説明

水中油型乳化組成物

【課題】トコフェリルリン酸とアスコルビン酸2−グルコシドを含有し、べたつきを変えずに系の粘性を高めた水中油型乳化組成物を提供する。
【解決手段】
A:トコフェリルリン酸換算で1〜3質量%のトコフェリルリン酸及び/又はその塩、B:2〜3質量%のアスコルビン酸2−グルコシド、C:クエン酸換算で0.1〜1質量%のクエン酸及び/又はその塩、A〜C成分を含有する水中油型乳化組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
トコフェリルリン酸塩を含有する肌荒れを防ぐ効果に優れる皮膚外用剤(特許文献1:特開2003−128531)、美白用皮膚外用剤(特許文献2:特開2004−26817)、皮膚外用シワ防止剤(特許文献3:特開2008−7428)が知られている。トコフェリルリン酸塩を乳化補助剤、乳化剤とする皮膚外用組成物(特許文献4:特開2004−149445、特許文献5:特開2005−68026)が知られている。
また、アスコルビン酸2−グルコシドを含有する美肌用、色白用の化粧料が知られている(特許文献6:特開平3−135992号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−128531号公報
【特許文献2】特開2004−26817号公報
【特許文献3】特開2008−7428号公報
【特許文献4】特開2004−149445号公報
【特許文献5】特開2005−68026号公報
【特許文献6】特開平3−135992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トコフェリルリン酸又はその塩とアスコルビン酸2−グルコシドを併用することにより優れた肌荒れ防止効果、美白効果が期待される。しかしながら、トコフェリルリン酸又はその塩を水中油型乳化組成物に配合するとべたつきが生じる問題がある。一方、乳化組成物の安定性を維持するためには系の粘性を高める必要があるが、そのために界面活性剤を増量したり、高分子増粘剤を増量すると、ますますべたつきが増大する問題があった。そこで、トコフェリルリン酸又はその塩とアスコルビン酸2−グルコシドを配合しつつ、べたつきを変えずに系の粘性を高め、厚みのある使用感(コク感)と経時安定性を実現する処方技術の必要性に直面した。
本発明は、トコフェリルリン酸又はその塩とアスコルビン酸2−グルコシドを含有し、べたつきを変えずに系の粘性を高めた水中油型乳化組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の主な構成は次の通りである。
(1)次のA〜C成分を含有することを特徴とする水中油型乳化組成物。
A:トコフェリルリン酸換算で1〜3質量%のトコフェリルリン酸及び/又はその塩
B:2〜3質量%のアスコルビン酸2−グルコシド
C:クエン酸換算で0.1〜1質量%のクエン酸及び/又はその塩
(2)(1)記載の水中油型乳化組成物を含む化粧料。
(3)(1)記載の水中油型乳化組成物を含む美白化粧料。
(4)(1)記載の水中油型乳化組成物を含む皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、トコフェリルリン酸又はその塩とアスコルビン酸2−グルコシドを含有する水中油型乳化組成物において、べたつきを生じることなく粘性を高め、経時安定性に優れ、コク感を有する製剤を提供することができた。皮膚外用剤、化粧料、美白化粧料として適した乳液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下本発明の実施形態を更に詳細に説明する。
本発明に用いるトコフェリルリン酸又はその塩は、次の化学式(I)で表されるトコフェリルリン酸又はその塩である。
【0008】
【化3】

〔式中のR、Rはそれぞれ水素原子又はメチル基を表す。〕
【0009】
化学式(I)について、R、Rともにメチル基の場合はα−トコフェロール、Rが水素原子、Rがメチル基の場合はβ−トコフェロール、Rがメチル基、Rが水素原子の場合はγ−トコフェロール、R、Rともに水素原子の場合はδ−トコフェロールのリン酸エステル化合物を表す。 化学式(I)のトコフェリルリン酸はオキシ三塩化リンとトコフェロールをピリジン触媒で反応させて得ることができる。
トコフェリルリン酸は二価の酸なので、アルカリ金属塩としては、一アルカリ金属塩、二アルカリ金属塩が存在するが、いずれの塩を用いても良く、それらの混合物を用いても良い。また、アルカリ土類金属塩やその他の塩基との塩を用いても良い。市販品としては、昭和電工製のdl−α−トコフェリルリン酸ナトリウム(製品名:ビタミンEリン酸ナトリウム(TPNa))を用いることができる。TPNaはdl−α−トコフェリルリン酸のモノナトリウム塩とジナトリウム塩の混合物である。
本発明に用いるトコフェリルリン酸ナトリウムの配合量は1〜3質量%である。配合量が1質量%未満では水中油型乳化組成物の粘性を高めることが困難であり、トコフェリルリン酸ナトリウムの配合量が3質量%を超えるとべたつきが強くなり好ましくない。
本発明に用いるトコフェリルリン酸又はその塩の配合量はトコフェリルリン酸換算で0.1〜1質量%である。ここでトコフェリルリン酸換算とは、トコフェリルリン酸塩の配合量についてはトコフェリルリン酸の配合量として換算することを意味する。具体的には、トコフェリルリン酸塩溶液を液体クロマトグラフィー法で分析し、検出されるトコフェリルリン酸量に基づいてトコフェリルリン酸換算量を求めた。例えば、2質量%トコフェリルリン酸ナトリウム溶液から、液体クロマトグラフィー分析により1.92質量%のトコフェリルリン酸が検出されれば、溶液中のトコフェリルリン酸換算のトコフェリルリン酸ナトリウムの濃度は1.92質量%である。
【0010】
本発明に用いるアスコルビン酸2−グルコシドは、アスコルビン酸の2位のOH基にグルコースがα型でエーテル結合したものである。アスコルビン酸2−グルコシドは市販品(林原製アスコルビン酸2−グルコシド等)を用いることができる。本発明に用いるアスコルビン酸2−グルコシドの配合量は2〜3質量%である。
【0011】
本発明にはクエン酸又はその塩を用いる。クエン酸は三価の酸なので、アルカリ金属塩としては、一アルカリ金属塩、二アルカリ金属塩、三アルカリ金属塩が存在するが、いずれの塩を用いても良く、それらの混合物を用いても良い。また、アルカリ土類金属塩やその他の塩基との塩を用いても良い。
本発明に用いるクエン酸又はその塩の配合量はクエン酸換算で0.1〜1質量%である。ここでクエン酸換算とは、クエン酸塩の配合量についてはクエン酸の配合量として換算することを意味する。具体的には、クエン酸塩の配合量をクエン酸塩の分子量で除し、クエン酸の分子量(192)を乗ずることにより、クエン酸換算の配合量を算出する。
【0012】
本発明の水中油型乳化組成物は乳液状の化粧料、医薬部外品、医薬品として使用することができる。特に、美白化粧料として有用である。
【0013】
本発明の水中油型乳化組成物は通常使用される製剤化方法にしたがって、製造することができる。
本発明の水中油型乳化組成物には、皮膚外用剤に一般的に配合される油剤、界面活性剤、多価アルコール、糖類、水溶性高分子、金属イオン封鎖剤、防腐剤、粉体、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、香料、薬効剤等を含有させることができる。
【実施例】
【0014】
A:トコフェリルリン酸換算で1〜3質量%のdl−α−トコフェリルリン酸ナトリウム、B:2〜3質量%のアスコルビン酸2−グルコシド、C:クエン酸換算で0.1〜1質量%のクエン酸及びクエン酸ナトリウム、を含有する実施例1〜6の水中油型乳化美白化粧料を表1に示した。比較例1〜5を表2に示した。
dl−α−トコフェリルリン酸ナトリウムは昭和電工製のビタミンEリン酸ナトリウムを用いた。アスコルビン酸2−グルコシドは林原製アスコルビン酸2−グルコシドを用いた。
本実施例、比較例の水中油型乳化美白化粧料は、油相(10〜16)に水相(1〜9)を加熱混合し、転相乳化により調製した。
表中のトコフェリルリン酸換算濃度は、dl−α−トコフェリルリン酸ナトリウムの配合濃度に対して、液体クロマトグラフィー分析によって検出されるdl−α−トコフェリルリン酸濃度とした。
表中のクエン酸換算濃度は、クエン酸三ナトリウム二水和物の配合量をクエン酸三ナトリウム二水和物の分子量(294)で除し、クエン酸の分子量(192)を乗じた値を算出し、それにクエン酸の配合量を加えた値である。
以下の条件又は基準により、粘度、pH、安定性、べたつき、コク感を評価した。
粘度
B型粘度計を用いて製造翌日の25℃における粘度を測定した。ローターはNo.3を用い、回転数12rpm、30秒で測定した。
pH
pH計を用いて、製造翌日の25℃におけるpHを測定した。
安定性
50℃で2ヶ月間保管した。分離していないものを「安定」とし、分離したものを「分離」とした。
べたつき
以下の基準により評価した。
○:べたつかない
△:ややべたつく
×:べたつく
コク感
以下の基準により評価した。
○:コク感に優れる
△:コク感にやや優れる
×:コク感に劣る

【0015】
【表1】

【0016】
【表2】

【0017】
トコフェリルリン酸ナトリウム、アスコルビン酸2−グルコシド、クエン酸及びクエン酸ナトリウムを含有する実施例1〜6の水中油型乳化美白化粧料はいずれも2,000mPa・s以上の粘度を有し、安定性に優れ、べたつかず、コク感に優れるものであった。
トコフェリルリン酸ナトリウム、アスコルビン酸2−グルコシドを含有するがクエン酸、クエン酸ナトリウムを含有しない比較例1、トコフェリルリン酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウムを含有するがアスコルビン酸2−グルコシドを含有しない比較例2、アスコルビン酸2−グルコシド、クエン酸、クエン酸ナトリウムを含有するがトコフェリルリン酸ナトリウムを含有しない比較例3は、いずれも粘度が2,000mPa・sに達せず、比較例2,3は安定性に劣り、比較例1〜3はいずれもコク感に劣るものであった。トコフェリルリン酸が1.93質量%以下では、粘度が750mPa・sにしかならず(比較例4)、4.82質量%以上では、粘度が330mPa・sにしかならず(比較例6)、いずれも分離が生じ、コク感に劣るものであり、低配合あるいは高配合でも十分な粘度が確保できないことが判明した。
本発明品は、トコフェリルリン酸又はその塩、アスコルビン酸2−グルコシド、クエン酸又はその塩の3成分を配合することにより、べたつきを生じずに系の粘性を高め、優れた安定性を実現し、コク感に優れた水中油型乳化組成物を提供できたものである。
以下に、本発明の処方例を示す。
【0018】
処方例1 美白用乳液
成分 配合量(質量%)
1.ベヘニルアルコール 1
2.ステアリン酸 3
3.スクワラン 5
4.ホホバ油 2
5.メチルポリシロキサン 3
6.キサンタンガム 0.2
7.1,3-ブチレングリコール 8
8.パラオキシ安息香酸エステル 0.2
9.イソステアリン酸ポリグリセリル−10 1.6
10.自己乳化型モノステアリン酸グリセリル 1.5
11.アスコルビン酸2−グルコシド 2
12.dl−α−トコフェリルリン酸ナトリウム 2
13. クエン酸 0.12
14.クエン酸三ナトリウム二水和物 0.3
15.精製水 残余


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のA〜C成分を含有することを特徴とする水中油型乳化組成物。
A:トコフェリルリン酸換算で1〜3質量%のトコフェリルリン酸及び/又はその塩
B:2〜3質量%のアスコルビン酸2−グルコシド
C:クエン酸換算で0.1〜1質量%のクエン酸及び/又はその塩
【請求項2】
請求項1記載の水中油型乳化組成物を含む化粧料。
【請求項3】
請求項1記載の水中油型乳化組成物を含む美白化粧料。
【請求項4】
請求項1記載の水中油型乳化組成物を含む皮膚外用剤。


【公開番号】特開2011−140451(P2011−140451A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1079(P2010−1079)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】