説明

水処理方法およびその装置

【課題】広範囲の排水に使用でき、汚泥の発生が少なく、エネルギー消費が少ない安価で簡便な水処理方法およびその装置を提供する。
【解決手段】排水1に水酸化ナトリウムなど塩基性物質6を加えpHを10以上に調整した後、2価の鉄イオン5を添加して有機物や重金属類等の無機物、イオン、浮遊物質などの汚染粒子を沈澱除去し、上澄み液に直径30nm以下の非晶性の水酸化第2鉄コロイド粒子を添加することによって、残留する小さな浮遊粒子や陰イオンも沈澱除去する水処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は工業排水、生活排水および井水等の処理に使用され、処理後の水の水質の維持管理に関する。詳しくは液体中に含まれる有機物、無機物、イオン、浮遊物質等汚染物質をpHを変化した際の2価の鉄イオンの働きによって沈澱除去する水処理方法を提供する。
【背景技術】
【0002】

化学工場や食品工場、染色工場などでは大量の排水が生じ、排出する際には、下水道法で定められた水質基準値あるいは河川に放出する場合には環境基準を満たさなければならない。その為各種水処理方法が開発されているが、場合によっては処理が難しく、コストが高くなったり、大量の希釈水が必要になることがある。
【0003】

一般的な水処理方法としては、活性汚泥法や凝集剤を用いた方法がある。活性汚泥法の場合は活性汚泥の維持に手間がかかり、また冬季に性能が落ちるため加熱や助剤が必要であるなど管理が難しい。さらに微生物の死活した汚泥処理が必要である。凝集剤を用いた場合、大量の汚泥が発生し、その汚泥の処理にコストがかかる。また安価な凝集剤はくず鉄などから製造されている場合もあり、凝集剤自体からの微量有害物質の溶出も懸念される。
【0004】

化学的処理として過酸化水素や次亜塩素酸のような酸化剤や、ハイドロサルファイト、二酸化チオ尿素のような還元剤を用いた脱色方法も低コストなためよく使用されるが、これらの方法は排水後pHの変化により色が回復する場合がある。また酸化剤や還元剤は臭いが強い場合があり、作業の支障となることがある。物理的処理として活性炭を使用する事もあるが、この方法は中性物質(特に有機物)の除去に適するが、極性物質の陽イオン主に金属イオンや、陰イオンを含めて極性基を持つ親水性物質を除去する事は難しくコストが高い。また頻繁に活性炭の交換が必要である。
【0005】

COD除去のための水処理が難しい対象に対して、第一鉄イオンと過酸化水素を併用したフェントン反応を利用する場合がある。この方法は有機物含有物を分解除去することはできるが、pH値を酸側にする必要があり排水時にはpH値を上げる必要性がある(特許文献1)。また高価な酸化剤を用いる必要があり、コストが高くなる。
【0006】

また、水酸化鉄や鉄イオンを用いた共沈法で重金属類を沈澱除去する方法がある(特許文献2,3)。塩化鉄を添加し、水酸化鉄を生成させ、重金属類との水酸化共沈物を生成させる方法や、液性を一度酸性にして鉄イオンを生じさせ、その後液性をアルカリ性にして鉄と重金属類の水酸化共沈物を生成させて固液分離する方法などである。
【0007】

電気分解を活用する方法もあり、例えば塩化ナトリウムなどの電解質を含む水中の電極に印加し次亜塩素酸を生じさせ、酸化処理する(特許文献4,5)。また同様の電解質を含む水中の電極を鉄かアルミニウムとして、鉄イオンやアルミニウムイオンを生じさせ、鉄系あるいはアルミニウム系凝集剤と同様にリン酸などを不溶性リン酸塩として沈澱除去する方法もある(特許文献6,7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】

【特許文献1】特開平10−277568
【特許文献2】特開2002−126758
【特許文献3】特開2001−225081
【特許文献4】特開平8−281271
【特許文献5】特許第4596937号
【特許文献6】特許第3385914号
【特許文献7】特許第4520054号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】

従来の処理法では、処理が難しかったり、高コストなため適用が難しい事例があった。例えば染色排水の場合、活性汚泥法や凝集剤では処理が難しく、一般的には酸化剤や還元剤による処理が行われているが、酸化剤や還元剤の場合、排水後pHの変化により色が回復することがある。また脱色が可能となる処理法でも処理後の水溶液の化学的酸素必要量(COD)の低下効果は低い。CODの低下に寄与する処理法の開発が求められる。
【0010】

また無機系の凝集剤で処理をする場合、荷電粒子の凝集効果は期待できるが、特に陰イオンに対する凝集効果には再現性がない。陽イオンに対しては共沈効果によって凝集させることができるが、この場合でも一般的に大量の汚泥が発生し、凝集剤のコストに加え、大量の汚泥処理にもコストがかかる。処理対象によっては凝集剤の使用量が多くなり、その凝集剤自体も汚泥の量を増やす結果となる。汚泥の発生量を極小化し、イオンの凝集除去効果を高める必要がある。
【0011】

活性汚泥法の場合はCODやBODの低下に寄与するが、CODの低下にはほとんど効果が認められていない排水もある。特に有機高分子物質の製造工場廃液のCODは低下効果は低い。活性汚泥の活性維持に手間がかかり、また冬季に性能が落ちるため加熱するか、助剤が必要であるなど管理が難しい。活性汚泥法では排水の性状変化の対応が難しく、また処理量の変動への対応や、気温などの環境変化への対応が問題である。特に製造工場からの排水には微生物で分解できない成分もあり、化学薬品での処理も併用しなくてはならない。例えば活性汚泥処理の前後で酸化剤や還元剤処理も検討されるが、活性汚泥の活性度への影響のほかに、臭い等の周辺環境の変化も考慮しなくてはならない。また種類によっては劇物であり、作業に支障がある。また活性炭やゼオライトなどの吸着材を用いる場合も、頻繁に交換する必要がある。特に染色工場などの小規模事業所の場合、簡便で取り扱いやすい処理方法が求められている。
【0012】

排水は工場の稼働状況や季節によって水質が変化するため、処理方法もそれに合わせる必要があるが、従来の処理方法は処理性能のコントロールが難しく、例えば活性汚泥法や、大規模沈殿槽の場合、事前に水質を調べる必要がある。水環境変化にも簡単に適応できる処理技術が求められる。
【0013】

また安価な無機系の凝集剤はくず鉄などから製造されている場合もあり、凝集剤自体からの微量有害物質の溶出も懸念される。例えばヒ素や鉛などの両性金属が含まれた場合、処理中のpH調整で溶解する恐れがある。処理水を再利用する場合には大きな障害となる。
【0014】

塩化鉄を添加して、その後pH調整する場合は、重金属類や無機顔料には良く働くが、染料や有機顔料には働きにくい。塩化鉄を添加した後、pH調整して、水酸化鉄や鉄イオンを生じさせる方法は、作用の再現性に劣る。これはpHをアルカリ側へ変化させた際の水酸化鉄の生成と沈澱が伴う。共沈効果に大きな影響を与える水酸化鉄コロイド粒子の大きさや鉄イオンの価数の制御が難しいためである。分散した微粒子の凝集作用についても、該作用の激しさについても塩化第二鉄の添加量との間にも再現性に不確かさが伴う。これらの再現性の不確実さを明らかにして、最適な塩化鉄の性状を確定させる必要がある。
【0015】

電気分解を用いる場合は、陽極に発生する次亜塩素酸による酸化作用で処理されているが、酸化作用だけの処理方法では排水後に色が回復することがあり、またCODの低下効果が少なく、根本的な処理にならず、処理対象が一部の物質に限られてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0016】

上記のような課題、すなわち(1)染色加工工場廃液への酸化・還元剤処理でのCOD低下が不十分、(2)無機系凝集剤のイオンに対する作用の再現性不足と多量の汚泥発生、(3)活性汚泥法では処理が難しいCOD成分の存在と分解活性維持のための環境整備と不活化汚泥の発生、(4)電気分解法が適用できる排水の種類が少ない、(5)塩化鉄添加法では無機系凝集剤と同様の問題点と、作用機構が明確でない、といった課題がある。これらの課題を解決するために、造核作用を持つ水酸化鉄コロイド粒子や2価の鉄イオンを使用した処理方法の作用機構を検討した。その結果Fe2+の作用が還元作用より開始し、Fe3+となると水酸化鉄コロイド粒子として造核剤として働き、コロイド粒子の水雰囲気がpH>4となると水酸化第二鉄の沈澱として作用することが明らかとなり本発明に至った。特に染料排水において、pHを10以上に調整した後、2価の鉄イオンを添加した場合に還元作用と造核作用と共沈作用が働き、最も優れた凝集沈澱効果を発揮し、染料排水が脱色されることを発見するに至った。
【0017】

本発明の最大の特徴は、pHが2以下の状態にある2価の鉄イオンの働きを利用した点にある。従来の凝集剤として利用されている塩化第二鉄は、実際に処理液中に添加された状態では大部分の塩化第二鉄が粒径50〜60nmの水酸化第二鉄コロイド粒子と3価の鉄イオンとして存在する。処理液のpHを4.0以上にして水酸化第二鉄の沈澱へ成長させて共沈現象により共存するイオンと荷電した分散粒子を沈澱化する。2価の鉄イオンを適用するっ場合にも、pHを7.5以上に設定することによって生じる水酸化鉄としての沈殿時の共沈とイオンとしての分散粒子の凝集作用を利用する。本発明では2価の鉄イオンをpH2以下の状態にすることによりほぼ完全に鉄イオンとなり、2価の鉄から3価の鉄へと変化する還元反応がまず進行し、溶解度の低下が起こり、粒子径10nm以下の核が発生する。この核は見掛け上透明であるが、3価の陰イオンが存在すると急速に大粒子化する作用によってその存在が分かる。
【0018】

本発明の必要の要件として、処理すべき溶液のpHをあらかじめ10以上にしてpH<2の状態にある2価の鉄イオンを添加して、その後撹拌また放置して相互拡散を行わせた後の溶液のpHを9未満にする点にある。この一連のpH変化は第一鉄イオンの状態を第二鉄イオンへ、さらに水酸化第二鉄の微粒子(直径5nm〜15nm)への変化と、負イオンや分散粒子との結合による大粒子化とさらに水酸化第二鉄の溶解度の低下に伴った沈澱と共沈の増進をもたらす。
【0019】

さらに、上澄み水中の小さな浮遊粒子も、直径30nm以下の非晶性の水酸化第2鉄コロイド粒子を添加することによって、凝集沈澱し、上澄み液は無色透明となった。これまで処理が難しいとされてきた、藍やインディゴ染料の排水、またジアゾ系、アミド系有機顔料の排水についても同様に、pH調整後の2価の鉄イオンの添加と、水酸化鉄コロイド粒子の添加により処理が可能となることが分かった。しかも、酸化剤、還元剤による処理とは異なり、処理後に色が回復することがない。
【0020】

同様のメカニズムを外部より化学薬品等を加えることなく対象処理液内に溶解した成分を利用して装置内にて行うためには、塩化ナトリウムなどの塩化物系電解質が溶解した水中で、銅など耐食性の陰極と、鉄などの陽極に電荷をかけて電気分解を起こさせることで達成できるという発見により本発明のさらなる利点を得た。つまり、例えば銅製の陰極で発生する水酸化ナトリウムにより原水のpHが上昇し、撹拌することで即座に鉄製の陽極で発生する2価の鉄イオンと接触させ、上記と同様の反応が連続的に発生し、染色加工工程中に生じた汚染粒子が2価の鉄イオンによる、還元、造核作用と共沈作用で凝集し、染料排水は脱色される。その結果、発生する汚泥は大幅に削減され、コストの低減につながる。沈殿物は鉄成分以外は排水中の成分であり、処理後の液中のNaと塩素イオンの増加はなく、むしろ減少する傾向がある。
【0021】

この電解手法によれば、管理と取り扱いが簡便になり、排水の水質が変化した際にも、印加する電気量の調製のみで処理性能の最適化が可能になる。電解中の陰極から発生する水素ガスを還元剤として有効利用することも可能である。たとえば処理後の水に水素ガスの微細な泡を通すことにより水中の溶存酸素を除去し、水管の腐食のない水に変換できる。
【0022】

また、発生する2価の鉄イオンは高純度の鉄電極から発生するものであり、一般的な鉄系凝集剤のように鉄源からの汚染もなくなる。また同時に水酸化ナトリウムも陰極から発生するため、劇物である苛性ソーダを保管、また直接使用する必要がなくなる。電気分解の際に使用する塩化ナトリウム等電解質は、海水を用いてもよい。すなわち本発明のさらなる特徴としてpHを10以上にするための塩基性物質として処理対象液中に含まれている金属陽イオンの陰極での電極反応の生成物を利用し、2価の鉄イオンとしては陽極として利用した鉄材の陽極での電極反応の生成物を利用する点にある。溶液の電導率が1mS/cm以上であれば電極反応のみで外部からの塩基性物質の添加や2価の鉄イオンの添加は必要ない。
【0023】

さらに、電極間にセパレーターを設けることで、より効果的な処理が可能になる。すなわち、電極間にセパレーターを設けることで、陽極と陰極で発生する水酸化ナトリウムと2価の鉄イオンをそれぞれ別々に管理できるようになり、段階的に原液に加えることができる。その結果、陽極側で発生する2価の鉄イオンは、陰極側で発生する水酸化ナトリウムと接触しないため、すぐに沈澱することなく、効率的に使用することができる。まず陰極側の水酸化ナトリウム水溶液を排水に添加し、その後、陽極側の2価の鉄イオンを添加することで、排水を効率的に沈澱・除去することができる。また電気分解と沈澱除去を別々に行うことで、洗浄等の装置の管理が簡便となる。
【発明の効果】
【0024】

本発明によって有機物や重金属類、染料など各種汚染物質を含む排水をきわめて低コストで大規模に除去処理可能となる。排水処理操作が簡便となり、劇物など処理用薬剤を保管、また直接使用する必要がなくなる。電気分解法を利用すれば処理後の液の電導度を低下させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】

【図1】水処理装置
【図2】沈澱処理槽を別に有する水処理装置
【発明を実施するための形態】
【0026】

有機物や重金属類等の無機物、イオン、浮遊物質などの汚染粒子を含む排水1に水酸化ナトリウムなどの塩基性物質6を加え、pHを10以上に調整する。この場合の塩基性物質は水酸化ナトリウムの他に、水酸化マグネシウムや水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどが使用できる。また、水酸化ナトリウムの供給源として、塩化ナトリウムなどの塩化物系電解質を含む水中で行う電気分解が利用できる。すなわち塩化ナトリウムを含む水中でグラファイトや銅などの耐食性金属からなる陰極3に電荷を印加すると水酸化ナトリウムが発生する。塩化ナトリウム源として海水を使用することもできる。また電気分解の手法としてイオン化傾向の異なる電極を使用する方法もある。発生する電位差を利用して陽極2側に2価の鉄イオンを生じさせ、陰極3側に塩基性物質を生じさせる。電極に負荷させる電源は直流電源が望ましい。
【0027】

排水のpHを10以上とした後、2価の鉄イオン5を加えながら撹拌羽根10により撹拌する。これによって水中の有機物や重金属類等の無機物、イオン、浮遊物質などの汚染粒子は、鉄イオンと共に水酸化物を形成したり、表面電荷を失うなどして大粒子化して、共沈する。特にこれまで処理が困難であった藍やインディゴ染料の排水、またジアゾ系、アミド系有機顔料の排水についても同様に共沈し、脱色できる。この際の2価の鉄イオン5の供給源として、鉄の陽極3を使用した電気分解が利用できる。すなわち塩化物系電解質を含む水中で鉄からなる陽極3に電荷を印加すると、まず塩素イオンが電子を放出して次亜塩素酸に変化する。鉄電極3表面で発生した次亜塩素酸との反応で鉄が塩化鉄に変化し、2価の鉄イオン5として水中に溶解する。また、排液中にすでに塩化物あるいは塩素イオンが含まれる場合は、塩化物系電解質を排水に添加せずに鉄系陽極3に電荷を印加し、2価の鉄イオンを生成させる方法もある。また電極間にセパレーター7を設置することで、それぞれの電極に発生する2価の鉄イオンと水酸化ナトリウムを別々に取り出し、別タンク8に貯水した排水に添加することもできる。
【0028】

水中に溶解した2価の鉄イオンは、そのままでは酸化されて3価の鉄イオンに変化するか、あるいは陰極で発生する水酸化ナトリウムによって水酸化鉄コロイドに変化し、析出し沈澱する。そのため、電気分解による方法においても、2価の鉄イオンを添加する方法と同様に撹拌羽根10により撹拌し、できるだけ多くの排水と接触させる必要がある。陰極側に発生した水酸化ナトリウムと混ざり合った廃水を、陽極側に発生した2価の鉄イオンに即座に接触させるため、該液体あるいは電極を撹拌羽根10により同心円状に回転させ、該液体を撹拌する。回転させることで、該液体が陰極で発生した水酸化ナトリウムと、陽極で発生した2価の鉄イオンに交互に接触し、連続的に共沈が発生し、効率的に処理される。また、排水を流す流路11に沿って二種類の電極を交互に並べ、排水が流路を流れるに従って連続的に共沈反応が進み、凝集体を形成して処理することもできる。
【0029】

2価の鉄イオンの共沈作用によって得られる上澄み液は、場合によって小さな汚染粒子が残留し、薄い色が残ることがある。その場合には、さらに直径30nm以下の非晶性の水酸化第2鉄コロイド粒子を添加し、沈澱を促進させることができる。酸性に調整した水酸化第2鉄コロイド粒子を、塩基性の排水に添加することで残留粒子も凝集し、大粒子となって沈澱、除去される。得られた排水の上澄み液のみを外部へ放出し、沈殿物は風乾あるいは加熱乾燥しつつ加圧することにより沈殿物を量的に最小化できる。
【0030】

処理後、上澄み液を平均孔径5nm以上10μm以下の膜を用いた膜分離を行うことで、さらに小さな残留浮遊粒子を除去する。望ましくは平均孔径が5nm以上1500nm以下の多層構造を持つ再生セルロース製の多孔質平膜を用い、分子および粒子の孔中での拡散速度の差を主に利用した孔拡散法あるいは孔拡散ろ過法で残留浮遊粒子を分離、除去する。
【実施例1】
【0031】

インディゴ染料を含む濃い青紫色の染料排水100mlに、1規定の水酸化ナトリウム水溶液を5ml添加し、良く撹拌した後、20000ppmの2価の鉄イオン5mlを撹拌しながら添加した。
【0032】

排水は青色の大粒子を形成して沈澱し、やや青味を帯びた上澄み液を得た。次いで上澄み液に1500ppmの粒径12nmの水酸化第2鉄コロイド粒子を5ml添加したところ、黄色味を帯びた大粒子が生じた。
【0033】

黄色味を帯びた大粒子を有したまま、平均孔径1μmのセルロース膜を用いてろ過し、無色透明の処理液を得た。
【実施例2】
【0034】

ジアゾ系有機顔料を含む濃い赤紫色の染料排水100mlに、塩化ナトリウムを1g添加し、鉄の電極2本に5Vの電力を印加し、撹拌しながら電気分解を行った。電極を容器内の同心円状に配置し、同じく同心円状に排水が回転するように撹拌した。
【0035】

電流は11mA流れ、陰極側から水素ガスが発生して泡が生じた。5分後、排水が緑味を有するようになり、徐々に粒子が大きくなっていることが目視できた。30分後、撹拌と通電を止めたところ、大粒子が沈澱し、やや薄い緑味を帯びた上澄み液が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0036】

排水処処理を行う工場等において特定イオンおよび物質を除去するために沈澱槽、ろ過装置および吸着等の設備や付属設備を必要とする。しかもその処理を実施するのに多くの処理タンクや薬剤を必要とする。本発明では処理方法の組合せにより特定したイオンおよび物質だけでなく他のイオン及び他の物質も同時に処理することができる。特に染料排水などこれまで困難とされてきた産業排水についても処理が可能となる。またし尿施設における重金属およびTOC低減用として本発明方法は利用可能である。食品工場の特定物質の除去にも利用可能である。井戸水中の重金属の除去にも利用可能である。
【符号の説明】
【0037】

1,排水あるいは水
2,陽極
3,陰極
4,水素ガス
5,2価の鉄イオン
6,塩基性物質
7,セパレーター
8,別タンク
9, 排水
10,撹拌羽根
11,流路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に含まれる有機物、重金属類等の無機物、イオン、浮遊物質等汚染物質をpHが2以下の状態にある2価の鉄イオンの働きによって沈澱除去する水処理方法において、該液体のpHを10以上とし、その後局所的に2価の鉄イオンをpHが2以下の水中に存在する状態に維持した後撹拌または拡散により水溶液全体のpHを9未満にすることを特徴とする水処理方法。

【請求項2】
請求項1の水処理方法において、該液体のpH10以上の調整のために塩基性物質を添加するか、あるいは該液体中に含まれている金属陽イオンを電気分解により陰極での電極反応で得られる金属水酸化物として利用し、2価の鉄イオンとしてはあらかじめ2価の鉄化合物を塩酸の酸性下で調製して供給するか、あるいは該液体中に含まれる塩化物あるいは塩素イオンを利用し陽極に鉄を用いて電気分解を行い、陽極側に生じた塩化第一鉄を利用することを特徴とする水処理方法。

【請求項3】
請求項2において、少なくとも陽極には鉄の純度が99.5%以上の素材で構成され、処理される水が電気分解用の電極の陰陽の交互に接触するように撹拌装置を装備し、陰陽の両電極間にはセルロース系材料の隔膜を配し、電極間には直流電源を装備していることを特徴とする水処理装置。

【請求項4】
請求項2の水処理方法において、pHを9未満にした後pHを5以上に調製し、さらに直径30nm以下の非晶性の水酸化第2鉄コロイド粒子を添加し、沈澱を促進させることを特徴とする水処理方法。

【請求項5】
請求項2および3の水処理方法および水処理装置において、陽極として鉄を利用した場合、電解質源として海水を使用することを特徴とする水処理方法および水処理装置。

【請求項6】
請求項1の水処理方法および請求項3の水処理装置において、処理後得られる沈殿物を有する処理水、あるいは上澄み液を、平均孔径が5nm以上1500nm以下であり多層構造を持つ再生セルロース製の多孔質平膜を用いてひずみ速度が2秒-1以上で膜間差圧が0.2気圧以下で実現される分子および粒子の孔中での拡散速度の差を主に利用した孔拡散法あるいは孔拡散ろ過法で物質を分離することを特徴とする水処理方法および水処理装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−161742(P2012−161742A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24251(P2011−24251)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(307002932)株式会社セパシグマ (23)
【Fターム(参考)】