説明

水中油型乳化組成物

【課題】 エタノールを高配合(但し、50質量%以下)しても安定であり、皮膚等に塗布した後は優れた耐水性を示す水中油型乳化組成物であって、使用感と紫外線防御能に優れた水中油型乳化組成物を提供する。
【解決手段】 (a)油溶性紫外線吸収剤の水分散体を水相(外相)に含有し、
(b)0.1〜10質量%のHLB(Si)が5〜10のポリエーテル変性シリコーン、(c)5〜50質量%のエタノール、(d)0.01〜3質量%の親水性増粘剤、及び(e)0.1〜15質量%のポリオールを含有することを特徴とする水中油型乳化組成物。前記成分(a)は、油溶性紫外線吸収剤と有機ポリマーとの複合体粒子の水分散体であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布時にはみずみずしい感触を有し、塗布後には耐水性に優れ、なおかつ油溶性紫外線吸収剤を外相(水相)に配合した安定で高い紫外線防御能を持つ水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
日焼け止め化粧料は、太陽光線中の紫外線をカットし、紫外線による悪影響から肌を守ることを目的とする。その基剤としては、乳化タイプ、ローションタイプ、オイルタイプ等が挙げられるが、中でも水中油型乳化タイプは、みずみずしい使用感触を持ち、低SPFから高SPF製品までの製剤化が可能であることから広く用いられている(非特許文献1)。
【0003】
しかしながら水中油型乳化物は、みずみずしい感触を与える使用感に優れているが、耐水性において満足できるものが少ないという欠点を有していた。
【0004】
さらに、水中油型乳化基剤は、アルコールを高配合すると乳化粒子が破壊されてしまい、十分に安定な基剤を得ることが困難であるという問題があったが、特許文献1には、油分、低級アルコール50重量%以上、水、乳化剤として下記一般式:
【化1】

(上記式中、mは50〜1000、nは1〜40、aは5〜50、bは5〜50の整数である)で示されるポリエーテル変性シリコーンの一種又は二種以上を含有し、乳化剤として他の界面活性剤を実質的に含有しないことを特徴とするアルコール・水中油型乳化組成物が開示され、頭髪につや、柔軟性、潤いを与えるとともに、櫛通りをよくする効果があると記載さている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された組成物では、低級アルコールが非常に多く含まれているため一般的なスキンケア基剤への応用は困難であった。また、エタノールを高配合した製剤において紫外線防御能(SPF、PFA)を向上させるために紫外線散乱剤を配合する場合があるが、それにより使用性がきしむことがあった。
【0006】
また、油溶性紫外線吸収剤には難溶性のものが多く、それを溶解させるには多量の高極性油分の配合が必要になり水中油型乳化物に特有のみずみずしい使用感触が失われたり、油相中で低温において紫外線吸収剤が析出してしまうといった安定性の問題が生じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第WO97/002888号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「新化粧品学 第2版」光井武夫編、南山堂、2001年、第497−504頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって本発明における課題は、エタノールを高配合(但し、50質量%以下)しても安定であり、皮膚等に塗布した後は優れた耐水性を示す水中油型乳化組成物であって、溶解度の低い油溶性紫外線吸収剤を含有し、使用感と紫外線防御能に優れた水中油型乳化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため、本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、HLB(Si)5〜10のポリエーテル変性シリコーンを界面活性剤として用い、5〜50質量%以下のエタノールを配合し、更に特定量の親水性増粘剤及びポリオールを配合して水中油型乳化物とするとともに、油溶性紫外線吸収剤の水分散体を水相中に配合することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
ただし、ここで言うHLB(Si)とは、下記の計算式で求められる値である。
【数1】

【0011】
即ち本発明は、
(a)油溶性紫外線吸収剤の水分散体を水相(外相)に含有し、
(b)0.1〜10質量%のHLB(Si)が5〜10のポリエーテル変性シリコーン、
(c)5〜50質量%のエタノール、
(d)0.01〜3質量%の親水性増粘剤、及び
(e)0.1〜15質量%のポリオールを含有することを特徴とする水中油型乳化組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の乳化組成物は、エタノールを多配合した水中油型乳化物であるため、みずみずしい使用感触が得られる。一方、皮膚等に塗布した後は、エタノールが蒸発することに伴い油中水型に転相するため、優れた耐水性を発揮することができる。
さらに、本発明の水中油型乳化組成物は、油分に難溶性の紫外線吸収剤を水相(外相)に配合することにより系の安定性を向上させることができた。また、同じ紫外線吸収剤を油相(内相)に配合した場合に比較して紫外線防御能が向上するという有利な効果も奏する。従って、本発明の水中油型乳化組成物は、みずみずしい使用感触を持ち、なおかつ優れた紫外線防御能を有する日焼け止め化粧料として使用するのに特に適したものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1及び比較例1の組成物の紫外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の水中油型乳化組成物は、油溶性紫外線吸収剤の水分散体(成分a)を水相(外相)に含有していることを特徴とする。
油溶性紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、水に不溶性で油に難溶性の紫外線吸収剤から選択するのが好ましい。但し、メチレンビスベンゾトリアゾールテトラメチルブチルフェノール等の実質的に油不溶性のものは含まれない。油不溶性の紫外線吸収剤の水分散物を用いて水中油型乳化組成物を調製し、それを皮膚に適用した場合には、塗布した皮膚が不自然に白っぽくなることがある。
難溶性の紫外線吸収剤には、例えば特開2009−91307号公報に記載されたものが含まれ、具体的には、ベンゾフェノン誘導体、トリアジン誘導体等が挙げられるが、特にトリアジンン誘導体、中でも2、4−ビス−{[4−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシ]フェニル}−6−(4−メトキシフェニル)−(1、3、5)−トリアジン(以下、本明細書では「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」とする)が好ましい。このビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンは、BASF社からチノソーブSという商品名で市販されており、当該市販品を使用することができる。
【0015】
また、本発明における油溶性紫外線吸収剤の水分散体は、油溶性紫外線吸収剤と有機ポリマーとの複合体粒子の水分散体であるのが特に好ましい。複合体粒子とすることにより、水分散体を含む水相と油とが共存する場合に油溶性紫外線吸収剤が水相から油相に溶出してしまうことが抑制される。
油溶性紫外線吸収体と有機ポリマーとの複合体粒子の水分散体は、例えば、WO2009/007264に記載されている方法に従って調製することができる。簡潔に言えば、紫外線吸収剤と有機モノマーの混合物を水中に分散させた状態で乳化重合させることにより紫外線吸収剤と有機ポリマーとの複合体粒子が分散した水性分散体として得ることができる。
有機モノマーとしては、エチレン性不飽和結合を有するモノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、スチレンモノマー、ナイロンモノマー等が好ましく使用される。
【0016】
このような複合粒子の水分散体としては、BASF社からチノソーブSアクアの商品名で市販されているものを使用できる。チノソーブSアクア(Tinosorb S aqua)は、水に分散されたビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(チノソーブS)とポリメタクリル酸メチル(PMMA)との複合粒子を含み、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンとPMMAの含有量は、各々20質量%と19質量%である。
【0017】
本発明の組成物における油溶性紫外線吸収剤の配合量は、乾燥質量として5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは0.01〜3質量%とする。配合量が0.01質量%未満であると十分な紫外線吸収能が得られず、5質量%を越えて配合するとべたつくといった使用性に問題を生ずる傾向がある。
なお、例えば20質量%の紫外線吸収剤を含有する水分散体(成分a)の配合量として換算すれば、当該分散体は25質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは0.05〜15質量%で配合することになる。
【0018】
本発明の水中油型乳化化粧料におけるポリエーテル変性シリコーン(成分b)は、そのHLB(Si)が5〜10、好ましくは5〜9のものから選択される。
本発明においては、分子量が50000以上であり、親水基がポリオキシエチレン(POE)又はポリオキシプロピレン(POP)から選択されるポリエーテル変性シリコーンが好ましく用いられる。
【0019】
特に、下記式で表されるポリエーテル変性シリコーンが好ましい。
【化2】

上記式中、mは50〜1000、好ましくは150〜1000であり、nは1〜40である。mが50未満であり、nが1未満である場合には、乳化安定性に乏しく、またmが1000を超え、nが40を超える場合には、得られた組成物にべたつき感が生じるようになる。また、m:nは200:1〜5:1であることが好ましく、60:1〜15:1であることが特に好ましい。
また、aは5〜50、bは5〜50であり、これらポリオキシアルキレン基の分子中での含有量は特に限定されないが、ポリオキシアルキレン基の含有量が全分子量中20重量%を超えるものが望ましい。
【0020】
上記式で表されるようなポリエーテル変性シリコーンは、従来は、エタノール50%以上のアルコール中油型乳化物や油中水型乳化物の界面活性剤として用いられていたものであり(例えば、国際公開第WO97/002888号パンフレット、特開平10−306020号公報参照)、これをアルコールの少ない水中油型乳化物において使用した例はまったく知られていない。
本発明は、HLB(Si)が10以下、好ましくは9以下のポリエーテル変性シリコーンを水中油型乳化物の界面活性剤として初めて使用したものであり、エタノールの配合量を調整し親水性増粘剤を配合することにより、製剤中では水中油型の乳化物を安定に形成しているが、皮膚等への塗布後は転相して油中水型となり、優れた耐水性を発揮する。
【0021】
本発明におけるポリエーテル変性シリコーン(成分b)の配合量は、0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.1〜3質量%である。配合量が0.1質量%未満である場合、10質量%を越えて配合した場合には、安定な水中油型乳化物が得られない場合がある。
【0022】
本発明の乳化化粧料は、5質量%以上のエタノール(成分c)を必須成分として含有する。エタノールの配合量は、5〜50質量%、好ましくは8〜50質量%、より好ましくは8〜40質量%である。配合量が5質量%未満あるいは50質量%を越えると安定な水中油型乳化物が得られない場合がある。
【0023】
本発明の乳化化粧料は、さらに親水性増粘剤(成分d)を必須成分として含有する。
本発明においては、従来は油中水型乳化物に用いられていたHLB(Si)10以下のポリエーテル変性シリコーンを、単に水中油型乳化物の一般的な界面活性剤に換えただけでは安定な乳化物は得られず、5質量%以上のエタノールと親水性増粘剤とを配合することによって初めて安定な水中油型乳化物が形成されることが見出された。
【0024】
本発明で使用される親水性増粘剤は、化粧品に使用されるものであれば特に限定されない。例えば、天然の水溶性高分子、半合成の水溶性高分子、合成の水溶性高分子、無機の水溶性高分子等が挙げられる。
【0025】
具体的には、天然の水溶性高分子としては、例えばアラアビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン酸等の植物系高分子;キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、ブルラン等の微生物系高分子;コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子等が挙げられる。
【0026】
半合成の水溶性高分子としては、例えばカルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子;メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系高分子;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子等が挙げられる。
【0027】
合成の水溶性高分子としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)等のビニル系高分子;ポリエチレングリコール(分子量 1500、4000、6000)等のポリオキシエチレン系高分子;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体共重合系高分子;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(商品名「ペミュレンTR−1」)等のアクリル系高分子;ポリエチレンイミン、カチオンポリマー等が挙げられる。無機の水溶性高分子としては、例えばベントナイト、ケイ酸AlMg(商品名「ビーガム」)、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸等が挙げられる。
特にポリアクリルアミド(商品名「SEPIGEL 305,SEPPIC社」、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(商品名「ペミュレンTR−1, NOVEON社」)等のアクリル系高分子がみずみずしい感触を与えながら、耐水性に優れる点で好ましい。
【0028】
本発明の乳化化粧料における親水性増粘剤(成分d)の配合量は、0.01〜3質量%、好ましくは0.05〜3質量%、より好ましくは0.2〜1質量%である。配合量が0.01質量%未満であると安定な乳化物が得られない場合があり、3質量%を越えて配合すると、塗布時に重い感触となる場合がある。
【0029】
本発明の乳化化粧料は、さらにポリオール(成分e)を必須成分として含有する。ポリオールを加えることにより、水中油型乳化物の透明性及び安定性を更に向上させることができる。例えば、ポリオールを添加することにより、配合するアルコール量を減少させても安定性が維持され、得られる製剤のアルコール臭を抑制することも可能である。
【0030】
本発明で使用されるポリオールは、化粧品に通常用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、ダイナマイトグリセリン、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール等を挙げることができる。特に、1,3−ブチレングリコールが最も効果的に安定性を向上させる。
【0031】
本発明の乳化化粧料におけるポリオール(成分e)の配合量は0.1〜15質量%、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは3〜7質量%である。配合量が0.1質量%未満であると安定な乳化物が得られない場合があり、15質量%を越えて配合すると、塗布時に重い感触となる場合がある。
【0032】
また、本発明の組成物は、水相に配合する前記油溶性紫外線吸収剤の水分散体(成分a)に加えて、さらに他の紫外線吸収剤を含有してもよい。
他の紫外線吸収剤は、油溶性であって油相(内相)に溶解するものが好ましく、水相に存在する前記紫外線吸収剤(成分a)と相乗的に紫外線を吸収するものが好ましい。
そのような紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、メトキシケイ皮酸誘導体、ジフェニルアクリル酸誘導体、サリチル酸誘導体、パラアミノ安息香酸誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンザルマロナート誘導体、アントラニル誘導体、イミダゾリン誘導体、4 , 4 − ジアリールブタジエン誘導体、及びフェニルベンズイミダゾール誘導体系が挙げられる。具体的には、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、ホモサレート、オクチルサリシレート、オキシベンゾン、4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オクチルトリアゾン、ビスエチルヘキシルフェノールメトキシフェニルトリアジン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸−2’−エチルヘキシルエステル、ポリシリコーン−15、ドロメトリゾールポリシロキサン等が挙げられる。
【0033】
本発明の乳化組成物は、上記の必須成分a〜e及び任意に他の紫外線吸収剤に加えて、従来から化粧品に使用されている他の成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で含有していてもよい。具体的には、保湿剤、油分、緩衝剤、キレート剤、防腐剤などが挙げられる。
【0034】
本発明の乳化組成物は、乳化物の製造に従来から使用されている方法に準じて製造することができる。例えば、紫外線吸収剤の水分散体(成分a)、エタノール(成分c)、親水性増粘剤(成分d)、ポリオール(成分e)を含む水相成分に油分とHLB(Si)5〜10のポリエーテル変性シリコーン(成分b)を混合した油相を、ホモミキサー等で攪拌しながら水相に添加してゆくことにより、本発明の水中油型乳化組成物を得ることができる。
【0035】
本発明の水中油型乳化組成物は、塗布時にはみずみずしく、さっぱりした使用感であり、塗布後は耐水性に優れた皮膜を形成するという特徴を有している。さらに、難溶性の紫外線吸収剤が水相に安定に配合され、任意に他の紫外線吸収剤も配合される。従って、肌に塗布するときはみずみずしくさっぱりした感触が得られ、塗布後は耐水性のある皮膜が肌上に形成されるため、確かなUV防御力が保持される。
【実施例】
【0036】
以下に具体例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例等における配合量は特に断らない限り質量%を示す。
【0037】
(実施例及び比較例)
下記表1に掲げた組成を有する水中油型乳化組成物を調製した。得られた組成物の使用感触について、女性専門パネル10名により、各試料を実施に肌に塗布してもらい使用感(きしみのなさ)について以下の基準に従って評価した。結果を表1に併せて示す。
○:8名以上がきしみがないと評価した。
△:3〜7名がきしみがないと評価した。
○:2名以下がきしみがないと評価した。
【0038】
実施例1及び比較例1の各組成物のサンプル18.87μLをPMMA製の膜(5cm×5cm)の表面に0.75mg/cmの割合で均一に塗布した。15分放置した後、分光光度計(U−4100:日立製作所製)を用いて各サンプルの吸光度を測定した。それらの結果を図1に示す。
【0039】
上記とは別に、実施例1及び2の液状油分(シクロペンタシロキサン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクトクリレン)を表1に記載した比率で混合した実施例1、2に対応する油性混合物と、それにビスエチルへキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを更に加え、70℃に加熱して完全に溶解させた比較例1に対応する油性混合物とを作製し、各々を50mLスクリュー管に封入した。これらを25℃に冷却し、少量のビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを固体の状態で加え、0℃で1週間保存した後の各混合物を顕微鏡観察することにより油相の安定性を評価した。それらの結果を、添加した以上の量の結晶が観察された場合を×、添加した以上の量の結晶が見られなかった場合を○として、表1に併せて示す。
【0040】
【表1】

*1)チノソーブSアクア(BASF社製)
*2)BY11−030(東レ・ダウコーニングシリコーン社製):50質量%のPEG/PPG−19/19 ジメチコンと50質量%のシクロペンタシロキサンを含む。PEG/PPG−19/19 ジメチコンとは、下記式で表される分子量55000のポリエーテル変性シリコーンである:
【化3】

(上記式中、m=400、n=10、a=19、b=19)
【0041】
表1から明らかなように、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを油相中に配合した比較例1では安定性が劣り、低温(0℃)で結晶が形成された。これに対して、水相にビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを配合した実施例1及び2は安定性に優れていた。一方、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンに換えて微粒子酸化チタンを配合した比較例2は使用感(きしみのなさ)が劣っていた。
【0042】
また、図1に示した結果から、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを水分散体の形態で水相中に配合した組成物(実施例1)では、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを油相中に配合した比較例1よりも優れた紫外線吸収能を示すことが明らかになった。
【0043】
次に、上記実施例で用いたHLB(Si)=7のポリエーテル変性シリコーン(PEG/PPG−19/19 ジメチコン)を、下記表2に掲げた各種ポリエーテル変性シリコーンに置換した組成で乳化実験を試みた。その結果、乳化粒子が小さく安定な水中油型乳化物が得られた例を「○」、乳化粒子は大きいが安定したものを「○△」、乳化粒子が大きく不安定であったものを「△」、乳化できなかったものを「×」とし、表2に合わせて示した。
その結果、HLB(Si)が5未満のポリエーテル変性シリコーンを用いた比較例3〜4では、安定性に優れた水中油型乳化物を得ることはできなかった。
【0044】
【表2】

【0045】
以下に示す処方で水中油型乳化組成物からなる化粧料を調製した。
処方例1:サンスクリーンエマルジョン
イオン交換水 残余
エチルアルコール 20
ジプロピレングリコール 3
カルボマー 0.1
アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10−30)コポリマー 0.1
ポリアクリルアミド含有液*1) 0.5
アミノメチルプロパンジオール 適量
ポリオキシブチレンポリオキシプロピレングリコール 2
PEG/PPG−19/19 ジメチコン 2
シクロペンタシロキサン 2
水添ポリイソブテン 2
カプリリルメチコン 3
トリエチルヘキサノイン 2
パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 3
2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸−2’−
エチルヘキシルエステル 3
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニル
トリアジン水分散体 5
メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール 1
キレート剤 適量
エチルパラベン 適量
香料 適量
*1)SEPIGEL 305(SEPPIC社製)
【0046】
処方例2:サンスクリーンエマルジョン
イオン交換水 残余
エチルアルコール 20
1,3−ブチレングリコール 3
カルボマー 0.15
アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10−30)コポリマー 0.15
アミノメチルプロパノール 適量
ポリプロピレングリコール 3
PEG/PPG−19/19 ジメチコン 1.5
ジメチコン 1.5
シクロペンタシロキサン 2
ジメチルポリシロキサン 2
イソドデカン 2
テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 3
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニル
トリアジン水分散体 15
パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 5
4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン 2
フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 2
2−ヒドロキシ4−メトキシベンゾフェノン 2
キレート剤 適量
フェノキシエタノール 適量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)油溶性紫外線吸収剤の水分散体を水相(外相)に含有し、
(b)0.1〜10質量%のHLB(Si)が5〜10のポリエーテル変性シリコーン、
(c)5〜50質量%のエタノール、
(d)0.01〜3質量%の親水性増粘剤、及び
(e)0.1〜15質量%以上のポリオールを含有することを特徴とする水中油型乳化組成物。
【請求項2】
前記ポリエーテル変性シリコーンが、分子量が50000以上であり、親水基がポリオキシエチレン(POE)又はポリオキシプロピレン(POP)から選択されるポリエーテル変性シリコーンであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリエーテル変性シリコーンが、下記式:
【化1】

(上記式中、mは50〜1000、nは1〜40、aは5〜50、bは5〜50の整数である)で表されるポリエーテル変性シリコーンであることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記成分(a)が、油溶性紫外線吸収剤と有機ポリマーとの複合体粒子の水分散体であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記油溶性紫外線吸収剤がトリアジン誘導体であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記油溶性紫外線吸収剤が、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記油溶性紫外線吸収剤の配合量が5質量%以下であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
親水性増粘剤成分(d)がポリアクリルアミド及び/又はアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−236202(P2011−236202A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86013(P2011−86013)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】