説明

水中油滴型エマルションの製造方法及び水中油滴型エマルション

【課題】エネルギー効率が良く温度上昇がほとんどなく、かつ粒径のバラツキを抑えた透明性の高い微細水中油滴型エマルションを製造する技術を提供する。
【解決手段】油成分を含む油相、水相及び該油相及び該水相の少なくとも一方に含まれる界面活性剤を混合することで水中油滴型エマルションを製造する方法であって、(a)前記水相を第一供給口から1〜200MPaの圧力で混合室に一方から他方に向けて供給する工程と、(b)前記油相を第二供給口から前記水相の供給方向に対し所定角度で、前記水相の圧力より低圧で混合室に供給する工程と、(c)前記混合室から水相と油相の混合液を排出口から取出す工程と、を少なくとも備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油滴型エマルションの製造方法及び水中油滴型エマルションに関する。
【背景技術】
【0002】
エマルションとは、一般に相互に溶解しない2種類の液体の一方を他方に分散したもので、特に油滴が水中に分散したエマルションは水中油滴型エマルションと呼ばれている。
【0003】
このエマルションは、長期安定性の観点から均一化が求められている。外観上の透明性の観点から微細化が求められている。また、油滴が機能性油性成分の場合、高温になることで変質、劣化する懸念があるため、低温での微細乳化が望まれている。特に、エマルションを適用した食品、化粧品及び医薬品のような人の細胞から吸収されるものにおいては、その効果を十分引き出すために均一なサイズが求められている。
【0004】
エマルションを製造する方法の一つとして、化学的乳化法が知られている。化学的乳化法に転相温度乳化などがあるが使用できる界面活性剤や液組成、乳化温度領域などが限定されるため適用できる範囲が限られる。
【0005】
別の方法の一つとして、機械的乳化法が知られている。機械的乳化法として、外部から強い剪断力を加えることで油滴を分裂させる方法がある。例えば、撹拌式ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーなどがある。撹拌式ホモジナイザー、超音波ホモジナイザーは大量に処理する場合、液全体を流動させる必要がありエネルギー効率が悪い。また、長時間撹拌しても微細化可能な大きさはサブミクロン程度までであり、近年の微細化の要求に充分に対応しているとはいえない。
【0006】
一方、高圧ホモジナイザーはサブミクロン以下の微細化も可能である。しかし、衝突が確立論的に行われるために均一で微細なエマルションを得るには繰り返し衝突させる必要がある。高圧ホモジナイザーがフロー系の処理にも関わらず、加えるエネルギーの多くが熱に変換され、液温の上昇が著しいといった問題があった(特許文献1)。
【0007】
エネルギー効率と温度上昇の課題に対して、水溶性溶媒に油性成分を溶解し、これを300m/min以上の速度で水相中に注入することで微細乳化する方法が提案されている。(特許文献2)しかし、この方法では、水相中の水溶性溶媒濃度が上昇することで溶解速度が変わるため、粒径のバラツキという問題があった。また、形成されたエマルションが供給される水溶性溶媒に再溶解するため、この再溶解が粒径のバラツキを引き起こす問題があった。粒径のバラツキはスケールアップしたとき、より顕著になる。
【特許文献1】特開2006−341146号公報
【特許文献2】特開2005−103421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上述の問題を考慮して、エネルギー効率が良く温度上昇がほとんどなく、かつ粒径のバラツキを抑えた透明性の高い微細水中油滴型エマルションを製造する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、本発明の水中油滴型エマルションの製造方法は、油性成分を含む油相、水相と該油相及び該水相の少なくとも一方に含まれる界面活性剤とを混合することで水中油滴型エマルションを製造する方法であって、(a)前記水相を第一供給管から1〜200MPaの圧力で混合室に一方から他方に向けて供給する工程と、(b)前記油相を第二供給管から前記水相の供給方向に対し所定角度で、前記水相の圧力より低圧で混合室に供給する工程と、(c)前記混合室から水相と油相の混合液を排出管から取出す工程とを少なくとも備えたことを特徴とする。
【0010】
水相を高圧で混合室に供給することで、混合室内の反応場を常に一定条件に保つことができる。この混合室に油性成分を含む油相を供給することにより、低温での高剪断力による微細乳化を実現することができる。つまり、混合室内に高剪断場を形成できるので、油性成分を劣化させることなく、エマルション粒子の粒径が小さく透明性に優れた水中油滴型エマルションを製造することができる。
【0011】
本発明の水中油滴型エマルションの製造方法においては、水相の供給時の流速が、50m/秒〜700m/秒であることが好ましい。また、混合室に供給される水相の噴出口近傍のレイノルズ数Reが、2100〜150000であることが好ましい。本発明の製造方法における、水相の好ましい運転条件を規定したものである。
【0012】
本発明の水中油滴型エマルションの製造方法においては、第一供給管の噴出口の円相当径dと、混合室の円相当径Dとの比D/dが、5〜30であることが好ましい。水相と油相の混合性能を確保するのに必要な装置構成を規定したものである。
【0013】
本発明の水中油滴型エマルションの製造方法においては、所定角度が0°〜90°角度であることが好ましい。水相と油相を混合室に供給するときに、両相のいわゆる衝突角度が0°〜90°となるように混合させたので、水相と油相の高い混合性能を確保することができる。
【0014】
本発明の水中油滴型エマルションの製造方法においては、界面活性剤が、HLB=10〜18の非イオン性界面活性剤であることが好ましい。これは、本発明が水中油滴型の乳化を行うものであり、界面活性剤として、HLB=10〜18の非イオン性界面活性剤を使用することが好ましいからである。
【0015】
本発明の水中油滴型エマルションの製造方法においては、油性成分が、カロテノイド類又はアスタキサンチン類の少なくとも一つを含むことが好ましい。また、油性成分が、水に不溶、又は水に難溶性の食品用機能性材料を含むことが好ましい。また、油性成分が、水に不溶、又は水に難溶性の化粧品用機能性材料を含むことが好ましい。本発明によれば、これらを含む油性成分を劣化させることなく、特性の優れた水中油滴型エマルションを得ることができる。
【0016】
本発明は前記目的を達成するために、請求項1〜9の何れか1記載の水中油滴型エマルションの製造方法を用いて製造されたことを特徴とする水中油滴型エマルションを提供する。
【0017】
本発明の水中油滴エマルションにおいては、粒径200nm以上の油滴の体積比率が10%以下であることが好ましい。更に好ましくは、粒径200nm以上の油滴の体積比率が5%以下である。これは、用途により異なるが、一般的に皮膚では200nm以下、体内では100nm以下の粒径で細胞から吸収され易い。従って、粒径200nm以上の油滴の体積比率が10%を超えて多くなると、例えば、化粧品や食料品に本発明を適用した場合に、吸収効率が悪くなるからである。
【0018】
ここで「体積比率」とは、エマルションの全体積を100%としたときの、ある粒径の油滴が占める体積の割合をいう。
【発明の効果】
【0019】
油性成分を高温により劣化させることなく、エマルションの粒径が小さく、透明性の高い水中油滴型エマルションを安定に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面に従って、本発明に係る水中油滴型エマルションの製造方法及び水中油滴型エマルションの好ましい実施の形態について説明する。
【0021】
[水中油滴型エマルション]
相互に溶解しない2種類の液体の一方を他方に分散したものをエマルションと呼び、油滴が水中に分散したものを水中油滴型エマルションと呼ぶ。
【0022】
本発明の水中油滴型エマルションの油滴の体積平均粒径(Mv)は、得られたエマルションの透明性の観点から、200nm以下であることが好ましく、より好ましくは5〜200nm、更に好ましくは40〜200nmで、特に好ましくは40〜130nmである。
【0023】
本発明の水中油滴型エマルションの粒径は市販の粒度分布計等で計測することができる。エマルションの粒度分布測定法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。
【0024】
本発明における粒径範囲および測定の容易さから、本発明のエマルション粒径測定では動的光散乱法が好ましい。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA−EX150(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられる。本発明における粒径は、前記動的光散乱式粒径分布測定装置ナノトラックUPA−EX150(日機装(株))を用いて測定した値を採用する。
【0025】
[水中油滴型エマルションの製造方法及び製造装置]
本発明の水中油滴型エマルションの製造方法は、油性成分を含む油相、水相と該油相及び該水相の少なくとも一方に含まれる界面活性剤とを混合することで水中油滴型エマルションを製造する方法であって、(a)前記水相を第一供給管から1〜200MPaの圧力で混合室に一方から他方に向けて供給する工程と、(b)前記油相を第二供給管から前記水相の供給方向に対し所定角度で、前記水相の圧力より低圧で混合室に供給する工程と、(c)前記混合室から水相と油相の混合液を排出管から取出す工程とを少なくとも備えたことを特徴とする。本発明の製造方法によれば、油性成分を劣化させることなく、乳化粒子の粒径が小さく透明性に優れた水中油滴型エマルションを製造することができる。
【0026】
本発明の水中油滴型エマルションの製造方法においては、2液の混合性能が重要である。高い混合性能を得るための高圧混合法の種類としては、1)ワンジェット混合法、2)平行流混合法、を好適に使用することができ、以下各混合法について説明する。
【0027】
1)ワンジェット混合法
図1は、ワンジェット混合法を実施する静的混合装置の構造を示した好ましい概念図である。
【0028】
図1に示されるように、静的混合装置12は、油相L1と水相L2とを混合して反応させる筒状の混合室20(混合場)を有する混合器22と、混合器22の一端側開口に接続された水相L2を混合室20に導入するための第1導管24と、混合器22の他端側開口に接続された混合室で混合された混合液を排出するための排出管26を備えている。混合器22の側面側で第1導管24の出口近傍に、油相L1を混合室20に導入する第2導管28が接続されている。第1導管24の先端内部には、オリフィス30が形成されている。これにより、第1導管24に乱流の液体を噴射するノズル34が形成される。排出管26の接続位置は、混合器22の他端側近傍であれば、混合器22の側面部にあってもよい。
【0029】
混合器22の外周には、水やオイル等の熱容量が比較的大きな熱媒体が流れるジャケット21が混合器22を覆うように取り付けられている。ジャケット21は熱媒体流入口23Aと熱媒体流出口23Bを備えている。熱媒体流入口23Aと熱媒体流出口23Bは、図示しない熱媒体供給装置に接続されることが好ましい。
【0030】
熱媒体供給装置から混合器22内における油相L1、水相L2との反応温度を5℃〜60℃の範囲に制御可能な温度の熱媒体がジャケット21に供給され、再び熱媒体供給装置に循環される。反応温度は、油相L1、L2の反応の種類によるが、既述した水中油滴型エマルションを製造する場合の混合場における反応温度と同様に設定することが好ましい。ジャケット21を取り付けただけでは、設定した反応温度に到達させることが難しい場合には、油相L1、L2を調製する図示しない調製タンクに温度調整装置を設けることもできる。
【0031】
ブロック状のオリフィス材23に、オリフィス30を穿設加工する方法としては、マイクロ切削加工、マイクロ研削加工、噴射加工、マイクロ放電加工、LIGA法、レーザー加工、SPM加工等を好適に使用することができる。これらの加工法を使用することで、金属、セラミックス、ガラス等のオリフィス材23に100μm程度の噴出孔を精密に開けることができる。
【0032】
オリフィス材23の材質としては、加工性が良く、硬度がダイヤモンドに近い材質のものが好ましい。従って、ダイヤモンド以外の材質としては、種々の金属や金属合金に焼入れ、窒化処理、焼結処理等の硬化処理したものを好適に使用できる。また、セラミックスも硬度が高く、ダイヤモンドよりも加工性が優れているので好適に使用することができる。尚、本実施形態ではノズル34の絞り構造としてオリフィスの例で説明した。しかし、乱流の液体を噴射する機能を有するものであれば、オリフィスに限らず他の方法を用いることができる。
【0033】
第1導管24には、図示しない加圧手段が設けられ、水相L1がノズル34に加圧供給される。液体に高圧力をかける加圧手段として種々の手段が知られており、何れの手段も使用可能である。比較的入手し易く安価な手段としては、プランジャーポンプや増圧ポンプのような往復ポンプを使用することが好ましい。また、往復ポンプほど高圧を発生することはできないが、ロータリポンプの中にも高圧発生型のものがあるので、このようなポンプも使用することができる。
【0034】
静的混合装置12を構成する部材の材質としては、強度が高く、腐食防止性があり、原料流体の流動性を高くするものが好ましい。例えば、金属(鉄、アルミ、ステンレス鋼、チタン、その他の各種金属)、セラミックス(シリコン等)などが好ましく使用できる。また、金属材料の耐腐食性を更に高めるために、溶液と接する面に、樹脂(フッ素樹脂、アクリル樹脂等)、ガラス(石英等)をコーティング(ライニング)した部材を用いることもできる。
【0035】
本実施形態における水中油滴型エマルションの製造方法は、図2に模式的に示される。乱流の高速な高圧ジェット流の水相L2に同伴される同伴流に、水相L2に対して略直交方向から供給される油相L1を巻き込むことにより、水相L2と油相L1とが混ざり合って高性能な混合及び反応を得るものである。従って、静的混合装置の上記した混合室20及びノズル34は次の関係を有するように製作される。
【0036】
図1に示すように、混合室20の断面積の円相当径Dがノズル34のオリフィスの断面積の円相当径dよりも大径に形成される。円相当径とは、断面形状が円ではない場合において、同じ断面積に相当する円の直径をいう。特に、ノズル34のオリフィス30の円相当径dに対する混合室の円相当径Dの寸法比D/dは、5〜30の範囲であることが好ましい。
【0037】
混合室20の円相当径Dは、10mm以下であることが好ましく、1mm〜5mmがより好ましい。また、オリフィスの円相当径dは、0.1mm〜1mmが好ましい。また、混合室20の長さLは特に限定されないが、反応が行われる部分を温度調整するために、20mm〜150mmが好ましい。尚、混合室20の縦断面やオリフィスの縦断面の形状は、円形以外に矩形、台形、半円形などが採用できる。
【0038】
油相L1と水相L2とによる高性能な混合及び反応を得る上で、ノズル34から混合室へ噴出される水相の噴出圧力は、1MPa〜200MPaの範囲であることが好ましい。また、ノズル34から混合室へ噴出される水相L2の流速は、50m/秒〜700m/秒の範囲であることが好ましい。
【0039】
また、混合室20へ噴出される水相のノズル34の噴出口近傍におけるレイノルズ数Reは、2100〜150000の範囲であることが好ましい。
【0040】
また、図2に示されるように、水相L2と油相L1との、衝突角θが、0°〜90°であることが好ましい。上記のような高圧ジェット流や装置構成の適正な範囲は、流動解析ソフトとして既に日本で市販されているアールフロー社製の数値解析ソフト、R−Flowを用いて予めシミュレーションを行うことによって把握することができる。
【0041】
ノズル34から混合室20へ噴出される水相の噴出流形状は、ノズル34に設けたオリフィス30により規制される。噴出流形状は混合性能に影響を与える。これより、反応の目的に応じて、糸線状、円錐状、スリット状、扇状等の噴出流形状を形成するオリフィス30を適宜使用することが好ましい。
【0042】
例えば、本実施形態のように、ミリ秒オーダーの非常に反応速度の速い反応の場合には、糸線状の噴出流形状を形成するオリフィスが好ましい。反応速度が比較的遅い場合には、薄膜な噴出流形状を形成するオリフィスが好ましい。ミリ秒オーダーの非常に早い反応速度と比較的遅い反応速度との中間的な反応速度の場合には、円錐状の噴出流形状を形成するオリフィスが好ましい。
【0043】
図3〜図6は糸線状、円錐状、スリット状、扇状の各噴出流形状を形成するためのオリフィス30を図示したものである。このうち、各図における(a)はオリフィスを先端側から見た図であり、(b)はオリフィスの縦断面図であり、(c)はオリフィスの横断面図である。
【0044】
図3は、糸線状の直進流Aを混合室20に噴出するためのオリフィス30であり糸線状に形成される。図4は、円錐状の直進流Aを混合室に噴出するためのオリフィスであり、先端部が開いたラッパ管状に形成される。図5は、薄膜の直進流Aを混合室に噴出するためのオリフィスであり矩形なスリット状に形成される。図6は、扇状な薄膜の直進流Aを混合室に噴出するためのオリフィスであり、先端部が扇状に拡径して形成される。
【0045】
次に、図2を用いて、静的混合装置の作用について説明する。先ず、図2に示されるように、ノズル34から油性成分を溶解しない液(水相L2)が高圧ジェット流として噴射され(矢印A)、混合室において乱流を形成する。また、第2導管28から水溶性有機溶媒液(油相L1)が、水相L2に対して略直交する直交流として混合室に供給される(矢印B)。この場合、水相L2が油相L1に対して90°の角度で完全に直交しなくても、直交する速度ベクトル成分を主成分とするものであればよい。
【0046】
混合器22に取り付けられたジャケット21及び/又は油相L1、L2を調製する調製タンクの温度調整装置によって、混合器22内における反応温度は5℃〜60℃の範囲に制御されていることが好ましい。
【0047】
これにより、油相L1と水相L2とが適切な温度条件下で瞬時に且つ効率的に混合及び反応して水中油滴型エマルションが作り出され、エマルションを含有する反応液LM(エマルション分散液)が生成される。そして、反応液(混合液)LMは排出管26から直ちに排出される。これにより、100nm以下の微細な水中油滴型エマルションを製造することができる。
【0048】
次に、図1の静的混合装置の変形例について説明する。図7及び図8は、図1に示す静的混合装置の変形例の構造を示した概念図である。各図において、ジャケット21の記載は省略する。
【0049】
図7の静的混合装置12は、混合室20の第1導管24の出口近傍が排出口方向へ先端部が開いたラッパ管状、即ち流線型にしたこと以外は、図1と同様に構成される。このような形状とすることにより、油相L1、水相L2の滞留を抑制することができる。
【0050】
図8の静的混合装置12は、混合室20の第1導管24の出口近傍が排出口方向へ先端部が開いたラッパ管状即ち流線型にし、高圧ジェット流以外の溶液を供給する導管の数を2本にしたこと以外は、図1と同様に構成されている。
【0051】
これにより、油相L1、水相L2の滞留を抑制することができる。水相と油相との混合性能及び反応効率を向上させることができる。
【0052】
また、図1、図7及び図8において、混合する溶液の種類が2以上ある場合は、さらに溶液を導入する導管を複数本設置してもよい。
【0053】
なお、ワンジェット混合法を実施する静的混合装置は上述した図1、図7及び図8に限定するものではなく、油相L1と水相L2とをそれぞれの供給管から該供給管の口径よりも大径な混合場に噴出して反応させ、反応液を混合場の径よりも小径な排出口から排出する静的混合装置を使用し、水相L2を1MPa〜200MPaの高圧ジェット流且つ混合場に流入する時のレイノルズ数Reが2100〜150000の範囲で混合場に噴出し、残りの油相L1を水相よりも低い圧力で供給することのできるものであればよい。
【0054】
2)平行流混合法
図9は、平行流混合法を実施する静的混合装置50の好ましい一態様の構造を示した断面図である。図9に示されるように、静的混合装置50は、内管52と外管54とで同心円状の2重円筒管構造に形成される。これにより、内管52内に狭隘な内流路56が形成される。内管52と外管54との間に環状の狭隘な環状外流路58が形成される。また、内管52の出口52Aは外管54の出口54Aよりも幾分奥に引っ込み、これにより形成される空間に混合場60が形成される。内流路56の流入口56Aに第1供給管62が接続される。環状外流路58の流入口58Aに第2供給管64が接続される。
【0055】
また、外管54の外周にはジャケット51が取り付けられている。図1で説明したのと同様に、混合場60における油相L1、水相L2との反応温度が制御される。この場合も、油相L1、水相L2を調製するため、図示しない調製タンクに温度調整装置を設けることができる。尚、図9の符号51Aはジャケット51の熱媒体入口であり、符号51Bは熱媒体出口である。
【0056】
第1供給管62から油相L1が導入され、第2供給管64から水相L2が導入される。油相L1及び水相L2が混合場60に流入する時のレイノルズ数Reが上述の範囲を満たすように調整される。これにより、混合場60において油相L1と水相L2とが適切な反応温度条件下で瞬時に且つ効率的に混合及び反応し、水中油滴型エマルションを含有する反応液(混合液)LMが形成される。反応液LMは混合場60の出口66から直ちに排出される。
【0057】
これにより、100nm以下の微細な水中油滴型エマルションを製造することができる。
【0058】
平行流混合法を実施する静的混合装置50は2重円筒管構造に限定されるものではなく、例えば、複数の油相を水相L2と混合させる場合には、溶液の数に相当する数の多重円筒管構造とするとよい。
【0059】
図10は、油相L1と水相L2の一方を内管52から混合場にレイノルズ数Reが上述の範囲を満たす糸線状の噴出流形状で、他方の液を外管54から混合場にレイノルズ数Reが上述の範囲を満たす環状の噴出流形状で、これらの溶液を噴出するノズル径よりも大径な混合室(混合場)に噴出して、反応液LMを混合場の径よりも小径な排出管26から排出するものである。なお、図9と同じ部材は同符号を付して説明は省略した。また、図1で示したと同じ部材には同符号を付して説明する。
【0060】
図10の静的混合装置70は、外管54の先端に連接される、外管54の径よりも大径の円筒状の混合室20(混合場)を備えている。この混合室20の先端には混合室20の径よりも小径の排出管26が設けられている。
【0061】
外管54及び混合室20の外周にはジャケット53が取り付けられている。図1で説明したと同様に、ジャケット53により、外管54及び混合器22内における油相L1、水相L2との反応温度が制御される。この場合も、油相L1、水相L2を調製する図示しない調製タンクに温度調整装置を設けることができる。尚、図10の符号53Aはジャケットの熱媒体入口であり、符号53Bは熱媒体出口である。
【0062】
第1供給管62から油相L1が、第2供給管64から水相L2がそれぞれ混合室20に導入される。油相L1及び水相L2が混合場に流入する時のレイノルズ数Reが上術の範囲を満たすようにする。
【0063】
従って、油相L1と水相L2とを適切な反応温度条件下で瞬時に且つ効率的に反応して水中油滴型エマルションを含有する反応液(混合液)が作り出される。この反応液LMは排出管26から直ちに排出される。
【0064】
このように、水相を混合室に環状に噴出すると共に、その環状の中心に油相を糸線状に噴出させることにより、油相L1と水相L2とが瞬時に且つ効率的に混合及び反応し、水中油滴型エマルションを含有する反応液が形成される。これにより、100nm以下の微細な水中油滴型エマルションを製造することができる。
【0065】
なお、図9、10において、混合室20,60の筒径D(外管の内径)、内管の内径d及びこれらの寸法関係はワンジェット混合法の場合の筒径Dとオリフィスd1との関係と同様である。また、混合室の長さもワンジェット混合法の場合と同様である。更に、第1及び第2オリフィスを形成する方法、オリフィス材の材質もワンジェット混合法で説明したのと同様である。
【0066】
また、平行流混合法を実施する静的混合装置50,70は、上述した図9や図10のものに限定するものではなく、混合及び反応させると共に反応液を混合場から排出し、複数種の溶液が混合場に流入する時のレイノルズ数Reが上述の範囲を満たすようにすることができるものであればよい。
【0067】
以上、本発明に係る水中油滴型エマルションの製造方法の各実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
【0068】
例えば、混合場内の温度制御は、混合場を持つ装置全体を温度制御された容器中に入れることにより制御してもよいし、金属抵抗線やポリシリコンなどのヒーター構造を装置内に作り込み、加熱についてはこれを使用し、冷却については自然冷却でサーマルサイクルを行ってもよい。
【0069】
[界面活性剤]
本発明で用いられる界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤より任意に選択される。前記界面活性剤は、油相及び水相のいずれか一方に含有しても、また、双方に含有してもよいが、少なくとも1つは水相に添加すること好ましい。本発明で使用できる界面活性剤の少なくとも一つはエマルション粒径の微細化の観点から、水溶性の界面活性剤であることが好ましい。水溶性の界面活性剤としては、水性媒体に溶解する界面活性剤であれば、特に限定は無い。
【0070】
<非イオン性界面活性剤>
本発明の水中油滴型エマルションは、乳化分散向上のためHLB10以上でHLB18以下の非イオン性界面活性剤(単に、非イオン性界面活性剤ともいう。)を含有する。
【0071】
前記非イオン性界面活性剤は、前述の通り、HLB10以上でHLB18以下とする必要があるが、エマルションの安定性の観点から、好ましくは12以上16以下である。
【0072】
ここで、HLBとは、通常界面活性剤の分野で使用される親水性−疎水性のバランスであり、通常用いる計算式として、例えば川上式等が使用できる。
【0073】
本発明においては、下記川上式を採用する。
【0074】
HLB=7+11.7log(Mw/M0)
ここで、Mwは親水基の分子量、M0は疎水基の分子量である。
【0075】
また、メーカーが公表しているカタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。また、上記の式からも分かるように、HLBの加成性を利用して、任意のHLB値の非イオン性界面活性剤を得ることができる。
【0076】
本発明で好適に使用できる非イオン性界面活性剤の例としては、(モノ、ジ、トリ)グリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン有機酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、などが挙げられる。上記の中でも、エマルションの安定性向上の観点から、より好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステル、およびショ糖脂肪酸エステルである。
【0077】
これらの非イオン性界面活性剤をそれぞれ単独または、それらの2種以上を任意の割合で併用することもできる。
【0078】
また、上記の非イオン性界面活性剤は蒸留などで高度に精製されたものであることは必ずしも必要ではなく、反応混合物であってもよい。
【0079】
本発明に用いられる、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、平均重合度が4以上、好ましくは6〜10のポリグリセリンと、炭素数8〜18の脂肪酸、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、およびリノール酸とのエステルである。
【0080】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリンモノパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。
【0081】
これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0082】
市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL Hexaglyn 1−L,NIKKOL Hexaglyn 1−M,NIKKOL Decaglyn 1−L,NIKKOL Decaglyn 1−M,NIKKOL Decaglyn 1−SV,NIKKOL Decaglyn 1−50SV,NIKKOL Decaglyn 1−ISV,NIKKOL Decaglyn 1−O,NIKKOL Decaglyn 1−OV,NIKKOL Decaglyn 1−LN,三菱化学フーズ(株)社製リョートーポリグリエステル L−10D、L−7D、M−10D、M−7D、P−8D、S−28D、S−24D、SWA−20D、SWA−15D、SWA−10D、O−15D、理研ビタミン(株)社製ポエムJ−0381V、ポエムJ−0021Vなどが挙げられる。
【0083】
本発明に用いられる、ショ糖脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が12以上のものが好ましく、12〜20のものがより好ましい。
【0084】
ショ糖脂肪酸エステルの好ましい例としては、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル等が挙げられる。
【0085】
本発明においては、これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0086】
市販品としては、例えば、三菱化学フーズ(株)社製リョートーシュガーエステルS−1170、S−1170S、S−1570、S−1670、P−1570、P−1670、M−1695、O−1570、OWA−1570、L−1695、LWA−1570、第一工業製薬(株)社製の、DKエステルF140、DKエステルF160、DKエステルSS等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
本発明には上記の水溶性非イオン性界面活性剤と併用してレシチンを用いることができる。本発明に用いられるレシチンは、グリセリン骨格と脂肪酸残基及びリン酸残基を必須構成成分とし、これに、塩基や多価アルコール等が結合したもので、リン脂質とも称されるものである。
【0088】
レシチンは、分子内に親水基と疎水基を有しているため、従来から、食品、医薬品、化粧品分野で、広く乳化剤として使用されている。
【0089】
産業的にはレシチン純度60%以上のものがレシチンとして利用されており、本発明でも利用できるが、微細な油滴粒径の形成及び機能性油性成分の安定性の観点から、好ましくは一般に高純度レシチンと称されるものであり、これはレシチン純度が80%以上、より好ましくは90%以上のものである。
【0090】
レシチンとしては、植物、動物及び微生物の生体から抽出分離された従来公知の各種のものを挙げることができる。
【0091】
このようなレシチンの具体例としては、例えば、大豆、トウモロコシ、落花生、ナタネ、麦等の植物や、卵黄、牛等の動物及び大腸菌等の微生物等から由来する各種レシチンを挙げることができる。
【0092】
このようなレシチンを化合物名で例示すると、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルメチルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ビスホスアチジン酸、ジホスファチジルグリセリン(カルジオリピン)等のグリセロレシチン;スフィンゴミエリン等のスフィンゴレシチン等を挙げることができる。
【0093】
また、本発明においては、上記の高純度レシチン以外にも、水素添加レシチン、酵素分解レシチン、酵素分解水素添加レシチン、ヒドロキシレシチン等を使用することができる。本発明で用いることができるこれらのレシチンは、単独又は複数種の混合物の形態で用いることができる。
【0094】
これら非イオン性界面活性剤の添加量は、エマルション全質量に対して、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜20質量%、更に好ましくは1〜15質量%である。
【0095】
また、機能性油性成分に対しては、好ましくは10〜1000質量%、より好ましくは50〜500質量%である。
【0096】
非イオン性界面活性剤の添加量を0.1質量%以上とすることにより、微細な粒径の乳化物が得られ易くなり、得られた乳化物の安定性が向上する点で好ましい。また、50質量%以下とすることにより、乳化物の泡立ちが激しくなる等の問題点を生じ難くなる点で好ましい。
【0097】
本発明の水中油滴型エマルションの製造方法における第1の態様においては、前記HLB10以上でHLB18以下の非イオン性界面活性剤を含有することが必要である。
【0098】
また、本発明の水中油滴型エマルションの製造方法における第2の態様においては、前記非イオン性界面活性剤を含有することが必要である。
【0099】
<アニオン性界面活性剤>
アニオン界面活性剤としては、ステアリン酸カリウム、ベヘニン酸カリウム等の高級脂
肪酸塩、P O E ラウリルエーテルカルボン酸ナトリウム等のアルキルエーテルカルボン酸塩、N − ステアロイル− L − グルタミン酸モノナトリウム塩等のN − アシル− L − グルタミン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等の高級アルキル硫酸エステル塩、P O E ラウリル硫酸トリエタノールアミン、P O E ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、ラウロイルサルコシンナトリウム等のN − アシルサルコシン酸塩、N − ミリストイル− N − メチルタウリンナトリウム等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、ステアリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩、P O E オレイルエーテルリン酸ナトリウム、P O E ステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のアルキルエーテルリン酸塩、ジ− 2 − エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼン、スルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等の高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩が挙げられる。
【0100】
<カチオン性界面活性剤>
カチオン界面活性剤としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等のジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化ポリ( N 、N −ジメチル− 3 、5 − メチレンピペリジニウム) 、塩化セチルピリジニウム等のアルキルピリジニウム塩、アルキル四級アンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモリホニウム塩、P O E アルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムが挙げられる。
【0101】
<両性界面活性剤>
両性界面活性剤としては、例えば、2 − ウンデシル− N 、N 、N − ( ヒドロキシエチルカルボキシメチル) − 2 − イミダゾリンナトリウム、2 − ココイル− 2 − イミタゾリニウムヒドロキサイド− 1 − カルボキシエチロキシ2 ナトリウム塩等の、イミダゾリン系両性界面活性剤、2 − ヘプタデシル− N − カルボキシメチル− N − ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系界面活性剤等が挙げられる。
【0102】
また、これらを単独で添加することも可能であり、また二種以上を組み合わせて添加することも可能である。
【0103】
エマルションの経時安定性を高めるという理由から、イオン性界面活性剤を含有することが好ましく、クラフト点の低いイオン性界面活性剤が特に望ましい。
【0104】
一般にイオン性界面活性剤は水溶性溶媒への溶解度が低いが、この場合、未中和形態のイオン性界面活性剤を水溶性溶媒に溶解し、中和剤を溶解した水相に注入することにより、水相中で親水基をイオン化させ親水化することができる。
【0105】
イオン性界面活性剤は、水溶性溶媒に溶解させる場合、N − ステアロイル− L − グルタミン酸、イソステアリン酸、P O E ( 4 . 5 ) ラウリルエーテルカルボン酸等が好適であり、水相のp H を調整することにより水中でイオン化し親水性界面活性剤として作用する。水相に溶解させる場合、N − ステアロイル− L − グルタミン酸モノナトリウム、イソステアリン酸カリウム、P O E ( 4 . 5 ) ラウリルエーテルカルボン酸ナトリウム、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N − ステアロイル− N − メチルタウリンナトリウム等が好適である。
【0106】
界面活性剤の配合量は、組成物全量に対して0.001〜1質量%であり、好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0107】
[油性成分]
本発明における油相には油性成分、機能性油性成分を含有する。また、必要に応じて、後述の本発明における非イオン性界面活性剤、及びその他の添加物を添加することができる。
【0108】
ここで、「機能性油性成分」とは、食品や化粧品に使用した際に有用な効果を示す油性成分を表す。
【0109】
また、本発明における「化粧品用機能性材料」とは、前記機能性油性成分のうち、化粧品用材料として用いることができる全ての成分を言う。
【0110】
本発明における「食品用機能性材料」とは、前記機能性油性成分のうち、食品用材料として用いることができる全ての成分をいう。
【0111】
本発明に使用できる油性成分としては、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等の液体油脂、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等の固体油脂、ミツロウ、カンデリラロウ、カルナウバロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、 P O E ラノリンアルコールエーテル、 P O E ラノリンアルコールアセテート、 P O E コレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、P O E 水素添加ラノリンアルコールエーテル等のロウ類、流動パラフィン、スクワレン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素油、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、1 2 − ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の高級脂肪酸、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール、モノステアリルグリセリンエーテル、2 − デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、 1 2 − ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ− 2 − エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N − アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ− 2 − ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ− 2 − エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ− 2 −エチルヘキシル酸ペンタンエリスリトール、トリ− 2 − エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル− 2 − エチルヘキサノエート、2 −エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ− 2 − ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸− 2 − ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N − ラウロイル− L − グルタミン酸− 2 − オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ− 2 − ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ− 2 − エチルヘキシル、ミリスチン酸− 2 − ヘキシルデシル、パルミチン酸− 2 − ヘキシルデシル、アジピン酸2 − ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸− 2 − エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル等の合成エステル油、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロ
キサン等の鎖状ポリシロキサン、デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサン等の環状ポリシロキサン、3 次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコンゴム等のシリコーンが挙げられる。
【0112】
さらに、ステロール類、パラメトキシケイ皮酸オクチル、2 − ヒドロキシ− 4 − メトキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤、ビタミンA 及びその誘導体、ビタミンD 及びその誘導体、ビタミンE 及びその誘導体、ビタミンK 及びその誘導体等のビタミン類、動植物抽出物、油溶性薬剤、色素、香料等が挙げられる。
【0113】
前記機能性油性成分として、化学構造面からは、油脂類、炭化水素、ロウ類、エステル類、脂肪酸類、高級アルコール類、高分子類、油溶性色素類、油溶性蛋白質などがある。また、それらの混合物である、各種の植物由来油、動物由来油も含まれる。
【0114】
また、前記機能油性成分の機能面からは、紫外線吸収剤、抗酸化剤、抗炎症剤、保湿剤、毛髪保護剤、分散剤、溶剤、美白剤、抗シミ剤、細胞賦活剤、エモリエント剤、角質溶解剤、帯電防止剤、ビタミン類、メタボリックシンドローム改善剤、降圧剤、鎮静剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0115】
本発明に用いられる好ましい機能性油性成分の例としては、カロテノイド類、ビタミンE類(トコフェロール、トコトリエノール等)、コエンザイムQ類、ω−3油脂類(EPA、DHA、リノレン酸等を含む油脂)などを挙げることができる。
【0116】
本発明において、これらの機能性油性成分の中で、特に油溶性機能色素であるカロテノイド(カロチノイドとも言う)類に本発明の製造方法を適用すると体内への吸収性が良く且つ保存安定性に優れるという顕著な効果を有する水中油滴型エマルションとすることができる。
【0117】
本発明に用いられるカロテノイド類は常法に従って得られるものが使用できる。カロテノイド類は、天然に存在する黄色から赤色のテルペノイド類の色素であり、これには植物類、藻類、及びバクテリアのものが含まれる。
【0118】
カロテノイド類としては、炭化水素類(カロテン類)及びこれらの酸化アルコール誘導体類(キサントフィル類)が挙げられる。
【0119】
これらの例として、アクチニオエリスロール、アスタキサンチン、ビキシン、カンタキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、β−8’−アポ−カロテナール(アポカロテナール)、β−12’−アポ−カロテナール、α−カロテン、β−カロテン、”カロテン”(α−及びβ−カロテン類の混合物)、γ−カロテン、β−クリプトキサンチン、ルテイン、リコピン、ビオレリトリン、ゼアキサンチン、及びそれらのうちヒドロキシル又はカルボキシルを含有するもののエステル類が挙げられる。
【0120】
カロテノイド類の多くは、シス及びトランス異性体の形で天然に存在するが、合成物はしばしばラセミ混合物である。
【0121】
カロテノイド類は一般に植物素材から抽出することができる。これらのカロテノイド類は種々の機能を有しており、例えば、マリーゴールドの花弁から抽出するルテインは家禽の餌の原料として広く使用され、家禽の皮膚及び脂肪並びに家禽が産む卵に色を付ける機能がある。
【0122】
本発明において用いられるカロテノイド類は乳化粒径の微細化の観点から、好ましくは常温で油状のものである。特に好ましい例としては、黄色から赤色の範囲の着色料として知られているアスタキサンチンである。
【0123】
アスタキサンチンは、着色料としてだけでなく酸化防止効果、抗炎症効果、皮膚老化防止効果、美白効果を有することから、従来より、食品、化粧品、医薬品の原材料及びそれらの加工品等に添加されている。
【0124】
アスタキサンチンは、476nm(エタノール)、468nm(ヘキサン)に吸収極大を持つ赤色の色素でカロテノイドの一種キサントフィルに属している(Davies, B.H. : In “Chemistry and Biochemistry of Plant Pigments”, T. W. Goodwin ed., 2nd ed., 38−165, Academic Press, NY, 1976.)。アスタキサンチンの化学構造は3,3’−dihydroxy−β,β−carotene−4,4’−dione (C40H5204、分子量596.82)である。
【0125】
本発明においては、上記のアスタキサンチン及びアスタキサンチンエステル等の誘導体を含めて「アスタキサンチン類」と称する。
【0126】
アスタキサンチンは、分子の両端に存在する環構造の3(3’)−位の水酸基の立体配置により異性体が存在する3S,3S’−体、3S,3R’−体(meso−体)、3R,3R’−体の三種で、さらに分子中央の共役二重結合のcis−、trans−の異性体も存在する。例えば全cis−、9−cis体と13−cis体などの如くである。
【0127】
前記3(3’)−位の水酸基は脂肪酸とエステルを形成することができる。オキアミから得られるアスタキサンチンは、脂肪酸二個結合したジエステル(Yamaguchi,K., Miki,W., Toriu, N., Kondo,Y., Murakami,M., Konosu,S., Satake,M., Fujita,T. : The composition of carotenoid pigments in the antarctic krill Euphausia superba, Bull. Jap. Sos. Sci. Fish., 1983, 49, p.1411−1415.)、H. pluvialisから得られるものは3S,3S’−体で、脂肪酸一個結合したモノエステル体が多く含まれている(Renstrom, B., Liaaen−Jensen, S. : Fatty acids of some esterified carotenols, Comp. Biochem. Physiol. B, Comp. Biochem., 1981, 69, p.625−627.)。
【0128】
また、Phaffia Rhodozymaより得られるアスタキサンチンは、3R,3R’−体(Andrewes, A.G., Starr, M.P. : (3R,3’R)−Asttaxanthin from the yeast Phaffa rhodozyma, Phytochem., 1976, 15, p.1009−1011.)であり、通常天然に見出される3S,3S’−体と反対の構造を持っている。また、これは脂肪酸とエステル形成していないフリー体で存在している(Andrewes, A.G., Phaffia, H.J., Starr, M.P. : Carotenids of Phaffia rhodozyma, a red pigmented fermenting yeast, Phytochem., 1976, 15, p.1003−1007.)。
【0129】
アスタキサンチンおよび同エステル体はR. Kuhnらによってロブスター(Astacus gammarus L.)から初めて分離され、その推定構造が開示された(Kuhn, R., Soerensen, N.A. : The coloring matters of the lobster (Astacus gammarus L.), Z. Angew. Chem.,1938, 51, p.465−466.)。それ以来、アスタキサンチンが自然界に広く分布し、通常アスタキサンチン脂肪酸エステル体として存在すること、甲殻類などでたんぱく質と結合したアスタキサンチン蛋白(オボルビン、クラスタシアニン)としても存在することが明らかにされている(Cheesman, D.F. : Ovorubin, a chromoprotein from the eggs of the gastropod mollusc Pomacea canaliculata, Proc. Roy. Soc. B, 1958, 149, p.571−587.)。
【0130】
前記アスタキサンチン及びアスタキサンチンのエステル(アスタキサンチン類)を含有するアスタキサンチン含有オイルは、アスタキサンチン及び/又はそのエステルを含有する天然物から分離・抽出することができる。例えば、赤色酵母ファフィア、緑藻ヘマトコッカス、海洋性細菌等を培養し、その培養物からの抽出物、ナンキョクオキアミ等からの抽出物を挙げることができる。
【0131】
ヘマトコッカス藻抽出物(ヘマトコッカス藻由来色素)は、オキアミ由来の色素や、合成されたアスタキサンチンとは異なることが知られている。
【0132】
本発明において用いることができるアスタキサンチン類は、前記抽出物(抽出エキス)、またさらにこの抽出物を必要に応じて適宜精製したものでもよく、また合成品であっても良い。前記アスタキサンチン類としては、ヘマトコッカス藻から抽出されたもの(以下、ヘマトコッカス藻抽出物ともいう。)が、品質、生産性の点から特に好ましい。
【0133】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物の由来としては、具体的には、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)、ヘマトコッカス・ラキュストリス(Haematococcus lacustris)、ヘマトコッカス・カペンシス(Haematococcus capensis)、ヘマトコッカス・ドロエバゲンシス(Haematococcus droebakensis)、ヘマトコッカス・ジンバビエンシス(Haematococcus zimbabwiensis)等が挙げられる。
【0134】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻の培養方法は、特開平8−103288号公報等に開示された様々な方法を採用することができ、特に限定されるものではなく、栄養細胞から休眠細胞であるシスト細胞に形態変化していればよい。
【0135】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物は、上記の原料を、必要に応じて、例えば特開平5−68585号公報等に開示された方法により細胞壁を破砕して、アセトン、エーテル、クロロホルム及びアルコール(エタノール、メタノール等)等の有機溶剤や、超臨界状態の二酸化炭素等の抽出溶剤を加えて抽出することによって得られる。
【0136】
前記ヘマトコッカス藻抽出物は、特開平2−49091号公報記載の色素同様、色素純分としてはアスタキサンチンもしくはそのエステル体を含み、エステル体を、一般的には50モル%以上、好ましくは75モル%以上、より好ましくは90モル%以上含むものである。
【0137】
また、本発明において、広く市販されているヘマトコッカス藻抽出物を用いることができ、例えば、武田紙器(株)製のASTOTS−S、同−2.5O、同−5O、同−10O等、富士化学工業(株)製のアスタリールオイル50F、同 5F等、東洋酵素化学(株)製のBioAstinSCE7等が挙げられる。
【0138】
本発明において、ヘマトコッカス藻抽出物中のアスタキサチン類の色素純分としての含有量は、好ましくは0.001〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜25質量%である。
【0139】
本発明における機能性油性成分は機能性の異なる成分同志を組み合わせる事で相乗効果をもたらす場合がある。例えば、カロテノイド類とトコフェロール類を組み合わせで含有するエマルション組成物は特に抗酸化力において好ましいものである。トコフェロール類とはトコフェロールまたはその誘導体からなる化合物群から選ばれるものである。トコフェロールまたはその誘導体からなる化合物群としては、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸−dl−α−トコフェロール、リノール酸−dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール等のトコフェロール及びその誘導体、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール等が挙げられる。これらは、混合物の状態で使用する場合が多く、抽出トコフェロール、ミックストコフェロールなどと呼ばれる状態で使用できる。本発明のエマルション組成物におけるカロテノイドに対するトコフェロールの含有量は、特に限定されないが、カロテノイド量に対して0.1〜5の比率であることが好ましく、より好ましくは0.2〜3、更に好ましくは0.5〜2の比率である。
【0140】
本発明の水中油滴型エマルションにおける機能性油性成分の含有量は、乳化粒径の微細化と生産効率の観点から、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%、更に好ましくは0.2〜2質量%である。
【0141】
[水溶性溶媒]
本発明の水中油滴型エマルションにおける油相には、機能性油性成分及びその他の成分を溶解するために、また、得られるエマルション中の油滴の平均粒径をより微細化するために有機溶媒を添加することが好ましい。
【0142】
本発明に使用できる有機溶媒としては水溶性であることが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等及びそれらの混合物を挙げられる。これらの中でも、食品、化粧品等への用途を考慮したとき、エタノール、イソプロパノール、アセトンが好ましく、エタノールが特に好ましい。尚、本発明においては、油相中における有機溶媒の含有量は、少ないほど好ましい。
【0143】
[酸化防止剤]
本発明の水中油滴型エマルションは、機能性油性成分の安定性保持の観点から、酸化防止剤を含むことが好ましい。
【0144】
前記酸化防止剤は、油相及び水相のいずれか一方に含有しても、また、双方に含有してもよいが、少なくとも1つは油相に添加することが好ましい。
【0145】
酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、(a)アスコルビン酸またはエリソルビン酸またはそれらの塩、あるいはアスコルビン酸誘導体またはエリソルビン酸誘導体またはそれらの塩からなる化合物群、(b)ポリフェノール類からなる化合物群、(c)ラジカル捕捉剤等が挙げられる。
【0146】
また、親水性の酸化防止剤、及び/又は、油溶性の酸化防止剤を、単独又は併用して使用することができる。例えば、親水性の酸化防止剤としては化合物群(a)に属する化合物、油溶性の酸化防止剤としては化合物群(b)に属する化合物が挙げられる。
【0147】
以下、前記酸化防止剤として、前記化合物群(a)〜(c)の具体的な例を挙げるが、本発明に使用できる酸化防止剤を制限するものではない。
【0148】
(a)アスコルビン酸またはエリソルビン酸またはそれらの誘導体またはそれらの塩
アスコルビン酸またはアスコルビン酸誘導体またはそれらの塩として、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸Na、L−アスコルビン酸K、L−アスコルビン酸Ca、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステル、L−アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム塩、L−アスコルビン酸2−グルコシド等が挙げられる。これらのうち、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸Na、L−アスコルビン酸2−グルコシド、L−アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム塩が特に好ましい。
【0149】
エリソルビン酸またはエリソルビン酸誘導体またはそれらの塩として、エリソルビン酸、エリソルビン酸Na、エリソルビン酸K、エリソルビン酸Ca、エリソルビン酸リン酸エステル、エリソルビン酸硫酸エステル等が挙げられる。これらのうち、エリソルビン酸、エリソルビン酸Naが特に好ましい。
【0150】
(b)ポリフェノール類からなる化合物群
ポリフェノール類からなる化合物群として、フラボノイド類(カテキン、アントシアニン、フラボン、イソフラボン、フラバン、フラバノン、ルテイン)、フェノール酸類(クロロゲン酸、エラグ酸、没食子酸、没食子酸プロピル)、リグナン類、クルクミン類、クマリン類などを挙げることができる。
【0151】
また、これらの化合物は、以下のような天然物由来の抽出物中に多く含まれるため、抽出物という状態で利用することができる。
【0152】
例えば、カンゾウ抽出物、キュウリ抽出物、ケイケットウ抽出物、ゲンチアナ(リンドウ)抽出物、ゲンノショウコ抽出物、コレステロール及びその誘導体、サンザシ抽出物、シャクヤク抽出物、イチョウ抽出物、コガネバナ(オウゴン)抽出物、ニンジン抽出物、マイカイカ(マイカイ、ハマナス)抽出物、サンペンズ(カワラケツメイ)抽出物、トルメンチラ抽出物、パセリ抽出物、ボタン(ボタンピ)抽出物、モッカ(ボケ)抽出物、メリッサ抽出物、ヤシャジツ(ヤシャ)抽出物、ユキノシタ抽出物、ローズマリー(マンネンロウ)抽出物、レタス抽出物、茶抽出物(烏龍茶、紅茶、緑茶等)、微生物醗酵代謝産物、羅漢果抽出物等が挙げられる(かっこ内は、植物の別名、生薬名等を記載した。)。
【0153】
これらのポリフェノール類のうち、安定化効果の大きさの点で特に好ましいものとしては、カテキン、ローズマリー抽出物、グルコシルルチン、エラグ酸、没食子酸を挙げることができる。
【0154】
(c)ラジカル捕捉剤からなる群
ラジカル捕捉剤は、ラジカルの発生を抑えるとともに、生成したラジカルをできる限り速やかに捕捉し、連鎖反応を断つ役割を担う添加剤である。
【0155】
本発明において用いることができるラジカル捕捉剤としては、ラジカル捕捉剤としての機能を有するものであればいずれでもよい。
【0156】
ラジカル捕捉剤としての機能を確認する直接的な方法としては、試薬と混合して、ラジカルを捕捉する様子を分光光度計やESR(電子スピン共鳴装置)によって測定する方法が知られている。これらの方法では、試薬として、DPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)や、ガルビノキシルラジカルが使用される。
【0157】
前記酸化防止剤の含有量は、水中油滴型エマルションの全質量に対して、一般的には0.1〜10質量%であり、好ましくは0.5〜5質量%、より好ましくは0.2〜2質量%である。
【0158】
[安定化剤]
エマルションの安定化剤および、後述するような乾燥粉末化のキャリア素材として、種々の水溶性高分子化合物や水分散性微粒子を用いることができる。以下、前記安定化剤およびキャリア素材を併せて安定化剤というものとする。
【0159】
前記水溶性高分子化合物としては、広く合成高分子、天然高分子、半合成高分子のいずれも用いることができる。
【0160】
本発明では水溶性高分子化合物の中でも、安定性及び粉末化の容易性の観点から、特に糖類、タンパク質類およびそれらの複合体が好ましい。
【0161】
糖類としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類、デキストリン、デンプン誘導体、ガム類、ムコ多糖類、セルロース類等を含むがこれらに限定されるものではない。
【0162】
これらの中で、代表的なものは、アガロース、アラビノース、アミロース、アミロペクチン、アカシアガム、アラビアガム、アラビノガラクタン、アルキルグリコシド、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルドース、イヌリン、オリゴ糖、ガッティガム、カードラン、カラギーナン、ガラクトマンナン、ガラクトース、キサンタンガム、キシロース、キシログルカン、キチン、キトサン、グアーガム、クラスターデキストリン、β−グルカン、グルクロン酸、グリコーゲン、グリコサミノグリカン、グリセルアルデヒド、グルコサミン、グルコース、グルコマンナン、ケトース、コンドロイチン硫酸、サイリウムシードガム、ジェランガム、シクロデキストリン、スクロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、セロビオース、ソルビトール、デオキシリボース、デキストリン、マルトデキストリン、転化糖、デンプン、大豆多糖類、糖アルコール、糖タンパク質、トラガントガム、トレハロース、ヒアルロン酸、フコース、フルクトース、プルラン、ペクチン、ヘパリン、ヘミセルロース、マルトース、マンニトール、マンナン、ラクトース、リボース等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0163】
これらの糖類の中では、粉末の取り扱い性の観点から、特に多糖類が好ましい。多糖類の中でも、乳化粒径の微細化および粉末の取り扱い性の点で、安定化および粉末化素材として、アラビアガム、イヌリン、デキストリン、マルトデキストリンが好ましく、アラビアガム、イヌリンが特に好ましい。
【0164】
また、本発明で用いることができるタンパク質類は、アミノ酸がペプチド結合で重合したポリマー又はオリゴマーであればいかなる種類のものも用いることができるが、より好ましくは天然由来で且つ水溶性のものである。
【0165】
タンパク質にはアミノ酸からなる単純タンパク質と、アミノ酸以外の構成成分を含む複合タンパク質とがあり、いずれも用いることができる。
【0166】
単純タンパク質の例としては、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、フィブロイン、セリシン、ケラチン、プロタミン等が挙げられる。
【0167】
また複合タンパク質としては、炭水化物に結合したタンパク質である糖タンパク質、脂質に結合したタンパク質であるリポタンパク質、金属イオンに結合したタンパク質である金属タンパク質、リボ核酸に結合したタンパク質である核タンパク質、リン酸基に結合したタンパク質であるリンタンパク質等がある。
【0168】
一方、一般的には、タンパク質原料から呼称される場合も多く、動物性筋肉タンパク質、乳タンパク質、卵タンパク質、米タンパク質、小麦タンパク質(小麦グルテン)、大豆タンパク質、酵母タンパク質、細菌タンパク質等が挙げられる。
【0169】
これらは、いくつかのタンパク質の混合物である事が多いが、本発明でそのまま使用することもできる。
【0170】
これらのタンパク質類の中では、特にゼラチンと水溶性コラーゲンが好ましい。
【0171】
これらの安定化剤は、機能性油性成分に対して任意の割合で添加することができるが、エマルションの安定化のためには、機能性油性成分に対して10質量%以上500質量%以下が好ましく、50質量%以上200質量%以下がより好ましく、また、粉末化キャリア素材として用いる場合には機能性油性成分の総量と等量以上10000倍以下用いることが好ましく、特に好ましくは、3倍以上100倍以下である。
【実施例】
【0172】
次に、実施例について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0173】
<組成物の処方>
(水相組成物)
下記成分を液が透明になるまで50℃超音波5分とスターラー撹拌1分を交互に30分間繰り返し、水相組成物を得た。
・モノラウリン酸デカグリセリル(HLB=15.5) 3.0g
・レシチン(大豆由来) 3.0g
・純水 1000ml
(油相組成物)
下記成分を液が透明になるまで50℃超音波5分とスターラー撹拌1分を交互に30分間繰り返し、油相組成物を得た。
・ヘマトコッカス藻抽出物(アスタキサンチン類含有率20質量%) 3g
・ミックストコフェロール 0.8g
・ショ糖ラウリン酸エステル(HLB=16) 3g
・エタノール 135ml
<実施例1>
上述の処方により製造された油相L1と水相L2を使用して実験を行った。実施例及び比較例とも同じ油相L1と水相L2が使用された。
【0174】
図1に示される静的混合装置12において、円相当径Dが2mmであり、長さLが140mmである混合室20に、糸線状ダイヤモンドオリフィスの円相当径dが0.2mmであるオリフィスから水相L2を10MPaの圧力で噴出させた。そのとき3連プランジャーポンプが使用され、水相L2の流量202ml/min(107m/sec)であり、噴出口近傍のRe数は21400であった。混合室の容積は0.44mlであった。
【0175】
次いで、油相L1を供給径φ0.5mmの供給口から流量29ml/min(2.45m/sec)で、圧力4kPaで3連プランジャーポンプ使用して供給した。油相L1と水相L2の温度は、温度制御され24℃であった。
【0176】
<比較例1>
1Lのガラスビーカーに水相700mlを入れ、水相組成物を撹拌式ホモジナイザー(マイクロテック・ニチオン製)15000rpmで撹拌した。次いで、実施例1と同じ組成になるよう油相組成物100mlをガラスビーカーに添加し、3分間撹拌して乳化させた。
【0177】
<比較例2>
500mlガラスビーカーに水相350mlを入れ、この水相組成物をスリーワンモーターにより500rpmで撹拌した。次いで、実施例1と同じ組成になるよう油相組成物50mlを供給径φ0.5mmの供給口から流量75ml・min(6.3m・sec)でガラスビーカーに供給した。油相組成物はシリンジポンプ使用して供給した。比較例2はスリーワンモーター撹拌水相中へ油相を高速注入した実験である。
【0178】
実施例1及び比較例1,2の結果を表1にまとめた。
【0179】
【表1】

【0180】
以上のように、そこで本発明に係る水中油滴型エマルションの製造方法を適することにより、エネルギー効率が良く温度上昇がほとんどなく、かつ粒径のバラツキを抑えた透明性の高い微細水中油滴型エマルションを安定に得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】本発明の一実施形態であるワンジェット混合法を実施する静的混合装置の構造を示した概念図である。
【図2】ワンジェット混合法において溶液L1と溶液L2を混合する作用を説明する説明図である。
【図3】糸線状の噴出流形状を説明する説明図である。
【図4】円錐状の噴出流形状を説明する説明図である。
【図5】スリット状の噴出流形状を説明する説明図である。
【図6】扇状の噴出流形状を説明する説明図である。
【図7】ワンジェット混合法を実施する静的混合装置の別態様の構造を示した概念図である。
【図8】ワンジェット混合法を実施する静的混合装置の別態様の構造を示した概念図である。
【図9】平行流混合法を実施する静的混合装置の一態様の構造を示した概念図である。
【図10】平行流混合法に静的混合装置の一態様の構造を示した概念図である。
【符号の説明】
【0182】
12、50、70…静的混合装置、20…混合室(混合場)、22…混合器、23、43、51、53…ジャケット、24…第1導管、26…排出管、28…第2導管、30…オリフィス、34…ノズル、A…直進流、B…直交流、52…内管、54…外管、56…内流路、58…環状外流路、60…混合場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油性成分を含む油相、水相と該油相及び該水相の少なくとも一方に含まれる界面活性剤とを混合することで水中油滴型エマルションを製造する方法であって、
(a)前記水相を第一供給管から1〜200MPaの圧力で混合室に一方から他方に向けて供給する工程と、
(b)前記油相を第二供給管から前記水相の供給方向に対し所定角度で、前記水相の圧力より低圧で混合室に供給する工程と、
(c)前記混合室から水相と油相の混合液を排出管から取出す工程と、を少なくとも備えた水中油滴型エマルションの製造方法。
【請求項2】
前記水相の供給時の流速が、50m/秒〜700m/秒である請求項1記載の水中油滴型エマルションの製造方法。
【請求項3】
前記混合室内に供給される水相の噴出口近傍におけるレイノルズ数Reが、2100〜150000である請求項1又は2記載の水中油滴型エマルションの製造方法。
【請求項4】
前記第一供給管の噴出口の円相当径dと、前記混合室の円相当径Dとの比D/dが、5〜30である請求項1〜3の何れか1記載の水中油滴型エマルションの製造方法。
【請求項5】
前記所定角度が0°〜90°角度である請求項1〜4の何れか1記載の水中油滴型エマルションの製造方法。
【請求項6】
前記界面活性剤が、HLB=10〜18の非イオン性界面活性剤である請求項1〜4の何れか1記載の水中油滴型エマルションの製造方法。
【請求項7】
前記油性成分が、カロテノイド類又はアスタキサンチン類の少なくとも一つを含む請求項1〜5の何れか1の水中油滴型エマルションの製造方法。
【請求項8】
前記油性成分が、水に不溶、又は水に難溶性の食品用機能性材料を含む請求項1〜6の何れか1の水中油滴型エマルションの製造方法。
【請求項9】
前記油性成分が、水に不溶、又は水に難溶性の化粧品用機能性材料を含む請求項1〜6の何れか1の水中油滴型エマルションの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1記載の水中油滴型エマルションの製造方法を用いて製造されたことを特徴とする水中油滴型エマルション。
【請求項11】
請求項10記載の水中油滴型エマルションにおいて、粒径200nm以上の油滴の体積比率が10%以下である水中油滴型エマルション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−253865(P2008−253865A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95559(P2007−95559)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】