説明

水中航走体誘導システム、個別航走体水中走行制御方法、及びその制御プログラム

【課題】本発明は、予め設定された目標物に向けて、水中航走行体を有効に音響ホーミングさせるようにした水中航走体誘導システムを提供することにある。
【解決手段】周波数の異なる二つの誘導超音波信号S,Sに順次案内されて目標物Mに向けて水中航走する一の個別航走体2と、第1,第2の誘導超音波信号S,Sを発信する主航走体1とを設ける。一方の誘導信号Sは周波数の低い無指向性の超音波が使用され、他方の誘導信号Sは目標物Mに向けて周波数の高い超音波が発信される。そして、前述した一の個別航走体2は、一方の誘導信号Sを受信し且つ受信音圧が高くなる方向に航走する第1の水中航走実行機能と、この誘導信号Sの受信音圧のレベルが基準値以上となった場合に目標物Mからの反射である他方の誘導信号Sに向けてその航走方向を切換えてその方向に水中航走を実行する第2の水中航走実行機能とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中航走体誘導システム、個別航走体水中走行制御方法、及びその制御プログラムに係り、特に、パッシブホーミングとセミアクティブホーミングの二段階の誘導過程が設定された場における音響ホーミング技術を利用して成る水中航走体誘導システム、個別航走体水中走行制御方法、及びその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
水中を移動し目標物又は目標領域に向けて航走する個別航走体は、多くの場合、アクティブソナーを搭載し、自ら探知音を発信し目標物からの反射音を受信してその方位と距離を特定し、正確に当該目標物又は目標とする場を探知し当該箇所へ移行するように構成されている。そして、前記目標物が例えば機雷の場合、前記個別航走体はこれに接触して爆破するように構成されている。
ここで、この自ら発した探知音の反射波に誘導されて目標物又は目標とする場に移行する状態を、アクティブホーミング(Active Homing )という。
【0003】
一方、誘導母体である航走母体(例えば潜水艦)が目標物(例えば機雷)に向けて所定の発信音を発信し、その反射波を前記個別航走体が受信すると共に、当該反射波に誘導されて前記個別航走体が前記目標物に向かって進行するように構成された技術が、セミ・アクティブホーミング(Semi Active Homing /SAホーミング方式)として知られている。
【0004】
しかしながら、前述したアクティブホーミングの方式を手法を前提としたアクティブソナーは、探知音の発信に多くの電力を消費するばかりでなく、探知音が逆探知されてアクティブソナー或いは航走母体の現在位置を第三者に知られるという不都合を常に伴っている。又、セミアクティブホーミング方式の手法を前提としたセミアクティブソナーは、目標物からの反射音のみに依存して当該目標物を探知するように構成されているので、多くは反射音の音圧レベルが低いことから遠距離からの目標物探知は不可能であり実用性に欠けるという欠点がある。
【0005】
一方、上記アクティブソナーとは別に、従来よりパッシブソナーが知られている。
このパッシブソナーは、自らは探知音を発信せずに目標物からの発信音を受信し、これに基づいて発信音源の存在方位を探知するもので、当該受信音に誘導されて発信音の音源に向かって移行する方式のパッシブホーミング(Passive Homing )の手法を前提としてこれを利用したものである。
【0006】
しかしながら、このパッシブソナーにあっては、例えば目標物が停止している場合には当該目標物を探知することができず、又、目標物から放出される音波レベルが小さい場合には、前述したセミアクティブソナーの場合と同様に当該目標物を正確には探知できないという不都合がある。
【0007】
このため、近時にあっては、上記アクティブソナーおよびパッシブソナーの両方を装備し、目標物の大まかな位置の把握にはパッシブソナーを使用し、その後の目標物の正確な位置の測定には必要最小限の時間を設定してアクティブソナーを稼働させ、これによって両者を併用して前記目標物の方位と距離を特定する新技術の開発がなされている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−332817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1(特開平10−332817号公報)には、具体的には、前記目標物に向けて送信波を出力する送信手段を予め別に設置し、これによって生じる前記目標物からの反射波をパッシブソナーで受信し、この受信波を前記送信波のレプリカ信号を用いた信号処理によってアクティブソナーとの併用状態に近い結果を得ると共に、これにより目標物の方位と距離とを推定するようにした関連技術(セミアクティブソナーと同等の技術)が開示されている。
しかしながら、この特開平10−332817号公報には、前記航走体を前記目標物に誘導する技術についての開示は成されていない。
【0010】
〔発明の目的〕
本発明は、上記公知技術及び関連技術の有する不都合を改善し、特に、予め設定された目標物に向けて水中航走体を有効に誘導し航走させることを可能とした水中航走体誘導システム、誘導航走方法、及び誘導航走体用航走プログラムを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明にかかる水中航走体誘導システムは、周波数の異なる第1,第2の二つの誘導超音波信号に案内されて目標物に向けて水中を航走する一の個別航走体と、前記二つの誘導超音波信号を発信する主航走体とを備えている。
この内、主航走体は、前記二つの誘導超音波信号の発信手段として、周波数の低い無指向性のピンガー超音波を前記第1誘導超音波信号として発信する第1の誘導信号発信手段と、前記目標物に向けて出力される周波数の高い超音波から成る探知用超音波を前記第2誘導超音波信号として発信する第2の誘導信号発信手段とを装備している。
【0012】
そして、前記一の個別航走体が、
前記第1誘導超音波信号を予め先端部に装備した第1誘導信号受信器で受信すると共に当該第1誘導超音波信号の受信音圧が高くなる方向に向けて水中航走する第1の水中航走実行機能と、前記第1誘導超音波信号の受信音圧のレベルが予め設定した基準値以上となった場合に前記目標物から反射されて来る前記第2誘導超音波信号に向けてその航走方向を切換え設定すると共に当該第2誘導超音波信号の受信音圧が大きくなる方向に向けてその水中航走を実行する第2の水中航走実行機能とを備えていることを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明にかかる個別航走体水中走行制御方法は、主航走体から出力される第1誘導超音波信号を受信する第1誘導信号受信部と、この第1誘導信号受信部で受信された前記第1誘導超音波信号に案内されて当該主航走体側に向けて水中を航走する個別航走本体部と、この個別航走本体部を航走駆動すると共に進行方向設定司令部からの指令に応じて当該個別航走本体部の進行方向を変更設定する本体部航走駆動手段と、この本体部航走駆動手段の動作を進行方向設定司令部を介して可変制御する個別側主制御部とを備えた水中航走の個別航走体にあって、
【0014】
前記主航走体に向けて水中航走中の前記個別航走体の航走方向を、前記主航走体の位置する方向とは異なった方向に位置する目標物に向けて変更設定するに際し、
まず、前記個別航走本体部の進行方向に沿って到来する前記第1誘導超音波信号の受信音圧レベルが当該個別航走本体部の航走と共に徐々に大きくなるか否かを前記個別側主制御部が判定すると共に、前記第1誘導超音波信号の受信音圧レベルが大きくなる方向に向けて前記個別航走本体部が水中走行を維持し得るように、個別側主制御部が前記本体部航走駆動手段を駆動制御して前記個別航走本体部に対する水中走行力の付勢動作を制御する。
【0015】
次に、前記第1誘導超音波信号の受信音在レベルが前記個別航走本体部に予め設定された基準値を越えたか否かを、当該個別航走本体部の受信レベル判定部が判定し、
この受信レベル判定部で第1誘導超音波信号の受信音在レベルが前記基準値よりも大きくなった旨判定された場合に、前記個別側主制御部が、前記本体部航走駆動手段を駆動制御して前記個別航走本体部の水中航走の方向を、予め個別航走本体部に装備された目標物方位監視手段で特定されてなる前記目標物の方位に向けて切り換え設定する。
【0016】
続いて、この切換え設定された個別航走本体部の水中航走の方向を、前記目標物からの反射波である第2誘導超音波信号の受信信号の音在レベルが大きく成る方向に向けて、前記個別側主制御部が、前記本体部航走駆動手段を介して前記個別航走本体部を常時付勢制御するようにしたことを特徴とする。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明にかかる個別航走体水中走行制御プログラムは、主航走体から出力される第1誘導超音波信号を受信する第1誘導信号受信部と、この第1誘導信号受信部で受信された前記第1誘導超音波信号に案内されて当該主航走体側に向けて水中を航走する個別航走本体部と、この個別航走本体部を航走駆動すると共に進行方向設定司令部からの指令に応じて当該個別航走本体部の進行方向を変更設定する本体部航走駆動手段と、この本体部航走駆動手段の動作を進行方向設定司令部を介して可変制御する個別側主制御部とを備えた水中航走の個別航走体にあって、
【0018】
前記主航走体に向けて航走中の前記個別航走体の航走方向を、前記主航走体の位置する方向とは異なった方向に位置する目標物に向けて変更設定するに際し、
【0019】
前記第1の誘導信号受信部で受信される前記第1誘導超音波信号の受信音圧レベルが当該個別航走本体部の航走と共に大きく成るか否かを判定すると共に前記受信音圧レベルの判定結果に基づいて前記第1誘導超音波信号の受信信号の音在レベルが大きくなる方向に向けて前記個別航走本体部に水中走行力を付勢するよう前記本体部航走駆動手段を駆動制御する個別航走本体部航走駆動制御機能、
前記第1の誘導信号受信部で受信された第1誘導超音波信号の受信音圧レベルが予め設定された基準値よりも大きくなったか否かを判定する受信音圧レベル判定処理機能、
前記受信音圧レベルが基準値よりも大きくなった場合にこれに基づいて前記本体部航走駆動手段を駆動制御し、前記個別航走本体部の水中航走の方向を、当該個別航走本体部が備えている目標物方位監視手段で予め監視し特定されて成る前記目標物からの反射波の到来方向に向けて、切り換え設定する本体部走行方向切換え設定機能、
【0020】
およびこの切換え設定された個別航走本体部の水中航走の方向を維持すると共に、前記目標物からの反射波である第2誘導超音波信号の受信信号の音在レベルが大きく成る方向に向けて常時前記個別航走本体部を付勢するように前記本体部航走駆動手段を駆動制御する本体部航走力付勢制御機能を設け、
これらを前記個別側主制御部が備えているコンピュータに実現させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上述したように構成したので、これによると、水中航走体である一の個別航走体が、これとは別に配設された主航走体から発信される第1,第2の各誘導超音波信号を有効に捕捉し且つ当該各誘導超音波信号に案内されて予め設定された目標物に向けて確実に走行させることが可能となり、特に、減衰の少ない(周波数の低い)第1誘導超音波信号で最初に一の個別航走体を主航走体に向けて誘導し、その後に、前述したように当該一の個別航走体を、指向性の鋭い(周波数の高い)第2誘導超音波信号による前記目標物からの反射波に向けて、航走方向を切り換え設定するように構成したので、目標物からの前記反射波の信号レベルが小さくても、確実に当該目標物からの反射波を捕捉することができ、このため、前記一の個別航走体を効率良く前記目標物に向けてホーミングさせることができるという優れた水中航走体誘導システム、誘導航走方法、及び誘導航走体用航走プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明にかかる水中航走体誘導システムの第1実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1中に開示したシステムの一部を成す主航走体の全体を示す概略構成図である。
【図3】図2に開示した主航走体の具体的な構成内容である信号処理及び動作制御系を示すブロック図である。
【図4】図3に開示した個別航走体の誘導信号発信部である全方向超音波送信手段の一部を成す超音波送信器の例を示すブロック図である。
【図5】図1に開示した個別航走体の全体を示す概略構成図である。
【図6】図5に開示した個別航走体の第1,第2の各誘導信号受信部の超音波受信器部分を示す図で、図6(A)は個別航走体の本体先端部に配置された各4個の超音波受信器の配置状況を示す説明図、図6(B)は図6(A)の概略側面図である。
【図7】図5に開示した個別航走体に装備される各構成部材の具体的な構成内容を示すブロック図である。
【図8】図7に開示した二種類の受信センサで受信される受信信号の処理系と前記個別航走体の駆動手段及びその制御系を示すブロック図である。
【図9】図5乃び図7に開示した本第1実施形態における個別航走体の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明にかかる水中航走体誘導システムの一実施形態を、図1乃至図9に基づいて説明する。ここで、最初に基本的な構成内容を説明し、続いてその具体的な内容を詳述する。
【0024】
〔基本的な構成〕
図1において、水中航走体誘導システムは、周波数の異なる第1,第2の二つの誘導超音波信号S,Sに案内されて目標物Kに向けて水中を航走する一の個別航走体2と、この一の個別航走体2の水中走行を誘導するための二つの誘導超音波信号S,Sを発信する主航走体1とを備えている。
【0025】
この内、主航走体1は、後述するように走行駆動手段16を備え水中内を移動可能に構成されている。そして、第1,第2の二つの誘導超音波信号S,Sの発信に際しては、その移動を停止して停位置を維持すると共に前述した一の個別航走体2の誘導用としての第1,第2の二つの誘導超音波信号S,Sを発信するように構成されている。
【0026】
この場合、第1誘導超音波信号Sとしては、前述した個別航走体2を遠距離から有効に誘導し得るように周波数の低い(減衰の少ない)超音波パルス(例えば55〔KHz〕)が使用されている。又、第2誘導超音波信号Sとしては、目標物を的確に捕捉し且つそれからの反射波を前述した個別航走体2が効率よく受信し得るように、比較的周波数の高い(指向性の鋭い)超音波パルス(例えば100〔KHz〕)が使用されている。
【0027】
ここで、主航走体1は、上記第1,第2の二つの誘導超音波信号S,Sの内、周波数の低い無指向性の超音波を第1誘導超音波信号Sとして発信する全方向超音波送信手段11(第1の誘導信号発信手段)と、前述した目標物Kに向けて出力される周波数の高い超音波から成る探知用超音波を前記第2誘導超音波信号Sとして発信する目標捕捉用超音波送受信手段(第2の誘導信号送信手段)12と、これら超音波送信手段11及び超音波送受信手段12の各々を稼働可能に保持する主航走本体部10とを備えている。
【0028】
この内、全方向超音波送信手段(第1の誘導信号発信手段)11は、遠距離に位置する不特定の一の個別航走体2を対象として、目標物Kの近くまで案内するために全方向に向けて上記第1誘導超音波信号Sを出力するように構成され、前記主航走本体部10に装備されている。又、この全方向超音波送信手段11は、相手方からの応答を必要としていないので、送信専用のピンガー超音波を出力するように構成されている。
【0029】
一方、目標捕捉用超音波送受信手段(第2の誘導信号発信手段)12は、送信および受信を可能とする送受波手段として機能するものが使用され、これによって前述した目標物Kを有効に探知すると共に、例えば当該目標物Kが機雷等の爆発物である場合には、当該目標物Kとの位置関係としてその爆発時の安全を確保し且つ誘導信号である反射波が多く発生するような適度の位置を算定し、これを停留位置として特定するための距離演算機能を備えている。
【0030】
又、この目標捕捉用超音波送受信手段12では、前述した目標物Kを介してその反射波が前述した一の個別航走体2に効率よく届くように、換言すると前記一の個別航走体2に対して前記目標物Kからの反射波が正確に向かうように、高い周波数で指向性の鋭い第2誘導超音波信号Sが、前記目標物Kに対して送受信される。
【0031】
一方、上述した第1,第2の二つの誘導超音波信号S,Sに順次案内されて航走する前述した一の個別航走体2は、第1誘導超音波信号Sを受信すると共に当該誘導超音波信号Sの受信音圧が高くなる方向に向けて航走する第1の水中航走実行機能を備えている。同時に、この一の個別航走体2は、前述した第2の誘導超音波信号Sの前記目標物Kからの反射波も受信すると共に、この目標物Kが存在する位置の方位を後述するように常に確認する監視手段31を備えている。
【0032】
そして、この一の個別航走体2は、上述した第1誘導超音波信号S(ピンガー超音波)に誘導されて航走すると共に当該第1誘導超音波信号Sの受信音の音圧レベルが予め設定した基準値以上となった場合には、前述した目標物Kから反射されて来る第2誘導超音波信号Sに向けてその航走方向を切り換えると共に、当該第2誘導超音波信号Sの受信音圧が大きくなる方向に向けてその航走を実行する第2の水中航走実行機能を備えている。
【0033】
このように、上記一の個別航走体2は、最初に第1の水中航走実行機能が稼働し、主航走体1が発信する第1誘導超音波信号S(ピンガー超音波)に誘導され、目標物Kに近い領域に位置する主航走体1に向けて水中航走する。
【0034】
その後、上記一の個別航走体2は、目標物Kからの反射波(第2誘導超音波信号S)を十分大きく受信し得る位置(即ち、第1誘導超音波信号Sの受信音の音圧レベルが予め設定した基準値以上となった位置)で第2の水中航走実行機能を稼働させて、目標物Kに向けて方向転換し、当該目標物Kからの反射波(第2誘導超音波信号S)に誘導されて当該目標物Kに向けて航走する。
そして、当該目標物Kが機雷の場合にはこれに効率よく当接して当該機雷を爆破処理することが可能となっている。
【0035】
〔具体的な構成内容〕
<主航走体1について>
主航走体1が備えている前述した第1の誘導信号発信手段(全方向超音波送信手段)11は、送信波として上記した第1誘導超音波信号Sを受信機能を有しないピンガー式の複数の超音波送信器11A,11B,11C,11D,11Eによって発信出力するように構成されている。
【0036】
この内、超音波送信器11Aは、図1乃至図2に示すように主航走本体部10の先端部(図1乃至図2では先端部上側)に配設され、この先端部から前方向全体に向けて広角度に、パルス波又はバルク波から成る第1誘導超音波信号Sを発信し得るように構成されている。
【0037】
又、他の複数の超音波送信器11B,11C,11D,11Eは、主航走本体部10の胴体部の周囲に90°間隔に配設され、当該各箇所から側面周囲全体に向けて前述した超音波送信器11Aと同様に超音波を広角度に発信し得るように構成されている。
【0038】
これにより、主航走本体部10の先端部および胴体周囲から前述した第1誘導超音波信号Sが隙間なく全体的に発信されるようになっている。
ここで、上記第1の誘導信号発信手段11として複数の超音波送信器は11A乃至11Eを装備した場合を例示したが、上記超音波送信器は11Aのみでもよい。又胴体部に装備した超音波送信器は11B乃至11Eについては上下に位置する超音波送信器11B乃至11Dを除いて側面の超音波送信器11C乃至11Eみでもよい。
【0039】
これら各超音波送信器11A乃至11Eは、送信器駆動回路部13によって同一周波数(例えば55〔KHz〕)で、同時に又は各別に駆動されるようになっている。この場合、この送信器駆動回路部13は、誘導側主制御部14に制御されて作動し、前述した各超音波送信器11A乃至11Eを各別に又は同時に或いは特定の超音波送信器11A乃至11E毎に自在に選択駆動すると共に、その出力レベルも調整可能に構成されている。
【0040】
更に、上記主航走本体部10の先端部には、前述した目標捕捉用超音波送受信手段(第2の誘導信号発信手段)12が備えている目標捕捉用の超音波送受信器12Aが配置され、第2誘導超音波信号Sを前方に向けて送受信可能に装備されている。
この場合、本第1実施形態では、第2誘導超音波信号Sを前方の下方に向けて送信するように装備されているが、前方の水平方向であってもよい。又、図1乃至図2では、上記目標捕捉用の超音波送受信器12Aを主航走本体部10の先端部に固定装備した状態のものを開示したが、前方向に対して上下左右に首振り可能に構成し装備してもよい。
【0041】
この目標捕捉用超音波送受信手段(第2の誘導信号発信手段)12は、前述した誘導側主制御部14の指令で稼働する送受信器駆動回路部15に付勢されて作動し、前述したように、指向性の鋭い高い周波数(例えば100〔KHz〕)の第2誘導超音波信号Sを超音波送受信器12Aを介して目標物Kに向けて主航走本体部10の先端部から送信出力し、又目標物Kからの反射波を受信し得るように構成されている。
【0042】
この場合、超音波送受信器12Aにて受信される目標物Kからの反射波は、送受信器駆動回路部15を介して誘導側主制御部14に送り込まれ、この誘導側主制御部14で目標物Kまでの距離および目標物Kの方位が演算され保持されるようになっている。
【0043】
これにより、誘導側主制御部14は、第2の誘導超音波信号Sの送受信の時間間隔を特定すると共に、この時間情報に基づいて当該目標物Kまでの距離および方位を特定する。そして、この特定された方位および距離情報に基づいて後述する本体部航走駆動手段16を駆動制御し、主航走本体部10を安全位置(例えば目標物Kから30メートルの位置)に移動させるように機能する。
【0044】
又、この場合、算定される目標物Kとの間の相対位置情報および距離情報は、水中環境の変化に伴う変動を予想して、本第1実施形態では、停留位置が特定された後も定期的に算定され、その位置づれをゼロとするように、前記主制御部14が本体部航走駆動手段16を駆動制御し、同時に目標物Kからの反射音圧を常に一定値に維持する監視モードが設定されるようになっている(位置ずれ監視モード)。
【0045】
(本体部航走駆動手段)
図1乃至図3に示すように、上記主航走本体部10には、当該主航走本体部10の全体を任意の位置に移行し得るように前述した本体部航走駆動手段16が装備されている。
【0046】
この内、本体部航走駆動手段16は、図3に示すように主航走本体部10を推進駆動する本体部推進機構17と、この本体部推進機構17に併設され当該主航走本体部10の進行方向を設定する操舵装置18と、前記主航走本体部10の走行深度位置を変更設定する水中翼装置19とを備えている。
【0047】
この内、本体部推進機構17は、主航走本体部10の後端部に後方に向けて突設装備された推進用スクリュー17Bと、この推進用スクリュー17Bを駆動するスクリュー駆動モータ17Aとを備えている。
【0048】
又、操舵装置18は、推進用スクリュー17Bの更に後端側に所定距離隔てて配置され前記主航走本体部10の進行方向を設定する方位操舵機構18Bと、この方位操舵機構18Bを外部指令に応じて駆動し必要とする操舵角を駆動設定する操舵機構駆動部18Aとを備えている。
【0049】
更に、水中翼装置19は、主航走本体部10の胴体部の左右両側の対象位置に装備された一対の水中翼機構19Bと、この水中翼機構19Bの水中翼に対して外部指令により適度の傾斜角を設定する水中翼駆動部19Aとを備えている。
【0050】
(主航走体1の動作制御系)
図3において、符号14Aは、本体部航走駆動手段16の全体を駆動制御する航走駆動制御部を示す。
この航走駆動制御部14Aは、具体的には、前述した誘導側主制御部14からの指令に応じて稼働し、上述したスクリュー駆動モータ17A,操舵機構駆動部18A及び水中翼駆動部19Aを介して、それぞれ対応する推進用スクリュー17B,方位操舵機構18B,及び水中翼機構19Bの各々を個別に駆動制御し、主航走本体部10の全体を、自在に移動させ且つその位置および向きを自在に設定することが可能となっている。
【0051】
目標物Kを捕捉した後に生じる主航走本体部10の全体の位置ずれに際しては、誘導側主制御部14からの動作指令に基づいて航走駆動制御部14Aが稼働し、前述したスクリュー駆動モータ17Aを正転又は逆転制御して当該目標物Kに対して主航走本体部10全体を前進させ又は後退させ、これにより当該目標物Kとの間の設定距離をほぼ一定に保持する。
かかる動作は、後述するように、目標物Kからの反射波の受信レベルの変化に応じて出される誘導側主制御部14からの動作指令に基づいて、航走駆動制御部14Aが本体部航走駆動手段16の各部を駆動制御することによって実行される。
【0052】
ここで、水中の環境変化によって主航走体1にその停止位置の位置ずれが発生した場合を想定する。
この場合は直ちに前述した位置ずれ監視モードが稼働し、その位置や向きの変化は、目標捕捉用超音波送受信手段(第2の誘導信号発信手段)12の送受信器12Aによって目標物Kからの反射波(第2誘導超音波信号S)の音圧低下として検出される。
【0053】
この目標物Kからの反射波の音圧低下は、直ちに送受信器駆動回路部15を介して誘導側主制御部14に送り込まれる。これを受けて誘導側主制御部14は、前述した本体部航走駆動手段16を駆動制御して装置全体の向きを反射波の音圧を低下前の状態に戻すように設定する。続いて第2誘導超音波信号Sの送受信の時間間隔を算定して当該目標物Kとの距離を特定し、位置ずれがあった場合には、再び本体部航走駆動手段16を駆動制御して主航走本体部10を安全位置(例えば目標物Kから30メートルの位置)に復帰移動させるように機能する。
【0054】
これにより、前述した一の個別航走体2に対する目標物Kからの反射波(第2誘導超音波信号S)の発生を安定した状態で、当該一の個別航走体2に向けて発生させることができ、安定した状態の第2の誘導超音波信号Sを発生させることが可能となる。
【0055】
ここで、前述した目標捕捉用超音波送受信手段(第2の誘導信号発信手段)12で第2誘導超音波信号Sを外部に向けて出力する超音波送受信器12Aについては、予め首振り探索装置が装備してもよい。この場合、当該超音波送受信器12Aを上下左右に出力方向を首振りして目標物Kを探索することが可能となる。そして、この首振り探索装置は、前述した誘導側主制御部14が制御するように構成される。これにより、目標物Kを迅速に探知することが可能となる。
【0056】
また、上記した主航走本体部10全体の位置づれ及び向きのずれに対する正常位置への復帰動作に際し、航走駆動制御部14Aは、具体的には、本体部航走駆動手段16のスクリュー駆動モータ17A,操舵機構駆動部18Aおよび水中翼駆動部19Aの個別制御を、通常は制御情報記憶部14aに予め格納された基本動作制御プログラムに従って実行する。
【0057】
一方、誘導側主制御部14からの制御指令があった場合、航走駆動制御部14Aは、当該制御指令を優先的に取り込むと共に、当該制御指令の内容に応じて、その動作の変化のタイミングや駆動状態の継続時間および次の動作への移行等について、上記基本動作制御プログラムに優先してこれを実行するように構成されている。
【0058】
この場合、誘導側主制御部14および航走駆動制御部14Aに必要な制御指令の具体的な内容および必要な設定情報は、予め装備された制御情報記憶部14aおよび設定情報記憶部14bに記憶されており、航走駆動制御部14Aは、当該各記憶部14a,14bに記憶された情報を取り出して前述した指令情報の発信動作を迅速に成し得るように構成されている。
又、図3において、符号10Aは、装置全体の動作に必要な情報若しくは前述した誘導側主制御部14および航走駆動制御部14Aに必要な制御動作指令を、予め又は事後的に入力し必要に応じて前述した制御情報記憶部14aおよび設定情報記憶部14bに記憶させる入力部を示す。
【0059】
<個別航走体2について>
次に、前述した一の個別航走体2について説明する。
図1及び図5に示すように、前述した一の個別航走体2は、水中走行用に形成された筒状の個別航走本体部2Aを有している。この個別航走本体部2Aには、具体的には後述するが、その先端部に第1,第2の各誘導信号受信部21,41を備えており、後端部に本体部航走駆動手段26を備え、先端部に近い胴体周囲に、目標物方位監視手段33の要部を成す第2誘導信号方位監視部31が装備されている。
【0060】
又、本体部航走駆動手段26の一部を成す水中ブレーキ機構26A部分は、前述した個別航走本体部2Aの中央部から幾分先端部よりの周囲に装備されている。
【0061】
そして、この一の個別航走体2は、前述したように、誘導側である主航走本体1から発信される第1,第2の二つの誘導超音波信号S,Sの内、まず周波数の低い第1誘導超音波信号Sに案内されて発信源である主航走本体1に向かって水中航走する第1の水中航走実行機能を備えている(図1参照)。
【0062】
ここで、第1,第2の二つの誘導超音波信号S,Sは、前述した第1,第2の各誘導信号受信部21,41がそれぞれ備えている4個の各超音波受信器21a乃至21d,41a乃至41dによって、各別に受信されるようになっている(図6参照)。この4個の各超音波受信器21a乃至21d,及び41a乃至41dは、前述した一の個別航走体2の先端部に設けた端面の同一円周上に装備されている(図6(A)参照)。
【0063】
又、上記一の個別航走体2は、図7に示すように、第1誘導信号受信部21で受信された第1誘導超音波信号Sを信号処理しその受信音圧が大きくなる方向を進行方位情報として特定する第1の方位情報特定部22と、この特定された進行方位情報に基づいて前記一の個別航走体2の航走に必要な方位設定指令を発信する進行方向設定指令部23と、この進行方向設定指令部23の動作を制御する個別側主制御部24と、これら各構成要素を格納し保持する個別航走本体部2A(図5参照)と、この個別航走本体部2Aに装備され前記進行方向設定指令部23からの指令にて作動して当該個別航走本体部2Aに航走力を付勢する個別本体航走駆動手段26とを備え、これによって、前述した第1の水中航走実行機能が実行されるようになっている。
【0064】
ここで、上記進行方向設定指令部23と個別本体航走駆動手段26とにより、航走駆動制御手段25が構成されている。
【0065】
即ち、この一の個別航走体2は、その進行方向の方位情報が、第1の方位情報特定部22によって第1誘導超音波信号Sの受信音圧が大きくなる方向に特定される。このため、この一の個別航走体2は、具体的には、航走中に第1の誘導信号受信部21で受信した第1誘導超音波信号S(ピンガー超音波)の発信源である主航走本体1に向かって、水中航走することとなる。
【0066】
この場合、上記一の個別航走体2にあっては、その個別航走本体部2A部分に対して個別本体航走駆動手段26によって水中航走力が付勢されるので、当該一の個別航走体2では、第1の方位情報特定部22から出力される進行方位情報に規制されて、個別側主制御部24が、後述するように進行方向設定指令部23を介して個別本体航走駆動手段26に所定の駆動指令を発信し、これに基づいて個別本体航走駆動手段26が稼働して個別航走本体部2Aを付勢し、当該個別航走本体部2Aの水中走行が実現される。
【0067】
又、上記一の個別航走体2は、水中航走中に常時受信される前述した第1誘導超音波信号S(ピンガー超音波)を信号処理し、その受信音圧のレベルが予め設定した基準値を越えたか否かを判定する受信レベル判定部27を備えている。
【0068】
そして、前述した個別側主制御部24は、受信レベル判定部27により受信される第1誘導超音波信号Sの受信レベルが受信レベル判定部27で予め設定された前記基準値を越えたと判定された場合に作動し、後述するように、予め受信されその方位が第2の誘導信号方位監視部31によって探知され目標物方位特定回路部32で特定される前記第2誘導超音波信号Sの到来方向の方位情報を、個別航走本体部2Aの進行方位情報として新たに特定する切換え方位特定機能を備えている。
【0069】
ここで、上記受信レベルの基準値としては、個別航走体2を主航走本体1に近い位置迄引き寄せることにより、当該個別航走体2が目標物Kからの反射波を確実に受信することが出来る位置を想定して定めたもので、複数の個別航走体が在る場合には各一の個別航走体毎に予め実験的に確認された値が使用されている。
【0070】
この一の個別航走体2には、図5,図7乃至図8に示すように、前述した主航走本体1に向かって水中航走を敢行している最中に、同時に目標物Kからの反射波である第2誘導超音波信号Sを常時受信する4個の超音波受信器からなる監視センサ31a,31b,31c,31dを備え後述する目標物方位監視手段33の要部を成す第2の誘導信号方位監視部31が装備されている。
【0071】
この第2の誘導信号方位監視部31は目標物方位特定回路部32を介して前述した個別側主制御部24に併設され、目標物Kからの反射波である前記第2誘導超音波信号Sの到来を監視し前記目標物Kの方位情報を特定する機能を備えている。ここで、上記第2の誘導信号方位監視部31と目標物方位特定回路部32とにより、目標物方位監視手段33が構成されている。
【0072】
更に、この目標物方位監視手段33は、前記一の個別航走体2の航走方向の変更時に前述した主航走体1から発信される第2誘導超音波信号Sが第2の誘導信号方位監視部31に直接受信される場合、即ち予め設定された高レベルの基準値を越えて第2誘導超音波信号Sが直接受信された場合に稼働し、当該高レベルの第2誘導超音波信号Sを廃棄処理する受信信号廃棄処理機能と、前記監視センサ31a乃至31dが予め設定された低いベルの基準値に対応した反射波を受信した場合には、その内の高い受信レベルの第2誘導超音波信号Sを監視対象の反射波として保持すると共にその時の方位情報を前記個別航走本体部2の水中航走の方位情報として特定する方位情報選択処理機能とを、その内容として備えている。
【0073】
又、上記目標物方位監視手段33の前述した第2の誘導信号方位監視部31が備えている監視センサ31a乃至31dは、前述した個別航走体2の胴体周囲に、図5に示すように90°間隔で装備されている。
この4個の監視センサ31a乃至31dの何れかで受信される目標物Kからの反射波(第2誘導超音波信号S)は、目標物Kの方位を示す反射波として目標物方位特定回路部32で特定され、現在位置における目標物Kの方位情報として、前述したように個別側主制御部24に常時送り込まれる。そして、個別側主制御部24は、送り込まれる目標物Kの方位情報を認定し一時的に保持するようになっている。
【0074】
具体的には、図5に示すように、各監視センサ31a,31b,31c及び31dの振動面の中心軸線Lが個別航走本体部2Aの進行方向に対してα度の傾斜をもって設定されている場合を想定する。この場合、個別側主制御部24は、目標物Kの方位情報として、例えば「目標物Kの位置する方位は、進行方向下方α度」と認定する。
【0075】
一方、上記個別側主制御部24は、前述したように、受信レベル判定部27により受信される第1誘導超音波信号Sの受信レベルが予め設定された前記基準値を越えたと受信レベル判定部27で判定された場合に作動し、進行方向設定指令部23を介して前記個別本体航走駆動手段26の動作を全体的に制御し、前述した目標物方位特定回路部32で特定された目標物Kにかかる方位情報(例えば、進行方向下方α度)に基づいて、前記一の個別航走体2の水中航走方向を、前記目標物Kからの反射波の到来方向(上記α度の方向)に向けて切換え制御する航走方向切換え制御機能を備えている。
【0076】
前述した一の個別航走本体部2は、その先端部に目標物Kからの反射波である第2誘導超音波信号Sを受信する第2誘導信号受信部41と、この第2誘導信号受信部41で受信される前記反射波の最大値に基づいて前記目標物Kの方位を特定する第2の方位情報特定部42とを備えている。そして、前述した個別側主制御部24が、前記第2の方位情報特定部42で特定される反射波(第2誘導超音波信号S)の受信レベルが大きくなる方向に本体部航走駆動手段26を駆動制御して前記航走体本体部2Aの航走方向を設定する航走方向設定制御機能を備えている。
【0077】
ここで、上述した個別側主制御部24の前記航走方向設定制御機能は、当該一の個別航走体2の先端部が前記目標物Kに向けて切り換え設定された場合にも作動し、当該一の個別航走体2の先端部を少なくとも進行方向の上下左右に揺動させる先端部揺動動作制御機能と、前記先端部揺動動作制御機能を実行して得られる前記目標物Kからの受信音圧のレベル変化を検出すると共に当該受信音圧のレベルが最大となる方位を前記目標物の方位として特定する目標物方位特定処理機能とを、その内容として備えている。
【0078】
又、この第2誘導信号受信器部41で受信される第2誘導超音波信号Sは目標物Kからの反射波であり、上記した一の個別航走体2はこの第2誘導超音波信号Sの受信レベルが大きく受信される方向に誘導される。
【0079】
具体的には、個別側主制御部24が、前述したように進行方向設定指令部23を介して前記個別本体航走駆動手段26の動作を全体的に制御し、第2誘導信号受信器部41で受信される第2誘導超音波信号Sの受信レベルが大きくなる方向に前記航走体本体部2Aの進行方向を設定制御する。ここで、上記進行方向設定指令部23と前記個別本体航走駆動手段26とにより、航走駆動制御手段25が構成されている。
【0080】
この場合、第2誘導信号受信器部41で受信される第2誘導超音波信号Sの受信レベルは、その変化の状況が第2の方位情報特定部42で特定され、その後に前述した個別側主制御部24に送り込まれる。個別側主制御部24は、この第2の方位情報特定部42からの情報に基づいて前述した個別本体航走駆動手段26の動作を全体的に制御し、上述したように第2誘導超音波信号Sの受信レベルが大きくなる方向に前記航走体本体部2Aの動作を設定制御する(航走方向切換え制御機能の実行)。
これにより、前述した第2の水中航走実行機能が実行されるようになっている。
【0081】
ここで、符号30は、個別側主制御部24および進行方向設定指令部23に対して、予め若しくは事後的に必要とする情報および外部指令を入力する入力部を示す。かかる情報および外部指令は、制御情報記憶部24aに記憶され、必要に応じて個別側主制御部24および進行方向設定指令部23にて使用されるようになっている。
【0082】
このように、上記一の個別航走体2は、最初に第1の水中航走実行機能が稼働し、主航走体1が発信する第1誘導超音波信号S(ピンガー超音波)に誘導され、目標物Kに近い領域に位置する主航走体1に向けて水中航走する。
【0083】
その後、この一の個別航走体2は、目標物Kからの第2誘導超音波信号Sの反射波を十分大きく受信し得る位置(ピンガー超音波の受信音の音圧レベルが予め設定した基準値以上となった位置)で第2の水中航走実行機能を稼働させ、その進行方向を目標物Kに向けて方向転換し、当該目標物Kからの反射波(第2誘導超音波信号S)に誘導されて当該目標物Kに向けて航走する。
【0084】
(個別航走体2の誘導信号受信器部)
前述した主航走体1から発信される周波数の低いピンガー超音波である第1誘導超音波信号Sは、個別航走体2の第1の誘導信号受信器部21で受信される。又、前述した主航走体1から発信される周波数の比較的高い第2誘導超音波信号Sの前述した目標物Kからの反射波は、第2の誘導信号受信器部41で受信される。
【0085】
この場合、本第1実施形態では、第1の誘導信号受信器部21は、図6乃至図8に示すように第1誘導超音波信号Sを4個の超音波受信器21a乃至21dで受信するように構成されている。又、第2の誘導信号受信器部は、同じく図6乃至図8に示すように第2誘導超音波信号Sの反射波を4個の超音波受信器41a乃至41dで受信するように構成されている。
【0086】
この各4個の超音波受信器21a乃至21d,41a乃至41dは、図8に示すように個別航走体2の先端部で進行方向に直交する平坦面の同一円上に、一つ置きに交互に配置され固定装備されている。
【0087】
これにより、第1,第2の各誘導超音波信号S,Sに向かって進行する個別航走体2の先端面で、当該第1,第2の各誘導超音波信号S,Sを均一に且つ同一条件で受信することができるようになっている。
【0088】
これら4個の超音波受信器21a乃至21dで受信された第1誘導超音波信号Sは、加算されて前述した第1の方位情報特定部22へ送り込まれるようになっている。又、同じく4個の超音波受信器41a乃至41dで受信された第2誘導超音波信号Sも、それぞれ加算されて前述した第2の方位情報特定部42へ送り込まれるようになっている(図8参照)。このため、前述した一の個別航走体2が遠距離に位置していても、比較的高感度で主航走体1からの第1,第2の各誘導超音波信号S,Sを受信されるようになっている。
【0089】
又、上記図6において、符号51は超音波の減衰の少ない部材からなるカバーを示す。このカバー51内には超音波の減衰の少ない液体部材52が充填され、同時に各超音波受信器21a乃至21d,41a乃至41dおよびその配線は、他の部材全体に対して絶縁された状態で振動可能に装備されている。
このため、個別航走体2の水中航走にあっても、この先端部は水圧に対して堅牢に初期の状態(超音波受信可能状態)が維持されるようになっている。
【0090】
(個別航走体2の本体部航走駆動手段)
次に、個別航走体2の前述した本体部航走駆動手段26について説明する。
【0091】
前述した一の個別航走体2が備えている本体部航走駆動手段26は、個別航走体2の個別航走本体部2Aに対して推進力を付勢する推進力付勢機構26Aと、前記個別航走本体部2Aの航走中に当該個別航走本体部2Aの進路変更を設定する進路変更設定機構としての水中ブレーキ機構26Bとを有する。
【0092】
この内、推進力付勢機構26Aは、図5及び図7に示すように、前記航走体本体部25の後端部に装備された進退用スクリュー27Aと、この進退用スクリュー27Aを駆動するスクリュー駆動モータ27とを備えている。符号27Bは水中走行の安定を図るための水中尾翼を示す。
【0093】
又、進路変更設定機構(水中ブレーキ機構)26Bは、前記個別航走本体部2Aの周囲の上下及び左右の各側面部にそれぞれ一対づつ装備された各水中ブレーキ28A,28B,及び29A,29Bと、この各一対の水中ブレーキ28A,28B,及び29A,29Bの内、前記進路変更に合わせて何れかの水中ブレーキを個別に選択駆動する一方と他方の各ブレーキ選択駆動部28,29とにより構成されている。
【0094】
上記水中ブレーキ機構26Bは、具体的には、上方及び下方の各水中ブレーキ28A,28Bと、この各水中ブレーキ28A,28Bを択一的に選択して駆動する進路変更用の一方のブレーキ選択駆動部28を備えている。又、同じく、右方及び左方の各水中ブレーキ29A,29Bと、これら各水中ブレーキ29A,29Bを択一的に選択して駆動する進路変更用のブレーキ選択駆動部29を備えている。
【0095】
ここで、これら上方及び下方の各水中ブレーキ28A,28B、および右方及び左方の各水中ブレーキ29A,29Bは、それぞれ作動時に棒状部材(ブレーキ部材)を胴体部側から外部に向けて突出させる構造のものが使用されている。動力源としては、本実施形態では電磁ソレノイドが使用されている。このブレーキ部材については、本実施形態では四角形状の棒状部材が使用されているが、円筒状部材でも板状部材であってもよい。
【0096】
又、この各水中ブレーキ28A,28B、及び29A,29Bは、航走体本体部25の胴体中央部から先端部よりの胴体周囲に90°間隔で前記棒状部材が配置され、通常は元位置復帰ばねによって胴体内に格納されている。
【0097】
そして、この場合、これら水中ブレーキ28A,28B、及び29A,29Bの何れかを突出させた場合には、この突出させた部分の水流抵抗の増大によって、航走体本体部25の進行方向が突出させた側の方向に変えられる。そして、これらの各水中ブレーキ28A,28B、及び29A,29Bを適宜選択稼働させることによって、航走体本体部25の先端部の首振り動作や揺動動作が可能となる。
【0098】
又、航走体本体部2Aの進行停止に際しては、前述した進退用スクリュー部27Aを逆転させるように制御することにより、航走体本体部2Aの進行は停止する。
即ち、個別側主制御部24および進行方向設定指令部23によって、本体部航走駆動手段26を自在にその動作を制御することにより、航走体本体部2Aの進行方向を変化させ、或いは水中走行時にブレーキをかけることが可能となっている。
【0099】
ここで、これらの各制御内容は、前述した目標物方位特定回路部32及び第1,第2の各方位情報特定部22,42から送り込まれるセンサ情報とそれに対応して予め準備された制御プログラムとに基づいて個別側主制御部24が特定すると共に、当該個別側主制御部24から出力される動作指令に基づいて前述した進行方向設定指令部23および本体部航走駆動手段26が上記内容を実行するように構成されている。
【0100】
又、上記各棒状部材は、本実施形態では防水加工された図示しないカム機構を介して電磁ソレノイドによって個別に独立して突出駆動され、その突出量(ゼロを含む)および突出のタイミングおよび突出状態維持時間については、前述した進行方向設定司令部23を介して個別側主制御部24によって駆動制御されるようになっている。
【0101】
尚、前記一の個別航走体の前記本体部航走駆動手段26の前記進路変更設定機構26Bについては、これに代えて、前記個別航走本体部2Aの周囲の一部に上下方向及び左右方向にそれぞれ異なった位置にて貫通して設定された二つの貫通穴と、この各貫通穴に装備された正逆回転可能な送水用羽車と、この各送水用羽車を前記進路変更に合わせてその回転方向を個別に選択駆動する回転方向選択駆動部とを備えた送水式進路変更機構を設け、この回転方向選択駆動部を状況に合わせて予め特定された所定の動作制御プログラムをもって前述した個別側主制御部24を稼働させるように構成し、これを使用するようにしてもよい。
【0102】
<個別航走体2の動作>
次に、上記個別航走体2の全体的な動作を図9に基づいて説明する。
最初に、この個別航走体2の動作手順の基本的な要点についてその動作内容を説明し、その後に、全体的な動作内容を詳述する。
ここで、上記実施形態における動作説明の前提として、前述した主航走体1が水中の安全位置にて停留し且つ稼働しており、同時に目標物Kを捕捉して当該目標物Kに向けて前述した第2誘導超音波信号Sを安定的に送信出力している場合が設定されているものとする。この場合、同時に、個別航走体2に対しては、前述した主航走体1の先端部および胴体周囲から、全方位に向けて前記一の個別航走体に対する誘導用(ホーミング用)の第1誘導超音波信号S(ピンガー超音波)が出力されているものとする。
【0103】
まず、前述した主航走体1に向けて水中航走中の前記一の個別航走体2の航走方向を、主航走体1の位置する方向とは異なった方向に位置する目標物Kに向けて変更設定(切換え設定)するに際しては、最初の確認事項として、個別航走本体部2Aの進行方向に沿って到来する第1誘導超音波信号Sの受信音圧レベルが当該個別航走本体部2Aの航走と共に徐々に大きくなるか否かを、個別側主制御部24が判定(確認)する。
【0104】
同時に、前記第1誘導超音波信号Sの受信音圧レベルが大きくなる方向に向けて個別航走本体部2Aが水中走行を維持し得るように、個別側主制御部24が本体部航走駆動手段26を介して前記個別航走本体部2Aに対する水中走行力の付勢動作を制御する(図9:ステップS101乃至S104/航走動作制御工程)。
【0105】
次に、前記第1誘導超音波信号Sの受信音在レベルが前記個別航走本体部2Aに予め設定された基準値を越えたか否かを、当該個別航走本体部2Aの受信レベル判定部22Aが判定する(受信レベル判定工程)。
【0106】
そして、この受信レベル判定部22Aで第1誘導超音波信号Sの受信音在レベルが前記基準値よりも大きくなった旨判定された場合には、個別側主制御部24が、本体部航走駆動手段26を駆動制御して個別航走本体部2Aの水中航走の方向を、予め目標物方位監視手段33で特定されてなる目標物Kの方位に向けて切り換え設定する(図9:ステップS105乃至S108/航走方向切換え設定制御工程)。
【0107】
この切換え設定された個別航走本体部2Aの水中航走の方向を、前記目標物Kからの反射波である第2誘導超音波信号Sの受信音在レベルが大きく成る方向に向けて、前記個別側主制御部24が、前記本体部航走駆動手段26を介して前記個別航走本体部2Aを常時付勢制御する(図9:ステップS113乃至S115/航走力付勢制御工程)。
【0108】
ここで、前述した個別航走本体部2Aに対する航走方向の切換え動作の制御に先立って、予め前記目標物Kに向けて、前述したように主航走体1から第1誘導超音波信号Sとは異なる周波数の第2誘導超音波信号Sが発信されており、同時にこれによって生じる前記目標物Kからの反射波が、前記一の個別航走本体部2Aに予め装備された目標物方位監視手段33によって捕捉され監視されるようになっている(図9:S105A)。そして、この目標物方位監視手段33では、この受信した反射波の到来方位を前述した目標物Kの方位をとして特定し(反射波監視工程)、保持するように構成されている。
【0109】
次に、上述した本体部航走駆動手段26による前記個別航走本体部2Aの水中航走の方向を切換え設定された場合(図9:S108)にその切換え動作の実行中に、予め設定された高レベルの基準値を越える第2誘導超音波信号Sを個別航走体2Aの第2の誘導信号受信器41が直接受信した場合には(図9:S109乃至S110)、前記高レベルの第2誘導超音波信号Sの方位情報を、前記個別航走体2Aが備えている目標物方位判定回路42が特定することなくこれを排除する(反射波拝排除工程)。続いて、予め設定された低いレベルの基準値領域で受信される反射波を、前記第2の誘導信号受信器41が継続して監視し探索する(図9:S111/反射波継続探索工程)。
この監視動作中に受信される反射波の内の受信レベルの高い第2誘導超音波信号Sの到来方向の反射波を、目標物方位判定回路42が前記目標物Kからの反射波として特定する(反射波情報特定工程)。そして、この特定された反射波にかかる前記方位情報を、目標物方位判定回路42が前記個別航走本体部2Aの水中航走の方位情報として特定する(図9:S112/目標物方位特定処理工程)。
【0110】
ここで、前述した本体部航走駆動手段26による個別航走本体部2Aの走行方向の設定に際しては、第1又は第2の各誘導超音波信号S又はSの到来方向に向けて、本体部航走駆動手段26が前記個別航走本体部2Aに対して、その先端部を一方と他方の方向およびこれに直交する方向の十文字方向に順次繰り返しての首振り動作を付勢する。
【0111】
この個別航走本体部の首振り動作によって得られる受信音圧の変化を、前述した第1又は第2の方位情報特定部22又は42が収拾して受信音圧が最大となる方位の方位情報を前記個別側主制御部24に伝達する。
そして、この第1又は第2の各方位情報特定部22又は42から送られてくる方位情報に基づいて、前記個別側主制御部24が作動し、本体部航走駆動手段26を介して個別航走本体部2Aの走行方向を設定制御する(図9:S103、S106、S114)。
【0112】
以下、これを更に詳述する。
まず、個別航走体2が水中に投入され稼働状態に設定されると、第1の誘導信号受信部21は個別航走本体部2Aの先端部に装備された4個の受信センサ21a乃至21dを介して主航走体1から発信されている第1誘導超音波信号Sを受信する(図9:ステップS101)。この場合、第1の誘導信号受信部21からは、4個の受信センサ21a乃至21dで受信された信号Sの受信レベルの合計が、図8に示すように受信信号として出力される。このため、個別航走体2は主航走体1から発信される第1誘導超音波信号Sの感度が低い遠方からでも容易に当該第1誘導超音波信号Sを捕捉することが可能となっている。
【0113】
次に、個別航走体2は、個別側主制御部24を稼働させ、進行方向設定指令部23を介して本体部航走駆動手段26のスクリュー駆動モータ27を作動させ、前述した第1誘導超音波信号Sの到来方向への航走を開始する。
【0114】
この場合、個別側主制御部24は、第1誘導超音波信号Sの到来方向が個別航走体2の航走方向に沿っているか否かを4個の受信センサ21a乃至21dで受信された第1誘導超音波信号Sの受信レベルが大きくなっているか否かで判定する。ここで、第1誘導超音波信号Sの受信レベルが大きくなっていない場合は当該信号Sの到来方向が当初ずれている(正常でない)と判定される(図9:ステップS102/航走方向判定処理工程)。
【0115】
かかる場合、個別側主制御部24は、進行方向設定指令部23を介して水中ブレーキ機構26Aを稼働させて、個別航走本体部2Aの先端部を上下左右にゆっくりと首振り動作させて第1誘導超音波信号Sの到来方向(個別航走本体部2Aの航走方向)を正確に探知する(図9:ステップS103)。
【0116】
この首振り動作では、上方水中ブレーキを作動させると水平方向を基準として航走方向が上方向に向かい、下方水中ブレーキを作動させると航走方向が下方向に向かい、同時に上方水中ブレーキをゆっくり効かせて水平位置に戻らせる。続いて、左方水中ブレーキを作動させると水平進行方向を基準として航走方向が左方向に向かい、右方水中ブレーキを作動させると航走方向が右方向に向かい、同時に右方向の水中ブレーキをゆっくり効かせて元の水平進行方向に戻らせる。
【0117】
この間、上記先端部の4個の受信センサ21a乃至21dは主航走体1から発信されている第1誘導超音波信号Sを受信し、当該信号Sの受信レベルの変化をリアルタイムで、第1方位情報特定部22へ送る。この第1の方位情報特定部22では、送り込まれた信号Sから受信レベルの最大値を特定し、その時の方位を主航走体1の位置する方位とし、この方位を個別航走本体部2Aの航走方向として特定し、これを前述した個別側主制御部24に伝える。個別側主制御部24は、この特定された方位情報に従い前述した進行方向設定司令部23を介して本体部航走駆動手段26を駆動制御し、個別航走本体部2Aを第1誘導超音波信号Sの到来方向(主航走体1の方向)に向けて航走させる(図9:ステップS104/走行力付勢制御工程)。
【0118】
即ち、進行方向設定指令部23および本体部航走駆動手段26から成る前記航走駆動制御手段25による前述した個別航走本体部2Aの走行方向の特定に際しては、前述したステップS103に示すように、第1誘導超音波信号Sの到来方向に向けて航走駆動制御手段25が個別側主制御部24に制御され、前記個別航走本体部2Aの先端部に対し、一方と他方の方向およびこれに直交する方向の十文字方向に順次繰り返しての首振り動作が付勢される。
【0119】
ここで、この首振り動作では、上下左右の全部の動作を全部完了してから個別航走本体部2Aの航走方向を特定するのではなく、当該首振り動作中に受信レベルのピーク位置が得られた場合には、その方向を航走方向として特定する。そして、これに基づいて個別航走本体部2Aを当該ピーク位置の方向に航走させるようになっている。かかる個別側主制御部24の制御動作は、予めプログラム化され、前述した制御情報記憶部24aに格納されており、これに従って、上記個別側主制御部24はその制御動作を実行するようになっている。
【0120】
次に、個別側主制御部24は、上記個別航走本体部2Aを第1誘導超音波信号Sの到来方向(主航走体1の方向)に向けて継続して航走させるように前述した航走駆動制御手段25を付勢する(図9:ステップS104)。そして、この間、受信している第1誘導超音波信号Sの受信音圧レベルが当該個別航走本体部2Aの航走と共に徐々に大きくなっているか否かを、個別側主制御部24が判定する(図9:ステップS105)。
【0121】
この場合、第1誘導超音波信号Sの受信音圧レベルが大きくなっていない場合には、進行方向に方位づれがあることから個別側主制御部24が直ちに本体部航走駆動手段26を駆動制御し、前述した個別航走本体部2Aの首振り動作を再び実行して受信レベルの高い方位を探索し且つ個別航走本体部2Aの進行方向をこれに合わせる制御する(図9:ステップS106)。これによって、第1誘導超音波信号Sの受信音圧レベルが大きくなる方向に、個別航走本体部2Aの進行方向が修正される。
【0122】
次に、個別側主制御部24は、上記個別航走本体部2Aを継続して航走制御すると共に、前述した目標物方位監視手段である第2誘導信号監視部31で受信される目標物Kからの反射波(第2誘導超音波信号S)を受信し、目標物Kからの反射波(第2誘導超音波信号S)の到来する方位を検知すると共にその最新方位情報を一時的に記憶する。
【0123】
続いて、個別側主制御部24は上記個別航走本体部2Aを継続して航走制御する。この間、当該個別航走本体部2Aで受信している第1誘導超音波信号Sの受信レベルが予め設定した基準レベルを越えるレベル(方向切り換え地点)となったか否かを受信レベル判定部22Aが判定する(図9:ステップS107/方向切換え時判定工程)。
【0124】
そして、第1誘導超音波信号Sの受信レベルが基準レベル(基準値)を越えるレベル(方向切り換え地点)となったか又は越えた場合、直ちに個別側主制御部24が作動し、前述した進行方向設定司令部23を介して前述した本体部航走駆動手段26を駆動制御し、予め前述した目標物方位監視手段(第2誘導信号方位監視部)31で監視し確認しておいた目標物Kからの反射波(第2誘導超音波信号Sの反射波)の到来方向に向けて、個別航走本体部2Aの航走方向を切り換駆動制御する(図9:ステップS108/航走方向切換え駆動制御工程)。
【0125】
続いて、この航走方向の切換え設定と共に第2誘導超音波信号Sを第2誘導信号受信器部41が受信したか否かを第2の方位情報特定部42を介して送られてくる受信信号に基づいて、個別側主制御部24が判定し(図9:ステップS109)、受信したと判定された場合には当該受信信号の音圧レベルが著しく大きいか否かを判定する(図9:ステップS110)。この場合の著しい大きさは、例えば想定される目標物Kからの反射波の10倍以上を基準とする。
【0126】
ここで、上記受信信号の音圧レベルが著しく大きいとは、前記主航走体1から出力される第2誘導超音波信号Sを直接受ける場合を想定している。個別航走本体部2Aの航走方向を変更する場合には、時には起こり得る状態である。
【0127】
そして、この場合、個別航走本体部2Aに予め装備された目標物方位監視手段(第2誘導信号方位監視部)31が、例えば予め設定された高レベルの基準値を越える著しい大きさの第2誘導超音波信号Sを前記主航走体1から直接受信した場合、当該高レベルの第2誘導超音波信号Sの方位情報を前述した目標物方位監視手段31が特定することなくこれを排除する。
同時に、これに続いて、予め設定された低いベルの基準値前後の領域の信号レベル(基準値の領域)で受信可能な反射波に対する探索動作(航走方向切換え動作)を継続する(図9:ステップS111)。
【0128】
そして、その内の受信レベルの高い方位の第2誘導超音波信号Sを探知対象の反射波とし、その時の方位情報を、前記目標物方位監視手段31が前記個別航走本体部2Aの水中航走の方位情報として特定するようにした(図9:ステップS112)。
【0129】
即ち、受信した第2誘導超音波信号Sが著しく大きい場合は、上述したように、目標物Kからの反射波の探索動作を継続する(図9:ステップS111)。
【0130】
一方、受信した第2誘導超音波信号Sが予想される目標物Kからの反射波の受信レベルと同等又はこれに近い大きさの場合には、当該第2誘導超音波信号Sの到来方向を目標物Kからの反射波の方向として主制御部24が特定し、同時に個別航走本体部2Aを、当該目標物Kからの反射波の方向に合わせて航走駆動させるように、前述した本体部航走駆動手段26を駆動制御する(図9:ステップS112)。
【0131】
続いて、個別航走本体部2Aが目標物Kからの反射波(第2誘導超音波信号S)の到来方向への水中航走の継続中に、この間、受信している第2誘導超音波信号Sの反射波の受信音圧レベルが当該個別航走本体部2Aの航走と共に大きくなっているか否かを、前述した個別側主制御部24が判定する(図9:ステップS113)。
【0132】
そして、第2誘導超音波信号Sの受信音圧レベルが大きくなっていない場合には、進行方向に方位づれがあることから、個別側主制御部24が直ちに作動して再度前述した個別航走本体部2Aの首振り動作を実行して受信レベルの高い方位を探索し且つ個別航走本体部2Aの進行方向をこれに合わせるように前述した本体部航走駆動手段26を駆動制御する(図9:ステップS114)。これによって、第2誘導超音波信号Sの反射波の受信音圧レベルが大きくなる方向に個別航走本体部2Aの進行方向を修正する。
【0133】
以後は、この可変設定された個別航走本体部2Aの水中航走の方向を、前記目標物Kからの反射波である第2誘導超音波信号Sの受信信号の音在レベルが大きく成る方向に向けて、本体部航走駆動手段26が前記個別航走本体部2Aを常時付勢する(図9:ステップS115)。
これにより、目標物Kからの反射波に案内されてそのままの進行方位を維持しつつ、個別航走本体部2Aは目標物Kへのホーミング動作を継続する。
【0134】
ここで、上述した個別航走体2にかかる動作説明にあって、上述した各工程における実行内容をプログラム化し前記個別側主制御部24が予め備えているコンピュータに実現させるように構成してもよい。
この場合、上記工程における実行内容のプログラム化に際しては、当該プログラムを、非一時的な記録媒体,例えばDVD,CD,フラッシュメモリ当に記録するようにしてもよい。その場合のプログラムは記録媒体からコンピュータに読み出されて実行される。
【0135】
〔実施形態の効果〕
上記実施形態の効果を説明する。
(1).本実施形態は上述したように構成し機能するので、これによると、水中航走体である一の個別航走体2が別に装備された主航走体1から発信される第1,第2の各誘導超音波信号S,Sを有効に捕捉し且つ当該第1,第2の各誘導超音波信号S,Sに順次案内されて、予め設定された目標物Kに向けて確実に航走させることが可能となり、特に減衰の少ない(周波数の低い)第1誘導超音波信号Sで主航走体1の近くまで案内した後、一の個別航走体2を指向性の鋭い(周波数の高い)第2誘導超音波信号Sによる前記目標物Kからの反射波に向けて航走方向を切換え設定するように構成したので、目標物Kからの反射波の信号レベルが小さくても、確実に当該目標物Kからの反射波を捕捉することができ、このため、一の個別航走体2を効率よく前記目標物Kに向けてホーミングさせることができるという優れた効果を得ることができる。
【0136】
(2).又、本実施形態では、主航走体1から発信される無指向で発信される(低い周波数の)第1誘導超音波信号S及び目標物Kに向けて発信される指向性の鋭い(高い周波数の)第2誘導超音波信号Sを各別に受信する第1,第2の各誘導超信号受信器21,41を個別航走本体部2Aの先端部に装備したので、主航走体1に向けての航走に際しては当該主航走体1から発信される第1誘導超音波信号Sを、又目標物Kに向けての航走に際しては当該目標物Kからの反射波(第2誘導超音波信号S)をそれぞれ効率よく受信することができ、このため、前述した前記目標物Kに向けてのホーミングを迅速に且つ確実に実行することが可能となる。
【0137】
(3).更に、前記一の個別航走体2では、最初の航走段階である主航走体1に向けての航走に際しては、受信される主航走体1からの第1誘導超音波信号Sの受信音圧レベルが予め設定された基準値に達したか否かを常時判定する受信レベル判定部22Aを設けると共に、この受信レベル判定部22Aで第1誘導超音波信号Sの受信音圧レベルが基準値に達したと判定された場合に、直ちに個別側主制御部24を作動させて本体部航走駆動手段26を駆動制御し、前記個別航走本体部2Aの航走方向を目標物Kに向けて切り換えるようにしたので、目標物Kからの反射波を確実に捕捉し得る位置での航走方向の切り換えとなり、かかる点において反射音圧のレベルの低い目標物Kからの反射波(第2誘導超音波信号S)であっても、当該反射波を確実に受信することができ、このため、目標物Kに対する前記一の個別航走体2のホーミングを高精度に実行することができる。
【0138】
(4).又、本実施形態では、一の個別航走体2の本体部である個別航走本体部2Aの胴体の周囲に、目標物Kからの反射波(第2誘導超音波信号S)を受信可能とする第2誘導信号方位監視部31である複数の監視センサ31a乃至31dを装備したので、方位の異なる主航走体1に向けて進行中であっても、その側面方向に位置する前記目標物Kからの反射波(第2誘導超音波信号S)を有効に受信しその存在する方位情報を、進行中であっても常時取得することが可能となる。このため、一の個別航走体2の前述した航走方向の切り換え動作およびその動作制御を、いつでも円滑に且つ迅速に実行することが可能となっている。
【0139】
(5).更に、本実施形態では、第1誘導超音波信号S又は目標物Kからの反射波(第2誘導超音波信号S)に案内されて主航走体1又は目標物Kに向けて水中航走中に、前述した一の個別航走体2に航走方向の位置づれ(受信音圧の低下)が発生た場合、前述した個別側主制御部24は直ちに本体部航走駆動手段26を駆動制御して、個別航走本体部2Aの先端部の首振り動作モードを設定する。同時に、この個別航走本体部2Aの先端部の首振り動作により前述した第1又は第2の誘導信号受信器部21又は41では、目標物Kからの反射波(第2誘導超音波信号S)の受信レベルが最も高い方位に向けて当該個別航走本体部2Aの進行方向を設定するように構成した。このため、一の個別航走体2が例えば外部環境の変化で目的とする方位からづれて航走した場合でも、個別側主制御部24が直ちにこれを検知して修正制御することが可能となっており、かか点において、上記一の個別航走体2の前記目標物Kに向けてのホーミングを更に高精度に実現することができるという優れた効果を得ることができる。
【0140】
上述した実施形態については、その新規な技術内容の要点をまとめると、以下の〔付記〕ようになる。尚、本発明は、その権利範囲を必ずしもこれに限定するものではない。
【0141】
〔付記1〕(基本)
周波数の異なる第1,第2の二つの誘導超音波信号に案内されて目標物に向けて水中を航走する一の個別航走体と、前記二つの誘導超音波信号を発信する主航走体とを備え、
前記主航走体は、前記二つの誘導超音波信号の発信手段として、周波数の低い無指向性のピンガー超音波を前記第1誘導超音波信号として発信する第1の誘導信号発信手段と、前記目標物に向けて出力される周波数の高い超音波から成る探知用超音波を前記第2誘導超音波信号として発信する第2の誘導信号発信手段とを装備し、
前記一の個別航走体が、
前記第1誘導超音波信号を予め先端部に装備した第1誘導信号受信器で受信すると共に当該第1誘導超音波信号の受信音圧が高くなる方向に向けて水中航走する第1の水中航走実行機能と、前記第1誘導超音波信号の受信音圧のレベルが予め設定した基準値以上となった場合に前記目標物から反射されて来る前記第2誘導超音波信号に向けてその航走方向を切換え設定すると共に当該第2誘導超音波信号の受信音圧が大きくなる方向に向けてその水中航走を実行する第2の水中航走実行機能とを備えていることを特徴とした水中航走体誘導システム。
【0142】
〔付記2〕(個別航走体の基本構成)
付記1に記載の水中航走体誘導システムにおいて、
前記一の個別航走体は、
航走中に受信した前記第1誘導超音波信号を信号処理しその受信音圧が大きくなる方向を進行方位情報として特定する第1の方位情報特定部と、この特定された進行方位情報に基づいて前記一の個別航走体の航走に必要な方位設定指令を発信する進行方向設定指令部と、この進行方向設定指令部の指令出力動作を制御する個別側主制御部と、これら各構成要素を格納し保持する個別航走本体部と、この個別航走本体部に予め装備され前記進行方向設定指令部からの指令に基づいて作動し前記個別航走本体部に航走力を付勢する本体部航走駆動手段とを備え、
これにより、前記第1の水中航走実行機能を実現する構成としたことを特徴とする水中航走体誘導システム。
【0143】
〔付記3〕(航走方向切換え制御)
付記2に記載の水中航走体誘導システムにおいて、
前記一の個別航走体は、
前記受信した第1誘導超音波信号の受信音圧レベルが予め設定した基準値を越えたか否かを判定する受信レベル判定部と、この受信レベル判定部による前記受信音圧レベルの判定に先立って機能し予めその位置が特定されている前記目標物からの前記第2誘導超音波信号の反射波を受信して当該目標物にかかる方位情報を特定する目標物方位監視手段とを有し、
前記個別側主制御部が、前記進行方向設定指令部を介して前記本体部航走駆動手段を駆動を制御し、予め前記目標物方位監視手段で特定された目標物にかかる方位情報に基づいて前記一の個別航走体の水中航走方向を前記目標物からの反射波の到来方向に切換え制御する航走方向切換え制御機能を備えていることを特徴とした水中航走体誘導システム。
【0144】
〔付記4〕(航走方向の設定制御)
付記3に記載の水中航走体誘導システムにおいて、
前記個別航走本体部が、その先端部に装備され前記目標物からの反射波である第2誘導超音波信号を受信する第2誘導信号受信部と、この第2誘導信号受信部で受信される前記反射波の最大値に基づいて前記目標物の方位を特定する第2の方位情報特定部とを備えると共に、
前記個別側主制御部が、前記第2の方位情報特定部で特定される前記反射波の受信レベルが大きくなる方向に前記本体部航走駆動手段を駆動制御して前記航走体本体部の航走方向を設定する航走方向設定制御機能を備え、
これにより、前記第2の水中航走実行機能を実現する構成としたことを特徴とする水中航走体誘導システム。
【0145】
〔付記5〕(先端部揺動動作制御機能)
付記4に記載の水中航走体誘導システムにおいて、
前記個別側主制御部の前記航走方向設定制御機能は、
前記個別航走体の先端部が前記目標物に向けて切り換え設定された場合にも作動し当該個別航走体の先端部を少なくとも進行方向の上下左右に揺動させる先端部揺動動作制御機能と、前記先端部揺動動作制御機能を実行して得られる前記目標物からの受信音圧のレベル変化を検出すると共に当該受信音圧のレベルが最大となる方位を前記目標物の方位として特定する目標物方位特定処理機能とを、その内容として備えていることを特徴とした水中航走体誘導システム。
【0146】
〔付記6〕(目標物方位監視手段)
付記3に記載の水中航走体誘導システムにおいて、
前記個別側主制御部に装備された前記目標物方位監視手段は、
前記目標物からの反射波である前記第2誘導超音波信号の到来方向を前記個別航走本体部の周囲側面側から監視し前記目標物の方位情報を特定する複数の監視センサを備えた第2誘導信号方位監視部と、この第2誘導信号方位監視部の出力信号に基づいて目標物の方位を特定する目標物方位特定回路部とを有し、
前記主航走体から発信される第2誘導超音波信号が予め設定された高レベルの基準値を越えて直接受信された場合には、当該高レベルの第2誘導超音波信号を廃棄処理する受信信号廃棄処理機能と、前記複数の監視センサの内の一つが予め設定された低いベルの基準値に対応した反射波を受信した場合には、その内の高い受信レベルの第2誘導超音波信号を監視対象の反射波として保持すると共にその時の方位情報を前記個別航走本体部の水中航走の方位情報として特定する方位情報選択処理機能とを備えていることを特徴とした水中航走体誘導システム。
【0147】
〔付記7〕(本体部航走駆動手段)
付記3に記載の水中航走体誘導システムにおいて、
前記一の個別航走体が備えている前記本体部航走駆動手段は、前記個別航走体の個別航走本体部に対して推進力を付勢する推進力付勢機構と、前記個別航走本体部の航走中に当該個別航走本体部の進路変更を設定する進路変更設定機構とを有すると共に、
前記進路変更設定機構を、前記個別航走本体部の周囲の上下及び左右の各側面部にそれぞれ一対づつ装備された水中ブレーキと、この各一対の水中ブレーキの内、前記進路変更に合わせて何れかの水中ブレーキを個別に選択駆動するブレーキ選択駆動部とにより構成したことを特徴とする水中航走体誘導システム。
【0148】
〔付記8〕(方法の発明)
主航走体から出力される第1誘導超音波信号を受信する第1誘導信号受信部と、この第1誘導信号受信部で受信された前記第1誘導超音波信号に案内されて当該主航走体側に向けて水中を航走する個別航走本体部と、この個別航走本体部を航走駆動すると共に進行方向設定司令部からの指令に応じて当該個別航走本体部の進行方向を変更設定する本体部航走駆動手段と、この本体部航走駆動手段の動作を進行方向設定司令部を介して可変制御する個別側主制御部とを備えた水中航走の個別航走体にあって、
前記主航走体に向けて水中航走中の前記個別航走体の航走方向を、前記主航走体の位置する方向とは異なった方向に位置する目標物に向けて変更設定するに際し、
まず、前記個別航走本体部の進行方向に沿って到来する前記第1誘導超音波信号の受信音圧レベルが当該個別航走本体部の航走と共に徐々に大きくなるか否かを、前記個別側主制御部が判定(確認)すると共に前記第1誘導超音波信号の受信音圧レベルが大きくなる方向に向けて前記個別航走本体部が水中走行を維持し得るように、個別側主制御部が前記本体部航走駆動手段を介して前記個別航走本体部に対する水中走行力の付勢動作を制御し、
次に、前記第1誘導超音波信号の受信音在レベルが前記個別航走本体部に予め設定された基準値を越えたか否かを、当該個別航走本体部の受信レベル判定部が判定し、
この受信レベル判定部で第1誘導超音波信号の受信音在レベルが前記基準値よりも大きくなった旨判定された場合に、前記個別側主制御部が、前記本体部航走駆動手段を駆動制御して前記個別航走本体部の水中航走の方向を、前記目標物方位監視手段で特定されてなる前記目標物の方位に向けて切り換え設定し、
この切換え設定された個別航走本体部の水中航走の方向を、前記目標物からの反射波である第2誘導超音波信号の受信音在レベルが大きく成る方向に向けて、前記個別側主制御部が、前記本体部航走駆動手段を介して前記個別航走本体部を常時付勢制御するようにしたことを特徴とする個別航走体水中走行制御方法。
【0149】
〔付記9〕(目標物の方位情報の特定)
付記8に記載の個別航走体水中走行制御方法において、
前記個別航走本体部に対する航走方向の切換え動作の制御に先立って、予め前記目標物に向けて前記主航走体から前記第1誘導超音波信号とは異なる周波数の第2誘導超音波信号が発信され且つこれによって生じる前記目標物からの反射波を、前記一の個別航走本体部に予め装備された目標物方位監視手段が受信すると共に、この受信した反射波の到来方位を当該目標物の方位をとして特定してこれを保持するようにしたことを特徴とする個別航走体水中走行制御方法。
【0150】
〔付記10〕(受信波の特定)
付記9に記載の個別航走体水中走行制御方法において、
前記本体部航走駆動手段が前記個別航走本体部の水中航走の方向を切換え設定する動作の実行中に、予め設定された高レベルの基準値を越える第2誘導超音波信号を前記個別航走体の第2の誘導信号受信器が直接受信した場合には、前記高レベルの第2誘導超音波信号の方位情報を、前記個別航走体が備えている目標物方位判定回路が特定することなくこれを排除し、
続いて、予め設定された低いレベルの基準値領域で受信される反射波を前記第2の誘導信号受信器が継続して探索し、
この監視動作中に受信される反射波の内の受信レベルの高い第2誘導超音波信号の到来方向の反射波を、前記目標物方位監視手段が前記目標物からの反射波として特定し、
この特定された反射波にかかる前記方位情報を、前記目標物方位監視手段が前記個別航走本体部の水中航走の方位情報として特定することを特徴とした個別航走体水中走行制御方法。
【0151】
〔付記11〕(走行方向の確認動作)
付記8に記載の個別航走体水中走行制御方法において、
前記本体部航走駆動手段による前記個別航走本体部の走行方向の設定に際しては、前記第1又は第2の各誘導超音波信号の到来方向に向けて、前記本体部航走駆動手段が前記個別航走本体部に対してその先端部を一方と他方に方向およびこれに直交する方向の十文字方向に順次繰り返しての首振り動作を付勢し、
この個別航走本体部の首振り動作によって得られる受信音圧の変化を、前記第1又は第2の方位情報特定部が収拾して受信音圧が最大となる方位の方位情報を前記個別側主制御部に伝達し、
この第1又は第2の各方位情報特定部から送られてくる方位情報に基づいて、前記個別側主制御部が作動し、前記本体部航走駆動手段を介して前記個別航走本体部の走行方向を設定制御することを特徴とした個別航走体水中走行制御方法。
【0152】
〔付記12〕(プログラム発明)
主航走体から出力される第1誘導超音波信号を受信する第1誘導信号受信部と、この第1誘導信号受信部で受信された前記第1誘導超音波信号に案内されて当該主航走体側に向けて水中を航走する個別航走本体部と、この個別航走本体部を航走駆動すると共に進行方向設定司令部からの指令に応じて当該個別航走本体部の進行方向を変更設定する本体部航走駆動手段と、この本体部航走駆動手段の動作を進行方向設定司令部を介して可変制御する個別側主制御部とを備えた水中航走の個別航走体にあって、
前記主航走体に向けて水中航走中の前記個別航走体の航走方向を、前記主航走体の位置する方向とは異なった方向に位置する目標物に向けて変更設定するに際し、
前記第1誘導信号受信部で受信される前記第1誘導超音波信号の受信音圧レベルが当該個別航走本体部の航走と共に大きく成るか否かを判定(確認)すると共に前記受信音圧レベルの判定(確認)結果に基づいて前記第1誘導超音波信号の受信音在レベルが大きくなる方向に向けて前記個別航走本体部に水中走行力を付勢するよう前記本体部航走駆動手段を駆動制御する個別航走体航走動作制御機能、
前記第1誘導信号受信部で受信された前記第1誘導超音波信号の受信音圧レベルが予め設定された基準値よりも大きくなったか否かを判定する受信音圧レベル判定処理機能、
前記受信音圧レベルが基準値よりも大きくなった場合にこれに基づいて前記本体部航走駆動手段を駆動制御し、前記個別航走本体部の水中航走の方向を、当該個別航走本体部が備えている目標物方位監視手段で予め監視し特定して成る前記目標物からの反射波の到来方向に向けて切り換え設定する走行方向切換え設定機能、
およびこの切換え設定された個別航走本体部の水中航走の方向を維持すると共に、前記目標物からの反射波である第2誘導超音波信号の受信音在レベルが大きく成る方向に向けて常時前記個別航走本体部を付勢するように前記本体部航走駆動手段を駆動制御する航走力付勢制御機能を設け、
これらを前記個別側主制御部が備えているコンピュータに実現させるようにしたことを特徴とする個別航走体水中走行制御プログラム。
【0153】
〔付記13〕(反射波継続監視処理)
付記12に記載の個別航走体水中走行制御プログラムにおいて、
前記本体部航走駆動手段が前記個別航走本体部の水中航走の方向を切換え設定する動作の実行中に、予め設定された高レベルの基準値を越える第2誘導超音波信号を、前記第2誘導信号受信器部が前記主航走体から直接受信した場合を想定して、
前記高レベルの基準値を越える前記第2誘導超音波信号が受信された場合には当該第2誘導超音波信号の方位情報を特定することなくこれを排除すると共に、予め目標物からの反射波に対応して予めね設定された低いベルの基準値に基づいて受信される反射波についてその到来方位を前記第2誘導信号受信器部を介して探索し且つ当該探索状態を継続する反射波継続探索処理機能、
この探索動作中に受信される前記低いベルの基準値に対応した反射波の内の受信レベルの高い第2誘導超音波信号を、前記目標物からの反射波として特定する反射波特定処理機能、
及びこの目標物からの反射波である第2誘導超音波信号の到来する方位を目標物の方位として処理する目標物方位特定処理機能、
を設け、これらを前記コンピュータに実現させるようにしたことを特徴とする個別航走体水中走行制御プログラム。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明は、上述した機雷爆破用に限らず、水圧の高い深海の鉱物資源の探索や危険水域の状況探索など、反射波(第2誘導超音波信号S)の位置を連続的に代えて一の個別航走体を誘導する等の新システムに有効に利用することが可能となる。
【符号の説明】
【0155】
1 主航走体
2 一の個別航走体
2A 個別航走本体部
11 第1の誘導信号発信手段
11A 信号発信用超音波送信器
12 第2の誘導信号発信手段
12A 信号発信用超音波送受信器
21 第1誘導信号受信器
21a乃至21d 第1誘導信号用超音波受信器
22 第1の方位情報特定部
22A 受信レベル判定部
23 進行方向設定指令部
24 個別側主制御部
26 本体部航走駆動手段
26A 推進力付勢機構
26B 進路変更設定機構
28,29 ブレーキ選択機構
28A 上方水中ブレーキ
28B 下方水中ブレーキ
29A 右方水中ブレーキ
29B 左方水中ブレーキ
31 第2誘導信号監視部
31a乃至31d 監視センサ
32 目標物方位特定回路
33 目標物方位監視手段
41 第2誘導信号受信器
41a乃至41d 反射波用超音波受信器
42 第2の方位情報特定部
K 目標物
第1誘導超音波信号
第2誘導超音波信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数の異なる第1,第2の二つの誘導超音波信号に案内されて目標物に向けて水中を航走する一の個別航走体と、前記二つの誘導超音波信号を発信する主航走体とを備え、
前記主航走体は、前記二つの誘導超音波信号の発信手段として、周波数の低い無指向性のピンガー超音波を前記第1誘導超音波信号として発信する第1の誘導信号発信手段と、前記目標物に向けて出力される周波数の高い超音波から成る探知用超音波を前記第2誘導超音波信号として発信する第2の誘導信号発信手段とを装備し、
前記一の個別航走体が、
前記第1誘導超音波信号を予め先端部に装備した第1誘導信号受信器で受信すると共に当該第1誘導超音波信号の受信音圧が高くなる方向に向けて水中航走する第1の水中航走実行機能と、前記第1誘導超音波信号の受信音圧のレベルが予め設定した基準値以上となった場合に前記目標物から反射されて来る前記第2誘導超音波信号に向けてその航走方向を切換え設定すると共に当該第2誘導超音波信号の受信音圧が大きくなる方向に向けてその水中航走を実行する第2の水中航走実行機能とを備えていることを特徴とした水中航走体誘導システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水中航走体誘導システムにおいて、
前記一の個別航走体は、
航走中に受信した前記第1誘導超音波信号を信号処理しその受信音圧が大きくなる方向を進行方位情報として特定する第1の方位情報特定部と、この特定された進行方位情報に基づいて前記一の個別航走体の航走に必要な方位設定指令を発信する進行方向設定指令部と、この進行方向設定指令部の指令出力動作を制御する個別側主制御部と、これら各構成要素を格納し保持する個別航走本体部と、この個別航走本体部に予め装備され前記進行方向設定指令部からの指令に基づいて作動し前記個別航走本体部に航走力を付勢する本体部航走駆動手段とを備え、
これにより、前記第1の水中航走実行機能を実現する構成としたことを特徴とする水中航走体誘導システム。
【請求項3】
請求項2に記載の水中航走体誘導システムにおいて、
前記一の個別航走体は、
前記受信した第1誘導超音波信号の受信音圧レベルが予め設定した基準値を越えたか否かを判定する受信レベル判定部と、この受信レベル判定部による前記受信音圧レベルの判定に先立って機能し予めその位置が特定されている前記目標物からの前記第2誘導超音波信号の反射波を受信して当該目標物にかかる方位情報を特定する目標物方位監視手段とを有し、
前記個別側主制御部が、前記進行方向設定指令部を介して前記本体部航走駆動手段を駆動を制御し、予め前記目標物方位監視手段で特定された目標物にかかる方位情報に基づいて前記一の個別航走体の水中航走方向を前記目標物からの反射波の到来方向に切換え制御する航走方向切換え制御機能を備えていることを特徴とした水中航走体誘導システム。
【請求項4】
請求項3に記載の水中航走体誘導システムにおいて、
前記個別航走本体部が、その先端部に装備され前記目標物からの反射波である第2誘導超音波信号を受信する第2誘導信号受信部と、この第2誘導信号受信部で受信される前記反射波の最大値に基づいて前記目標物の方位を特定する第2の方位情報特定部とを備えると共に、
前記個別側主制御部が、前記第2の方位情報特定部で特定される前記反射波の受信レベルが大きくなる方向に前記本体部航走駆動手段を駆動制御して前記航走体本体部の航走方向を設定する航走方向設定制御機能を備え、
これにより、前記第2の水中航走実行機能を実現する構成としたことを特徴とする水中航走体誘導システム。
【請求項5】
請求項4に記載の水中航走体誘導システムにおいて、
前記個別側主制御部の前記航走方向設定制御機能は、
前記個別航走体の先端部が前記目標物に向けて切り換え設定された場合にも作動し当該個別航走体の先端部を少なくとも進行方向の上下左右に揺動させる先端部揺動動作制御機能と、前記先端部揺動動作制御機能を実行して得られる前記目標物からの受信音圧のレベル変化を検出すると共に当該受信音圧のレベルが最大となる方位を前記目標物の方位として特定する目標物方位特定処理機能とを、その内容として備えていることを特徴とした水中航走体誘導システム。
【請求項6】
請求項3に記載の水中航走体誘導システムにおいて、
前記個別側主制御部に装備された前記目標物方位監視手段は、
前記目標物からの反射波である前記第2誘導超音波信号の到来方向を前記個別航走本体部の周囲側面側から監視し前記目標物の方位情報を特定する複数の監視センサを備えると共に、
前記主航走体から発信される第2誘導超音波信号が予め設定された高レベルの基準値を越えて直接受信された場合には、当該高レベルの第2誘導超音波信号廃棄処理する受信信号廃棄処理機能と、
前記複数の監視センサの内の一つが予め設定された低いベルの基準値に対応した反射波を受信した場合には、その内の高い受信レベルの第2の誘導超音波信号を監視対象の反射波として保持すると共にその時の方位情報を前記個別航走本体部の水中航走の方位情報として特定する方位情報選択処理機能とを備えていることを特徴とした水中航走体誘導システム。
【請求項7】
請求項3に記載の水中航走体誘導システムにおいて、
前記一の個別航走体が備えている前記本体部航走駆動手段は、前記個別航走体の個別航走本体部に対して推進力を付勢する推進力付勢機構と、前記個別航走本体部の航走中に当該個別航走本体部の進路変更を設定する進路変更設定機構とを有すると共に、
前記進路変更設定機構を、前記個別航走本体部の周囲の上下及び左右の各側面部にそれぞれ一対づつ装備された水中ブレーキと、この各一対の水中ブレーキの内、前記進路変更に合わせて何れかの水中ブレーキを個別に選択駆動するブレーキ選択駆動部とにより構成したことを特徴とする水中航走体誘導システム。
【請求項8】
主航走体から出力される第1誘導超音波信号を受信する第1誘導信号受信部と、この第1誘導信号受信部で受信された前記第1誘導超音波信号に案内されて当該主航走体側に向けて水中を航走する個別航走本体部と、この個別航走本体部を航走駆動すると共に進行方向設定司令部からの指令に応じて当該個別航走本体部の進行方向を変更設定する本体部航走駆動手段と、この本体部航走駆動手段の動作を進行方向設定司令部を介して可変制御する個別側主制御部とを備えた水中航走の個別航走体にあって、
前記主航走体に向けて水中航走中の前記個別航走体の航走方向を、前記主航走体の位置する方向とは異なった方向に位置する目標物に向けて変更設定するに際し、
まず、前記個別航走本体部の進行方向に沿って到来する前記第1誘導超音波信号の受信音圧レベルが当該個別航走本体部の航走と共に徐々に大きくなるか否かを前記個別側主制御部が判定すると共に、前記第1誘導超音波信号の受信音圧レベルが大きくなる方向に向けて前記個別航走本体部が水中走行を維持し得るように個別側主制御部が前記本体部航走駆動手段を駆動制御して前記個別航走本体部に対する水中走行力の付勢動作を制御し、
次に、前記第1誘導超音波信号の受信音在レベルが前記個別航走本体部に予め設定された基準値を越えたか否かを当該個別航走本体部の受信レベル判定部が判定し、
この受信レベル判定部で第1誘導超音波信号の受信音在レベルが前記基準値よりも大きくなった旨判定された場合に、前記個別側主制御部が、前記本体部航走駆動手段を駆動制御して前記個別航走本体部の水中航走の方向を、予め個別航走本体部に装備された目標物方位監視手段で特定されてなる前記目標物の方位に向けて切換え設定し、
この切換え設定された個別航走本体部の水中航走の方向を、前記目標物からの反射波である第2誘導超音波信号の受信音在レベルが大きく成る方向に向けて、前記個別側主制御部が、前記本体部航走駆動手段を介して前記個別航走本体部を常時付勢制御するようにしたことを特徴とする個別航走体水中走行制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載の個別航走体水中走行制御方法において、
前記個別航走本体部に対する航走方向の切換え動作の制御に先立って、予め前記目標物に向けて前記主航走体から前記第1誘導超音波信号とは異なる周波数の第2誘導超音波信号が発信され且つこれによって生じる前記目標物からの反射波を、前記一の個別航走本体部に予め装備された目標物方位監視手段が受信すると共に、この受信した反射波の到来方位を当該目標物の方位情報として特定してこれを保持するようにしたことを特徴とする個別航走体水中走行制御方法。
【請求項10】
主航走体から出力される第1誘導超音波信号を受信する第1誘導信号受信部と、この第1誘導信号受信部で受信された前記第1誘導超音波信号に案内されて当該主航走体側に向けて水中を航走する個別航走本体部と、この個別航走本体部を航走駆動すると共に進行方向設定司令部からの指令に応じて当該個別航走本体部の進行方向を変更設定する本体部航走駆動手段と、この本体部航走駆動手段の動作を進行方向設定司令部を介して可変制御する個別側主制御部とを備えた水中航走の個別航走体にあって、
前記主航走体に向けて航走中の前記個別航走体の航走方向を、前記主航走体の位置する方向とは異なった方向に位置する目標物に向けて変更設定するに際し、
前記第1の誘導信号受信部で受信される前記第1誘導超音波信号の受信音圧レベルが当該個別航走本体部の航走と共に大きく成るか否かを判定すると共に前記受信音圧レベルの判定結果に基づいて前記第1誘導超音波信号の受信音在レベルが大きくなる方向に向けて前記個別航走本体部に水中走行力を付勢するよう前記本体部航走駆動手段を駆動制御する個別航走体航走動作制御機能、
前記第1の誘導信号受信部で受信された第1誘導超音波信号の受信音圧レベルが予め設定された基準値よりも大きくなったか否かを判定する受信音圧レベル判定処理機能、
前記受信音圧レベルが基準値よりも大きくなった場合にこれに基づいて前記本体部航走駆動手段を駆動制御し、前記個別航走本体部の水中航走の方向を、当該個別航走本体部が備えている目標物方位監視手段で予め監視し特定されて成る前記目標物からの反射波の到来方向に向けて、切り換え設定する走行方向切換え設定機能、
およびこの切換え設定された個別航走本体部の水中航走の方向を維持すると共に、前記目標物からの反射波である第2誘導超音波信号の受信音在レベルが大きく成る方向に向けて常時前記個別航走本体部を付勢するように前記本体部航走駆動手段を駆動制御する航走力付勢制御機能を設け、
これらを前記個別側主制御部が備えているコンピュータに実現させるようにしたことを特徴とする個別航走体水中走行制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−127760(P2012−127760A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278632(P2010−278632)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】