説明

水中に良好に再分散可能なポリマー粉末の製造方法

水中に良好に再分散可能なポリマー粉末を、新規噴霧乾燥助剤の存在下での水性ポリマー分散液の噴霧乾燥によって製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、水中に良好に再分散可能なポリマー粉末を水性ポリマー分散液の噴霧乾燥によって製造する方法において、水性ポリマー分散液の噴霧乾燥を、ジヒドロキシジフェニルスルホンと、ジヒドロキシジフェニルスルホン1モル当たり0.5〜5モルの1〜6個のC原子を有する脂肪族アルデヒド及び0.4〜2モルの亜硫酸ナトリウムとを、90〜180℃の温度で反応させることにより得られた噴霧助剤Aの存在下で実施することを特徴とする方法に関する。
【0002】
更に本発明は、本発明にかかる方法により製造されたポリマー粉末並びにその使用に関する。
【0003】
多くの用途範囲において、ポリマーは、水性媒質中に簡単に導入できることが必要とする。このためには、多くの場合で、頻繁に直接に導入できるポリマー粒子の水性分散液(水性ポリマー分散液)が好適である。しかしながら、水性ポリマー分散液の欠点は、これらが60質量%までの含水率を伴い貯蔵の際に大きい容積を必要とし、かつ客への送達の際に、所望のポリマーの他に、至る所で有利に使用可能な水を、費用をかけて移送しなければならないことである。
【0004】
この問題は、とりわけ当業者に知られたラジカル的に開始される水性乳化重合によって得られる水性ポリマー分散液を、同様に当業者に知られた相応のポリマー粉末を製造する噴霧乾燥工程に付すことによってしばしば解決される。
【0005】
ポリマー粉末の使用の際に、例えば、接着剤、封止剤、合成樹脂プラスター、紙塗工剤、塗料並びにこれ以外の被覆剤中のバインダーとしてか又は無機バインダー中の添加剤として、一般的にポリマー粉末を再び水中に再分散させなければならない。これは、このポリマー粉末を水中に再分散させ、そして得られた水性ポリマー分散液を他の配合構成成分との混合に使用することによってか、又はこのポリマー粉末を他の配合構成成分と一緒に水を用いて混合することの何れかによって行うことができる。この両方の場合においては、ポリマー粉末と水とが急速に接触し、凝集が形成せずに再び元のポリマー粒子が形成することが重要である。これは、使用されるポリマー粉末の水中でのいわゆる「即時(instant)」挙動に基づくものであり、該挙動はポリマー粉末の再分散挙動及び濡れ挙動から構成される。
【0006】
この再分散挙動は、ポリマー粉末の質にとっての重要な特性である。ポリマー粉末の水中での再分散挙動が良くなればなるほど、再分散後の水性ポリマー分散液の特性が、噴霧乾燥段階前の水性ポリマー分散液の特性に近くなる。換言すれば、ポリマー粉末の再分散挙動は、元の水性ポリマー分散液及び再分散された水性ポリマー分散液の特性が一致する範囲についての尺度である。
【0007】
ポリマー粉末が更に良好な濡れ挙動をも有するのであれば、再分散の際に水性ポリマー分散液の形成を、激しい混合技術を使用せずに実施することができ、これにより実際的な利点が提供される。
【0008】
ポリマー粉末の再分散挙動は一般的に主として噴霧乾燥工程の際に使用される噴霧助剤により影響を受ける一方で、濡れ挙動はポリマー粉末粒子の表面性質により決まる。これは、しばしばポリマー粉末粒子の表面上に付着する、いわゆるブロッキング防止剤により決まる。
【0009】
水性ポリマー分散液の噴霧乾燥における多数の噴霧助剤が当業者に知られている。この例は、DE−A19629525号、DE−A19629526号、DE−A2214410号、DE−A2445813号、EP−A407889号又はEP−A784449号に見出される。
【0010】
経済的な理由から、しばしば、有利に使用できる原料を基礎に製造された噴霧助剤が使用される。この例は、スルホン化されたフェノール樹脂又はナフタレンホルムアルデヒド樹脂であり、これらは特に文献DE−A19629525号又はDE−A19629526号に開示されている。このスルホン化されたフェノール樹脂又はナフタレンホルムアルデヒド樹脂の欠点は、一般的に、これらが、これらを用いて噴霧乾燥されたポリマー粉末の黄色又は褐色への激しい変色をもたらしうることである。この変色は、これらのポリマー粉末を用いて製造された配合物、特に外部の被覆配合物の場合にも問題となり、これは配合物それ自体変色により表面化し、その際、特に日射によって増大しうる。多くのポリマー粉末用途においては、例えば、無機プラスター中のバインダー又は改質剤としての使用の場合、又は飲料水容器の裏張りの場合には、ポリマー粉末若しくはその配合物の変色は望ましいものではない。
【0011】
本発明の課題は、水性ポリマー分散液の噴霧乾燥によってポリマー粉末を製造する改善された方法を提供することである。
【0012】
驚くべきことに、目下のところ、前記課題は、冒頭に示した方法により解決されることを見出した。
【0013】
水性ポリマー分散液は、一般的に公知である。これらは、水性分散媒中の分散相として、互いに組み合わさった複数のポリマー鎖からなるポリマーコイル、いわゆるポリマーマトリックス又はポリマー粒子を分散分布させて含有する流動系である。このポリマーの質量平均粒径は、しばしば10〜1000nm、有利には50〜500nm又は100〜400nmの範囲内である。
【0014】
水性ポリマー分散液は、特にエチレン性不飽和モノマーのラジカル的に開始される水性乳化重合により得られる。この方法は、既に数多く記載されており、従って当業者には十分に知られている(例えば、ポリマーサイエンス&エンジニアリング百科事典第8巻659〜677頁、ジョン・ウィレイ&サンス株式会社、1987年(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, Vol.8, Seiten659 bis 677, John Wiley & Sons. Inc. 1987);D.C.ブラックレイ著、乳化重合155〜465頁、応用科学出版有限会社、エセックス、1975年(D.C.Blacklay, Emulsion Polymerisation, Seiten 155 bis 465, Applied Science Publischers, Ltd., Essex, 1975);D.C.ブラックレイ著、ポリマー格子第2版第1巻、33〜415頁、チャップマン&ホール社、1997年(D.C.Blacklay, Polymer Latices, 2nd Edition, Vol.1, Seiten 33 bis 415, Chapmann & Haoo, 1997);H.ワーソン著、合成樹脂エマルジョンの応用、49〜244頁、アーネスト・ベン有限会社、ロンドン、1972年(H.Warson, The Applications of Synthetic Resin Emulsions, Seiten 49 bis 244, Ernest Benn, Ltd., London, 1972);D.ディーダーリッヒ著、現代の化学、1990年、24号、135〜142頁、化学出版、ヴァインハイム(D.Diederich, Chemie in unserer Zeit, 1990,24, Seiten 135 bis 142, Verlag Chemie, Weinheim);J.ピルマ著、乳化重合1〜287頁、アカデミックプレス社、1982年(J.Piirma, Emulsion Polymerisation, Seiten 1 bis 287, Academic Press, 1982);F.ヘルシャー著、合成高分子ポリマーの分散1〜160頁、シュプリンガー出版、ベルリン、1969年(F.Hoelscher, Dispersionen synthetischer Hochpolymerer, Seiten 1 bis 160, Springer-Verlag, Berlin, 1969)及び特許文献DE−A4003422号を参照のこと)。このラジカル的に開始される水性乳化重合は、エチレン性不飽和モノマーを、しばしば分散助剤の併用下で水性媒質中に分散分布させ、そして少なくとも1種のラジカル重合開始剤を用いて重合させることによって慣用的に実施する。しばしば、得られた水性ポリマー分散液の場合、未反応モノマーの残留含量は、同様に当業者に知られている化学的及び/又は物理的方法によって減少させ(例えば、EP−A771328号、DE−A19624299号、DE−A19621027号、DE−A19741184号、DE−A19741187号、DE−A19805122号、DE−A19828183号、DE−A19839199号、DE−A−19840586号及び19847115号を参照のこと)、このポリマー固体含有率は、所望の値まで希釈若しくは濃縮することによって調節するか、又はこの水性ポリマー分散液に、更に慣用の添加物質、例えば抗菌剤若しくは消泡添加剤を添加する。しばしば、この水性ポリマー分散液のポリマー固体含有率は、30〜80質量%、40〜70質量%、又は45〜65質量%である。
【0015】
本発明にかかる方法は、特に、ポリマー粒子が、
アクリル酸及び/又はメタクリル酸と、1〜12個のC原子を有するアルカノールとのエステル及び/又はスチレン50〜99.9質量%、又は、
スチレン及び/又はブタジエン50〜99.9質量%、又は、
塩化ビニル及び/又は塩化ビニリデン50〜99.9質量%、又は、
ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、バーサチック(Versatic)酸のビニルエステル、長鎖脂肪酸のビニルエステル及び/又はエチレン40〜99.9質量%
を重合導入した形で含有する水性ポリマー分散液を用いて実施することができる。
【0016】
特に、本発明によれば、ポリマーが、
− 少なくとも1種の3〜6個のC原子を有するα,β−モノエチレン性不飽和モノ−及び/又はジカルボン酸及び/又はそのアミド0.1〜5質量%及び、
アクリル酸及び/又はメタクリル酸と、1〜12個のC原子を有するアルカノールとの少なくとも1種のエステル及び/又はスチレン50〜99.9質量%、又は、
− 少なくとも1種の3〜6個のC原子を有するα,β−モノエチレン性不飽和モノ−及び/又はジカルボン酸及び/又はそのアミド0.1〜5質量%及び、
スチレン及び/又はブタジエン50〜99.9質量%、又は、
− 少なくとも1種の3〜6個のC原子を有するα,β−モノエチレン性不飽和モノ−及び/又はジカルボン酸及び/又はそのアミド0.1〜5質量%及び、
塩化ビニル及び/又は塩化ビニリデン50〜99.9質量%、又は、
− 少なくとも1種の3〜6個のC原子を有するα,β−モノエチレン性不飽和モノ−及び/又はジカルボン酸及び/又はそのアミド0.1〜5質量%及び、
ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、バーサチック酸のビニルエステル、長鎖脂肪酸のビニルエステル及び/又はエチレン40〜99.9質量%
を重合導入した形で含有する水性ポリマー分散液を使用することができる。
【0017】
本発明によれば、ガラス転移温度が−60℃〜+150℃、しばしば−30℃〜+100℃、有利には−20℃〜+50℃であるポリマーを使用することができる。ガラス転移温度(Tg)は、ガラス転移温度の限界値を意味し、G.カニッヒ(G.Kanig)(コロイドマガジン&ポリマーマガジン第190巻1頁、方程式1(Kolloid-Zeitschrift & Zeitschrift fuer Polymer, Bd.190, Seite1, Gleichung 1))によると、このガラス転移温度は分子量の増大とともに限界値に向かう傾向にある。このガラス転移温度は、DSC法(示差走査熱量測定、20K/分、中点値測定、DIN53765)により測定する。
【0018】
フォックス(Fox)(T.G.Fox著、アメリカ物理学協会紀要1956年[II集]1、123頁(Bull. Am. Phys. Soc. 1956[Ser.II]1, Seite 123)及びウールマン工業化学百科事典第19巻第18頁、第4版、化学出版、ヴァインハイム、1980年( Ullmann's Encyclopaeder der technischen Chemie, Bd.19, Seite 18, 4. Auflage, Verlag Chemie, Weinheim, 1980))によれば、最も弱く架橋したコポリマーのガラス転移温度には、次の良好な近似:
1/Tg=x1/Tg1+x2/Tg2+....xn/Tgn
[式中、x1、x2、....xnは、モノマー1、2、....nの質量分率であり、かつTg1、Tg2、....Tgnは、それぞれモノマー1、2、....nの1つだけから構成されたポリマーのガラス転移温度(ケルビン)を意味する]が当てはまる。多くのポリマーのホモポリマーのTg値は公知であり、例えばウールマン工業化学百科事典第5集A21巻第169頁、化学出版、ヴァインハイム、1992年(Ulmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry,Bd5, Aufl. Vol A21, Seite169, Verlag Chemie, Weinheim, 1992)に記載されており、ホモポリマーのガラス転移温度についての出典は、例えばJ.ブランドララップ、E.H.イマーグート著、ポリマーハンドブック第1版、J.ウィレイ社、ニューヨーク、1966年、第2版、J.ウィレイ社、ニューヨーク、1975年及び/又は第3版、J.ウィレイ社、ニューヨーク、1989年(J.Brandrup, E.H.Immergut, Polymer Handbook, 1st Ed., J.Wiley, New York, 1966, 2nd Ed. J. Wiley, New York, 1975 und 3rd Ed.J.Wiley, New York, 1989)である。
【0019】
噴霧助剤Aは、ジヒドロキシジフェニルスルホンと、ジヒドロキシジフェニルスルホン1モル当たり0.5〜5モルの1〜6個のC原子を有する脂肪族アルデヒド及び0.4〜2モルの亜硫酸ナトリウムとを、90〜180℃の温度で反応させることによって製造する。本発明により使用される噴霧助剤Aとして使用されるジヒドロキシジフェニルスルホン反応生成物の合成は、ドイツ公開公報DE−OS10140551号(これは本出願に参照をもって開示されたものとする)に、スルホン含有タンニンの成分Bとして詳細に記載されている。
【0020】
噴霧助剤Aの製造の際には、1段階で、ジヒドロキシジフェニルスルホンと、ジヒドロキシジフェニルスルホン1モル当たり0.5〜5モル、好ましくは1〜1.4モル、特に好ましくは1.1〜1.3モル、とりわけ約1.2モルの脂肪族アルデヒド及びジヒドロキシジフェニルスルホン1モル当たり0.4〜2モル、好ましくは0.5〜0.8モル、特に好ましくは0.6〜0.7モルの亜硫酸ナトリウムとを、90〜180℃の温度で反応させる。この反応は、慣用的に、水溶液中で圧力下で実施する。この場合、例えば水溶液の形のジヒドロキシジフェニルスルホン及びアルデヒド並びに固体の亜硫酸ナトリウムを圧力反応器内に添加し、この混合物を115℃に加熱する。この反応の開始後に、温度は約150℃〜約160℃に上昇し、かつ圧力は約4バール〜約5バールに上昇する。一般的に、この反応は2〜10時間にわたって継続する。
【0021】
本発明の範囲内においては、ジヒドロキシジフェニルスルホンは、両方のヒドロキシ基が1個のフェニル基に結合した考えられる全種のジフェニルスルホンのジヒドロキシ化合物と解される。しかしながら、フェニル基1個当たりヒドロキシ基が1つずつ結合していることも考えられる。それぞれのフェニル基が1個のヒドロキシ基を含有していることが好ましい。このヒドロキシ基は、一方のフェニル基の2−、3−又は4−位並びに他方のフェニル基の2′−、3′−、4′−位に結合していてよい。特に有利には、ヒドロキシ基が、ジフェニルスルホンの2−及び4′−位にか又は4−及び4′−位に結合している。4,4′−異性体が好ましい。ジヒドロキシジフェニルスルホン混合物を使用することも可能である。しばしば、工業用4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン混合物が使用され、これは主成分としての4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホンの他に、副成分として約10〜15質量%の2,4′−異性体並びに0〜5質量%のp−フェニルスルホン酸を更に含有する。
【0022】
噴霧助剤Aの製造の際に使用される脂肪族アルデヒドは、一般的に1〜6個、好ましくは1〜4個、特に好ましくは1又は2個のC原子を有する。特に、脂肪族アルデヒドとしては、ホルムアルデヒドを、慣用的に水溶液の形で、例えば30質量%の水溶液の形で使用する。しかし、例えばアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド又はイソブチルアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール又はこれらの異性体、アルデヒド化合物並びに相応のアルデヒド混合物を使用することもできる。
【0023】
この合成から得られた噴霧助剤Aの水溶液を、≧7のpH値に調節すれば、有利である。pH値は≦10であることが有利である。しばしば、pH値は約8に調節する。pH値調節のために、当業者に知られた有機又は無機の酸又は塩基を使用することができる。
【0024】
本発明にかかる噴霧助剤Aは、この合成から得られたその水溶液の形で直接に使用することができる。この噴霧助剤Aは、噴霧助剤Aの合成から得られた水溶液の乾燥、例えば噴霧乾燥により得られた粉末の形で使用することも可能である。この噴霧助剤は、その水溶液の形で使用することが好ましい。
【0025】
噴霧助剤A(その水溶液の形並びに固体の形)は、噴霧助剤Aとは異なる少なくとも1種の他の噴霧助剤B(同様に、その水溶液の形又は固体の形)との混合物で使用できることが重要である。有利には、この噴霧助剤の合計量は、≧50質量%、≧60質量%、≧70質量%、≧80質量%又は≧90質量%だけ、しばしば更には100質量%だけ噴霧助剤Aからなる。
【0026】
噴霧助剤Bとしては、例えば、以下の公知の技術水準において開示された噴霧助剤を使用でき、これは乾燥助剤としても公知である。DE−A2049114号は、噴霧助剤としてメラミンスルホン酸とホルムアルデヒドからの縮合生成物を水性ポリマー分散液に添加することを説明している。DE−A2445813号及びEP−A78449号は、乾燥助剤として、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとからの縮合生成物(特にその水溶性アルカリ塩及び/又はアルカリ土類塩)を水性ポリマー分散液に添加することを説明している。EP−A407889号は、乾燥助剤として、フェノールスルホン酸とホルムアルデヒドとからの縮合生成物(特にその水溶性アルカリ塩及び/又はアルカリ土類塩)を水性ポリマー分散液に添加することを説明している。DE−AS2238903号及びEP−A576844号は、かかる噴霧助剤としてのポリ−N−ビニルピロリドンの使用を説明している。EP−A62106号及びEP−A601518号は、乾燥助剤としてのポリビニルアルコールの使用を説明している。ポリビニルアルコールは、U.リエツ、高分子材料の化学と技術(FHテキスト、FHアーヘン)53号(1987年)85頁(U.Rietz in Chemie und Technologie makromolekularer Stoffe (FH-Texte FH Aachen) 53 (1987) 85)により、かつEP−A680993号並びにEP−A627450号にも乾燥助剤として説明されている。DE−A3344242号においては、乾燥助剤としてリグニンスルホネートが公知である。DE−A19539460号、EP−A671435号及びEP−A629650号は、好適な水性ポリマー分散液用の乾燥助剤として2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のホモポリマー及びコポリマーを開示している。EP−A4671103号は、50〜80モル%のオレフィン性不飽和モノ−及び/又はジカルボン酸のコポリマー及び20〜50モル%のC3〜C12−アルケン及び/又はスチレンの乾燥助剤としての添加下での乾燥による、水性媒質中に再分散可能なポリマー粉末の製造に関する。DE−A2445813号は、単核又は多核の芳香族炭化水素とホルムアルデヒドとからの、スルホン基を含有する縮合生成物を乾燥助剤として説明している。DE−A4406822号においては、ポリアルキレンオキシドと不飽和モノ−/ジカルボン酸若しくはその無水物とからなり、第1級/第2級アミン又はアルコールで誘導体化した後のグラフトポリマーを、乾燥助剤として説明している。DE−A3344242号及びEP−A536597号は、デンプン及びデンプン誘導体を好適な乾燥助剤として挙げている。DE−A493168号においては、オルガノポリシロキサンが乾燥助剤として説明されている。DE−A3342242号は、更なるセルロース誘導体を好適な乾燥助剤として挙げており、DE−A4118007号は、スルホン化されたフェノール、尿素、更なる有機窒素塩基及びホルムアルデヒドからの縮合生成物を乾燥助剤として説明している。
【0027】
噴霧乾燥の前又は噴霧乾燥の間に、しかしながら特に噴霧乾燥の前に水性ポリマー分散液に添加する噴霧助剤Aの合計量(固体として算出)は、水性分散液中に含まれる噴霧乾燥されるべきポリマー100質量部に対して0.1〜40質量部、しばしば1〜25質量部、有利には5〜25質量部である。
【0028】
TIZレポート第109巻第9号、1985年、第698頁以下(TIZ-Fachberichte, Vol.109, No9, 1985, S.698.)によれば、慣用的に使用される噴霧助剤は、一般的に、水性ポリマー分散液のポリマー粉末への噴霧乾燥の際に、分散剤により囲まれた非水溶性のポリマー一次粒子が埋め込まれるマトリックスを形成する水溶性物質である。このポリマー一次粒子を包囲して保護するマトリックスは、不可逆的な二次粒子の形成を妨げる。たいていは、噴霧助剤マトリックスにより互いに分離された数多くのポリマー一次粒子を有する、二次粒子(一般的に1〜250μmの大きさの凝集体)の可逆的な形成が生ずる。本発明により得られたポリマー粒子を水で再分散させると、このマトリックスは再び溶解し、そして、分散剤により包囲された元のポリマー一次粒子が実質的に再び得られる。しばしば、ポリマー粉末の形で可逆的に形成された二次粒子に、スペーサとして機能し、例えば、このポリマー粉末の貯蔵の際に、その自重の圧力作用下で、その凝集を妨げる微細なブロッキング防止剤を添加し、その際、このブロッキング防止剤の添加は、噴霧乾燥前、噴霧乾燥の間及び/又は噴霧乾燥後に実施してよい。
【0029】
ブロッキング防止剤は、一般的に、平均粒径が0.1〜20μm、しばしば1〜10μm(ASTM C 690−1992に準拠、マルチサイザー(Multisizer)/100μmキャピラリー)の無機固体の粉末である。この無機物質は、水中での20℃での溶解度が≦50g/l、≦10g/l、又は≦5g/lであれば有利である。
【0030】
例として、ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、炭酸塩、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム又はドロマイト、硫酸塩、例えば硫酸バリウム、並びにタルク、石膏、セメント、ドロマイト、ケイ酸カルシウム又は珪藻土が挙げられる。挙げられた化合物の混合物、例えばケイ酸塩と炭酸塩とからの微細な連晶も挙げられる。
【0031】
このブロッキング防止剤は、表面特性に応じて、疎水(撥水)又は親水(吸湿)特性を有する。物質の疎水性又は親水性の尺度は、相応のブロッキング防止剤の圧縮体上の脱イオン水の液滴の接触角である。この場合、疎水性が大きければ大きいほど若しくは親水性が小さければ小さいほど、この圧縮体の表面上の水滴の接触角は大きくなり、その逆も同様である。あるブロッキング防止剤が他のブロッキング防止剤と比べて疎水性であるか又は親水性であるかを判断するためには、その両方のブロッキング防止剤の均一なふるい分級物(=粒度又は粒度分布が等しい)を製造する。粒度又は粒度分布が等しいこれらのふるい分級物から、同一条件(量、面積、圧縮圧力、温度)下で、水平面を有する圧縮体を製造する。ピペットを用いてそれぞれの圧縮体上に水滴を施与し、そしてその直後に圧縮体表面と水滴との間の接触角を測定する。圧縮体表面と水滴との間の接触角が大きければ大きいほど、疎水性が大きい若しくは親水性が小さい。しばしば、疎水性のブロッキング防止剤並びに親水性のブロッキング防止剤を両方使用する。この場合、水性ポリマー分散液の噴霧乾燥を疎水性のブロッキング防止剤の存在下で実施すること、そしてこの場合に得られたポリマー粉末を引き続いての段階で親水性のブロッキング防止剤と均一に混合すれば有利であり得る。
【0032】
本明細書中の範囲内では、親水性のブロッキング防止剤は、使用される疎水性のブロッキング防止剤と比べて親水性であるブロッキング防止剤、すなわち、その接触角が噴霧工程の際に使用される疎水性のブロッキング防止剤の接触角と比べて小さい全種のブロッキング防止剤と解される。
【0033】
しばしば、疎水性のブロッキング防止剤の接触角が≧90゜、≧100゜又は≧110゜であるのに対し、親水性のブロッキング防止剤の接触角は<90゜、≦80゜又は≦70゜である。使用される疎水性のブロッキング防止剤の接触角と、親水性のブロッキング防止剤の接触角とが、≧10゜、≧20゜、≧30゜、≧40゜、≧50゜、≧60゜、≧70゜、≧80゜又は≧90゜だけ異なれば有利である。
【0034】
親水性のブロッキング防止剤としては、例えばケイ酸、石英、ドロマイト、炭酸カルシウム、ケイ酸ナトリウム/アルミニウム、ケイ酸カルシウム又はケイ酸塩と炭酸塩とからの微細な連晶を使用し、疎水性のブロッキング防止剤としては、例えばタルク(層構造を有する含水ケイ酸マグネシウム)、クロライト(含水ケイ酸マグネシウム/アルミニウム/鉄)、オルガノクロロシランで処理されたケイ酸(DE−A3101413号)又は疎水性化合物で被覆された一般的な親水性のブロッキング防止剤、例えばステアリン酸カルシウムで被覆された沈降炭酸カルシウムを使用する。
【0035】
水性ポリマー分散液中に含まれるポリマー100質量部当たり、0.001〜10質量部、しばしば0.1〜1質量部の疎水性のブロッキング防止剤及び0.01〜30質量部、しばしば1〜10質量部の親水性のブロッキング防止剤を使用すれば、有利である。疎水性のブロッキング防止剤と、親水性のブロッキング防止剤との量の比が、0.001〜0.25:1又は0.004〜0.08:1であれば、特に有利である。
【0036】
質量平均粒度が100〜1000nm、しばしば100〜500nm(d50値、分析用超遠心分離機を用いて測定)である水性ポリマー分散液を使用し、かつ二次粒子の平均粒径(ポリマー粉末直径の平均;噴霧乾燥後にしばしば30〜150μm、有利には50〜100μm;ASTM C 690−1992に準拠し、マルチサイザー/100μm毛細管)と、疎水性並びに親水性のブロッキング防止剤の平均粒径との比が、2〜50:1又は5〜30:1である場合には、最適な結果が得られる。
【0037】
当業者に知られている噴霧乾燥は、乾燥塔中で塔頂部の噴霧ディスクを用いてか又は1若しくは2物質ノズルを用いて実施する。この水性ポリマー分散液の乾燥は、噴霧助剤A及び場合により少なくとも1種の更なる噴霧助剤Bを、高温のガス、例えば窒素又は空気を用いて事前に添加して実施し、その際、このガスは上方又は下方から、しかしながら好ましくは乾燥品と並流で上方から塔中に吹き込ませる。この乾燥ガスの温度は、塔入口では約90〜約180℃、好ましくは110〜160℃であり、かつ塔出口では約50〜約90℃、好ましくは60〜80℃である。疎水性のブロッキング防止剤は、しばしば、水性ポリマー分散液と同時に、しかし空間的に別個に乾燥塔中に投入する。この添加は、例えば、2物質ノズル又はコンベアスクリューを介して、乾燥ガスと混合させるか又は別個の開口部を介して実施する。
【0038】
乾燥塔から排出されたポリマー粉末は、20〜30℃に冷却し、かつしばしば多くの会社から提供されている市販の混合機、例えばノータ(Nauta)型混合機内で親水性のブロッキング防止剤と混合する。
【0039】
本発明により得られるポリマー粉末は、特に、接着剤、封止剤、合成樹脂プラスター、紙塗工剤、塗料並びにこれ以外の被覆剤中のバインダーとしてか又は無機バインダー中の添加剤として使用することができる。s
本発明により得られるポリマー粉末は、水中に簡単に再び再分散させることもでき、その際、ポリマー一次粒子が実質的に水中に再び得られる。
【0040】
本発明により得られるポリマー粉末は、極めて良好な貯蔵安定性及び流動性を示す。これらは、塵をほとんど出さず、かつ高度な混合を行うことなく簡単に水中に再分散できる。得られたポリマー粉末は、特に、接着剤、封止剤、合成樹脂プラスター、紙塗工剤、塗料並びにこれ以外の被覆剤中のバインダーか又は無機バインダー中の添加剤としての使用に好適である。得られたポリマー粉末が実質的に無色であり、かつそのバインダー又は添加剤としての使用の際に不所望な変色が生じないことが更に重要である。実施例
1.水性ポリマー分散液の製造
1.1 ポリマー分散液D1
重合反応器内で、
ポリマー固体含有率が0.18質量%であり、かつ質量平均粒径が30nm(d50値、分析用超遠心分離機を用いて測定)であるポリスチレンシード分散液397.2gを、撹拌しつつ、窒素雰囲気下で90℃に加熱した。次いで、90℃の内部温度を維持しつつ、この混合物に、
n−ブチルアクリレート1044.0g
スチレン362.5g
アクリルアミド29.0g
メタクリルアミド14.5g
飽和のC16〜18−脂肪アルコールを基礎とするアルキルポリエチレングリコールエーテル(エチレンオキシド[EO]度18)の10質量%水溶液[乳化剤溶液1]246.5g
C10〜16−脂肪アルコールエーテルスルフェートのNa塩(EO度30)の15質量%水溶液[乳化剤溶液2]29.0g並びに
脱イオン水359.9g
からなる水性モノマーエマルジョン並びに、ペルオキソ二硫酸ナトリウム8.4g及び脱イオン水112gからなる溶液を3時間で連続的に添加し、その際、それを同時に開始した。次いで、この反応混合物を、更に30分にわたって90℃で撹拌し、次いで60℃に冷却した。t−ブチルヒドロペルオキシド2.9gを脱イオン水26.1gに溶かした溶液を添加した後に、この温度で2時間以内に、ナトリウムヒドロキシメタンスルフィナート4.4gを脱イオン水29gに溶かした溶液を添加し、次いで更に30分にわたって撹拌した。次いで、20〜25℃(室温)に冷却し、20質量%の水性水酸化カルシウムスラリーを用いてpH値を8に調節した。固体含有率が54.9質量%であり、0.01質量%のポリマー分散液の20℃での、層厚2.5cmでの光透過率(「LD値」)が31%であるポリマー分散液が得られた。このポリマーのガラス転移温度(DSC中点)は、−15℃であった。
【0041】
固体含有率は一般的に、この水性ポリマー分散液又はこの水性噴霧助剤溶液のアリコート量を140℃で乾燥棚中で、恒量になるまで乾燥させることによって測定した。それぞれ、2回の別個の測定を実施した。それぞれの実施例中に挙げた値は、この両方の測定結果の平均値である。
【0042】
1.2 ポリマー分散液D2
水性ポリマー分散液D2の製造を、ポリマー分散液D1の製造と同様に実施したが、但し以下のモノマーエマルジョンを使用した:
2−エチルヘキシルアクリレート899.0g
スチレン507.5g
アクリルアミド29.0g
メタクリルアミド14.5g
乳化剤溶液1 246.5g
乳化剤溶液2 29.0g及び
脱イオン水359.9g。
【0043】
固体含有率が54.9質量%であり、0.01質量%のポリマー分散液の20℃での、層厚2.5cmでの光透過率(「LD値」)が21%であるポリマー分散液が得られた。このポリマーのガラス転移温度(DSC中点)は、−15℃であった。
【0044】
次いで、この水性ポリマー分散液D1及びD2の両方を、固体含有率が40質量%になるまで脱イオン水で希釈した。
【0045】
2.噴霧助剤の製造
2.1 噴霧助剤S1
噴霧助剤S1の製造を、DE−OS10140551号の実施例2(成分B)と同様に実施した。
【0046】
圧力反応器内に、室温で、脱イオン水1300kgを、60質量%水溶液としての工業用ジヒドロキシジフェニルスルホン(約85質量%の4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、約15質量%の2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン並びに少量のp−フェノールスルホン酸を含有)4100kg(9.5kモル)と一緒に装入し、そしてホルムアルデヒド30質量%水溶液1155kg(11.5kモル)並びに固体の亜硫酸ナトリウム(水不含)800kg(3kモル)を供給した。水酸化ナトリウム20質量%水溶液を少しだけ添加することによって、反応混合物のpH値を8〜8.5に調節した。次いで、この圧力反応器を閉じて、そしてこの反応混合物を撹拌しつつ115℃に加熱した。この温度で間もなく、反応が開始した。この場合、この反応混合物の温度は150〜160℃に上昇し、かつ圧力反応器内の圧力は4〜5バール(過圧)に上昇した。外部加熱により、この反応混合物の温度を160℃に維持した。この反応混合物を160℃で3時間にわたって撹拌した後に、この反応混合物を室温に冷却し、これと硫酸水素ナトリウム400kgとを混合した。得られた溶液は、固体含有率が約46質量%であった。
【0047】
2.2 比較噴霧助剤SV2
比較噴霧助剤SV2の製造を、DE−A19629525号の実施例1と同様に実施した。
【0048】
ナフタレン1.2kg(9.4モル)を、85℃で反応器中に装入し、そして撹拌しつつ冷却し、98質量%の硫酸1.18kg(11.5モル)を添加し、そうしてこの反応混合物の温度を常に150℃未満にした。硫酸の添加の完了後に、この反応混合物を5時間にわたって150℃で更に反応させた。次いで、この反応混合物を50℃に冷却し、そして50〜55℃の温度を維持しつつ、ホルムアルデヒド30質量%水溶液0.80kg(8モル)を小分けに添加した。この添加の完了後に、脱イオン水0.70kgをこの反応混合物に直ちに添加し、これを100℃に加熱し、そして5時間にわたって更に撹拌しつつこの温度で更に反応させた。次いで、この反応混合物を約65℃に冷却し、そして35質量%の水性水酸化カルシウムスラリーを、pH値が8になるまで添加した。次いで、この水性反応混合物を200μmふるい上で濾過し、そしてこの場合、固体含有率が約35質量%である比較噴霧助剤SV2の水溶液が得られた。
【0049】
2.3 比較噴霧助剤SV3
比較噴霧助剤SV3の製造を、DE−A19629526号の実施例1と同様に実施した。
【0050】
フェノール1.15kg(12モル)を、反応装置中に窒素下で60℃で装入し、そして、撹拌しつつ連続的に冷却し、98質量%の硫酸1.38kg(13.8モル)を添加し、そうしてこの反応混合物の温度を常に110℃未満にした。この添加の完了後に、この反応混合物を3時間にわたって更に撹拌しつつ、105〜110℃の温度で更に反応させた。次いで、この反応混合物を50℃に冷却し、そして撹拌しつつ50〜55℃の反応混合物温度を維持し、ホルムアルデヒド30質量%水溶液0.84kg(8.4モル)を小分けに添加した。このホルムアルデヒド添加の完了後に、脱イオン水0.75kgを直ちに添加し、この反応混合物を100℃に加熱し、そして4時間にわたって撹拌しつつ更にこの温度で放置した。次いで、この反応混合物を60℃に冷却し、そしてこの温度で更に脱イオン水0.83kgを添加した。次いで、この反応混合物を更に撹拌しつつ65℃に加熱し、そして脱イオン水中の35質量%の水酸化カルシウムのスラリーを、pH値が8になるまで添加した。このように得られた反応混合物を、室温に冷却し、そして200μmふるい上で濾過した。SV3の水溶液の固体含有率は、約35質量%であった。
【0051】
次いで、この噴霧助剤S1、SV2及びSV3の水溶液を、固体含有率が20質量%になるまで脱イオン水で希釈した。
【0052】
3.噴霧乾燥
3.1 ブロッキング防止剤
疎水性のブロッキング防止剤として、Fa.Degussa社製のSipernat(登録商標)D17を使用した。これは、比表面積(ISO5794−1に準拠、Annex D)100m2/g、平均粒度(ASTM C 690−1992に準拠)7μm及び締め固め密度(ISO787−11に準拠)150g/lであり、表面が特定のクロロシランでの処理によって疎水性化された沈降ケイ酸である。
【0053】
3.2 噴霧乾燥されたポリマー粉末の製造
噴霧乾燥を、Ga.GEA Wiegand GmbH社(Niro社の業務範囲)の小型実験室乾燥機(Minor−Labortrockner)中で、2物質ノズルによる噴霧及び布製濾過器内での粉末堆積によって実施した。窒素の塔入口温度は135℃であり、出口温度は75℃であった。噴霧材料を毎時2kgで供給した。
【0054】
この噴霧供給物を、40質量%に希釈された水性ポリマー分散液D1又はD2の5質量部に対して、20質量%に希釈された噴霧助剤S1、SV2又はSV3の水溶液1質量部を室温で添加し、そして撹拌しつつ均一に混合することによって製造した。
【0055】
この噴霧供給物と同時に、この噴霧供給物の固体含有率に対して2質量%の疎水性のブロッキング防止剤Sipernat(登録商標)D17を、噴霧塔の塔頂部内に質量制御された二軸スクリューを介して連続的に供給した。
【0056】
この水性ポリマー分散液D1及びD2からは、噴霧助剤S1の使用下で、本発明にかかるポリマー粉末P1及びP2が得られた。この水性ポリマー分散液D1からは、噴霧助剤SV2及びSV3の使用下で、比較例のポリマー粉末PV1及びPV2が得られた。この噴霧乾燥の際に得られた粉末収率を、第1表に示す。
【0057】
4.噴霧乾燥されたポリマー粉末の評価
4.1 再分散挙動
得られたポリマー粉末のそれぞれ30gを、室温で、直立の円筒体中において、脱イオン水70mlと一緒に、ウルトラツラックス(Ultra Turrax)型装置を用いて、毎分9500回転で均一に混合した。次いで、得られた水性ポリマー分散液を4時間にわたって室温で放置し、次いでこのポリマー相が水相中においてどの程度に高度に分離されたかを視覚評価した。相分離が全く観察されなかった場合には、再分散特性を「良」と評価した。相分離が見られた場合には、再分散特性を「悪」と評価した。この結果を第1表にまとめる。
【0058】
4.2 得られたポリマー粉末の視覚評価
得られたポリマー粉末の色を、視覚評価した。この場合に得られた結果を、第1表に示す。
【0059】
4.3 黄変試験
得られたポリマー粉末から、10質量%の水性ポリマー分散液(上述のポリマー粉末をウルトラツラックス型装置を用いて分散させた)約60gを、寸法7×15cmのゴム製皮膜板中に注入し、そして4日にわたって室温で乾燥させることによってポリマー皮膜を製造した。次いで、約2mmの厚さの皮膜をこのゴム製皮膜板から剥離して、そして3ヶ月にわたって実験室内で日光に曝した。この皮膜黄変の評価を、「1」は極めてわずかな黄変を意味し、かつ「6」は極めて激しい黄変を意味する評定方式により実施した。この評価の結果を、同様に第1表に示す。
【0060】
第1表:噴霧乾燥されたポリマー粉末の評価
【表1】

【0061】
この結果から明らかなように、本発明にかかる新規な噴霧助剤を用いて製造されたポリマー粉末P1及びP2を高い収率で得ることができる。この場合、これらのポリマー粉末は水中での良好な再分散性を有する。本発明により製造されたポリマー粉末P1及びP2は、技術水準から公知の噴霧助剤を用いて製造されたポリマー粉末PV1及びPV2と比較すると、全く変色しない。本発明により製造されたポリマー粉末P1及びP2は、本発明によらずに製造されたポリマー粉末PV1及びPV2と比較すると、明らかに黄変傾向が小さい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に良好に再分散可能なポリマー粉末を水性ポリマー分散液の噴霧乾燥によって製造する方法において、水性ポリマー分散液の噴霧乾燥を、ジヒドロキシジフェニルスルホンと、ジヒドロキシジフェニルスルホン1モル当たり0.5〜5モルの1〜6個のC原子を有する脂肪族アルデヒド及び0.4〜2モルの亜硫酸ナトリウムとを90〜180℃の温度で反応させることにより得られた噴霧助剤Aの存在下で実施することを特徴とする方法。
【請求項2】
ジヒドロキシジフェニルスルホンとして、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン又はそれを含有する混合物を使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ジヒドロキシジフェニルスルホンの反応を、水溶液中で圧力下で実施することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
反応後に得られた水溶液のpH値を、≧7に調節することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
噴霧助剤Aを、少なくとも1種の他の噴霧助剤Bとの混合物で使用することを特徴とする、請求項1から4までの何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
噴霧助剤の合計量が、≧50質量%だけ噴霧助剤Aからなることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ポリマー100質量部当たり0.1〜40質量部の噴霧助剤Aを使用することを特徴とする、請求項1から6までの何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
ポリマーが、
アクリル酸及び/又はメタクリル酸と、1〜12個のC原子を有するアルカノールとのエステル及び/又はスチレン50〜99.9質量%、又は、
スチレン及び/又はブタジエン50〜99.9質量%、又は、
塩化ビニル及び/又は塩化ビニリデン50〜99.9質量%、又は、
ビニルアセテート、ビニルプロピオネート及び/又はエチレン40〜99.9質量%
を重合導入した形で含有することを特徴とする、請求項1から7までの何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
ポリマーのガラス転移温度が、−60℃〜+150℃であることを特徴とする、請求項1から8までの何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
噴霧乾燥に、噴霧助剤Aの他に、少なくとも1種のブロッキング防止剤を使用することを特徴とする、請求項1から9までの何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか1項に記載の方法により得られる、ポリマー粉末。
【請求項12】
請求項11に記載のポリマー粉末を、接着剤、封止剤、合成樹脂プラスター、紙塗工剤、塗料並びにこれ以外の被覆剤中のバインダーとしてか又は無機バインダー中の添加剤として用いる使用。
【請求項13】
請求項11に記載のポリマー粉末を水性媒質中に再分散させることによって得られる、水性ポリマー分散液。
【請求項14】
ジヒドロキシジフェニルスルホンと、ジヒドロキシジフェニルスルホン1モル当たり0.5〜5モルの1〜6個のC原子を有する脂肪族アルデヒド及び0.4〜2モルの亜硫酸ナトリウムとを90〜180℃の温度で反応させることによって得られた反応生成物を、噴霧助剤として水性ポリマー分散液の噴霧乾燥の際に用いる使用。

【公表番号】特表2007−524747(P2007−524747A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500115(P2007−500115)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001675
【国際公開番号】WO2005/080478
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】