水中位置探知システム、水中位置探知システムに用いられる超音波発信手段および船側受信手段、ならびに水中位置探知方法
【課題】母船から見たダイバーの3次元的な位置を正確に把握することを可能とする水中位置探知手段を提供する。
【解決手段】水中位置探知システム11は、ダイバーA側に取り付けられる超音波発信装置12から発信される超音波20を、船S側に設けられる船側受信装置13によって受信し、水中におけるダイバーAの位置を探知するためのシステムである。ここで、船側受信装置13は、複数の超音波マイクロフォン18を有する超音波受信装置21と、発信同期信号22Sと超音波信号との間の時間差τを出力する比較装置23と、比較装置23によって出力された時間差τに基づいて、ダイバーAと超音波マイクロフォン18との間の距離Lを計算する距離演算装置24と、距離Lに基づいてダイバーAの3次元座標を計算する座標演算装置25と、ダイバーAの座標を画像に表示する画像表示装置26とを有する。
【解決手段】水中位置探知システム11は、ダイバーA側に取り付けられる超音波発信装置12から発信される超音波20を、船S側に設けられる船側受信装置13によって受信し、水中におけるダイバーAの位置を探知するためのシステムである。ここで、船側受信装置13は、複数の超音波マイクロフォン18を有する超音波受信装置21と、発信同期信号22Sと超音波信号との間の時間差τを出力する比較装置23と、比較装置23によって出力された時間差τに基づいて、ダイバーAと超音波マイクロフォン18との間の距離Lを計算する距離演算装置24と、距離Lに基づいてダイバーAの3次元座標を計算する座標演算装置25と、ダイバーAの座標を画像に表示する画像表示装置26とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中位置探知システム、水中位置探知システムに用いられる超音波発信手段および船側受信手段、ならびに水中位置探知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ダイビングは非常に人気のあるレジャースポーツとなっており、より気軽にダイビングを楽しみたいという人が多くなってきている。このような社会的背景の中で、ダイビング経験の浅い初心者ダイバーでも、より安全にダイビングを楽しむことを可能とするために、ダイバーの水中における位置を母船から監視するための水中位置探知装置が、種々開発されてきている。このような水中位置探知装置として、例えば特開2004−340883号公報(特許文献1)が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−340883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の水中位置探知装置は、ダイバーに取り付けられる超音波送信手段と、超音波送信手段から送信される超音波を受信する少なくとも3つ以上の超音波受信手段とを備え、各超音波受信手段によって受信された超音波信号を解析し、ダイバーの位置を探知する構成となっている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の水中位置探知装置においては、超音波送信手段に超音波を発信させるためのトリガー信号を、母船から送信される電磁波によって送信している。しかしながら、周知のように、電磁波は、水中における減衰が大きいため、水中の離隔した地点間における正確な通信は、困難である。
【0006】
さらに、特許文献1に記載の水中位置探知装置は、ダイバーから発せられる超音波を、「少なくとも3つ以上の超音波受信手段」で受信するものと記載されているのみであって、この超音波信号に基づいて、ダイバーの3次元的な位置を如何にして特定するかに関して、具体的な開示がされているものではない。
【0007】
すなわち、この水中位置探知装置を用いた場合においては、母船からダイバーの3次元的な位置を正確に把握し、監視することが困難であるため、ダイバーの安全を十分に確保することができなかった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題に鑑み、母船から見たダイバーの3次元的な位置を正確に把握することを可能とする水中位置探知システムを提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、水中のダイバーの3次元的な位置を正確に把握可能な水中位置探知システムに適した超音波発信手段および船側受信手段を提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、母船から見たダイバーの3次元的な位置を正確に把握することを可能とする水中位置探知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る水中位置探知システムは、ダイバー側に取り付けられる超音波発信手段から発信される超音波を、船側に設けられる船側受信手段によって受信し、水中におけるダイバーの位置を探知するためのシステムである。本発明に係る水中位置探知システムにおいては、超音波発信手段は、所定の周期で超音波を発信し、船側受信手段は、超音波を受信する複数の超音波マイクロフォンを有する超音波受信手段と、上記所定の周期と同期した発信同期信号と、それぞれの超音波マイクロフォンによって受信された超音波信号とを比較し、当該二つの信号の時間差を出力する比較手段と、比較手段によって出力された時間差に基づいて、ダイバーとそれぞれの超音波マイクロフォンとの間の距離を計算する距離演算手段と、距離演算手段によって計算された距離に基づいて、ダイバーの3次元座標を計算する座標演算手段と、座標演算手段から出力されたダイバーの座標を画像に表示する画像表示手段とを有する。
【0012】
この構成によれば、ダイバー側から発信された超音波が、超音波マイクロフォンに到達するまでの時間を、超音波の発信周期と同期した発信同期信号と、各超音波マイクロフォンによって受信された超音波信号との間の時間差を検出することによって、より正確に得ることが可能となる。すなわち、この時間差と水中音速(≒1500m/s)とに基づいて、ダイバーと各超音波マイクロフォンとの間の距離を、計算することが可能となる。これにより、超音波マイクロフォンが設置されている地点の座標と、当該地点とダイバーとの間の距離とに基づいて、ダイバーのいる地点の3次元座標を特定することが可能となる。また、このようにして得られたダイバーの3次元座標を、画像表示手段を用いて画像表示することが可能となっている。これにより、ダイバーを監視する監督人が、ダイバーの水中における位置を、母船から正確且つ容易に確認することが可能となる。したがって、ダイバーの安全を効果的に確保することができる。
【0013】
好ましくは、少なくとも三つの上記超音波マイクロフォンが、略同一平面上に配置される。さらに好ましくは、当該同一平面は、略水平面である。この構成によれば、超音波マイクロフォンが配列する当該同一水平面の下方領域に位置するダイバーの3次元座標を、より容易に特定することが可能となる。
【0014】
好ましくは、超音波発信手段は、ダイバーの水深を計測する水深計をさらに有し、水深情報を含む超音波を発信し、座標演算手段は、距離演算手段によって計算された距離と、水深情報とに基づいて、ダイバーの3次元座標を計算する。この構成によれば、ダイバーの3次元座標を特定するためのパラメータが、さらに1次元追加されることとなるため、ダイバーの位置探知の精度を向上させることができる。
【0015】
好ましくは、超音波マイクロフォンは、指向性マイクロフォンによって構成され、超音波マイクロフォンの集音領域が水中のほぼ全ての領域を包含するように、超音波マイクロフォンの集音方向が設定される。そして、座標演算手段は、距離演算手段によって計算された距離と、最も大きな音圧を計測した超音波マイクロフォンの集音方向とに基づいて、ダイバーの3次元座標を計算する。この構成によれば、母船から見たダイバーの方向を、最も大きな音圧を計測した超音波マイクロフォンが向いている方向によって特定することができるとともに、ダイバーと当該超音波マイクロフォンとの間の距離を、上記した方法によって特定することができる。これにより、ダイバーの3次元座標を、効果的に特定することが可能となる。
【0016】
本発明の他の局面として、本発明に係る超音波発信手段は、ダイバー側から発信される超音波を、船側に設けられる船側受信手段によって受信し、水中におけるダイバーの位置を探知するための水中位置探知システムに用いられる超音波発信手段である。この超音波発信手段は、ダイバーに取り付けられ、所定の周期で超音波を発信し、上記船側受信手段は、超音波を受信する複数の超音波マイクロフォンを有する超音波受信手段と、上記所定の周期と同期した発信同期信号と、それぞれの超音波マイクロフォンによって受信された超音波信号とを比較し、当該二つの信号の時間差を出力する比較手段と、比較手段によって出力された時間差に基づいて、ダイバーとそれぞれの超音波マイクロフォンとの間の距離を計算する距離演算手段と、距離演算手段によって計算された距離に基づいて、ダイバーの3次元座標を計算する座標演算手段と、座標演算手段から出力されたダイバーの座標を画像に表示する画像表示手段とを有する。
【0017】
この構成によれば、ダイバーの安全を効果的に確保することが可能な水中位置探知システムに適した超音波発信手段を、有利に提供することができる。
【0018】
本発明のさらに他の局面として、本発明に係る船側受信手段は、ダイバー側に取り付けられる超音波発信手段から所定の周期で発信される超音波を、船側に設けられる受信手段によって受信し、水中におけるダイバーの位置を探知するための水中位置探知システムに用いられる船側受信手段である。この船側受信手段は、超音波を受信する複数の超音波マイクロフォンを有する超音波受信手段と、上記所定の周期と同期した発信同期信号と、それぞれの超音波マイクロフォンによって受信された超音波信号とを比較し、当該二つの信号の時間差を出力する比較手段と、比較手段によって出力された時間差に基づいて、ダイバーとそれぞれの超音波マイクロフォンとの間の距離を計算する距離演算手段と、距離演算手段によって計算された距離に基づいて、ダイバーの3次元座標を計算する座標演算手段と、座標演算手段から出力されたダイバーの座標を画像に表示する画像表示手段とを有する。
【0019】
この構成によれば、ダイバーの安全を効果的に確保することが可能な水中位置探知システムに適した超音波受信手段を、有利に提供することができる。
【0020】
好ましくは、水中位置探知システムは、複数の超音波発信手段を備え、複数の超音波発信手段が、それぞれ異なる信号の超音波を発信することによって、複数のダイバーの位置を探知可能である。
【0021】
好ましくは、上記比較手段は、船の前方側からの超音波信号のみに関して、上記発信同期信号と比較し、当該二つの信号の時間差を出力する。この構成によれば、距離計算のための演算処理数を減じることができるため、演算処理速度を高速化することが可能となる。また、より少ない超音波マイクロフォンによってダイバーの位置を探知可能となるため、水中位置探知システムの構成をより簡略化することができる。
【0022】
本発明のさらに他の局面として、本発明に係る水中位置探知方法は、ダイバー側から発信される超音波を、船側で受信し、水中におけるダイバーの位置を探知する方法である。この水中位置探知方法は、ダイバー側から所定の周期で超音波を発信するステップと、複数の超音波マイクロフォンによって超音波を受信するステップと、上記所定の周期と同期した発信同期信号と、それぞれの超音波マイクロフォンによって受信された超音波信号とを比較し、当該二つの信号の時間差を出力するステップと、出力された時間差に基づいて、ダイバーとそれぞれの超音波マイクロフォンとの間の距離を計算するステップと、計算された距離に基づいて、ダイバーの3次元座標を計算するステップと、計算されたダイバーの3次元座標を画像に表示するステップとを備える。
【0023】
この構成によれば、ダイバーと各超音波マイクロフォンとの間の距離を正確に計算することが可能となるため、超音波マイクロフォンが設置されている地点の座標と、当該地点とダイバーとの間の距離とに基づいて、ダイバーのいる地点の3次元座標を特定することが可能となる。また、このようにして得られたダイバーの3次元座標を、画像表示手段を用いて画像表示することが可能となっている。これにより、ダイバーの監督人が、ダイバーの水中における位置を、母船から正確且つ容易に確認することが可能となる。したがって、ダイバーの安全を効果的に確保することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ダイバー側から発信された超音波が、超音波マイクロフォンに到達するまでの時間を、超音波の発信周期と同期した発信同期信号と、各超音波マイクロフォンによって受信された超音波信号との間の時間差を検出することによって、より正確に得ることが可能となる。すなわち、この時間差と水中音速値とに基づいて、ダイバーと各超音波マイクロフォンとの間の距離を、計算することが可能となる。これにより、超音波マイクロフォンが設置されている地点の座標と、当該地点とダイバーとの間の距離とに基づいて、ダイバーのいる地点の3次元座標を特定することが可能となる。また、このようにして得られたダイバーの3次元座標を、画像表示手段を用いて画像表示することが可能となっている。これにより、ダイバーを監視する監督人が、ダイバーの水中における位置を、母船から正確且つ容易に確認することが可能となる。したがって、ダイバーの安全を効果的に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る水中位置探知システムの使用状態を概略的に示す外観図である。
【図2】図1に示す水中位置探知システムを図1中の矢印IIから見た外観図である。
【図3】図1に示す船側受信装置を図1中の矢印IIIから見た拡大図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る超音波発信装置のブロック図を示す。
【図5】本発明の一実施形態に係る船側受信装置のブロック図を示す。
【図6】ダイバーと超音波マイクロフォンの座標を示す図であって、図2に対応する図である。
【図7】超音波発信器、発信同期信号出力部、および比較器における超音波信号の時間波形を示すグラフである。
【図8】本発明の一実施形態に係る水中位置探知方法のフローチャートを示す。
【図9】本発明の他の実施形態に係る水中位置探知システムを構成する超音波発信装置のブロック図を示す。
【図10】本発明のさらに他の実施形態に係る水中位置探知システムを構成する船側受信装置を示す外観図であって、図1に対応する図である。
【図11】図10に示す超音波受信装置を拡大して示す拡大図である。
【図12】単一指向性を有する超音波マイクロフォンの典型的な指向特性を示す。
【図13】本発明のさらに他の実施形態に係る船側受信装置43のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。まず、図1〜図5を用いて、本発明の一実施形態に係る水中位置探知システム11の構成について説明する。
【0027】
図1〜図5を参照して、本発明の一実施形態に係る水中位置探知システム11は、ダイビング中のダイバーAの水中における位置を、母船Sにおいて確認可能とするためのシステムである。水中位置探知システム11は、ダイバーAに取り付けられ、位置探知のための超音波20を発信する超音波発信装置12と、母船Sに設けられ、超音波発信装置12から発信された超音波20を受信する船側受信装置13とを備える。
【0028】
超音波発信装置12は、所定の周期で超音波信号を発振する超音波発振器14と、上記所定の周期を正確に維持するために超音波発振器14を制御する発振周期制御部15と、超音波発振器14によって発生された超音波信号を増幅する増幅器16と、増幅器16から出力された超音波信号を電気音響変換し、水中超音波20として放射する超音波トランスデューサ17とを有する。
【0029】
超音波発振器14は、後述するように、周期T秒の超音波信号を発振するように構成される。発振周期制御部15は、上記所定の周期を確実に維持するために、超音波発振器14の発振を制御する。増幅器16は、超音波発振器14によって生成された超音波信号を、所定の増幅率にて増幅する。この増幅率は、ダイビング範囲等を考慮し、用途に応じて適宜設定される。
【0030】
なお、超音波発振器14、発振周期制御部15、および増幅器16を、全てディジタル回路によって構成してもよい。この場合は、増幅器16の後段に、D/A変換器をさらに挿入する必要がある。
【0031】
超音波トランスデューサ17は、高音圧の水中超音波を放射可能な超音波振動子によって構成される。このような超音波振動子としては、例えば圧電型超音波振動子が挙げられる。なお、この超音波トランスデューサ17は、単体の超音波振動子によって構成されてもよいし、複数の超音波振動子を配列させた超音波振動子アレイとして構成してもよい。超音波振動子の共振周波数および周波数特性は、水中位置探知システム11の用途に応じて適宜選択される。
【0032】
船側受信装置13は、超音波発信装置12から発信された超音波20を受信する複数の超音波マイクロフォン18を有する超音波受信装置21と、上記発振周期制御部15によって制御された所定の周期と同期した発信同期信号22Sを生成する発信同期信号出力部22と、超音波マイクロフォン18によって受信された超音波信号と発信同期信号22Sとを比較し、これら二つの信号の時間差を出力する比較装置23と、比較装置23によって出力された時間差に基づいて、ダイバーAとそれぞれの超音波マイクロフォン18との間の距離を計算する距離演算装置24と、距離演算装置24によって計算された距離に基づいて、ダイバーの3次元座標を計算する座標演算装置25と、座標演算装置25から出力されたダイバーの座標を画像に表示する画像表示装置26とを有する。
【0033】
超音波受信装置21は、上記超音波マイクロフォン18と、超音波マイクロフォン18が取り付けられる基台部19とから構成されている。基台部19は、高剛性の板状部材であって、略水平となるように母船Sの底部に固定されている。本実施形態においては、計5個の超音波マイクロフォン180〜184が、基台部19の底面において、母船Sの進行方向であるX方向、および進行方向Xに直交する水平方向であるY方向に沿って十字状に配列するように取り付けられている。超音波マイクロフォン18は、例えば圧電型超音波センサから構成され、超音波トランスデューサ17の周波数特性と最も適合する感度周波数特性を有するように構成される。具体的には、超音波センサは、超音波トランスデューサ17と同じ共振周波数を有するように適宜選択される。
【0034】
発信同期信号出力部22は、発振周期制御部15によって制御された上記所定の周期と同期した発信同期信号22Sを生成する。同期の方法としては、例えば発振周期制御部15および発信同期信号出力部22に、互いに完全に同期した時計部をそれぞれ内蔵させ、発振周期制御部15が制御する上記所定の周期と、発信同期信号出力部22が発生させる発信同期信号22Sとを、時計部の時間情報に基づいて同期させる方法が挙げられる。
【0035】
比較装置23は、発信同期信号22Sを基準とし、超音波マイクロフォン18から出力された超音波信号の時間遅れを検出する。本実施形態においては、比較装置23は、超音波マイクロフォン180〜184に対応するように、5個の比較器230〜234から構成されている。これら比較器230〜234は、それぞれ発信同期信号出力部22と電気的に接続されており、比較の基準となる発信同期信号22Sを受け取る構成となっている。すなわち、比較器230〜234は、発信同期信号22Sと、対応する各超音波マイクロフォン180〜184に到達した超音波20との時間差を検出し、距離演算装置24に時間差情報を出力する。
【0036】
なお、超音波マイクロフォン18の後段にA/D変換器をさらに設け、発信同期信号出力部22および比較装置23を全てディジタル回路によって構成し、ディジタル信号処理により上記時間差情報を出力してもよい。
【0037】
距離演算装置24は、比較装置23によって出力された時間差情報に基づいて、ダイバーAと超音波マイクロフォン18との間の距離を計算する。具体的には、距離演算装置24は、比較器230〜234から出力された上記時間差、すなわち、超音波トランスデューサ17から超音波20が発信され、それぞれの超音波マイクロフォン180〜184に到達するまでに要した時間τ0〜τ4と、水中音速値(≒1500m/s)とに基づいて、ダイバーAと超音波マイクロフォン180〜184との間の距離を計算する。そして、計算の結果得られた距離情報を、座標演算装置25に出力する。
【0038】
座標演算装置25は、距離演算装置24によって得られた距離情報に基づいて、ダイバーAの3次元座標を計算する。なお、距離演算装置24および座標演算装置25における具体的な演算処理については後述する。距離演算装置24および座標演算装置25は、高速演算可能となるようにCPUによって構成される。そして、計算により得られたダイバーAの座標を、画像表示装置26へと出力する。
【0039】
画像表示装置26は、座標演算装置25から出力されたダイバーAの座標を画面上にプロットする。画像表示装置26としては、液晶ディスプレイやCRT等の一般的なディスプレイ装置を適用可能である。
【0040】
次に、図1〜図2、および図6を用いて、ダイビング中のダイバーAの位置と、超音波マイクロフォン18の位置との関係性について説明する。図6は、ダイバーAと超音波マイクロフォン18の座標を示す図であって、図2に対応する図である。なお、図6においては、理解の容易の観点から、超音波受信装置21を拡大して示している。また、以下の説明においては、超音波マイクロフォン180の位置を原点O(0,0,0)とし、母船Sの進行方向であるX方向、進行方向Xに直交する水平方向であるY方向、海の深さ方向であるZ方向を基準として、座標(X,Y,Z)を規定するものとする。
【0041】
図1〜図2、および図6を参照して、図示する使用状態においては、ダイバーAは、座標α(x,y,z)の位置でダイビングをしている。この場合、超音波マイクロフォン180の位置、すなわち原点Oから、ダイバーAまでの距離L0は、以下の数式1に表わされる。
【0042】
【数1】
【0043】
一方、上記したように、5個の超音波マイクロフォン18は、水平に配置された基台部19に取り付けられていることから、超音波マイクロフォン181の座標Pを(x0,0,0)、超音波マイクロフォン182の座標Qを(0,y0,0)と近似することができる(x0,y0は任意の定数)。
【0044】
これにより、超音波マイクロフォン181からダイバーAまでの距離L1は、以下の数式2として表される。
【0045】
【数2】
【0046】
また、超音波マイクロフォン182からダイバーAまでの距離L2は、以下の数式3として表される。
【0047】
【数3】
【0048】
上記数式1〜数式3より、ダイバーAの座標α(x,y,z)は、x0,y0,L0〜L2を用いて、以下の数式4〜数式6に示すようにそれぞれ求められる。
【0049】
【数4】
【0050】
【数5】
【0051】
【数6】
【0052】
すなわち、ダイバーAの水中における位置は、超音波マイクロフォン180,181,182の座標を基準とし、ダイバーAから超音波マイクロフォン180〜182までの距離L0〜L2に基づいて求めることができる。
【0053】
なお、本説明においては、理解の容易の観点から、超音波マイクロフォン180,181,182を基準として座標α(x,y,z)を求める場合について説明をしたが、超音波マイクロフォン183、184の座標およびダイバーAまでの距離L3〜L4のパラメータをさらに追加して、座標α(x,y,z)を計算することも可能である。このように、超音波マイクロフォン18の数量を増加させ、座標α(x,y,z)を計算するためのパラメータを増やすことによって、より高精度な位置探知を行うことができる反面、演算処理量が増大することとなるため、処理速度の低下に繋がることも考えられる。したがって、好ましくは、超音波受信装置21は、水中位置探知システム11の用途に応じて、距離Lnの計算に用いる超音波マイクロフォン18の数量を変更可能となるように構成される。
【0054】
また、超音波マイクロフォン18の座標は、実際上、船の揺れ等によって常に変動することとなる。したがって、GPS(Global Positioning System)を用いて超音波マイクロフォン18の絶対的な位置を記録し、これら位置情報に基づいて上記距離Lnを計算する構成であってもよい。
【0055】
次に、図1〜図8を用いて、本実施形態に係る水中位置探知システム11の具体的な動作について詳細に説明する。図7は、超音波発信器14、発信同期信号出力部22、および比較器231〜234における超音波信号の時間波形を示すグラフである。図8は、本実施形態に係る水中位置探知システム11における水中位置探知方法のフローチャートを示す。なお、図7においては、理解の容易の観点から、超音波信号をパルスとして示しているが、上記超音波トランスデューサ17の共振周波数に相当する超音波のON/OFF信号等によって構成してもよい。
【0056】
図1〜図8を参照して、ダイバーAに取り付けられた超音波発信装置12において、超音波発振器14が所定の周期Tの超音波信号を生成し、増幅器16および超音波トランスデューサ17を介して水中に超音波20を発信する(ステップA)。
【0057】
超音波発信装置12から発信された超音波20は、超音波マイクロフォン180〜184によって受信され、電気的な超音波信号として、それぞれの超音波マイクロフォン180〜184に対応する比較器230〜234へと出力される(ステップB)。
【0058】
比較器230〜234に入力された各超音波信号は、発信同期信号出力部22から送られる発信同期信号22Sと比較され、当該二つの信号の時間差τが検出される(ステップC)。より具体的には、図7に示すように、比較器231においては、発信同期信号22Sと超音波マイクロフォン181によって受信された超音波信号との間の時間差τ1が検出される。同様にして、比較器232においては超音波マイクロフォン182によって受信された超音波信号との時間差τ2、比較器230においては超音波マイクロフォン180によって受信された超音波信号との時間差τ0、比較器233においては超音波マイクロフォン183によって受信された超音波信号との時間差τ3、比較器234においては超音波マイクロフォン184によって受信された超音波信号との時間差τ4が、それぞれ検出される。そして、時間差τ0〜τ4に関する情報が、距離演算装置24に出力される。
【0059】
次いで、距離演算装置24において、それぞれの比較器230〜234から出力された時間差τ0〜τ4に基づいて、ダイバーAとそれぞれの超音波マイクロフォン180〜184との間の距離を計算する(ステップD)。ここで、上記したように、超音波発振器14により生成される超音波信号と、発信同期信号22Sとは、完全に同期している。したがって、入力された時間差τ0〜τ4は、超音波発信装置12から発信された超音波20が各超音波マイクロフォン180〜184に到達するまでに要した時間とほぼ同一であるとみなすことができる。これにより、ダイバーAから超音波マイクロフォン180までの距離L0は、L0=τ0×c(水中音速値≒1500m/s)として求めることができる。同様に、L1=τ1×c,L2=τ2×c,L3=τ3×c,L4=τ4×cとして、それぞれ求めることができる。これら距離L0〜L4に関する情報が、座標演算装置25に出力される。
【0060】
次いで、座標演算装置25において、上記数式4〜数式6に示した方法によって、ダイバーAの3次元座標(x,y,z)が、予め記憶された超音波マイクロフォン180〜184の座標情報と、入力された距離L0〜L4の情報とに基づいて計算される。そして、ダイバーAの3次元座標(x,y,z)に関する情報を、画像表示装置26に出力する(ステップE)。
【0061】
次いで、画像表示装置26の画面上に、ダイバーAの3次元座標(x,y,z)をプロットし、母船Sから見たダイバーAの位置を画像に表示する(ステップF)。このとき、視認性の観点から、ダイバーAの位置が、3次元的に表示されることが好ましい。
【0062】
このように、本実施形態に係る水中位置探知システム11によれば、母船Sにいる監督人が、ダイバーAの水中における位置を、正確且つ容易に確認することが可能となる。したがって、ダイバーAが、誤って母船から遠くに流されてしまいそうになった場合、監督人が迅速に対処することができるようになるため、ダイバーの安全を効果的に確保することができる。
【0063】
なお、本実施形態においては、超音波発信装置12から発信された超音波20が各超音波マイクロフォン18に到達するまでに要した時間τを、発信同期信号出力部22により生成された発振同期信号22Sと、超音波マイクロフォン18によって受信された超音波信号とを比較することによって検出する場合について述べた。しかしながら、これに限らず、超音波発信装置12が、超音波を発信した時刻を記録し、その情報を発信同期信号として超音波信号に包含させる構成としてもよい。発信同期信号を超音波信号に包含させる方法としては、例えば、搬送波を発信同期信号によって変調することが考えられる。この場合においては、船側受信装置13が超音波を受信した時刻を記録する計時部を、船側受信装置13にさらに設け、受信した発信同期信号に含まれる超音波発信時刻と、超音波受信時刻とを比較することによって、上記時間τを検出することができる。
【0064】
また、上記周期Tは、ダイビングする範囲に応じて適宜設定される構成としてもよい。すなわち、図7に示すτ1〜τ4を正確に検出するためには、周期Tの間に超音波マイクロフォン180〜184によって超音波20が検出される必要がある。ここで、水中音速cは、約1500m/sである。したがって、周期Tは、ダイビング範囲と水中音速cとを考慮し、周期Tの間に超音波20が検出されるように適宜設定可能とすることが望ましい。
【0065】
また、本実施形態においては、理解の容易の観点から、ダイバーが一人である場合について説明したが、複数のダイバーにそれぞれ超音波発信装置を取り付け、複数のダイバーの位置を探知することも可能である。この場合は、複数の超音波発信装置12が、それぞれ異なる信号の超音波を発信することによって、複数のダイバーの位置を探知することができる。異なる信号の超音波の実施例としては、発振する周波数をそれぞれ異ならせることや、矩形波、三角波、正弦波のように、それぞれ異なる波形の信号を発信すること等、様々な形態が考えられる。
【0066】
好ましくは、比較装置23は、船の前方側からの超音波信号のみに関して、上記発信同期信号22Sと比較し、当該二つの信号の時間差を出力する。この構成によれば、距離計算のための演算処理数を減じることができるため、演算処理速度を高速化することが可能となる。また、より少ない超音波マイクロフォン18によってダイバーの位置を探知可能となるため、水中位置探知システム11の構成をより簡略化することができる。すなわち、水中位置探知システム11の製造コストを低減することができる。船の前方側からの超音波信号のみを検知する手段としては、超音波マイクロフォン181によって受信された超音波と、超音波マイクロフォン184とによって受信された超音波との時間差を、比較装置23において検出することによって実現可能である。そして、比較装置23から、船Sの前方側からの超音波信号のみに係る時間差情報を出力することによって、演算処理数を減じることが可能である。
【0067】
また、適用する超音波マイクロフォンを二つとし、上記ダイバーAの二次元座標(x,y)のみを計算するように構成してもよい。これにより、水中位置探知システム11の構成をさらに簡略化することができるため、水中位置探知システム11の製造コストをより低減することができる。
【0068】
また、本実施形態においては、基台部19が略水平に設けられている場合について述べたが、これに限らず、傾斜して設けられていてもよい。また、超音波マイクロフォン18が、十字状に配列するように取り付けられている場合について述べたが、これに限らず、超音波マイクロフォン18は、基台部19の如何なる位置に取り付けられていてもよい。
【0069】
次に、図9を用いて、本発明の他の実施形態に係る水中位置探知システム31について説明する。図9は、本発明の他の実施形態に係る水中位置探知システム31を構成する超音波発信装置32のブロック図を示す。なお、上記の実施形態と同様の部材については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0070】
図9を参照して、本発明の他の実施形態に係る水中位置探知システム31は、ダイバーAに取り付けられる超音波発信装置32と、図1に示す船側受信装置13とを備える。
【0071】
超音波発信装置32は、上記実施形態に係る超音波発振器14、発振周期制御部15、増幅器16、および超音波トランスデューサ17に加えて、ダイバーAの位置の水深を計測することが可能な水深計33と、超音波発振器14から出力された超音波信号を、水深計33によって計測された水深情報を含む信号によって変調する変調器34とをさらに有する。
【0072】
本実施形態においては、上記のように、水深計33によってダイバーAの位置の水深が計測される。そして、水深計33より水深情報信号が出力され、変調器34に送られる。次いで、変調器34において、超音波発振器14から出力された超音波信号が、水深情報信号によって変調され、超音波信号に水深情報信号が包含される。このように変調された超音波信号は、増幅器16および超音波トランスデューサ17を介して、水中超音波20として放射される。
【0073】
船側受信装置13に受信された超音波信号は、上記実施形態と同様に、比較装置23を介して時間差τ0〜τ4が検出される。ここで、本実施形態に係る比較装置23は、受信した超音波信号に含まれる水深情報信号を復調する復調部(図示せず)をさらに有する。そして、この復調部によって超音波信号から水深情報を取り出し、上記時間差τ0〜τ4の情報とともに、距離演算装置24へと出力される。
【0074】
距離演算装置24において距離L0〜L4が計算され、上記水深情報とともに座標演算装置25へと送信される。そして、座標演算装置25において、ダイバーAの3次元座標(x,y,z)を、超音波マイクロフォン180〜184の座標情報と、入力された距離L0〜L4の情報と、上記水深情報とに基づいて計算する。このようにして得られたダイバーAの3次元座標(x,y,z)が、画像表示装置26に出力される。
【0075】
このように、本実施形態によれば、ダイバーAの3次元座標(x,y,z)を計算するに際し、距離L0〜L4に加えて、ダイバーAの水深情報に基づいて3次元座標(x,y,z)を計算することが可能となる。すなわち、ダイバーAの3次元座標(x,y,z)を特定するためのパラメータが、さらに1次元追加されることとなるため、ダイバーAの位置探知の精度を、より向上させることができる。また、座標計算のためのパラメータが1次元追加されることによって、より少ない超音波マイクロフォン18によってダイバーAの位置探知を行うことが可能となる。
【0076】
なお、上記変調器における変調方式は、アナログ変調、ディジタル変調、PWM変調のいずれであってもよい。また、変調方式としては、AM変調、FM変調、PM変調、PWM、ASK、PSK、QAM等の如何なる変調方式であってもよい。
【0077】
また、本実施形態においては、上記水深情報を、変調によって超音波信号に包含させる方法について説明したが、これに限らず、その他如何なる方法によって水深情報を超音波信号に包含させてもよい。
【0078】
また、本実施形態においては、超音波発振器14が、周期T秒の超音波信号を発振するように構成された場合について述べたが、これに限らず、任意波形信号を周期的にON/OFFするような構成であってもよい。
【0079】
次に、図10〜図13を用いて、本発明のさらに他の実施形態に係る水中位置探知システム41について説明する。図10は、本発明のさらに他の実施形態に係る水中位置探知システム41を構成する船側受信装置43を示す外観図であって、図1に対応する図である。図11は、図10に示す超音波受信装置42を拡大して示す拡大図である。図12は、単一指向性を有する超音波マイクロフォンの典型的な指向特性を示す。図13は、本発明のさらに他の実施形態に係る船側受信装置43のブロック図を示す。なお、上記の実施形態と同様の部材については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0080】
図10〜図13を参照して、本発明の他の実施形態に係る水中位置探知システム41は、図1に示す超音波発信装置12と、母船Sに設けられる船側受信装置43とを備える。
【0081】
船側受信装置43は、複数の超音波マイクロフォン48を有する超音波受信装置42と、上記実施形態に係る発信同期信号出力部22、距離演算装置24、座標演算装置25、および画像表示装置26と、発信同期信号22Sと受信した超音波信号との間の時間差とともに、超音波信号の振幅を検出可能な比較装置53とを備える。
【0082】
本実施形態に係る超音波受信装置42は、n個の超音波マイクロフォン480〜48nと、超音波マイクロフォン480〜48nが取り付けられた基台部49とから構成されている。基台部49は、半球形状の高剛性部材であって、母船Sの底部に固定されている。基台部49の表面上には、複数の超音波マイクロフォン48が、等間隔に配列するように取り付けられている。
【0083】
ここで、本実施形態に係る超音波マイクロフォン48としては、比較的に鋭い単一指向性を有する超音波センサによって構成される。ここで、このような単一指向性マイクロフォンの指向特性について簡単に説明する。単一指向性を有するマイクロフォンは、図12に示すように、マイクロフォンの正面方向F(集音方向)の領域の感度が特に高くなっており、F方向からずれていくにつれて、感度Eが急激に減衰する特性を有するものである。すなわち、このような指向特性を有する超音波マイクロフォン48は、集音方向に相当する領域の超音波を高感度で集音することが可能である。
【0084】
ここで、超音波マイクロフォン48の数量および集音方向は、超音波マイクロフォン48の合成集音領域がダイビング領域を全て包含するように、適宜設定される。この構成によれば、母船Sから見たダイバーAの方向を、最も大きな音圧を計測した超音波マイクロフォンが向いている方向によって特定することができる。すなわち、図11に示すように、例えば超音波マイクロフォン48nが、ダイバーAから発信された超音波を最も高感度で計測した場合においては、超音波マイクロフォン48aの集音方向Dnによって、ダイバーAの方向をある程度特定することが可能となる。
【0085】
本実施形態に係る比較装置53は、超音波マイクロフォン480〜48nに対応するように、n個の比較器530〜53nから構成され、それぞれの比較器には、超音波マイクロフォン48から入力された超音波信号の振幅を検出可能な振幅検出部が設けられている。比較装置53は、発信同期信号22Sと、受信した超音波信号との間の時間差τとともに、振幅検出部によって当該超音波信号の振幅を検出し、それらの情報を距離演算装置24へと出力する。
【0086】
以下、本実施形態に係る水中位置探知システム41の動作について説明する。超音波マイクロフォン480〜48nによって受信された超音波信号は、上記実施形態と同様に、それぞれの超音波マイクロフォンに対応する比較器530〜53nに出力される。そして、比較器530〜53nにおいて、発信同期信号22Sと、対応する各超音波マイクロフォン480〜48nから出力された超音波信号との時間差τ0〜τnを検出する。これとともに、振幅検出部によって、それぞれの超音波信号の振幅a1〜anを検出する。このようにして得られた時間差τ0〜τnおよび振幅a1〜anに係る情報が、距離演算装置24へと出力される。
【0087】
距離演算装置24において、時間差τ0〜τnに基づいて距離L0〜Lnが計算される。それとともに、上記振幅a1〜anが比較され、最も大きい振幅が検出された超音波マイクロフォン48nが特定される。このようにして得られた超音波マイクロフォン48nの集音方向Dnおよび距離L0〜Lnに係る情報とが、座標演算装置25へと出力される。
【0088】
そして、座標演算装置25において、ダイバーAの3次元座標(x,y,z)が、超音波マイクロフォン48nの集音方向Dnと、その超音波マイクロフォン48nとダイバーAとの間の距離Lnとに基づいて計算される。このようにして得られたダイバーAの3次元座標(x,y,z)が、画像表示装置26に出力され、画像表示される。
【0089】
本実施形態によれば、母船Sから見たダイバーAの地点の方向を、最も大きな音圧を計測した超音波マイクロフォン48nが向いている方向Dnによって特定することができるとともに、ダイバーAと当該超音波マイクロフォン48nとの間の距離Lnを、上記した方法によって特定することができる。これにより、ダイバーの3次元座標(x,y,z)を効果的に特定することが可能となる。
【0090】
なお、本実施形態においては、超音波マイクロフォン48が、半球形状の基台部49の表面上に取り付けられている場合について述べたが、これに限らず、超音波マイクロフォン48の集音領域がダイバーAのダイビング領域を包含する配置であれば、基台部は、如何なる形状であってもよい。
【0091】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、ダイバーの水中における位置を母船から確実に探知することができる水中位置探知システムを提供するものであって、ダイビング装置に係る産業に広く利用される。
【符号の説明】
【0093】
11,31,41 水中位置探知システム、12,32 超音波発信装置、13,43 船側受信装置、14 超音波発振器、15 発振周期制御部、16 増幅器、17 超音波トランスデューサ、18,180,181,182,183,184,48,48a,48n 超音波マイクロフォン、19,49 基台部、20 超音波、21,42 超音波受信装置、22 発信同期信号出力部、22S 発信同期信号、23,53 比較装置、230,231,232,233,234,530,531,53n 比較器、24 距離演算装置、25 座標演算装置、26 画像表示装置、33 水深計、34 変調器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中位置探知システム、水中位置探知システムに用いられる超音波発信手段および船側受信手段、ならびに水中位置探知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ダイビングは非常に人気のあるレジャースポーツとなっており、より気軽にダイビングを楽しみたいという人が多くなってきている。このような社会的背景の中で、ダイビング経験の浅い初心者ダイバーでも、より安全にダイビングを楽しむことを可能とするために、ダイバーの水中における位置を母船から監視するための水中位置探知装置が、種々開発されてきている。このような水中位置探知装置として、例えば特開2004−340883号公報(特許文献1)が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−340883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の水中位置探知装置は、ダイバーに取り付けられる超音波送信手段と、超音波送信手段から送信される超音波を受信する少なくとも3つ以上の超音波受信手段とを備え、各超音波受信手段によって受信された超音波信号を解析し、ダイバーの位置を探知する構成となっている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の水中位置探知装置においては、超音波送信手段に超音波を発信させるためのトリガー信号を、母船から送信される電磁波によって送信している。しかしながら、周知のように、電磁波は、水中における減衰が大きいため、水中の離隔した地点間における正確な通信は、困難である。
【0006】
さらに、特許文献1に記載の水中位置探知装置は、ダイバーから発せられる超音波を、「少なくとも3つ以上の超音波受信手段」で受信するものと記載されているのみであって、この超音波信号に基づいて、ダイバーの3次元的な位置を如何にして特定するかに関して、具体的な開示がされているものではない。
【0007】
すなわち、この水中位置探知装置を用いた場合においては、母船からダイバーの3次元的な位置を正確に把握し、監視することが困難であるため、ダイバーの安全を十分に確保することができなかった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題に鑑み、母船から見たダイバーの3次元的な位置を正確に把握することを可能とする水中位置探知システムを提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、水中のダイバーの3次元的な位置を正確に把握可能な水中位置探知システムに適した超音波発信手段および船側受信手段を提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、母船から見たダイバーの3次元的な位置を正確に把握することを可能とする水中位置探知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る水中位置探知システムは、ダイバー側に取り付けられる超音波発信手段から発信される超音波を、船側に設けられる船側受信手段によって受信し、水中におけるダイバーの位置を探知するためのシステムである。本発明に係る水中位置探知システムにおいては、超音波発信手段は、所定の周期で超音波を発信し、船側受信手段は、超音波を受信する複数の超音波マイクロフォンを有する超音波受信手段と、上記所定の周期と同期した発信同期信号と、それぞれの超音波マイクロフォンによって受信された超音波信号とを比較し、当該二つの信号の時間差を出力する比較手段と、比較手段によって出力された時間差に基づいて、ダイバーとそれぞれの超音波マイクロフォンとの間の距離を計算する距離演算手段と、距離演算手段によって計算された距離に基づいて、ダイバーの3次元座標を計算する座標演算手段と、座標演算手段から出力されたダイバーの座標を画像に表示する画像表示手段とを有する。
【0012】
この構成によれば、ダイバー側から発信された超音波が、超音波マイクロフォンに到達するまでの時間を、超音波の発信周期と同期した発信同期信号と、各超音波マイクロフォンによって受信された超音波信号との間の時間差を検出することによって、より正確に得ることが可能となる。すなわち、この時間差と水中音速(≒1500m/s)とに基づいて、ダイバーと各超音波マイクロフォンとの間の距離を、計算することが可能となる。これにより、超音波マイクロフォンが設置されている地点の座標と、当該地点とダイバーとの間の距離とに基づいて、ダイバーのいる地点の3次元座標を特定することが可能となる。また、このようにして得られたダイバーの3次元座標を、画像表示手段を用いて画像表示することが可能となっている。これにより、ダイバーを監視する監督人が、ダイバーの水中における位置を、母船から正確且つ容易に確認することが可能となる。したがって、ダイバーの安全を効果的に確保することができる。
【0013】
好ましくは、少なくとも三つの上記超音波マイクロフォンが、略同一平面上に配置される。さらに好ましくは、当該同一平面は、略水平面である。この構成によれば、超音波マイクロフォンが配列する当該同一水平面の下方領域に位置するダイバーの3次元座標を、より容易に特定することが可能となる。
【0014】
好ましくは、超音波発信手段は、ダイバーの水深を計測する水深計をさらに有し、水深情報を含む超音波を発信し、座標演算手段は、距離演算手段によって計算された距離と、水深情報とに基づいて、ダイバーの3次元座標を計算する。この構成によれば、ダイバーの3次元座標を特定するためのパラメータが、さらに1次元追加されることとなるため、ダイバーの位置探知の精度を向上させることができる。
【0015】
好ましくは、超音波マイクロフォンは、指向性マイクロフォンによって構成され、超音波マイクロフォンの集音領域が水中のほぼ全ての領域を包含するように、超音波マイクロフォンの集音方向が設定される。そして、座標演算手段は、距離演算手段によって計算された距離と、最も大きな音圧を計測した超音波マイクロフォンの集音方向とに基づいて、ダイバーの3次元座標を計算する。この構成によれば、母船から見たダイバーの方向を、最も大きな音圧を計測した超音波マイクロフォンが向いている方向によって特定することができるとともに、ダイバーと当該超音波マイクロフォンとの間の距離を、上記した方法によって特定することができる。これにより、ダイバーの3次元座標を、効果的に特定することが可能となる。
【0016】
本発明の他の局面として、本発明に係る超音波発信手段は、ダイバー側から発信される超音波を、船側に設けられる船側受信手段によって受信し、水中におけるダイバーの位置を探知するための水中位置探知システムに用いられる超音波発信手段である。この超音波発信手段は、ダイバーに取り付けられ、所定の周期で超音波を発信し、上記船側受信手段は、超音波を受信する複数の超音波マイクロフォンを有する超音波受信手段と、上記所定の周期と同期した発信同期信号と、それぞれの超音波マイクロフォンによって受信された超音波信号とを比較し、当該二つの信号の時間差を出力する比較手段と、比較手段によって出力された時間差に基づいて、ダイバーとそれぞれの超音波マイクロフォンとの間の距離を計算する距離演算手段と、距離演算手段によって計算された距離に基づいて、ダイバーの3次元座標を計算する座標演算手段と、座標演算手段から出力されたダイバーの座標を画像に表示する画像表示手段とを有する。
【0017】
この構成によれば、ダイバーの安全を効果的に確保することが可能な水中位置探知システムに適した超音波発信手段を、有利に提供することができる。
【0018】
本発明のさらに他の局面として、本発明に係る船側受信手段は、ダイバー側に取り付けられる超音波発信手段から所定の周期で発信される超音波を、船側に設けられる受信手段によって受信し、水中におけるダイバーの位置を探知するための水中位置探知システムに用いられる船側受信手段である。この船側受信手段は、超音波を受信する複数の超音波マイクロフォンを有する超音波受信手段と、上記所定の周期と同期した発信同期信号と、それぞれの超音波マイクロフォンによって受信された超音波信号とを比較し、当該二つの信号の時間差を出力する比較手段と、比較手段によって出力された時間差に基づいて、ダイバーとそれぞれの超音波マイクロフォンとの間の距離を計算する距離演算手段と、距離演算手段によって計算された距離に基づいて、ダイバーの3次元座標を計算する座標演算手段と、座標演算手段から出力されたダイバーの座標を画像に表示する画像表示手段とを有する。
【0019】
この構成によれば、ダイバーの安全を効果的に確保することが可能な水中位置探知システムに適した超音波受信手段を、有利に提供することができる。
【0020】
好ましくは、水中位置探知システムは、複数の超音波発信手段を備え、複数の超音波発信手段が、それぞれ異なる信号の超音波を発信することによって、複数のダイバーの位置を探知可能である。
【0021】
好ましくは、上記比較手段は、船の前方側からの超音波信号のみに関して、上記発信同期信号と比較し、当該二つの信号の時間差を出力する。この構成によれば、距離計算のための演算処理数を減じることができるため、演算処理速度を高速化することが可能となる。また、より少ない超音波マイクロフォンによってダイバーの位置を探知可能となるため、水中位置探知システムの構成をより簡略化することができる。
【0022】
本発明のさらに他の局面として、本発明に係る水中位置探知方法は、ダイバー側から発信される超音波を、船側で受信し、水中におけるダイバーの位置を探知する方法である。この水中位置探知方法は、ダイバー側から所定の周期で超音波を発信するステップと、複数の超音波マイクロフォンによって超音波を受信するステップと、上記所定の周期と同期した発信同期信号と、それぞれの超音波マイクロフォンによって受信された超音波信号とを比較し、当該二つの信号の時間差を出力するステップと、出力された時間差に基づいて、ダイバーとそれぞれの超音波マイクロフォンとの間の距離を計算するステップと、計算された距離に基づいて、ダイバーの3次元座標を計算するステップと、計算されたダイバーの3次元座標を画像に表示するステップとを備える。
【0023】
この構成によれば、ダイバーと各超音波マイクロフォンとの間の距離を正確に計算することが可能となるため、超音波マイクロフォンが設置されている地点の座標と、当該地点とダイバーとの間の距離とに基づいて、ダイバーのいる地点の3次元座標を特定することが可能となる。また、このようにして得られたダイバーの3次元座標を、画像表示手段を用いて画像表示することが可能となっている。これにより、ダイバーの監督人が、ダイバーの水中における位置を、母船から正確且つ容易に確認することが可能となる。したがって、ダイバーの安全を効果的に確保することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ダイバー側から発信された超音波が、超音波マイクロフォンに到達するまでの時間を、超音波の発信周期と同期した発信同期信号と、各超音波マイクロフォンによって受信された超音波信号との間の時間差を検出することによって、より正確に得ることが可能となる。すなわち、この時間差と水中音速値とに基づいて、ダイバーと各超音波マイクロフォンとの間の距離を、計算することが可能となる。これにより、超音波マイクロフォンが設置されている地点の座標と、当該地点とダイバーとの間の距離とに基づいて、ダイバーのいる地点の3次元座標を特定することが可能となる。また、このようにして得られたダイバーの3次元座標を、画像表示手段を用いて画像表示することが可能となっている。これにより、ダイバーを監視する監督人が、ダイバーの水中における位置を、母船から正確且つ容易に確認することが可能となる。したがって、ダイバーの安全を効果的に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る水中位置探知システムの使用状態を概略的に示す外観図である。
【図2】図1に示す水中位置探知システムを図1中の矢印IIから見た外観図である。
【図3】図1に示す船側受信装置を図1中の矢印IIIから見た拡大図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る超音波発信装置のブロック図を示す。
【図5】本発明の一実施形態に係る船側受信装置のブロック図を示す。
【図6】ダイバーと超音波マイクロフォンの座標を示す図であって、図2に対応する図である。
【図7】超音波発信器、発信同期信号出力部、および比較器における超音波信号の時間波形を示すグラフである。
【図8】本発明の一実施形態に係る水中位置探知方法のフローチャートを示す。
【図9】本発明の他の実施形態に係る水中位置探知システムを構成する超音波発信装置のブロック図を示す。
【図10】本発明のさらに他の実施形態に係る水中位置探知システムを構成する船側受信装置を示す外観図であって、図1に対応する図である。
【図11】図10に示す超音波受信装置を拡大して示す拡大図である。
【図12】単一指向性を有する超音波マイクロフォンの典型的な指向特性を示す。
【図13】本発明のさらに他の実施形態に係る船側受信装置43のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。まず、図1〜図5を用いて、本発明の一実施形態に係る水中位置探知システム11の構成について説明する。
【0027】
図1〜図5を参照して、本発明の一実施形態に係る水中位置探知システム11は、ダイビング中のダイバーAの水中における位置を、母船Sにおいて確認可能とするためのシステムである。水中位置探知システム11は、ダイバーAに取り付けられ、位置探知のための超音波20を発信する超音波発信装置12と、母船Sに設けられ、超音波発信装置12から発信された超音波20を受信する船側受信装置13とを備える。
【0028】
超音波発信装置12は、所定の周期で超音波信号を発振する超音波発振器14と、上記所定の周期を正確に維持するために超音波発振器14を制御する発振周期制御部15と、超音波発振器14によって発生された超音波信号を増幅する増幅器16と、増幅器16から出力された超音波信号を電気音響変換し、水中超音波20として放射する超音波トランスデューサ17とを有する。
【0029】
超音波発振器14は、後述するように、周期T秒の超音波信号を発振するように構成される。発振周期制御部15は、上記所定の周期を確実に維持するために、超音波発振器14の発振を制御する。増幅器16は、超音波発振器14によって生成された超音波信号を、所定の増幅率にて増幅する。この増幅率は、ダイビング範囲等を考慮し、用途に応じて適宜設定される。
【0030】
なお、超音波発振器14、発振周期制御部15、および増幅器16を、全てディジタル回路によって構成してもよい。この場合は、増幅器16の後段に、D/A変換器をさらに挿入する必要がある。
【0031】
超音波トランスデューサ17は、高音圧の水中超音波を放射可能な超音波振動子によって構成される。このような超音波振動子としては、例えば圧電型超音波振動子が挙げられる。なお、この超音波トランスデューサ17は、単体の超音波振動子によって構成されてもよいし、複数の超音波振動子を配列させた超音波振動子アレイとして構成してもよい。超音波振動子の共振周波数および周波数特性は、水中位置探知システム11の用途に応じて適宜選択される。
【0032】
船側受信装置13は、超音波発信装置12から発信された超音波20を受信する複数の超音波マイクロフォン18を有する超音波受信装置21と、上記発振周期制御部15によって制御された所定の周期と同期した発信同期信号22Sを生成する発信同期信号出力部22と、超音波マイクロフォン18によって受信された超音波信号と発信同期信号22Sとを比較し、これら二つの信号の時間差を出力する比較装置23と、比較装置23によって出力された時間差に基づいて、ダイバーAとそれぞれの超音波マイクロフォン18との間の距離を計算する距離演算装置24と、距離演算装置24によって計算された距離に基づいて、ダイバーの3次元座標を計算する座標演算装置25と、座標演算装置25から出力されたダイバーの座標を画像に表示する画像表示装置26とを有する。
【0033】
超音波受信装置21は、上記超音波マイクロフォン18と、超音波マイクロフォン18が取り付けられる基台部19とから構成されている。基台部19は、高剛性の板状部材であって、略水平となるように母船Sの底部に固定されている。本実施形態においては、計5個の超音波マイクロフォン180〜184が、基台部19の底面において、母船Sの進行方向であるX方向、および進行方向Xに直交する水平方向であるY方向に沿って十字状に配列するように取り付けられている。超音波マイクロフォン18は、例えば圧電型超音波センサから構成され、超音波トランスデューサ17の周波数特性と最も適合する感度周波数特性を有するように構成される。具体的には、超音波センサは、超音波トランスデューサ17と同じ共振周波数を有するように適宜選択される。
【0034】
発信同期信号出力部22は、発振周期制御部15によって制御された上記所定の周期と同期した発信同期信号22Sを生成する。同期の方法としては、例えば発振周期制御部15および発信同期信号出力部22に、互いに完全に同期した時計部をそれぞれ内蔵させ、発振周期制御部15が制御する上記所定の周期と、発信同期信号出力部22が発生させる発信同期信号22Sとを、時計部の時間情報に基づいて同期させる方法が挙げられる。
【0035】
比較装置23は、発信同期信号22Sを基準とし、超音波マイクロフォン18から出力された超音波信号の時間遅れを検出する。本実施形態においては、比較装置23は、超音波マイクロフォン180〜184に対応するように、5個の比較器230〜234から構成されている。これら比較器230〜234は、それぞれ発信同期信号出力部22と電気的に接続されており、比較の基準となる発信同期信号22Sを受け取る構成となっている。すなわち、比較器230〜234は、発信同期信号22Sと、対応する各超音波マイクロフォン180〜184に到達した超音波20との時間差を検出し、距離演算装置24に時間差情報を出力する。
【0036】
なお、超音波マイクロフォン18の後段にA/D変換器をさらに設け、発信同期信号出力部22および比較装置23を全てディジタル回路によって構成し、ディジタル信号処理により上記時間差情報を出力してもよい。
【0037】
距離演算装置24は、比較装置23によって出力された時間差情報に基づいて、ダイバーAと超音波マイクロフォン18との間の距離を計算する。具体的には、距離演算装置24は、比較器230〜234から出力された上記時間差、すなわち、超音波トランスデューサ17から超音波20が発信され、それぞれの超音波マイクロフォン180〜184に到達するまでに要した時間τ0〜τ4と、水中音速値(≒1500m/s)とに基づいて、ダイバーAと超音波マイクロフォン180〜184との間の距離を計算する。そして、計算の結果得られた距離情報を、座標演算装置25に出力する。
【0038】
座標演算装置25は、距離演算装置24によって得られた距離情報に基づいて、ダイバーAの3次元座標を計算する。なお、距離演算装置24および座標演算装置25における具体的な演算処理については後述する。距離演算装置24および座標演算装置25は、高速演算可能となるようにCPUによって構成される。そして、計算により得られたダイバーAの座標を、画像表示装置26へと出力する。
【0039】
画像表示装置26は、座標演算装置25から出力されたダイバーAの座標を画面上にプロットする。画像表示装置26としては、液晶ディスプレイやCRT等の一般的なディスプレイ装置を適用可能である。
【0040】
次に、図1〜図2、および図6を用いて、ダイビング中のダイバーAの位置と、超音波マイクロフォン18の位置との関係性について説明する。図6は、ダイバーAと超音波マイクロフォン18の座標を示す図であって、図2に対応する図である。なお、図6においては、理解の容易の観点から、超音波受信装置21を拡大して示している。また、以下の説明においては、超音波マイクロフォン180の位置を原点O(0,0,0)とし、母船Sの進行方向であるX方向、進行方向Xに直交する水平方向であるY方向、海の深さ方向であるZ方向を基準として、座標(X,Y,Z)を規定するものとする。
【0041】
図1〜図2、および図6を参照して、図示する使用状態においては、ダイバーAは、座標α(x,y,z)の位置でダイビングをしている。この場合、超音波マイクロフォン180の位置、すなわち原点Oから、ダイバーAまでの距離L0は、以下の数式1に表わされる。
【0042】
【数1】
【0043】
一方、上記したように、5個の超音波マイクロフォン18は、水平に配置された基台部19に取り付けられていることから、超音波マイクロフォン181の座標Pを(x0,0,0)、超音波マイクロフォン182の座標Qを(0,y0,0)と近似することができる(x0,y0は任意の定数)。
【0044】
これにより、超音波マイクロフォン181からダイバーAまでの距離L1は、以下の数式2として表される。
【0045】
【数2】
【0046】
また、超音波マイクロフォン182からダイバーAまでの距離L2は、以下の数式3として表される。
【0047】
【数3】
【0048】
上記数式1〜数式3より、ダイバーAの座標α(x,y,z)は、x0,y0,L0〜L2を用いて、以下の数式4〜数式6に示すようにそれぞれ求められる。
【0049】
【数4】
【0050】
【数5】
【0051】
【数6】
【0052】
すなわち、ダイバーAの水中における位置は、超音波マイクロフォン180,181,182の座標を基準とし、ダイバーAから超音波マイクロフォン180〜182までの距離L0〜L2に基づいて求めることができる。
【0053】
なお、本説明においては、理解の容易の観点から、超音波マイクロフォン180,181,182を基準として座標α(x,y,z)を求める場合について説明をしたが、超音波マイクロフォン183、184の座標およびダイバーAまでの距離L3〜L4のパラメータをさらに追加して、座標α(x,y,z)を計算することも可能である。このように、超音波マイクロフォン18の数量を増加させ、座標α(x,y,z)を計算するためのパラメータを増やすことによって、より高精度な位置探知を行うことができる反面、演算処理量が増大することとなるため、処理速度の低下に繋がることも考えられる。したがって、好ましくは、超音波受信装置21は、水中位置探知システム11の用途に応じて、距離Lnの計算に用いる超音波マイクロフォン18の数量を変更可能となるように構成される。
【0054】
また、超音波マイクロフォン18の座標は、実際上、船の揺れ等によって常に変動することとなる。したがって、GPS(Global Positioning System)を用いて超音波マイクロフォン18の絶対的な位置を記録し、これら位置情報に基づいて上記距離Lnを計算する構成であってもよい。
【0055】
次に、図1〜図8を用いて、本実施形態に係る水中位置探知システム11の具体的な動作について詳細に説明する。図7は、超音波発信器14、発信同期信号出力部22、および比較器231〜234における超音波信号の時間波形を示すグラフである。図8は、本実施形態に係る水中位置探知システム11における水中位置探知方法のフローチャートを示す。なお、図7においては、理解の容易の観点から、超音波信号をパルスとして示しているが、上記超音波トランスデューサ17の共振周波数に相当する超音波のON/OFF信号等によって構成してもよい。
【0056】
図1〜図8を参照して、ダイバーAに取り付けられた超音波発信装置12において、超音波発振器14が所定の周期Tの超音波信号を生成し、増幅器16および超音波トランスデューサ17を介して水中に超音波20を発信する(ステップA)。
【0057】
超音波発信装置12から発信された超音波20は、超音波マイクロフォン180〜184によって受信され、電気的な超音波信号として、それぞれの超音波マイクロフォン180〜184に対応する比較器230〜234へと出力される(ステップB)。
【0058】
比較器230〜234に入力された各超音波信号は、発信同期信号出力部22から送られる発信同期信号22Sと比較され、当該二つの信号の時間差τが検出される(ステップC)。より具体的には、図7に示すように、比較器231においては、発信同期信号22Sと超音波マイクロフォン181によって受信された超音波信号との間の時間差τ1が検出される。同様にして、比較器232においては超音波マイクロフォン182によって受信された超音波信号との時間差τ2、比較器230においては超音波マイクロフォン180によって受信された超音波信号との時間差τ0、比較器233においては超音波マイクロフォン183によって受信された超音波信号との時間差τ3、比較器234においては超音波マイクロフォン184によって受信された超音波信号との時間差τ4が、それぞれ検出される。そして、時間差τ0〜τ4に関する情報が、距離演算装置24に出力される。
【0059】
次いで、距離演算装置24において、それぞれの比較器230〜234から出力された時間差τ0〜τ4に基づいて、ダイバーAとそれぞれの超音波マイクロフォン180〜184との間の距離を計算する(ステップD)。ここで、上記したように、超音波発振器14により生成される超音波信号と、発信同期信号22Sとは、完全に同期している。したがって、入力された時間差τ0〜τ4は、超音波発信装置12から発信された超音波20が各超音波マイクロフォン180〜184に到達するまでに要した時間とほぼ同一であるとみなすことができる。これにより、ダイバーAから超音波マイクロフォン180までの距離L0は、L0=τ0×c(水中音速値≒1500m/s)として求めることができる。同様に、L1=τ1×c,L2=τ2×c,L3=τ3×c,L4=τ4×cとして、それぞれ求めることができる。これら距離L0〜L4に関する情報が、座標演算装置25に出力される。
【0060】
次いで、座標演算装置25において、上記数式4〜数式6に示した方法によって、ダイバーAの3次元座標(x,y,z)が、予め記憶された超音波マイクロフォン180〜184の座標情報と、入力された距離L0〜L4の情報とに基づいて計算される。そして、ダイバーAの3次元座標(x,y,z)に関する情報を、画像表示装置26に出力する(ステップE)。
【0061】
次いで、画像表示装置26の画面上に、ダイバーAの3次元座標(x,y,z)をプロットし、母船Sから見たダイバーAの位置を画像に表示する(ステップF)。このとき、視認性の観点から、ダイバーAの位置が、3次元的に表示されることが好ましい。
【0062】
このように、本実施形態に係る水中位置探知システム11によれば、母船Sにいる監督人が、ダイバーAの水中における位置を、正確且つ容易に確認することが可能となる。したがって、ダイバーAが、誤って母船から遠くに流されてしまいそうになった場合、監督人が迅速に対処することができるようになるため、ダイバーの安全を効果的に確保することができる。
【0063】
なお、本実施形態においては、超音波発信装置12から発信された超音波20が各超音波マイクロフォン18に到達するまでに要した時間τを、発信同期信号出力部22により生成された発振同期信号22Sと、超音波マイクロフォン18によって受信された超音波信号とを比較することによって検出する場合について述べた。しかしながら、これに限らず、超音波発信装置12が、超音波を発信した時刻を記録し、その情報を発信同期信号として超音波信号に包含させる構成としてもよい。発信同期信号を超音波信号に包含させる方法としては、例えば、搬送波を発信同期信号によって変調することが考えられる。この場合においては、船側受信装置13が超音波を受信した時刻を記録する計時部を、船側受信装置13にさらに設け、受信した発信同期信号に含まれる超音波発信時刻と、超音波受信時刻とを比較することによって、上記時間τを検出することができる。
【0064】
また、上記周期Tは、ダイビングする範囲に応じて適宜設定される構成としてもよい。すなわち、図7に示すτ1〜τ4を正確に検出するためには、周期Tの間に超音波マイクロフォン180〜184によって超音波20が検出される必要がある。ここで、水中音速cは、約1500m/sである。したがって、周期Tは、ダイビング範囲と水中音速cとを考慮し、周期Tの間に超音波20が検出されるように適宜設定可能とすることが望ましい。
【0065】
また、本実施形態においては、理解の容易の観点から、ダイバーが一人である場合について説明したが、複数のダイバーにそれぞれ超音波発信装置を取り付け、複数のダイバーの位置を探知することも可能である。この場合は、複数の超音波発信装置12が、それぞれ異なる信号の超音波を発信することによって、複数のダイバーの位置を探知することができる。異なる信号の超音波の実施例としては、発振する周波数をそれぞれ異ならせることや、矩形波、三角波、正弦波のように、それぞれ異なる波形の信号を発信すること等、様々な形態が考えられる。
【0066】
好ましくは、比較装置23は、船の前方側からの超音波信号のみに関して、上記発信同期信号22Sと比較し、当該二つの信号の時間差を出力する。この構成によれば、距離計算のための演算処理数を減じることができるため、演算処理速度を高速化することが可能となる。また、より少ない超音波マイクロフォン18によってダイバーの位置を探知可能となるため、水中位置探知システム11の構成をより簡略化することができる。すなわち、水中位置探知システム11の製造コストを低減することができる。船の前方側からの超音波信号のみを検知する手段としては、超音波マイクロフォン181によって受信された超音波と、超音波マイクロフォン184とによって受信された超音波との時間差を、比較装置23において検出することによって実現可能である。そして、比較装置23から、船Sの前方側からの超音波信号のみに係る時間差情報を出力することによって、演算処理数を減じることが可能である。
【0067】
また、適用する超音波マイクロフォンを二つとし、上記ダイバーAの二次元座標(x,y)のみを計算するように構成してもよい。これにより、水中位置探知システム11の構成をさらに簡略化することができるため、水中位置探知システム11の製造コストをより低減することができる。
【0068】
また、本実施形態においては、基台部19が略水平に設けられている場合について述べたが、これに限らず、傾斜して設けられていてもよい。また、超音波マイクロフォン18が、十字状に配列するように取り付けられている場合について述べたが、これに限らず、超音波マイクロフォン18は、基台部19の如何なる位置に取り付けられていてもよい。
【0069】
次に、図9を用いて、本発明の他の実施形態に係る水中位置探知システム31について説明する。図9は、本発明の他の実施形態に係る水中位置探知システム31を構成する超音波発信装置32のブロック図を示す。なお、上記の実施形態と同様の部材については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0070】
図9を参照して、本発明の他の実施形態に係る水中位置探知システム31は、ダイバーAに取り付けられる超音波発信装置32と、図1に示す船側受信装置13とを備える。
【0071】
超音波発信装置32は、上記実施形態に係る超音波発振器14、発振周期制御部15、増幅器16、および超音波トランスデューサ17に加えて、ダイバーAの位置の水深を計測することが可能な水深計33と、超音波発振器14から出力された超音波信号を、水深計33によって計測された水深情報を含む信号によって変調する変調器34とをさらに有する。
【0072】
本実施形態においては、上記のように、水深計33によってダイバーAの位置の水深が計測される。そして、水深計33より水深情報信号が出力され、変調器34に送られる。次いで、変調器34において、超音波発振器14から出力された超音波信号が、水深情報信号によって変調され、超音波信号に水深情報信号が包含される。このように変調された超音波信号は、増幅器16および超音波トランスデューサ17を介して、水中超音波20として放射される。
【0073】
船側受信装置13に受信された超音波信号は、上記実施形態と同様に、比較装置23を介して時間差τ0〜τ4が検出される。ここで、本実施形態に係る比較装置23は、受信した超音波信号に含まれる水深情報信号を復調する復調部(図示せず)をさらに有する。そして、この復調部によって超音波信号から水深情報を取り出し、上記時間差τ0〜τ4の情報とともに、距離演算装置24へと出力される。
【0074】
距離演算装置24において距離L0〜L4が計算され、上記水深情報とともに座標演算装置25へと送信される。そして、座標演算装置25において、ダイバーAの3次元座標(x,y,z)を、超音波マイクロフォン180〜184の座標情報と、入力された距離L0〜L4の情報と、上記水深情報とに基づいて計算する。このようにして得られたダイバーAの3次元座標(x,y,z)が、画像表示装置26に出力される。
【0075】
このように、本実施形態によれば、ダイバーAの3次元座標(x,y,z)を計算するに際し、距離L0〜L4に加えて、ダイバーAの水深情報に基づいて3次元座標(x,y,z)を計算することが可能となる。すなわち、ダイバーAの3次元座標(x,y,z)を特定するためのパラメータが、さらに1次元追加されることとなるため、ダイバーAの位置探知の精度を、より向上させることができる。また、座標計算のためのパラメータが1次元追加されることによって、より少ない超音波マイクロフォン18によってダイバーAの位置探知を行うことが可能となる。
【0076】
なお、上記変調器における変調方式は、アナログ変調、ディジタル変調、PWM変調のいずれであってもよい。また、変調方式としては、AM変調、FM変調、PM変調、PWM、ASK、PSK、QAM等の如何なる変調方式であってもよい。
【0077】
また、本実施形態においては、上記水深情報を、変調によって超音波信号に包含させる方法について説明したが、これに限らず、その他如何なる方法によって水深情報を超音波信号に包含させてもよい。
【0078】
また、本実施形態においては、超音波発振器14が、周期T秒の超音波信号を発振するように構成された場合について述べたが、これに限らず、任意波形信号を周期的にON/OFFするような構成であってもよい。
【0079】
次に、図10〜図13を用いて、本発明のさらに他の実施形態に係る水中位置探知システム41について説明する。図10は、本発明のさらに他の実施形態に係る水中位置探知システム41を構成する船側受信装置43を示す外観図であって、図1に対応する図である。図11は、図10に示す超音波受信装置42を拡大して示す拡大図である。図12は、単一指向性を有する超音波マイクロフォンの典型的な指向特性を示す。図13は、本発明のさらに他の実施形態に係る船側受信装置43のブロック図を示す。なお、上記の実施形態と同様の部材については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0080】
図10〜図13を参照して、本発明の他の実施形態に係る水中位置探知システム41は、図1に示す超音波発信装置12と、母船Sに設けられる船側受信装置43とを備える。
【0081】
船側受信装置43は、複数の超音波マイクロフォン48を有する超音波受信装置42と、上記実施形態に係る発信同期信号出力部22、距離演算装置24、座標演算装置25、および画像表示装置26と、発信同期信号22Sと受信した超音波信号との間の時間差とともに、超音波信号の振幅を検出可能な比較装置53とを備える。
【0082】
本実施形態に係る超音波受信装置42は、n個の超音波マイクロフォン480〜48nと、超音波マイクロフォン480〜48nが取り付けられた基台部49とから構成されている。基台部49は、半球形状の高剛性部材であって、母船Sの底部に固定されている。基台部49の表面上には、複数の超音波マイクロフォン48が、等間隔に配列するように取り付けられている。
【0083】
ここで、本実施形態に係る超音波マイクロフォン48としては、比較的に鋭い単一指向性を有する超音波センサによって構成される。ここで、このような単一指向性マイクロフォンの指向特性について簡単に説明する。単一指向性を有するマイクロフォンは、図12に示すように、マイクロフォンの正面方向F(集音方向)の領域の感度が特に高くなっており、F方向からずれていくにつれて、感度Eが急激に減衰する特性を有するものである。すなわち、このような指向特性を有する超音波マイクロフォン48は、集音方向に相当する領域の超音波を高感度で集音することが可能である。
【0084】
ここで、超音波マイクロフォン48の数量および集音方向は、超音波マイクロフォン48の合成集音領域がダイビング領域を全て包含するように、適宜設定される。この構成によれば、母船Sから見たダイバーAの方向を、最も大きな音圧を計測した超音波マイクロフォンが向いている方向によって特定することができる。すなわち、図11に示すように、例えば超音波マイクロフォン48nが、ダイバーAから発信された超音波を最も高感度で計測した場合においては、超音波マイクロフォン48aの集音方向Dnによって、ダイバーAの方向をある程度特定することが可能となる。
【0085】
本実施形態に係る比較装置53は、超音波マイクロフォン480〜48nに対応するように、n個の比較器530〜53nから構成され、それぞれの比較器には、超音波マイクロフォン48から入力された超音波信号の振幅を検出可能な振幅検出部が設けられている。比較装置53は、発信同期信号22Sと、受信した超音波信号との間の時間差τとともに、振幅検出部によって当該超音波信号の振幅を検出し、それらの情報を距離演算装置24へと出力する。
【0086】
以下、本実施形態に係る水中位置探知システム41の動作について説明する。超音波マイクロフォン480〜48nによって受信された超音波信号は、上記実施形態と同様に、それぞれの超音波マイクロフォンに対応する比較器530〜53nに出力される。そして、比較器530〜53nにおいて、発信同期信号22Sと、対応する各超音波マイクロフォン480〜48nから出力された超音波信号との時間差τ0〜τnを検出する。これとともに、振幅検出部によって、それぞれの超音波信号の振幅a1〜anを検出する。このようにして得られた時間差τ0〜τnおよび振幅a1〜anに係る情報が、距離演算装置24へと出力される。
【0087】
距離演算装置24において、時間差τ0〜τnに基づいて距離L0〜Lnが計算される。それとともに、上記振幅a1〜anが比較され、最も大きい振幅が検出された超音波マイクロフォン48nが特定される。このようにして得られた超音波マイクロフォン48nの集音方向Dnおよび距離L0〜Lnに係る情報とが、座標演算装置25へと出力される。
【0088】
そして、座標演算装置25において、ダイバーAの3次元座標(x,y,z)が、超音波マイクロフォン48nの集音方向Dnと、その超音波マイクロフォン48nとダイバーAとの間の距離Lnとに基づいて計算される。このようにして得られたダイバーAの3次元座標(x,y,z)が、画像表示装置26に出力され、画像表示される。
【0089】
本実施形態によれば、母船Sから見たダイバーAの地点の方向を、最も大きな音圧を計測した超音波マイクロフォン48nが向いている方向Dnによって特定することができるとともに、ダイバーAと当該超音波マイクロフォン48nとの間の距離Lnを、上記した方法によって特定することができる。これにより、ダイバーの3次元座標(x,y,z)を効果的に特定することが可能となる。
【0090】
なお、本実施形態においては、超音波マイクロフォン48が、半球形状の基台部49の表面上に取り付けられている場合について述べたが、これに限らず、超音波マイクロフォン48の集音領域がダイバーAのダイビング領域を包含する配置であれば、基台部は、如何なる形状であってもよい。
【0091】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、ダイバーの水中における位置を母船から確実に探知することができる水中位置探知システムを提供するものであって、ダイビング装置に係る産業に広く利用される。
【符号の説明】
【0093】
11,31,41 水中位置探知システム、12,32 超音波発信装置、13,43 船側受信装置、14 超音波発振器、15 発振周期制御部、16 増幅器、17 超音波トランスデューサ、18,180,181,182,183,184,48,48a,48n 超音波マイクロフォン、19,49 基台部、20 超音波、21,42 超音波受信装置、22 発信同期信号出力部、22S 発信同期信号、23,53 比較装置、230,231,232,233,234,530,531,53n 比較器、24 距離演算装置、25 座標演算装置、26 画像表示装置、33 水深計、34 変調器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイバー側に取り付けられる超音波発信手段から発信される超音波を、船側に設けられる船側受信手段によって受信し、水中におけるダイバーの位置を探知するための水中位置探知システムであって、
前記超音波発信手段は、所定の周期で超音波を発信し、
前記船側受信手段は、
前記超音波を受信する複数の超音波マイクロフォンを有する超音波受信手段と、
前記所定の周期と同期した発信同期信号と、それぞれの前記超音波マイクロフォンによって受信された超音波信号とを比較し、当該二つの信号の時間差を出力する比較手段と、
前記比較手段によって出力された時間差に基づいて、ダイバーとそれぞれの前記超音波マイクロフォンとの間の距離を計算する距離演算手段と、
前記距離演算手段によって計算された距離に基づいて、ダイバーの3次元座標を計算する座標演算手段と、
前記座標演算手段から出力されたダイバーの座標を画像に表示する画像表示手段と、を有する、水中位置探知システム。
【請求項2】
少なくとも三つの前記超音波マイクロフォンが、略同一平面上に配置される、請求項1に記載の水中位置探知システム。
【請求項3】
前記同一平面は、略水平面である、請求項2に記載の水中位置探知システム。
【請求項4】
前記超音波発信手段は、ダイバーの水深を計測する水深計測手段をさらに有し、水深情報を含む超音波を発信し、
前記座標演算手段は、前記距離演算手段によって計算された距離と、前記水深情報とに基づいて、ダイバーの3次元座標を計算する、請求項1〜3のいずれかに記載の水中位置探知システム。
【請求項5】
前記超音波マイクロフォンは、単一指向性マイクロフォンによって構成され、前記超音波マイクロフォンの集音領域が水中のほぼ全ての領域を包含するように、前記超音波マイクロフォンの集音方向が設定され、
前記座標演算手段は、前記距離演算手段によって計算された距離と、最も大きな音圧を計測した前記超音波マイクロフォンの集音方向とに基づいて、ダイバーの3次元座標を計算する、請求項1〜4のいずれかに記載の水中位置探知システム。
【請求項6】
複数の前記超音波発信手段を備え、
前記複数の超音波発信手段が、それぞれ異なる信号の超音波を発信することによって、複数のダイバーの位置を探知可能である、請求項1〜5のいずれかに記載の水中位置探知システム。
【請求項7】
前記比較手段は、船の前方側からの超音波信号のみに関して、前記発信同期信号と比較し、当該二つの信号の時間差を出力する、請求項1〜5のいずれかに記載の水中位置探知システム。
【請求項8】
ダイバー側から発信される超音波を、船側に設けられる船側受信手段によって受信し、水中におけるダイバーの位置を探知するための水中位置探知システムに用いられる超音波発信手段であって、
前記超音波発信手段は、ダイバーに取り付けられ、所定の周期で超音波を発信し、
前記船側受信手段は、
前記超音波を受信する複数の超音波マイクロフォンを有する超音波受信手段と、
前記所定の周期と同期した発信同期信号と、それぞれの前記超音波マイクロフォンによって受信された超音波信号とを比較し、当該二つの信号の時間差を出力する比較手段と、
前記比較手段によって出力された時間差に基づいて、ダイバーとそれぞれの前記超音波マイクロフォンとの間の距離を計算する距離演算手段と、
前記距離演算手段によって計算された距離に基づいて、ダイバーの3次元座標を計算する座標演算手段と、
前記座標演算手段から出力されたダイバーの座標を画像に表示する画像表示手段と、を有する、超音波発信手段。
【請求項9】
ダイバー側に取り付けられる超音波発信手段から所定の周期で発信される超音波を、船側に設けられる受信手段によって受信し、水中におけるダイバーの位置を探知するための水中位置探知システムに用いられる船側受信手段であって、
前記超音波を受信する複数の超音波マイクロフォンを有する超音波受信手段と、
前記所定の周期と同期した発信同期信号と、それぞれの前記超音波マイクロフォンによって受信された超音波信号とを比較し、当該二つの信号の時間差を出力する比較手段と、
前記比較手段によって出力された時間差に基づいて、ダイバーとそれぞれの前記超音波マイクロフォンとの間の距離を計算する距離演算手段と、
前記距離演算手段によって計算された距離に基づいて、ダイバーの3次元座標を計算する座標演算手段と、
前記座標演算手段から出力されたダイバーの座標を画像に表示する画像表示手段と、を有する、船側受信手段。
【請求項10】
ダイバー側から発信される超音波を、船側で受信し、水中におけるダイバーの位置を探知する水中位置探知方法であって、
ダイバー側から所定の周期で超音波を発信するステップと、
複数の超音波マイクロフォンによって前記超音波を受信するステップと、
前記所定の周期と同期した発信同期信号と、それぞれの前記超音波マイクロフォンによって受信された超音波信号とを比較し、当該二つの信号の時間差を出力するステップと、
出力された時間差に基づいて、ダイバーとそれぞれの前記超音波マイクロフォンとの間の距離を計算するステップと、
計算された距離に基づいて、ダイバーの3次元座標を計算するステップと、
計算されたダイバーの3次元座標を画像に表示するステップと、を備える、水中位置探知方法。
【請求項1】
ダイバー側に取り付けられる超音波発信手段から発信される超音波を、船側に設けられる船側受信手段によって受信し、水中におけるダイバーの位置を探知するための水中位置探知システムであって、
前記超音波発信手段は、所定の周期で超音波を発信し、
前記船側受信手段は、
前記超音波を受信する複数の超音波マイクロフォンを有する超音波受信手段と、
前記所定の周期と同期した発信同期信号と、それぞれの前記超音波マイクロフォンによって受信された超音波信号とを比較し、当該二つの信号の時間差を出力する比較手段と、
前記比較手段によって出力された時間差に基づいて、ダイバーとそれぞれの前記超音波マイクロフォンとの間の距離を計算する距離演算手段と、
前記距離演算手段によって計算された距離に基づいて、ダイバーの3次元座標を計算する座標演算手段と、
前記座標演算手段から出力されたダイバーの座標を画像に表示する画像表示手段と、を有する、水中位置探知システム。
【請求項2】
少なくとも三つの前記超音波マイクロフォンが、略同一平面上に配置される、請求項1に記載の水中位置探知システム。
【請求項3】
前記同一平面は、略水平面である、請求項2に記載の水中位置探知システム。
【請求項4】
前記超音波発信手段は、ダイバーの水深を計測する水深計測手段をさらに有し、水深情報を含む超音波を発信し、
前記座標演算手段は、前記距離演算手段によって計算された距離と、前記水深情報とに基づいて、ダイバーの3次元座標を計算する、請求項1〜3のいずれかに記載の水中位置探知システム。
【請求項5】
前記超音波マイクロフォンは、単一指向性マイクロフォンによって構成され、前記超音波マイクロフォンの集音領域が水中のほぼ全ての領域を包含するように、前記超音波マイクロフォンの集音方向が設定され、
前記座標演算手段は、前記距離演算手段によって計算された距離と、最も大きな音圧を計測した前記超音波マイクロフォンの集音方向とに基づいて、ダイバーの3次元座標を計算する、請求項1〜4のいずれかに記載の水中位置探知システム。
【請求項6】
複数の前記超音波発信手段を備え、
前記複数の超音波発信手段が、それぞれ異なる信号の超音波を発信することによって、複数のダイバーの位置を探知可能である、請求項1〜5のいずれかに記載の水中位置探知システム。
【請求項7】
前記比較手段は、船の前方側からの超音波信号のみに関して、前記発信同期信号と比較し、当該二つの信号の時間差を出力する、請求項1〜5のいずれかに記載の水中位置探知システム。
【請求項8】
ダイバー側から発信される超音波を、船側に設けられる船側受信手段によって受信し、水中におけるダイバーの位置を探知するための水中位置探知システムに用いられる超音波発信手段であって、
前記超音波発信手段は、ダイバーに取り付けられ、所定の周期で超音波を発信し、
前記船側受信手段は、
前記超音波を受信する複数の超音波マイクロフォンを有する超音波受信手段と、
前記所定の周期と同期した発信同期信号と、それぞれの前記超音波マイクロフォンによって受信された超音波信号とを比較し、当該二つの信号の時間差を出力する比較手段と、
前記比較手段によって出力された時間差に基づいて、ダイバーとそれぞれの前記超音波マイクロフォンとの間の距離を計算する距離演算手段と、
前記距離演算手段によって計算された距離に基づいて、ダイバーの3次元座標を計算する座標演算手段と、
前記座標演算手段から出力されたダイバーの座標を画像に表示する画像表示手段と、を有する、超音波発信手段。
【請求項9】
ダイバー側に取り付けられる超音波発信手段から所定の周期で発信される超音波を、船側に設けられる受信手段によって受信し、水中におけるダイバーの位置を探知するための水中位置探知システムに用いられる船側受信手段であって、
前記超音波を受信する複数の超音波マイクロフォンを有する超音波受信手段と、
前記所定の周期と同期した発信同期信号と、それぞれの前記超音波マイクロフォンによって受信された超音波信号とを比較し、当該二つの信号の時間差を出力する比較手段と、
前記比較手段によって出力された時間差に基づいて、ダイバーとそれぞれの前記超音波マイクロフォンとの間の距離を計算する距離演算手段と、
前記距離演算手段によって計算された距離に基づいて、ダイバーの3次元座標を計算する座標演算手段と、
前記座標演算手段から出力されたダイバーの座標を画像に表示する画像表示手段と、を有する、船側受信手段。
【請求項10】
ダイバー側から発信される超音波を、船側で受信し、水中におけるダイバーの位置を探知する水中位置探知方法であって、
ダイバー側から所定の周期で超音波を発信するステップと、
複数の超音波マイクロフォンによって前記超音波を受信するステップと、
前記所定の周期と同期した発信同期信号と、それぞれの前記超音波マイクロフォンによって受信された超音波信号とを比較し、当該二つの信号の時間差を出力するステップと、
出力された時間差に基づいて、ダイバーとそれぞれの前記超音波マイクロフォンとの間の距離を計算するステップと、
計算された距離に基づいて、ダイバーの3次元座標を計算するステップと、
計算されたダイバーの3次元座標を画像に表示するステップと、を備える、水中位置探知方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−137412(P2012−137412A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290720(P2010−290720)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(510200576)株式会社BiVaホールディングス (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(510200576)株式会社BiVaホールディングス (2)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]