生理的媒体又はインビトロモデル媒体のpH値であり、該可溶化pH値以下では、該ポリマーは、不溶性の状態にあり、また該pH値以上では、この同一のポリマーAは、溶解性の状態にある。
明確な理由のために、このpH値は、与えられたポリマーに特有のものであり、その固有の物理化学的諸特性、例えばその化学的特性及びその鎖長と直接関連している。
本発明にとって適した該ポリマーAの非-限定的な例としては、特に以下に列挙するものを挙げることができる:
− メタクリル酸とメチルメタクリレートとのコポリマー;
− メタクリル酸とエチルアクリレートとのコポリマー;
− セルロース誘導体、例えばセルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートサクシネート(CAS)、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(又はヒプロメロースフタレート)(HPMCP)、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(又はヒプロメロースアセテートサクシネート)(HPMCAS);
− シェラックガム;
− ポリビニルアセテートフタレート(PVAP);及び
− これらの混合物。
【0040】
本発明の好ましい一態様によれば、このポリマーAは、メタクリル酸とメチルメタクリレートとのコポリマー、メタクリル酸とエチルアクリレートとのコポリマー、及びこれらの混合物から選択される。
上で特定した如く、本発明に従って考察される該ポリマーAは、このものがその可溶化pH値以上の又はそれ以下のpH値条件下に置かれているか否かに依存して、異なる可溶化プロフィールを持つ。
本発明の目的にとって、該ポリマーAは、一般的にその可溶化pH値以下のpH値においては不溶性であり、一方でその可溶化pH値以上のpH値においては可溶性である。
例えば、該ポリマーAは、可溶化pH値が以下のような値であるようなポリマーであり得る:
・5.0、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、及び特にシンエツ(Shin-Etsu)社によりHP-50なる名称の下に市販されているもの等;
・5.5、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、及び特にシンエツ(Shin-Etsu)社によりHP-55なる名称の下に市販されているもの、又はメタクリル酸とエチルアクリレートとの1:1コポリマー、及び特にエボニック(Evonik)社によりユードラジット(Eudragit) L100-55なる名称の下に市販されているもの等;
・6.0、例えばメタクリル酸とメチルメタクリレートとの1:1コポリマー、及び特にエボニック社によりユードラジットL100なる名称の下に市販されているもの等;
・7.0、例えばメタクリル酸とメチルメタクリレートとの1:2コポリマー、及び特にエボニック社によりユードラジットS100なる名称の下に市販されているもの等。
これらポリマーの全ては、その可溶化pH値以上のpH値において可溶性である。
前記被膜は、有利には、その全質量を基準として、25%〜90質量%なる範囲、特に30%〜80質量%なる範囲、とりわけ35%〜70質量%なる範囲、あるいはさらに40%〜60質量%なる範囲の該ポリマーAで構成される。
より好ましくは、該ポリマーAは、メタクリル酸とエチルアクリレートとの1:1コポリマーである。
【0041】
(疎水性化合物B)
第一の変形によれば、上記化合物Bは、固体状態において結晶性であり、またTmb(融点)≧40℃、好ましくはTmb≧50℃、及びより一層好ましくは40℃≦Tmb≦90℃なる融点を持つ製品から選択することができる。
より好ましくは、この化合物は、以下に列挙する製品から選択することができる:
− 植物ワックス単独、又はこれら相互の混合物、例えば特にダイナサン(Dynasan)P60、ダイナサン116なる商標の下で市販されている製品;
− 水添植物油単独又はこれら相互の混合物、好ましくは水添綿実油、水添大豆油、水添パーム油、及びこれらの混合物からなる群から選択されるもの;
− グリセロールと少なくとも1種の脂肪酸、好ましくはベヘン酸とのモノ-及び/又はジ-及び/又はトリ-エステル単独又はこれら相互の混合物;及び
− これらの混合物。
【0042】
この態様によれば、該B/Aの質量比は、0.2〜1.5なる範囲、及び好ましくは0.45〜1なる範囲にある。
より好ましくは、該化合物Bは、水添綿実油である。
このような被覆によって形成されるマイクロ粒子は、特に文献WO 03/30878に記載されている。
第二の変法によれば、該化合物Bは、消化管の液体に対して不溶性のポリマーであり得る。
消化管の液体又はさらに胃腸管液体に対して不溶性のこのポリマーは、特に以下に列挙する物質から選択される:
− セルロースの水-不溶性誘導体;
− (メタ)アクリル酸系(コ)ポリマーの水-不溶性誘導体;及び
− これらの混合物。
【0043】
より好ましくは、これは、エチルセルロース、及び/又はその誘導体、例えばエトセル(EthocelTM)なる名称の下で市販されているもの、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテート、アンモニオ(メタ)アクリレートコポリマー(エチルアクリレート、メチルメタクリレート、及びトリメチルアンモニオエチルメタクリレートのコポリマー)タイプ「A」又はタイプ「B」、特にユードラジット(EudragitTM) RL及びユードラジットRSなる名称の下で市販されているもの、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、特にユードラジットNEなる名称の下で市販されているもの、及びこれらの混合物から選択することができる。
本発明にとってとりわけ適したものは、エチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、及びアンモニオ(メタ)アクリレートコポリマー、特にユードラジット(Eudragit) RLTM及びユードラジットRSTMなる名称の下で市販されているものである。
従って、該マイクロ粒子の被覆は、その全質量を基準として、ポリマーAを、10%〜75質量%なる範囲、好ましくは15%〜60質量%なる範囲、より好ましくは20%〜55質量%なる範囲、あるいはまた25%〜55質量%なる範囲、及びさらに一層特定的には30%〜50質量%なる範囲の量で含む。
【0044】
有利には、この態様によれば、次に、ポリマーA及びBの2つの範疇の混合物から該被膜を形成することができ、ここで該ポリマーB/ポリマーAの質量比は、0.25を越え、特に0.3以上、特に0.4以上、とりわけ0.5以上、又はさらには0.75以上である。
もう一つの変形態様によれば、該ポリマーA/ポリマーBの質量比は、また8未満、とりわけ4未満、又はさらには2未満、及びより特定的には1.5未満である。
本発明にとって特に適したポリマーAとポリマーBとの混合物の代表的なものとして、特にエチルセルロース、セルロースアセテートブチレート又はアンモニオ(メタ)アクリレートコポリマータイプA又はタイプBと、メタクリル酸とエチルアクリレートとの少なくとも1種のコポリマー、又はメタクリル酸とメチルメタクリレートとの一種のコポリマー又はこれらの混合物との混合物を挙げることができる。
上記2つの型の化合物A及びBに加えて、本発明による該ナノ粒子の該被膜は、少なくとも1種の可塑剤を含むことができる。
【0045】
(可塑剤)
この可塑剤は、特に以下に列挙するものから選択することができる:
− グリセロール及びそのエステル、及び好ましくはアセチル化グリセライド、グリセリルモノステアレート、グリセリルトリアセテート、及びグリセリルトリブチレート;
− フタレート、及び好ましくはジブチルフタレート、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、及びジオクチルフタレート;
− シトレート、及び好ましくはアセチルトリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、トリブチルシトレート及びトリエチルシトレート;
− セバケート、及び好ましくはジエチルセバケート及びジブチルセバケート;
− アジペート;
− アゼレート;
− ベンゾエート;
− クロロブタノール;
− ポリエチレングリコール;
− 植物油;
− フマレート、好ましくはジエチルフマレート;
− マレート、好ましくはジエチルマレート;
− オキサレート、好ましくはジエチルオキサレート;
− サクシネート、好ましくはジブチルサクシネート;
− ブチレート;
− セチルアルコールエステル;
− マロネート、好ましくはジエチルマロネート;
− ヒマシ油;及び
− これらの混合物。
【0046】
特に、該被膜は、その全質量に対して、30質量%未満の、好ましくは1〜25質量%なる範囲、及びより一層好ましくは5〜20質量%なる範囲の可塑剤を含むことができる。
本発明のこの変法に従う該マイクロ粒子の形成は、貯槽カプセルを製造するのに適した任意の公知の技術によって実施することができる。ここで、該カプセルのコアは、全体として又は部分的に、特に上で定義したような、POMポリマーノナの粒子と非-共有結合的に会合した少なくとも1種の活性成分から形成される。
好ましくは、該マイクロ粒子は、上記化合物A及びB、及び存在する場合には、上記可塑剤を含む、一般的には溶質としてのその他の成分を噴霧することにより製造される。この溶媒媒体は、一般的に水と混合しても、また混合しなくてもよい、有機溶媒を含む。このようにして形成された該被膜は、同一のこれらポリマーの分散液から形成した被膜とは逆に、主成分が水である液体中で、組成に関して均一であることが分かっている。
好ましい一変形態様によれば、該噴霧される溶液は、40質量%未満の水、特に30質量%未満の水、及びより特定的には25質量%未満の水を含む。
もう一つの変形態様によれば、該活性成分と非-共有結合的に会合した該ナノ粒子は、1又はそれ以上のバインダによって、また1又はそれ以上の常用の賦形剤と共に、支持された状態で、特に中性支持体上に支持された、マイクロ粒子型の状態で使用することができる。
【0047】
支持された状態で存在するこれらのマイクロ粒子は、引続き、上述の如く、1種又はそれ以上の被覆層によって被覆することができる。
中性で球形の中性支持体上に、該AI/POM混合物を堆積することが望ましい場合、この堆積工程は、以下に述べる方法によって行うことができる:
公知のバインダを、活性成分とPOMとの均一な混合物に添加するが、このバインダは、該中性コア上に堆積させた該層に粘着力を与えるためのものである。
このようなバインダは、特にKhankari R.K.等の「医薬の造粒技術に関するハンドブックに見られるバインダ及び溶媒(Binders and Solvents in Handbook of Pharmaceutical Granulation Technology)」, 編, マルセルデッカー社(Marcel Dekker Inc.)刊, N.Y., 1997において提案されている。
以下に列挙するものは、バインダとして本発明にとって特別に適したものである:ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、メチルセルロース(MC)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)。
従って、対応する混合物の堆積は、当業者には公知の従来技術によって行われる。これは、特に、該バインダ、及び場合により他の化合物を含む、該活性成分を担持するナノ粒子のコロイド状懸濁液を、空気流動化床にある該支持体上に噴霧する工程を含む。
【0048】
限定する意図はないが、本発明による組成物は、例えば該活性成分及び該公知の賦形剤と会合した該ナノ粒子に加えて、スクロース及び/又はデキストロース及び/又はラクトース、あるいはまた該ナノ粒子の支持体として作用する不活性物質、例えばセルロースのマイクロ粒子を含むことができる。
即ち、この変法の第一の好ましい態様において、本発明による該組成物は、顆粒を含むことができ、該顆粒は、該POM、該活性成分、1又はそれ以上の、該顆粒に粘着力を与えるバインダ、及び当業者には公知の様々な賦形剤を含有する。
次いで、当業者には公知の任意の技術、有利には噴霧塗布技術によって、被膜をこの顆粒上に堆積することができ、これは、上記の如きマイクロ粒子の生成をもたらす。
この態様に従うマイクロ粒子の質量基準での組成は、以下の通りである:
・該コア内の活性成分を担持するナノ粒子の質量基準での含有率は、0.1〜80質量%なる範囲、好ましくは2〜70質量%なる範囲、及びより好ましくは10〜60質量%なる範囲にある;
・該コア内のバインダの質量基準での含有率は、0.5〜40質量%なる範囲、好ましくは2〜25質量%なる範囲にある;
・該マイクロ粒子内の該被膜の質量基準での含有率は、5〜50質量%なる範囲、好ましくは15〜35質量%なる範囲にある。
【0049】
この変法の第二の好ましい態様では、本発明の組成物は、中性コアを含み、その周りには一つの層が堆積されており、該層は、該活性成分、該POMナノ粒子、この層に粘着力を与えるバインダ及び場合により当業者には公知の様々な賦形剤、例えばスクロース、トレハロース及びマニトールを含有する。該中性コアは、それ自体が該被膜となる、セルロース又は糖又は任意の有機又は塩型の不活性な化合物の粒子であり得る。
このようにして被覆された該中性コアは、次に少なくとも1種の被膜層で被覆されて、上記のようなマイクロ粒子を形成することができる。
従って、この態様による粒子の質量基準での組成は、以下の通りである:
・該コア内の活性成分を担持するナノ粒子の質量基準での含有率は、0.1〜80質量%なる範囲、好ましくは2〜70質量%なる範囲、及びより好ましくは10〜60質量%なる範囲にある;
・該マイクロ粒子のコア内の中性コアの質量基準での含有率は、5〜50質量%なる範囲、好ましくは10〜30質量%なる範囲にある。
・該マイクロ粒子の該コア内のバインダの質量基準での含有率は、0.5〜40質量%なる範囲、好ましくは2〜25質量%なる範囲にある;
・該マイクロ粒子内の該被膜の質量基準での含有率は、5〜50質量%なる範囲、好ましくは15〜35質量%なる範囲にある。
【0050】
さらに、本発明は、上記本発明の組成物から製造した、新規な医薬、植物-保護剤、飲食物、化粧料又は特別食処方物にも係る。
本発明の組成物は、従って粉末、懸濁液、錠剤又はゼラチンカプセルの形状であり得る。
本発明の組成物は、特に医薬の製造において使用するためのものであり得る。
一変形態様によれば、本発明の組成物は、相互に、該活性成分及び/又は該活性成分と会合している該POMの特性の点で異なっている、少なくとも2種の型のナノ粒子を含むことができる。
先行する変法と組合せることのできる、さらに別の変法によれば、該ナノ粒子が、上記の如くマイクロ粒子の形態で使用される場合には、本発明の組成物は、少なくとも2種の型のマイクロ粒子を含むことができ、これら2種のマイクロ粒子は、相互に、その被覆層の性質及び/又はそこに配合された該活性成分の性質の点で異なっている。
【実施例】
【0051】
本発明を、例示の目的でのみ与えられる、以下の実施例により、さらに明確に説明する。
実施例1水性緩衝液中に分散されたパクリタキセル溶液(参照)の調製
0.49mgのパクリタキセル(バイオキセル(Bioxel))を、2Lのメスフラスコに入れる。このフラスコを、液量線まで、pH 7.0の0.05Mリン酸緩衝液で補充する。この処方物を、棒磁石を用いて、37℃にて攪拌する。37℃にて2.5時間磁気攪拌した後、幾分かの溶解されない粉末状の粒状物が残される。
この処方物を、次に周囲温度にて60分間に渡り、超音波浴内に置く。幾分かの粉末状の粒状物が、超音波処理後も依然として溶解しないまま残される。
pH 7.0の水性緩衝液に対するパクリタキセルの溶解度は、0.25μg/mL未満、即ち0.3μM/L未満である。
実施例2重合度DP=100を有し、またビタミンEで20%-グラフトされたポリグルタミン酸ナトリウムを、ポリマー濃度20mg/mLにて使用した、パクリタキセルの水性処方物の調製
処方物1
4.99mgのパクリタキセル(バイオキセル(Bioxel))を、丸薬容器(pill-box)に導入する。重合度DP=100を有し、ビタミンEで20%-グラフトされた、濃度20mg/mL、pH 7.0のポリグルタメート水性溶液10mLを添加する。この調製液を、周囲温度にて90分間に渡り、超音波浴内に置く。超音波処理後、完全に透明な溶液が得られる。
【0052】
処方物2
10.33mgのパクリタキセル(バイオキセル(Bioxel))を、丸薬容器に導入する。DP = 100を有し、ビタミンEで20%-グラフトされた、濃度20mg/mL、pH 7.0のポリグルタメートポリマー水性溶液10mLを添加する。この調製液を、周囲温度にて2.5時間に渡り、超音波浴内に置く。超音波処理後、幾分かの粉末状パクリタキセルの粒状物が溶解されずに残された。
処方物3
7mgのパクリタキセル(バイオキセル(Bioxel))を、丸薬容器に導入する。ビタミンEで20%-グラフトされた、濃度20mg/mL、pH 7.0のポリグルタメートポリマー水性溶液10mLを添加する。この調製液を、周囲温度にて2.5時間に渡り、超音波浴内に置く。超音波処理後、完全に透明な溶液が得られる。
DP = 100を有し、ビタミンEで20%-グラフトされた、ポリグルタメートを20mg/mL含有する水性溶液に対するパクリタキセルの溶解度は、約0.8mg/mL、即ちPOMポリマー1g当たりパクリタキセル47μMである。
従って、パクリタキセルの溶解度は、前記したPOMポリマー製のナノ粒子の使用により、大幅に改善される。
【0053】
実施例3DP=100及びビタミンEで20%-グラフトされたポリグルタミン酸ナトリウムを、ポリマー濃度90mg/mLで用いた、パクリタキセルの水性処方物の調製
処方物1
21.21mgのパクリタキセル(バイオキセル(Bioxel))を、丸薬容器に導入する。DP = 100を有し、ビタミンEで20%-グラフトされた、濃度90mg/mL、pH 7.0のポリグルタメートポリマー水性溶液10mLを添加する。この調製液を、周囲温度にて60分間に渡り、超音波浴内に置く。超音波処理後、完全に透明な溶液が得られる。該パクリタキセル粉末全てが、可溶化される。
処方物2
39.68mgのパクリタキセル(バイオキセル(Bioxel))を、丸薬容器に導入する。DP = 100を有し、ビタミンEで20%-グラフトされた、濃度90mg/mL、pH 7.0のポリグルタメートポリマー水性溶液10mLを添加する。この調製液を、周囲温度にて5時間に渡り、超音波浴内に置く。超音波処理後、パクリタキセル粉末の幾分かの粒状物が、溶解されずに残される。
処方物3
35.05mgのパクリタキセル(バイオキセル(Bioxel))を、丸薬容器に導入する。ビタミンEで20%-グラフトされた、濃度90mg/mL、pH 7.0のポリグルタメートポリマー水性溶液10mLを添加する。この調製液を、周囲温度にて5時間に渡り、超音波浴内に置く。超音波処理後、パクリタキセル粉末の幾分かの粒状物が、溶解されずに残される。
ビタミンEで20%-グラフトされた、ポリグルタメートを90mg/mL含有する水性溶液に対するパクリタキセルの溶解度は、3.5mg/mL〜4mg/mLなる範囲、即ちPOMポリマー1g当たりパクリタキセル49μMである。
【0054】
実施例4様々なPOMポリマーにより可溶化された、パクリタキセルの水性処方物(20g/Lのポリマーを含む処方物)の調製
本例において、使用したPOMポリマーは、DP=100を有し、様々なビタミンEによるグラフト率を持つ、ポリグルタミン酸ナトリウムである。
これら処方物の調製は、実施例2に記載の手順に基いている。該溶解度の値は、5〜10mgのパクリタキセルを、ポリマー濃度20mg/mL及びpH 7.0を持つPOMポリマーの水性溶液10mL中に溶解することを試みる、連続的な方法によって評価する。この調製物を、周囲温度にて90分間に渡り超音波浴中に入れる。次いで、この調製物を、周囲温度にて一夜攪拌状態に置く。次いで、該溶液の外観を肉眼でチェックして、該導入されたパクリタキセル粉末が、完全に溶解したか、あるいは残留パクリタキセル結晶が残されているか否かを確認する。
表1:DP=100を有し、またビタミンE(VE)による5%-20%なる範囲のグラフト化率を持つ、ポリグルタミン酸ナトリウム20g/Lを含む水性溶液に対する、pH 7.0、周囲温度での可溶化:
【0055】
【表1】

【0056】
実施例1と同様な条件下で、ポリマーを使用することなしに測定された、該活性成分の溶解度は、3×10-7M/Lである。従って、表1は、20g/Lなる濃度でのPOMポリマーの存在が、該パクリタキセルの溶解度を、該ポリマーに応じて、500〜3,000倍も高めることを可能とすることを示している。
表1の結果は、明らかにDP=100を持つポリマーに対して、最大の可溶化能が、ビタミンEによるグラフト化率15%〜20%を持つポリマーについて得られ、また結果としてこれらのポリマーに対して、可溶化活性成分の最大の量が与えられることを示している。
実施例5様々なPOMポリマーにより可溶化されたパクリタキセルの水性処方物(高濃度でポリマーを含む処方物)の調製
本例においては、使用した該POMポリマーは、重合度DP=100を持ち、様々なビタミンEによるグラフト化率を有する、ポリグルタミン酸ナトリウムである。該POMポリマー溶液は、できる限り多量の活性成分を可溶化するために、高濃度にて使用する。しかし、該溶液が、容易に取り扱い得るものであり得るためには、該溶液の粘度は、<100 mPa.s (20℃にて)なる値に維持され、従ってこのことは、該ポリマーに応じて、異なる様式で該ポリマー濃度を制限する。
【0057】
これら処方物の調製は、実施例3記載の手順に基くものである。これらの溶解度値は、5〜15mgのパクリタキセルを、POMポリマーの濃厚溶液2mL中に、pH 7.0において溶解することを試みる、連続的な方法で評価する。該調製物を周囲温度にて90分間に渡り超音波浴に入れる。不溶分が肉眼観察により確認されるほど残されている場合には、該溶液を、再度、さらに90分間に渡り、該超音波浴に入れる。次いで、該調製物を周囲温度にて一夜攪拌する。次に、該溶液の外観を肉眼観察によりチェックして、導入された該パクリタキセル粉末が完全に可溶化されたか否か、あるいは残留パクリタキセル結晶が残されているか否かを確認する。
表2:DP=100を有し、5〜30%のビタミンE(VE)によるグラフト化率を持つポリグルタミン酸ナトリウムの濃厚水性溶液による、pH=7.0、周囲温度におけるパクリタキセルの可溶化
【0058】
【表2】

【0059】
表2は、DP=100を有し、15〜20%なる範囲のビタミンEを含む該ポリマーが、許容される粘度を維持しつつ、該ポリマー濃度を実質的に高めることを可能とし、また結果として可溶化活性成分の高い濃度(>3×10-3M/L)の達成を可能とすることを示している。実施例1と同様な条件において、ポリマーの使用なしに測定した該活性成分の溶解度が、3×10-7M/L、即ち10,000倍を越えて低いことを思い起こすべきである。
実施例6DP=100を有し、またビタミンEによる20%-グラフト率を持つポリグルタミン酸ナトリウムにより可溶化した、シンバスタチン及びニフェジピンの水性処方物(20g/Lのポリマーを含む処方物)の調製
上記実施例1及び2に記載の方法に従って手順を進めて、シンバスタチン及びニフェジピンの水に対する溶解度を、先ずPOMポリマーの不在下で、次いで重合度DP=100及びビタミンEによる20%-グラフト率を持ち、濃度20g/Lに濃縮されたポリグルタメートの存在下で、pH 7.0にて測定した。結果を、以下の表3にまとめた。
表3:DP=100及びビタミンEによる20%-グラフト率を持つポリグルタメート20g/Lを含む水性溶液による、pH=7、周囲温度におけるシンバスタチン及びニフェジピンの溶解度:
【0060】
【表3】

【0061】
100なるDP、ビタミンEによるグラフト率20%を持つ該ポリグルタメートポリマーは、該比較的溶解性の低い活性成分を大幅に可溶化することに注目すべきである。また、POMポリマーのより高い濃度によって、より一層高い溶解度を得ることができることにも注目すべきである。
実施例7様々なPOMポリマーにより可溶化されたカルベジロール塩基の水性処方物(20g/Lのポリマーを含む処方物)の調製
本例において、使用する該POMポリマーは、25〜100なる範囲の重合度及び様々なビタミンEによるグラフト化率を持つポリグルタミン酸ナトリウムである。グルタメート部分が、アルギニン(カチオン性基)及びエタノールアミン(中性基)で部分的に変性されているポリマーをもテストする。
40〜50mgなる範囲のカルベジロール塩基を、15mLのファルコン管に導入する。濃度20mg/mLでpH 7.0の、濃厚POMポリマーの水性溶液5mLを、これに添加する。この調製物を、周囲温度にて90分間に渡り超音波浴内に入れる。この段階の経過後、該調製物を、9,000rpmにて30分間遠心分離処理に掛けて、あらゆる不溶性結晶を排除する。全ての場合において、得られる上澄は完全に透明である。これをpH 7.0のリン酸緩衝液で1,000倍に希釈する。可溶化カルベジロールの濃度は、UV分光分析法で測定する(測定波長240nm、また光路長1cmのセルを使用)。
表4:DP=100及びビタミンE(VE)によるグラフト化率2〜20%を持つポリグルタミン酸ナトリウム20g/Lを含む水性溶液による、pH=7.0、周囲温度におけるカルベジロール塩基の可溶化:
【0062】
【表4】

【0063】
表5:25〜100なる範囲のDP及びビタミンEによるグラフト化率10%を持つポリグルタミン酸ナトリウム20g/Lを含む水性溶液による、pH=7.0、周囲温度におけるカルベジロール塩基の可溶化:
【0064】
【表5】

【0065】
表6:DP=50及びビタミンEによるグラフト化率10%、カチオン性(アルギニン)及び場合により中性(エタノールアミン)グラフトを持つポリグルタミン酸ナトリウム20g/Lを含む水性溶液による、pH=7.0、周囲温度におけるカルベジロール塩基の可溶化:
【0066】
【表6】

【0067】
同様な実験を、ポリマーの不在下で行い、pH 7におけるカルベジロール塩基の溶解度が、1.2×10-4 M/Lであることを見出した。
このように、20mg/mLのPOMポリマーの存在下において、カルベジロール塩基の溶解度は、使用した該ポリマーに依存して約10〜100倍増大する。表4は、さらにDP=100を有し、ビタミンEでグラフトされたポリグルタミン酸ナトリウムに関連して、最大の可溶化度が、ビタミンEにより10〜20%-グラフト化されたポリグルタメートについて得られることを示している。
【0068】
実施例8様々なPOMポリマーにより可溶化されたカルベジロール塩基の水性処方物(ポリマーを高濃度で含む処方物)の調製:
本例において、使用する該POMポリマーは、重合度DP=100及び様々なビタミンEによるグラフト化率を持つポリグルタミン酸ナトリウムである。該POMポリマー溶液を高濃度にて使用して、可能な限り多量の活性成分を可溶化させる。しかし、該溶液の取扱いの容易性を保証するために、該溶液の粘度を、<100 mPa.s(20℃において)なる値に維持するが、これは結果的に、該ポリマーに依存して種々の様式で該ポリマー濃度を制限する。
50〜100mgのカルベジロール塩基を、丸薬容器に導入する。pH 7のPOMポリマーの濃厚水性溶液2mLを添加する。この調製物を周囲温度にて90分間に渡り超音波浴内に入れる。肉眼で見ることのできる不溶分が残されている場合、該溶液を、再度、さらに90分間に渡り、該超音波浴に入れる。次いで、この調製物を、周囲温度にて一夜攪拌する。前の実施例と同様に、この処方物を、次に遠心分離処理に掛け、得られる上澄を、HPLCにより分析する。
表7:DP=100、10〜20%なる範囲のビタミンE(VE)によるグラフト化率を持つポリグルタミン酸ナトリウムの濃厚水性溶液による、pH 7.0、周囲温度におけるカルベジロール塩基の可溶化:
【0069】
【表7】

【0070】
表7は、濃厚溶液としてのPOMポリマーの存在下における、可溶化された活性化成分の全濃度が、同一のpHにおける純水に対するカルベジロール塩基の溶解度(1.2×10-4 M/L)よりも大幅に高いことを示している。従って、該溶解度は、100〜1,000倍なる範囲の割合で増大する。
実施例9様々なPOMポリマーにより可溶化された、ケトコナゾールの水性処方物の製造(20g/Lのポリマーを含む処方物)
本例において、使用する該POMポリマーは、重合度100及び様々なビタミンEによるグラフト率を持つポリグルタミン酸ナトリウムである。グルタメート部分が、部分的にアルギニン(カチオン性の基)で変性されているポリマーをもテストする。
2〜40mgのケトコナゾール粉末を、15mL容量のファルコン管に導入する。pH 7.0及び20mg/mLに濃縮されたPOMポリマーの水性溶液10mLを添加する。この調製物を、周囲温度にて90分間に渡り、超音波浴内に入れる。次いで、この調製物を、周囲温度にて一夜攪拌する。次に、この溶液の外観を肉眼でチェックして、導入された該ケトコナゾール粉末が、完全に可溶化されたか否か、又は残留ケトコナゾール結晶が残されているか否かを確認する。
表8:DP=100、ビタミンE(VE)によるグラフト化率2〜20%を持つ、ポリグルタミン酸ナトリウム20g/Lを含む水性溶液による、pH=7.0、周囲温度における、ケトコナゾールの可溶化:
【0071】
【表8】

【0072】
表8は、明らかに、最大の可溶化度が、ビタミンEによるグラフト化率10〜20%のポリマーについて得られることを示している。
カチオン性ポリマーを使用して、同一のテストを実施した。
表9:DP=50、ビタミンEによるグラフト化率10%、及びカチオン性グラフト(アルギニン)を持つポリグルタミン酸ナトリウム20g/Lを含む水性溶液による、pH=7.0、周囲温度でのカルベジロールの可溶化:
【0073】
【表9】

【0074】
同様な実験を、ポリマーの不在下で行い、またpH 7.0におけるケトコナゾールの溶解度が、約2×10-5M/Lであることを見出した。
即ち、POMポリマー20mg/mLの存在下において、ケトコナゾールの溶解度は、該使用したポリマーに依存して、25〜400倍なる範囲の割合で増大する。
実施例10様々なPOMポリマーにより可溶化されたケトコナゾールの水性処方物(高濃度のポリマーを含む処方物)の調製
本例において、使用する該POMポリマーは、重合度DP=100、及び様々なビタミンEによるグラフト化率を持つポリグルタミン酸ナトリウムである。該POMポリマー溶液を、高濃度で使用して、できる限り多くの活性成分を可溶化させる。しかし、該溶液の取扱いを容易にするために、該溶液の粘度を、<100mPa.s(20℃において)なる値に維持するが、これは結果的に、該ポリマーに依存して種々の様式で該ポリマー濃度を制限する。
【0075】
10〜60mgのケトコナゾール粉末を、ガラス製の丸薬容器に導入し、pH 7.0の濃厚なPOMポリマーの水性溶液2mLを添加する。この調製物を、周囲温度にて90分間に渡り、超音波浴内に入れる。肉眼観察で不溶分が残されている場合には、該溶液を、再度、さらに90分間に渡り該超音波浴に入れる。次いで、この調製物を、周囲温度にて一夜攪拌する。次に、この溶液の外観を肉眼でチェックして、導入された該ケトコナゾール粉末が、完全に可溶化されたか否か、又は残留ケトコナゾール結晶が残されているか否かを確認する。
表10:DP=100、ビタミンE(VE)によるグラフト化率2〜30%を持つ、ポリグルタミン酸ナトリウムの濃厚水性溶液による、pH=7.0、周囲温度における、ケトコナゾールの可溶化:
【0076】
【表10】

【0077】
表10は、DP=100を有し、また15〜20%なる範囲のビタミンEを含む該ポリマーは、許容粘度を維持しつつ、該ポリマー濃度を実質的に増大することを可能とし、結果としてかなり高い可溶化された活性成分濃度(>3×10-2M/L)の達成を可能とすることを示している。前の実施例と同様な条件下で、ポリマーの使用なしに測定した該活性成分の溶解度は、2×10-5M/L、即ち1,000倍を越えて低いものであることが想起される。
実施例11様々なPOMポリマーにより可溶化されたシクロスポリン-Aの水性処方物の調製
本例において、使用する該POMポリマーは、25〜100なる範囲の重合度及び様々なビタミンEグラフト化率を持つポリグルタミン酸ナトリウムである。
40〜50mgのシクロスポリン-Aを、容量15mLのファルコン管に導入する。pH 7.0の20mg/mLに濃縮されたPOMポリマーの水性溶液5mLを添加する。この調製物を、周囲温度にて90分間に渡り、超音波浴内に入れる。次いで、この調製物を、周囲温度にて一夜攪拌する。該調製物を9,000rpmにて30分間に渡り遠心分離処理する。得られた上澄を、HPLCにより処理して、該水性溶液中のシクロスポリン-Aの濃度を測定する。
表11:DP=100、ビタミンE(VE)によるグラフト化率5〜30%を持つ、ポリグルタミン酸ナトリウム20g/Lを含有する水性溶液による、pH=7.0、周囲温度における、シクロスポリン-Aの可溶化:
【0078】
【表11】

【0079】
表12:25〜100なる範囲のDP、ビタミンE(VE)によるグラフト化率10%を持つ、ポリグルタミン酸ナトリウム20g/Lを含有する水性溶液による、pH=7.0、周囲温度における、シクロスポリン-Aの可溶化:
【0080】
【表12】

【0081】
同様な実験を、ポリマーの不在下で行い、pH 7におけるシクロスポリン-Aの溶解度は、約2.5×10-5M/Lであることが分かった。
従って、20mg/mLのPOMポリマーの存在下で、ケトコナゾールの溶解度は、約200倍だけ増大する。表11は、さらにDP=100、ビタミンEによりグラフト化されたポリグルタミン酸ナトリウムに関して、その最大の可溶化度が、10〜20%なる範囲のビタミンEによるグラフト化率に対して得られることをも示している。
実施例12様々なPOMポリマーにより可溶化されたシクロスポリン-Aの水性処方物(高濃度でポリマーを含む処方物)の調製
本例において、使用したPOMポリマーは、重合度100又は25及び変動するビタミンEによるグラフト化率を持つポリグルタミン酸ナトリウムである。該POMポリマーの溶液は、できるだけ多くの活性成分を可溶化するために、高濃度にて使用する。しかし、該溶液の取扱いを容易にするために、該溶液の粘度を、<100mPa.s(20℃において)なる値に維持するが、これは結果的に、使用する該ポリマーに依存して種々の様式で該ポリマー濃度を制限する。
【0082】
60〜100mgのシクロスポリン-A塩基を、丸薬容器に導入する。pH 7の濃厚なPOMポリマーの水性溶液2mLを添加する。この調製物を、周囲温度にて90分間に渡り超音波浴に入れる。肉眼にて見ることのできる不溶分が残されている場合には、この溶液を、再度、追加の90分間に渡り超音波浴に入れる。次いで、この調製物を、周囲温度にて一夜攪拌する。次いで、該調製物を9,000rpmにて30分間に渡り遠心分離処理する。得られた上澄を、HPLCにより処理して、該水性溶液中のシクロスポリン-Aの濃度を測定する。
表13:DP=100、ビタミンE(VE)によるグラフト化率10〜20%を持つ、ポリグルタミン酸ナトリウムの濃厚水性溶液による、pH=7.0、周囲温度における、シクロスポリン-Aの可溶化:
【0083】
【表13】

【0084】
表14:25又は100なる範囲のDP、ビタミンEによるグラフト化率20%を持つ、ポリグルタミン酸ナトリウムの濃厚水性溶液による、pH=7.0、周囲温度における、シクロスポリン-Aの可溶化:
【0085】
【表14】

【0086】
表13は、DP=100を有し、15〜20%なる範囲のビタミンEを含む上記ポリマーが、許容し得る粘度を維持しつつ、該ポリマーの濃度を実質的に高めることを可能とし、結果として可溶化された活性成分の高い濃度(>2.6×10-2M/L)の達成を可能とすることを示している。前の実施例と同様な条件下で、ポリマーの使用なしに測定した該活性成分の溶解度は、約2.5×10-5M/L、即ち1,000倍を越えて低いものであることが想起される。
実施例13濃度50mg/mLにおけるPOMポリマーの水性溶液の、10s-1なる速度勾配での、定常剪断粘度(mPa/s)の測定
全てのサンプルは、合成後の初期濃度が>50mg/mLである場合には、濃厚溶液の純水による希釈により、あるいは該溶液の初期濃度が<50mg/mLである場合には、ロータリーエバポレータにより濃縮した後に、濃度50mg/mLとなるように調製する。
これら水性ポリマー溶液の粘度を、20℃にて、径4cm及び角度1度を持つ円錐-面型の幾何形状を有する、ボーリンジェミニ(Bohlin Gemini)モデルレオメータを用いて、測定する。
表15:様々なDPを有し、ビタミンE(VE)によるグラフト化率5%の、濃度50mg/mLのポリグルタミン酸ナトリウム溶液の、(20℃にて、かつ10s-1なる剪断勾配に対して)粘度測定:
【0087】
【表15】

【0088】
これらの結果は、明らかに、ビタミンEによるグラフト化率5%に対して、DPに関して本発明によらないポリマーが、高過ぎる粘度をもたらすことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
純水に対して1g/L未満の低い水に対する溶解度を持つ少なくとも1種の活性成分を含み、該活性成分が、以下の式(I)で表される少なくとも1種のPOMポリマー又はその製薬的に許容される塩によって形成されたナノ粒子と非-共有結合的に会合した状態で存在することを特徴とする組成物:
【化1】

(I)
ここで:
・Aは以下を表し
− RNH-(式中、RはH、直鎖C2-C10アルキル基、分岐C3-C10アルキル基又はベンジル基を表す)、又は
− 以下の式で表される末端アミノ酸残基
【化2】

(式中、
- R7はOH、OR9又はNHR10であり、かつ
- R8、R9及びR10は、夫々独立にH、直鎖C2-C10 アルキル基、分岐C3-C10アルキル基又はベンジル基を表す)
・Bは直接結合、又は二価、三価又は四価の結合基であり、好ましくは以下に列挙する基から選択され:
-O-、-NH-、-N(C1-5アルキル)-、又は1〜6個の炭素原子を含むヒドロキシ酸残基、アミノ酸残基、ジオール残基、トリオール残基、ジアミン残基、トリアミン残基又はアミノアルコール残基;
・DはH、直鎖C2-C10アシル基、分岐C3-C10アシル基又はピログルタメート基を表し;
・前記疎水性の基Gの各々は、夫々独立に、以下に列挙するものから選択される基を表し:
・場合により少なくとも一つの不飽和及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはO及び/又はN及び/又はS)を含むことができる、直鎖又は分岐C8-C30アルキル基、又は
・場合により少なくとも一つの不飽和及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはO及び/又はN及び/又はS)を含むことができる、C8-C30 アルキルアリール基又はアリールアルキル基、又は
・場合により少なくとも一つの不飽和及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはO及び/又はN及び/又はS)を含むことができる、C8-C30(多)環式基;及び
好ましくは、以下に列挙する基: オクチルオキシ-、ドデシルオキシ-、テトラデシルオキシ-、ヘキサデシルオキシ-、オクタデシルオキシ-、9-オクタデセニルオキシ-、トコフェリルオキシ-又はコレステリルオキシ-から選択される基であり、従ってBは、直接結合であり;
・R1 は以下の式を持つ基から選択される基を表し:
− -NH-(CH2)w-NH3+Z-(ここで、wは2〜6なる範囲内にあり、及び好ましくは、wは4に等しい)、
− -NH-(CH2)4-NH-C(=NH)-NH3+Z-
− -O-(CH2)2-NH3+Z-
− -O-(CH2)2-N+(CH3)3Z-
− アミノ酸残基;又は
− 以下の式で表される化合物の残基:
【化3】

(式中、
Xは酸素原子又はNHであり;
R12はH、直鎖C2-C10アルキル基、分岐C3-C10アルキル基、又はベンジル基であり;
R13は-(CH2)4-NH3+Z-、-(CH2)3-NH-C(=NH)-NH3+Z-、又は-(CH2)3-NH3+Z-であり;
式中、
該対イオンZ-は、塩素、硫酸根、リン酸根、又は酢酸根、好ましくは塩素である);
・R3はヒドロキシエチルアミノ基、ジヒドロキシプロピルアミノ基、アルキレングリコール基、ポリオキシアルキレングリコール基又は以下の式で表される基を表し:
【化4】

(式中、-R10は-H、-CO2H、アルキルエステル(好ましくはCOOMe又はCOOEt)、-CH2OH、-C(=O)-NH2、-C(=O)-NH-CH3、又は-C(=O)-N(CH3)2を表す);
・nは1又は2であり;
・p、q、r及びsは正の整数であり、ここでq、r及びsは付随的にゼロであってもよく;
・(p+q+r+s)は25〜100なる範囲にあり;
・前記疎水性の基Gのモルグラフト化率:(p)/(p+q+r+s)は、5〜25%なる範囲にあり、
・該連鎖の全体としての帯電度:Q=(q-s)/(p+q+r+s)は正又は負であり得;
前記一般式Iのモノマーの連続は、ランダム、モノブロック又はマルチブロック型であり得、また
前記活性成分はPOMの少なくとも、5 μM/gなる割合で存在する。
【請求項2】
純水に対して1g/L〜30g/Lなる範囲の中程度の水に対する溶解度を持つ、少なくとも1種の活性成分を含み、該活性成分が、以下の式(I)で表される少なくとも1種のPOMポリマー又はその製薬的に許容されるその塩によって形成されたナノ粒子と非-共有結合的に会合した状態で存在することを特徴とする組成物:
【化5】

(I)
ここで:
・Aは以下を表し:
− RNH-(式中、RはH、直鎖C2-C10アルキル基、分岐C3-C10アルキル基又はベンジル基を表す)、又は
− 以下の式で表される末端アミノ酸残基:
【化6】


(式中、
R7は-OH、-OR9 又は-NHR10であり、かつ
R8、R9及びR10 は、夫々独立にH、直鎖C2-C10アルキル基、分岐C3-C10アルキル基又はベンジル基を表す);
・Bは直接結合、又は二価、三価又は四価の結合基であり、好ましくは以下に列挙する基から選択され:
-O-、-NH-、-N(C1-5アルキル)-、又は1〜6個の炭素原子を持つヒドロキシ酸残基、アミノ酸残基、ジオール残基、トリオール残基、ジアミン残基、トリアミン残基又はアミノアルコール残基;
・DはH、直鎖C2-C10アシル基、分岐C3-C10アシル基又はピログルタメート基を表し;
・前記疎水性の基Gの各々は、夫々独立に、以下に列挙するものから選択される基を表し:
・場合により少なくとも一つの不飽和及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはO及び/又はN及び/又はS)を含むことができる、直鎖又は分岐C8-C30アルキル基、又は
・場合により少なくとも一つの不飽和及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはO及び/又はN及び/又はS)を含むことができる、C8-C30アルキルアリール基又はアリールアルキル基、又は
・場合により少なくとも一つの不飽和及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはO及び/又はN及び/又はS)を含むことができる、C8-C30(多)環式基;及び
好ましくは、以下に列挙する基:オクチルオキシ-、ドデシルオキシ-、テトラデシルオキシ-、ヘキサデシルオキシ-、オクタデシルオキシ-、9-オクタデセニルオキシ-、トコフェリルオキシ-又はコレステリルオキシ-から選択される基であり、従ってBは、直接結合であり;
・R1は以下の式を持つ基から選択される基を表し:
− -NH-(CH2)w-NH3+Z-(ここで、wは2〜6なる範囲にあり、及び好ましくは、wは4に等しい)、
− -NH-CH2)4-NH-C(=NH)-NH3+Z-
− -O-(CH2)2-NH3+Z-
− -O-(CH2)2-N+(CH3)3Z-
− アミノ酸残基;又は
− 以下の式で表される化合物の残基:
【化7】


(式中、
Xは酸素原子又は-NH-であり、
R12 はH、直鎖C2-C10アルキル基、分岐C3-C10アルキル基、又はベンジル基であり;
-R13は-(CH2)4-NH3+Z-、-(CH2)3-NH-C(=NH)-NH3+Z-、又は-(CH2)3-NH3+Z-であり、
式中、
該対イオンZ-は塩素、硫酸根、リン酸根又は酢酸根であり、好ましくは塩素である);
・R3はヒドロキシエチルアミノ基-、ジヒドロキシプロピルアミノ基-、アルキレングリコール基、ポリオキシアルキレングリコール基又は以下の式で表される基を表し:
【化8】


(式中、-R10 は-H、-CO2H、アルキルエステル(好ましくは-COOMe又は -COOEt)、-CH2OH、-C(=O)-NH2、-C(=O)-NH-CH3、又は-C(=O)-N(CH3)2を表す);
・nは1又は2であり;
・p、q、r及びsは正の整数であり、ここでq、r及びsは付随的にゼロであってもよく;
・(p+q+r+s)は25〜100なる範囲にあり;
・前記疎水性の基Gのモルグラフト化率:(p)/(p+q+r+s)は5〜25%なる範囲にあり;
・該連鎖の全体的な帯電度:Q = (q-s)/(p+q+r+s)は、正又は負であり得;
前記一般式Iのモノマーの連続は、ランダムであり、また
前記活性成分は、該POMポリマーの少なくとも、5 μM/gなる割合で存在する。
【請求項3】
前記疎水性の基の少なくとも一つ及び好ましくは全てがトコフェリルオキシ基を表す、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
前記POMポリマーが、以下の式(II)で表されるポリマー又は製薬的に許容されるその塩である、請求項1〜3の何れか1項に記載の組成物:
【化9】

ここで、
− R1は水素原子、直鎖C2-C10アシル基、分岐C3-C10アシル基、ピログルタメート基又は疎水性の基Gを表し;
− R2 は-NHR5基、又は窒素によって結合し、カルボキシル基は場合によりアルキルアミノ基-NHR5又はアルコキシ基-OR6で置換されている末端アミノ酸残基を表し;
− R5は水素原子、直鎖C1-C10アルキル基、分岐C3-C10アルキル基又はベンジル基を表し;
− R6 は水素原子、直鎖C1-C10アルキル基、分岐C3-C10アルキル基、ベンジル基又は基Gを表し;
− Gはトコフェリルオキシ基を表し;
− m及びnは、正のゼロでない整数であり;
− (m+n)は25〜100なる範囲にあり;
− 前記疎水性の基Gのモルグラフト化率:(n)/(n+m)は5〜25%なる範囲にあり;
前記式IIで表される該モノマーの連続はランダムである。
【請求項5】
前記POMが、さらに少なくとも一つの、グルタメート単位に結合したポリアルキレングリコール型のグラフトをも有する、請求項1〜4の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールであり、特に1〜30%なる範囲で変動する、ポリエチレングリコールのグラフトのモル割合にて使用される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ナノ粒子のサイズが、1〜1,000nmなる範囲、特に5〜500nmなる範囲、とりわけ10〜300nmなる範囲及びより特定的には10〜100nmなる範囲にある、請求項1〜6の何れか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記活性成分が、2,000Da未満の分子量を持つ、請求項1〜7の何れか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記活性成分が、ペプチド以外の活性成分である、請求項1〜8の何れか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記活性成分が、治療剤、化粧料、予防剤又は造影剤として有益である分子である、請求項1〜9の何れか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記活性成分が、治療的に活性な成分、及び特にパクリタキセル、カルベジロール塩基、シンバスタチン、ニフェジピン、ケトコナゾール、及びシクロスポリンAから選択されるものである、請求項1〜10の何れか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、前記活性成分に関して、時間の関数として調節される放出プロフィールを与えることができるものである、請求項1〜11の何れか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記ナノ粒子が、マイクロ粒子状態に凝集されている、請求項1〜12の何れか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記活性成分と非-共有結合的に会合している前記ナノ粒子が、支持された状態で使用される、請求項1〜12の何れか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記ナノ粒子が、マイクロ粒子の状態で使用され、該マイクロ粒子が、該ナノ粒子及び前記活性成分に関する放出プロフィールを調節する少なくとも一つの被覆層を含むコアを有し、該放出プロフィールがpHの関数として調節され、該被覆層が、少なくとも1種の疎水性化合物Bと会合した、5〜7なるpH範囲内に可溶化pH値を持つ、少なくとも1種のポリマーAを含む材料により形成されている、請求項1〜12の何れか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリマーAが、メタクリル酸とメチルメタクリレートとのコポリマー、メタクリル酸とエチルアクリレートとのコポリマー、セルロース誘導体、例えばセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート又はヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、シェラックガム、ポリビニルアセテートフタレート、及びこれらの混合物から選択される、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
前記活性成分と会合している前記ナノ粒子の前記被膜が、該被膜の全質量に対して、25〜90質量%なる範囲、とりわけ30〜80質量%なる範囲、特に35〜70質量%なる範囲、あるいはさらには40〜60質量%なる範囲の前記ポリマーAを含む、請求項15又は16記載の組成物。
【請求項18】
前記疎水性化合物Bが、固体状態において結晶性であり、かつ融点Tmb ≧40℃、好ましくはTmb ≧50℃、及びさらに一層好ましくは40℃≦ Tmb ≦90℃をもつ製品から選択される請求項15〜17の何れか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記化合物Bが、以下に列挙するものから選択される請求項18記載の組成物:
− 植物ワックス;
− 単独で又は混合物として使用される水添植物油;好ましくは水添綿実油、水添大豆油、水添パーム油を含む群から選択される水添植物油;
− 単独の、グリセロールと少なくとも1種の脂肪酸、好ましくはベヘン酸とのモノ-及び/又はジ-及び/又はトリ-エステル;及び
− これらの混合物。
【請求項20】
前記化合物Bが、胃腸管液に対して不溶性のポリマーである、請求項15〜17の何れか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記ポリマーBが、以下に列挙するものから選択される請求項20記載の組成物:
− セルロースの水-不溶性誘導体、及びより特定的にはセルロースアセテートブチレート及びセルロースアセテート;
− (メタ)アクリル酸系(コ)ポリマーの水-不溶性誘導体、及びより特定的にはアンモニオ(メタ)アクリレートコポリマー、タイプ“A”又はタイプ“B”の、エチルアクリレート、メチルメタクリレート及びトリメチルアンモニオエチルメタクリレートの(コ)ポリマー、及びポリ(メタ)アクリル酸エステル。
【請求項22】
前記マイクロ粒子のサイズが、2,000 μm未満、特に100〜1,000μmなる範囲、特に100〜800μmなる範囲、及びとりわけ100〜500μmなる範囲にある、請求項13〜21の何れか1項に記載の組成物。
【請求項23】
少なくとも2種の型のナノ粒子を含み、該ナノ粒子が、前記活性成分の特性及び/又は該活性成分と会合した前記POMの特性の点で相互に異なっている、請求項1〜22の何れか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記被覆層の特性及び/又は配合された前記活性成分の性質の点で相互に異なっている、少なくとも2つの型のマイクロ粒子を含む、請求項13〜23の何れか1項に記載の組成物。
【請求項25】
粉剤又は懸濁剤の形状、又は錠剤又はゼラチンカプセル形状で処方されている、請求項1〜24の何れか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物が、医薬の調製において使用するためのものである、請求項1〜25の何れか1項に記載の組成物。
【請求項27】
第一段階において、前記POMポリマーのナノ粒子と会合している前記活性成分を放出し、次いで第二段階において、該ナノ粒子から該活性成分を解離させるのに適したものである、請求項13〜26の何れか1項に記載の組成物。
【請求項28】
活性成分と非-共有結合的に会合した、請求項1〜7、及び請求項13〜24の何れか1項に記載の、少なくとも1種のPOMポリマー製のナノ粒子の、該活性成分の水に対する溶解性を高めるための使用。

【公表番号】特表2012−514026(P2012−514026A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544070(P2011−544070)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052613
【国際公開番号】WO2010/076519
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(511025765)フラメル テクノロジーズ (6)
【Fターム(参考)】